説明

レーザーを用いたパターン形成方法

【課題】パターン形成のタクトタイムの短縮を可能とし、またパターン層と誘電体層の一括焼成を可能にし、パターン形成のトータル的低コスト化が可能なパターニング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】無機粉末と、ガラスフリットと、溶剤からなる混合物を基板上に塗布する塗布工程と、塗布された前記混合物を乾燥する乾燥工程と、レーザー照射により前記乾燥工程を経た塗膜にパターンを描画するレーザー照射工程と、前記パターンを現像する現像工程とを含むパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いたパターン形成方法に関し、特に、実質的に樹脂成分の含まない混合物を用いたパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(IC)やフラットパネルディスプレイのような各種の電子装置においては、集積度の向上、あるいは高画質化に伴って、それらに含まれる電極や配線パターンも微細化されている。これら電極、配線等の形成は、ガラスやセラミックス等の基板上にフォトリソグラフィー技術を利用して所定のパターンを形成した後、高温下で長時間焼成することでパターン形成する方法が一般的である。
【0003】
例えば、フラットパネルディスプレイの一種であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)のフロントパネルの製造においては、ITOのパターンを形成した後、感光性ペーストによるフォトリソグラフィー技術を利用したバス電極パターニング→焼成→誘電体塗布→焼成という工程を経ることが一般的であり、更にブラックマトリックスを設ける場合は、バス電極の焼成後にブラックマトリックスパターニング→焼成という工程が追加される。
【0004】
このようにPDPの製造においては各種パターンの形成毎に焼成工程が繰り返されるが、焼成工程は有機成分のバーンアウト、無機成分の融着を行う工程であるため焼成温度は550℃以上と非常に高温であり、キープ時間も長い。さらにガラスパネルが大きいため急激な温度変化は難しく、昇温、冷却時間も非常に長くなる。また温度が高いため必要とするエネルギーも膨大であり、設備も非常に巨大なものとなるため、焼成工程はPDP製造の中でも最も製造コストに占める割合が大きな工程である。そのため、焼成工程を減らすことができればパネルの製造コストの大幅ダウンが可能となる。
【0005】
焼成回数を減らす方法としては、熱硬化樹脂、酸化銀を含むペーストを用いたレーザーパターニング方法が開示されている。この方法は、酸化銀が熱又は光により分解し、活性酸素を放出するという性質を利用したもので、基材にペーストを塗布し、一夜間かけてペーストを硬化し、その後にレーザー照射することによって基材上に所望の電極パターンを形成する。その後、全面紫外線露光することで、レーザー未照射部の有機成分を上述の活性酸素により、酸化分解し劣化させ、ブラッシング等することで焼成工程を経ずに所望の電極パターンを形成するというものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−195715号公報(請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この方法では、ペーストを基材に塗布後、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程やレーザーパターニング後に全面紫外線露光する工程など工程数が多いため依然としてタクトタイムの短縮という面で問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく開発されたものであり、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程及びレーザーパターニング後の全面紫外線露光工程を行う必要がなくタクトタイムの短縮を実現し、パターン形成の低コスト化が可能なパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、無機粉末と、ガラスフリットと、溶剤からなる混合物を基板上に塗布する塗布工程と、塗布された前記混合物を乾燥する乾燥工程と、レーザー照射により、前記乾燥工程を経た塗膜にパターンを描画するレーザー照射工程と、前記パターンを現像する現像工程とを含むパターン形成方法が提供される。
【0010】
これにより、パターン形成のタクトタイムの短縮がされ、パターン形成の低コスト化が可能となる。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記現像工程において、有機溶剤が用いられることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記現像工程において、超音波が用いられることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記無機粉末は、導電性粉末であることを特徴とするパターン形成方法が提供される。これにより、導電パターン形成のタクトタイムの短縮が可能となる。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記乾燥工程を経た塗膜中の前記導電性粉末が60質量%以上であることを特徴とするパターン形成方法が提供される。これにより、緻密かつ充分な導電性の良好な導電パターンを得ることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記無機粉末は、耐熱顔料であることを特徴とするパターン形成方法が提供される。これにより、ブラックマトリックスパターン形成のタクトタイムの短縮が可能となる。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記乾燥工程を経た塗膜中の前記耐熱顔料が10質量%以上であることを特徴とするパターン形成方法が提供される。これにより、ブラックマトリックスパターンの充分な黒色度を確保できる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記レーザーの波長は、266−10600nmであることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記乾燥工程は、60〜150℃で、5〜60分行われることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【0020】
本発明の一態様によれば、現像された前記導電パターン上に誘電体層を形成し、焼成する焼成工程を含むことを特徴とするパターン形成方法が提供される。これにより、パターンと誘電体層の一括焼成を可能にし、パターン形成のトータル的低コスト化が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパターン形成方法によれば、パターン形成のタクトタイムの短縮を可能とし、また、パターン層と誘電体層の一括焼成を可能にし、パターン形成のトータル的低コスト化が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0023】
先ず、本実施態様のパターン形成方法に用いる混合物に配合される無機粉末は、パターンの用途によって異なる。配線などの導電パターンを形成する場合は、導電性粉末が用いられる。例えば、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。
【0024】
このような導電性粉末は、乾燥工程を経た塗膜中に60質量%以上の割合で配合される。導電性粉末が60質量%より少ないと、レーザー照射後の導電パターンがポーラスな状態となり充分な導電性が得られ難くなる。
【0025】
一方、ブラックマトリックスパターンを形成する場合は、耐熱顔料が用いられる。例えば、Cu、Fe、Cr、Mn、Co、Ru、La等の単独の金属酸化物及び/又は金属元素2種以上からなる複合酸化物が好適に用いることができる。黒色度の点で四三酸化コバルトを用いることが好ましい。
【0026】
このような耐熱顔料は、乾燥工程を経た塗膜中に10質量%以上の割合で配合される。耐熱顔料が10質量%より少ないと、レーザー照射後のパターンがポーラスな状態となり充分な黒色度が得られ難くなる。
【0027】
このような無機粉末は、一次粒径が0.1〜5μmであるものが好ましい。一次粒径が5μmより大きいと、導電性粉末の場合、レーザーパターニング後に導電パターンにピンホールや隙間が生じやすくなり十分な導電性が得られ難くなる。また、耐熱顔料の場合、導電性粉末同様レーザーパターニング後に皮膜にピンホールや隙間が生じやすくなり黒色度が低下する。粒径が小さくなると、より高価となるため低コスト化という観点から0.1μm以上が好ましい。より好ましくは0.2〜3.1μmである。無機粉末は、球状、フレーク状、デンドライト状など種々の形状のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると、球状のものを用いることが好ましい。なお、本実施態様において、無機粉末の一次粒径とは、電子顕微鏡(SEM)を用いて10,000倍にて観察したランダムな10個の無機粉末の平均粒径を意味する。
【0028】
本実施態様のパターン形成方法に用いる混合物に配合されるガラスフリットとしては、ガラス軟化点が420〜580℃であることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点が360〜500℃である。また、ガラスフリットの熱膨張係数α300は、60〜110×10−7のものが好ましい。このようなガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
【0029】
例えば、酸化鉛を主成分とするガラスフリットとしては、酸化物基準の質量%で、PbOが48〜82%、Bが0.5〜22%、SiOが3〜32%、Alが0〜12%、BaOが0〜15%、TiOが0〜2.5%、Biが0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0030】
酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Biが6〜88%、Bが5〜30%、SiOが5〜25%、Alが0〜5%、BaOが0〜20%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0031】
酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnOが25〜60%、KOが2〜15%Bが25〜45%、SiOが1〜7%、Alが0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0032】
このようなガラスフリットの配合量は、無機粉末に導電性粉末を用いた場合にあっては、レーザー照射後のパターンの密着性並びに抵抗値低減の観点から導電性粉末に対して、1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%で配合することができる。一方、無機粉末に耐熱顔料を用いた場合にあっては、レーザー照射後のパターンの密着性並びに黒色度の観点から耐熱顔料に対して1〜100質量%、より好ましくは30〜70質量%で配合することができる。
【0033】
本実施態様のパターン形成方法に用いる混合物に配合される有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの有機溶剤の配合量は、塗布作業性の観点から混合物に対して、1〜20質量%の割合で配合する。
【0035】
また、現像液に溶解性を示す有機成分・分散剤であれば配合することができ、例えば、DISPERBYK−180、DISPERBYK−187、DISPERBYK−191(いずれもビックケミー社製、商品名)などが挙げられる。
【0036】
また、必要に応じて、安定剤として、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などを、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような安定剤は、前記ガラスフリット100質量部当り0.1〜10質量部の割合で添加することが好ましい。
【0037】
以下、本実施態様のパターンの形成方法について説明する。
【0038】
まず、本実施態様の混合物に関し、上述した各必須成分、ならびに任意成分との混練分散は、三本ロールやブレンダー等の機械が用いられる。こうして分散された混合物は、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基材上に塗布される。
【0039】
次いで熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜150℃で5〜60分程度乾燥させて指触乾燥性が得られる程度に有機溶剤を蒸発させる。
【0040】
次に、レーザー照射により、基材上に所望のパターンを形成する。レーザーを照射された領域は、塗膜中の有機成分はほとんどバーンアウトし、無機粉末はガラス基材上に融着される。レーザーパターニング工程としては、例えば、CADなどで、所望のパターンを作成し、これに従って、レーザーを照射するレーザー描画法が用いられる。レーザーとしては、基本波の波長が、266−10600nmの範囲が好ましい。具体的には、YVOレーザーが好適に用いられる。レーザー出力及び照射速度は、塗膜中の無機粉末が融着できる程度の熱量になるよう調節する。具体的には、レーザー出力は、0.2〜1.0W、照射速度は、0.1〜1.5mm/sの範囲で適宜調節される。レーザー出力が、0.2Wより小さい場合、十分な融着ができない。1.0Wより大きいと、照射部分の熱の拡散によって、線幅が太くなる。照射速度は0.1mm/sより遅いとパターン形成のタクトタイム短縮の観点から良くない。照射速度は1.5mm/sより速いと、十分に有機成分がバーンアウトできない。なお、ここではレーザー描画を挙げているが、これに限定されず、例えば、電子線ビーム、イオンビーム、荷電ビーム等を用いて描画してもよい。
【0041】
その後、現像することで、レーザー未照射部を洗い落し、所望のパターンを形成する。
【0042】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等あるいは超音波による方法が用いられる。スプレー法、浸漬法等においては、現像液として、アルカリ現像の場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液等が、また、有機溶剤現像の場合、メタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸n−プロピルのエステル類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のエーテル類等の公知の有機溶剤が好適に用いられる。なお、未照射部が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。
【0043】
このように本発明のレーザーを用いたパターン形成方法は、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程及びレーザーパターニング後の全面紫外線露光工程を行う必要がなくタクトタイムの短縮が可能となる。また、有機バインダーを含有しない無機粉末とガラスフリットと溶剤からなる混合物を使用することができるため、コストを抑えることができ、パターン形成のトータル的低コスト化が達成される。
【0044】
[実施例1〜4]
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
【0045】
(試験基板作成)
乾燥塗膜:高歪ガラス(PD200:旭ガラス社製)基板上に、評価用の混合物を200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥して塗膜(膜厚10μm)を形成した。
【0046】
評価パターン:上記の方法で作成した乾燥塗膜を、レーザーとしてYVOレーザー(第二高調波;532nm)を用い、照射距離3cmにて乾燥塗膜の塗膜表面に焦点距離を合わせ、YVOレーザー(第二高調波;532nm)を照射してパターンを形成し、評価パターンとした。
【0047】
現像:
アルカリ現像の場合;上記の方法で作成した評価パターンを、液温30℃の0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー法にてレーザー未照射部分が完全に落ちるまで現像を行った。
有機溶剤現像の場合;上記の方法で作成した評価パターンを、液温30℃のジエチレングリコールエチルエーテルアセテートをスプレー法にてレーザー未照射部分が完全に落ちるまで現像を行った。
【0048】
評価項目、測定条件は以下の通りである。
(導電性)
上記方法にて作成された評価パターンについて、レーザー照射部にテスターにて導通を評価した。
○;導電性有り
×;導電性無し
(耐現像性)
上記現像方法によって得られたレーザー照射部分についての有無について評価した。
【0049】
○;完全にレーザー照射部分がすべて残っている
△;一部のレーザー照射部分しか残っていない
×;すべてのレーザー照射部分が残っていない
(膜厚)
上記方法にて形成した評価パターンの膜厚を測定した。膜厚の測定は表面粗さ計により測定した。
(線幅)
現像後のパターンの線幅を光学顕微鏡にて測定した。
(体積固有抵抗値)
パターニングした部分について抵抗計(HIOKI3540mΩHITESTER)にて抵抗値を測定し、膜厚(表面粗さ計)、線幅(光学顕微鏡)にてそれぞれ測定した。なお、
体積固有抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×断面積(cm)/長さ(cm)
とした。
【0050】
下記に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉して混合物を得た。
(組成物1)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 110.0部
銀粉末 1830.0部
ガラスフリット 172.0部
分散剤(DISPERBYK−180 BYK−chemie) 1.0部
このようにして得られた混合物を用いて作成した乾燥塗膜について、レーザー照射速度0.1と1.5mm/sの場合におけるレーザー出力0.2、1.0Wで得られた評価パターンの各々の導電性、耐現像性、線幅、体積固有抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
実施例1〜4は有機バインダー、モノマーともに含有していない場合であり、現像方法は、有機溶剤で現像を行っている。実施例1、2といずれの結果についても良好な結果が得られた。また、実施例3では、導電性は良好であったが、耐現像性が悪く、実施例4では、導電性、耐現像性が悪かった。
【0052】
[実施例5〜10]
レーザーの出力評価
組成物1の混合物を用いて作成された乾燥塗膜について、レーザー照射速度0.1と1.5mm/sの場合におけるレーザー出力2.0、3.0、4.0Wで得られた評価パターンの各々の導電性、耐現像性、線幅、体積固有抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表2に示す。
【表2】

【0053】
実施例5〜10は有機バインダー、モノマーともに含有していない場合であり、現像方法は、有機溶剤で現像を行っている。導電性、耐現像性、体積固有抵抗値いずれの結果についても良好な結果は得られた。細線化の線幅については、有機バインダーの含有している場合(比較例1〜4 組成物2)に対して実施例の方が良かった。
【0054】
[比較例1〜4]
(有機バインダーの合成)
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.76:0.24のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロマイドを用い、グリシジルメタクリレートを、95〜105℃で16時間の条件で、上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ、冷却後取り出し、有機バインダーを得た。この有機バインダーは、重量平均分子量が約10,000、固形分酸価が59mgKOH/g、二重結合当量が950であった。なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0055】
上記方法により合成された有機バインダーを用い、下記に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉して混合物を得た。
【0056】
(組成物2)
有機バインダー 100.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 200.0部
銀粉末 1830.0部
ガラスフリット 172.0部
分散剤(DISPERBYK−180 BYK−chemie) 1.0部
このようにして得られた混合物を用いて作成した乾燥塗膜について、レーザー照射速度0.1と1.5mm/sの場合におけるレーザー出力0.2、1.0Wで得られた評価パターンの各々の導電性、耐現像性、線幅、体積固有抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表3に示す。
【表3】

【0057】
比較例1〜4は有機バインダーを含有している場合であり、現像方法は、有機溶剤で現像を行っている。比較例1〜3はいずれの結果についても良好な結果が得られた。また、比較例4では、導電性は良好であったが、耐現像性は悪かった。細線化の線幅については、有機バインダーの含有していない場合(実施例1〜4 組成物1)に対して比較例の方が悪かった。
【0058】
[比較例5〜10]
レーザーの出力評価
組成物2で得られた混合物を用いて作成された乾燥塗膜について、レーザー照射速度0.1と1.5mm/sの場合におけるレーザー出力2.0、3.0、4.0Wで得られた評価パターンの各々の導電性、耐現像性、線幅、体積固有抵抗値を上記測定方法にて評価した。評価結果を表4に示す。
【表4】

【0059】
比較例5〜10は有機バインダーが含有している場合であり、現像方法は、有機溶剤で現像を行っている。導電性、耐現像性、体積固有抵抗値いずれの結果についても良好な結果が得られた。細線化の線幅については、有機バインダーの含有していない場合(実施例5〜10 組成物1)に対して比較例の方が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末と、ガラスフリットと、溶剤からなる混合物を基板上に塗布する塗布工程と、
塗布された前記混合物を乾燥する乾燥工程と、
レーザー照射により、前記乾燥工程を経た塗膜にパターンを描画するレーザー照射工程と、
前記パターンを現像する現像工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項2】
無機粉末と、ガラスフリットと、溶剤と、更に現像液に溶解性を示す有機成分・分散剤を0.01〜5質量部からなる混合物を基板上に塗布する塗布工程と、
塗布された前記混合物を乾燥する乾燥工程と、
レーザー照射により、前記乾燥工程を経た塗膜にパターンを描画するレーザー照射工程と、
前記パターンを現像する現像工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項3】
前記現像工程において、有機溶剤が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記現像工程において、超音波が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記無機粉末は、導電性粉末であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記乾燥工程を経た塗膜中の前記導電性粉末が60wt%以上であることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記無機粉末は、耐熱顔料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記乾燥工程を経た塗膜中の前記耐熱顔料が10質量%以上であることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記レーザーの波長は266−10600nmであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記乾燥工程は、60−150℃で、5−60分行われることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
現像された前記導電パターン上に誘電体層を形成し、焼成する焼成工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−239032(P2010−239032A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87333(P2009−87333)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】