説明

セラミックコーティング部材およびその製造方法

【課題】パーティクル発生が抑制され、優れた耐食性および耐久性を有するセラミックコーティング部材を提供する。また、複雑な形状の基材や大型の基材にパーティクル発生が少なく耐食性および耐久性に優れたセラミック膜を容易に形成することを可能とするセラミックコーティング部材の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックコーティング部材は、基材表面に、純度が98%以上、膜厚が0.05μm以上10μm以下、平均粒径が50nm以下のセラミック膜が形成された構造を有する。セラミック膜は、基材の表面に、金属アルコキシド,有機金属錯体,酸化物ナノ粒子または非酸化物ナノ粒子の少なくとも一種以上を含む溶液を用いて塗布膜を湿式成膜し、この塗布膜を乾燥し、300℃以上1000℃以下の温度で熱処理することにより、形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置やFPD(Flat Panel Display)製造装置に好適に用いられるセラミックコーティング部材に関し、より詳しくは、腐食環境等において使用した際のパーティクル発生が抑制された耐久性に優れるセラミックコーティング部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI,VLSI等の半導体装置の製造装置、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造装置においては、シリコンウエハやガラス基板(以下「基板」という)に対して、パーティクルや金属除去等のための洗浄処理、レジスト塗布,露光,現像およびCVDスパッタリング等の成膜処理、エッチングやダイシング等の微細加工、線幅測定等の検査処理等の複数のプロセスが適宜行われている。
【0003】
これらのプロセスを実行するための、基板を搬送する搬送アームや基板を吸着保持するための静電チャックや真空チャック、基板を収容するチャンバ、成膜プロセスやエッチングプロセスにおいてプロセスガスやクリーニングガスを供給するためのガス噴出ノズルやガス分散板等の各種部材には、使用環境において耐久性に優れた材料が選択される。
【0004】
これは、各プロセスにおいてこれらの装置部材が摩耗,腐食等すると、これがパーティクルとなって基板に直接付着したり、これらの装置部材に付着した後にそこから剥がれ落ちて基板に付着する等して、基板に形成された配線どうしがショートする等の欠陥を生じさせるので、これを防止するためである。
【0005】
このような装置部材からのパーティクル発生を抑制するために、従来、例えば、静電チャックや真空チャック等においては、基板の吸着固定面にブラスト等により突起または溝を形成し、その後にこの吸着固定面を砥粒とバフを用いて鏡面研磨することにより、吸着固定面からのパーティクル発生を抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、装置部材の表面に、スパッタリングやイオンプレーティング,CVD法等により耐食性,耐久性に優れた被膜を形成することにより、パーティクルの発生を防止している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、近時における半導体装置のデザインルールの微細化やFPDにおける高繊細化の急速な進展に伴い、パーティクル発生がさらに低減された装置部材が求められている。
【0008】
また、特許文献1に開示された技術は、大型部材に適用した場合に、その仕上げ面の均一性を確保することが難しいという問題がある。さらに、特許文献2に開示された技術は、成膜処理に真空チャンバを必要とするために特に大型の部材への適用に不向きであり、また、真空チャンバそのものが高価であるというデメリットがある。さらにまた特許文献2に開示された成膜方法では、成膜方向に異方性があるために、部品形状が複雑な場合には均一な厚さの成膜を行うことが困難であり、また成膜面が複数あってこれらが互いに交差している場合に所定の面について成膜処理を行った後に部材の姿勢を変えて別の面について再成膜を行う必要がある等、作業性や生産性の点での問題もある。
【特許文献1】特開2006−237023号公報(段落[0014]、図1等)
【特許文献2】特開平9−260471号公報(段落[0012]、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、パーティクルの発生が抑制され、優れた耐食性および耐久性を有するセラミックコーティング部材を提供することを目的とする。また、複雑な形状の基材や大型の基材にパーティクルの発生が少なく耐食性および耐久性に優れたセラミック膜を容易に形成することを可能ならしめるセラミックコーティング部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によれば、基材表面に、純度が98%以上、膜厚が0.05μm以上10μm以下、平均粒径が50nm以下のセラミック膜が形成されていることを特徴とするセラミックコーティング部材が提供される。
【0011】
セラミック膜の平均粒径d50と90%粒径d90とはd90/d50≦10の関係を満足していることが好ましい。また、基材としては、金属,セラミックス,ガラス,石英およびこれらの中から選ばれた2種以上の材料からなる複合材料のいずれかが好適に用いられ、セラミック膜は、周期律表の2〜6族,12〜14族および希土類元素に属する少なくとも一種以上の元素の酸化物,炭化物または窒化物を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、基材の表面に、金属アルコキシド,有機金属錯体,酸化物ナノ粒子または非酸化物ナノ粒子の少なくとも一種以上を含む溶液または分散液を用いて塗布膜を湿式成膜する工程と、
前記塗布膜を乾燥させ、その後に300℃以上1000℃以下の温度で熱処理することにより、セラミック膜を形成する工程とを有することを特徴とするセラミックコーティング部材の製造方法が提供される。
【0013】
ここで、湿式成膜には、スプレー法,ディップ法またはインクジェット法のいずれかを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るセラミックコーティング部材では、パーティクルの発生が極めて少なく抑えられる。これにより例えば、本発明に係るセラミックコーティング部材を半導体製造装置やFPD製造装置に用いることで、製品たる半導体装置やFPDに欠陥や製品不良が発生することを抑制することができる。また、本発明に係るセラミックコーティング部材の製造方法を用いれば、複雑な形状の基材や大型の基材にも均一な組織および膜厚を有するセラミック膜を生産性よく成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係るセラミックコーティング部材は、所定の基材の表面に、純度が98%以上、膜厚が0.05μm以上10μm以下、平均粒径が50nm以下のセラミック膜が形成された構造を有している。
【0016】
このセラミック膜の純度が98%未満の場合は、これに含まれる不純物が過酷な使用環境、例えばプラズマ雰囲気や腐食性ガス雰囲気、腐食性液体雰囲気において、腐食の起点となって耐久性が低下し、ひいてはパーティクル発生の原因となる。そのため、このセラミックコーティング部材の主な用途である半導体製造装置やFPD製造装置への適用に向かない。また、成分として含まれる不純物は局所的な異常粒成長を招き、その部分でパーティクルが発生しやすくなる。
【0017】
そのため、セラミック膜の純度は99.5%以上であることが好ましく、99.9%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
セラミック膜の膜厚は0.05μm以上10μm以下とする。膜厚が10μmを超える場合には界面強度(基材に対する密着力(剥離強度))が低下し、セラミック膜そのものが基材から剥離してパーティクルとなってしまう危険性が増すため、好ましくない。セラミック膜のより好ましい膜厚は5μm以下であり、膜厚が1μm以下であることがさらに好ましい。セラミック膜の膜厚が0.05μm未満の場合には、パーティクルの低減効果を十分に発現することができない。
【0019】
セラミック膜の平均粒径は50nm以下とする。セラミック膜の平均粒径はセラミック膜の表面をSEMにより観察して得られる画像(写真)を解析することにより求められる。この平均粒径が50nmを超える場合には、セラミック膜の界面強度が低下し、セラミック膜そのものが基材から剥離してパーティクルとなってしまう危険性が増す。セラミック膜の平均粒径のより好ましい範囲は30nm以下であり、平均粒径が10nm以下であることがさらに好ましく、平均粒径が小さくなることにより、セラミック膜の基材に対する密着力が大きくなるだけでなく、実質的な粒界ボイドが少なくなることで、過酷な使用環境においても優れた耐久性能が得られる。また、例えばセラミックコーティング部材を半導体製造装置に用いた場合に、脱粒等によりパーティクルが発生したとしても、製品たる半導体装置の配線をショートさせるといったトラブルが発生し難くなる。
【0020】
セラミック膜の平均粒径d50(=50%粒径)と90%粒径d90とはd90/d50≦10の関係を満足していることが好ましい。この比率が10を超える場合、セラミック膜を構成する微細粒子中に粗大粒子が存在することになるので、局所的に膜の界面強度が低下し、その部分で脱粒が生じ、パーティクルを発生させやすくなる。この比率は8以下であることが好ましく、6以下であることはさらに好ましい。
【0021】
セラミックコーティング部材を構成する基材としては、アルミニウム(Al),鉄(Fe),クロム(Cr),ニッケル(Ni)やその合金(SUS)等の金属、アルミナ(Al),炭化珪素(SiC),窒化珪素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス、ガラス,石英(SiO)およびこれらの中から選ばれた2種以上の材料からなる複合材料(例えば、金属とセラミックスとからなるサーメット材料)が好適に用いられる。
【0022】
セラミック膜は、周期律表の2〜6族,12〜14族および希土類元素に属する少なくとも一種以上の元素の酸化物,炭化物または窒化物を含むことが好ましく、具体的には、酸化マグネシウム(MgO),アルミナ(Al),窒化アルミニウム(AlN),酸化珪素(SiO),炭化珪素(SiC),窒化珪素(Si),イットリア(Y)が挙げられ、用途および使用環境に応じて、適切な材料が選択される。
【0023】
上述したセラミックコーティング部材は、基材の表面に、金属アルコキシド,有機金属錯体,酸化物ナノ粒子または非酸化物ナノ粒子の少なくとも一種以上を含む溶液または分散液を用いて塗布膜を湿式成膜し、この塗布膜を乾燥させ、その後に300℃以上1000℃以下の温度で熱処理(焼成)してセラミック膜を形成させるプロセスにより製造することができる。
【0024】
このようにセラミック膜の形成には湿式成膜法が用いられる。セラミック膜の成膜方法の一種である蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法やCVD法等は、所謂、乾式成膜法であるが、成膜装置が高価なために工業的に不利であり、また成膜時に真空チャンバを必要とするために特に大型基材への成膜に対する制約が大きい。さらに基材が凹状に窪んだ内面を有する等の複雑な形状を有する場合には膜厚分布が不均一になってしまい、例えば実際の使用により熱サイクルを受けたときに、膜厚の不均一な部分から剥離が発生してパーティクルとなる等の問題が発生する。
【0025】
これに対して湿式成膜では、成膜装置の構成についての制限が少なく、複雑な形状を有する基材や大型の基材に対して均一な厚みを有する塗布膜を容易に形成することができる利点がある。
【0026】
湿式成膜原料としては、熱処理反応により所望の酸化物や炭化物,窒化物となる金属アルコキシドや有機金属錯体、酸化物や炭化物および窒化物そのものであるセラミック微粉末を有機溶媒等に分散させた溶液(ゾル)、さらにこのような溶液(ゾル)に金属アルコキシドや有機金属錯体が添加された混合溶液を使用することができる。
【0027】
最終形成されるセラミック膜の純度を98%以上に確保する観点から、これらの原料もまた98%以上とする。なお、従来の湿式成膜法では、膜の緻密化を促進するために様々な添加物、例えばアルカリ金属,重金属,ガラス等を混合し、セラミック膜の焼成温度を低下させる手法が取られている。しかしながら、アルカリ金属や重金属は、半導体装置やFPD等の製品に対する不純物(コンタミ)となり製品の特性低下を招く原因となる。また、ガラスは耐食性が低く、高い清浄度が必要とされる半導体製造装置やFPD製造装置に用いる部材としては適切ではない。さらにこのような添加物を含むセラミック膜では、添加物によって局所的な異常粒成長が発生し、その部分でパーティクルが発生しやすくなる。本発明に係るセラミックコーティング部材では、セラミック膜を形成するための湿式成膜原料として98%以上の純度のものを用いるので、このような問題の発生を回避することができる。
【0028】
湿式成膜法としては、より具体的には、スプレー法やディップ法、インクジェット法が好適に用いられる。スプレー法は、成膜原料溶液をミスト状にして基材に吹き付ける方法であり、このとき、専用に設計され最適化されたスプレーノズルの使用が推奨される。しかし、それに限られず、一般に市販されているエアブラシやスプレーガンを用いることもできる。ディップ法は、基材を成膜原料溶液に浸漬し、その後、低速度(例えば、10mm/分〜50mm/分)かつ好ましくは一定速度で基材を引き上げることにより、基材表面に均一な塗布膜を形成する方法である。インクジェット法はインクジェットヘッドに成膜原料溶液を充填し、一定量塗布しながら、インクジェットヘッドと基材とを相対的に走査させることにより、基材表面に均一な塗布膜を形成する方法である。
【0029】
こうして形成された塗布膜から溶媒を蒸発させる際には、発生する蒸気によって固形成分の成膜状態が乱されること(例えば、ヒビや剥離が発生すること)を防止するために、室温またはこのような乱れが生じない穏やかな条件で行う。溶媒蒸発により塗布膜は固化(ゲル化)する。
【0030】
固化した塗布膜の焼成には、一般の大気炉や雰囲気炉を使用することもできるが、焼成装置からの不純物の導入を抑制する観点から、クリーンオーブンを使用することが望ましい。焼成温度を300℃以上1000℃以下とするのは、焼成温度が300℃未満の場合には、固化した塗布膜から結晶化したセラミック膜への化学変化が不十分となるおそれがあり、また、セラミック粒子どうしの結合が不十分となってパーティクルが発生しやすい構造となるおそれがある。一方、焼成温度を1000℃超とすると、セラミック膜の焼結が進行して、パーティクル発生の原因となる粒成長が生じやすくなる。
【0031】
所望するセラミック膜が酸化物である場合、焼成は大気雰囲気等の酸素含有雰囲気で行うことができる。炭化物のセラミック膜を形成する場合には、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気で加熱する。この場合、成膜原料にはアルキル基などの炭素分を多く含むものを用いることが好ましい。窒化物セラミック膜を形成する場合には、窒素雰囲気での焼成が好ましく、原料には窒素を含有するものが好適に使用される。
【実施例】
【0032】
(成膜部材、基材、成膜原料)
表1および表2にそれぞれ実施例および比較例に係る試料の成膜部材、基材の材質、成膜方法の各種条件を示す。
【0033】
成膜部材としては、ガスノズル、真空チャックおよび静電チャックを取り上げた。ガスノズルは、外径がφ10mm、内径がφ0.5mmで、その端部にネジを備えた構造を有している。
【0034】
真空チャックは外径がφ300mm、板厚が10mmで、φ285mm部およびφ120mm部にそれぞれ幅2mmのリブが形成され、φ285mm内の領域にφ285mm内の領域面積に対して面積比で10%を占めるようにφ1.5mm×高さ1mmのピンが等間隔にて形成され、さらにφ285mm内の領域に吸着用のバキューム孔が8箇所設けられた構造を有している。
【0035】
静電チャックは、外形がφ300mm、板厚が10mmで、その内部に双極の金属電極が埋設され、表面(基板吸着面)にはφ300mm内の領域面積に対して面積比で10%を占めるようにφ1.5mm×高さ20μmのピンが等間隔で形成された構造を有している。
【0036】
このような部材を構成する基材として、表1および表2に示されるように、セラミックス(Al,AlN,Si,SiC)、ガラス、複合材料(SiC/Al)、金属(Al,ステンレス(SUS))を用いた。また、これらの基材の表面にセラミック膜を形成するための成膜原料としては、表1および表2に示す各種元素を有する金属アルコキシド,有機金属錯体,酸化物ナノ粒子/非酸化物ナノ粒子の1種または2種を含有するゾル(分散液)を用いた。
【0037】
(製造方法)
原料となるゾルをスプレーノズルから噴射して基材表面に吹き付け、所定の厚さの塗布膜を形成した。ゾルの溶剤成分が揮発するまで室温にて放置し、その後、熱処理温度500℃以下の場合はクリーンオーブンを使用し、500℃を越える場合は電気炉を使用して、熱処理を行い、セラミック膜を形成した。なお、このような基材へのセラミック膜の成膜時に、それぞれの成膜条件において形成されるセラミック膜の膜厚を測定するための試料として、基材と同じ材料からなる□20mmの基板を基材と同時に成膜した。
【0038】
(評価方法とその結果)
評価方法とその結果を表1,表2に併記する。
【0039】
セラミック膜厚測定用試料をその中央部で破断処理し、その断面をFE−SEM(電解放出型電子顕微鏡)により観察して、セラミック膜厚を測定した。また、セラミック膜表面のFE−SEMにより観察し、撮影されたSEM写真を画像解析装置により解析することで、平均粒径d50と90%粒径d90を算出した。
【0040】
ガスノズルの表面パーティクル(>0.3μm)の測定を、PENTAGON TECHNOLOGY製のサーフェイスパーティクルカウンター(SPC)QIIIを用いて行った。この装置は、装置本体に接続されている2本のエアー(ガス)配管がパーティクルを測定する部分に接触させるためのプローブ(エアーが流れる部分に溝が形成されている)に接続され、一方のエアー配管からクリーンな空気がこのプローブに供給されて試料表面に吹き付けられ、そこで発生したパーティクルがプローブから気流に乗って別のエアー配管を通って装置本体に流れ、装置本体で空気中に含まれるパーティクル量を測定するものであり、使用したプローブのサイズが0.5インチであり、エアー流速を3.74m/sec、測定時間(空気を流す時間)を3秒とした。
【0041】
その結果、実施例1〜19のガスノズルでは、パーティクルは5個/cmに満たないことが確認された。これに対して、比較例1〜5のノズルではいずれも10個/cmを超えていた。
【0042】
また、実施例1と比較例1に係るガスノズルの表面組織をSEMにより観察した。図1,図2にそれぞれ実施例1と比較例1に係るガスノズルの表面SEM写真を示す。これらを対比すると、実施例1のガスノズルではその表面の凹凸に沿って薄膜が形成されており(図1でぼやけて見える大きな粒子は基材を構成する粒子)、その表面パーティクルを発見することは極めて困難であった。一方、比較例1のガスノズルでは基材であるのAlN表面において多数の粒子脱落が認められ、この脱粒部分に多数のパーティクルが付着していることが確認された。
【0043】
さらに、ガスノズルでは、半導体製造装置中でプラズマ暴露により表面が活性化されるために、大気中に比べパーティクルが発生しやすくなることから、実施例1と比較例1のガスノズルについて、更に、HDP−CVDのプロセスチャンバーにそれぞれ36本装着し、SiHとOをプロセスガスとして用いてプラズマを発生させてSiOを10nm成膜する処理をウエハに逐次施し、パーティクルの発生状況を調べた。
【0044】
その結果、比較例1のガスノズルでは、処理したウエハ数が100枚の段階で、パーティクル数が1000を越えた。しかし、実施例1のガスノズルでは、処理したウエハ数が12000枚になっても、パーティクルの発生は50個以下に止まることが確認され、優れた耐食性(耐環境性)とパーティクル抑制性能を示すことが確認された。
【0045】
真空チャックおよび静電チャックの評価は、各チャックにシリコンウエハを所定の吸着力で吸着させ、シリコンウエハの裏面に付着したパーティクル(>0.2μm)の数を、ウエハパーティクルカウンタ(WPC)(トプコン製、WM−7C)を用いて測定することにより行った。ここで、使用したシリコンウエハのサイズは5インチで、10mmのエッジカット部が形成されている。
【0046】
その結果、比較例に係るチャックでは、1000〜4000個のパーティクルが検出されたのに対し、実施例のチャックでは検出されたパーティクル数はいずれも100個程度に抑えられていることが確認された。
【0047】
上述の通り、本発明に係るセラミックコーティング部材は、極めて優れたパーティクル抑制効果を示すことが確認された。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るセラミックコーティング部材は、半導体製造装置やFPD製造装置において、基板を固定するために用いられる静電チャックや真空チャック、基板を搬送するためのアーム、成膜プロセスやエッチングプロセスを行うためのプロセスガス・クリーニングガス噴出ノズルやガス分散板等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】AlN基材の表面にAl膜を形成してなるガスノズルの表面SEM写真(実施例1)。
【図2】AlN基材からなるガスノズルの表面SEM写真(比較例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、純度が98%以上、膜厚が0.05μm以上10μm以下、平均粒径が50nm以下のセラミック膜が形成されていることを特徴とするセラミックコーティング部材。
【請求項2】
前記セラミック膜の平均粒径d50と90%粒径d90との間にd90/d50≦10の関係が成り立っていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックコーティング部材。
【請求項3】
前記基材は、金属,セラミックス,ガラス,石英およびこれらの中から選ばれた2種以上の材料からなる複合材料のいずれかであり、
前記セラミック膜は、周期律表の2〜6族,12〜14族および希土類元素に属する少なくとも一種以上の元素の酸化物,炭化物または窒化物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックコーティング部材。
【請求項4】
基材の表面に、金属アルコキシド,有機金属錯体,酸化物ナノ粒子または非酸化物ナノ粒子の少なくとも一種以上を含む溶液または分散液を用いて塗布膜を湿式成膜する工程と、
前記塗布膜を乾燥させ、その後に300℃以上1000℃以下の温度で熱処理することにより、セラミック膜を形成する工程とを有することを特徴とするセラミックコーティング部材の製造方法。
【請求項5】
前記湿式成膜は、スプレー法,ディップ法またはインクジェット法のいずれかにより行われることを特徴とする請求項4に記載のセラミックコーティング部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−120654(P2008−120654A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309089(P2006−309089)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】