説明

セルフクリーニングが可能な半導体処理装置

【課題】効率的且つ清浄な反応炉クリーニングを実施し、反応炉クリーニングが確実に完了したかどうかを検出できるプラズマCVD装置を提供する。
【解決手段】セルフクリーニングの可能な半導体処理装置において、反応炉の内壁に設けられた光学窓を通して、該反応炉の内面に向けて単色性の光を照射し、その反射光を受光し、該内面に付着した物質の除去状態を検出する光学装置を備えた半導体処理装置が与えられる。クリーニングが完了したことを的確に検出することで速やかにクリーニングシーケンスを終了させ、生産性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、セルフクリーニングが可能な半導体処理装置に関し、特に、クリーニング終点検出装置を有するセルフクリーニング装置を備えたプラズマCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CVD装置によって、シリコン基板上またはガラス基板上に、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン若しくはベンゼン環含有重合体などの絶縁膜、タングステンシリサイド、チタンナイトライド若しくはアルミニウム合金等の導体膜、またはPZT(PbZr1-xTixO3)若しくはBST(BaxSr1-xTiO3)等を含む高誘電率膜が形成されている。
【0003】
これらの膜を形成するために、反応炉内にはさまざまな組成の反応ガスまたは第2の反応ガスが供給される。これらの反応ガスがプラズマエネルギーを得て化学反応を起こし、半導体基板上に所望の薄膜を形成する。反応炉内ではその内壁及びサセプタ表面などにも同様に反応により生じた膜が付着する。これらの付着物は基板への膜形成を繰り返すと次第に蓄積され、そこから剥がれ落ちて反応炉内を浮遊したりする。これが不純物汚染の原因となり、製造された半導体回路に欠陥を生じさせる。
【0004】
反応炉内壁に付着した汚染物質を除去するために、反応炉が稼働状態のままその内部をクリーニングするインサイチュクリーニング(In Situ cleaning)が有効である。この方法は付着物の種類に応じて選択されたクリーニングガスを反応炉内に導入し付着物を気化して除去するというものであり、例えば、シリコンの酸化物若しくは窒化物またはタングステン若しくはその窒化物若しくはシリサイドが付着している場合には、クリーニングガスとして、CF4、C2F6、C3F8またはNF3などが使用される。それらクリーニングガスは、膜形成に使用されるプラズマ励起装置と反応炉内電極を利用して活性化され、フッ素原子の活性種またはフッ素を含む活性種を生成する。この励起方法を用いたクリーニングを インサイチュプラズマクリーニングと言う。この場合フッ素原子の活性種またはフッ素を含む活性種(フッ素ラジカル)が反応炉内壁の付着物を気化して不純物を除去することができる。
【0005】
プラズマCVD装置においては、膜形成に使用されるプラズマ励起装置がそのままクリーニングガスの活性化に使用されるため、反応炉内電極に印加された高い高周波電力によって電極間に大きなイオン衝撃が生じる。その結果、電極表面が損傷を受け、表層が剥離して不純物汚染源になる。損傷を受けた部品は頻繁に交換する必要があり、それが運用コストの増大に結びつく。
【0006】
イオン衝撃によるこれらの欠点を解決するためにリモートプラズマクリーニング法と呼ばれる方法が開発された。ここに参考文献として組み込む特開平10-149989号、特開平10-163185号、米国特許第5788778号、 特開平9-69504、特開平5−214531には、クリーニングガスとしてCF系ガスやNF3を使用し、それを活性化するプラズマ励起を、マイクロ波を使って反応炉とは別の離れた第2のプラズマ放電室で行う方法が開示されている。それによると、流量制御されたNF3は、第2のプラズマ放電室に導入され、マイクロ波発振器から導波管を通じてプラズマ放電室に供給された2.45GHzのマイクロ波によって解離活性化され、フッ素ラジカルが生成される。この際マイクロ波プラズマ放電が効率良く達成されるように、第2のプラズマ反応室と反応炉との間には圧力調整のためにバルブが設けられ、第2のプラズマ反応室が所定の圧力に維持される。生成されたフッ素ラジカルは導管を通じて膜形成を行う反応炉内へ導入され、反応炉内壁の付着物を気化して除去する。
【0007】
また、反応炉上部に設置された遠隔プラズマ室と反応炉との間をアルミニウム配管とスルーフロー型バルブにて接続した装置が、米国特許第6736147号に示されている。
【0008】
これら膜形成後の反応炉クリーニング工程は、反応炉内に付着した不要な反応生成物を除去するために十分な時間行なわれる。
【0009】
ウエハ上に形成する膜の厚みに応じた十分なクリーニング時間を、予め試験的クリーニングなどを実行して求めておき、その時間を記憶させておくことで、反応炉のクリーニングが実行される。
【0010】
反応炉内に設けられる電極に高周波を印加して反応炉内に形成されるプラズマ領域でクリーニングガスを活性化する局所プラズマクリーニング方法では、その電極間のプラズマ発光や、高周波電力供給ラインの電圧・電流情報から、反応炉内のクリーニング終点を確認する方法が開示されている(例えば、米国特許第5910011号、 米国特許第6652710号、 米国特許第5160402号、 米国特許第5343412号、 米国特許第5986747号、米国特許第6368975号、 特開昭63−128718、 特開平8−321467、米国特許第6051284号、特開昭63−14422、特開昭61−145825、特開昭63−89684、特開昭63−14421、特開昭63−244739、特開昭61―247031、特開辺平7−169753)。
【0011】
このクリーニング終点検出は、反応炉内のクリーニングが確実に行なわれたかどうかを知る上で重要な項目であり、何らかの事情により予め決められた時間でクリーニング終了しないときは、この情報に基づき、装置の停止やメンテナンスを要求する。
【0012】
しかし、遠隔プラズマ室を用いる遠隔プラズマクリーニング法では、反応炉内の電極に高周波を印加しないため、プラズマ発光や高周波電力の電圧・電流情報を得ることができない。
【0013】
そのため反応炉内のクリーニングが完全に達成されたかどうかを把握するために、反応炉の出口に赤外線吸収分光器を取り付けて使用する方法や4重極質量分析計を使用する方法等が考案されている。例えば、米国特許第5879574号、 米国特許第6543459号、米国特許第5837094号、米国特許第6660101号、米国特許第6737666号、米国特許第6553335号、米国特許第6366346号、米国特許第6635144号、特開平6−224163、米国特許第6170492号、米国特許5902403号、米国特許第6192898号にそのような技術が開示されている。
【0014】
クリーニング反応は、反応炉内さらに反応炉に直接接続された真空排気配管内部に付着する反応生成物が存在する部位で起こるので、反応炉排気配管部でのクリーニング終点を検出することにより、反応炉内のクリーニング終点を推定することがある程度は可能であるが、反応炉排気配管部に付着する生成物の状態、生成量、温度等は反応炉内のそれとは必ずしも一定の相関があるわけではないので、反応炉排気配管部に設置される上記クリーニング終点検出装置では、反応炉内部の正確な情報を検出することはできない。その結果、クリーニング時間には余裕を持たせ長く設定され、装置の基板処理能力である生産性を低下させる。更に、赤外線吸収を用いる方法は、排気配管部に設けられ赤外線を透過させる窓部の汚れにより、得られる光学的信号が変化し、4重極質量分析計を用いる方法は、F系の活性種により検出器自身が変質してしまう、などの問題があり、半導体装置の量産工場として求められる安定したクリーニング終点検出を長期的に実行することは困難である。
【0015】
一方、クリーニングが完了していないまま次の半導体基板に対する膜形成工程を実行すれば、反応炉内で半導体基板がパーティクルにより汚染されてしまい、半導体装置の不良を発生させることは言うまでもない。
【特許文献1】特開平6−224163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来技術の問題点に鑑み、本願発明のある態様では、効率的且つ清浄な反応炉クリーニングを実施することを目的の一つとする。
【0017】
また、ある態様では、反応炉クリーニングが確実に完了したかどうかを検出できるプラズマCVD装置を提供することを目的の一つとする。
【0018】
更に、ある態様では、クリーニングが完了したことを的確に検出することで速やかにクリーニングシーケンスを終了させ、次の工程に進むことができ、生産性が高いプラズマCVD装置を提供することを目的の一つとする。
【0019】
また、ある態様では、遠隔プラズマクリーニングのみならずインサイチュプラズマクリーニングにも提供できるクリーニング終点検出装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のある形態においては、本発明は、I)CVD反応炉と、II)該CVD反応炉の内壁に設けられた光学窓を通して該反応炉の内面に向けて単色性の光を照射し、その反射光を受光し、該内面に付着した汚染物質量を検出する光学装置と、を備えたCVD処理装置を提供する。
【0021】
上記の形態は更に以下の態様を包含する。
【0022】
該単色性の光は、単色光であるCVD処理装置。
【0023】
該単色性の光は、レーザー光であるCVD処理装置。
【0024】
該光学装置は単一の装置であり、単色性の光の照射と、反射光の受光の両方を行うCVD処理装置。
【0025】
該CVD反応炉は、反応ガスを炉内に導入するシャワーヘッドと、それに対向して設置された、基板を載置し加熱するサセプタを備え、該内面はシャワーヘッドの一部であるCVD処理装置。
【0026】
該内面は、該サセプタと対向する該シャワーヘッドの周縁部近傍の平面であるCVD処理装置。
【0027】
該光学窓は、該内面から垂直方向に位置する該CVD反応炉の内壁に設けられているCVD処理装置。
【0028】
該内面は、該シャワーヘッドの周縁部近傍の側面であるCVD処理装置。
【0029】
該光学窓は、該内面から垂直方向に位置する該CVD反応炉の内壁に設けられているCVD処理装置。
【0030】
該光学窓は、サファイア製であるCVD処理装置。
【0031】
該光学装置は、汚染物質量の検出を、該単色性の光の該内面からの反射光と該汚染物質表面からの反射光の干渉信号の収束により行うCVD処理装置。
【0032】
該光学装置は、汚染物質量の検出を、該単色性の光の該内面からの反射強度により行うCVD処理装置。
【0033】
更に、成膜中に、該光学窓の表面を成膜雰囲気から保護するためのパージガス導入用のパージガス導入ポートを、該光学窓近傍に備えたCVD処理装置。
【0034】
更に、該光学窓保護用のパージガスを該成膜雰囲気中へ流入させずに排気させるための排気バランサーを該光学窓近傍に備えたCVD処理装置。
【0035】
該光学窓は該反応炉内壁に設けられた有底孔の底の部分に設けられているCVD処理装置。
【0036】
更に、クリーニングガス用の遠隔プラズマ放電室を備えたCVD処理装置。
【0037】
また、本発明の別の形態によれば、本発明は、I)活性化されたクリーニングガスにより、CVD反応炉内部に付着した汚染物質を除去する工程、II)該CVD反応炉の内壁に設けられた光学窓を通して該反応炉の内面に向けて単色性の光を照射し、その反射光を受光し、該反応路の内面に付着した汚染物質の除去状態を検出する工程、III)該検出結果により、クリーニング工程を制御する工程、を包含する、CVD処理装置のクリーニング方法を提供する。
【0038】
上記の形態は更に以下の態様を包含する。
【0039】
該単色性の光は、単色光であるクリーニング方法。
【0040】
該単色性の光は、レーザー光であるクリーニング方法。
【0041】
該単色性の光の照射と、反射光の受光の両方を同一光学窓を介して行うクリーニング方法。
【0042】
該内面は、反応ガスを炉内に導入するシャワーヘッドの面であるクリーニング方法。
【0043】
該内面は、基板を載置し加熱するサセプタに対向する該シャワーヘッドの周縁部近傍の平面であるクリーニング方法。
【0044】
該光学窓は、該内面から垂直方向に位置する該CVD反応炉の内壁に設けられているCVD処理装置。
【0045】
該内面は、該シャワーヘッドの周縁部近傍の側面であるクリーニング方法。
【0046】
該光学窓は、該内面から垂直方向に位置する該CVD反応炉の内壁に設けられているクリーニング方法。
【0047】
該光学窓は、サファイア製であるクリーニング方法。
【0048】
該汚染物質除去の検出を、該単色性の光の該内面からの反射光と該汚染物質表面からの反射光の干渉信号の収束により行うクリーニング方法。
【0049】
該汚染物質量の検出を、該単色性の光の該内面からの反射強度により行うクリーニング方法。
【0050】
該検出工程は、該反応炉内壁に設けられた有底孔の底の部分に設けられている該光学窓を通して実施するクリーニング方法。
【0051】
該活性化されたクリーニングガスは、遠隔プラズマ放電室で励起したクリーニングガスであるクリーニング方法。
【0052】
更に、本発明の別の形態よれば、本発明は、上記のいずれかのクリーニング方法を組み込んだ成膜方法であって、I)該CVD反応炉内で基板に対して成膜を実施する工程、II)該成膜中に、該光学窓の表面を成膜雰囲気から保護するためパージガスを該光学窓近傍に導入する工程、III)該成膜終了後に、上記いずれかのクリーニングを実施する工程、を包含する、CVD成膜方法を提供する。
【0053】
上記の形態は更に以下の態様を包含する。
【0054】
更に、該光学窓保護用のパージガスを該成膜中に成膜雰囲気中へ流入させずに排気する工程を包含する成膜方法。
【0055】
本発明は上記の形態、態様に制限されるものではなく、たとえば、ある態様におけるある要素は、他の態様におけるほかの要素と相互に置換することができ、あるいは、さらに組み合わせることもできる。また、本発明におけるある態様では、本明細書で説明された目的、効果の少なくとも一つが実現され得るが、本発明は、該目的、効果により制限されるものではなく、ある態様は、ここで説明されていない目的、効果を実現するものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
上記目的を達成するために本願発明に係るプラズマCVD装置は以下の手段から成る。
【0057】
反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去する工程において、反応炉内部に設けられた反応ガス励起用の電極に、反応炉外部から単色光を照射し、その反射光を反応炉外部に設けられた受光器で受光し、反射光の強度情報に基づき、反応炉内に付着した生成物の除去状態を検出し、基板処理シーケンスの進行を最適に制御する、ところの方法とその装置。
【0058】
以下、本願発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明はこれら実施例や図面に限定されるものではない。
【0059】
図1は、本発明のある実施例に係るプラズマCVD装置の模式断面図である。図面は説明のため、過度に簡略化、模式化されている。
【0060】
本願発明の実施例に係る半導体基板4上に薄膜を形成するためのプラズマCVD装置1は、反応炉2と、該反応炉2内にあって半導体基板4を載置するためのサセプタ3と、該サセプタ3に対向して設置され、半導体基板4に反応ガスを均一に噴射するためのシャワーヘッド5と、反応炉2内部を排気するための排気口20と、反応炉2から離れて配置され、配管14とバルブ12を介してシャワーヘッド5に連結された遠隔プラズマ放電室11とから成り、遠隔プラズマ放電室11は所定の周波数の高周波発振出力エネルギーによってクリーニングガスの活性種を生成することを特徴とする。
【0061】
反応炉2の側面には開口部8が設けられており、当該反応炉2はゲートバルブ6を介して半導体基板を搬入及び搬出するための搬送室29と接続されている。
【0062】
反応炉2内にあって、半導体基板4を載置するためのサセプタ3は陽極酸化されたアルミニウムまたはアルミニウム合金等から成り、プラズマ放電の一方の電極を画成するべく接地27されている。サセプタ3の内部には円環状の発熱体(図示せず)が埋設されており温度制御器(図示せず)によって半導体基板を所定の温度に制御する。サセプタ3は支持体25を介して当該サセプタ3を上下に移動するための駆動機構26に接続されている。
【0063】
半導体基板4を載置するためのサセプタ3は、陽極酸化されたアルミニウムまたはアルミニウム合金に限定されるものではなく、活性化されたクリーニングガスに対する耐性のある材質であればよく、セラミックヒータ等を使用してもよい。セラミックヒータは、セラミック基体と、その内部に埋設された抵抗発熱体とプラズマ放電の一方の電極を画成する金属体を有する。金属体は、プラズマ放電の電極となるべく接地されている。セラミック基体は、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の、耐食性に優れかつヒータとして十分な熱伝導率を有する材料で製作されている。抵抗発熱体としてタングステンを使用でき、プラズマ放電の電極である金属体として、タングステンまたはモリブデンを使用できる。
【0064】
反応炉2内にあって、上記サセプタ3と対向する位置にシャワーヘッド5が設置されている。該シャワーヘッド5には反応ガスを半導体基板4に噴出するための数千個の細孔が設けられている。当該シャワーヘッド5は整合回路9を介して高周波発振器10と電気的に接続されており、プラズマ放電のもう一方の電極を画成する。当該シャワーヘッド5から膜の形成に使用する反応ガスを導入するために反応ガス導入管15が、配管14に接続されている。該反応ガス導入管15は一つに限定されるものではなく、反応ガスの種類に応じた数だけ設けることが可能である。該反応ガス導入管15の一端は反応ガスを流し込むためのガス流入ポート19を画成し、他端はバルブ13を介して配管14と接続されている。反応ガスは配管14を介してガス流出ポート17から反応炉2内部に導入され、整流板32の開口部28を通過し、シャワーヘッド5に設けられた細孔から半導体基板4を含むプロセス空間に導入される。
【0065】
シャワーヘッドの少なくともサセプタ3に対向する面は陽極酸化されたアルミニウムまたはアルミニウム合金等の、活性化されたクリーニングガスに対する耐性のある材質で構成される。
【0066】
反応炉2の側壁には排気口20が設けられており、該排気口20は配管22を通じて真空排気ポンプ(図示せず)に接続されている。排気口20と真空ポンプとの途中には反応炉2内部の圧力を調節するためのコンダクタンス調整バルブ21が設けられており、該コンダクタンス調整バルブ21は外部の制御装置23に電気的に接続されている。
【0067】
また、好適には反応炉内部の圧力を測定するための圧力計24が設けられ、当該圧力計24は制御装置23に電気的に接続されている。
【0068】
反応炉2から離隔されて配置されているのが遠隔プラズマ放電室11である。本願発明は遠隔プラズマ放電室の存在しない実施例に対しても同様に適応することができるが、この実施例では遠隔プラズマ放電室を使用している。該遠隔プラズマ放電室11は陽極酸化処理されたアルミニウム合金等から成る。
【0069】
遠隔プラズマ放電室11は配管14を通じて反応炉2のガス流出ポート17に連結されている。配管14の途中にはバルブ12が設けられている。配管14は直線状構造体であり、その内径は少なくとも1.7センチメートルであるが、好ましくは2.5センチメートル以上である。また、バルブ12は、バルブ12が開の状態にあるときその内部の流路に流れを制限する構造体が存在しないことを特徴とし、その流路の内径は配管14の内径より極端に小さいことはなく、好ましくは同じ径とする。当該配管14は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成るが、耐食性に優れたステンレス鋼であってもよい。配管14の一端は、遠隔プラズマ放電室11へ接続され、他端はクリーニングガスをシャワーヘッド4へ導入するためのガス流出ポート17を画成する。さらにクリーニングガスを遠隔プラズマ放電室11へ導入するためのクリーニングガス流入ポート18が設けられている。クリーニングガスは、質量流量制御器(図示せず)により所定の流量に制御された後、クリーニングガス流入ポート18へ導かれ配管16から遠隔プラズマ室11へと至る。
【0070】
配管14とバルブ12は、反応ガスやクリーニングガスの表面吸着を防ぐ温度に加熱ヒータ(図示せず)により加熱されており、その温度は反応ガスやクリーニングガスの種類により任意に選択される。さらに、必要に応じて配管14から反応ガス導入管15、バルブ13、ガス流入ポート19まで加熱ヒータ(図示せず)により所定の温度に加熱される。
【0071】
ガス放出ポート17から反応炉2内に導入された反応ガスは、整流板32により流れを制御され、整流板32の複数の開口28からシャワーヘッド5の内部に導入される。
【0072】
整流板32は、厚さ3mmから20mm、好ましくは5mmから10mmのセラミックから製作されている。セラミックとして、単結晶Al2O3が好ましい。
【0073】
上記の実施形態においては、反応炉2内において半導体基板4上に薄膜の形成を行うために、シャワーヘッド5に高周波電力を印加する高周波発振器10が用いられている。例えば、13.56MHzから27.12MHzの範囲の周波数や、300kHz〜27.12MHzの範囲から選ばれた1つの周波数、または2つの周波数が合成された高周波電力が用いられる。それら高周波電力は、同軸ケーブルを介してインピーダンス自動整合器へと導かれ、高周波伝達部材を通してシャワーヘッド5へと接続されている。半導体基板4に膜形成を行うときには、バルブ13を開き膜形成に必要なガスをポート19から反応炉2内に導入し、高周波発振器10から出力される高周波電力により、半導体基板4を保持したサセプタ3とシャワーヘッド5の間に高周波プラズマ領域を形成する。
【0074】
半導体基板4上に膜を形成したことで反応炉2内に付着した反応生成物は、必要に応じてインサイチュクリーニングまたは遠隔プラズマクリーニングにより除去される。遠隔プラズマクリーニング法は、処理が終了した半導体基板4を、反応炉2から取り出した後、流入ポート16から導入されるクリーニングガスを遠隔プラズマ室11で活性化し、バルブ12を開き反応炉2内に導入することで達成される。遠隔プラズマ室11の動作は、コントローラ(図示せず)により自動制御されている。具体的には、ポート16に流れてくるクリーニングガスの流量は質量流量制御器(図示せず)により一定流量に制御され、遠隔プラズマ室11の高周波電力も予め定められた電力に制御される。
【0075】
クリーニングガスとしては、窒素、炭素若しくは塩素のフッ化物ガス、窒素若しくは酸素のフッ化物の混合ガス、またはそれらのガスと酸素若しくは不活性ガスの混合ガスを使用することが可能である。具体的には、NF3、ClF3、CF4、C2F6、C3F8と酸素の混合ガス、NF3と窒素の混合ガス、NF3と希ガスの混合ガス、ClF3と希ガスの混合ガスが使用可能である。希ガスとしてはヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、またはクリプトンが使用可能である。
【0076】
本実施例では、上記の構造にさらに、クリーニング終点を検出するためのメカニズムが備えられている。
【0077】
シャワーヘッド5に対向し、シャワーヘッド5の表面に単色光あるいは特定波長のレーザーなどの単色性の光を照射し、その反射光を受光できる光学装置102が、例えば、反応炉2の底部に設置されている。光学装置102はコンピュータ103により制御され、特定の波長の光をシャワーヘッド5の表面に照射することができる。シャワーヘッド5で反射された光は、光学装置102により受光されて、その強度情報を示す信号がコンピュータ103に送信される。光学装置102は、反応炉2の底部に設けられたサファイア製の窓部104を介して反応炉2に取り付けられている。窓部104は、活性化されたクリーニングガスに対して耐食性があり、単色性の光及びその反射光を透過する材質であればよく、サファイアの他にもフッ化マグネシウム等を使うことができる。
【0078】
単色性の光のビーム径は、ひとつの実施例では約10ミクロンから約50mm(20ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、0.5mm、1mm、10mm、その間の値を含む)である。また、集光部径(絞り)はひとつの実施例では約10ミクロンから約50ミクロン(好ましくは約10ミクロンから約20ミクロン)である。単色性の光としては、XeやHgの放電光等の単色光(例えば、波長300nm−1000nm)あるいはレーザーダイオード、He-Neレーザーの特定波長のレーザー光(例えば、波長500nm−1600nm)を、0.5mWから50mWの強度で使用することができる。
【0079】
ここでは、照射と受光を単一の窓部を介して単一の光学装置により実行しているが、照射と受光を別々の窓部を介して、別々の光学装置により実行してもよい。特に照射光の照射角、反射角(光軸)が反射面に対して直角でない場合は、照射窓と入射窓を別々に設ける必要がある。
【0080】
なお、光学装置としては、照射部に単色光発光学装置と、受光部にフォトダイオードを有する装置を使うことができる。
【0081】
図3に、ひとつの実施例における光学装置102の取り付け部の詳細を示す。
【0082】
反応炉2の底部405には、開口部を介してハウジング407が設けられている。ハウジング407の天部にはプレート400が設けられ、該プレート400は略中央部に小孔410を有する。ハウジング407の底部にはサファイア製窓406が設けられており、窓部406を介して光学装置102が接続されている。小孔410、窓部406および光学装置102は、単色性の光の照射と反射光の光軸が同一となるように位置合わせされている。
【0083】
ハウジング407は所定の容積の内部空間を有し、ハウジング407の側面には、アルゴンやヘリウムから成るパージガスを導入するためのガス導入ポート401が取り付けられている。ハウジング407の内部空間は小孔410を通じて反応炉2の内部と連通している。半導体基板への成膜処理中に、ガス導入ポート401からハウジング407の内部空間内へパージガスが導入される。それにより、ハウジング407の内部空間は効率的に反応炉2内部のプラズマ反応から保護され、窓部406への反応生成物の付着が防止される。半導体基板への成膜処理に対して汚染や膜特性不均一などの悪影響を与えないように、パージガスは排気バランサー402の開口部403から排気口20へと排気され、半導体基板の近傍へ流れることはない。
【0084】
パージガスの流量は、ひとつの実施例では、約100sccmから約500sccm、好ましくは約200sccmから約300sccmである。パージガスとしてはAr、He、N2等を使うことができる。小孔410の径はひとつの実施例では、約1mmから約20mm、好ましくは約3mmから8mmである。開口部403の幅はひとつの実施例では、約0.5mmから約5mm、好ましくは約1mmから2mmである。一方、上部の開口部404の幅はひとつの実施例では、約0.5mmから約5mm、好ましくは約1mmから2mmである。
【0085】
図4に示す他の実施例では、ハウジングが省略されており、サファイア製窓500を反応生成物から保護するために、パージガスがサファイア製窓500表面を流れるように、パージガス導入ポート501が反応炉2底部に直接接続されている。パージガスは質量流量制御装置(図示せず)により一定流量に制御された後、パージガス導入口501から反応炉2底部に導かれる。パージガスは、有効に反応生成物から窓部500を保護できるように、窓部500上面を流れるべく、その流れを排気バランサー402により制御されている。
【0086】
コンピュータ103は、光学装置102が受光した反射光からシャワーヘッド5表面の状態を判断することができる。具体的には、半導体基板4への膜形成時にシャワーヘッド5表面上の付着物の有無及び付着の程度を、クリーニングシーケンス中に検出することが可能である。実際の検出の実行例は、後述する。
【0087】
図5に、光学装置102’を反応炉2の側壁602に設置した他の実施例を示す。側壁602には開口部を介してハウジング601が設置されている。ハウジングの他端にはサファイア製窓600を介して光学装置102’が取り付けられている。光学装置102’の照射および受光の光軸は、シャワーヘッド5の側面603に対して垂直である。
【0088】
図1に戻って、本発明に係るプラズマCVD装置1の動作について説明する。動作は大きく2つに分かれる。すなわち、半導体基板4上への薄膜形成シーケンス及び反応炉内部のクリーニングシーケンスである。そこでまず、半導体基板4上へシリコン酸化膜を形成する場合を例にとって薄膜形成シーケンスについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
最初に、反応炉2の内部が排気口20を通じて外部の真空ポンプ(図示せず)により真空排気される。反応炉2内の圧力はコンダクタンス調整バルブ21の開き具合によって、例えば、約1Torrから約8Torrの範囲で調節可能である。
【0090】
次に、発熱体(図示せず)によって加熱されたサセプタ3は、温度制御装置(図示せず)によって半導体基板4を所定の温度(例えば、約300℃から約420℃)に制御する。
【0091】
その後、質量流量制御器(図示せず)で流量制御された反応ガスのTEOS、 Si(OC2H5)4、O2が、反応ガス流入ポート19から流入され、バルブ13を通過して配管14、ガス放出ポート17から反応炉2内に導入される。
【0092】
反応ガスは、整流板32で流れを制御された後、シャワーヘッド5の下面に形成された細孔から半導体基板4に向かって均一に噴射される。
【0093】
反応ガスであるSi(OC2H5)4及びO2の遠隔プラズマ放電室11への流入は、バルブ12を閉じることによって防止される。
【0094】
シャワーヘッド5には高周波発振器10によって13.56MHzの高周波電力または13.56MHz及び430kHzの混合電力が印加される。その結果、一方の電極である当該シャワーヘッド5と、もう一方の電極であるサセプタ3との間の空間にプラズマ反応領域が形成される。その領域内の反応ガスの分子がプラズマのエネルギーによって活性化され、半導体基板4上にシリコン酸化膜が形成される。
【0095】
なお、基板上に形成される薄膜はシリコン酸化膜に限らず、C-ドープシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコンカーバイド、N-ドープシリコンカーバイド、フッ素ドープシリコン酸化膜等であってもよく、これらの膜は成膜中に汚染物質として反応炉内壁にも付着するのでクリーニングの対象になる。
【0096】
以下、ひとつの実施例におけるクリーニングシーケンスについて説明するが、本発明はこのシーケンスに限定されるものではない。
【0097】
図1の装置において、CVD反応炉内で基板上に薄膜を形成する成膜シーケンスが連続して実行される間に、反応炉2の内壁、サセプタの表面または側面、及びシャワーヘッド5表面には不要な生成物が付着する。不所望な生成物は徐々に堆積して剥がれ落ち反応炉内を浮遊してパーティクル汚染を引き起こす。したがって、定期的に(例えば、薄膜形成処理1回終了ごとや、複数回の薄膜形成処理終了ごとに)反応炉2内部をクリーニングする必要がある。以下、反応炉2の内壁に付着したシリコン酸化物を除去するクリーニングシーケンスについて説明する。
【0098】
クリーニングガスであるNF3及びアルゴンの混合ガス等は、所定の流量に制御されてクリーニングガス流入ポート18に流入され、遠隔プラズマ放電室11に導入される。遠隔プラズマ放電室11の内部では、クリーニングガスに対して約300kHzから約500kHzの高周波出力が約1000Wから約5000Wの電力で供給される。このエネルギーによってクリーニングガスが一定の効率で解離・活性化され、フッ素活性種が生成される。
【0099】
生成されたフッ素活性種は配管14及びバルブ12を通じて整流板32、シャワーヘッド5へ導入される。シャワーヘッド5から反応炉2内部に均一に噴射されたフッ素活性種は、反応炉内壁等に付着した固体のシリコン酸化物と化学反応を起こし、固体の付着物を気体物質へと変化させる。その結果、反応炉内部の気体分子数は増加するが、圧力計24によって測定された反応炉2内の圧力に応答して、制御装置23がコンダクタンス調整バルブ21の開度をリアルタイムに制御することにより、反応炉内の圧力は常に一定に保たれる。配管14とバルブ12は、内部を流れたガスを速やかにパージできるように少なくとも100℃に加熱されている。
【0100】
シリコン酸化膜の成膜処理を、例えば、基板4枚に対して連続して行なった後、反応炉の圧力を調整し(例えば約100Paから約1000Pa)、クリーニングガスを遠隔プラズマ放電室11内に導入し高周波電力(例えば約300kHzから約500kHz、約1000Wから約5000W)を印加してフッ素活性種を生成し、反応炉2の内壁に付着した不要なシリコン酸化物を除去する(毎分約0.4ミクロンから約5ミクロンの速度)。
【0101】
経験的に最もクリーニングされる速度が遅い部位は、シャワーヘッド表面であることがわかっている。図1の装置では、シャワーヘッドの周縁部の平面を測定点としている。単色性の光の照射と反射光の光軸を同一とし(即ち、単一の光学装置と単一の窓部を採用している)、測定点へ光が垂直に入射しかつそこから垂直に反射するようにし、窓部をサセプタ近傍の反応炉の底部に設置している。シャワーヘッドの直径がサセプタの直径よりも大きい場合は、このような構造をとり得る。シャワーヘッドの直径がサセプタの直径と同等かまたは小さい場合は、図2に示すように、シャワーヘッドの側面に測定点を設け、窓部を反応炉の側壁に設置することができる。また、入射光と反射光の光軸を同一とせず、入射角と反射角を調整することで、シャワーヘッド表面を測定点とするが、窓部を反応炉の底部に設けずに、照射用の窓部と受光用の窓部を対向する側壁にそれぞれ設置することもできる。さらに、反応炉の構造に応じて、シャワーヘッド以外の内壁に測定点を設定してもよい。いずれの場合も、クリーニング速度の遅い壁面を測定点として選択するのが好ましい。
【0102】
また、単色光、あるいはレーザーを照射するシャワーヘッド5の部位は、鏡面状態に研磨した後、陽極酸化処理された面としたり、サファイア(例えば直径約1−10mm、厚さ約3−15mm)などのクリーニングガス、膜形成ガスにより腐食されない部材を取り付けたりすることができる。
【0103】
反応炉内の汚染物質の有無及び堆積程度は、反射光の強度の変化として観測されるか、あるいは、シャワーヘッド表面または反応炉内壁表面からの反射光と汚染物質層の表面からの反射光との干渉として観測され得る。強度変化と干渉の両方を使って終点を認定するのが好ましい。いずれの場合も、変化が、実質的に、近似的に、あるいは完全に観測されなくなった時点でクリーニング終点と認定することができる。なお、このような変化は、電気的信号として取り出すことが可能なので、クリーニングシーケンスを制御するコンピュータに入力することにより、自動的に制御することができる。
【0104】
例えば、反射光強度が一定値以下に達したとき(例えば、終点における強度を予め求めておき、その値+10%、5%、1%、0%に達したとき)を終点とするか、反射光強度の変化の微分量が一定値以下になり(例えば微分値がゼロ近傍あるいはゼロあるいは毎秒の変化率が5%以下、1%以下、0%になり)一定時間(例えば2秒、3秒、5秒、10秒)継続したときを終点とするか、更に反射光強度の積分量を考慮して一定値以下になったときを終点とするか、あるいは、干渉信号が発生しなくなってから(収束してから)一定時間(例えば5秒、10秒、20秒)経過したときを終点とすることができる。更には、干渉信号による反射光強度の周期的変化が検出されたことを測定開始の条件とし、その後反射光強度の測定を上記のように実施してもよい。
【0105】
なお、干渉信号の発生とその周期は、使用する光の波長、膜の屈折率、膜厚等に関係する。従って、対象となる膜で干渉信号が発生するかを予め検証しておくことが好ましく、使用する単色性の光を対象となる膜毎に選択しておくとよい。また、複数の波長の単色性の光を組み合わせて照射、反射するようにすることで、膜種や膜厚がある程度変わってもクリーニング終点の検出を可能とすることができる。
【0106】
実施例
図1に示したCVD装置を用いて成膜を実施した。まず、250sccm (1分間あたり0℃、1気圧の状態で250cc)のTEOS及び2300sccmの酸素を反応炉2に流し、反応炉2の圧力を400Paに保ちながら、シャワーヘッド5に高周波電力(13.56MHzを650W及び430kHzを500W)を印加して直径300mmシリコンウエハを載置したサセプタ3とシャワーヘッド5の間にプラズマ放電領域を形成した。その結果、40秒で500nmのシリコン酸化膜をシリコンウエハ上に、均一性±1.5%(シリコンウエハ上に成長したシリコン酸化膜の膜厚を49点測定し、それら測定値の最大値と最小値の差を、全測定値の平均値の1/2で除してパーセント表記した値)で形成できた。
【0107】
薄膜形成処理の終了とともにバルブ13が閉じられ、同時にゲートバルブ6が開かれた。処理済みの半導体基板4(シリコンウエハ)は、開口部8を通じて自動搬送ロボット30のブレード31により隣の搬送室29へ搬出された。反応炉2が真空排気された後、搬送室からは未処理の半導体基板が搬入されゲートバルブ6が閉じられた。そして再び上記シーケンスが繰り返された(ここではウエハ4枚を処理した)。
【0108】
成膜シーケンスが終了した後、反応炉2内部をクリーニングするクリーニングシーケンスに移行した。
【0109】
上記500nmのシリコン酸化膜をウエハ4枚に対して連続して行なった後、クリーニングガスとしてNF3を1.2slm及びArを5slm使用し、反応炉2の圧力を650Paに設定し、遠隔プラズマ放電室11内に400kHzの高周波電力を2700W印加してフッ素活性種を生成した。
【0110】
生成されたフッ素活性種は、配管14及びバルブ12を通じて整流板32及びシャワーヘッド5へ導入された。シャワーヘッド5から反応炉2内部に均一に噴射されたフッ素活性種は、反応炉内壁等に付着した固体のシリコン酸化物と化学反応を起こし、固体の付着物を気体物質へと変化させた。その結果、反応炉内部の気体分子数は増加するが、圧力計24によって測定された反応炉2内の圧力に応答して、制御装置23がコンダクタンス調整バルブ21の開度をリアルタイムに制御することにより、反応炉内の圧力は常に一定に保たれた。配管14とバルブ12は、内部を流れたガスを速やかにパージできるように、少なくとも100℃に加熱された。その結果、反応炉2の内壁に付着した不要なシリコン酸化物を毎分1.36ミクロンの速度で除去できた。
【0111】
図6に、クリーニング時にシャワーヘッド5から反射された690nmレーザーの強度を示す。活性化したクリーニングガスを反応炉2内に導入し、反応炉2内部をクリーニングする際に、光学装置102から690nmのレーザーをシャワーヘッド5の周縁部表面に照射し、その反射光を光学装置102で受光した。なお、クリーニング中は、サファイア窓部406を保護するパージガス(Ar)を小孔401から約250sccm流した。レーザー光は、シャワーヘッド5表面に付着したシリコン酸化膜の表面で反射した光と、シャワーヘッド5表面で反射した光が干渉し、図6に示す干渉信号300として検出された(検出は測定点301から開始)。横軸はクリーニング時間(秒)であり、縦軸は相対強度(最大反射強度を1とした)である。シャワーヘッド5表面に付着したシリコン酸化膜の厚みが減少していくと共に干渉信号は周期的に変化した。シャワーヘッド5表面に付着したシリコン酸化膜が無くなると、反射光同士の干渉が生じなくなるとともに、反射光自体の強度も低下し、303のレベルで安定した。
【0112】
このことより、反射光の強度が303のレベルに達した時点302をクリーニング終点として認識することができた。
【0113】
以上説明したように、本発明の一つ以上の実施例によれば、遠隔プラズマ放電室を用いた反応炉クリーニングにおいて、クリーニング時のイオン衝撃によるCVD用電極の劣化を防止することと、確実なクリーニング完了を検出することが同時に可能になる。
【0114】
また、本発明の一つ以上の実施例によれば、最もクリーニング速度が遅いシャワーヘッド周縁部の付着物の有無を直接検出することが可能になり、完全なクリーニングの達成と、速やかな次工程への進行が可能になったことで安定した装置の運用と高い生産性を確保できるようになる。
【0115】
さらに、本発明の一つ以上の実施例によれば、検出されたクリーニング完了信号により、クリーニングシーケンスの制御が可能となり、このクリーニング完了信号が検出されない時点で、クリーニングシーケンスを終了するように記憶されたシーケンスを実行しても、(1)クリーニングが完了していないと、CVD装置が認識し、装置の運用を停止したり、アラームを発したりできるようになる、(2)クリーニング完了信号を、装置のコントローラに入力することで、クリーニングシーケンスを制御できるようになる。
【0116】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はそれら実施例に限定されるものではなく、次に示す実施例も包含する。
【0117】
1)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去しているステップにおいて、反応炉内部に設けられた反応ガス励起用の電極に、高周波電力を印加することで得られた反応炉内部の電極に生じる電圧情報に基づき、基板処理シーケンスの進行を制御する、ところの装置。
【0118】
2)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去しているステップにおいて、
反応炉内部表面に照射されたレーザーの反射強度を計測するところの装置。
【0119】
3)上記2)に記載の装置において、
レーザーの反射強度の計測情報に基づき、クリーニングステップの完了判断を行なうことを特徴とするところの装置。
【0120】
4)上記3)に記載の装置において、
レーザーが照射される反応炉内部表面は、反応炉内部に設けられた反応ガス励起用の電極表面であって、被クリーニング対象物の除去速度が最も遅い部位であるところの装置。
【0121】
5)上記3)に記載の装置において、
レーザーが照射される反応炉内部表面は、反応炉内部に設けられた反応ガス励起用の電極表面であって、基板に対向して配置されるシャワーヘッド表面であるかまたは反応炉内の除去速度が再現性のある任意の部位であるところの装置。
【0122】
6)上記3)に記載の装置において、
レーザーが照射される反応炉内部表面は、基板に対向して配置されるシャワーヘッドの外周部表面であるところの装置。
【0123】
7)上記6)に記載の装置において、
シャワーヘッドの外周部表面は、シャワーヘッドの周囲に設置されるセラミックスの表面であるところの装置。
【0124】
8)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去しているクリーニングステップにおいて、
反応炉内部表面に照射された反射する単色光を計測するところの装置。
【0125】
9)上記8)に記載の装置において
クリーニングステップにおいて、膜形成処理に伴い反応炉内部表面に形成された膜に単色光を照射し、
その反射光を検出することによって、反応炉内部表面に形成された膜の除去状態を確認するところの装置。
【0126】
10)上記9)に記載の装置において
クリーニングステップにおいて、膜形成処理に伴い反応炉内部表面に形成された膜に単色光を照射し、
その反射光を検出することによって、反応炉内部表面に形成された膜の除去状態を確認する工程において、
膜の最表面から反射される単色光と、反応炉内部表面から反射される単色光との干渉がなくなった時点を検出し、クリーニングステップの時間を決定することを特徴とする装置。
【0127】
11)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
反応炉内で膜形成を実行される基板に対向して設置されたシャワーヘッドの周縁部と、
単色光を発する反応炉外に設けられた単色光放射装置と、
単色光を受光する単色光受光学装置と、
反応炉に設置された単色光通過部材と、
を有し、単色光放射装置から発する単色光は、単色光通過部材を介して、シャワーヘッド周縁部に照射され、
シャワーヘッド周縁部から反射する単色光は、単色光通過部材を介して、単色光受光部に入射することを特徴とする基板処理装置。
【0128】
12)単色光通過部材は、シャワーヘッドの側面に対向した反応炉壁面に設置されることを特徴とする基板処理装置。
【0129】
13)単色光通過部材は、シャワーヘッドの側面に対向した反応炉壁面に設置されることを特徴とする基板処理装置。
【0130】
14)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去しているクリーニングステップにおいて、
反応炉内部表面に照射されたレーザー反射強度の計測情報に基づき、クリーニングステップの完了判断を行うことを特徴とする基板処理装置の使用方法。
【0131】
15)反応炉と、反応炉から遠隔配置された遠隔プラズマ放電室と、反応炉と遠隔プラズマ放電室を連結する配管とを有し、遠隔プラズマ放電室のプラズマ放電エネルギーによりクリーニングガスを活性化し、配管を通じて活性化されたクリーニングガスを反応炉内に導入し、膜形成処理に伴い反応炉内に付着した固体物質を気体物質へと変化させ、反応炉内をクリーニングする基板処理装置において、
活性化されたクリーニングガスにより、反応炉内部に付着した生成物を除去しているクリーニングステップにおいて、
反応炉内部表面に照射された反射する単色光を計測し、基板処理シーケンスを制御する方法。
【0132】
16)上記15)に記載の装置において、
クリーニングステップにおいて、膜形成処理に伴い反応炉内部表面に形成された膜に単色光を照射し、
その反射光を検出することによって、反応炉内部表面に形成された膜の除去状態を確認する方法。
【0133】
17)上記16)に記載の装置において
クリーニングステップにおいて、膜形成処理に伴い反応炉内部表面に形成された膜に単色光を照射し、
その反射光を検出することによって、反応炉内部表面に形成された膜の除去状態を確認する工程において、
膜の最表面から反射される単色光と、反応炉内部表面から反射される単色光との干渉がなくなった時点を検出し、クリーニングステップの時間を決定することを特徴とする基板処理装置の使用方法。
【0134】
なお、上記は、遠隔プラズマクリーニングについての実施例であるが、上記実施例は同様にインサイチュプラズマクリーニングにも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、本発明のひとつの実施例に係るプラズマCVD装置を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例に係るプラズマCVD装置を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明のひとつの実施例に係る光学装置を示す模式断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例に係る光学装置を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明の更に他の実施例に係る光学装置を示す模式断面図である。
【図6】図6は、本発明のひとつの実施例に係るクリーニング終点検出例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉内にクリーニングガスを導入することでセルフクリーニングが可能な半導体処理装置において、
前記反応炉の壁面に設けられた光学窓と、
前記光学窓を通して前記反応炉の内面に向けて単色性の光を照射し、その反射光を受光し、前記内面に付着した物質の除去状態を検出する光学装置と、
を含むことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項2】
前記単色性の光は、単色光である、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項3】
前記単色性の光は、レーザー光である、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項4】
前記光学装置は単一の装置であり、単色性の光の照射と、反射光の受光の両方を実行する、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項5】
前記クリーニングガスはシャワーヘッドにより導入され、前記内面は前記シャワーヘッドの表面の一部である、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項6】
前記シャワーヘッドの表面の一部は、前記シャワーヘッドの底面の周縁部近傍である、請求項5に記載の半導体処理装置。
【請求項7】
前記光学窓は、前記シャワーヘッドの底面と対向する前記反応炉の壁面に設けられている、請求項6に記載の半導体処理装置。
【請求項8】
前記シャワーヘッドの表面の一部は、前記シャワーヘッドの底面の周縁部近傍の側面である、請求項5に記載の半導体処理装置。
【請求項9】
前記光学窓は、前記シャワーヘッドの側面と対向する前記反応炉の壁面に設けられている、請求項8に記載の半導体処理装置。
【請求項10】
前記光学窓は、サファイアから成る、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項11】
前記光学装置は、単色性の光の前記内面からの反射光と付着物質の表面からの反射光との干渉信号の収束より、クリーニング終了点を検出する、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項12】
前記光学装置は、単色性の光の前記内面からの反射強度から、付着物質のクリーニング終了点を検出する、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項13】
更に、成膜中に前記光学窓の表面を成膜雰囲気から保護するために、パージガスを導入するための、前記光学窓の近傍に設けられたパージガス導入ポートを含む、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項14】
更に、前記パージガスの成膜雰囲気内への流入を防止するべく、前記パージガスを排気するための、前記光学窓の近傍に設けられた排気バランサーを含む、請求項13に記載の半導体処理装置。
【請求項15】
前記光学窓は、前記反応炉の壁面に設置されたハウジングの底部に取り付けられている、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項16】
更に、クリーニングガスを活性化するための遠隔プラズマ放電室を含む、請求項1に記載の半導体処理装置。
【請求項17】
請求項1に記載の半導体処理装置を用いて反応炉をクリーニングする方法であって、
クリーニングガスを反応炉内に導入し、前記反応炉の内面に付着した物質を除去する工程と、
前記反応炉の壁面に設けられた光学窓を通して前記反応炉の内面に向けて単色性の光を照射する工程と、
前記単色性の光の前記反応炉の内面からの反射光を受光する工程と、
前記反応炉の内面に付着した物質の除去状態を検出する工程と、
から成り、
クリーニングシーケンスの終了時点を的確に判断することができることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記単色性の光は、単色光である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記単色性の光は、レーザー光である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記単色性の光を照射する工程及び前記反射光を受光する工程は、同一の前記光学窓を介して実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記内面は、反応ガスを前記反応炉内に導入するためのシャワーヘッドの表面の一部である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記シャワーヘッドの表面の一部は、前記シャワーヘッドの底面の周縁部近傍である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光学窓は、前記シャワーヘッドの底面と対向する前記反応炉の壁面に設けられている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記シャワーヘッドの表面一部は、前記シャワーヘッドの底面の周縁部近傍の側面である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記光学窓は、前記シャワーヘッドの側面と対向する前記反応炉の壁面に設けられている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記光学窓は、サファイアから成る、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記付着した物質の除去状態を検出する工程は、前記単色性の光の前記内面からの反射光と前記汚染物質の表面からの反射光との干渉信号の収束を検出することにより実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記付着した物質の除去状態を検出する工程は、前記単色性の光の前記内面からの反射強度を検出することにより実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記付着した物質の除去状態を検出する工程は、前記反応炉の壁面に設置されたハウジングの底部に取り付けられた光学窓を通して実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記クリーニングガスは、遠隔プラズマ放電室で活性化される、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の半導体処理装置を使って連続して成膜処理を実行するための方法であって、
半導体基板上に薄膜を形成する工程と、
成膜中に、光学窓の表面を成膜雰囲気から保護するために、パージガスを前記光学窓の近傍に流す工程と、
少なくとも1枚の半導体基板に対する成膜処理工程の終了後に、請求項17に記載のクリーニング処理を実行する工程と、
上記工程を繰り返す工程と、
から成る方法。
【請求項32】
更に、前記光学窓の保護用のパージガスが成膜中に成膜雰囲気内に流入するのを防止するべく、前記パージガスを排気する工程を含む、請求項31に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−287228(P2006−287228A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96444(P2006−96444)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】