説明

バンクの形成方法、膜パターンの形成方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器

【課題】バンクの撥液化処理に起因する不都合を解消したバンクの形成方法と、膜パター
ンの形成方法、半導体装置の製造方法、電気光学装置、電子機器を提供する。
【解決手段】機能液からなる膜パターンの形成領域を区画するバンクの形成方法である。
基板P上にレジスト液を塗布し乾燥してレジストからなるバンク膜31を形成する工程と
、バンク膜31に撥液化処理ガスとプラズマとを用いた撥液化処理を行う工程と、撥液化
処理後のバンク膜31に対し、マスクMを用いて選択的に紫外線を照射し、撥液性を低下
させる工程と、撥液化処理後のバンク膜31に対し、マスクMを用いて選択的に露光する
工程と、撥液性を低下させる工程と露光する工程の後、バンク膜31を現像してパターニ
ングし、バンクを形成する工程と、を備えている。撥液性を低下させる工程と露光する工
程とを、同じマスクMを用いて連続してあるいは同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンクの形成方法、膜パターンの形成方法、半導体装置、電気光学装置、及
び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導体からなる薄膜(膜パターン)が配置された回路配線と、回路配線を覆う絶縁膜など
の薄膜と、半導体からなる薄膜とが基板上に積層されてなる半導体装置が、従来より知ら
れている。このような半導体装置における薄膜の効率的な形成方法として、特許文献1に
記載されているような、薄膜材料などを分散質として含む機能液の液滴を液滴吐出ヘッド
から吐出し、着弾した機能液を乾燥させて分散媒を除去し、薄膜を形成する、液滴吐出法
(インクジェット法)が知られている。
【0003】
液滴吐出法で膜パターンとなる薄膜を形成する場合、通常は膜パターンの形成領域を区
画するバンクを形成し、このバンクにより区画され凹部となった膜パターンの形成領域に
向けて機能液を吐出する。そして、凹部内の形成領域上に着弾した機能液を乾燥させ、薄
膜を形成することにより、膜パターンを形成する。
【0004】
ところで、凹部内に着弾するよう吐出された機能液の液滴は、全て凹部内に入ることが
望ましいものの、一部はバンクの上面にかかることがある。その場合に、この液滴がバン
クの上面に付着することなく、凹部内に流れ込むようにするためには、バンクの上面を、
機能液に対して撥液性にしておく必要がある。ここで、バンク上面の撥液化処理は、通常
、レジスト材からなるバンク材を最終的なバンク形状にパターニングした後に、これを撥
液化処理することで行う。
【0005】
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような方法では、前記凹部の内側面となるバンクの内側面にも撥液性が付
与されてしまい、バンクの上面にかかった液滴の、凹部内への流れ込みが抑えられてしま
う。
このような課題を解決する手法として、バンク材が最終的なバンク形状にパターニング
される前のレジスト膜の状態にあるときに、その表面を撥液化処理し、その後パターニン
グしてバンク形状とすることが考えられる。
【0007】
ところが、その場合には、バンク材を露光し現像してパターニングする際、バンク材の
表面が撥液化されていることにより、現像され除去される部分に現像液が十分浸透せず、
したがって現像後に得られるバンクのパターン精度が低下し、このバンクから得られる膜
パターンについても十分な精度が得られなくなってしまうことがある。また、レジストの
一部が現像により除去されず、残渣として凹部内に残ってしまうこともある。
特に、形成するバンクが二層目以降の上層配線パターン形成用のものであり、この上層
配線パターンと下層の導電部との間にコンタクトホールを形成して導通させようとした場
合、上層配線パターンの形成領域に前記した残渣が残っていると、ここにコンタクトホー
ルを良好に形成することができず、これによってコンタクト不良となってしまうこともあ
る。
【0008】
また、前述したように液滴吐出法は、薄膜を効率的に形成するのに好適な方法であるこ
とから、この液滴吐出法を用いる前提としてバンクを形成する場合、このバンクの形成に
も、当然ながら生産性の効率化が求められている。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、バンクの撥液化
処理に起因する不都合を、生産性を損なうことなく解消したバンクの形成方法と、これに
よって得られたバンクを用いてなる膜パターンの形成方法、さらには半導体装置の製造方
法、電気光学装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明のバンクの形成方法は、機能液からなる膜パターンの形
成領域を区画するバンクの形成方法であって、基板上にレジスト液を塗布し乾燥してレジ
ストからなるバンク膜を形成する工程と、バンク膜に撥液化処理ガスとプラズマとを用い
た撥液化処理を行う工程と、撥液化処理後のバンク膜に対し、マスクを用いて選択的に紫
外線を照射し、撥液性を低下させる工程と、撥液化処理後のバンク膜に対し、マスクを用
いて選択的に露光する工程と、撥液性を低下させる工程と露光する工程の後、バンク膜を
現像してパターニングし、バンクを形成する工程と、を備え、撥液性を低下させる工程と
露光する工程とを、同じマスクを用いて連続してあるいは同時に行うことを特徴としてい
る。
【0011】
このバンクの形成方法によれば、撥液化処理後のバンク膜に対し、マスクを用いて選択
的に紫外線を照射し、撥液性を低下させる工程と、撥液化処理後のバンク膜に対し、マス
クを用いて選択的に露光する工程と、前記の撥液性を低下させる工程と露光する工程の後
、前記バンク膜を現像してパターニングし、バンクを形成する工程と、を備えているので
、現像前に所望箇所、すなわち現像によって除去する箇所の撥液性を紫外線照射によって
低下させておくことにより、現像時、除去する箇所の面に現像液が容易に濡れてここに浸
透するようになり、したがって除去する箇所が現像によって確実に除去されるようになる
。よって、この形成方法によって得られたバンクのパターン精度が良好になり、凹部内に
残渣が残ってしまうといった不都合も防止される。
また、前記撥液性を低下させる工程と露光する工程とを、同じマスクを用いて連続して
あるいは同時に行うので、二つの工程間においてマスクの着脱や交換を行う必要がなく、
したがって生産性の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記バンクの形成方法においては、撥液性を低下させる工程と露光する工程とを
、同じマスクを用いて連続して行うとき、撥液性を低下させる工程の後に、露光する工程
を行うのが好ましい。
撥液性を低下させる工程を、露光する工程の前に行う方が、露光する工程の後に行うと
きと比べて、さらに撥液性を向上することができる。
【0013】
また、前記バンクの形成方法においては、レジスト材料液として、ポリシラザン、ポリ
シランまたはポリシロキサンのいずれかと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかと
、を含有し、ポジ型レジストとして機能する感光性の材料を用いるのが好ましい。
このような感光性の材料をレジスト材料液として用いれば、これから得られるバンクが
ポリシロキサンを骨格とする無機質のものとなるので、有機材料からなる有機質のバンク
に比べて耐熱性が高くなり、特に金属微粒子を焼成して配線パターンを形成する場合など
に好適となる。
【0014】
本発明のバンクの形成方法においては、レジスト材料液として、有機材料と、光酸発生
剤または光塩基発生剤のいずれかと、を含有し、ポジ型レジストとして機能する感光性の
材料を用いるのが好ましい。
耐熱性が必要とされない場合に、このような感光性の材料をレジスト材料液として用い
れば、これから得られるバンクが有機質のバンクとなるので、無機材料からなる無機質の
バンクに比べて、膜厚の厚いバンクを形成することができる。特に基板上の素子や配線な
どの構造物からなる凹凸をバンクで埋めて上面を平坦化する場合などに好適となる。
【0015】
本発明の膜パターンの形成方法は、前記のバンクの形成方法によって得られたバンクを
用い、該バンクに区画された膜パターンの形成領域に機能液を配し、乾燥して膜パターン
を形成することを特徴としている。
この膜パターンの形成方法によれば、前述したようにパターン精度が良好なバンクを用
いて膜パターンを形成するので、得られる膜パターンも良好なパターン精度を有するもの
となる。
【0016】
本発明の半導体装置は、前記の膜パターンの形成方法によって得られた膜パターンを有
することを特徴としている。
この半導体装置によれば、前述したように良好なパターン精度を有する膜パターンを有
しているので、この膜パターンによって得られる特性が良好なものとなる。
【0017】
本発明の半導体装置は、コプレナー構造を有するトランジスタを成し、膜パターンは、
ソース電極またはドレイン電極を成し、レジスト材料液として、有機材料を含有する材料
を用いることが望ましい。
この半導体装置によれば、コプレナー構造を有していることから、半導体の膜を形成し
た後、ゲート電極とソース電極とドレイン電極とを形成することとなる。ソース電極とド
レイン電極とを形成するとき、バンクが高温に曝されることがないことから、ソース電極
とドレイン電極とを形成するためのバンクは有機質のバンクでもよい。従って、バンクの
材料に有機材料を用いれば、無機材料を用いた場合と比較して、バンクの膜厚を厚くする
ことができる為、ソース電極、ドレイン電極の膜パターン形成のためのバンク形成におい
て、基板上の素子や配線などの構造物をバンクで埋めて上面を平坦化することがしやすく
なる。
【0018】
本発明の電気光学装置は、前記の半導体装置を備えることを特徴としている。
この電気光学装置によれば、特性が良好な半導体装置を備えているので、この電気光学
装置自体も特性が良好なものとなる。
【0019】
本発明の電子機器は、前記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
この電子機器によれば、特性が良好な電気光学装置を備えているので、この電子機器自
体も特性が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、参照する各図において、図面上
で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
(第1の実施形態)
まず、本発明の膜パターンの形成方法を、液滴吐出法によって液滴吐出ヘッドの吐出ノ
ズルから導電性微粒子を含有する配線パターン(膜パターン)用インク(機能液)を液滴
状に吐出し、配線パターンに対応して基板上に形成されたバンクの凹部内、すなわちバン
クに区画された領域に、配線パターン(膜パターン)を形成するようにした場合の実施形
態について説明する。
【0021】
ここで、前記の配線パターン用インク(機能液)は、導電性微粒子を分散媒に分散した
分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅
、アルミニウム、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、パラジウム、タングステン及
びニッケルのうちの少なくとも一種を含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに
導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これら導電性微粒子については、
分散性を向上するため、表面に有機物などをコーティングして用いることもできる。導電
性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大き
いと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1n
mより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜
中の有機物の割合が過多となる。
【0022】
分散媒としては、前記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれ
ば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデ
カン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナ
フタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、ま
たエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレ
ングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレ
ングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−
ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテ
ル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピ
ロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性
化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法
への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好
ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0023】
前記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲
内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N
/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやす
くなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐
出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、前記分散液には、
基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系など
の表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板へ
の濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役
立つものである。前記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステ
ル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0024】
前記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴
吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には
ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大き
い場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0025】
配線パターンを形成するための基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラ
スチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素
材基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたも
のを用いることもできる。
【0026】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換
式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極
で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるもので
ある。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズ
ル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐
出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散
して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)
がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形するこ
とによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し
出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0027】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に
気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるも
のである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料
のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。ま
た、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式など
の技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置
に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出
される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0028】
本実施形態では、このような液滴吐出をなす装置として、ピエゾ素子(圧電素子)を用
いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
図1は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5
と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15
とを備えている。
ステージ7は、この液滴吐出装置IJにより液体材料(配線パターン用インク)を配置
される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を
備えている。
【0029】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッド
であり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド
1の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ
7に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが
吐出されるようになっている。
【0030】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。このX軸方向駆動モ
ータ2は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動
信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、
液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は
、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等で
あり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向
に移動する。
【0031】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、
X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を
、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給
する。
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニン
グ機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動
モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリ
ーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P
上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の
投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0032】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走
査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に配列された複数の吐出
ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0033】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣
接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タン
クを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路
24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエ
ゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料
が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み
量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪
み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成
に影響を与えにくいという利点を有する。
【0034】
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて製造される半導体装置の一例であ
る、薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))について説明する。図3は、
TFTアレイ基板のTFT1個を含む一部分の概略構成を示した平面図であり、図4(a
)はTFTの断面図、図4(b)は、ゲート配線とソース配線とが平面的に交差する部分
の断面図である。
【0035】
図3に示すように、TFT30を有するTFTアレイ基板10上には、ゲート配線12
と、ソース配線16と、ドレイン電極14と、ドレイン電極14に電気的に接続する画素
電極19とを備えている。ゲート配線12はX軸方向に延びるように形成され、その一部
がY軸方向に延びるように形成されている。そして、Y軸方向に伸びるゲート配線12の
一部がゲート電極11として用いられている。なお、ゲート電極11の幅はゲート配線1
2の幅よりも狭くなっている。そして、このゲート配線12が、本実施形態の配線パター
ン形成方法で形成されている。また、Y軸方向に伸びるように形成されたソース配線16
の一部は幅広に形成されており、このソース配線16の一部がソース電極17として用い
られている。
【0036】
図4(a)、(b)に示すように、ゲート配線12及びゲート電極11は、基板Pの上
に設けられたバンクBの間に形成されている。ゲート配線12及びゲート電極11並びに
バンクBは、絶縁膜28に覆われており、絶縁膜28の上に、半導体層である活性層63
と、ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14と、バンクB1とが形成さ
れている。活性層63は、概ねゲート電極11に対向する位置に設けられており、活性層
63のゲート電極11に対向する部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、
接合層64a及び64bが積層されており、ソース電極17は接合層64aを介して、ド
レイン電極14は接合層64bを介して、活性層63と接合されている。ソース電極17
及び接合層64aと、ドレイン電極14及び接合層64bとは、活性層63上に設けられ
たバンク67によって、互いに絶縁されている。ゲート配線12は、絶縁膜28によって
、ソース配線16と絶縁されており、ゲート電極11は、絶縁膜28によって、ソース電
極17及びドレイン電極14と絶縁されている。ソース配線16と、ソース電極17と、
ドレイン電極14とは、絶縁膜29で覆われている。絶縁膜29のドレイン電極14を覆
う部分には、コンタクトホールが形成されており、コンタクトホールを介してドレイン電
極14と接続する画素電極19が、絶縁膜29の上面に形成されている。
【0037】
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて、TFT30のゲート配線の配線
パターンを形成する過程について説明する。
本実施形態では、前述したように、配線パターンに対応するバンクをガラス基板上に形
成するが、これに先立ち、基板に対して親液化処理を施す。この親液化処理は、後述する
インク(機能液)の吐出による配置において、吐出されたインクに対する基板Pの濡れ性
を良好にしておくためのもので、例えば図5(a)に示すように、基板Pの表面にTiO
2等の親液性(親水性)の高い膜32を形成する。または、HMDS(ヘキサメチルジシ
ラザン)を蒸気状にして基板Pの被処理面に付着させ(HMDS処理)、親液性の高い膜
32を形成するようにしてもよい。また、基板Pの表面を粗面化することにより、この基
板Pの表面を親液化してもよい。
【0038】
(バンク形成工程)
このようにして親液化処理を行ったら、この基板P上にバンクを形成する。
バンクは、仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はリソグラフィ法や印刷
法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、まず
、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の
方法で、図5(a)に示すように、基板P上に所望のバンク高さに合わせてバンクの形成
材料となるレジスト液、例えばポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれ
かと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかと、を含有し、ポジ型レジストとして機
能する感光性の材料を塗布し、バンク膜31を形成する。本実施形態では、感光性の材料
としてポリシラザン液を用いる。
【0039】
ここで、バンクの形成材料となるポリシラザン液(レジスト液)としては、ポリシラザ
ンを主成分とするもので、特にポリシラザンと光酸発生剤とを含む感光性ポリシラザン液
が好適に用いられ、本実施形態ではこの感光性ポリシラザン液を用いるものとする。この
感光性ポリシラザン液は、ポジ型レジストとして機能するようになるもので、露光処理と
現像処理とによって直接パターニングすることができるものである。なお、このような感
光性ポリシラザンとしては、例えば特開2002−72504号公報に記載された感光性
ポリシラザンを例示することができる。また、この感光性ポリシラザン中に含有される光
酸発生剤についても、特開2002−72504号公報に記載されたものが用いられる。
なお、感光性ポリシラザン液等の感光性の材料については、光酸発生剤に代えて、光塩基
発生剤を含有したものであってもよい。
【0040】
このようなポリシラザンは、例えばポリシラザンが以下の化学式(1)に示すポリメチ
ルシラザンである場合、後述するように加湿処理を行うことで化学式(2)または化学式
(3)に示すように一部加水分解し、さらに400℃未満の加熱処理を行うことにより、
化学式(4)〜化学式(6)に示すように縮合してポリメチルシロキサン[−(SiCH
31.5)n−]となる。なお、化学式(2)〜化学式(6)においては、反応機構を説明
するため、化学式を簡略化して化合物中の基本構成単位(繰り返し単位)のみを示してい
る。
【0041】
このようにして形成されるポリメチルシロキサンは、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖
にメチル基を有したものとなる。したがって、その主成分となる骨格が無機質であること
により、熱処理に対し高い耐性を有するものとなることから、バンク材料として好適なも
のとなる。
・化学式(1);−(SiCH3(NH)1.5)n−
・化学式(2);SiCH3(NH)1.5+H2O
→SiCH3(NH)(OH)+0.5NH3
・化学式(3);SiCH3(NH)1.5+2H2
→SiCH3(NH)0.5(OH)2+NH3
・化学式(4);SiCH3(NH)(OH)+SiCH3(NH)(OH)+H2
→2SiCH31.5+2NH3
・化学式(5);SiCH3(NH)(OH)+SiCH3(NH)0.5(OH)2
→2SiCH3O1.5+1.5NH3
・化学式(6);SiCH3(NH)0.5(OH)2+SiCH3(NH)0.5(OH)2
→2SiCH31.5+NH3+H2
【0042】
続いて、得られたバンク膜31を、例えばホットプレート上にて110℃で3分程度プ
レベークする。
次いで、図5(b)に示すように、バンク膜31に対して撥液化処理を行い、その表面
に撥液性を付与する。撥液化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を撥
液化処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)が好適に採用される。CF4
プラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素
ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5
〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、撥液化処理ガスとし
ては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SF6
やSF5CF3などのガスを用いることもできる。
【0043】
図6はCF4プラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図で
ある。図6に示すプラズマ処理装置は、交流電源41に接続された電極42と、接地電極
である試料テーブル40とを備えて構成されたものである。試料テーブル40は、試料で
ある基板Pを支持しつつ、Y軸方向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動
方向と直交するX軸方向に延在する2本の平行な放電発生部44,44が突設されている
とともに、放電発生部44を囲むようにして誘電体部材45が設けられている。誘電体部
材45は、放電発生部44の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材45を
含む電極42の下面は略平面状となっており、放電発生部44及び誘電体部材45と基板
Pとの間には僅かな空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極4
2の中央には、X軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口
46が設けられている。ガス噴出口46は、電極内部のガス通路47及び中間チャンバ4
8を介してガス導入口49に接続している。
【0044】
ガス通路47を通ってガス噴出口46から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、前記
空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材45の前端
及び後端から外部に排気される。これと同時に、交流電源41から電極42に所定の電圧
が印加され、放電発生部44,44と試料テーブル40との間で気体放電が発生する。そ
して、この気体放電により生成されるプラズマで前記所定ガスの励起活性種が生成され、
放電領域を通過する基板Pの上に形成されたバンク膜31の表面全体が連続的に処理され
る。
【0045】
前記所定ガスは、処理ガスである四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)と、大気圧近
傍の圧力下で放電を容易に開始させかつ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴ
ン(Ar)等の希ガスや窒素(N2)等の不活性ガスとを混合したものである。
このような撥液化処理を行うと、バンク膜31を構成するポリメチルシラザンのメチル
基中にフッ素基が導入される。これにより、機能液に対する高い撥液性がバンク膜31の
表面に付与され、図5(b)に示したようにバンク膜31の表面に撥液処理層37が形成
される。撥液処理層37の撥液性の程度は、機能液の接触角が90°以上であることが好
ましい。接触角が90°未満の場合、得られるバンクBの上面に機能液が残存し易くなっ
てしまうからである。
【0046】
次いで、図5(c)に示すようにマスクMを用いてバンク膜31に対し選択的に紫外線
を照射し、照射箇所での撥液処理層37の撥液性を低下させる。ここで、マスクMにより
選択的に紫外線を照射する箇所については、配線パターンの形成領域となる部分と対応す
る部分であり、後述する現像処理によって除去する箇所である。照射する紫外線としては
、波長が172nm、185nm、254nmといった短波長域のものが好適に用いられ
る。本実施形態では、マスクMを用いてエキシマUVを選択的に照射する。すると、先の
撥液化処理によって導入されたフッ素基が、UV照射によって脱離することなどにより、
その撥液性が失われ、あるいは著しく低下する。したがって、このUV照射箇所では、撥
液処理層37による撥液性がほとんど機能しないようになる。
【0047】
続いて、図5(d)に示すように前記のマスクMをそのまま用いてバンク膜31を露光
する。なお、バンク膜31は前述したようにポジ型レジストとして機能するので、マスク
Mにより選択的に露光した箇所が、後の現像処理によって除去されるようになる。露光光
源としては、前記感光性ポリシラザン液の組成や感光特性に応じ、従来のフォトレジスト
の露光で用いられている高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンラン
プ、エキシマレーザ、X線、電子線等から適宜選択され用いられる。照射光のエネルギー
量については、光源や膜厚にもよるものの、通常は0.05mJ/cm2以上、望ましく
は0.1mJ/cm2以上とされる。上限は特にないものの、あまりに照射量を多く設定
すると処理時間の関係から実用的でなく、通常は10000mJ/cm2以下とされる。
本実施形態では、エネルギー量を40mJ/cm2としている。露光は、一般に周囲雰囲
気(大気中)あるいは窒素雰囲気とすればよいが、ポリシラザンの分解を促進するため、
酸素含有量を富化した雰囲気を採用してもよい。
【0048】
このような露光処理により、光酸発生剤を含有する感光性ポリシラザンからなるバンク
膜31は、特に露光部分において膜内で選択的に酸が発生し、これによりポリシラザンの
Si−N結合が解裂する。そして、雰囲気中の水分と反応し、前記の化学式(2)または
化学式(3)に示したようにバンク膜31は一部加水分解し、最終的にシラノール(Si
−OH)結合が生成し、ポリシラザンが分解する。
【0049】
次いで、このようなシラノール(Si−OH)結合の生成、ポリシラザンの分解をより
進めるため、図7(a)に示すように露光後のバンク膜31を、例えば25℃、相対湿度
85%の環境下にて5分程度加湿処理する。このようにしてバンク膜31内に水分を継続
的に供給すると、一旦ポリシラザンのSi−N結合の解裂に寄与した酸が繰り返し解裂触
媒として働く。このSi−OH結合は露光中においても起こるが、露光後、露光された膜
を加湿処理することにより、ポリシラザンのSi−OH化がより一層促進される。
【0050】
なお、このような加湿処理における処理雰囲気の湿度については、高ければ高いほどS
i−OH化速度を速くすることができる。ただし、あまり高くなると膜表面に結露してし
まうおそれがあり、したがってこの観点から相対湿度90%以下とするのが実用的である
。また、このような加湿処理については、水分を含有した気体を、バンク膜31に接触さ
せるようにしてやればよく、したがって、加湿処理装置内に露光された基板Pを置き、水
分含有気体をこの加湿処理装置に連続的に導入するようにすればよい。または、予め水分
含有気体が導入されて調湿された状態の加湿処理装置内に、露光された基板Pを入れ、所
望時間放置するようにしてもよい。
【0051】
次いで、例えば濃度2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)
液によって加湿処理後のバンク膜31を28℃で1分程度現像処理し、被露光部を選択的
に除去する。このとき、被現像箇所、すなわち被露光箇所を、予め紫外線照射処理してそ
の部分における撥液性を低下させているので、この現像により、除去する箇所の面に現像
液が容易に濡れてここに浸透するようになる。したがって、除去する箇所が現像によって
確実に除去され、図7(b)に示すようにバンク膜31を所望のバンク形状にすることが
できる。これにより、目的とする配線パターン(膜パターン)の形成領域を区画するバン
クB、Bを形成するとともに、この配線パターンに対応する溝状の凹部34を形成する。
なお、現像液としては、TMAH以外の他のアルカリ現像液、例えばコリン、珪酸ナトリ
ウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることもできる。
【0052】
次いで、必要に応じて純水でリンスした後、得られたバンクB、B間の残渣処理を行う
。残渣処理としては、フッ酸溶液で残渣部をエッチングするフッ酸処理や、紫外線を照射
することによる紫外線(UV)照射処理、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラ
ズマ処理などが用いられる。本実施形態では、例えば濃度0.2%のフッ酸水溶液によっ
て20秒程度接触処理を行う、フッ酸処理を採用する。このような残渣処理を行うと、バ
ンクB、Bがマスクとして機能することにより、バンクB、B間の凹部34の底部35が
選択的にエッチングされ、ここに残ったバンク材料等が除去される。
【0053】
次に、前記の液滴吐出装置IJを用い、図7(c)に示すように配線パターン用インク
(機能液)の液滴を、バンクB、B間の凹部34内に露出した基板P上に吐出し配置する
。本実施形態では、配線パターン用インク(機能液)として、導電性材料として有機銀化
合物を用い、分散媒としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物
からなるインクを吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB、B間の凹部34内に向け、
インクの液滴を吐出して凹部34内にインクを配置する。このとき、液滴が吐出される配
線パターン形成領域(すなわち凹部34)はバンクB、Bに囲まれて区画されているので
、液滴がこの形成領域以外に拡がることが阻止されている。
【0054】
本実施形態では、バンクB、B間の凹部34の幅W(ここでは、凹部34の開口部にお
ける幅)がインク(機能液)の液滴の直径Dとほぼ同等に設定されている。液滴を吐出す
る雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これに
より、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うこ
とができる。
【0055】
このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、凹部34内に配置すると、液滴はその
直径Dが凹部34の幅Wとほぼ同等であることから、図7(d)中二点鎖線で示すように
その一部がバンクB、B上に乗ることがある。ところが、バンクB、Bの表面が撥液性と
なっていることから、これらバンクB、B上に乗ったインク部分がバンクB、Bからはじ
かれ、さらには毛細管現象によって凹部34内に流れ落ちることにより、図7(d)中実
線で示すようにインク39の殆どが凹部34内に入り込む。
【0056】
また、凹部34内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちたインクは、凹部3
4内に露出する底部35やバンクB、Bの内側面が撥液処理層37とはなっていないこと
から、濡れ拡がり易くなっており、これによってインクはより均一に凹部34内に埋め込
まれるようになる。
【0057】
このようにして液滴を吐出したら、吐出したインク(機能液)中の分散媒の除去及び膜
厚確保のため、必要に応じて中間乾燥処理をする。中間乾燥処理は、例えば基板Pを加熱
する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこ
ともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線
ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、X
eCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光
源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以
下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では、100W以上1000W以下の範囲で
十分である。中間乾燥工程が終了すると、図7(e)に示すように、配線パターンを形成
する配線膜である回路配線膜33が形成される。この回路配線膜33によって形成される
配線パターンは、後述するように図3及び図4に示したゲート配線12及びゲート電極1
1となるものである。
【0058】
なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さが、
必要な膜厚に達しない場合には、前記機能液配置工程と中間乾燥工程とを繰り返し行う。
回路配線膜33が形成された上に再度機能液を配置すると、図8(a)に示すように凹部
34に入りきらないインク39は、バンクBの上面が撥液性であるため、はじかれて凹部
34の上に盛り上った状態となる。そして、再び中間乾燥工程を行って凹部34内及び凹
部34の上に盛り上ったインク39を乾燥させることにより、図8(b)に示すように、
インクの液滴が積層され、膜厚の厚い回路配線膜33が形成される。なお、一回の機能液
配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さと、必要な膜厚とから、中
間乾燥工程と前記機能液配置工程とを繰り返し行う繰返し数を、適当に選ぶことにより、
必要な膜厚を得ることができる。
【0059】
次いで、図8(c)に示すように、基板PのバンクBを形成した側の面に対し、全面露
光を行う。露光条件については、図5(d)に示した工程での露光処理条件と同様とする
。このようにして全面露光を行うことにより、先の露光処理では露光されなかったバンク
Bが露光される。これにより、バンクBを形成するポリシラザンは一部加水分解し、最終
的にシラノール(Si−OH)結合が生成してポリシラザンが分解する。
【0060】
次いで、中間乾燥処理で形成した配線パターンに対し、図8(d)に示すように例えば
大気中クリーンオーブンにて280〜350℃程度で300分間程度の焼成処理を行う。
このようにして焼成処理を行うと、先に加湿処理され、さらに露光処理されてSi−OH
化されたポリシラザンからなるバンクBは、焼成により前記の化学式(4)〜化学式(6
)に示したように容易に(SiOSi)化し、SiNH結合がほとんど(又は全く)存在
しないシリカ系セラミックス膜、例えばポリメチルシロキサンに転化される。すると、こ
のポリメチルシロキサン(シリカ系セラミックス膜)からなるバンクBは、前述したよう
にポリシロキサンを骨格としたものとなることから、熱処理に対し高い耐性を有したもの
となり、この配線パターンの焼成処理に十分耐え得るようになる。
以上の工程により、吐出工程後の機能液からなる乾燥膜(配線パターン)は、微粒子間
の電気的接触が確保され、導電性膜、すなわち図3及び図4に示したゲート配線12及び
ゲート電極11となる。
【0061】
このような本実施形態の配線パターン(膜パターン)の形成方法において、特にそのバ
ンクBの形成方法によれば、撥液化処理後のバンク膜31に対し、現像前にこの現像処理
で除去する箇所の撥液性を紫外線照射によって低下させておくので、現像時、除去する箇
所の面に現像液が容易に濡れてここに浸透するようになり、したがって除去する箇所を現
像によって確実に除去することができる。よって、この形成方法によって得られるバンク
Bのパターン精度を良好にし、凹部34内に残渣が残ってしまうといった不都合も防止す
ることができる。
また、従来では、後の現像処理時における現像むらを考慮して、撥液化処理時に撥液化
の度合いを調整する必要があったが、本実施形態によれば、現像処理で除去する箇所の撥
液性を紫外線照射によって低下させるので、撥液化の度合いについて特に調整を行う必要
がなくなり、したがって製造マージンが広がって生産性を向上することができる。
さらに、前記撥液性を低下させる工程と露光する工程とを、同じマスクMを用いて連続
して行っているので、二つの工程間においてマスクMの着脱や交換を行う必要がなく、し
たがって生産性の向上を図ることができる。
【0062】
なお、前記実施形態では、バンクの形成材料としてのレジスト液として、光酸発生剤を
含む感光性ポリシラザン液を用いたが、本発明はこれに限定されることなく、例えばこれ
以外のポリシラザン液や、ポリシラン液、ポリシロキサン液、さらには有機材料からなる
一般的なレジスト材料(レジスト液)を用いることもできる。
また、前記実施形態では、特に加湿処理を行うことでシラノール(Si−OH)結合の
生成、およびポリシラザンの分解を促進するようにしたが、本発明はこれに限定されるこ
となく、例えば使用したポリシラザン液の種類によってはこの加湿処理工程を省略するこ
ともできる。
【0063】
さらに、前記実施形態では、図5(c)に示した紫外線照射処理(紫外線照射工程)と
、図5(d)に示した露光処理(露光工程)とをこの順に連続して行ったが、逆に、露光
処理(露光工程)、紫外線照射処理(紫外線照射工程)の順で、これらの処理を連続して
行ってもよい。その場合にも、同じマスクを用いて連続して処理を行うことができるので
、生産性の向上を図ることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の膜パターンの形成方法を配線パターン(膜パターン)の形成方法に適用
した場合の、他の実施形態について説明する。
この実施形態が先の実施形態と異なるところは、図5(c)に示した紫外線照射処理(
紫外線照射工程)と、図5(d)に示した露光処理(露光工程)とを、同時に行う点にあ
る。
【0065】
すなわち、本実施形態では、図5(b)に示したようにバンク膜31に撥液化処理を行
ってその表面に撥液処理層37を形成した後、図9に示すように、一つのマスクMを用い
て紫外線照射処理と露光処理とを同時に行う。このような処理としては、例えば処理装置
として、G線(254nm)、H線(365nm)、I線(405nm)等の光を照射す
る露光光源を備え、さらにこれとは別に、前記の波長が172nm、185nm、254
nmといった短波長域の紫外線を照射する光源を備えたものを用意する。そして、この露
光装置を用いて、図9に示したように露光光と紫外線(紫外光)とを同時に照射し、現像
処理によって除去する箇所を露光すると同時に、この箇所での表面(撥液処理層37)に
おける撥液性を低下させる。
【0066】
その後、先の実施形態と同様にして処理することにより、バンクBと、これによって精
度良くパターニングされたゲート配線12及びゲート電極11を形成することができる。
なお、この実施形態では、図7(a)に示した加湿処理工程を省略し、その分、図8(c
)に示した全面露光処理における露光処理条件を、例えばエネルギー量を1500mJ/
cm2と高くして行ってもよい。
【0067】
このような方法にあっては、前記撥液性を低下させる工程と露光する工程とを、一つの
マスクMを用いて同時に行っているので、工程間においてマスクMの着脱や交換を行う必
要がないのはもちろん、二工程を一工程に短縮することで処理時間を短くすることができ
、したがって生産性を大幅に向上することができる。
また、前述したように除去する箇所を現像によって確実に除去することができるので、
得られるバンクBのパターン精度を良好にし、凹部34内に残渣が残ってしまうといった
不都合も防止することができ、さらには、撥液化の度合いについて特に調整を行う必要が
なくなるため、製造マージンが広がって生産性を向上することができる。
【0068】
なお、前記の実施形態においては、本発明の膜パターンの形成方法を配線パターンの形
成方法に適用した場合を例にして説明したが、本発明の膜パターンの形成方法は、配線パ
ターン以外にも例えばカラーフィルタの製造などにも適用することができる。
【0069】
(第3の実施形態)
次に、本発明の膜パターンの形成方法に係る他の実施形態について説明する。本実施形
態では、先の第1又は第2の実施形態で形成した配線パターン(膜パターン)の上に、さ
らに回路配線(配線パターン)を形成するようにしている。なお、本実施形態で使用する
液滴吐出法や液滴吐出装置、さらには製造する半導体装置等は、第1の実施形態における
液滴吐出法や液滴吐出装置、半導体装置と基本的に同一である。
【0070】
本実施形態では、まず、図10(a)に示すように第1又は第2の実施形態で形成した
配線パターンとしてのゲート配線12(ゲート電極11)の上に、プラズマCVD法によ
りゲート絶縁膜(絶縁膜28)、半導体層である活性層63、接合層64の連続成膜を行
う。絶縁膜28としては窒化シリコン膜を、活性層63としてはアモルファスシリコン膜
を、接合層64としてはn+型シリコン膜を、それぞれ原料ガスやプラズマ条件を変化さ
せることで形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要にな
るものの、前記のバンクBが、ポリシロキサンを骨格とする無機質のものからなっており
、高い耐熱性を有しているので、耐熱性に関する問題を回避することができる。
【0071】
次に、前記絶縁膜28、及び活性層63、接合層64を覆ってバンクの形成材料を配し
、図10(b)に示すようにバンク膜71を形成する。このバンク膜71については、特
に限定されないものの、本実施形態では前記の感光性ポリシラザン液を用いるものとする

続いて、得られたバンク膜71を、例えばホットプレート上にて110℃で3分程度プ
レベークした後、第1の実施形態と同様にしてバンク膜71に対し撥液化処理を行い、バ
ンク膜71の表面に撥液処理層77を形成する。
【0072】
次いで、バンク膜71をパターニングするべく、前記第1の実施形態と同様にして、図
5(c)に示した紫外線照射処理(紫外線照射工程)と図5(d)に示した露光処理(露
光工程)とを連続して行い、あるいは、前記第2の実施形態と同様にして、図9に示した
ように紫外線照射処理と露光処理とを同時に行う。この場合にも、同一のマスクを用いて
所望箇所に対し選択的に処理を行うのはもちろんである。
【0073】
次いで、必要に応じて加湿処理を行った後、現像処理を行うことにより、図10(c)
に示すようにバンク膜71を所望のバンク形状のバンクB1及びバンクB2とし、さらに
バンクB1及びバンクB2に囲まれた溝状の凹部74を形成する。ここで、凹部74は、
その底部に絶縁膜28を露出させ、さらに活性層63と接合層64の一部とを露出させる
ものとなる。このとき、被現像箇所、すなわち被露光箇所を、予め紫外線照射処理してそ
の部分における撥液性を低下させているので、前記実施形態と同様に、この現像処理によ
って除去する箇所の面に現像液が容易に濡れ、ここに浸透するようになる。したがって、
除去する箇所が現像によって確実に除去され、図10(c)に示したように所望のバンク
形状のバンクB1及びバンクB2を形成することができる。
【0074】
次いで、必要に応じて純水でリンスした後、得られたバンクB1、バンクB2間の残渣
処理を行う。残渣処理としては、フッ酸溶液で残渣部をエッチングするフッ酸処理や、紫
外線を照射することによる紫外線(UV)照射処理、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとす
るO2プラズマ処理などが用いられる。
【0075】
次いで、第1の実施形態における図7(c)〜図8(b)に示した工程と同様にして、
図11(a)に示すようにバンクB1、バンクB2間に配線パターン形成用インク81の
液滴を吐出し配置する。この配線パターン形成用インクとしては、例えばゲート配線12
及びゲート電極11の形成に用いたものと同様のものが用いられる。
次いで、第1の実施形態における図8(c)、図8(d)に示した全面露光処理および
焼成処理を行い、バンクB1、バンクB2を、前述したようにポリシロキサンを骨格とす
る。また、これと同時に、図11(b)に示すように配線パターンを形成する配線膜であ
る回路配線膜73を形成する。本実施形態において、回路配線膜73によって形成される
配線パターンは、図3及び図4に示したソース配線16、ソース電極17及びドレイン電
極14である。
【0076】
次いで、バンクB2を取り除き、さらに、接合層64をエッチングして、図11(c)
に示すようにソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に接合する接
合層64bと、に分離する。バンクB2が取り除かれた部分と、接合層64がエッチング
されて取り除かれた部分とに、ソース電極17と、ドレイン電極14とを絶縁するバンク
67を形成する。また、ソース電極17及びドレイン電極14を配置した凹部74を埋め
るように絶縁膜29を配置する。以上の工程により、バンクB1とバンク67と絶縁膜2
9からなる平坦な上面が形成される。なお、バンク67と絶縁膜29とを同じ材料で形成
し、凹部74を埋めるように絶縁膜29を配置することにより、ソース電極17と、ドレ
イン電極14との絶縁を行ってもよい。また、バンク膜71を形成する前に、予め接合層
64をエッチングして、ソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に
接合する接合層64bと、に分離しておいてもよい。
【0077】
その後、凹部74を埋めるように配置された絶縁膜29のドレイン電極14を覆う部分
にコンタクトホールを形成するとともに、上面上にパターニングされた画素電極(ITO
)19を形成し、コンタクトホールを介してドレイン電極14と画素電極19とを接続す
る。
第1の実施形態で説明したようにゲート電極11、ゲート配線12を形成し、本実施形
態で説明したようにソース電極17と、ドレイン電極14とを形成することで、半導体装
置としてのTFT30を形成することができ、さらにはこのTFT30を多数有するTF
Tアレイ基板10を製造することができる。
【0078】
このようなTFT30(半導体装置)の製造方法にあっては、良好なパターン精度に形
成された前記バンクB,B1,B2に基づいて形成され、したがって良好なパターン精度
の配線パターン(膜パターン)を有しているので、この配線パターンによって得られるト
ランジスタ特性が良好なものとなる。また、バンクB,B1,B2やこれを用いた膜パタ
ーン(配線パターン)についての生産性が向上していることから、TFT30自体につい
てもその生産性が向上したものとなる。
【0079】
(第4の実施形態)
次に、本発明の膜パターンの形成方法を配線パターン(膜パターン)に適用した他の実
施形態について図5及び図7と図12のフローチャートとを参照しながら説明する。
【0080】
図5はバンク形成方法を説明するための模式図であり、図7は配線パターン形成方法を
説明するための模式図であり、図12は配線パターンの形成方法を示すフローチャートで
ある。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、バンクの形成材料とバンクの形成工程
とが異なる点にある。
バンクの形成材料については、第1の実施形態では、バンクの形成材料液となるレジス
ト液に無機材料であるポリシザランと光酸発生剤とを含有する感光性ポリシザラン液を採
用したが、本実施形態では、レジスト液に有機材料であるオレフィン樹脂液と光酸発生剤
とを含有する感光性オレフィン樹脂液を採用している。
【0081】
バンクの形成工程については、第1の実施形態のマスクを使って露光する露光工程の後
に行う図7(a)に示す加湿処理を行う工程と、焼成処理の前に行う図8(c)に示す全
面露光処理をする工程とが省略される点である。
【0082】
次に図12のフローチャートを用いて、膜パターンの形成方法をバンクの形成方法を含
めた製造工程順に説明する。
図12において、ステップS1は親液化処理工程に相当し、基板P上に親液性の高い膜
32を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、バンク形成
工程に相当し、バンクの材料液を塗布し乾燥させてバンク膜31を形成する工程である。
次にステップS3に移行する。ステップS3は、撥液化処理工程に相当し、バンク膜31
の上面に撥液性をもたせる工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は、
撥液性低減工程に相当し、バンク膜31を除去する予定の領域の撥液性を低減する工程で
ある。次にステップS5に移行する。ステップS5は露光工程に相当し、バンク膜31を
除去する予定の領域をマスクを使って選択的に露光する工程である。次にステップS6に
移行する。ステップS6は現像工程に相当し、ポジ型レジストとして機能するバンク膜3
1の被露光部分を選択的に除去する工程である。次にステップS7に移行する。ステップ
S7は、機能液配置工程に相当し、配線パターンインクを塗布する工程である。次にステ
ップS8に移行する。ステップS8は、焼成工程に相当し、バンク膜31と配線パターン
インクを焼成する工程である。以上のステップにより配線パターンが製造される。
【0083】
次に図5及び図7を用いて図12に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説
明する。
図5(a)は、ステップS1の親液化処理工程及びステップS2のバンク形成工程に相
当する図である。図5(a)に示すように、基板Pの上にTiO2等の親液性の高い膜3
2を形成する(ステップS1)。次に膜32上にバンクの形成材料液となるレジスト液と
して有機材料であるオレフィン樹脂液を含有する感光性オレフィン樹脂液をスピンコート
法により塗布し、例えば、ホットプレート上にて100℃で2分程度プレベークして、バ
ンク膜31を形成する(ステップS2)。その結果、基板Pに親液性の高い膜32とバン
ク膜31とが積層された形態となる。
【0084】
図5(b)は、ステップS3の撥液化処理工程に相当する図である。図5(b)に示す
ように、バンク膜31の上面に撥液化処理を行い撥液性を付与し、撥液処理層37を形成
する(ステップS3)。撥液化処理方法は、四フッ化炭素(テトラフルオルメタン)を撥
液化処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用する。CF4プラズマ
処理法の処理条件としては、例えば、プラズマパワーを400W程度、四フッ化炭素ガス
流量を50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度を10〜20
mm/sec、基体温度を70〜90℃とする。その結果、バンク膜31の表面に撥液処
理層37が形成された形態となる。
【0085】
図5(c)は、ステップS4の撥液性低減工程に相当する図である。図5(c)に示す
ように、マスクMを用いてバンク膜31表面の撥液処理層37に対し選択的に紫外線を照
射し、照射箇所の撥液性を低下させる(ステップS4)。照射する紫外線は、例えば、波
長172nmのエキシマUVを採用する。このUV照射箇所では、撥液処理層37による
撥液性がほとんど機能しないようになる。
【0086】
図5(d)は、ステップS5の露光工程に相当する図である。図5(d)に示すように
、ステップS4で用いたマスクMを用いてバンク膜31を露光する(ステップS5)。本
実施形態では光源はキセノンランプを用いて、照射光のエネルギー量は、40mJ/cm
2程度としている。なお、ステップS4とステップS5は、同じマスクMを用いて連続し
て行なっても良いし、第2の実施形態で用いた装置と同様の装置を用いて同時に行なって
も良い。
【0087】
図7(b)は、ステップS6の現像工程に相当する図である。図7(b)に示すように
、露光された基板Pを現像処理し、被露光部を選択的に除去する。現像液は、例えば、濃
度0.2%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)液を用いて、28℃で
4分30秒程度の現像処理を行う。その結果、バンクB、B間に凹部34が形成される。
現像する箇所は、ステップS4の撥液性低減工程にて、撥液処理層37による撥液性がほ
とんど機能しないようになっていることから、現像液がバンク膜31の被露光部で撥液さ
れないので、確実に除去される。
【0088】
図7(c)及び(d)は、ステップS7の機能液配置工程に相当する図である。図7(
c)に示すように、凹部34に液滴吐出ヘッド1から配線パターン用インクの液滴を吐出
して塗布する(ステップS7)。その結果、図7(d)に示すように、凹部34にインク
39が塗布された状態となる。バンクB表面の撥液処理層37は撥液性があるので、イン
ク39が凹部34から撥液処理層37上に拡がることが阻止されている。
【0089】
図7(e)は、ステップS8の焼成工程に相当する図である。図7(e)に示すように
、凹部34に塗布されたインク39が焼成されて回路配線膜33となる。焼成条件は、例
えば、窒素雰囲気中のクリーンオーブンにて、200℃程度で60分程度焼成する。
以上の工程により、配線パターン用インクが焼成されて形成された回路配線膜33は、
微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜となる。
【0090】
上記したように本実施形態によれば、第1の実施形態での効果に加えて、以下の効果を
有する。
(1)本実施形態によれば、バンクの形成材料としてのレジスト液は有機材料を含有す
る溶液を採用した。有機材料にCF4プラズマ処理をすると、無機材料にCF4プラズマ処
理をするときと比べて、四フッ化炭素のドープ量を多くドープすることができる。従って
、レジスト液に無機材料を含有する溶液を採用するときと比べて、有機材料を含有する溶
液を採用した方が、撥液性の高い撥液処理層37とすることができる。凹部34にインク
39を吐出したとき、インク39の液滴の一部が凹部34から突出して撥液処理層37の
上に載ったとき、インク39の表面張力によりインク39は、凹部34へ移動する。この
インク39が凹部34へ移動する過程において、撥液処理層37は撥液性が高いので、イ
ンク39の残渣が撥液処理層37の表面に残ることが少なくなる。その結果、本実施形態
の製造方法は、バンクB上にできる配線パターンインクの残渣を少なくできる配線の製造
方法とすることができる。
【0091】
(2)本実施形態によれば、バンクの形成材料としてのレジスト液は有機材料を含有す
る溶液を採用した。レジスト液に無機材料を含有する溶液を採用したときに比べて、有機
材料を含有する溶液を採用した方が撥液処理層37の撥液性を高くすることができる。撥
液処理層37の撥液性が高いと凹部34へ塗布するインク39が凹部34に入りきらなく
なったとき、撥液処理層37の表面に移動せず盛り上がった状態となるので、撥液処理層
37の撥液性が低いときに比べてインク39を多く塗布することができる。凹部34に厚
い膜を形成するとき、撥液処理層37の撥液性が低いときには、インク39の塗布量を一
度に多く塗布できないことから、機能液配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行う繰り返し
数を多くする必要がある。一方、撥液処理層37の撥液性が高いときは、インク39の塗
布量を一度に多く塗布できることから、機能液配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行う繰
り返し数を減らすことができる。従って、レジスト液に無機材料を含有する溶液を採用し
たときに比べて、有機材料を含有する溶液を採用した場合には、生産性よく回路配線膜3
3の厚膜を形成することができる。
【0092】
(3)本実施形態によれば、バンクの形成材料としてのレジスト液は有機材料を含有す
る溶液を採用した。バンクの形成材料としてのレジスト液に無機材料を含有する溶液を採
用したとき、レジスト膜の厚みを厚くすると焼成工程でレジスト膜にクラックが入るため
、レジスト膜の厚みは1〜2μm以下にしなければならない。バンクの形成材料としての
レジスト液に有機材料を含有する溶液を採用したとき、レジスト膜は厚くしてもクラック
が入りにくいため、レジスト膜の厚みは5〜8μm程度まで厚くすることができる。
【0093】
なお、本実施形態では、バンクの形成材料としてのレジスト液は、光酸発生剤とを含む
感光性オレフィン樹脂液を採用したが、本発明はこれに限定されることなく、プラズマ処
理による撥液化が可能で下地基板との密着性が良くリソグラフィ法や印刷法等によるパタ
ーニングが行い易い絶縁有機材料でも良い。例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェ
ノール樹脂、メラニン樹脂等の高分子材料を採用しても良い。
また、バンクの形成材料は感光性の機能を持たせるために、光酸発生剤を含有したが、
その代わりに光塩基発生剤を含有しても良く、同様の効果が得られる。
【0094】
(第5の実施形態)
次に、本発明の膜パターンの形成方法を使用したコプレナ−構造の薄膜トランジスタ(
TFT)について図13〜図17を参照しながら説明する。
【0095】
図13は、TFTの要部を示す模式断面図であり、図14は、TFTの製造工程のフロ
ーチャートであり、図15〜図17は、TFTの製造方法を説明するための模式図である

【0096】
図13に示すように、コプレナ−構造のトランジスタとしてのTFT140は、ガラス
からなる基板141を備えている。基板141の上面は酸化シリコンからなる下地層14
2に覆われている。下地層142の上には、ポリシリコン層143が形成され、ポリシリ
コン層143はその両側にリンがドープされたN領域143a,143bが形成されてい
る。下地層142とポリシリコン層143の上面には絶縁層145が形成され、絶縁層1
45の上面にはゲート用バンク146が形成されている。ポリシリコン層143のN領域
143a及びN領域143b以外のポリシリコン層143の上面に対応する絶縁層145
の上面には、ゲート電極147がゲート用バンク146に囲まれて形成されている。ゲー
ト電極147とゲート用バンク146の上面には、ソース・ドレイン用バンク148が形
成されている。さらに、ソース・ドレイン用バンク148の上面には、撥液処理層156
が形成されている。
【0097】
ポリシリコン層143のN領域143aとN領域143bとの上面には、絶縁層145
とゲート用バンク146とソース・ドレイン用バンク148を貫通したコンタクトホール
が形成されている。そのコンタクトホールの中には、N領域143aと通電可能なソース
電極149と、N領域143bと通電可能なドレイン電極150とが配置されている。ド
レイン電極150とソース電極149との間に電圧を印加し、ゲート電極147とソース
電極149との間に電圧を印加すると、ドレイン電極150からソース電極149へ電流
が流れ、スイッチ機能を持つTFT140として動作する。
【0098】
次に図14のフローチャートを用いて、ゲート電極とソース電極とドレイン電極の形成
方法について説明する。なお、基板141上に下地層142とポリシリコン層143と絶
縁層145とを形成する工程は、公知の製造方法にて形成されるので、説明を省略する。
【0099】
図14においてステップS21は、ゲート用バンク配置工程に相当し、絶縁層145上
にゲート用バンク146の材料液を塗布する工程である。次にステップS22に移行する
。ステップS22は、撥液化処理工程に相当し、ゲート用バンク146の上面に撥液処理
を施す工程である。次にステップS23に移行する。ステップS23は、撥液性低減工程
に相当し、ゲート用バンク146上面に形成された撥液性の膜の撥液性を選択的に一部分
除去する工程である。次にステップS24に移行する。ステップS24は、露光工程に相
当し、マスクを用いてゲート用バンク146を選択的に露光する工程である。次にステッ
プS25に移行する。ステップS25は、加湿工程に相当し、ゲート用バンク146の化
学反応を促進させるために加湿する工程である。次にステップS26に移行する。ステッ
プS26は現像工程に相当し、ゲート用バンク146の露光された部分を除去する工程で
ある。次にステップS27に移行する。ステップS27は、ゲート用機能液配置工程に相
当し、ゲート電極の配線材料を塗布する工程である。次にステップS28に移行する。ス
テップS28は、全面露光工程に相当し、ゲート用バンク146の化学反応を促進させる
ために露光する工程である。次にステップS29に移行する。ステップS29は焼成工程
に相当し、ゲート用バンク146とゲート電極147とを焼成する工程である。次にステ
ップS30に移行する。ステップS30は、ソース・ドレイン用バンク配置工程に相当し
、ゲート用バンク146上にソース・ドレイン用バンク148の材料液を塗布する工程で
ある。次にステップS31に移行する。ステップS31は、撥液化処理工程に相当し、ソ
ース・ドレイン用バンク148の上面に撥液性を施す工程である。次にステップS32に
移行する。ステップS32は、撥液性低減工程に相当し、ソース・ドレイン用バンク14
8の上面に形成された撥液性の膜の撥液性を選択的に一部分除去する工程である。次にス
テップS33に移行する。ステップS33は、露光工程に相当し、マスクを用いてソース
・ドレイン用バンク148を選択的に露光する工程である。次にステップS34に移行す
る。ステップS34は、現像工程に相当し、ソース・ドレイン用バンク148の露光され
た部分を除去する工程である。次にステップS35に移行する。ステップS35は、ソー
ス・ドレイン用機能液配置工程に相当し、ソース電極の配線材料とドレイン電極の配線材
料とを塗布する工程である。次にステップS36に移行する。ステップS36は焼成工程
に相当し、ソース・ドレイン用バンク148とソース電極149とドレイン電極150と
を焼成する工程である。
【0100】
次に図15〜17を用いて、図14に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に
説明する。
図15(a)、(b)は、ステップS21のゲート用バンク配置工程及びステップS2
2の撥液化処理工程に対応する図である。図15(a)に示すように、基板141は、下
地層142が形成され、その上面にポリシリコン層143と絶縁層145とが配置されて
いる。絶縁層145は、ポリシリコン層143のN領域143a及びN領域143bの上
面の領域が除去され、凹部151及び凹部152が形成されている。ステップS21のゲ
ート用バンク配置工程において、基板141の絶縁層145の上にゲート用バンク材料を
スピンコートにて塗布し、例えば、ホットプレート上にて110℃で3分程度プレベーク
する。その結果、図15(b)に示すように、ゲート用バンク146が形成される。ゲー
ト用バンク材料は、第1の実施形態と同様に感光性ポリシザランを採用する。
【0101】
ステップS22において、ゲート用バンク146の上面にCF4プラズマ処理法にて撥
液処理を行う。CF4プラズマ処理法の処理条件は、例えば、プラズマパワーを400W
程度、四フッ化炭素ガス流量を50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基
体搬送速度を5〜10mm/sec、基体温度を70〜90℃とする。その結果、図15
(b)に示されるように、撥液処理層153が形成される。
【0102】
図15(c)は、ステップS23の撥液性低減工程、ステップS24の露光工程、ステ
ップS25の加湿工程、ステップS26の現像工程に対応する図である。
ステップS23において、例えば、マスクを用いて部分的に波長172nmのエキシマ
UV光を撥液処理層153に照射する。撥液処理層153の紫外線が照射された部分は、
フッ素基が離脱し、撥液性が機能しなくなる。次に、ステップS24において、ステップ
S23で用いたマスクと同じマスクを用いて、ゲート用バンク146に露光を行う。露光
はキセノンランプを使用し、露光条件は、例えば、照射エネルギー量を40mJ/cm2
とする。なお、第2の実施形態で用いた装置と同様の装置を用いて、撥液性低減工程と露
光工程を同時に行なっても良い。
ステップS25において、加湿を行う。加湿条件は、例えば、気温25℃、相対湿度8
5%の雰囲気に加湿時間5分程度放置する。ステップS26において、現像を行う。現像
条件は、例えば、液温18℃で濃度2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒ
ドロキシド)液の現像液に1分程度浸漬し、現像後純水でリンスする。その結果図15(
c)に示すように、ポリシリコン層143の上面中央に対応する絶縁層145の上面にゲ
ート用バンク146に凹部154が形成される。又、凹部151及び凹部152において
、ゲート用バンク材料が除去されて、ゲート用バンク146の表面からポリシリコン層1
43まで貫通した凹部151,152が形成される。
【0103】
図16(a)は、ステップS27のゲート用機能液配置工程に対応する図である。ステ
ップS27において、液滴吐出装置IJを用いて、ゲート用バンク146の凹部154に
、ゲート配線パターン用インク155(機能液)を吐出して塗布する。ゲート配線パター
ン用インク155(機能液)は、ジエチレングリコールジエチレンエーテルを分散媒とし
た有機銀化合物からなるインクを採用する。その結果図16(a)に示すように、ゲート
用バンク146の凹部154にゲート配線パターン用インク155が塗布された形となる

【0104】
図16(b)は、ステップS28の全面露光工程及びステップS29の焼成工程に対応
する図である。ステップS28において、ゲート用バンク146の全面に露光を行う。露
光はキセノンランプを用い、露光条件は、例えば、照射エネルギー量を40mJ/cm2
とする。ステップS29において、ゲート用バンク146とゲート配線パターン用インク
155とを、空気雰囲気下のクリーンオーブンにて焼成する。焼成条件は、例えば、焼成
温度300℃、焼成時間60分とする。その結果、図16(b)に示すように、ゲート用
バンク146とゲート電極147とが焼成されて形成される。撥液処理層153は加熱に
よりのフッ素基が離脱し撥液性が機能しなくなり、撥液処理層153は消滅する。
【0105】
図16(c)は、ステップS30のソース・ドレイン用バンク配置工程及びステップS
31の撥液化処理工程に対応する図である。ステップS30において、ソース・ドレイン
用バンク材料をスピンコートにて塗布し、ホットプレート上にて、例えば、100℃で2
分程度プレベークして、ソース・ドレイン用バンク148を形成する。ソース・ドレイン
用バンク材料は、本実施形態では、有機材料であるオレフィン樹脂と光酸発生剤とを含む
感光性オレフィン樹脂液を採用する。次にステップS31において、ソース・ドレイン用
バンク148の上面にCF4プラズマ処理法にて撥液処理を行う。CF4プラズマ処理法の
処理条件としては、例えば、プラズマパワーが400W程度、四フッ化炭素ガス流量が5
0〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が10〜20mm/s
ec基体温度が70〜90℃とする。その結果図16(c)に示すように、上面に撥液処
理層156が形成されたソース・ドレイン用バンク148が形成される。
【0106】
図17(a)は、ステップS32の撥液性低減工程、ステップS33の露光工程、ステ
ップS34の現像工程に対応する図である。ステップS32において、マスクを用いてソ
ース・ドレイン用バンク148表面の撥液処理層156に対し選択的に、例えば、波長1
72nmのエキシマUV光を照射し、照射箇所での撥液性を低下させる。この紫外線照射
箇所は、撥液処理層156による撥液性がほとんど機能しないようになる。次に、ステッ
プS33において、ステップS32で用いたマスクを用いてソース・ドレイン用バンク1
48を露光する。本実施形態では、光源はキセノンランプを採用し、照射光のエネルギー
量は、40mJ/cm2程度とする。なお、第2の実施形態で用いた装置と同様の装置を
用いて、撥液性低減工程と露光工程を同時に行なっても良い。
続いて、ステップS34において、露光された基板141を現像処理し、ソース・ドレ
イン用バンク148の被露光部を選択的に除去する。例えば、濃度0.2%のTMAH(
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)液を現像液とし、28℃で4分30秒程度の現
像処理を行う。その結果、図17(a)に示すように、ソース・ドレイン用バンク148
の表面からポリシリコン層143の上面まで貫通した凹部151,152が形成される。
現像する箇所は、ステップS32において、撥液処理層156による撥液性がほとんど機
能しないようになっていることから、ソース・ドレイン用バンク148の被露光部は、除
去され易くなっている。
【0107】
図17(b)は、ステップS35のソース・ドレイン用機能液配置工程に対応する図で
ある。ステップS35において、液滴吐出装置IJを用いて、ソース・ドレイン用バンク
148の凹部151,152に、ソース・ドレイン配線パターン用インク157(機能液
)を吐出して塗布する。ソース・ドレイン配線パターン用インク157(機能液)は、本
実施形態では、ジエチレングリコールジエチレンエーテルを分散媒とした有機銀化合物か
らなるインクを採用する。その結果図17(b)に示すように、ソース・ドレイン用バン
ク148の凹部151,152にソース・ドレイン配線パターン用インク157が塗布さ
れた形態となる。
【0108】
図17(c)は、ステップS36の焼成工程に対応する図である。ステップS36にお
いて、ソース・ドレイン用バンク148とソース・ドレイン配線パターン用インク157
とを、窒素雰囲気中のクリーンオーブンにて焼成する。焼成条件は、例えば、焼成温度2
00℃、焼成時間60分とする。その結果、図17(c)に示すように、ソース・ドレイ
ン用バンク148とソース電極149とドレイン電極150とが焼成されて形成される。
【0109】
上記したように本実施形態によれば、第1及び第4の実施形態での効果に加えて、以下
の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ソース・ドレイン用バンク148は、有機材料である感光
性オレフィン樹脂液を採用した。従って、撥液処理層156は、無機材料でバンクを形成
したときと比べて、撥液性が高くなることから、ソース配線とドレイン配線との周囲に配
線材料の残渣の少ない品質の良い配線とすることができる。
【0110】
(2)本実施形態によれば、ソース・ドレイン用バンク148は、有機材料である感光
性オレフィン樹脂液を採用した。レジスト液に無機材料を含有する溶液を採用したときに
比べて、有機材料を含有する溶液を採用した方が撥液処理層156の撥液性を高くするこ
とができる。撥液処理層156の撥液性が高いと凹部151,152へ塗布するソース・
ドレイン配線パターン用インク157が凹部151,152に入りきらなくなったとき、
撥液処理層156の表面に移動せず盛り上がった状態となるので、撥液処理層156の撥
液性が低いときに比べてソース・ドレイン配線パターン用インク157を多く塗布するこ
とができる。凹部151,152に厚い膜を形成するとき、撥液処理層156の撥液性が
低いときには、ソース・ドレイン配線パターン用インク157の塗布量を一度に多く塗布
できないことから、機能液配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行う繰り返し数を多くする
必要がある。一方、撥液処理層156の撥液性が高いときは、ソース・ドレイン配線パタ
ーン用インク157の塗布量を一度に多く塗布できる。従って、ソース電極149とドレ
イン電極150とは、ソース・ドレイン用バンク148に無機材料を採用するときと比べ
て、機能液配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行う繰り返し数を少なくできるので、生産
性良く製造できる。
【0111】
(3)本実施形態によれば、ソース・ドレイン用バンク148は、有機材料である感光
性オレフィン樹脂液を採用した。バンクの形成材料としてのレジスト液に無機材料を含有
する溶液を採用したとき、レジスト膜の厚みを厚くすると焼成工程でレジスト膜にクラッ
クが入るため、レジスト膜の厚みは1〜2μm以下にしなければならない。バンクの形成
材料としてのレジスト液に有機材料を含有する溶液を採用したとき、レジスト膜は厚くし
てもクラックが入りにくいため、レジスト膜の厚みは5〜8μm程度まで厚くすることが
できる。
基板141の上に4μm程度の素子や配線などの構造物があるとき、その構造物を埋め
てソース・ドレイン用バンク148で構造物の上面を平坦にすることができる。従って、
例えば液晶表示体において、ソース・ドレイン用バンク148の上面へ平坦な電極を配置
するとき、基板141上の構造物をソース・ドレイン用バンク148で埋めることができ
るので、基板141上の素子の配置を設計し易くすることができる。
【0112】
なお、本実施形態において、ゲート用バンク146は、無機材料を含有する感光性ポリ
シザランを採用したが、有機材料と、光酸発生剤または光塩基発生剤とを含有する感光性
有機材料としても良い。そのとき、ゲート用バンク146の耐熱性が無機材料を採用した
ときに比べて下がるので、ゲート用バンク146の焼成温度を、例えば、200℃程度に
したとき、焼成工程で撥液処理層153の撥液性が十分低下しない場合がある。その場合
には、焼成工程とソース・ドレイン用バンク配置工程との間に撥液性低減工程を設け、エ
キシマUV光を撥液処理層153に照射しても良い。ソース・ドレイン用バンク配置工程
でソース・ドレイン用バンクの材料液が撥液処理層153の撥水性の影響をうけない為、
膜厚を均一に塗布することができる。
【0113】
(他の実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。本実施
形態の液晶表示装置は、第1の実施形態と第2の実施形態と第4の実施形態とで説明した
配線パターン(膜パターン)の形成方法を用いて形成された回路配線を有するTFTを備
えた液晶表示装置である。
【0114】
図18は本実施形態に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側
から見た平面図であり、図19は図18のH−H’線に沿う断面図である。図20は液晶
表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子
、配線等の等価回路図で、図21は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下
の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとする
ため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0115】
図18及び図19において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、
対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52
によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、
保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されて
いる。
【0116】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成
されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子20
2がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿
って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画
像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線2
05が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては
、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材2
06が配設されている。
【0117】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上
に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bondi
ng)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して
電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、
使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super T
wisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラック
モードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置される(図示省略)。また
、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、
TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G
)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0118】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図20に示す
ように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素1
00aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されて
おり、画素信号S1,S2,…,Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電
気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1,S2,…,Snは、この
順に順次供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供
給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続され
ており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmを
この順に線順次で印加するように構成されている。
【0119】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子で
あるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される
画素信号S1,S2,…,Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして
画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1,S2,…,Snは
、図19に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持
された画素信号S1,S2,…,Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向
電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば
、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容
量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高
い液晶表示装置100を実現することができる。
【0120】
この液晶表示装置100のゲート配線とゲート電極とソース配線とソース電極とドレイ
ン電極などが本発明の膜パターンの形成方法により形成されている。バンクBの凹部34
に残渣が残ることがないため、回路配線膜33が品質よく形成されている。従って、回路
配線膜33に相当するゲート配線とゲート電極とソース配線とソース電極とドレイン電極
が品質良く形成されている。
【0121】
図21はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であ
って、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、前記実施形態の回路配線の形
成方法によりゲート配線61がガラス基板P上のバンクB、B間に形成されている。
【0122】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリ
コン(a−Si)層からなる半導体層である活性層63が積層されている。このゲート配
線部分に対向する活性層63の部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、オ
ーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積
層されており、チャネル領域の中央部における活性層63上には、チャネルを保護するた
めのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲ
ート絶縁膜62、活性層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジス
ト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニン
グされる。
【0123】
さらに、接合層64a,64b及びITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極19
も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパター
ニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上に
それぞれバンク66を突設し、これらバンク66間に前述した液滴吐出装置IJを用いて
銀化合物の液滴を吐出することで、ソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0124】
前記実施形態では、本発明におけるデバイスの一実施形態であるTFT30を、液晶表
示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置
以外にも、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに適用することが
できる。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と
陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させ
ることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出
(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、前記のTFT30を有する基
板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色
を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインク
とし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することが
できる。本発明における電気光学装置の範囲には、このような有機ELデバイスも含まれ
る。
【0125】
なお、本発明に係る電気光学装置としては、前記の他に、PDP(プラズマディスプレ
イパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、
電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
このような電気光学装置にあっては、特性が良好であり生産性も良好な半導体装置を備
えているので、これら電気光学装置自体も特性や生産性が良好なものとなる。
【0126】
半導体装置を形成する以外の他の実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態につ
いて説明する。図22に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)
400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チ
ップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または
静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行
うようになっている。前記アンテナ回路412が、前記実施形態に係る配線パターン形成
方法によって形成されている。
【0127】
図23(a)は電子機器の一例である携帯電話の一例を示した斜視図である。図23(
a)において、600は携帯電話本体を示し、601は前記実施形態の液晶表示装置10
0を備えた液晶表示部を示している。
図23(b)はワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図で
ある。図23(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部
、703は情報処理本体、702は前記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示
部を示している。
図23(c)は腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図23(c)において
、800は時計本体を示し、801は前記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表
示部を示している。
【0128】
図23(a)〜(c)に示す電子機器は、前述した、特性が良好であり生産性も良好な
液晶表示装置100(電気光学装置)を備えているので、この電子機器自体も特性や生産
性が良好なものとなる。なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、
有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備
えた電子機器とすることもできる。
【0129】
また、前記実施形態では、バンクBの間に形成された凹部に導電性膜を形成して配線パ
ターンを形成したが、形成できる膜は導電性薄膜から成る配線パターンに限らず、例えば
液晶表示装置において表示画像をカラー化するために用いられているカラーフィルタにも
適用可能である。このカラーフィルタは、基板に対してR(赤)、G(緑)、B(青)の
機能液(液体材料)を液滴として所定パターンで配置することで形成することができる。
前記した実施形態と同様に、基板の上にカラーフィルタの形状に応じたバンクを形成し、
このバンクによって形成された溝部に機能液を配置してカラーフィルタを形成することで
、カラーフィルタを有する液晶表示装置を製造することができる。
さらに、本発明の膜パターンの形成方法を適用して、前記実施形態に記載した絶縁膜2
9や画素電極19を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施形態に係る液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明する模式断面図。
【図3】TFTアレイ基板の要部の概略構成を示した平面図。
【図4】(a)(b)はTFTの要部を示す側断面図。
【図5】(a)〜(d)はバンク形成方法を説明するための模式図。
【図6】プラズマ処理装置の概略構成図。
【図7】(a)〜(e)は配線パターン形成方法を説明するための模式図。
【図8】(a)〜(d)は配線パターン形成方法を説明するための模式図。
【図9】第2の実施形態の配線パターン形成方法を説明するための模式図。
【図10】(a)〜(c)は第3の実施形態を説明するための模式図。
【図11】(a)〜(c)は第3の実施形態を説明するための模式図。
【図12】第4の実施形態に係る配線パターンの形成方法を示すフローチャート。
【図13】第5の実施形態に係るTFTの要部を示す模式断面図。
【図14】TFTの製造工程を示すフローチャート。
【図15】(a)〜(c)はTFTの製造方法を説明するための模式図。
【図16】(a)〜(c)はTFTの製造方法を説明するための模式図。
【図17】(a)〜(c)はTFTの製造方法を説明するための模式図。
【図18】他の実施形態の液晶表示装置の対向基板側から見た平面図。
【図19】図18のH−H’線に沿う断面図。
【図20】液晶表示装置の等価回路図。
【図21】液晶表示装置の部分拡大断面図。
【図22】非接触型カード媒体の分解斜視図。
【図23】電子機器の具体例を示す外観図。
【符号の説明】
【0131】
1…液滴吐出ヘッド、10…TFTアレイ基板、11…ゲート電極、12…ゲート配線
、14…ドレイン電極、16…ソース配線、17…ソース電極、19…画素電極、28,
29…絶縁膜、30…TFT、31…バンク膜、33…回路配線膜、34…凹部、37…
撥液処理層、63…活性層、64,64a,64b…接合層、67…バンク、71…バン
ク膜、73…回路配線膜、74…凹部、77…撥液処理層、100…液晶表示装置、14
0…トランジスタとしてのTFT、149…ソース電極、150…ドレイン電極、600
…携帯電話、700…情報処理装置、800…時計、B,B1,B2…バンク、IJ…液
滴吐出装置、M…マスク、P…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液からなる膜パターンの形成領域を区画するバンクの形成方法であって、
基板上にレジスト液を塗布し乾燥してレジストからなるバンク膜を形成する工程と、
前記バンク膜に撥液化処理ガスとプラズマとを用いた撥液化処理を行う工程と、
前記の撥液化処理後のバンク膜に対し、マスクを用いて選択的に紫外線を照射し、撥液
性を低下させる工程と、
前記の撥液化処理後のバンク膜に対し、マスクを用いて選択的に露光する工程と、
前記の撥液性を低下させる工程と露光する工程の後、前記バンク膜を現像してパターニ
ングし、バンクを形成する工程と、を備え、
前記撥液性を低下させる工程と露光する工程とを、同じマスクを用いて連続してあるい
は同時に行うことを特徴とするバンクの形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバンクの形成方法において、
前記撥液性を低下させる工程と前記露光する工程とを、同じマスクを用いて連続して行
うとき、
前記撥液性を低下させる工程の後に、露光する工程を行うことを特徴とするバンクの形
成方法。
【請求項3】
前記レジスト材料液として、ポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれ
かと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかと、を含有し、ポジ型レジストとして機
能する感光性の材料を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のバンクの形成方
法。
【請求項4】
前記レジスト材料液として、有機材料と、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかと
、を含有し、ポジ型レジストとして機能する感光性の材料を用いることを特徴とする請求
項1または2に記載のバンクの形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバンクの形成方法によって得られたバンクを用い
、該バンクに区画された膜パターンの形成領域に機能液を配し、乾燥して膜パターンを形
成することを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の膜パターンの形成方法によって得られた膜パターンを有することを特
徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置であって、
前記半導体装置は、コプレナー構造を有するトランジスタを成し、
前記膜パターンは、ソース電極及びドレイン電極を成し、
前記レジスト材料液として、有機材料を含有する材料を用いることを特徴とする半導体
装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の半導体装置を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−344922(P2006−344922A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306727(P2005−306727)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】