説明

レーザ照射装置

【課題】小型のレーザ照射装置で光干渉がなく、連続した結晶成長を実現することである。
【解決手段】メガヘルツレーザビームを用い、分割したレーザビームを半導体膜に照射して、半導体膜を結晶化する。その際に分割ビームに光路差を設けて光干渉を抑える。光路差はメガヘルツレーザビームのパルス幅に相当する長さ以上、パルス発振間隔に相当する長さ未満に設定され、非常に短い光路差で光干渉を抑えることができる。そのためレーザのエネルギー劣化がなく効率的に且つ連続的にレーザビームを照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ照射により半導体装置を作製する方法及びレーザ照射装置に関するもの
である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の作製においてレーザ照射がよく用いられている。その理由として一つは、
輻射加熱又は伝導加熱を利用するアニール法と比較して処理時間を大幅に短縮できること
があげられる。またもう一つの理由として、ガラス基板のような熱変形しやすい基板に対
し、熱的損傷を与えないことが挙げられる。
【0003】
一方で、レーザビームのビーム断面にはエネルギー強度分布(以下、強度分布とも言う
)があり、被照射体に一様な強度でレーザビームを照射できなかった。例えばレーザアニ
ールによって被照射体を結晶化する場合は一様な結晶性を有する半導体膜が得られなかっ
た。
【0004】
これに対し、レーザビームを複数に分割し、分割したビームを合成して、強度分布を一
様にする技術がある。
【0005】
しかしこの方法ではビーム断面における強度分布が一様になる一方で、分割されたビー
ム(以下、分割ビームとも言う)間の干渉が生じていた。これは分割ビームを合成すると
きに、ビーム同士が互いに干渉を起こすためである。したがって、当初のビーム断面の強
度分布はなくなるものの、干渉により新たに強度分布が生じてしまうため、照射面に一様
な強度でレーザビームを照射することはできなかった。
【0006】
この問題に対応し、特許文献1は、遅延板を使って分割されたビーム同士に時間的可干
渉距離(コヒーレント長)以上の光路差を設け、ビームの分割に伴う干渉を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−287703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で設ける光路差はコヒーレント長以上であるため、長い光路差を設ける必要
があった。例えば固体レーザから発振されるレーザビームの場合は、コヒーレント長が数
m〜数kmにもなり、このような光路差を設ける光学系の作製は非現実的であった。
【0009】
また、分割ビーム同士に光路差を設けると、照射面に到達するまでの時間が分割ビーム
毎に異なり、光路差が大きいほどビーム毎の到達時間の差は大きくなってしまう。したが
って、分割ビームに設けられた光路差が長すぎると、半導体膜を照射する際、遅延されて
いない方のビーム照射によって溶融した半導体膜部分が固化した後に、遅延された方のビ
ームが照射されることがあった。その場合、遅延されていない分割ビーム照射による結晶
成長が終了した状態で、次の分割ビームが照射されるため、連続的に結晶成長した結晶性
半導体膜が得られず大きい結晶粒を形成できなかった。また、このような照射方法で半導
体膜の結晶化を行う場合、熱的に不連続な現象となるため、エネルギー分布の一様なレー
ザビームを照射する工程とは全く異なるものとなった。
【0010】
以上の課題を鑑み、本発明はビーム断面の強度を均一にしつつビーム干渉を防止する小
型のレーザビーム照射装置を提供することを目的とする。また、本発明は、被照射体の結
晶化において、連続的な結晶成長ができる半導体装置の作製方法を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴の一つは、レーザビームを複数に分割し、複数の分割ビームから選択され
る任意の2つの分割ビームにおいて、一方の分割ビームに対して、他方の分割ビームに光
路差を設け、光路差が設けられた分割ビームを半導体膜の共通の部分に対してそれぞれ異
なる期間に照射して結晶化する半導体装置の作製方法であり、レーザビームはパルス幅1
00fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のパルスレーザビームとし、光路差はレ
ーザビームのパルス幅に相当する長さ以上、コヒーレント長またはパルス発振間隔に相当
する長さ未満とすることである。
【0012】
また、本発明の特徴の一つは、レーザビームを少なくとも第1のビームと第2のビーム
に分割し、第1のビームと第2のビームを半導体膜の共通部分に対してそれぞれ異なる期
間に照射して結晶化する半導体装置の作製方法であり、第1のビームの第1の光路と、第
2のビームの第2の光路との間に光路差を設け、光路差をレーザビームのパルス幅に相当
する長さ以上、コヒーレント長またはパルス発振間隔に相当する長さ未満とすることであ
る。レーザビームはパルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のパルス
レーザである。
【0013】
本発明の特徴の一つは、レーザビームを複数に分割し、複数の分割ビームから選択され
る任意の2つの分割ビームにおいて、一方の分割ビームに、他方の分割ビームに対して時
間差を設け、半導体膜への到達時間の時間差が設けられた分割ビームを半導体膜の共通部
分に対しそれぞれ異なる期間に照射して結晶化する半導体装置の作製方法であり、レーザ
ビームはパルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のパルスレーザとし
、時間差はレーザビームのパルス幅以上、コヒーレント長に相当する時間またはパルス発
振間隔未満とすることである。
【0014】
本発明の特徴の一つは、パルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上の
レーザビームを第1のレーザビームと第2のレーザビームに分割し、第2のレーザビーム
を第1のレーザビームに対して遅延させ、第1のレーザビームと、遅延させた第2のレー
ザビームを半導体膜の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射することにより半導体膜
を結晶化し、第1のレーザビームの照射により半導体膜が溶融している間に、第2のレー
ザビームが半導体膜に照射されることである。
【0015】
本発明の特徴の一つは、レーザ発振源から発振された、パルス幅100fs以上1ns
以下、周波数10MHz以上のレーザビームを複数に分割する手段と、複数に分割された
レーザビームから選択される任意の2つの分割ビームにおいて、一方の分割ビームに、他
方の分割ビームに対して光路差を設ける手段と、分割ビームを被照射体の共通部分に照射
する手段とを有するレーザ照射装置であり、光路差を設ける手段は、複数に分割されたレ
ーザビーム同士に、パルス幅に相当する長さ以上、コヒーレント長またはパルス発振間隔
に相当する長さ未満の光路差を設けることである。
【0016】
なお、本明細書においてメガヘルツレーザビームとは、周波数10MHz以上、パルス
幅100fs以上1ns以下の極短パルスを有するレーザビームを言う。なお、本発明に
おいて、共通部分にレーザビームを照射するとは、レーザビームの照射領域同士が必ずし
も完全に一致していることを意味するとは限らず、レーザビームの照射領域同士が共通部
分を有していれば良い。
【0017】
一般的に半導体膜の結晶化に用いられるレーザビームとして、パルス幅25〜200n
sであるエキシマレーザが用いられる。このようなエキシマレーザはパルス幅がある程度
長いため、結晶化のような原子の再配列に時間を要するプロセスに向いており、直径10
0〜300nm程度の結晶粒を形成することができる。一方で、パルス幅1ns以下の極
短パルスレーザは、パルス幅が短すぎるため充分な大きさになるまで結晶粒が成長せず、
結晶化には不向きであった。
【0018】
しかしながら、本発明人は実験により極短パルスレーザであっても、周波数を高くする
ことで半導体膜の加熱時間を長くし、連続的に被照射体にエネルギーを与え、半導体膜の
結晶粒を充分大きくすることが可能であることを見出した。それがパルス幅100fs以
上1ns以下、周波数10MHz以上であるメガヘルツレーザビームである。本発明は、
100fs以上1ns以下といった非常に短いパルス幅であっても、周波数を10MHz
以上とすることで、結晶化に必要な熱エネルギーを半導体膜に連続的に与え、半導体膜の
結晶化を行うものである。
【0019】
さらに、パルス幅以上の光路差を設けることで光干渉を抑えることを見出し、メガヘル
ツレーザビームにおいて光干渉を抑える際に非常に短い長さの光路差により光干渉を抑え
るものである。
【0020】
一方で、極短パルスレーザは、その高い尖塔出力を利用して、形状加工に用いられてい
る。しかし形状加工に用いるレーザビームは被照射体を溶融するのではなく、被照射体の
一部を瞬時に昇華させて穴を形成したり溝を形成したりするものである。そのため、半導
体膜の結晶化に用いるレーザビームとは異質であり、結晶化に用いるレーザビームよりも
非常に高いエネルギー密度のレーザビームを用いている。
【0021】
本発明は分割ビーム間に光路差または時間差を設けることが特徴の一つである。光路差
を設けるのも、時間差を設けるのも、分割ビームが照射面に到達するタイミングをずらす
という意味では同意味である。ただし本明細書においては、長さの単位で示したものを光
路差、時間の単位で示したものを時間差と使う。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、メガヘルツレーザビームを分割して、分割したビームにメガヘルツレーザビ
ームのパルス幅に相当する長さ以上コヒーレント長未満の光路差をつけ、分割ビーム同士
の干渉を防止する。もしくは分割ビームにメガヘルツレーザビームのパルス幅以上の時間
差を設け分割ビーム同士の干渉を防止する。これにより、わずかな光路差(時間差)で光
干渉なく一様な強度分布のビーム照射を可能にする。よって、光路差をつけるための光学
系も小さくてすみ、レーザ照射装置が小型化になるというメリットがある。
【0023】
周波数を10MHz以上とすることで、連続的に半導体膜に熱を与えることができるた
め、連続的な結晶成長が可能となる。また、パルス幅を1ns以下とすることで、分割さ
れたビーム間の光路差を数10cm以下とすることができるため、現実的に設計可能な光
学系を作製することができる。さらに、パルス幅を100fs以上とすることで、レーザ
装置の構造を簡易にできるため工業的に有利である。
【0024】
周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上1ns以下のメガヘルツレーザビーム
においては、パルス幅に相当する長さとコヒーレント長を比較すると、絶対的にパルス幅
に相当する長さの方が短いため、本発明は非常に短い光路差で干渉を抑えることができ有
効である。
【0025】
また、本発明は分割レーザ同士の光路差が短いため、干渉を抑えつつ、分割ビームを連
続的に半導体膜に照射することが可能であり、半導体膜の結晶を連続的に成長させ、大粒
径の結晶を形成することができる。つまり、メガヘルツレーザビームを第1のビームと第
2のビームに分割し、第1のビームによって溶融された半導体膜が固化する前に第2のビ
ームを照射することが可能となる。
【0026】
また、本発明はパルス幅100fs以上1ns以下の極短パルスのレーザビームであっ
ても、周波数を10MHz以上とすることで、半導体膜を結晶化することを可能にする。
【0027】
よって、本発明は被照射体に均一な強度分布で光干渉なくレーザビームを照射すること
ができる。さらに、被照射体が半導体膜のときは、分割ビームの間で連続的に半導体膜を
結晶成長させることができ、均一で且つ大粒径の結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1を説明する図。
【図2】実施形態1を説明する図。
【図3】実施形態2を説明する図。
【図4】実施形態2を説明する図。
【図5】実施例1を説明する図。
【図6】実施例1を説明する図。
【図7】実施例2を説明する図。
【図8】実施例3を説明する図。
【図9】実施例4を説明する図。
【図10】実施例5を説明する図。
【図11】実施例7を説明する図。
【図12】実施例7を説明する図。
【図13】実施例7を説明する図。
【図14】実施例7を説明する図。
【図15】実施例8を説明する図。
【図16】実施例8を説明する図。
【図17】実施例6を説明する図。
【図18】メガヘルツレーザビームの顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多く
の異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱すること
なくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従っ
て、本発明は本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
また、以下に示す実施形態1及び2は実施可能な範囲で自由に組み合わせることが可能
である。
【0031】
(実施の形態1)
図1(A)〜(H)にメガヘルツレーザビームを分割して被照射体の共通部分に対しそ
れぞれ異なる期間に照射するときの各ビーム断面形状と強度分布を示す。図1(A)はメ
ガヘルツレーザビーム分割前、図1(B)及び図1(C)はメガヘルツレーザビーム分割
時、図1(D)はメガヘルツレーザビームを被照射体の共通部分に対しそれぞれ異なる期
間に照射する時のそれぞれのビーム断面である。図1(E)は分割前のビーム断面におけ
る強度分布、図1(F)、(G)は分割時のビーム断面における強度分布、図1(H)は
分割ビーム12、13の照射により合成された熱エネルギー分布を表す。ここではメガヘ
ルツレーザビームを2つに分割する例を示すが、2つ以上であればいくつに分割しても良
い。分割数が多いほど分割ビームを照射した際の被照射体におけるビームの熱エネルギー
強度は均一になる。なお、図1(A)〜(D)に示すビーム断面形状、図1(E)、(F
)に示すビーム強度分布、及び図1(G)に示す熱エネルギー分布は一例にすぎず、これ
に限定されない。
【0032】
分割前のビーム11の断面は円形であり、その強度分布はガウス分布を有する(図1(
A)、(E))。ビーム11を分割して分割ビーム12、13が形成され、分割ビーム断
面は半円状となり、強度分布もガウス分布を半分で割ったような分布となる(図1(B)
、(C)、(F)、(G))。そして互いの強度の和が一定になるように分割ビーム12
、13を被照射体の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射し、均一な熱エネルギー分
布を被照射体の共通部分に与える(図1(D)、(H))。ビームを分割して合成すると
ビーム断面における強度分布は緩和される。しかし、分割ビーム12、13を同じタイミ
ングで被照射体の共通部分に照射すると新たに干渉が生じるため、図2に示すように、分
割ビームがそれぞれ被照射体に到達する時間に時間差を設けることが必要になってくる。
【0033】
図2(A)にメガヘルツレーザビームの一例として、12.5nsのパルス発振間隔を
持つメガヘルツレーザビームを示す。図1(A)〜(H)で説明したようにビーム11の
空間プロファイルを2分割し、分割ビーム12、13を形成する(図2(B))。そして
図2(C)に示すように、分割ビーム12、13が被照射体に照射される時の干渉を抑え
るために、分割ビーム13を分割ビーム12に対しある光路差(時間差)の分だけ遅延さ
せる。このときの時間差はビーム11のパルス幅以上パルス発振間隔未満とする。時間差
をパルス幅未満とすると、分割ビーム12と分割ビーム13のパルスが重なってしまうた
め、光干渉が生じてしまう。また、時間差をビーム11のパルス発振間隔とすると、レー
ザ源から周期的に発振されるパルスと遅延させた分割ビーム13のパルスが重なってしま
い干渉が起きる。また、時間差をビーム11のパルス発振間隔以上とすると、3m以上の
光路差を設けなければならず、現実的でない。そのため時間差はパルス発振間隔未満とす
る必要がある。したがって、上記時間差を分割ビームに設定することで光干渉がなく、均
一なレーザビームを照射面に照射できる。また、ビーム11を3つ以上に分割した場合は
、分割ビームから任意に選択されるいずれの2つの分割ビームにおいても、上記分割ビー
ム12、13の関係となっていれば良い。即ち、複数の分割ビームから任意に選択される
2つの分割ビームにおいて、一方の分割ビームに対し他方の分割ビームを、パルス幅以上
パルス発振間隔未満の時間だけ遅延させれば良い。
【0034】
厳密には、設ける時間差の上限はパルス発振間隔からパルス幅を差し引いた時間となる
。つまり、時間差t、パルス幅a、パルス発振間隔1/N(Nはレーザビームの周波数
)とするとき、a<t<1/N−aとなる。
【0035】
本明細書においてパルス発振間隔とは、メガヘルツレーザビームの周波数をNとしたと
きに、1/Nをパルス発振間隔とする。
【0036】
分割ビーム12が被照射体に照射されると光エネルギーは熱エネルギーに変換される。
このときの熱エネルギー分布は分割ビーム12の強度分布を反映したものとなる。しかし
、分割ビーム間の光路差が長すぎる場合、分割ビーム13の照射前に、分割ビーム12に
より被照射体に与えられた熱エネルギーの拡散が始まり熱エネルギー分布が変化してしま
う。そのため分割ビーム13の照射による熱エネルギー分布を、分割ビーム12の照射に
よる熱エネルギー分布に合成しても均一な熱エネルギー分布が得られなくなる。つまり、
被照射体を均一にレーザ照射することが不可能となる。したがって、分割ビーム13は分
割ビーム12により発生した熱エネルギーの拡散が起こるまでの間に照射するのが好まし
い。
【0037】
本発明は光路差をメガヘルツレーザビームのパルス幅に相当する長さ以上パルス発振間
隔に相当する長さ未満とするため、光路差を非常に短くすることができ、分割ビーム12
の熱エネルギーが拡散する前に分割ビーム13を照射することができる。したがって、よ
り確実に均一なエネルギーを照射面に与えることができる。
【0038】
また、従来のコヒーレント長以上の光路差を設けて光干渉を抑える場合は、設ける光路
差が長いため、分割ビーム13が照射面に到達するまでに分割ビーム13のエネルギーが
減退してしまい、効率よくレーザを照射できなかった。加えて光路差が長いと、分割ビー
ム12の照射により被照射体に与えたエネルギーが拡散した後に、分割ビーム13が照射
されてしまい、分割ビーム間で連続的なエネルギーを被照射体に付与することができなか
った。例えばレーザ照射により半導体を結晶化する場合、分割ビーム12の照射により溶
融した半導体が固化した後に分割ビーム13が照射され、分割ビーム間で連続的に結晶成
長させることができず、大粒径の結晶を得ることができなかった。
【0039】
これに対し本発明は、分割ビームに光路差を設けても、その光路差がMHzレーザのパ
ルス幅に相当する長さ以上と非常に短いため、エネルギーの減退が少ない状態で分割ビー
ムを連続的に照射することができる。また、分割ビームにより被照射面に連続的にエネル
ギーを与えることができ、光干渉を抑えつつ照射面に高いエネルギーを効率よく与えるこ
とができる。よって、半導体の結晶化に本発明を適用した場合は連続的な結晶成長を実現
し、大粒径の結晶を得ることができる。
【0040】
なお、本発明におけるパルス幅に相当する長さとはパルス幅に光速を乗じた値であり、
パルス発振間隔に相当する長さとはパルス発振間隔に光速を乗じた値である。
【0041】
図18にシリコンの顕微鏡写真を示す。周波数80MHz、パルス幅15psのYVO
レーザを用いて、アモルファスシリコンを結晶化したときのシリコンを写している。図
18(A)、(B)ともにYVOレーザビームを分割して照射しており、図18(A)
は分割ビーム同士に時間差を設けない条件で結晶化したものであり、図18(B)は分割
ビーム同士に約25psの時間差を設けて結晶化したものである。
【0042】
図18(A)に示した写真は周期的な干渉縞がはっきり確認できる。一方、図18(B
)は干渉縞がなく一様な結晶状態が確認できる。
【0043】
以上より、本発明は非常に短い光路差を設定することで分割ビーム同士の光干渉をなく
すことができ、均一な熱エネルギー分布を与えるメガヘルツレーザビームにより半導体膜
の結晶化を可能にするものである。
【0044】
(実施の形態2)
本形態では、ガラス基板または石英基板上の被照射体にレーザビームを照射する形態に
ついて説明する。ガラス基板や石英基板上に被照射体がある場合は、被照射体で吸収しき
れなかったレーザビームが基板裏面で反射され、再度被照射体に照射されることがある。
その場合には、光干渉防止のための光路差を決定する際に、基板裏面からの反射光の挙動
も考慮する必要がある。本形態では、基板裏面における反射光も考慮した光路差の設定に
ついて図3、図4を用いて説明する。なお、時間差tはレーザビームの発振間隔1/N
未満とする。理由は時間差をレーザビームのパルス発振間隔以上とすると、現状の技術で
は3m以上の光路差を設けなければならず、現実的でないからである。もう一つの理由は
、時間差をレーザビームのパルス発振間隔とすると、レーザ源から周期的に発振されるパ
ルスと遅延させた分割ビームのパルスが重なってしまい干渉が起きるからである。
【0045】
図3、図4において、メガヘルツレーザビームを二つに分割して形成した分割ビームの
一つを第1のレーザビーム401、もう一つの分割ビームを第2のレーザビーム402と
する。もしくは、メガヘルツレーザビームを複数に分割した場合は、複数ある分割ビーム
のうち、任意の二つのレーザビームに着目する。そして、その二つのレーザビームのうち
、先に照射される分割ビームを第1のレーザビーム401、後で照射される分割ビームを
第2のレーザビーム402とする。
【0046】
第1のレーザビーム401、第2のレーザビーム402を照射した際に、基板404上
の被照射体403において第1と第2のレーザビーム間の干渉を防止できる条件は、第1
のレーザビーム401が基板404内を伝播する時間t〜tに応じて以下の3つに分
類できる。なお、本形態では被照射体403としてアモルファスシリコン膜を用い、基板
404としてガラス基板を用いる。
【0047】
第1のレーザビーム401が被照射体403を通過し、基板404の裏面で反射し、再
び被照射体403を通過した後に、遅延した第2のレーザビーム402が被照射体403
に照射される場合について図3を用いて説明する。図3(A)は第1のレーザビーム40
1が被照射体403に照射された瞬間を表し、第1のレーザビーム401のパルス先端4
05が被照射体403に到達している。このとき時間t=0とする。
【0048】
図3(A)の状態からt秒後経過したときの状態を図3(B)に示す。図3(B)は
第1のレーザビーム401のパルス先端405が被照射体403を通過し、基板裏面で反
射されてから再び被照射体403に照射された瞬間の図である。ここで、第1のレーザビ
ームのパルス先端405が基板404中を伝播する時間tは基板の厚さをD、基板の屈
折率をn、光速をcとすると、t=2nD/cで表される。
【0049】
次に、図3(B)の状態からt秒後経過したときの状態を図3(C)に示す。図3(
C)は、第1のレーザビーム401のパルス終端406が被照射体403を通過した状態
を表しており、tは第1のレーザビーム401のパルス幅に相当する。図3(C)にお
いて被照射体403は第1のレーザビーム401の位相情報を保持した状態である。
【0050】
次に、図3(D)は図3(C)の状態から、被照射体403の位相緩和時間tが経過
した時の状態を示すものである。図3(D)では被照射体403が第1のレーザビーム4
01の位相情報を保持していないため、ここに、第2のレーザビーム402を照射しても
、第1のレーザビーム401と第2のレーザビーム402の間での干渉は起こらないこと
になる。このとき、第1のレーザビーム401が被照射体403に照射されてから(図3
(A)の状態)、第2のレーザビーム402が被照射体403に照射されるまで(図3(
D)の状態)の時間はt+t+tとなる。したがって、第1のレーザビームと第2
のレーザビームとの間で光干渉を抑えるには、第1のレーザビーム401と第2のレーザ
ビーム402との間の時間差tを上記の時間t+t+tよりも大きくすれば良い
。即ち以下の式1が成り立つ。
+t+t<t (式1)
【0051】
ただし、レーザ発振器からは1/N秒(Nはレーザビームの周波数)の発振間隔でレー
ザパルスが射出しているため、第2のレーザビーム402は第1のレーザビーム401と
の差だけでなく、第1のレーザビーム401から1/N秒後に射出された第3のレーザビ
ームとの差も考慮する必要がある。そのためには、被照射体403において、第2のレー
ザビーム402による位相情報が消失した後に、第1のレーザビーム401から1/N秒
後に射出された第3のレーザビームが被照射体403に到達するようにすると良い。つま
り、第2のレーザビーム402が基板裏面で反射され再び被照射体403に照射され、被
照射体403を通過した後に、第3のレーザビームが照射されれば良い。図3において、
第1のレーザビーム401が被照射体403に照射されてから、第2のレーザビーム40
2が基板裏面で反射後に被照射体403を再び通過するまでの時間はt+t+t
で表される。ここで、レーザパルスの発振間隔1/Nが上記の時間t+t+t
+tよりも大きいならば、第2のレーザビーム402と第3のレーザビームは被照射体
403において時間的に重なり合うことがなく、レーザビーム間の干渉が防止できること
になる。上記の条件により、時間差tは下記の式2で表すことができる。
<1/N−t−t−t (式2)
【0052】
上記の式1、式2をまとめると、第1のレーザビーム401と第2のレーザビーム40
2との間での干渉を防止することができる時間差tの条件は、以下の式3で表すことが
できる。
+t+t<t<1/N−t−t−t (式3)
【0053】
なお、位相緩和時間とはレーザビームが被照射体に吸収されてから、レーザビームの位
相情報量が1/e(eは自然対数)となるまでの時間を指す。したがって、上記位相緩和
時間tは第1のレーザビーム401が被照射体403に吸収されてから位相情報が1/
eとなるまでの時間となる。しかし、この時間はパルス幅と比較して非常に短くt≒0
と見なして良い。よって式3は式4で表すことができる。
+t<t<1/N−t−t (式4)
【0054】
つまり、上記式3または式4を満たすような時間差tを分割ビームの第1のレーザビ
ーム401と第2のレーザビームとの間に設けると、基板裏面で反射した第1のレーザビ
ーム401とも干渉をおこさずに被照射体に第2のレーザビーム402を照射することが
できる。tは2nD/c、tはパルス幅、1/Nはパルス発振間隔であるため、これ
らの値よりtを算出し時間差(光路差)を設定する。メガヘルツレーザビームを3つ以
上に分割した場合は、分割ビームのうち、任意の2つの分割ビームに式3または式4を満
たす時間差tを設ければ、干渉を防止できる。
【0055】
以上より、基板裏面における反射光を考慮する場合は、設ける時間差(光路差)の下限
として、パルス幅tに第1のレーザビームが基板を伝播する時間tを足した値を用い
れば良い。また、設ける時間差(光路差)の上限としても、発振間隔からパルス幅t
けでなく、第1のレーザビームが基板を伝播する時間tも差し引いた値を用いればよい

【0056】
以上で求めた式3または式4により、第1のレーザビームと第2のレーザビーム間の時
間差tを決定でき、光学系に必要となる光路差が計算できる。例えばレーザ発振器10
1から射出するレーザビームのパルス幅tが10ps、照射面である被照射体403の
位相緩和時間tが0.1ps、基板の厚さが1mm、基板の屈折率が1.5である場合
、t+t+t=20.1psとなる。よって式3よりレーザビーム間の時間差t
を20.1ps以上とすれば、照射面における光干渉を防止することができる。また、時
間差tの上限については1/N−t−t−tにより計算され、パルス発振間隔1
/Nが10nsの場合、遅延時間の上限値は9.98nsとなり、時間差tを20.1
ps〜9.98nsに設定すれば光干渉を防止できる。
【0057】
なお、メガヘルツレーザビームにより被照射体を結晶化するときは、被照射体の固化時
間以内に時間差tを設定するようにすると良い。固化時間以内に遅延時間を設定すれば
、第1のレーザビームと第2のレーザビームにより被照射体に連続的なビーム照射ができ
、分割ビーム間における連続的な結晶成長が実現できる。したがって、時間差tは上記
式3または式4の範囲内で被照射体の溶融時間等に応じ実施者が適時調整すると良い。例
えばシリコンの固化時間は100nsであるため、時間差tが100ns以内になるよ
うに設定すれば、シリコンを連続的に結晶成長させることができる。
【0058】
次に、図4を用いて、第1のレーザビームと第2のレーザビームとの間の干渉を防止す
る別の例を説明する。図3と同一のものについては図3と同じ符号及び記号を用いる。
【0059】
図4は、第1のレーザビーム401が被照射体403を通過してから、ガラス基板の裏
面で反射した反射光が再び被照射体403に照射されるまでの間に、第2のレーザビーム
402を被照射体403に照射する図である。図4(A)は、第1のレーザビーム401
が被照射体403に照射された瞬間の様子であり、時間t=0とする。このとき、第1の
レーザビーム401のパルス先端405が被照射体403に到達している。
【0060】
第1のレーザビーム401と第2のレーザビーム402の時間差をtとする。t
後には、第2のレーザビーム402のパルス先端407が被照射体403に到達すること
になる。この時の状態を図4(B)に示す。この時点で、第1のレーザビーム401と第
2のレーザビーム402の干渉を防止するには、第1のレーザビーム401のパルス終端
406が被照射体403を通過し、さらに第1のレーザビーム401の位相情報が消失し
た後に、第2のレーザビーム402を被照射体403に照射させる必要がある。したがっ
て、第1のレーザビーム401と第2のレーザビーム402との間の時間差tはパルス
幅t、位相緩和時間tを用いて以下の式5で表すことができる。
+t<t (式5)
【0061】
図4(C)は図4(B)から第2のレーザビーム402のパルス幅t秒が経過した後
の図であり、第2のレーザビーム402のパルス終端408が被照射体403を通過した
様子を示している。
【0062】
さらに図4(C)から位相緩和時間tが経過すると、被照射体403において第2の
レーザビーム402による位相情報は消失することになる。このときの状態を図4(D)
に示す。第2のレーザビームの位相情報が消失した後に、基板裏面で反射した第1のレー
ザビーム401が再び被照射体403に照射されれば、第1のレーザビーム401と第2
のレーザビーム402との間での干渉は起こらない。なお、第1のレーザビーム401の
パルス先端405が被照射体403に照射されてから(図4(A))、再び被照射体40
3に照射されるまで(図4(D))の時間は、図3で示したようにtで表される。した
がって、図4の状態で干渉の起こらない条件を満たすためには、以下の式6で表すことが
できる。
+t+t<t (式6)
【0063】
式5、式6をまとめると第1のレーザビーム401と第2のレーザビーム402の干渉
を防止できる条件は、式7で表すことができる。
+t<t<t−t−t (式7)
【0064】
最後に、第2のレーザビーム402が被照射体403を通過して基板裏面で反射し、反
射光が再び被照射体403に照射されるまでの間に、第1のレーザビーム401から1/
N秒後に射出された第3のレーザビームが被照射体403に照射される場合を説明する。
第1のレーザビーム401が被照射体403に照射されてから(図4(A))、第2のレ
ーザビーム402が被照射体403に照射され、被照射体403において第2のレーザビ
ーム402による位相情報が消失するまで(図4(D))の時間はt+t+tで表
される。ここで、レーザパルスの発振間隔1/Nが上記の時間t+t+tよりも大
きい場合には、第2のレーザビーム402と第3のレーザビームは、被照射体403にお
いて時間的に重なり合うことがなく、レーザビーム間の干渉が防止できることになる。上
記の関係により、時間差tに関する下記の式8が導出される。
<1/N−t−t (式8)
【0065】
また、第1のレーザビーム401が被照射体403に照射されてから、第3のレーザビ
ームが被照射体403に照射され、被照射体403において第3のレーザビームによる位
相情報が消失するまでの時間は、1/N+t+tで表される。上記の時間1/N+t
+tが経過後に、基板裏面で反射した第2のレーザビーム402が被照射体403に
到達する場合、第3のレーザビームと第2のレーザビームは、被照射体403において時
間的に重なり合うことがなく、レーザビーム間の干渉が防止できることになる。なお、第
1のレーザビーム401が被照射体403に照射されてから、被照射体に第2のレーザビ
ームが照射され、基板裏面で反射して再び被照射体403に到達するまでの時間はt
で表される。したがって、下記の式9が成立する場合に、第3のレーザビームの位相
情報が被照射体403から消失した後に、基板裏面で反射した第2のレーザビームが再び
被照射体に照射されることとなり、干渉が防止できる。
1/N+t+t<t+t (式9)
【0066】
式8、式9をまとめると、第1のレーザビームから1/N秒後に照射される第3のレー
ザビームと、第2のレーザビーム402との干渉を防止できる条件は式10で表すことが
できる。
1/N−t+t+t<t<1/N−t−t (式10)
【0067】
なお、図3と同様に位相緩和時間tは第1もしくは第2のレーザビームが被照射体4
03に吸収されてから位相情報が1/eとなるまでの時間であるが、この時間は非常に短
いためt≒0と近似できる。即ち、以下の式11で表すことができる。
1/N−t+t<t<1/N−t (式11)
【0068】
メガヘルツレーザビームを3つ以上に分割した場合は、分割ビームのうち、任意の2つ
の分割ビームに式10または式11を満たす時間差tを設ければ、干渉を防止できる。
【0069】
なお、メガヘルツレーザビームにより被照射体を結晶化するときは、被照射体の固化時
間以内に時間差tを設定するようにすると良い。固化時間以内に遅延時間を設定すれば
、第1のレーザビームと第2のレーザビームにより被照射体に連続的なビーム照射ができ
、分割ビーム間における連続的な結晶成長が実現できる。したがって、時間差tは上記
式10または式11の範囲内で被照射体の溶融時間等に応じ実施者が適時調整すると良い

【0070】
以上より、式から時間差tを算出し、光路差を設ける光学系に反映させ設計すれば良
い。そうすれば基板裏面で反射する反射光の挙動も考慮した光路差を設計できる。本発明
の光路差を設けることで、光干渉なくアモルファスシリコン膜を照射でき、アモルファス
シリコン膜に均一な熱エネルギー分布を与え、且つ連続的な結晶成長を行わすことができ
る。即ち、光干渉なく半導体膜を均一に照射するためには、半導体膜中に2つのレーザビ
ームが存在していなければ良く、ひいては半導体膜中に2つのレーザビームの位相情報が
存在しなければ良い。
【0071】
本実施例では時間を単位として時間差tを説明したが、光路差に変換する場合は遅延
時間に光速を乗じれば良い。
【0072】
以下の実施例1〜8は実施可能な範囲で自由に組み合わせることができる。また実施の
形態1または2にも、以下の実施例1〜8は実施可能な範囲で自由に組み合わせることが
できる。
【実施例1】
【0073】
実施例1では本発明のレーザ照射装置を示す。図5(A)はレーザ照射装置であり、図
5(B)は分割前のビーム断面形状、図5(C)、(D)は分割時のビーム断面形状、図
5(E)は照射面110の共通部分に対し分割ビームをそれぞれ異なる期間に照射した時
のビーム断面形状である。図5(F)は分割前のビーム断面の強度分布、図5(G)、(
H)は分割時のビーム断面の強度分布、図5(I)は照射面の共通部分に分割ビームを照
射した時に合成される熱エネルギー分布を示す。
【0074】
図5(A)において、レーザ発振器101から発振されたレーザビーム107が分割手
段102により第1のレーザビーム108、第2のレーザビーム109に分割される。レ
ーザビーム107、108、109はメガヘルツレーザビームである。分割手段102と
しては分割ミラーを用いる。レーザビーム107は円形のビーム断面形状でありガウス分
布の強度を持つ(図5(B)、(F))。第1のレーザビーム108、第2のレーザビー
ム109のビーム断面形状は、分割ミラーで分割され半円になる(図5(C)、(D))
。強度はガウス分布を中心で分けた分布となり、互いに線対照的な分布となる(図5(G
)、(H))。
【0075】
第1のレーザビーム108はミラー104に反射し、第2のレーザビーム109はミラ
ー103に反射してそれぞれ偏向され、第1のレーザビーム108、第2のレーザビーム
109は照射面110に対しそれぞれ異なる期間に照射される。第1のレーザビームと第
2のレーザビームのそれぞれが照射される際は、図5(E)で示すように、第1のレーザ
ビーム108、第2のレーザビーム109が持つ強度分布が緩和するようにして照射する
。第1のレーザビーム108及び第2のレーザビーム109の照射により、照射面で合成
された熱エネルギーは、図5(I)のように均一になる。シリンドリカルレンズ105、
106では分割ビームの成形がなされる。
【0076】
分割手段102からミラー104までの光路長d1と、分割手段102からミラー10
3までの光路長d2を比べると、d1<d2であり、この光路長の差d(d=d2―d1
)が第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム109の光路差になる。そして、光
路差dはレーザビーム107のパルス幅に相当する長さ以上パルス発振間隔に相当する長
さ未満にする。本形態ではメガヘルツレーザビームを用いるため光路差dは数mm〜数十
mmでよく、長い光路差を設ける必要がない。例えばパルス幅が10psであれば光路差
dは3mmとなり、非常に短い光路差となる。
【0077】
また、実施の形態2のように基板裏面における反射光を考慮する場合は、式より算出し
たtに光速を乗じた光路差dを設定すれば良い。
【0078】
次に、1/2λ波長板とビームスプリッタを組み合わせたレーザ照射装置の例について
、図6を参照して説明する。図5(A)と同一のものについては同じ符号を付す。
【0079】
メガヘルツレーザビームを発振するレーザ発振器101から出力されたレーザビーム1
07は、球面レンズ201a及び201bより構成されるビームエキスパンダー201に
より長辺方向および短辺方向ともにそれぞれ約5倍に拡大される。球面レンズ201aは
半径50mm、厚さ7mm、第1面の曲率半径が−220mmである。球面レンズ201
bは半径50mm、厚さ7mm、第2面の曲率半径が−400mmである。なお、ビーム
エキスパンダー201はレーザ発振器101から射出されたレーザビームの形状が小さい
場合は有効であるが、レーザビームの形状が大きい場合は用いなくてもよく、実施者が適
宜選択すればよい。本明細書ではレンズの曲率半径について、曲率中心がレンズ面に対し
て光線の射出側にあるときを正で示し、曲率中心がレンズ面に対して入射側にあるときを
負で示している。また、レンズにおいて光が入射する面を第1面、射出する面を第2面と
する。
【0080】
ビームエキスパンダー201により拡大されたレーザビーム107は分割手段102に
より反射される。分割手段102は、図5(C)、(D)、(G)、(H)で示したよう
に、レーザビーム107を互いに線対称の強度分布を持ち、断面形状が半円の第1のレー
ザビーム108および第2のレーザビーム109に2分割する。
【0081】
第1のレーザビーム108はミラー104で反射され、1/2λ波長板203を通過す
る。1/2λ波長板203を通過することによって、第1のレーザビーム108の偏光方
向はs偏光となる。さらに第1のレーザビーム108は偏光ビームスプリッタ205に入
射することにより、照射面110における照射位置が調整される。
【0082】
一方、分割手段102により分割された第2のレーザビーム109はミラー103で反
射され、1/2λ波長板202を通過する。1/2λ波長板202を通過することによっ
て第2のレーザビームの偏光方向はp偏光となる。さらにミラー204で反射した第2の
レーザビーム109は偏光ビームスプリッタ205により、照射面110における照射位
置が調整される。
【0083】
第2のレーザビーム109の光路は、第1のレーザビーム108の光路に対してミラー
204と偏光ビームスプリッタ205の間の距離dだけ長く、第2のレーザビーム109
には光路差dが設けられている。したがって、第2のレーザビーム109は第1のレーザ
ビーム108よりも光路差dだけ遅延して照射面110に照射されることになる。光路差
dはレーザビーム107のパルス幅に相当する長さ以上、パルス発振間隔に相当する長さ
未満に設定する。また、基板裏面における反射光を考慮する場合は、実施の形態2で求め
た式より算出した光路差を設定する。
【0084】
第1のレーザビームと第2のレーザビームの照射領域が照射面110において重なるよ
うに偏光ビームスプリッタ205により調整することによって、照射面には均一な熱エネ
ルギー分布を合成することができる。シリンドリカルレンズ105の焦点距離は150m
m、厚さは5mmである。これにより、照射面110においてビーム断面の長軸方向の長
さが500μmとなるようにレーザビームを成形することができる。また、シリンドリカ
ルレンズ106の焦点距離は20mmである。これにより、照射面110においてビーム
断面の短軸方向の長さが10μmとなるようにレーザビームを成形する。以上より、照射
面において線状ビームを形成することができる。
【0085】
本実施例では、レーザビームの干渉を抑えながら分割ビーム被照射面に照射することが
できるため、照射面の熱エネルギー分布を均一にすることができる。それゆえ均一な結晶
成長を実現できる。また、分割ビームの照射において連続的な結晶成長ができ、大粒径の
結晶を得ることができる。
【0086】
例えば、パルス幅10ps、周波数10MHzのYAGレーザを分割して、分割ビーム
を被照射面の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射し、シリコンを結晶化するとする
。シリコンの固化時間は一般的に100nsである。このYAGレーザにコヒーレント長
に相当する光路差を設けて光干渉を抑えた場合、通常、分割ビーム同士に300ns以上
もの時間差を設けなくてはならない。したがって、分割ビームの時間差がシリコンの固化
時間よりも長いため、分割ビーム間でシリコンを連続的に結晶化することはできない。一
方で、このYAGレーザにパルス幅以上の光路差を設けた場合は、分割ビーム同士に少な
くとも10ps以上の時間差が生じる。10psはシリコンの固化時間よりも非常に短い
ため、分割ビーム間で連続的にシリコンを結晶化することができる。
【実施例2】
【0087】
実施例2では実施例1とは異なる構成のレーザ照射装置について図7を用いて説明する
。図7(A)はレーザ照射装置の平面図、図7(B)は側面図である。図6と同一のもの
は同じ符号を付し説明を省略する。
【0088】
メガヘルツレーザビームを発振するレーザ発振器101から出力されたレーザビーム1
07は、球面レンズ201a及び201bより構成されるビームエキスパンダー201に
より、ビーム断面の長辺方向および短辺方向が拡大される。
【0089】
ビームエキスパンダー201を通過したレーザビーム107は、シリンドリカルレンズ
アレイ701により分割される。ここでは2つに分割する例を示すが、2つ以上に分割す
るシリンドリカルレンズアレイを用いても良い。シリンドリカルレンズアレイ701を構
成するシリンドリカルレンズは厚さを5mm、第1面の曲率半径を40mmとする。
【0090】
ここで、2分割されたレーザビームをそれぞれ、第1のレーザビーム108、第2のレ
ーザビーム109とする。そして、第2のレーザビーム109のみをシリンドリカルレン
ズアレイ701の後方に配置した遅延手段702を通過させる。遅延手段702は、第2
のレーザビーム109を第1のレーザビーム108に対して遅延させる機能を有するもの
であれば良い。ここでは遅延手段702として石英板を用いる。使用する石英板の厚さを
、光速をc、石英板の屈折率をnとすると、分割されたレーザビーム間の光路差はd
(n−1)/cで表され、石英板の厚さを選択することで光路差を選ぶことができる。
【0091】
石英板の他、遅延手段702としては、メガヘルツレーザビームに対して吸収性を有さ
ない媒体を用いることができる。例えば、ガラス(BK7)、水、またはフッ化物でなる
結晶等がある。なお、石英もメガヘルツレーザビームに対して吸収性を有さない。
【0092】
第1のレーザビームおよび第2のレーザビームはシリンドリカルレンズ703を通過す
ることにより集光される。シリンドリカルレンズ703は、レンズ第1面の曲率半径が7
0mm、厚さ5mmである。これにより、シリンドリカルレンズ703の後方において第
1のレーザビームおよび第2のレーザビームの照射領域が重なるようになり、照射面にお
いて均一な熱エネルギー分布を合成できる。
【0093】
そして第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム109をシリンドリカルレンズ
105、106により照射面110に投影する。シリンドリカルレンズ105により、ビ
ーム断面の長軸方向の長さを500μmに成形する。また、照射面におけるビーム断面の
短軸方向の長さはシリンドリカルレンズ106により成形される。シリンドリカルレンズ
106の焦点距離は20mmであり、照射面におけるビーム断面の短軸方向の長さが10
μmとなるように成形される。上記光学系により照射面に線状のビームスポットを形成す
ることが可能である。
【0094】
なお、本明細書中において、「線状」とは、厳密な意味で「線」を意味しているのでは
なく、アスペクト比の大きい長方形(もしくは長楕円形)を意味する。例えば、アスペク
ト比が2以上(好ましくは10〜10000)のものを線状と呼ぶ。
【0095】
本実施例では遅延手段による屈折率を用いて光路差を設ける方法を説明した。また、本
実施例において、実施例1のように屈折率を利用せずに光路差を設ける方法と組み合わせ
て光路差を設定しても良い。
【0096】
本実施例では、極短パルスのメガヘルツレーザビームを用いることによって、レーザビ
ームの干渉の影響を低減させながらメガヘルツレーザビームを分割し、被照射体に照射す
ることができるため、メガヘルツレーザビームの照射強度を均一にすることができる。
【実施例3】
【0097】
本実施例では極短パルスのメガヘルツレーザビームの分割にビームスプリッタを用いた
レーザ照射装置の例について、図8を参照して説明する。図5(A)と同一のものについ
ては同じ符号を付し説明を省略する。図8(A)はレーザ照射装置、図8(B)はメガヘ
ルツレーザビームの分割前のビーム断面形状、図8(C)、(D)は分割時のビーム断面
形状、図8(E)は被照射面の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射したビームの断
面形状である。図8(F)は分割前のビーム断面の強度分布、図8(G)、(H)は分割
時のビーム断面の強度分布、図8(I)は分割ビームの照射によって被照射面で合成され
た熱エネルギー分布を示す。
【0098】
レーザ発振器101から出力されたレーザビーム107は非線形光学素子801により
第二高調波に変換される。非線形光学素子801を通過したレーザビームは球面レンズ2
01a及び201bより構成されるビームエキスパンダー201により長辺方向および短
辺方向ともにそれぞれ拡大される。なお、レーザビームの大きさ等によってはビームエキ
スパンダーは用いなくてもよい。
【0099】
ビームエキスパンダーにより拡大されたレーザビーム107は、第1の1/2λ波長板
806aまたは第2の1/2λ波長板806bのいずれかを通過する。第1の1/2λ波
長板806aを通過することによってレーザビーム107の半分は第1の偏光方向に偏光
され、第2の1/2λ波長板806bを通過することによってレーザビーム107の半分
は第1の偏光方向とは90°異なる第2の偏光方向に偏光される。第1の1/2λ波長板
806a及び第2の1/2λ波長板806bは、偏光ビームスプリッタ802により、第
1のレーザビーム108及び第2のレーザビーム109の断面形状を図8(C)、(D)
のように半円にし、その強度分布を図8(G)、(H)のようにガウス分布を線対称に分
けた分布にするために設ける。
【0100】
次に偏光ビームスプリッタ802によりレーザビーム107は第1のレーザビーム10
8と第2のレーザビーム109に分離される。第1のレーザビーム108は偏光ビームス
プリッタ802を透過し、ミラー104で反射される。さらに偏光ビームスプリッタ80
4に入射し、照射面110における照射位置が調整される。第1のレーザビームはその照
射領域が第2のレーザビームの照射領域と重なり、第2のレーザビームとの間で均一な熱
エネルギーが照射面で合成されるように調整される。
【0101】
一方、第2のレーザビームは偏光ビームスプリッタ802により反射され、ミラー10
3で反射される。さらに偏光ビームスプリッタ804に入射することにより、照射面11
0における照射位置が調整される。第2のレーザビームはその照射領域が第1のレーザビ
ームの照射領域と重なり、第1のレーザビームとの間で均一な熱エネルギーが照射面で合
成されるように調整される。
【0102】
ここで、ミラー103と偏光ビームスプリッタ804との間には、遅延手段803が配
置してある。ここでは遅延手段803として石英板を用いる。これにより第1のレーザビ
ーム108と第2のレーザビーム109との間には光路差が生じることになり、照射面に
おいて第1のレーザビームと第2のレーザビームとの間の干渉が防止される。光路差は石
英板の厚さを選択することでいかようにも設定できる。また、第1のレーザビームと、第
2のレーザビームとを被照射面の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射することによ
り、照射面における熱エネルギー分布を均一にすることができる。
【0103】
第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム109は、シリンドリカルレンズ10
5に入射することでビーム断面の長軸方向の長さが成形され、シリンドリカルレンズ10
6に入射することでビーム断面の短軸方向の長さが成形される。なお、偏光ビームスプリ
ッタ802で分割された直後の第1のレーザビーム108、第2のレーザビーム109は
、図8(G)、(H)に示すように、その切り口がレーザビーム107の強度分布を線対
称に分けた強度分布を保持しており、ビームが伝搬されるにつれて、切り口がだれてきて
レーザビーム107の強度分布が崩れてくる。しかしながら、偏光ビームスプリッタ80
2の位置と照射面110の位置を、ビーム断面の長軸方向に作用するシリンドリカルレン
ズ105に対して共役の位置とすることで、この問題を解消することができる。
【0104】
本実施例では遅延手段による屈折率を用いて光路差を設ける方法を説明した。また、本
実施例を、実施例1のように屈折率を利用せずに光路差を設ける方法と組み合わせて光路
差を設定しても良い。
【0105】
本実施例では、極短パルスのメガヘルツレーザビームを用いることによって、メガヘル
ツレーザビームの干渉の影響を低減させながらメガヘルツレーザビームを分割し、分割し
たビームを被照射面の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射することができるため、
被照射面におけるメガヘルツレーザビームの熱エネルギー分布を均一にすることができる

【実施例4】
【0106】
本実施例では、実施例3と異なるレーザビーム照射方法について図9を用いて説明する
。図9(A)はレーザ照射装置を示し、図9(B)、(C)は第1及び第2のレーザビー
ム断面形状、図9(D)は被照射面の共通部分に対しそれぞれ異なる期間に照射したビー
ムの断面形状を示し、図9(E)〜(F)は図9(B)〜(C)に対応する強度分布を示
し、図9(G)は分割ビームの照射によって被照射面で合成された熱エネルギー分布を示
している。
【0107】
レーザ発振器101から出力されたレーザビーム107は非線形光学素子801により
第二高調波に変換される。非線形光学素子801を通過したレーザビームは球面レンズ2
01a及び201bより構成されるビームエキスパンダー201により長辺方向および短
辺方向ともにそれぞれ拡大される。
【0108】
ビームエキスパンダーにより拡大されたレーザビーム107は、偏光ビームスプリッタ
802により第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム109に分離される。分割
された第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム109の断面形状は円状であり、
その強度分布はガウス分布を有する(図9(B)、(C)、(E)、(F))。
【0109】
第1のレーザビーム108は偏光ビームスプリッタ802を透過し、ミラー104で反
射される。さらに偏光ビームスプリッタ804に入射する。
【0110】
一方、第2のレーザビームは偏光ビームスプリッタ802により反射され、ミラー10
3で反射される。さらに偏光ビームスプリッタ804に入射する。
【0111】
具体的には、第2のレーザビーム109の偏光ビームスプリッタ802から偏光ビーム
スプリッタ804までの光路長が、第1のレーザビーム108の偏光ビームスプリッタ8
02から偏光ビームスプリッタ804までの光路長よりも、ビーム直径の0.5倍以下の
長さ分だけ長くなるようにする。このようにすると、第1のレーザビーム108、第2の
レーザビーム109を被照射面の共通部分にそれぞれ異なる期間に照射する際、均一な熱
エネルギー分布を合成することができる。偏光ビームスプリッタ802で分割した場合、
図9(E)、(F)に示すように第1のレーザビーム108、第2のレーザビーム109
の強度分布はガウス分布となる。そのため、第1及び第2のレーザビームの被照射面での
照射位置を偏光ビームスプリッタ804により調整する際、完全に重ね合わせると第1及
び第2のレーザビームがガウス分布の強度を保持するため、均一なエネルギー分布が得ら
れない。しかし、本実施例のように第1のレーザビーム108と第2のレーザビーム10
9それぞれの照射面を多少ずらして照射することで、照射面における熱エネルギー分布を
均一にすることができる。
【0112】
また、第2のレーザビーム109の偏光ビームスプリッタ802から偏光ビームスプリ
ッタ804までの光路長を、第1のレーザビーム108の偏光ビームスプリッタ802か
ら偏光ビームスプリッタ804までの光路長よりも、ビーム直径の0.5〜0.7倍の長
さ分だけ長くなるようにしても良い。ビーム直径の0.5倍以上の光路差を設けると、被
照射面で合成される熱エネルギー分布は図9(G)に示すように均一にはならない。しか
し、ビーム断面面積を広くすることができ、より効率的に被照射面を照射することができ
る。ただし、ビーム直径の0.7倍以上の光路差を設けると、ビーム断面においてエネル
ギー密度が弱く部分的に結晶化されない領域がでてきてしまうため、光路差をビーム直径
の0.5〜0.7倍の長さに設定すると良い。
【実施例5】
【0113】
本実施例では本発明を用いて半導体装置を作製する方法を説明する。
【0114】
図10を用いて半導体装置の作製方法について説明する。まず、図10(A)のように
、絶縁基板70上に下地膜71、非晶質半導体膜72を順次積層して形成する。そして非
晶質半導体膜72に本発明によるメガヘルツレーザビームを照射する(図10(B))。
メガヘルツレーザビームを均一に非晶質半導体膜に照射することで、非晶質半導体膜を均
一に結晶化することができ、大粒径を持つ結晶性半導体膜73を得ることができる。その
ため結晶性半導体膜73を用いて、チャネルのキャリア移動方向に結晶粒界がほとんど存
在しない薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)の形
成が可能となる。
【0115】
その後、図10(C)に示すように結晶性半導体膜73をエッチングし、島状の半導体
膜74〜77を形成する。次に、島状の半導体膜74〜77を覆うようにゲート絶縁膜7
8を形成する。そのゲート絶縁膜78には、例えば酸化珪素、窒化珪素または窒化酸化珪
素等を用いることができる。その際の成膜方法には、プラズマCVD法、スパッタ法など
を用いることができる。例えば、スパッタ法を用いて、膜厚30nm〜200nmの珪素
を含む絶縁膜を形成すればよい。
【0116】
次に、ゲート絶縁膜78上に導電膜を形成しエッチングすることでゲート電極を形成す
る。その後、ゲート電極をマスクとして、島状の半導体膜74〜77にn型またはp型の
導電性を付与する不純物を選択的に添加し、ソース領域、ドレイン領域、さらにはLDD
領域等を形成する。上述の工程によって、N型トランジスタ710、712と、P型トラ
ンジスタ711、713を同一基板上に形成することができる(図10(D))。続いて
、それらの保護膜として絶縁膜714を形成する。この絶縁膜714には、プラズマCV
D法またはスパッタ法を用い、膜厚100nm〜200nmの珪素を含む絶縁膜を、単層
又は積層構造として形成すれば良い。例えば、プラズマCVD法により膜厚100nmの
酸化窒化珪素膜を形成すればよい。
【0117】
次いで、絶縁膜714上に有機絶縁膜715を形成する。有機絶縁膜715としては、
SOG(Spin On Glass)法によって塗布されたポリイミド、ポリアミド、
BCB、アクリル等の有機絶縁膜を用いる。絶縁基板70上に形成された薄膜トランジス
タによる凹凸を緩和し平坦化したい場合は、有機絶縁膜715として平坦性に優れた材料
を用いることが好ましい。さらに、フォトリソグラフィ法を用いて、絶縁膜714及び有
機絶縁膜715をパターン加工して、不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。
【0118】
次に、導電膜を形成し、該導電膜をパターン加工して、配線716〜723を形成する
。その後、保護膜として絶縁膜724を形成すると、図10(D)に図示するような半導
体装置が完成する。なお、本発明のレーザアニール方法を用いた半導体装置の作製方法は
、上述した薄膜トランジスタの構成に限定されない。本実施例では、メガヘルツレーザビ
ームを分割し、それぞれ異なる期間に照射することで得られる結晶性半導体膜をTFTの
活性層として用いることを特徴とする。その結果、大粒径の結晶を得ることができ、半導
体装置の電子移動度を高くすることができる。
【0119】
また、レーザ光による結晶化の前に、金属元素を非晶質半導体膜に添加して結晶化する
工程を設けてもよい。金属元素としては、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、鉄
(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(
Pt)、銅(Cu)、金(Au)といった元素を用いることができる。金属元素を添加し
て結晶化した後に、さらにレーザ光を照射すると、金属元素による結晶化の際に形成され
た結晶が結晶核として再結晶化される。そのため、レーザ光照射のみによる結晶化工程に
比べて、より半導体膜の結晶性を高めることができ、レーザ光照射による結晶化後の半導
体膜表面の荒れが抑えられる。よって、後に形成される半導体素子、代表的にはTFTの
特性のばらつきがより抑えられ、オフ電流を抑えることができる。
【0120】
なお、金属元素を添加後、加熱処理により結晶化し、さらにレーザ光の照射により結晶
性を高めても良いし、金属元素を添加してから加熱処理をせずにレーザ照射により結晶化
しても良い。
【0121】
本実施例では、本発明のレーザ照射方法を半導体膜の結晶化に用いた例を示したが、半
導体膜にドーピングした不純物元素の活性化を行うために用いてもよい。また、本実施例
においてドライバやCPUなどの機能回路を用途とする半導体装置を作製する場合は、L
DD領域を有する薄膜トランジスタ又はLDD領域がゲート電極とオーバーラップする構
造の薄膜トランジスタを形成するのが好適である。また、半導体装置を高速化するために
は薄膜トランジスタの微細化を図ることが好ましい。本実施例により完成される半導体装
置のN型トランジスタ710、712、P型トランジスタ711、713はLDD領域を
有するLDD構造であるため、ドライバやCPUに用いることが好適である。
【実施例6】
【0122】
本実施例では実施例5で作製した半導体装置を用いてEL表示装置を作製する方法を図
17を用いて説明する。
【0123】
配線722に接するように画素電極504を形成する。画素電極504は透明導電膜を
エッチングして形成する。透明導電膜としては、酸化インジウムと酸化スズとの化合物、
酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化インジウムを用い
ることができる。
【0124】
画素電極を形成後、樹脂材料でなる隔壁505を形成する。隔壁505は1〜2μm厚
のアクリル膜又はポリイミド膜をエッチングして画素電極504の一部を露出させるよう
に形成する。なお、隔壁505の下に遮蔽膜(図示しない)となる黒色の膜を適宜形成し
てもよい。
【0125】
次にEL層506を形成する。EL層506の発光材料が有機化合物であるときは有機
EL素子、発光材料が無機化合物であるときは無機EL素子となる。
【0126】
無機EL素子は、素子構成により分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類さ
れる。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有する
ものである。薄膜型無機EL素子は、蛍光材料の薄膜からなる発光層を有している。その
発光メカニズムは、両者とも、高電界で加速された電子による母体材料又は発光中心の衝
突励起により発光が得られる。無機EL素子を形成する場合は、画素電極504及び電極
507の間に、EL層として、発光材料を分散させた絶縁層を設けるか、絶縁層で挟持さ
れた発光層を設けるとよい。発光材料としては、例えば硫化亜鉛(ZnS)、硫化ストロ
ンチウム(SrS)を用いることができる。無機EL素子のEL層はスクリーン印刷また
は蒸着等で形成することができる。
【0127】
以下に、有機EL素子を用いる場合の例を説明する。
【0128】
EL層506及び電極(MgAg電極)507を、真空蒸着法を用いて大気解放しない
で連続形成する。なお、EL層506の膜厚は100nm〜1μm、電極507の厚さは
180〜300nm(典型的には200〜250nm)とすれば良い。EL層は他に、イ
ンクジェット、スクリーン印刷法などによって成膜されても良い。
【0129】
この工程では、赤色に対応する画素、緑色に対応する画素及び青色に対応する画素に対
して順次EL層及び陰極を形成する。但し、EL層は溶液に対する耐性に乏しいためフォ
トリソグラフィ技術を用いずに各色個別に形成しなくてはならない。そこでメタルマスク
を用いて所望の画素以外を隠し、必要箇所だけ選択的にEL層及び陰極を形成するのが好
ましい。各色の少なくとも1つの発色はトリプレット化合物で行う。シングレット化合物
に比べるとトリプレット化合物は輝度が明るいため、暗く見える赤色に対応する画素をト
リプレット化合物で形成し、その他の画素をシングレット化合物で形成すると良い。
【0130】
即ち、まず赤色に対応する画素以外を全て隠すマスクをセットし、そのマスクを用いて
赤色発光のEL層及び電極を選択的に形成する。次いで、緑色に対応する画素以外を全て
隠すマスクをセットし、そのマスクを用いて緑色発光のEL層及び電極を選択的に形成す
る。次いで、同様に青色に対応する画素以外を全て隠すマスクをセットし、そのマスクを
用いて青色発光のEL層及び電極を選択的に形成する。なお、ここでは全て異なるマスク
を用いるように記載しているが、同じマスクを使いまわしても構わない。また、全画素に
EL層及び電極を形成するまで真空を破らずに処理することが好ましい。
【0131】
なお、EL層506としては公知の材料を用いることができる。公知の材料としては、
駆動電圧を考慮すると有機材料を用いるのが好ましい。例えば正孔注入層、正孔輸送層、
発光層及び電子注入層でなる4層構造をEL層とすれば良い。モリブデン酸化物及びα−
NPDを混合した膜をEL層としても良い。有機材料と無機材料とを組み合わせたハイブ
リット層をEL層としても良い。有機材料をEL層に用いる場合は、低分子材料、中分子
材料、高分子材料のそれぞれを使うことができる。また、本実施の形態ではEL素子の陰
極としてMgAg電極を用いた例を示すが、公知の他の材料であっても良い。
【0132】
電極507まで形成された時点で発光素子508が完成する。その後、発光素子508
を完全に覆うようにして保護膜509を設ける。保護膜509としては、炭素膜、窒化珪
素膜、もしくは窒化酸化珪素膜を含む絶縁膜を用いることができ、これらの絶縁膜を単層
又は積層させて用いることができる。
【0133】
さらに保護膜509を覆って封止材510を設け、カバー材511を貼り合わせる。封
止材510としては紫外線硬化樹脂であり、内部に吸湿効果を有する物質もしくは酸化防
止効果を有する物質を用いることが好ましい。また、本実施の形態においてカバー材51
1にはガラス基板、石英基板やプラスティック基板を用いることができる。図示はしない
が、封止材510とカバー材511との間に偏光板を設けても良い。偏光板を設けること
でコントラストの高い表示を提供できる。
【0134】
こうして図17に示すような駆動回路部を構成するP型トランジスタ711及びN型ト
ランジスタ710、画素部を構成するスイッチング用のN型トランジスタ712及び電流
制御用のP型トランジスタ713を有する構造のアクティブマトリクス型EL表示装置が
完成する。本形態ではゲート電極と重ならないLDD領域を有するTFT構造を説明した
が、TFTはこの構造に限定されない。LDD領域を有さなくても良いし、LDD領域領
域の一部または全部をゲート電極と重ねるように形成しても良い。
【0135】
以上の工程によりEL表示装置を作製できる。
【実施例7】
【0136】
本実施例では、薄膜集積回路または非接触型薄膜集積回路装置(無線チップ、無線IC
タグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identificat
ion)とも呼ばれる)を図5〜図9のいずれかのレーザ照射装置を用いて作製する方法
を図11に示す。
【0137】
まず、スパッタ法を用いてガラス基板(第1の基板)1700上に剥離層1701を形
成する。剥離層1701は、スパッタ法、減圧CVD法、プラズマCVD法等を用いて形
成することができる。本実施例では、膜厚50nm程度の非晶質シリコンをスパッタ法で
形成し、剥離層1701として用いる。なお剥離層1701はシリコンに限定されず、エ
ッチングにより選択的に除去できる材料(例えば、W、Moなど)で形成すれば良い。剥
離層1701の膜厚は50〜60nmとするのが望ましい。
【0138】
次いで、剥離層1701上に下地絶縁膜1702を形成する。下地絶縁膜1702は第
1の基板中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散
し、TFTなどの半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。また、下地
絶縁膜1702は、後の半導体素子を剥離する工程において、半導体素子を保護する役目
も有している。下地絶縁膜1702は単層であっても複数の絶縁膜を積層したものであっ
ても良い。よってアルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡散を抑えることがで
きる酸化珪素や、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素(SiON)、酸素を含む窒化珪素(S
iNO)などの絶縁膜を用いて形成する。
【0139】
次に、下地絶縁膜1702上に非晶質半導体膜1703を形成する。非晶質半導体膜1
703は、下地絶縁膜1702を形成した後、大気に曝さずに形成することが望ましい。
非晶質半導体膜1703の膜厚は20〜200nm(望ましくは40〜170nm、好ま
しくは50〜150nm)とする。
【0140】
そして、上記工程で作製された基板を図5〜図9で示したレーザ照射装置を用いてメガ
ヘルツレーザビームを照射し、非晶質半導体膜1703を均一に結晶化する。そして結晶
性半導体膜1704が形成される(図11(A)参照)。
【0141】
次いで、図11(B)に示すように、結晶性半導体膜1704をエッチングして、島状
の半導体層1705〜1707を形成した後、ゲート絶縁膜1708を形成する。ゲート
絶縁膜1708は、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、窒化珪素、酸化
珪素、窒素を含む酸化珪素又は酸素を含む窒化珪素を含む膜を、単層又は積層させて形成
することができる。
【0142】
なお、ゲート絶縁膜1708を形成した後、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、3
00〜450℃で1〜12時間の熱処理を行ない、島状の半導体層1705〜1707を
水素化する工程を行なっても良い。また、水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プ
ラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0143】
次に図11(C)に示すように、ゲート電極1709〜1711を形成する。ここでは
、SiとWをスパッタ法で積層するように形成した後、レジスト1712をマスクとして
エッチングを行なうことにより、ゲート電極1709〜1711を形成した。勿論、ゲー
ト電極1709〜1711の導電材料、構造、作製方法は、これに限定されるものではな
く、適宜選択することができる。例えば、n型を付与する不純物(リン、ヒ素等)がドー
ピングされたSiとNiSi(ニッケルシリサイド)との積層構造や、TaN(窒化タン
タル)とW(タングステン)の積層構造としてもよい。また、種々の導電材料を用いて単
層で形成しても良い。また、ゲート電極とアンテナとを同時に形成する場合には、それら
の機能を考慮して材料を選択すればよい。
【0144】
また、レジストマスクの代わりに、酸化珪素等のマスクを用いてもよい。この場合、エ
ッチングして酸化珪素、窒素を含む酸化珪素等のマスク(ハードマスクと呼ばれる。)を
形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ない
ため、所望の幅のゲート電極1709〜1711を形成することができる。また、レジス
ト1712を用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極1709〜1711を形
成しても良い。
【0145】
次いで、図11(D)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体層170
6をレジスト1713で覆い、ゲート電極1709、1711をマスクとして、島状の半
導体層1705、1707に、n型を付与する不純物元素(代表的にはP(リン)又はA
s(砒素))をドープする。このドーピング工程によって、ゲート絶縁膜1708を介し
てドーピングがなされ、島状の半導体層1705に、一対の低濃度不純物領域1716と
チャネル形成領域1719aが形成され、島状の半導体層1707に一対の低濃度不純物
領域1717、チャネル形成領域1719bが形成される。なお、このドーピング工程は
、pチャネル型TFTとなる島状の半導体層1706をレジスト1713で覆わずに行っ
ても良い。
【0146】
次いで、図11(E)に示すように、レジスト1713をアッシング等により除去した
後、nチャネル型TFTとなる島状の半導体層1705、1707を覆うように、レジス
ト1718を新たに形成し、ゲート電極1710をマスクとして、島状の半導体層170
6にp型を付与する不純物元素(代表的にはB(ホウ素))をドープする。このドーピン
グ工程によって、ゲート絶縁膜1708を介してドーピングがなされ、島状の半導体層1
706に一対のp型の高濃度不純物領域1720、チャネル形成領域1719cが形成さ
れる。
【0147】
次いで、レジスト1718をアッシング等により除去した後、図12(A)に示すよう
に、ゲート絶縁膜1708及びゲート電極1709〜1711を覆う絶縁膜1721を形
成する。
【0148】
その後、エッチバック法により、絶縁膜1721をエッチングし、図12(B)に示す
ように、ゲート電極1709〜1712の両側壁に接するサイドウォール1722〜17
24を形成する。エッチングガスとしてはCHFとHeの混合ガスを用いた。
【0149】
次いで、図12(C)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体層170
6を覆うように、レジスト1726を新たに形成し、ゲート電極1709、1711及び
サイドウォール1722、1724をマスクとして、n型を付与する不純物元素(代表的
にはP又はAs)をドープする。このドーピング工程によって、ゲート絶縁膜1708を
介してドーピングがなされ、島状の半導体層1705、1707に、一対のn型の高濃度
不純物領域1727、1728が形成される。
【0150】
次に、レジスト1726をアッシング等により除去した後、不純物領域の熱活性化を行
っても良い。このときに例えば、50nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜した後、550
℃、4時間、窒素雰囲気下において、加熱処理を行なってもよい。また、水素を含む窒化
珪素膜を、100nmの膜厚に形成した後、410℃、1時間、窒素雰囲気下において、
加熱処理を行なってもよい。これらの加熱処理により多結晶半導体膜の欠陥を改善するこ
とができる。これは、多結晶半導体膜中に存在するダングリングボンドを終端させるもの
であり、水素化処理工程などと呼ばれる。
【0151】
上述した一連の工程により、nチャネル型TFT1730、pチャネル型TFT173
1、nチャネル型TFT1732が形成される。上記作製工程において、エッチバック法
の条件を適宜変更し、サイドウォールのサイズを調整することで、チャネル長0.2μm
〜2μmを有する微細化TFTを形成することができる。さらに、この後、TFT173
0〜1732を保護するためのパッシベーション膜を形成しても良い。
【0152】
次いで、図12(D)に示すように、TFT1730〜1732を覆うように、第1の
層間絶縁膜1733を形成する。さらに、第1の層間絶縁膜1733上に、第2の層間絶
縁膜1734を形成する。なお、第1の層間絶縁膜1733又は第2の層間絶縁膜173
4中にフィラーを混入させておいても良い。それは、第1の層間絶縁膜1733又は第2
の層間絶縁膜1734と、後に形成される配線を構成する導電材料等との熱膨張率の差か
ら生じる応力によって、第1の層間絶縁膜1733又は第2の層間絶縁膜1734の膜剥
がれや割れが生じるのを防ぐためである。
【0153】
次いで、図12(D)に示すように、第1の層間絶縁膜1733、第2の層間絶縁膜1
734及びゲート絶縁膜1708にコンタクトホールを形成し、TFT1730〜173
2に接続する配線1735〜1739を形成する。なお、配線1735、1736はnチ
ャネル型TFT1730の高濃度不純物領域1727に、配線1736、1737はpチ
ャネル型TFT1731の高濃度不純物領域1720に、配線1738、1739はnチ
ャネル型TFT1732の高濃度不純物領域1728に、それぞれ接続されている。さら
に配線1739は、nチャネル型TFT1732のゲート電極1711にも接続されてい
る。nチャネル型TFT1732は、乱数ROMのメモリ素子として用いることができる

【0154】
次いで、図13(A)に示すように、配線1735〜1739を覆うように、第2の層
間絶縁膜1734上に第3の層間絶縁膜1741を形成する。第3の層間絶縁膜1741
は、配線1735が一部露出するように形成する。なお、第3の層間絶縁膜1741は、
第1の層間絶縁膜1733と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0155】
次に、第3の層間絶縁膜1741上にアンテナ1742を形成する。アンテナ1742
は、Ag、Au、Cu、Pd、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Al、Fe、Co、Zn、
Sn、Niなどの金属または金属化合物を含む導電材料を用いることができる。そしてア
ンテナ1742は配線1735と接続されている。なお、図13(B)では、アンテナ1
742が配線1735と直接接続されているが、本発明の無線ICタグはこの構成に限定
されない。例えば別途形成した配線を用いて、アンテナ1742と配線1735とを電気
的に接続するようにしても良い。
【0156】
アンテナ1742は印刷法、フォトリソグラフィ法、蒸着法または液滴吐出法などを用
いて形成することができる。図13(A)では、アンテナ1742が単層の導電膜で形成
されているが、複数の導電膜が積層されたアンテナ1742を形成することも可能である
。例えば、Niなどで形成した配線に、Cuを無電解めっきでコーティングして、アンテ
ナ1742を形成しても良い。なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から
吐出して所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含
まれる。また印刷法にはスクリーン印刷法、オフセット印刷法などが含まれる。印刷法、
液滴吐出法を用いることで、露光用のマスクを用いずとも、アンテナ1742を形成する
ことが可能になる。また、液滴吐出法、印刷法だと、フォトリソグラフィ法と異なり、エ
ッチングにより除去されてしまうような材料の無駄がない。また高価な露光用のマスクを
用いなくとも良いので、無線ICタグの作製に費やされるコストを抑えることができる。
【0157】
液滴吐出法または各種印刷法を用いる場合、例えば、CuをAgでコートした導電粒子
なども用いることが可能である。なお液滴吐出法を用いてアンテナ1742を形成する場
合、アンテナ1742の密着性が高まるような処理を、第3の層間絶縁膜1741の表面
に施すことが望ましい。密着性を高める方法として、具体的には、例えば触媒作用により
導電膜または絶縁膜の密着性を高める金属または金属化合物を第3の層間絶縁膜1741
の表面に付着させる方法、形成される導電膜または絶縁膜との密着性が高い有機絶縁膜、
金属、金属化合物を第3の層間絶縁膜1741の表面に付着させる方法、第3の層間絶縁
膜1741の表面に大気圧下または減圧下においてプラズマ処理を施し、表面改質を行な
う方法などが挙げられる。
【0158】
第3の層間絶縁膜1741に付着させる金属または金属化合物が導電性を有する場合、
アンテナの正常な動作が妨げられないように、そのシート抵抗を制御する。具体的には、
導電性を有する金属または金属化合物の平均の厚さを、例えば1〜10nmとなるように
制御したり、これらの金属または金属化合物を酸化により部分的に、または全体的に絶縁
化したりすれば良い。或いは、密着性を高めたい領域以外は、付着した金属または金属化
合物をエッチングにより選択的に除去しても良い。また金属または金属化合物を、予め基
板の全面に付着させるのではなく、液滴吐出法、印刷法、ゾル−ゲル法などを用いて特定
の領域にのみ選択的に付着させても良い。なお金属または金属化合物は、第3の層間絶縁
膜1741の表面において完全に連続した膜状である必要はなく、ある程度分散した状態
であっても良い。
【0159】
そして、図13(B)に示すように、アンテナ1742を形成した後、アンテナ174
2を覆うように、第3の層間絶縁膜1741上に保護層1745を形成する。保護層17
45は、後に剥離層1701をエッチングにより除去する際に、アンテナ1742を保護
することができる材料を用いる。例えば、水またはアルコール類に可溶なエポキシ系、ア
クリレート系、シリコン系の樹脂を全面に塗布することで保護層1745を形成すること
ができる。
【0160】
次いで、図13(C)に示すように、無線ICタグを個別に分離するために溝1746
を形成する。溝1746は、剥離層1701が露出する程度であれば良い。溝1746の
形成は、ダイシング、スクライビングなどを用いることができる。なお、第1の基板17
00上に形成されている無線ICタグを分離する必要がない場合、必ずしも溝1746を
形成する必要はない。
【0161】
次いで、図13(D)に示すように、剥離層1701をエッチングにより除去する。こ
こでは、エッチングガスとしてフッ化ハロゲンを用い、このガスを溝1746から導入す
る。例えばClF(三フッ化塩素)を用い、温度を350℃とし、流量を300scc
mとし、気圧を798パスカル(798Pa)とし、処理時間を3時間とした条件で行う
。また、ClFガスに窒素を混ぜたガスを用いても良い。ClF等のフッ化ハロゲン
を用いることで、剥離層1701が選択的にエッチングされ、第1の基板1700をTF
T1730〜1732から剥離することができる。なおフッ化ハロゲンは、気体であって
も液体であってもどちらでも良い。
【0162】
またエッチング剤を用いることなく、熱処理により、第1の基板1700を剥離しても
よい。例えば、剥離層1701としてタングステン(W)膜を用い、熱処理を行って、タ
ングステン膜上面に酸化タングステン(WO)膜を形成する。そうすると、酸化タング
ステン膜が形成されることで、剥離層1701と下地絶縁膜1702の間がもろい状態と
なるため、ガラス基板を容易に剥離することができる。
【0163】
次に図14(A)に示すように、剥離されたTFT1730〜1732及びアンテナ1
742を、接着剤1750を用いて第2の基板1751に貼り合わせる。接着剤1750
は、第2の基板1751と下地絶縁膜1702とを貼り合わせることができる材料を用い
る。接着剤1750は、例えば反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤
等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
【0164】
なお、第2の基板1751として、フレキシブルな紙またはプラスチックなどの有機材
料を用いることができる。
【0165】
次いで、図14(B)に示すように、保護層1745を除去した後、アンテナ1742
を覆うように接着剤1752を第3の層間絶縁膜1741上に塗布し、カバー材1753
を貼り合わせる。カバー材1753は第2の基板1751と同様に、フレキシブルな紙ま
たはプラスチックなどの有機材料を用いることができる。接着剤1752の厚さは、例え
ば10〜200μmとすれば良い。
【0166】
また接着剤1752は、カバー材1753と第3の層間絶縁膜1741及びアンテナ1
742とを貼り合わせることができる材料を用いる。接着剤1752は、例えば反応硬化
型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤など
の各種硬化型接着剤を用いることができる。
【0167】
上述した各工程を経て、無線ICタグが完成する。上記作製方法によって、トータルの
膜厚が0.3μm以上3μm以下、代表的には2μm程度の飛躍的に薄い集積回路を第2
の基板1751とカバー材1753との間に形成することができる。
【0168】
なお、集積回路の厚さは、半導体素子自体の厚さのみならず、接着剤1750と接着剤
1752との間に形成された各種絶縁膜及び層間絶縁膜の厚さを含めるものとする。また
、無線ICタグが有する集積回路の占める平面面積を、5mm四方(25mm)以下、
より望ましくは0.3mm四方(0.09mm)〜4mm四方(16mm)程度とす
ることができる。
【0169】
なお、本実施の形態では、耐熱性の高い第1の基板1700と集積回路の間に剥離層を
設け、エッチングにより剥離層を除去することで基板と集積回路とを剥離する方法につい
て示したが、本発明の無線ICタグの作製方法は、この構成に限定されない。例えば、耐
熱性の高い基板と集積回路の間に金属酸化膜を設け、この金属酸化膜を結晶化により脆弱
化して集積回路を剥離しても良い。或いは、耐熱性の高い基板と集積回路の間に、水素を
含む非晶質半導体膜を用いた剥離層を設け、レーザビームの照射によりこの剥離層を除去
することで基板と集積回路とを剥離しても良い。あるいは、集積回路が形成された耐熱性
の高い基板を機械的に削除または溶液やガスによるエッチングで除去することで集積回路
を基板から切り離しても良い。
【0170】
なお、本実施の形態では、アンテナを集積回路と同じ基板上に形成している例について
説明したが、本発明はこの構成に限定されない。別の基板上に形成したアンテナと集積回
路とを、後に貼り合わせることで、電気的に接続するようにしても良い。
【0171】
なお、一般的にRFID(無線認証、Radio Frequency Identi
fication)で用いられている電波の周波数は、13.56MHz、433MHz
、860〜960MHz、2.45GHzが多く、これらの周波数の電波を検波できるよ
うに無線ICタグを形成することが、汎用性を高める上で非常に重要である。
【0172】
本実施の形態の無線ICタグでは、半導体基板を用いて形成されたRFIDタグよりも
電波が遮蔽されにくく、電波の遮蔽により信号が減衰するのを防ぐことができるというメ
リットを有している。よって、半導体基板を用いずに済むので、無線ICタグのコストを
大幅に低くすることができる。
【0173】
なお、本実施の形態では、集積回路を剥離して、可撓性を有する基板に貼り合わせる例
について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えばガラス基板のように、集
積回路の作製工程における熱処理に耐えうるような、耐熱温度を有している基板を用いる
場合、必ずしも集積回路を剥離する必要はない。
【実施例8】
【0174】
本実施例では本発明により作製した半導体装置を用いた具体例を説明する。
【0175】
図15(A)は表示装置であり、筐体2201、支持台2202、表示部2203、ス
ピーカー部2204、ビデオ入力端子2205などを含む。表示部2203は薄膜トラン
ジスタで画素を構成するものであり、実施例6で説明したEL表示装置を用いても良い。
表示部2203を構成する薄膜トランジスタを本発明を用いて作製することにより、欠陥
が少なく明るい表示を実現できる。また、表示部2203はメモリ、駆動回路部等を有し
ていてもよく、本発明の半導体装置をメモリ、駆動回路部等に適用してもよい。なお表示
部として、液晶の電気光学効果を利用した液晶表示装置、エレクトロルミネセンス等の発
光材料を用いた表示装置、電子源素子を用いた表示装置、電場の印加により反射率が変化
するコントラスト媒体(電子インクとも呼ばれる)を用いた表示装置など、薄膜トランジ
スタと各種表示媒体を組み合わせた様々なものが含まれる。利用形態として、コンピュー
タ用、テレビジョン用、電子書籍等の情報表示機器用、広告表示用若しくは案内表示用な
ど全ての情報表示用機器が含まれる。
【0176】
図15(B)はコンピュータであり、筐体2211、表示部2212、キーボード22
13、外部接続ポート2214、ポインティングマウス2215などを含む。表示部22
12やコンピュータに付随するCPU、メモリ、駆動回路部などに薄膜トランジスタを有
する。本発明を用いて作製された半導体装置を表示部2212やコンピュータに付随する
CPU、メモリ、駆動回路部などに用いることで、性能が向上し、駆動能力を高くするこ
とができる。
【0177】
また、図15(C)は携帯電話機であり、携帯端末の1つの代表例である。この携帯電
話機は筐体2221、表示部2222、操作キー2223などを含む。表示部2222や
携帯電話機に付随するCPU、メモリなどの機能回路部に薄膜トランジスタを有する。本
発明を用いて作製された半導体装置を、表示部2222や携帯電話機に付随するCPU、
メモリなどの機能回路部に用いることで、性能が向上し、駆動能力を高くすることができ
る。本発明を用いて作製された半導体装置は、上記の携帯電話を初めとして、PDA(P
ersonal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカ
メラ、小型ゲーム機などの電子機器に用いることができる。
【0178】
また、図15(D)、(E)はデジタルカメラである。なお、図15(E)は、図15
(D)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体2231、表示部2232、
レンズ2233、操作キー2234、シャッター2235などを有する。表示部2232
や表示部2232を制御する駆動回路部などに薄膜トランジスタを有する。本発明により
作製された薄膜トランジスタを、表示部2232や表示部2232を制御する駆動回路部
、及び他の回路などに用いることで、性能が向上し、駆動能力を高くすることができる。
【0179】
図15(F)はデジタルビデオカメラである。このデジタルビデオカメラは、本体22
41、表示部2242、筐体2243、外部接続ポート2244、リモコン受信部224
5、受像部2246、バッテリー2247、音声入力部2248、操作キー2249、接
眼部2250などを有する。表示部2242や表示部2242を制御する駆動回路部など
に薄膜トランジスタを有する。本発明を用いて作製された薄膜トランジスタを、表示部2
242や表示部2242を制御する駆動回路部、及び他の回路などに用いることで、性能
が向上し、駆動能力を高くすることができる。
【0180】
また、本発明を用いて作製した薄膜トランジスタを薄膜集積回路、または非接触型薄膜
集積回路装置(無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency
Identification)とも呼ばれる)として用いることもできる。他の実施の
形態で示した作製方法を用いることにより作製された薄膜集積回路および非接触型薄膜集
積回路は、タグやメモリに用いることができる。
【0181】
図16(A)は、パスポート2301に無線ICタグ2302を貼り付けている状態を
示している。また、パスポート2301に無線ICタグ2302を埋め込んでもよい。同
様にして、運転免許証、クレジットカード、紙幣、硬貨、証券、商品券、チケット、トラ
ベラーズチェック(T/C)、健康保険証、住民票、戸籍謄本などに無線ICタグを貼り
付けたり埋め込むことができる。この場合、本物であることを示す情報のみを無線ICタ
グに入力しておき、不正に情報を読み取ったり書き込んだりできないようにアクセス権を
設定する。このようにタグとして利用することによって、偽造されたものと区別すること
が可能になる。
【0182】
このほかに、無線ICタグをメモリとして用いることも可能である。図16(B)は、
無線ICタグ2311を野菜の包装に貼り付けるラベルに埋め込んだ例を示している。ま
た、包装そのものに無線ICタグを貼り付けたり埋め込んだりしても構わない。無線IC
タグ2311には、生産地、生産者、製造年月日、加工方法などの生産段階のプロセスや
、商品の流通プロセス、価格、数量、用途、形状、重量、賞味期限、各種認証情報などを
記録することが可能になる。無線ICタグ2311からの情報は、無線式のリーダ231
2のアンテナ部2313で受信して読み取り、リーダ2312の表示部2314に表示す
ることによって、卸売業者、小売業者、消費者が把握することが容易になる。また、生産
者、取引業者、消費者のそれぞれに対してアクセス権を設定することによって、アクセス
権を有しない場合は読み込み、書き込み、書き換え、消去ができない仕組みになっている

【0183】
また、無線ICタグは以下のように用いることができる。会計の際に無線ICタグに会
計を済ませたことを記入し、出口にチェック手段を設け、会計済みであることを無線IC
タグに書き込まれているかをチェックする。会計を済ませていないで店を出ようとすると
、警報が鳴る。この方法によって、会計のし忘れや万引きを予防することができる。
【0184】
さらに、顧客のプライバシー保護を考慮すると、以下に記す方法にすることも可能であ
る。レジで会計をする段階で、(1)無線ICタグに入力されているデータを暗証番号な
どでロックする、(2)無線ICタグに入力されているデータそのものを暗号化する、(
3)無線ICタグに入力されているデータを消去する、(4)無線ICタグに入力されて
いるデータを破壊する、のいずれかを行う。そして、出口にチェック手段を設け、(1)
〜(4)のいずれかの処理が行われたか、または無線ICタグのデータに何も処理が行わ
れていない状態であるかをチェックすることによって、会計の有無をチェックする。この
ようにすると、店内では会計の有無を確認することが可能であり、店外では所有者の意志
に反して無線ICタグの情報を読み取られることを防止することができる。
【0185】
なお、(4)の無線ICタグに入力されているデータを破壊する方法をいくつか挙げる
ことができる。例えば、(a)無線ICタグが有する電子データの少なくとも一部に「0
(オフ)」若しくは「1(オン)」、または「0」と「1」の両方を書き込んでデータの
みを破壊する方法や、(b)無線ICタグに電流を過剰に流し、無線ICタグが有する半
導体素子の配線の一部を物理的に破壊する方法などを用いることができる。
【0186】
以上に挙げた無線タグは、従来用いているバーコードより製造コストが高いため、コス
ト低減を図る必要がある。本発明を用いることによって、半導体膜の均一なレーザアニー
ルが可能であるため、品質が良好でばらつきのない半導体装置を効率良く作製することが
でき、コストの低減に有効である。さらに、どの無線タグも品質が高く、性能のばらつき
がない信頼性の高い無線タグを製作することができる。
【0187】
以上のように、本発明により作製された半導体装置の適用範囲は極めて広く、本発明に
より作製された半導体装置をあらゆる分野の電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0188】
11 ビーム
12 分割ビーム
13 分割ビーム
401 第1のレーザビーム
402 第2のレーザビーム
403 被照射体
404 基板
405 パルス先端
406 パルス終端
407 パルス先端
408 パルス終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のレーザビームを発振するレーザ発振器と、
前記発振されたレーザビームを複数に分割する手段と、
前記複数に分割されたレーザビームから選択される任意の2つの分割されたレーザビームにおいて、一方の分割されたレーザビームに対して他方の分割されたレーザビームに光路差を設ける手段と、
前記レーザビームの光路上であって前記光路差を設ける手段と照射面との間に、前記複数に分割されたレーザビームを成形する手段と、を有し、
前記光路差を設ける手段は、前記複数に分割されたレーザビーム同士に、前記パルス幅に相当する長さ以上、且つコヒーレント長未満の光路差を設けることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項2】
パルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のレーザビームを発振するレーザ発振器と、
前記発振されたレーザビームを第1のレーザビームと第2のレーザビームに分割する手段と、
前記第2のレーザビームを前記第1のレーザビームに対して遅延させる手段と、
前記第1及び前記第2のレーザビームの光路上であって前記遅延させる手段と照射面との間に、前記第1のレーザビームと前記第2のレーザビームとを成形する手段と、を有し、
前記遅延させる手段は、前記第1のレーザビームと前記第2のレーザビームとに、前記パルス幅に相当する長さ以上、且つコヒーレント長未満の光路差を設けることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項3】
パルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のレーザビームを発振するレーザ発振器と、
前記発振されたレーザビームを複数に分割する手段と、
前記複数に分割されたレーザビームから選択される任意の2つの分割されたレーザビームにおいて、一方の分割されたレーザビームに対して他方の分割されたレーザビームに光路差を設けるための前記他方の分割されたレーザビームを通過させる媒体と、
前記レーザビームの光路上であって前記媒体と照射面との間に、前記複数に分割されたレーザビームを成形する手段と、を有し、
前記媒体は、前記複数に分割されたレーザビーム同士に、前記パルス幅に相当する長さ以上、且つコヒーレント長未満の光路差を設けることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項4】
パルス幅100fs以上1ns以下、周波数10MHz以上のレーザビームを発振するレーザ発振器と、
前記発振されたレーザビームを第1のレーザビームと第2のレーザビームに分割する手段と、
前記第2のレーザビームを前記第1のレーザビームに対して遅延させるための前記第2のレーザビームを通過させる媒体と、
前記第1及び前記第2のレーザビームの光路上であって前記媒体と照射面との間に、前記第1のレーザビームと前記第2のレーザビームとを成形する手段と、を有し、
前記媒体は、前記第1のレーザビームと前記第2のレーザビームとに、前記パルス幅に相当する長さ以上、且つコヒーレント長未満の光路差を設けることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、前記媒体は石英、ガラス、水、またはフッ化物の結晶であることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記複数に分割されたレーザビームは照射面において線状ビームを形成することを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項5のいずれか一項において、
前記第1及び前記第2のレーザビームは照射面において線状ビームを形成することを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2において、
前記分割する手段によって分割された前記複数の分割ビームは、同じタイミングで同一領域に照射した場合、干渉が起こるものであることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項9】
請求項3乃至5及び7のいずれか一項において、
前記分割する手段によって分割された前記第1及び前記第2のレーザビームは、同じタイミングで同一領域に照射した場合、干渉が起こるものであることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記光路差は、前記パルス幅に相当する長さ以上、且つパルス発振間隔に相当する長さ未満であることを特徴とするレーザ照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−182477(P2012−182477A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104458(P2012−104458)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2006−124772(P2006−124772)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】