説明

ラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置

【課題】 主走査方向の画像の位置ずれ補正を簡単に行えるラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置の提供。
【解決手段】 ラインヘッド10には、発光素子Eaが主走査方向に多数配列された発光素子ライン1が形成されている。主走査方向の位置ずれ情報(レジスト情報)に基づいて、主走査方向の書き出し位置の発光素子を選択する。図1の例では、先頭の発光素子Esの電源線Fa、および2番目の発光素子Eyの電源線Fbを切断し、3番目の発光素子Ezを書き出し位置の発光素子に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主走査方向における画像の位置ずれ補正を簡単に行うことができる、ラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式のトナー像形成手段は、外周面に感光層を有する像担持体としての感光体と、この感光体の外周面を一様に帯電させる帯電手段と、この帯電手段により一様に帯電させられた外周面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光手段とを有している。また、この露光手段により形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像手段を有している。
【0003】
カラー画像を形成するタンデム方式の画像形成装置としては、上記のようなトナー像形成手段を、中間転写ベルトに対して、複数個(例えば4個)配置する。これら単色トナー像形成手段による感光体上のトナー像を順次中間転写ベルトに転写して中間転写ベルト上で複数色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒))のトナー像を重ね合わせて中間転写ベルト上でカラー画像を得る中間転写ベルト形式のものがある。
【0004】
また、静電潜像を担持可能に構成された像担持体と、ロータリ現像ユニットと、ラインヘッドとを備えたカラー画像形成装置が知られている。この画像形成装置においては、ロータリ現像ユニットは、複数のトナーカートリッジに収納されたトナーをその表面に担持し、所定の回転方向に回転することにより異なる色のトナーを順次前記像担持体との対向位置に搬送する。そして、前記像担持体と前記ロータリ現像ユニットとの間に現像バイアスを印加して、前記トナーを前記ロータリ現像ユニットから前記像担持体に移動させる。このような処理により、前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成するものである。
【0005】
前記のようなタンデム方式、またはロータリ方式の画像形成装置においては、各色の印字位置が相対的にずれる、色ズレが発生することがある。このように印字位置がずれるのは、像担持体の位置決め誤差や感光ドラムの直径誤差などに起因して、各色の同期検知位置から画像書き出し位置までの距離(レジスト)がずれることによるものである。
【0006】
前記のような色ズレが発生するとカラー画像の品質が劣化するので、色ズレの防止策が講じられている。前記防止策の一例として、例えば特許文献1においては、露光手段として走査光学装置を備え、転写ベルトに位置合わせ用のパターン画像を画像形成装置により形成し、前記パターン画像を検出センサで読み取って色ズレ誤差を補正している。この際の色ズレ誤差補正は、位置ずれ量に応じてレーザビームの書き込みタイミングの調整と照射手段の光路の調整、またはレーザビームの書き込みタイミングの調整のみのいずれかを行っている。
【0007】
また、特許文献2においては、光書き込み手段としてLEDアレイヘッドを使用している。そして、調整チャートパターンを作成し、この調整チャートパターンにスリット状の画像形成空白領域を形成する。前記空白領域に各色のライン状のパターンを印字し、各印字から位置ずれを確認する。この位置ずれ相当分のドット数を、垂直同期信号と水平同期信号とにおいて正規の場合よりも早くするか遅くするかにより調整している。
【0008】
【特許文献1】特許第3413179号
【特許文献2】特開平9−304994号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載の技術は、露光手段として走査光学装置を用いているので、装置が大型になりコストも高くなるという問題があった。また、特許文献1においては、レーザビームの書き込みタイミングの調整を行うので、レジスト調整の制御系の構成が複雑になるという問題があった。なお、主走査方向の位置ずれに対しては、ラインヘッドの位置を調整しない限り補正できないという問題があった。更に、特許文献2に記載の技術は、光書き込み手段としてLEDアレイヘッドを使用しているが、調整チャートパターンを必要としているので、レジスト調整の処理が煩雑になるという問題があった。
【0010】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、主走査方向の画像の位置ずれ補正を簡単に行えるラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明のラインヘッドは、主走査方向に印字範囲よりも長く複数の発光素子を配列した発光素子ラインを有するラインヘッドであって、画像の位置ずれ情報に基づいて前記発光素子の中から書き出し位置の発光素子を選択する手段を設けたことを特徴とする。このように、主走査方向の書き出し位置の発光素子を選択する構成であるので、主走査方向の画像の位置ずれ補正を簡単に行なうことができる。
【0012】
また、本発明のラインヘッドは、前記書き出し位置の発光素子を選択する手段は、各発光素子に接続される電源線を切断するものであることを特徴とする。この構成によれば、ラインヘッド製造時に予め余分に形成しておいた所定の電源線を切断するという簡単な処理により、主走査方向の画像の位置ずれ補正を簡単に行なうことができる。
【0013】
また、本発明のラインヘッドは、前記書き出し位置の発光素子を選択する手段は、各発光素子に接続される電源線を切り替えるスイッチであることを特徴とする。この構成によれば、スイッチの接触子を回動させるという簡単な操作により、主走査方向の画像の位置ずれ補正を行うことができる。
【0014】
また、本発明のラインヘッドは、前記スイッチは無接点スイッチであることを特徴とする。この構成によれば、レジスト調整を行うラインヘッドにおいて使用されるスイッチを小型化できる上に、スイッチ操作が迅速に行える。さらに、スイッチ接点の損耗がないので寿命を長くすることができる。
【0015】
また、本発明のラインヘッドは、前記無接点スイッチにより、発光素子ラインに配列された発光素子を、個別に選択して発光させることを特徴とする。このため、レジスト調整を行うラインヘッドにおいて、1ラインの発光素子ラインに配列された個別の発光素子の点灯、非点灯の制御を簡単に行うことができる。
【0016】
また、本発明のラインヘッドは、前記ラインヘッドの発光素子を有機EL、またはLEDで構成したことを特徴とする。有機ELは静的な制御が可能であるので、レジスト調整を行うラインヘッドの制御系を簡略化できる。また、発光素子をLEDで構成した場合には、レジスト調整を行うラインヘッドに使用される発光素子の製造が簡単になる。
【0017】
また、本発明のラインヘッドは、前記有機EL素子からなる発光素子により中間調を表現することを特徴とする。このため、中間調を表現する際に、画像の位置ずれの補正を簡単に行うことができる。
【0018】
また、本発明の画像形成装置は、像担持体の周囲に帯電手段、前記ラインヘッド、現像手段、転写手段の各画像形成用ユニットを配した画像形成ステーションを少なくとも2つ以上設け、転写媒体が各ステーションを通過することにより、タンデム方式で画像形成を行うことを特徴とする。このため、タンデム方式の画像形成装置において、画像の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【0019】
また、本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持可能に構成された像担持体と、ロータリ現像ユニットと、前記ラインヘッドとを備え、前記ロータリ現像ユニットは、複数のトナーカートリッジに収納されたトナーをその表面に担持するとともに、所定の回転方向に回転することによって異なる色のトナーを順次前記像担持体との対向位置に搬送し、前記像担持体と前記ロータリ現像ユニットとの間に現像バイアスを印加して、前記トナーを前記ロータリ現像ユニットから前記像担持体に移動させることで、前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成することを特徴とする。このため、ロータリ現像ユニットを備えた画像形成装置において、画像の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【0020】
また、本発明の画像形成装置は、中間転写部材を備えたことを特徴とする。このため、中間転写部材を備えた画像形成装置において、画像の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置によれば、画像のレジスト情報に基づいて、主走査方向の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図を参照して本発明を説明する。図5は、本発明にかかるラインヘッドの基本構成を説明する説明図である。図5において、ラインヘッド10には発光素子Eaが主走査方向に多数配列されて、1ラインの発光素子ライン1が形成されている。ここで、発光素子ライン1に配列されている発光素子Eaの個数は、印字に必要な発光素子の個数よりも多く配列されている。
【0023】
すなわち、発光素子ライン1は、先頭の発光素子Esから最終の発光素子Enまで、主走査方向に長さLaで配列されている。しかしながら、実際に印字に必要な発光素子は、主走査方向の長さLbで足り、La―Lbの差の発光素子は、レジスト調整用に設置されている。この点について更に説明すると、レジスト情報(位置ずれ情報)に基づいて、主走査方向における印字開始位置の発光素子の位置を変えて、ラインヘッドの主走査方向の位置ずれ調整を行う。
【0024】
図5の例では、位置ずれの最小調整単位dxは1ドットピッチになる。このように、本発明の実施形態においては、露光手段として発光素子を配列したラインヘッドを使用し、主走査方向における印字開始位置の発光素子の位置を変えることにより位置ずれ補正を行う。例えば、主走査方向の位置ずれが1ドットピッチであるとすれば、書き込み開始位置の発光素子は先頭から2番目となる。この際、印字処理は最終の発光素子の1つ前の発光素子までの書き込みとなる。このように、単に書き込み先頭位置の発光素子を選択するだけで主走査方向の位置ずれに対応しているので、装置が小型でコストも低減できるという利点がある。
【0025】
図1は、本発明の実施形態を示す説明図である。図1において、ラインヘッド10には、図5で説明したように発光素子Eaが主走査方向に多数配列されて、1ラインの発光素子ライン1が形成されている。図1の例では、レジストの位置ずれ情報に基づいて、先頭の発光素子Esに対する電源線Faと、2番目の発光素子Eyに対する電源線Fbを切断する。したがって、主走査方向の書き込みは、3番目の発光素子Ezから開始されることになる。このため、ラインヘッド製造時に予め余分に形成しておいた所定の電源線を切断するという簡単な処理により、主走査方向の画像の位置ずれ補正を簡単に行なうことができる。
【0026】
図2は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。この例では、書き出し開始位置の発光素子に対する電源線の接続をスイッチSで選択している。スイッチSの接触子Sxは、固定部Suを支点としてR方向に左右に回動し、接点Sa〜Scを選択して接触する。接点Sa〜Scには、それぞれ電源線Fa〜Fcが接続されている。
【0027】
例えば、接触子Sxが接点Sbと接触すると、先頭から2番目の発光素子Eyが書き出し位置の発光素子として選択される。接触子Sxを接点Sa〜Scのいずれと接触させて発光素子を選択するかは、位置ずれ量に応じて決定される。この構成によれば、スイッチの接触子を回動させるという簡単な操作により、主走査方向の画像の位置ずれ補正を行うことができる。なお、スイッチSとして、図2の構成ではロータリ形式のスイッチを用いているが、スイッチをトランジスタのような無接点スイッチで構成することもできる。
【0028】
図3は、書き出し位置の発光素子を選択するスイッチを無接点スイッチで構成した例を示す説明図である。図3において、Ta〜Tcは、発光素子Eaのドライバトランジスタで、各ドレインが電源VDDに接続されている。また、ドライバトランジスタの各ゲートは、コントローラ11に接続されている。書き出し位置の発光素子として、例えば3番目の発光素子Ezが選択された場合には、コントローラ11の信号でドライバトランジスタTcのゲートに制御信号を与えてドライバトランジスタTcを導通させる。
【0029】
図3の構成によれば、スイッチを小型化できる上にスイッチ操作が迅速に行え、また、接点の損耗がないので寿命を長くすることができる。また、図3のように、書き出し位置の発光素子を選択するスイッチを無接点スイッチで構成した場合には、この無接点スイッチはすべての発光素子に対応して設けられる。このため、当該無接点スイッチにより、1ラインの発光素子ラインに配列された個別の発光素子の点灯、非点灯の制御を簡単に行うことができる。
【0030】
図1〜図3において、発光素子として、有機EL素子またはLEDを用いることができる。有機EL素子は静的な制御が可能であるので、レジスト調整を行うラインヘッドの制御系を簡略化できる。また、LEDで構成した場合には、レジスト調整を行うラインヘッドの発光素子の製造が簡単になる。
【0031】
図4は、本発明の実施形態を示すブロック図である。本体コントローラ21は例えばコンピュータで構成され、画像データを形成する。また、画像形成装置に設けられている制御装置20には、CPUなどで構成される制御回路22、ずれ検出部23、駆動回路24、1ラインの発光素子ラインが形成されているラインヘッド10が配置されている。ずれ検出部23には、画像の位置ずれ情報、すなわちレジスト情報が記憶されている。制御回路22には、先頭発光素子選択回路が含まれている。
【0032】
制御回路22は、ずれ検出部23に記憶されている前記レジスト情報に基づいて、位置ずれを補正する最適な主走査方向の印字開始位置の発光素子を選択する。次に、制御回路22は駆動回路24に先頭発光素子選択の信号を出力する。駆動回路24は、ラインヘッド10に配列されている発光素子ラインの中で、制御回路22により選択された発光素子を先頭発光素子として点灯させるように制御する。
【0033】
本発明において、ずれ検出部23に記憶されるレジスト情報は、製品完成時の検査で取得し、位置ずれ補正を出荷時に行い、以後は補正しない形態とすることができる。また、ユーザが製品を使用中に発生した位置ずれ情報をずれ検出部に記憶させ、制御回路22により主走査方向の印字開始位置の発光素子を選定するような制御信号を形成する形態とすることもできる。
【0034】
図4では、ずれ検出部23、駆動回路24の制御をCPUなどの制御回路22で行っているが、本発明はこのような形態には限定されない。他の実施形態においては、本体コントローラ21により直接ずれ検出部23と駆動回路24を制御することも可能である。この場合には、画像形成装置の制御系の構成が簡略化される。
【0035】
図6は、発光素子をアクティブマトリクスで動作させるための回路図である。図6において、発光素子Eaとして有機EL素子を使用しており、Kはそのカソード端子、Aはそのアノード端子である。カソード端子Kは、図示を省略している接地電源に接続されている。37aは走査線でスイッチング用TFT(Tr1)のゲートGaに接続される。また、38aは信号線でスイッチング用TFTのドレインDaに接続される。39は電源線、Caはストレージキャパシタである。有機EL素子のドライビング用TFT(Tr2)のドレインDbは電源線39に接続され、ソースSbは有機ELのアノード端子Aに接続される。さらに、ドライビング用TFTのゲートGbは、スイッチング用のTFTのソースSaに接続されている。
【0036】
次に、図6の回路図の動作について説明する。スイッチング用TFTのソースに電源線39の電圧が印加されている状態で走査線37a、信号線38aに通電すると、スイッチング用TFTがオンになる。このため、ドライビング用TFTのゲート電圧が下がり、電源線39の電圧がドライビング用TFTのドレインから供給されてドライビング用TFTが導通する。この結果、有機EL素子が動作して所定の光量で発光する。また、ストレージキャパシタCaは電源線39の電圧で充電される。
【0037】
スイッチング用TFTをオフにした場合にも、ストレージキャパシタCaに充電された電荷に基づいてドライビング用TFTは導通状態となっており、有機EL素子は発光状態を維持する。したがって、アクテブマトリックスを前記発光素子の駆動回路に適用した場合には、スイッチング用TFTをオフにしたときでも、有機EL素子の動作が継続して発光を維持し、高輝度で画素の露光を行うことができる。
【0038】
図7〜図9は、本発明により発光素子を階調データで制御する例を説明する図である。図7は、階調データメモリに格納されるビットデータと階調データとの例を示す説明図である。この例では、8ビットの階調データメモリにより階調データを構成している。図7の例では、ビットデータNo1で階調データ0(非発光)、ビットデータNo8で最も濃度が濃いデータ、ビットデータNo2〜7でその中間階調の濃度データとしている。
【0039】
図8は、本発明の構成を示すブロック図である。図8は、階調データの大きさに対応した電圧、または電流の電気量でスイッチングTFTを制御するものである。図8に示された電気量制御部80は、D/Aコンバータ81a、81b・・・をそれぞれ階調データメモリ71a、71b・・・に接続している。D/Aコンバータ81a、81b・・・は、階調データメモリ71a、71b・・・に格納された階調データに対応した大きさで、アナログの電圧値、または電流値を形成し、スイッチングTFTに出力する。
【0040】
発光素子およびスイッチングTFTからなる発光部Za、Zb・・・には、走査線37aからのセレクト信号と、発光制御データ線38a、38b・・・からの制御信号が供給される。図8の例では、階調データに応じてスイッチングTFTのバイアスを変えて、発光素子の発光光量を変化させている。このため、高速で発光素子をオン、オフ制御する必要がなくなり、発光素子の応答速度が遅い場合でも像担持体への露光量を高速で変化させることができる。
【0041】
図9は、図8のブロック図で示された制御の具体例を示す特性図である。図9(a)は、カウンター72の出力値Eaを示すものであり、前記のように、0→最大値(255)→0→最大値→0・・・を繰り返す。図9(b)は、階調データがビットデータNo7(128階調)の場合に、コンパレータから出力される信号の波形Eb、すなわちスイッチングTFTの動作特性を示すものである。この場合には、カウンターの出力が0〜127の範囲でスイッチングTFTがオンとなり、カウンターの出力が128〜255の範囲でスイッチングTFTがオフとなる。
【0042】
図9(c)は、階調データがビットデータNo6(64階調)の場合に、コンパレータから出力される信号の波形Ec、すなわちスイッチングTFTの動作特性を示すものである。この場合には、カウンターの出力が0〜63の範囲でスイッチングTFTがオンとなり、カウンターの出力が64〜255の範囲でスイッチングTFTがオフとなる。
【0043】
図9(b)の場合には、波形Ebのパルス幅はWaであり、図9(c)の場合には、波形Ecのパルス幅はWbである。すなわち、階調データの大きさに応じてスイッチングTFTがオンとなる時間の長さが変わり、発光素子の発光光量を変化させることができる。このように、スイッチングTFTのオン、オフ制御により発光素子をオン、オフして像担持体への露光量を変えることができるので、回路構成を簡単にすることができる。図7〜図9の例では、中間調を表現する際に、主走査方向の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【0044】
本発明においては、モノクロプリンタの他に、4サイクルカラープリンタや、タンデム方式のカラープリンタにも当該ラインヘッドは当然適用されるものである。これらのカラープリンタにおいては、本発明の構成とすることにより、ラインヘッドに形成される複数ラインの発光素子ラインをレジスト調整に使用することができる。
【0045】
図10は、発光素子として有機EL素子を用いた画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。この画像形成装置は、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光位置にそれぞれ配置したものであり、タンデム方式の画像形成装置として構成されている。
【0046】
図10に示すように、この画像形成装置は、駆動ローラ51と従動ローラ52とテンションローラ53が設けられており、テンションローラ53によりテンションを加えて張架されて、図示矢印方向(反時計方向)へ循環駆動される中間転写ベルト50を備えている。この中間転写ベルト50に対して所定間隔で配置された4個の像担持体としての外周面に感光層を有する感光体41K、41C、41M、41Yが配置される。
【0047】
前記符号の後に付加されたK、C、M、Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示す。他の部材についても同様である。感光体41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト50の駆動と同期して図示矢印方向(時計方向)へ回転駆動される。
【0048】
各感光体41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)により一様に帯電させられた外周面を感光体41(K、C、M、Y)の回転に同期して、順次ライン走査する本発明の上記のような有機EL素子を用いたラインヘッド101(K、C、M、Y)が設けられている。
【0049】
また、このラインヘッド101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト50に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とを有している。
【0050】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスにより中間転写ベルト50上に順次一次転写され、中間転写ベルト50上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、排紙ローラ対62によって、装置上部に形成された排紙トレイ68上へ排出される。
【0051】
なお、図10中、63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト50との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト50の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
【0052】
このように、図10の画像形成装置は、書き込み手段として有機EL素子を設けたラインヘッドを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また、タンデム式の画像形成装置において、主走査方向の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【0053】
次に、本発明に係る画像形成装置に係る他の実施の形態について説明する。図11は、画像形成装置の縦断側面図である。図11において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機EL素子が設けられているラインヘッド167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0054】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢視A方向に回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢視B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢視C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0055】
165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器、167は像書込手段で有機EL素子を用いたラインヘッドで構成されている。感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向の矢視D方向に駆動される。
【0056】
中間転写ベルト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆方向の矢視E方向に回動される。
【0057】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラッチにより中間転写ベルト169に離当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接されて用紙に画像が転写される。
【0058】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢視G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0059】
図の状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ62aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢視A方向に90度回転する。
【0060】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次にシアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0061】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後に更に回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。
【0062】
その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。この例では、ロータリ式の画像形成装置において、主走査方向の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。また、図10、図11に示されたように、中間転写部材を有する画像形成装置において、主走査方向の位置ずれ補正を簡単に行うことができる。
【0063】
以上、本発明のラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置について実施例に基づいて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明の基本構成を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施形態を示す回路図である。
【図7】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図10】本発明に係るタンデム方式の画像形成装置の概略構成を示す縦断側面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す画像形成装置の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1・・・発光素子ライン、10・・・ラインヘッド、20・・・制御部、21・・・本体コントローラ、22・・・制御回路、23・・・ずれ検出部、24・・・駆動回路、41(K、C、M、Y)・・・感光体ドラム(像担持体)、42(K、C、M、Y)・・・帯電手段(コロナ帯電器)、44(K、C、M、Y)・・・現像装置、45(K、C、M、Y)・・・一次転写ローラ、50・・・中間転写ベルト、66・・・二次転写ローラ、101K、101C、101M、101Y・・・ラインヘッド、161・・・現像装置、165・・・感光体ドラム、167・・・ラインヘッド、169・・・中間転写ベルト、171・・・二次転写ローラ、P…記録媒体、Ea・・・発光素子、S・・・スイッチ、Ta〜Tc・・・無接点スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に印字範囲よりも長く複数の発光素子を配列した発光素子ラインを有するラインヘッドであって、画像の位置ずれ情報に基づいて前記発光素子の中から書き出し位置の発光素子を選択する手段を設けたことを特徴とする、ラインヘッド。
【請求項2】
前記書き出し位置の発光素子を選択する手段は、各発光素子に接続される電源線を切断するものであることを特徴とする、請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記書き出し位置の発光素子を選択する手段は、各発光素子に接続される電源線を切り替えるスイッチであることを特徴とする、請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記スイッチは無接点スイッチであることを特徴とする、請求項3に記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記無接点スイッチにより、発光素子ラインに配列された発光素子を、個別に選択して発光させることを特徴とする、請求項4に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記発光素子を有機EL素子、またはLEDで構成したことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記有機EL素子からなる発光素子により中間調を表現することを特徴とする、請求項6に記載のラインヘッド。
【請求項8】
像担持体の周囲に帯電手段と、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のラインヘッドと、現像手段と、転写手段との各画像形成用ユニットを配した画像形成ステーションを少なくとも2つ以上設け、転写媒体が各ステーションを通過することにより、タンデム方式で画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
静電潜像を担持可能に構成された像担持体と、ロータリ現像ユニットと、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のラインヘッドとを備え、前記ロータリ現像ユニットは、複数のトナーカートリッジに収納されたトナーをその表面に担持するとともに、所定の回転方向に回転することによって異なる色のトナーを順次前記像担持体との対向位置に搬送し、前記像担持体と前記ロータリ現像ユニットとの間に現像バイアスを印加して、前記トナーを前記ロータリ現像ユニットから前記像担持体に移動させることで、前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
中間転写部材を備えたことを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−27077(P2006−27077A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209315(P2004−209315)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】