説明

パワートレイン制御装置

【課題】油圧制御部に異常が発生し、変速比が大きくなって機関回転速度が上昇してしまったときに、変速比を小さくして内燃機関の過回転を抑制することのできるパワートレイン制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置300は、第1制御バルブ217と、第2制御バルブ218と、フェールセーフバルブ219とを備える油圧制御部200を操作して無段変速機100における変速比を制御するとともに、内燃機関400のトルクを制御する。電子制御装置300は、第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130に適切な量の作動油を供給することができなくなったときに、内燃機関400のトルクを低下させつつ、第2プーリ150における油圧を低下させるとともに、フェールセーフバルブ219を操作して第2制御バルブ218を通じて制御された作動油を第1プーリ130にも供給するように作動油の供給経路を切り替える過回転抑制制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト式の無段変速機を備え、内燃機関の駆動力を同無段変速機によって変速するパワートレインを制御するパワートレイン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される変速機として、内燃機関の駆動力が伝達される第1プーリと、車輪に連結された第2プーリと、これら一対のプーリに巻き掛けられたベルトとを備え、各プーリにおけるベルトの巻き掛け半径を変化させることにより変速比を連続的且つ無段階に変更するベルト式の無段変速機が知られている。
【0003】
こうしたベルト式の無段変速機は、各プーリに設けられた油圧室内の油圧を変更して各プーリがベルトを挟む力である推力のバランスを変更することにより各プーリにおけるベルトの巻き掛け半径を変更し、変速比を制御する。
【0004】
具体的には、変速比を小さくする場合には、第1プーリの油圧室の油圧を上昇させて第1プーリにおける推力を増大させるとともに、第2プーリの油圧室の油圧を低下させて第2プーリにおける推力を減少させる。これにより、第1プーリにおけるベルトの巻き掛け半径が大きくなる一方、第2プーリにおけるベルトの巻き掛け半径が小さくなり、変速比が小さくなる。
【0005】
一方で、変速比を大きくする場合には、第1プーリの油圧室の油圧を低下させて第1プーリにおける推力を減少させるとともに、第2プーリの油圧室の油圧を上昇させて第2プーリにおける推力を増大させる。これにより、第1プーリにおけるベルトの巻き掛け半径が小さくなる一方、第2プーリにおけるベルトの巻き掛け半径が大きくなり、変速比が大きくなる。
【0006】
こうした無段変速機には、各プーリにおける油圧を制御する油圧制御部が設けられている。油圧制御部は、制御装置から出力される駆動指令に基づいて駆動される複数のソレノイドバルブと、ソレノイドバルブから出力される駆動油圧によって駆動される複数の制御バルブとを備えた油圧回路である。油圧制御部は、制御装置からの駆動指令に基づいて制御バルブを駆動し、作動油の油圧を調整して各プーリの油圧室に作動油を供給したり、作動油を各プーリの油圧室から排出したりすることによって各プーリの油圧室内の油圧を制御する。
【0007】
ところで、油圧制御部に異常が発生した場合には、各プーリにおける油圧を適切に制御することができなくなり、各プーリにおける油圧が一方的に増大したり、一方的に低下したりしてしまうことがある。
【0008】
例えば、第1プーリにおける油圧を制御する第1制御バルブに異物が噛み込む等して第1プーリの油圧室に必要とされる量の作動油を供給することができなくなった場合には、各プーリにおける推力のバランスが崩れ、ベルトの張力によって第1プーリが押し広げられてしまい、第1プーリの油圧室から作動油が排出されるようになる。その結果、変速比が一方的に大きくなって機関回転速度が上昇してしまう。
【0009】
そこで、特許文献1に記載の無段変速機の油圧制御装置にあっては、第1プーリに供給する作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブを設けるようにしている。この油圧制御装置にあっては、第1制御バルブによって第1プーリにおける油圧を適切に制御することができなくなったときには、フェールセーフバルブによって作動油の供給経路を切り替えて第2プーリの油圧を制御する第2制御バルブによって調整された作動油を第1プーリにも供給するようにしている。
【0010】
こうした構成を採用すれば、第1制御バルブによって第1プーリの油圧を制御することができなくなったときに、第2制御バルブによって調整された作動油が第1プーリにも供給されるようになり、各プーリの油圧が等しくされるようになる。そのため、各プーリの推力のバランスが崩れて変速比が一方的に変化してしまうことを抑制することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009‐156413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記のようにフェールセーフバルブによって作動油の供給経路を切り替え、第2制御バルブによって調整された作動油を第1プーリにも導入するようにした場合には、変速比が一方的に大きくなってしまうことを抑制することはできるものの、すでに大きくなってしまった変速比を小さくすることはできない。
【0013】
そのため、異常が発生してからフェールセーフバルブが操作されて各プーリの油圧が等しくされるまでの間に上昇してしまった機関回転速度が、フェールセーフバルブによって作動油の供給経路を切り替えたあとも、高い状態のまま保持されてしまうこととなる。
【0014】
機関回転速度が高い状態に保持される状態が長期間に亘って継続すると、無駄に燃料が消費されることとなり、燃費が著しく悪化してしまう。また、内燃機関の耐久性が低下してしまうおそれもある。
【0015】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧制御部に異常が発生し、変速比が大きくなって機関回転速度が上昇してしまったときに、変速比を小さくして内燃機関の過回転を抑制することのできるパワートレイン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関に連結された第1プーリに供給する作動油を制御する第1制御バルブと、第2プーリに供給する作動油を制御する第2制御バルブと、作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブとを備える油圧制御部を操作して無段変速機における変速比を制御するとともに、前記内燃機関のトルクを制御するパワートレイン制御装置において、前記第1制御バルブを通じて前記第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったときに、前記内燃機関のトルクを低下させつつ、前記第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、前記フェールセーフバルブを操作して前記第2制御バルブを通じて制御された作動油を前記第1プーリにも供給するように前記供給経路を切り替える過回転抑制制御を実行することをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、第1制御バルブを通じて第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなり、第1プーリから作動油が排出されて変速比が大きくなってしまい、機関回転速度が高くなってしまうときに、過回転抑制制御が実行されるようになる。
【0018】
過回転抑制制御にあっては、第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、フェールセーフバルブを操作して作動油の供給経路を切り替えることにより第2制御バルブを通じて制御された作動油を第1プーリにも供給するようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2制御バルブを通じて第1プーリに作動油が供給されるようになり第1プーリにおける油圧が増大する一方、第2プーリにあっては油圧が低下するようになる。これにより、第1プーリにおける推力が増大するとともに、第2プーリにおける推力が低下するため、異常が発生して第1プーリから作動油が排出されたときに大きくなってしまった変速比が小さくなり、機関回転速度を低下させることができるようになる。
【0019】
尚、第2プーリにおける油圧を低下させた場合には、ベルトの張力が低下するようになるため、各プーリ上でベルトが滑りやすくなるおそれがある。これに対して上記請求項1に記載の過回転抑制制御にあっては、内燃機関のトルクを低下させつつ、第2プーリにおける油圧を低下させるようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2プーリにおける油圧を低下させる際には、ベルトを介して伝達されるトルクも低下されるようになる。したがって、上記請求項1に記載の発明によれば、ベルトの張力が不足して各プーリ上でベルトが滑ってしまうことも抑制することができる。
【0020】
すなわち、上記請求項1に記載の発明によれば、油圧制御部に異常が発生し、変速比が大きくなって機関回転速度が上昇してしまったときに、変速比を小さくして内燃機関の過回転を抑制することができるようになる。
【0021】
第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなった場合には、変速比を目標変速比に一致させるように制御することができなくなるため、目標変速比と実際の変速比との乖離が大きくなる。また、第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなり、第1プーリにおける油圧が低下した場合には、変速比が大きくなり、機関回転速度が上昇するようになる。
【0022】
そこで、第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定する具体的な方法としては、請求項2に記載されているように、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度が基準回転速度以上であることに基づいて第1制御バルブを通じて第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定する、といった構成を採用することができる。
【0023】
このような構成を採用すれば、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさと機関回転速度とを監視することによって第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定することができるようになり、その推定に基づいて適切なタイミングで過回転抑制制御を実行することができるようになる。
【0024】
尚、実際の変速比は、第1プーリの回転速度と第2プーリの回転速度との比に基づいて算出することができる。また、上記基準値は、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさがこの基準値よりも大きくなっていることに基づいて変速比を目標変速比に一致させるように制御することができなくなっていることを判定することができるようにその大きさが設定されていればよい。また、上記基準回転速度は、機関回転速度がこの基準回転速度以上まで上昇したことに基づいて機関回転速度が過剰に上昇していることを判定することができるようにその大きさが設定されていればよい。例えば、請求項6に記載されているように、内燃機関における燃料噴射を停止する機関回転速度の下限値であるフューエルカット回転速度を基準回転速度にするようにしてもよい。こうした構成を採用した場合には、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度がフューエルカット回転速度まで上昇したときに過回転抑制制御が実行されるようになる。
【0025】
尚、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きくなっている場合には、これに基づいて第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなっていることを推定することができる。そのため、請求項3に記載されているように、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きくなっていることに基づいて第1制御バルブを通じて第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定し、過回転抑制制御を実行する構成を採用することもできる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、内燃機関に連結された第1プーリに供給する作動油を制御する第1制御バルブと、第2プーリに供給する作動油を制御する第2制御バルブと、作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブとを備える油圧制御部を操作して変速比を制御するとともに、前記内燃機関のトルクを制御するパワートレイン制御装置において、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度が基準回転速度以上であるときに、前記内燃機関のトルクを低下させつつ、前記第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、前記フェールセーフバルブを操作して前記第2制御バルブを通じて制御された作動油を前記第1プーリにも供給するように前記供給経路を切り替える過回転抑制制御を実行することをその要旨とする。
【0027】
上記請求項4に記載の構成によれば、目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度が基準回転速度以上であるときに、過回転抑制制御が実行されるようになる。
【0028】
そして、過回転抑制制御にあっては、上記請求項1に記載の発明と同様に、第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、フェールセーフバルブを操作して作動油の供給経路を切り替えることにより第2制御バルブを通じて制御された作動油を第1プーリにも供給するようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2制御バルブを通じて第1プーリに作動油が供給されるようになり第1プーリにおける油圧が増大する一方、第2プーリにあっては油圧が低下するようになる。これにより、第1プーリにおける推力が増大するとともに、第2プーリにおける推力が低下するため、異常が発生して第1プーリから作動油が排出されたときに大きくなってしまった変速比が小さくなり、機関回転速度を低下させることができるようになる。
【0029】
また、上記請求項4に記載の過回転抑制制御にあっても、上記請求項1に記載の過回転抑制制御と同様に、内燃機関のトルクを低下させつつ、第2プーリにおける油圧を低下させるようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2プーリにおける油圧を低下させる際には、ベルトを介して伝達されるトルクも低下されるようになる。これにより、上記請求項4に記載の発明によれば、ベルトの張力が不足して各プーリ上でベルトが滑ってしまうことも抑制することができる。
【0030】
すなわち、上記請求項4に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明と同様に、油圧制御部に異常が発生し、変速比が大きくなって機関回転速度が上昇してしまったときに、変速比を小さくして内燃機関の過回転を抑制することができるようになる。
【0031】
過回転抑制制御において内燃機関のトルクを低下させるための具体的な方法としては、請求項5に記載されているようにスロットルバルブの開度を、過回転抑制制御を開始する前の開度よりも小さくする、といった構成を採用することができる。こうした構成を採用すれば、過回転抑制制御の実行に伴って内燃機関の吸入空気量が減少するようになり、内燃機関のトルクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態にかかる電子制御装置、並びに同電子制御装置の制御対象であるパワートレインを構成する無段変速機及び内燃機関の概略構成を示す模式図。
【図2】同実施形態にかかるパワートレインにおける油圧制御部の構成を示す模式図。
【図3】同実施形態の過回転抑制制御にかかる変速制御ルーチンの一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】過回転抑制制御を通じて制御されるスロットルバルブの開度及び各プーリにおける油圧の変化と、変速比並びに機関回転速度の変化との関係を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明にかかるパワートレイン制御装置を、車両のパワートレインを統括的に制御する電子制御装置300として具体化した一実施形態について、図1〜4を参照して説明する。尚、図1は本発明のパワートレイン制御装置としての電子制御装置300、並びに同電子制御装置300の制御対象である無段変速機100及び内燃機関400の概略構成を示す模式図である。
【0034】
図1に示されるように本実施形態にかかる無段変速機100におけるトルクコンバータ110の入力軸は内燃機関400の出力軸に接続されている。一方で、同トルクコンバータ110の出力軸は、切替機構120の入力軸に接続されている。
【0035】
この切替機構120は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、フォワードクラッチ121とリバースブレーキ122とを備えている。そして、切替機構120の出力軸は入力側のプーリである第1プーリ130に連結されている。
【0036】
これにより、フォワードクラッチ121を係合させる一方でリバースブレーキ122を解放しているときには、トルクコンバータ110を介して入力された内燃機関400の駆動力がそのまま第1プーリ130に伝達される状態となる。これに対して、フォワードクラッチ121を解放する一方でリバースブレーキ122を係合させているときには、トルクコンバータ110を介して入力された内燃機関400の駆動力が反転されて逆回転の駆動力として第1プーリ130に伝達される状態となる。
【0037】
尚、この切替機構120にあっては、フォワードクラッチ121とリバースブレーキ122との双方を解放することにより、内燃機関400と第1プーリ130との間の駆動力の伝達が遮断されるようになっている。
【0038】
このようにトルクコンバータ110及び切替機構120を介して内燃機関400に連結されている第1プーリ130は、ベルト140によって出力側のプーリである第2プーリ150と連結されている。すなわち、図1の左側下方に示されるように平行に並べられた第1プーリ130と第2プーリ150には、1本のベルト140が巻き掛けられており、このベルト140を介して第1プーリ130と第2プーリ150との間で駆動力が伝達されるようになっている。
【0039】
第2プーリ150は、図示しない減速ギアを介してディファレンシャルに連結されている。そのため、第2プーリ150の回転は減速ギアを介してディファレンシャルに伝達され、ディファレンシャルを介して左右の駆動輪に伝達されるようになっている。
【0040】
第1プーリ130は、固定シーブと、可動シーブとを組み合わせることによって構成されており、その内部には図1に破線で示されるように油圧室134が区画形成されている。
【0041】
また、第2プーリ150も、固定シーブと可動シーブとを組み合わせることによって構成されており、図1に破線で示されるように第2プーリ150にも油圧室154が区画形成されている。
【0042】
ベルト140は上述したように第1プーリ130と第2プーリ150とに巻き掛けられている。そして、ベルト140は、第1プーリ130における固定シーブと可動シーブとの間に挟み込まれているとともに、第2プーリ150における固定シーブと可動シーブとの間に挟み込まれている。
【0043】
そのため、第1プーリ130における油圧室134内の油圧Pinを変化させることにより、第1プーリ130における固定シーブと可動シーブとの間隔が変化し、第1プーリ130においてベルト140に作用する推力Wpriが変化するようになる。また、第2プーリ150における油圧室154内の油圧Poutを変化させることにより、第2プーリ150における固定シーブと可動シーブとの間隔が変化し、第2プーリ150においてベルト140に作用する推力Wsecが変化するようになる。
【0044】
図1に示されるように各プーリ130,150には、ベルト140と接触する部分に勾配が設けられている。そのため、第1プーリ130における推力Wpriを変更するとともに、第2プーリ150における推力Wsecを変更することにより、各プーリ130,150におけるベルト140の巻き掛け半径Rin,Routが変化するようになる。
【0045】
具体的には、第1プーリ130における油圧Pinを増大させて推力Wpriを増大させるとともに、第2プーリ150における油圧Poutを減少させて推力Wsecを減少させることにより、第1プーリ130におけるベルト140の巻き掛け半径Rinが大きくなり、第2プーリ150におけるベルト140の巻き掛け半径Routが小さくなる。一方で、第1プーリ130における油圧Pinを減少させて推力Wpriを減少させるとともに、第2プーリ150における油圧Poutを増大させて推力Wsecを増大させることにより、第1プーリ130におけるベルト140の巻き掛け半径Rinが小さくなり、第2プーリ150におけるベルト140の巻き掛け半径Routが大きくなる。
【0046】
無段変速機100にあっては、各プーリ130,150の油圧Pin,Poutを変更することにより、推力Wpri,Wsecを変更して各プーリ130,150におけるベルト140の巻き掛け半径Rin,Routを変更し、変速比γを制御する。
【0047】
具体的には、変速比γを小さくするアップシフトの場合には、第1プーリ130の油圧室134の油圧Pinを上昇させて第1プーリ130における推力Wpriを増大させるとともに、第2プーリ150の油圧室154の油圧Poutを低下させて第2プーリ150における推力Wsecを減少させる。これにより、第1プーリ130におけるベルト140の巻き掛け半径Rinが大きくなる一方、第2プーリ150におけるベルト140の巻き掛け半径Routが小さくなり、変速比γが小さくなる。
【0048】
一方で、変速比γを大きくするダウンシフトの場合には、第1プーリ130の油圧室134の油圧Pinを低下させて第1プーリ130における推力Wpriを減少させるとともに、第2プーリ150の油圧室154の油圧Poutを上昇させて第2プーリ150における推力Wsecを増大させる。これにより、第1プーリ130におけるベルト140の巻き掛け半径Rinが小さくなる一方、第2プーリ150におけるベルト140の巻き掛け半径Routが大きくなり、変速比γが大きくなる。
【0049】
図1に示されるように、各プーリ130,150の油圧室134,154は、油圧制御部200と接続されている。油圧制御部200は、電子制御装置300から出力される駆動指令に基づいて駆動される複数のソレノイドバルブと、このソレノイドバルブから出力される駆動油圧によって駆動される制御バルブ217,218を備えた油圧回路である。そして、制御バルブ217,218の操作を通じて作動油の油圧を調整して各油圧室134,154に作動油を供給したり、各油圧室134,154から作動油を排出したりすることにより、各油圧室134,154内の油圧Pin,Poutを調整する。
【0050】
電子制御装置300は、内燃機関400の制御にかかる演算処理や、油圧制御部200を通じた無段変速機100の制御にかかる演算処理等を実行する中央演算処理装置(CPU)を備えている。また、電子制御装置300は、演算処理のための演算プログラムや演算マップ、そして各種のデータが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算の結果を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている。
【0051】
図1に示されるように電子制御装置300には、下記のようなセンサが接続されている。
アクセルポジションセンサ301は運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出する。エアフロメータ302は内燃機関400に導入される空気の量である吸入空気量GA及び温度を検出する。クランク角センサ303は内燃機関400の出力軸であるクランクシャフトの回転角に基づいて機関回転速度NEを検出する。タービン回転速度センサ304は切替機構120の近傍に設けられてトルクコンバータ110のタービンの回転速度を検出する。第1プーリ回転速度センサ305は第1プーリ130の近傍に設けられて第1プーリ130の回転速度Ninを検出する。第2プーリ回転速度センサ306は第2プーリ150の近傍に設けられて第2プーリ150の回転速度Noutを検出する。車輪速センサ307は各車輪の近傍に設けられて各車輪の回転速度をそれぞれ検出する。
【0052】
電子制御装置300は、これらの各種センサ301〜307からの出力信号に基づいて、内燃機関400や無段変速機100を統括的に制御する。例えば、第2プーリ回転速度センサ306によって検出される第2プーリ150の回転速度Noutに基づいて車速SPDを算出する。また、アクセルポジションセンサ301によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量及び現在の車速SPDに基づいて要求トルクを算出する。そしてこの要求トルクを実現するように内燃機関400の吸気通路410に設けられたスロットルバルブ411の開度Thを調整して吸入空気量GAを調整する。また、電子制御装置300は、こうした吸入空気量GAの調整とあわせて、要求トルクを最も効率的に発生させることのできる変速比γとして目標変速比γtrgを算出し、実際の変速比γを算出された目標変速比γtrgに一致させるように油圧制御部200を制御する変速制御を実行する。
【0053】
尚、この変速制御にあっては、第1プーリ130の回転速度Ninと第2プーリ150の回転速度Noutとに基づいて現在の変速比γを算出し、変速比γを目標変速比γtrgに近づけるために、第1プーリ130における油圧Pinを変更して推力Wpriを変更する。そして、第1プーリ130における推力Wpriを変更するとともに、ベルト140が各プーリ130,150に対して滑らないように第2プーリ150における油圧Poutを変更して推力Wsecを変更する。
【0054】
以下、図2を参照して、各プーリ130,150における油圧Pin,Poutを制御する油圧制御部200の構成を詳しく説明する。尚、図2は油圧制御部200における各油圧室134,154への作動油の供給経路を示す模式図である。
【0055】
図2の左側に示されるようにこの油圧制御部200には、オイルポンプ211によって汲み上げられた作動油を調圧して制御元圧となるライン圧Plを作り出すレギュレータバルブ212が設けられている。尚、レギュレータバルブ212は、ライン圧Plの大きさに基づいてオイルポンプ211から吐出された作動油の一部を図示しない別のレギュレータバルブに送り出す。こうしてレギュレータバルブ212から別のレギュレータバルブに送り出された作動油は、トルクコンバータ110や切替機構120に油圧Psecとして供給される。レギュレータバルブ212はこのようにオイルポンプ211から吐出された作動油の一部を排出することにより、ライン圧Plを調整する。
【0056】
また、この油圧制御部200には、ライン圧Plを更に減圧して、一定のモジュレータ圧Pmを作り出すモジュレータバルブ214が設けられている。モジュレータバルブ214の出力するモジュレータ圧Pmは、第1ソレノイドバルブ215及び第2ソレノイドバルブ216に供給される。第1ソレノイドバルブ215は電子制御装置300からの駆動指令によって電気的に駆動され、モジュレータ圧Pmを調整して第1制御バルブ217の駆動油圧である第1ソレノイド圧Pslpを作り出す。一方、第2ソレノイドバルブ216は電子制御装置300からの駆動指令によって電気的に駆動され、モジュレータ圧Pmを調整して第2制御バルブ218の駆動油圧である第2ソレノイド圧Pslsを作り出す。
【0057】
第1ソレノイドバルブ215から出力された第1ソレノイド圧Pslpは、第1制御バルブ217に入力される。第1制御バルブ217は、この第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plを調整することにより、第1プーリ130の油圧室134に供給する油圧Pinを制御する。
【0058】
尚、この第1制御バルブ217は、入力される第1ソレノイド圧Pslpが高いときほど開弁側への駆動力が大きくなるように構成されている。そのため、第1ソレノイド圧Pslpが高いときほど、第1制御バルブ217から出力される油圧が高くなる。また、第1制御バルブ217にはドレンポート217aが設けられており、油圧室134内の油圧Pinが第1ソレノイド圧Pslpの大きさに対応する油圧よりも高くなった場合には、ドレンポート217aを通じて油圧室134内の作動油が排出されて油圧Pinが第1ソレノイド圧Pslpの大きさに対応する油圧に調整されるようになっている。
【0059】
一方、第2ソレノイドバルブ216から出力された第2ソレノイド圧Pslsは、第2制御バルブ218に入力される。第2制御バルブ218は、この第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plを調整することにより、第2プーリ150の油圧室154に供給する油圧Poutを制御する。
【0060】
尚、この第2制御バルブ218は、入力される第2ソレノイド圧Pslsが高いときほど開弁側への駆動力が大きくなるように構成されている。そのため、第2ソレノイド圧Pslsが高いときほど、第2制御バルブ218から出力される油圧が高くなる。また、第2制御バルブ218にはドレンポート218aが設けられており、油圧室154内の油圧Poutが第2ソレノイド圧Pslsの大きさに対応する油圧よりも高くなった場合には、ドレンポート218aを通じて油圧室154内の作動油が排出されて油圧Poutが第2ソレノイド圧Pslsの大きさに対応する油圧に調整されるようになっている。
【0061】
電子制御装置300は、変速制御を通じて第1ソレノイドバルブ215及び第2ソレノイドバルブ216にそれぞれ駆動指令を出力し、第1ソレノイド圧Pslpと第2ソレノイド圧Pslsを制御する。これにより、電子制御装置300は、この油圧制御部200を通じて、各プーリ130,150の油圧室134,154における油圧Pin,Poutを調整し、変速比γを目標変速比γtrgに一致させるように制御する。
【0062】
ところで、第1制御バルブ217や第1ソレノイドバルブ215に異常が発生した場合には、第1プーリ130における油圧Pinを適切に制御することができなくなり、第1プーリ130における油圧Pinが一方的に増大したり、一方的に低下したりしてしまうおそれがある。
【0063】
例えば、第1制御バルブ217に異物が噛み込む等して第1プーリ130の油圧室134に必要な量の作動油を供給することができなくなった場合には、油圧Pinが不足して各プーリ130,150における推力Wpri,Wsecのバランスが崩れ、ベルト140の張力によって第1プーリ130が押し広げられてしまう。その結果、変速比γが一方的に大きくなって機関回転速度NEが上昇してしまう。
【0064】
これに対して油圧制御部200には、第1プーリ130に供給する作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブ219が設けられている。
第1制御バルブ217によって調整された作動油は、図2の右側下方に示されるようにフェールセーフバルブ219を介して第1プーリ130の油圧室134に供給される。そして、第1プーリ130にあっては、上述したように油圧室134内の油圧Pinに応じて可動シーブが変位し、固定シーブと可動シーブとの間隔が変化する。
【0065】
一方、第2制御バルブ218によって調整された作動油は、図2の右側上方に示されるように、直接、第2プーリ150の油圧室154に供給される。そして、第2プーリ150にあっては、上述したように油圧室154内の油圧Poutに応じて可動シーブが変位し、固定シーブと可動シーブとの間隔が変化する。
【0066】
第1制御バルブ217と第1プーリ130との間に設けられているフェールセーフバルブ219には、図2に示されるように第1制御バルブ217から出力される作動油が導入される第1入力ポート219aと、第2制御バルブ218から出力される作動油が導入される第2入力ポート219bとが設けられている。そして、フェールセーフバルブ219は、切り替え用ソレノイドバルブ220による駆動油圧の印加に応じて動作する弁体の位置により、第1入力ポート219aと第2入力ポート219bとのいずれか一方を選択的に出力ポート219cに連通するように構成されている。
【0067】
具体的には、切り替え用ソレノイドバルブ220が「OFF」とされ、弁体に駆動油圧が印加されていないノーマル状態では、第1入力ポート219aが出力ポート219cに連通されるようになっている。一方、切り替え用ソレノイドバルブ220が「ON」とされ、弁体に駆動油圧が印加されているフェール状態では、第2入力ポート219bが出力ポート219cに連通されるようになっている。すなわち、フェールセーフバルブ219は、第1制御バルブ217を通じて調整された作動油と第2制御バルブ218を通じて調整された作動油のうち、いずれか一方を選択して第1プーリ130に出力するように構成されている。
【0068】
電子制御装置300は、第1制御バルブ217によって第1プーリ130における油圧Pinを適切に制御することができなくなったときには、切り替え用ソレノイドバルブ220を「ON」にする。これにより、第2制御バルブ218によって調整された作動油が第1プーリ130にも供給されるように作動油の供給経路が切り替えられる。これにより、各プーリ130,150の油圧Pin,Poutが等しくされ、変速比γが一方的に大きくなってしまうことを抑制することができるようになる。
【0069】
尚、図2の右側に示されるように第1プーリ130の油圧室134に作動油を導入する油路と、第2プーリ150の油圧室154に作動油を導入する油路には、オリフィスがそれぞれ設けられている。これらのオリフィスは、各油圧室134,154内の作動油が急速に排出されて油圧Pin,Poutが急低下し、ベルト140が各プーリ130,150上で滑ってしまうことを防止する目的で設けられている。
【0070】
また、この油圧制御部200では、ライン圧Plを必要最小限に保つべく、ライン圧Plのフィードバック調整を行うようにしている。具体的には、第1プーリ130の油圧Pinと、第2ソレノイドバルブ216の出力する第2ソレノイド圧Pslsを、それぞれ還元バルブ213に導入し、ライン圧Plのフィードバック調整を行うようにしている。
【0071】
還元バルブ213は、これら導入された油圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに応じてモジュレータ圧Pmを調整し、ライン圧調整油圧Psrvを作り出す。このライン圧調整油圧Psrvは、上記レギュレータバルブ212に導入され、レギュレータバルブ212におけるライン圧Plの調整に供される。
【0072】
尚、こうした還元バルブ213によるフィードバック調整を通じて、通常のライン圧Plは、油圧Pin及び油圧Poutのうちのより高い方よりも若干高い油圧に調整されるようになっている。
【0073】
上述したように本実施形態にかかるパワートレインにあっては、第1制御バルブ217によって第1プーリ130における油圧を適切に制御することができなくなったときには、フェールセーフバルブ219を通じて作動油の供給経路を切り替え、第2制御バルブ218によって調整された作動油を第1プーリ130にも導入するようにしている。
【0074】
ところが、上記のように作動油の供給経路を切り替え、第1プーリ130における油圧Pinと第2プーリ150のおける油圧Poutとを等しくするようにした場合には、変速比γが一方的に大きくなってしまうことを抑制することはできるものの、すでに大きくなってしまった変速比γを小さくすることはできない。
【0075】
そのため、異常が発生してからフェールセーフバルブ219が操作されて各プーリ130,150の油圧Pin,Poutが等しくされるまでの間に上昇してしまった機関回転速度NEが、フェールセーフバルブ219によって作動油の供給経路を切り替えたあとも、高い状態のまま保持されてしまうこととなる。
【0076】
機関回転速度NEが高い状態に保持される状態が長期間に亘って継続すると、無駄に燃料が消費されることとなり、燃費が著しく悪化してしまう。また、内燃機関400の耐久性が低下してしまうおそれもある。
【0077】
そこで、本実施形態にかかる電子制御装置300にあっては、油圧制御部200に異常が発生したときに、変速比γを小さくして機関回転速度NEを低下させる過回転抑制制御を実行するようにしている。
【0078】
以下、図3を参照してこの過回転抑制制御について説明する。尚、図3は、本実施形態の電子制御装置300によって実行される変速制御ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャートである。この変速制御ルーチンは、機関運転中に電子制御装置300において実行される。
【0079】
この変速制御ルーチンを実行すると、電子制御装置300は、まずステップS10において目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きいか否かを判定する。
【0080】
このステップS10では、具体的には第1プーリ130の回転速度Ninと第2プーリ150の回転速度Noutとに基づいて現在の変速比γを算出し、目標変速比γtrgの値と算出された変速比γの値との差の絶対値と、基準値Xとを比較する。そして、目標変速比γtrgの値と算出された変速比γの値との差の絶対値が基準値Xよりも大きいときに目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きい旨を判定する。
【0081】
尚、基準値Xは、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさがこの基準値Xよりも大きいことに基づいて、無段変速機100又は油圧制御部200に異常が発生し、変速比γを目標変速比γtrgに一致させるように制御することができなくなっていることを推定することができるように、その大きさが設定されている。
【0082】
ステップS10において、目標変速比γtrgと変速比γとの乖離の大きさが基準値X以下である旨の判定がなされた場合(ステップS10:NO)には、ステップS100へと進み、通常の変速制御を実行する。
【0083】
この通常の変速制御において電子制御装置300は、具体的には、第1プーリ130における油圧Pinの目標値である目標油圧Pintrgと、第2プーリ150における油圧Poutの目標値である目標油圧Pouttrgとを設定する。そして、この目標油圧Pintrg,Pouttrgに基づいて第1ソレノイドバルブ215と第2ソレノイドバルブ216とに駆動指令をそれぞれ出力する。
【0084】
ここでは、まず、各プーリ130,150上でベルト140を滑らせずに変速比γを目標変速比γtrgに保持するために必要な第2プーリ150の油圧Poutである定常油圧Poutblを算出し、この定常油圧Poutblの値を、第2プーリ150における目標油圧Pouttrgとして設定する。
【0085】
尚、定常油圧Poutblの算出は以下のような手順で行う。
まず、各プーリ130,150上でベルト140を滑らせずに変速比γを目標変速比γtrgに維持するために必要な最小限の推力である下限推力Wminを算出する。下限推力Wminは、下記の数式(1)によって示される関係を利用して算出することができる。
【0086】
【数1】

尚、上記の数式(1)における「Tin」はベルト140を介して伝達するトルクである第1プーリ130への入力トルクであり、上記の数式(1)における「Rin」は変速比γが目標変速比γtrgになっているときの第1プーリ130におけるベルト140の巻き掛け半径Rinである。また、「μ」は第1プーリ130とベルト140との間の摩擦係数であり、「α」は図1に示されるように第1プーリ130におけるベルト140が接触する部分の勾配の角度である。
【0087】
次に、下記の数式(2)に示されるように、算出された下限推力Wminの値を第2プーリ150の油圧室154における可動シーブの受圧面積Aoutの値で除することによって定常油圧Poutblを算出する。
【0088】
【数2】

すなわち、定常油圧Poutblは、下限推力Wminの値を可動シーブの受圧面積Aoutで割った商である。尚、ここで、ベルト140の滑りをより確実に抑制するために、下限推力Wminの値に安全係数として「1.0」よりも大きな値を掛け、その積を可動シーブの受圧面積Aoutで割った商を定常油圧Poutblとして算出するようにしてもよい。
【0089】
一方、第1プーリ130における目標油圧Pintrgは、各プーリ130,150上でベルト140を滑らせずに変速比γを目標変速比γtrgに保持するために必要な第1プーリ130の油圧Pinである定常油圧Pinblに、変速油圧Pindifとフィードバック油圧Pinfbを加算することによって算出される。
【0090】
変速油圧Pindifは、変速比γを目標変速比γtrgに速やかに近づけるために設定される値である。この変速油圧Pindifは、現在の変速比γと目標変速比γtrgとの乖離の大きさに基づいて、変速比γと目標変速比γtrgとの乖離の大きさに比例するように算出される。また、この変速油圧Pindifは、変速比γを大きくするダウンシフトのときには変速比γと目標変速比γtrgとの乖離の大きさが大きいときほど目標油圧Pintrgを小さくするように負の値として算出される。一方で、変速油圧Pindifは、変速比γを小さくするアップシフトのときには変速比γと目標変速比γtrgとの乖離の大きさが大きいときほど目標油圧Pintrgを大きくするように正の値として算出される。
【0091】
フィードバック油圧Pinfbは、その時点までの実際の変速比γと目標変速比γtrgとの乖離量を積分した値に基づいて算出される値であり、油圧制御部200や無段変速機100の特性のばらつきや、経年変化による特性の変化等に起因する変速比γと目標変速比γtrgとのずれを低減するための値である。
【0092】
そして、定常油圧Pinblは、上記の第2プーリ150における定常油圧Poutblを算出する際に使用した下限推力Wminと、目標変速比γtrgにおける推力比Rと、第1プーリ130の油圧室134における可動シーブの受圧面積Ainとに基づいて下記の数式(3)によって算出される。
【0093】
【数3】

尚、推力比Rは、第1プーリ130における推力Wpriに対する第2プーリ150における推力Wsecの比、すなわち推力Wsecを推力Wpriで除した商であり、無段変速機100にあっては、変速比γを保持するための推力比Rの値が、変速比γの値ごとに一義的に決まるようになっている。
【0094】
例えば、変速比γがある値「γ1」になるときには、推力比Rがその変速比「γ1」に対応する推力比「R1」になる。そして、変速比γが「γ2」に変化した場合には、推力比Rがその変速比「γ2」に対応する推力比「R2」になる。
【0095】
また、第2プーリ150における定常油圧Poutblを算出する際に、下限推力Wminの値に安全係数として「1.0」よりも大きな値を掛けるようにした場合には、上記のように定常油圧Pinblを算出する際にも、下限推力Wminの値に同じ安全係数を掛けるようにする。
【0096】
ステップS100の通常の変速制御にあっては、このようにして算出される定常油圧Pinblと、変速油圧Pindifと、フィードバック油圧Pinfbとを加算した値を第1プーリ130における目標油圧Pintrgとして設定する。
【0097】
そして、目標油圧Pouttrg及び目標油圧Pintrgを設定すると、電子制御装置300は、これら目標油圧Pintrg,Pouttrgに対応する駆動指令を油圧制御部200における第1ソレノイドバルブ215及び第2ソレノイドバルブ216にそれぞれ出力し、この変速制御ルーチンを終了する。
【0098】
一方、ステップS10において、目標変速比γtrgと変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きい旨の判定がなされた場合(ステップS10:YES)には、このルーチンはステップS20へと進む。すなわち目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離が大きく、変速比γを目標変速比γtrgに一致させるように制御することができなくなるような異常が発生していることが推定される場合には、ステップS20へと進む。そして、電子制御装置300は、ステップS20において、変速比固定中ではないことを確認する。
【0099】
このステップS20では、マニュアル変速モード等、変速比γを所定の値に固定する状態であるか否かを判定し、変速比固定中ではない旨の判定がなされた場合(ステップS20:YES)にステップS30へと進む。一方、ステップS20において変速比固定中である旨の判定がなされた場合(ステップS20:NO)には、ステップS100へと進み、上述したように通常の変速制御を実行する。
【0100】
ステップS30では、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上であるか否かを判定する。フューエルカット回転速度NEfcは、内燃機関400における燃料噴射を停止する回転速度領域の下限値に相当する値であり、電子制御装置300は機関回転速度NEがこのフューエルカット回転速度NEfc以上のときに内燃機関400における燃料噴射を停止する。
【0101】
ステップS30において、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc未満である旨の判定がなされた場合(ステップS30:NO)には、このルーチンはステップS100へと進み、上述したように通常の変速制御を実行する。
【0102】
一方で、ステップS30において、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上である旨の判定がなされた場合(ステップS30:YES)には、このルーチンはステップS200へと進み、以下ステップS200〜S220を通じて過回転抑制制御を実行する。
【0103】
ステップS200では、電子制御装置300は内燃機関400のトルクを低下させる。具体的には、スロットルバルブ411の開度Thを通常の変速制御を実行していたときよりも小さくすることにより、内燃機関400のトルクを低下させる。
【0104】
そして、ステップS210において、電子制御装置300は、低下するトルクに合わせて第2プーリ150における油圧Poutを低下させる。上述したように通常の変速制御にあっては、第1プーリ130に入力される内燃機関400のトルクTinに基づいて第2プーリ150における目標油圧Pouttrgを設定している。そのため、ここでは、通常の変速制御と同様に内燃機関400のトルクTinに基づいて第2プーリ150における目標油圧Pouttrgを設定し、内燃機関400のトルクTinの低下に合わせて油圧Poutを低下させるようにしている。
【0105】
こうしてステップS200及びステップS210を通じて内燃機関400のトルクを低下させつつ、第2プーリ150における油圧Poutを低下させると、電子制御装置300はステップS220において、フェールセーフバルブ219をフェール側に駆動する。
【0106】
ここでは、上述したように切り替え用ソレノイドバルブ220を「ON」にすることにより、フェールセーフバルブ219をフェール側に駆動し、第2制御バルブ218を通じて調整された作動油を第1プーリ130に導入するように作動油の供給経路を切り替える。
【0107】
こうしてステップS200〜S220を通じて過回転抑制制御を実行すると電子制御装置300はこの変速制御ルーチンを終了する。
このように本実施形態にかかる変速制御ルーチンにあっては、変速比γが固定されていないときに、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きく、且つ機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上である旨の判定がなされた場合に、過回転抑制制御を実行する。
【0108】
以下、この過回転抑制制御による作用について図4を参照して説明する。尚、図4は過回転抑制制御を通じて制御される油圧Pin,Pout及びスロットルバルブ411の開度Thの変化と、変速比γ並びに機関回転速度NEの変化との関係を示すタイムチャートである。
【0109】
第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなってしまった場合には、図4に示されるように、油圧Pin,Poutのバランスが崩れて第1プーリ130の油圧室134から作動油が排出されて油圧Pinが小さくなり、変速比γが大きくなってしまう。そして、こうして変速比γが大きくなってしまうと機関回転速度NEが上昇するようになる(図4における時刻t1以前)。
【0110】
尚、こうして異常が発生し、変速比γが一方的に大きくなってしまった状況にあっては、目標変速比γtrgと変速比γとの乖離が大きくなり、上述した変速制御ルーチンを通じて乖離の大きさが基準値X以上である旨の判定がなされるようになる。
【0111】
そして、図4に示されるように時刻t1において機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfcまで上昇し、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上である旨の判定がなされると、過回転抑制制御が実行されてスロットルバルブ411の開度Thが小さくされるようになる。
【0112】
これにより、内燃機関400のトルクが低下するとともに、第2プーリにおける油圧Poutが低下するようになる。また、過回転抑制制御を通じてフェールセーフバルブ219がノーマル側からフェール側に駆動され、第2制御バルブ218を通じて調整された作動油が第1プーリ130の油圧室134にも供給されるようになる。
【0113】
その結果、図4の中央に示されるように第1プーリ130における油圧Pinが第2プーリにおける油圧Poutと同じ水準まで上昇するようになる。こうして第2プーリにおける油圧Poutが低下する一方で、第1プーリにおける油圧Pinが増大すると、第1プーリ130における推力Wpriが増大するとともに、第2プーリ150における推力Wsecが低下し、図4の上段に示されるように変速比γが低下するようになる。また、こうして過回転抑制制御を通じて変速比γが小さくされるとともに、内燃機関400のトルクが低下させられることにより、図4の下段に示されるように機関回転速度NEも低下するようになる。
【0114】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなったときに、過回転抑制制御が実行されるようになる。
【0115】
そして、過回転抑制制御にあっては、第2プーリ150における油圧Poutを低下させるとともに、フェールセーフバルブ219を操作して作動油の供給経路を切り替えることにより第2制御バルブ218を通じて制御された作動油を第1プーリ130の油圧室134にも供給するようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2制御バルブ218を通じて第1プーリ130の油圧室134に作動油が供給されるようになり第1プーリ130における油圧Pinが増大する一方、第2プーリ150にあっては油圧Poutが低下するようになる。これにより、第1プーリ130における推力Wpriが増大するとともに、第2プーリ150における推力Wsecが低下するため、異常が発生して第1プーリ130の油圧室134から作動油が排出されたときに大きくなってしまった変速比γが小さくなり、機関回転速度NEを低下させることができるようになる。
【0116】
すなわち、油圧制御部200に異常が発生し、変速比γが大きくなって機関回転速度NEが上昇してしまったときに、変速比γを小さくして内燃機関400の過回転を抑制することができる。
【0117】
(2)第2プーリ150における油圧Poutを低下させた場合には、推力Wsecが低下してベルト140の張力が低下するようになるため、各プーリ130,150上でベルト140が滑りやすくなるおそれがある。これに対して上記実施形態の過回転抑制制御にあっては、内燃機関400のトルクを低下させつつ、第2プーリ150における油圧Poutを低下させるようにしている。そのため、過回転抑制制御の実行に伴って第2プーリ150における油圧Poutを低下させる際には、ベルト140を介して伝達されるトルクも低下されるようになる。したがって、ベルト140の張力が不足して各プーリ130,150上でベルト140が滑ってしまうことも抑制することができる。
【0118】
(3)第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなった場合には、変速比γを目標変速比γtrgに一致させるように制御することができなくなるため、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離が大きくなる。また、第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなり、第1プーリ130における油圧Pinが低下した場合には、変速比γが大きくなり、機関回転速度NEが上昇するようになる。
【0119】
そこで、上記実施形態では、目標変速比γtrgと変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きく、且つ機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上であることに基づいて第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130に適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定し、過回転抑制制御を実行するようにしている。
【0120】
このような構成を採用すれば、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさと機関回転速度NEとを監視することによって第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定することができるようになり、その推定に基づいて適切なタイミングで過回転抑制制御を実行することができるようになる。
【0121】
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きくなっている場合には、これに基づいて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなっていることを推定することができる。そのため、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上であるか否かを判定する構成(図3におけるステップS30)を省略し、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさが基準値Xよりも大きくなっていることに基づいて過回転抑制制御を実行する構成を採用することもできる。
【0122】
ただし、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさは、急変速の際の変速制御の遅れ等によっても大きくなることがある。そのため、より的確に第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定するためには、上記実施形態のように、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさに加えて、機関回転速度NEを監視する構成を採用することが望ましい。
【0123】
・また、変速比固定中か否かを判定する構成(図3におけるステップS20)を省略してもよい。
・また、基準値Xは、目標変速比γtrgと実際の変速比γとの乖離の大きさがこの基準値Xよりも大きくなっていることに基づいて変速比γを目標変速比γtrgに一致させるように制御することができなくなっていることを判定することができるようにその大きさが設定されていればよいため、その大きさは適宜変更することができる。
【0124】
・上記実施形態にあっては、フューエルカット回転速度NEfcを基準回転速度として設定し、変速制御ルーチンのステップS30において機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上であるか否かを判定する構成を示した。これに対して、ステップS30において機関回転速度NEと比較する基準回転速度は、機関回転速度NEがこの基準回転速度以上まで上昇したことに基づいて機関回転速度NEが過剰に上昇していることを判定することができるようにその大きさが設定されていればよい。そのため、本発明は上記のようにフューエルカット回転速度NEfcを基準回転速度として設定し、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEfc以上であるときに過回転抑制制御を実行するものに限定されるものではない。すなわち、基準回転速度の大きさは、機関回転速度NEがこの基準回転速度以上まで上昇したことに基づいて機関回転速度NEが過剰に上昇していることを判定することができるような大きさであれば、適宜変更することができる。
【0125】
・第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定する方法は、適宜変更することができる。例えば、第1プーリ130の油圧室134や、同油圧室134に接続されている油路に油圧Pinを検出する油圧センサを設け、この油圧センサによって検出される作動油の油圧Pinを監視する構成を採用することもできる。こうした構成を採用する場合には、油圧センサによって検出される作動油の油圧Pinが、電子制御装置300から出力される駆動指令に反して低下していることが判定されたときに、第1制御バルブ217を通じて第1プーリ130の油圧室134に適切な量の作動油を供給することができなくなったこと推定するようにすればよい。
【0126】
・過回転抑制制御において、内燃機関400のトルクを低下させる方法は適宜変更することができる。例えば、過回転抑制制御を開始する前よりもスロットルバルブ411の開度を低下させる構成としては、所定の開度までスロットルバルブ411の開度を低下させる構成を採用することができる。また、過回転抑制制御を実行する前のスロットルバルブ411の開度に対して「1.0」よりも小さな係数を乗じることにより、スロットルバルブ411の開度を所定の割合で小さくするといった構成を採用することもできる。
【0127】
・また、スロットルバルブ411の開度を小さくすることにより吸入空気量GAを減少させる方法に替えて、内燃機関400の吸気バルブのリフト量やリフト期間を変更して吸入空気量GAを減少させる方法を採用することもできる。
【0128】
・また、燃料噴射量を減少させることにより内燃機関400のトルクを低下させる方法、更には点火時期を遅角させることにより内燃機関400のトルクを低下させる方法等を採用することもできる。またこれら各種の方法を組み合わせて内燃機関400のトルクを低下させる構成を採用することもできる。
【0129】
・上記実施形態では、第2ソレノイド圧Pslsを還元バルブ213に導入するようにしていた。そして還元バルブ213では、油圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに基づいてライン圧調整油圧Psrvを設定し、レギュレータバルブ212に出力するようにしていた。これに対して第2ソレノイド圧Pslsに替えて第2プーリ150の油圧室154に供給されている油圧Poutを還元バルブ213に導入し、油圧Pinと油圧Poutに基づいてライン圧Plをフィードバック調整するようにしてもよい。
【0130】
・上記実施形態では、車両に搭載されるパワートレインを統括的に制御する電子制御装置300として、本発明にかかるパワートレイン制御装置を具体化した構成を例示したが、この発明は、車両に搭載されるパワートレインに限定的に適用されるものではなく、車両に搭載されるパワートレイン以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0131】
100…無段変速機、110…トルクコンバータ、120…切替機構、121…フォワードクラッチ、122…リバースブレーキ、130…第1プーリ、134…油圧室、140…ベルト、150…第2プーリ、154…油圧室、200…油圧制御部、211…オイルポンプ、212…レギュレータバルブ、213…還元バルブ、214…モジュレータバルブ、215…第1ソレノイドバルブ、216…第2ソレノイドバルブ、217…第1制御バルブ、218…第2制御バルブ、219…フェールセーフバルブ、220…切り替え用ソレノイドバルブ、300…電子制御装置、301…アクセルポジションセンサ、302…エアフロメータ、303…クランク角センサ、304…タービン回転速度センサ、305…第1プーリ回転速度センサ、306…第2プーリ回転速度センサ、307…車輪速センサ、400…内燃機関、410…吸気通路、411…スロットルバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に連結された第1プーリに供給する作動油を制御する第1制御バルブと、第2プーリに供給する作動油を制御する第2制御バルブと、作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブとを備える油圧制御部を操作して無段変速機における変速比を制御するとともに、前記内燃機関のトルクを制御するパワートレイン制御装置において、
前記第1制御バルブを通じて前記第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったときに、前記内燃機関のトルクを低下させつつ、前記第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、前記フェールセーフバルブを操作して前記第2制御バルブを通じて制御された作動油を前記第1プーリにも供給するように前記供給経路を切り替える過回転抑制制御を実行する
ことを特徴とするパワートレイン制御装置。
【請求項2】
目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度が基準回転速度以上であることに基づいて前記第1制御バルブを通じて前記第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定し、前記過回転抑制制御を実行する
請求項1に記載のパワートレイン制御装置。
【請求項3】
目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きくなっていることに基づいて前記第1制御バルブを通じて前記第1プーリに適切な量の作動油を供給することができなくなったことを推定し、前記過回転抑制制御を実行する
請求項1に記載のパワートレイン制御装置。
【請求項4】
内燃機関に連結された第1プーリに供給する作動油を制御する第1制御バルブと、第2プーリに供給する作動油を制御する第2制御バルブと、作動油の供給経路を切り替えるフェールセーフバルブとを備える油圧制御部を操作して変速比を制御するとともに、前記内燃機関のトルクを制御するパワートレイン制御装置において、
目標変速比と実際の変速比との乖離の大きさが基準値よりも大きく、且つ機関回転速度が基準回転速度以上であるときに、前記内燃機関のトルクを低下させつつ、前記第2プーリにおける油圧を低下させるとともに、前記フェールセーフバルブを操作して前記第2制御バルブを通じて制御された作動油を前記第1プーリにも供給するように前記供給経路を切り替える過回転抑制制御を実行する
ことを特徴とするパワートレイン制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパワートレイン制御装置において、
前記過回転抑制制御は、前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を、同過回転抑制制御を開始する前の開度よりも小さくすることによって前記内燃機関のトルクを低下させる
ことを特徴とするパワートレイン制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載のパワートレイン制御装置において、
前記基準回転速度は、フューエルカット回転速度である
ことを特徴とするパワートレイン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194978(P2011−194978A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62845(P2010−62845)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】