説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマにより処理される被処理基板外周部における電界の不均一性を改善し、長期的に安定した性能を得ることのできるプラズマエッチング装置を提供する。
【解決手段】被処理基板載置用電極上であって被処理基板の外周を取り囲むように設けられたフォーカスリングを有するプラズマ処理装置において、フォーカスリングは、被処理基板載置用電極上面の静電吸着膜上に設けられ導体からなる第一のフォーカスリングと、第一のフォーカスリングの上に設けられ誘電体からなる第二のフォーカスリングと、第二のフォーカスリングの上に設けられ導体からなる第三のフォーカスリングからなり、第一のフォーカスリングは、上面高さを被処理基板の上面高さと略等しくし、かつ、プラズマに接するように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造分野に適用されるプラズマ処理装置に係り、特に、被処理基板(ウエハ)の外周を取り囲むように設置される円環状部材(フォーカスリング)を有したプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
年々微細化する半導体プロセスにおいてウエハ面内でチップとして利用できる有効半径の拡大は近年ますます重要な課題となっている。
【0003】
その有効半径の拡大を妨げる要因として、ウエハ外周部におけるシース内の電界分布の不均一などが挙げられる。この電界分布の不均一とは、詳細にはウエハ上に生じるシース内の電界分布のことであり、この電界分布の不均一はウエハ外周部の構造に大きく依存する。不均一な電界が生じた状態で処理を行うと、ウエハ外周部と中心部で処理された基板の形状が異なり、結果的に有効半径を狭めるという問題となる。
【0004】
このような問題に関して、特許文献1には、ウエハ外周付近の電位分布の不均一を最小限にとどめ、ウエハ面内のプロセス結果を均一にすることができるプラズマ処理装置について記載されている。また、特許文献2には、プロセスに実質的な影響を与えることなくフォーカスリングの消耗を効果的に抑えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−303099号公報
【特許文献2】特開2008−244274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、外周部の電界の乱れが抑制され、シース内の電界分布は均一になるが、フォーカスリングの消耗量については検討されておらず、長期的に安定した効果を得ることができない。長期的に安定した性能が得られなければ、短い周期で部品を交換することになり、有効半径を拡大したとしても装置運用上のコストが上昇する虞れがある。また、特許文献2の方法では、フォーカスリングの消耗を抑制することはできても、無くすことはできず、長期的に安定した性能を得ることは困難である。
【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、シース内の電界分布の不均一を抑制するとともに、その性能を長期的に安定して得ることができるプラズマ処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0009】
真空排気可能な真空容器と、真空容器内に設けられ被処理基板を載置する被処理基板載置用電極と、被処理基板載置用電極と対向するように配置された対向電極と、被処理基板載置用電極上であって被処理基板の外周を取り囲むように設けられたフォーカスリングと、被処理基板載置用電極と対向電極間にプラズマを生成するための高周波を印加するプラズマ生成用高周波電源と、真空容器内に処理ガスを供給するガス供給手段とを有するプラズマ処理装置において、フォーカスリングは、被処理基板載置用電極上面の静電吸着膜上に設けられ導体からなる第一のフォーカスリングと、第一のフォーカスリングの上に設けられ誘電体からなる第二のフォーカスリングと、第二のフォーカスリングの上に設けられ導体からなる第三のフォーカスリングからなり、第一のフォーカスリングは、上面高さを被処理基板の上面高さと略等しくし、かつ、プラズマに接するように設けた。
【0010】
また、第二のフォーカスリングの厚みは、プラズマ処理中に被処理基板上に形成されるシース厚み程度であり、かつ、被処理基板側の側面は誘電体が露出している。
【0011】
また、第一のフォーカスリングの下に第一のフォーカスリングを冷却するためのガス流路を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成を備えるため、ウエハ外周部の電界の不均一を改善し、長期的に安定した性能を得ることができる。これによりウエハ面内での基板形状が均一になりチップを取得できる有効半径が拡大する。
【0013】
さらに、フォーカスリングの消耗を抑制することができる。これにより、部品交換の周期が長くなり装置運用上のコストの低減にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プラズマエッチング処理中のウエハ外周部周辺の断面概略図を示す。
【図2】ウエハ外周部概略図の拡大図を示す。
【図3】ウエハ中心部と外周部での基板形状を比較した概略図を示す。
【図4】プラズマエッチング処理中のウエハ外周部周辺の断面概略図を示す。
【図5】導体フォーカスリングの上に誘電体フォーカスリングを積み重ねた構造を示す。
【図6】本発明に用いるプラズマエッチング装置の概略図を示す。
【図7】エッチング処理中の下部電極周辺の概略図を示す。
【図8】ウエハ外周部概略図の拡大図を示す。
【図9】フォーカスリングの消耗に対するウエハ外周部におけるチルト角の変動を示す。
【図10】本発明に用いるプラズマエッチング装置の概略図を示す。
【図11】エッチング処理中の下部電極周辺の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ウエハ外周部における電界の分布について図を用いて説明した後、本発明の構造を用いた場合の効果について説明する。
【0016】
図1にプラズマエッチング処理中のウエハ外周部周辺の断面概略図を示す。図はウエハWをウエハ載置用電極101上に載置した状態でプラズマエッチングしている時のウエハ外周部周辺を示すものである。一般的にウエハ載置用電極の上には、プラズマの閉じ込め効果や電界の補正の目的で、ウエハWを取り囲むように導体フォーカスリング102が設置される。プラズマ空間中ではウエハW上,導体フォーカスリング102上に、ウエハW,導体フォーカスリング102のそれぞれの表面電位に応じた厚みのシースが形成される。プラズマとシースとの界面をプラズマ−シース界面とする。このときシース内の等電位面103は導体フォーカスリング102の形状に沿うように分布する。
【0017】
図2にウエハ外周部概略図の拡大図を示す。プラズマ中のイオンはプラズマ−シース界面に到達した後、シース内の等電位面202に垂直に加速されウエハWに進入する。ウエハW中心部においては等電位面に乱れが無く、イオンはウエハWに対して垂直に入射するが、ウエハ外周部においてはシース内の等電位面が導体フォーカスリング201に沿って分布するため、等電位面の分布が不均一となりイオンがウエハWに対して斜めに入射する。
【0018】
図3にウエハ中心部と外周部での基板形状を比較した概略図を示す。ウエハに対しイオンが垂直に入射していた中心部では所望の形状が得られるが、ウエハに対しイオンが斜めに入射していた外周部においては、処理後の形状にもイオンの入射角に等しい傾きが生じる。このようなイオンの入射角の違いにより、基板形状が傾く現象をチルティングといい、その角度をチルト角とよぶ。このように、シースの高さを合わせた場合でもシース内の等電位面の不均一性によりウエハ形状は不均一になり得る。また前述のように、シース内の等電位面は導体の形状に沿って分布するため、装置の初期状態ではシース厚さ、等電位面ともに均一であっても、フォーカスリングの消耗により等電位面の分布は敏感に変動する。そのため、フォーカスリングの厚みはまだ十分残っている場合でも、チルト角の変動の許容範囲がフォーカスリングの寿命を決定することになる。
【0019】
図4にプラズマエッチング処理中のウエハ外周部周辺の断面概略図を示す。ここでも図1同様、ウエハ載置用電極401に誘電体フォーカスリング402が載置された状態で処理が実施される。ここでは誘電体フォーカスリング402の材質は誘電体である。誘電体フォーカスリング402が誘電体の場合も、誘電体フォーカスリング402の表面電位に応じシースが発生する。導体とは異なり誘電体内には電位差が生じるため、シース内の等電位面403は誘電体フォーカスリング402内を透過し分布する。このときの誘電体フォーカスリング402内の電位分布は主に、ウエハ載置用電極401から供給される電圧で決定される。この状態の電位分布で処理を実施した場合、図3の結果からも分かるようにウエハ面内で形状が不均一となる。しかし、この形態では誘電体フォーカスリング402の形状によらず等電位面403が分布するため、誘電体フォーカスリング402の消耗に対するチルト角の変動は非常に鈍いものとなる。
【0020】
図5に導体フォーカスリングの上に誘電体フォーカスリングを積み重ねた構造を示す。前述のように誘電体内に等電位面が透過することを利用し、ウエハ載置用電極501上に導体フォーカスリング502,誘電体フォーカスリング503の順で積み重ねた構造となっている。この形態によれば、ウエハ上の等電位面504はウエハ外周部を通過した後、導体フォーカスリング502上の誘電体フォーカスリング503内を通過する。このとき等電位面の均一性を決定する要因としては、導体フォーカスリング502の電位と誘電体フォーカスリング503の誘電率である。この二つのパラメータを最適化することで、図のようにウエハ外周部の等電位面504はウエハWに対し水平となり、外周部でチルティングは発生しない。また前述のとおり、誘電体フォーカスリング503の形状によらず等電位面504は分布するため、誘電体フォーカスリング503が消耗した場合でも、ウエハ外周部において均一な性能を得ることができる。しかし、誘電体フォーカスリング503の消耗により誘電体フォーカスリング503の表面電位は高くなる。表面電位が高くなることで、プラズマ中のイオンをより引き付けることになり、誘電体フォーカスリング503は消耗していくにつれその消耗速度は加速的に大きくなる。また、表面電位が高くなり積極的に誘電体フォーカスリング503が消耗するようになることで、ウエハ外周部でフォーカスリングから反応生成物が生じ、ウエハ外周部のエッチングに悪影響を与える可能性がある。特許文献1においては、フォーカスリングの消耗に関する等電位面の変動については検討され改善されているが、フォーカスリングの消耗速度自体については検討されておらず、課題の根本的な解決には至っていない。
【0021】
これまで述べてきた現象を踏まえ、以下では本発明を実現するための最適な実施形態を示す。
【実施例1】
【0022】
図6に本発明に用いるプラズマエッチング装置の概略図を示す。本プラズマエッチング装置は、アルミ部材などから構成される真空容器601内に被処理基板であるウエハを載置するための下部電極(被処理基板載置用電極)602と、下部電極602と対向するように配置された上部電極(対向電極)603を持つ。両電極間にはプラズマを生成するための高周波を印加するプラズマ生成用高周波電源604が接続されており、ガス系605から真空容器内に供給された処理ガスでプラズマを発生させる。下部電極602には、電極温度を調整するための温調系606が設けられており、ウエハへのイオン引き込み効果を高めるための高周波電源607が接続されている。また、下部電極表面には誘電体からなるウエハ吸着膜(静電吸着膜)608があり、下部電極602に接続された吸着用直流電源609でウエハを吸着する。ウエハ吸着膜608には冷却ガス流路が設けられており、ウエハを吸着した状態でウエハ冷却用ガス系610から供給された冷却ガスによりウエハを冷却することができる。また真空容器内には排気系611が設けられており、排気系611により処理圧力に保たれた状態でエッチング処理が行われる。
【0023】
図7にエッチング処理中の下部電極周辺の概略図を示す。下部電極701上であって、ウエハWの外周を取り囲む位置に、下から順に、導体からなる第一のフォーカスリング702(下導体フォーカスリング)と、誘電体からなる第二のフォーカスリング703(誘電体フォーカスリング)と、導体からなる第三のフォーカスリング704(上導体フォーカスリング)が積み上げられている。
【0024】
第一のフォーカスリング702はSi、第二のフォーカスリング703は石英またはSiC、第三のフォーカスリング704はSiから構成され、それぞれのフォーカスリングは、単体で交換できる構造となっていても良いし、機械的、または拡散結合により接合されていても良い。
【0025】
第一のフォーカスリング702の上面、つまり、第二のフォーカスリング703を載置する載置面705の高さは、ウエハWの上面、つまり、プラズマ照射側の表面高さと略等しくなるように設定されている。ここで言う、略等しくとは、処理結果が許容される場合であって、例えば、ウエハWの上面±1mm程度を言う。
【0026】
また、エッチング処理中に第一のフォーカスリング702の一部がプラズマに曝されるように設定されている。第一のフォーカスリング702がプラズマに曝されることで、下部電極701上に設置されたウエハWと第一のフォーカスリング702に生じる表面電位は等しくなる。
【0027】
第二のフォーカスリング703の厚みは、プラズマ処置中にウエハWに形成されるシースの厚み程度とする。また、第二のフォーカスリングのウエハW側の側面は誘電体を露出させている。
【0028】
下部電極表面のウエハ吸着膜706は第一のフォーカスリング702の下まで続いており、下部電極に吸着用直流電源から与えられた直流電圧により、第一のフォーカスリング702を吸着することもできる。
【0029】
ここで、ウエハWおよび第三のフォーカスリング704上に発生したシース内の等電位面に注目する。シース内の等電位面は、ある電位の等電位面707を見ると、等電位面707はウエハW上を水平に通過し、第二のフォーカスリング703内部を水平に通過する。これは、ウエハWと第一のフォーカスリング702がプラズマに曝され、両者の表面電位が等しくなったために起こる現象である。つまり、ウエハW表面近傍の等電位面707はウエハ外周部においても水平な分布を保つ。ここで、第二のフォーカスリング703の誘電率が1を超え大きな値をとる場合、第二のフォーカスリング703内を通過する等電位面は真空中よりも高めに補正される。この場合、その等電位面の補正分だけ第二のフォーカスリング703の載置面705を低めに設定すると良い。このとき載置面705は第一のフォーカスリング702が、プラズマに曝されなくならないよう設定されなければならない。また、載置面705はウエハW表面と略等しく設定し、第一のフォーカスリング702下面に誘電体からなる電圧調整用リングが置かれても良い。載置面705がウエハ表面より高めに設定された場合、載置面705とウエハW表面の高さの差分だけ等電位面707にズレが生じる。この等電位面のズレを補正するために、前述のように第一のフォーカスリング702の下面に電圧調整用リングが置かれても良い。しかし、前述の通り導体であるフォーカスリングがウエハW表面より上に存在した場合、等電位面707は第一のフォーカスリング702の表面に沿って分布するため、ウエハ外周部において若干の等電位面707の不均一な分布が生じる。このため、本発明では載置面705をウエハW表面よりも高めに設定することは推奨しない。
【0030】
次に、等電位面707より低い電位の等電位面708を見ると、等電位面708はウエハW上を水平に通過し、その後ウエハ外周部で第三のフォーカスリング704の表面に沿うように分布する。このとき、ウエハから少し離れた等電位面708は、ウエハ外周部において不均一となる。
【0031】
図8にウエハ外周部概略図の拡大図を示す。前述の通りプラズマ中のイオンはプラズマ−シース界面に到達した後、シース内の等電位面に対し垂直に加速される。ここでもウエハW中心付近の等電位面はウエハに対し水平に均一な分布をしているため、イオンはウエハWに対し垂直に入射する。ウエハW外周部においては、イオンはまずプラズマ−シース界面付近の不均一な等電位面801の分布によりウエハWに対し斜めに入射する。しかし、ウエハW近傍ではイオンは均一な分布の等電位面802により、ウエハWに対し垂直な向きに補正され入射する。このような電界の分布とすることで、ウエハ外周部においても中心部と同等の性能を得ることができる。
【0032】
図9にフォーカスリングの消耗に対するウエハ外周部におけるチルト角の変動を示す。
【0033】
図9(a)は従来の導体フォーカスリングの場合である。横軸にフォーカスリングの表面高さをとり、縦軸はチルト角とした。ここでチルト角の符号については、イオンがウエハ中心側へ入射する方向を正とし、逆にウエハ外周部へ向け入射する方向を負とした。結果を見ると、フォーカスリングの高さが所定の高さから1mm変動すると、ウエハ外周部におけるチルト角は3°以上も変動している。年々微細化するパターンにおいて、初期形状に対しフォーカスリングが消耗することで3°以上もチルト角が変動しては、ウエハの面内均一性を長期的に保つことはできない。
【0034】
図9(b)は本発明によるフォーカスリングの消耗に対するウエハ外周部におけるチルト角の変動を示す。横軸に上導体フォーカスリングの表面高さをとり、縦軸はチルト角とした。チルト角の符号については前述の通りである。この結果を見ると、チルト角変動の傾きはほぼ0であり、このことは上導体フォーカスリングの高さが変動しても、外周部のチルト角に影響を及ぼさないことを示している。このように上導体フォーカスリングを消耗用フォーカスリングと位置づけることで、ウエハ外周部において長期的に安定した性能を得ることができる。
【0035】
また、フォーカスリングの消耗速度については、本発明のフォーカスリング構造の場合、プラズマに曝され最も消耗する上導体フォーカスリングは、誘電体フォーカスリングの上に設置されるため、下部電極に接続された高周波電源から上導体フォーカスリングへの高周波印加回路のインピーダンスが大きくなる。そのため、上導体フォーカスリングの表面電位は低くなりイオンの引き込み効果が小さくなる。同様の条件で導体のみからなるフォーカスリングを設置した場合、高周波電源から導体フォーカスリングのプラズマ暴露面へのインピーダンスは本発明の場合よりも小さく、これにより導体のみからなるフォーカスリングの消耗速度は本発明の場合よりも速くなる。
【0036】
これまで述べてきたように、ウエハ外周部のフォーカスリング構造を導体,誘電体,導体の三つの組み合わせとすることで、ウエハ外周部においても中心部と同等の性能が長期的に得られ、更にフォーカスリングの消耗も抑制することができる。
【0037】
以下では、フォーカスリングの消耗について更に検討した構造を示す。
【実施例2】
【0038】
図10に本発明に用いるプラズマエッチング装置の概略図を示す。本プラズマエッチング装置は、アルミ部材などから構成される真空容器1001内に被処理基板であるウエハを載置するための下部電極(被処理基板載置用電極)1002と、下部電極1002と対向するように配置された上部電極(対向電極)1003を持つ。両電極間にはプラズマを生成するための高周波を印加するプラズマ生成用高周波電源1004が接続されており、ガス系1005から真空容器内に供給された処理ガスでプラズマを発生させる。下部電極1002には、電極温度を調整するための温調系1006が設けられており、ウエハへのイオン引き込み効果を高めるための高周波電源1007が接続されている。また、下部電極表面には誘電体からなるウエハ吸着膜(静電吸着膜)1008があり、下部電極1002に接続された吸着用直流電源1009でウエハを吸着する。ウエハ吸着膜1008には冷却ガス流路が設けられており、ウエハを吸着した状態で冷却ガス系1010から供給された冷却ガスによりウエハを冷却することができる。この冷却ガス系はフォーカスリング設置面下にも分岐しており、フォーカスリングを冷却することもできる。また真空容器内には排気系1011が設けられており、排気系1011により処理圧力に保たれた状態でエッチング処理が行われる。
【0039】
図11にエッチング処理中の下部電極周辺の概略図を示す。下部電極1101上であって、ウエハWを取り囲む位置に、下から順に、導体からなる第一のフォーカスリング1102(下導体フォーカスリング)と、誘電体からなる第二のフォーカスリング1103(誘電体フォーカスリング)と、導体からなる第三のフォーカスリング1104(上導体フォーカスリング)が積み上げられている。
【0040】
第一,第二,第三のフォーカスリングの位置関係及び材質は実施例1と同様である。
【0041】
それぞれのフォーカスリングは、単体で交換できる構造となっていても良いし、機械的、または拡散結合により接合されていても良い。
【0042】
また、第一及び第二のフォーカスリングが機械的、または拡散結合により接合され、第三のフォーカスリングは取り外し可能な構成としておいても良い。
【0043】
本実施例においても前述の実施例1のような均一な電界分布を得た状態でエッチング処理が行われる。このエッチング処理中に、第一のフォーカスリング1102下まで続く誘電体からなるウエハ吸着膜1105と、下部電極1101に印加された吸着用直流電圧により第一のフォーカスリング1102は下部電極1101に吸着される。その状態でウエハ冷却用ガスラインより第一のフォーカスリング1102下のガス流路1106に分岐した冷却用ガスにより第一のフォーカスリング1102は冷却される。
【0044】
第一のフォーカスリング1102と接合されている場合は、第二のフォーカスリング1103と第三のフォーカスリング1104も同時に冷却される。フォーカスリングが冷却された場合、プラズマ中のラジカルとの化学反応が抑制され、フォーカスリングの消耗が抑制される。また、フォーカスリングが加熱されラジカルと反応することで、ウエハ外周部において過剰に発生していた反応生成物も、フォーカスリングが冷却されることで減少し、ウエハ面内でより均一な処理が可能となる。
【0045】
以上において、本発明ではプラズマによるウエハのエッチングプロセスを主に例として挙げて説明してきた。しかし本発明は、プラズマを使う基板処理及び処理装置全般に適用することができる。このような処理装置と処理とは、プラズマCVD装置とCVDプロセス,プラズマアッシング装置とプラズマアッシングプロセス,プラズマスパッタ装置とスパッタプロセスなどである。また本発明は、プラズマ発生手段によらず適用することができる。このようなプラズマ発生手段とは、誘導結合型プラズマ発生装置,容量結合型プラズマ発生装置,ECR型プラズマ発生装置,ヘリコン型プラズマ発生装置,表面波放電型プラズマ発生装置,マグネトロン型プラズマ発生装置を含む。また、被処理基板とは、半導体ウエハ,石英に代表される誘電体ウエハ,LCD基板やAlTiCに代表される導電性ウエハを含んでいる。
【符号の説明】
【0046】
101,401,501 ウエハ載置用電極
102,201,502,702,704,1102,1104 導体フォーカスリング
103,202,403,504,707,708,801,802 等電位面
402,503,703,1103 誘電体フォーカスリング
601,1001 真空容器
602,701,1002 下部電極
603,1003 上部電極
604,1004 プラズマ生成用高周波電源
605,1005 ガス系
606,1006 下部電極温調系
607,1007 高周波電源
608,706,1008,1105 ウエハ吸着膜
609,1009 ウエハ吸着用直流電源
610 ウエハ冷却用ガス系
611,1011 排気系
705 載置面
1010 冷却ガス系
1106 ガス流路
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な真空容器と、前記真空容器内に設けられ被処理基板を載置する被処理基板載置用電極と、前記被処理基板載置用電極と対向するように配置された対向電極と、前記被処理基板載置用電極上であって前記被処理基板の外周を取り囲むように設けられたフォーカスリングと、前記被処理基板載置用電極と前記対向電極間にプラズマを生成するための高周波を印加するプラズマ生成用高周波電源と、前記真空容器内に処理ガスを供給するガス供給手段とを有するプラズマ処理装置において、
前記フォーカスリングは、前記被処理基板載置用電極上面の静電吸着膜上に設けられ導体からなる第一のフォーカスリングと、前記第一のフォーカスリングの上に設けられ誘電体からなる第二のフォーカスリングと、前記第二のフォーカスリングの上に設けられ導体からなる第三のフォーカスリングからなり、前記第一のフォーカスリングは、上面高さを前記被処理基板の上面高さと略等しくし、かつ、プラズマに接するように設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記第二のフォーカスリングの厚みは、プラズマ処理中に前記被処理基板上に形成されるシース厚み程度であり、かつ、前記被処理基板側の側面は誘電体が露出していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記第三のフォーカスリングは、単体で交換できる構造であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記第一のフォーカスリングの下に前記第一のフォーカスリングを冷却するためのガス流路を有していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項4記載のプラズマ処理装置において、
前記第一のフォーカスリングと前記第二のフォーカスリングが接合され、二つのフォーカスリングが冷却されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項4記載のプラズマ処理装置において、
前記第一のフォーカスリングと前記第二のフォーカスリングと前記第三のフォーカスリングが接合され、三つのフォーカスリングが冷却されることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−108764(P2011−108764A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260563(P2009−260563)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】