説明

乗員検知装置

【課題】乗員とチャイルドシートとの存在を精度良く判定する。
【解決手段】乗員検知装置10は、単眼距離画像センサ11から出力される距離画像に基づき、乗員の頭部領域を検知する頭部領域検知部52およびシートの領域を検知するシート領域検知部53と、シートの領域を距離画像から除去して得られるシート領域除去画像に基づき、頭部領域を有する乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する体積判定部54と、乗員領域の体積が所定体積範囲内であると判定された場合に、頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像とを比較し、乗員の肩部の有無を判定し、乗員の肩部が存在すると判定された場合には乗員領域には大人が存在すると判定し、乗員の肩部が存在しないと判定された場合には乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する乗員判定部56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗員検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば撮像装置の撮像により得られた画像から乗員の左肩と右肩の端部エッジを抽出し、これらの距離から乗員の体格の指標として肩幅を算出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−198929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る装置によれば、例えば撮像装置の撮像方向に応じた隠蔽などによって、少なくとも一方の肩部の検出が困難な場合には、肩幅を算出することができず、乗員の体格を判定することができないという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る装置によれば、チャイルドシートが存在する場合には、乗員が存在しないと判断されることから、チャイルドシートに着座した子供の存在を検知することができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、乗員とチャイルドシートとの存在を精度良く判定することが可能な乗員検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る乗員検知装置は、車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段(例えば、実施の形態での受光部22)と、前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段(例えば、実施の形態での処理部23)と、前記距離画像に基づき、前記車室内の乗員の頭部領域を検知する頭部領域検知手段(例えば、実施の形態での頭部領域検知部52)および前記車室内のシートの領域を検知するシート領域検知手段(例えば、実施の形態でのシート領域検知部53)と、前記シートの領域を前記距離画像から除去して得られるシート領域除去画像に基づき、前記頭部領域を有する乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する体積判定手段(例えば、実施の形態での体積判定部54)と、前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積範囲内であると判定された場合に、車両上下方向に直交する平面に平行な断面画像として前記頭部領域の断面画像および前記乗員領域の断面画像を前記距離画像に基づき生成する断面画像生成手段(例えば、実施の形態でのステップS13)と、前記頭部領域の断面画像と前記乗員領域の断面画像とを比較し、該比較結果に基づいて前記乗員の肩部の有無を判定する肩部判定手段(例えば、実施の形態でのステップS11〜S15、S17)と、前記肩部判定手段により前記乗員の肩部が存在すると判定された場合には前記乗員領域には大人が存在すると判定し、前記肩部判定手段により前記乗員の肩部が存在しないと判定された場合には前記乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する乗員判定手段(例えば、実施の形態での乗員判定部56)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る乗員検知装置は、車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段(例えば、実施の形態での受光部22)と、前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段(例えば、実施の形態での処理部23)と、前記距離画像に基づき、前記車室内の乗員の頭部領域を検知する頭部領域検知手段(例えば、実施の形態での頭部領域検知部52)および前記車室内のシートの領域を検知するシート領域検知手段(例えば、実施の形態でのシート領域検知部53)と、前記シートの領域を前記距離画像から除去して得られるシート領域除去画像に基づき、前記頭部領域を有する乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する体積判定手段(例えば、実施の形態での体積判定部54)と、前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積範囲内であると判定された場合に、チャイルドシートのサイドクッションが存在するか否かを判定するサイドクッション判定手段(例えば、実施の形態でのステップS21〜S29)と、前記サイドクッション判定手段により前記サイドクッションが存在すると判定された場合には前記乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定し、前記サイドクッション判定手段により前記サイドクッションが存在しないと判定された場合には前記乗員領域には大人が存在すると判定する乗員判定手段(例えば、実施の形態での乗員判定部56)とを備える。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る乗員検知装置では、前記サイドクッション判定手段は、前記シート領域除去画像において凸形状の領域を抽出する凸形状領域抽出手段(例えば、実施の形態でのステップS21)と、前記凸形状の領域の長さが所定長さ範囲内かつ前記凸形状の領域が車両上下方向に直交する平面に対してなす角度が所定角度範囲内であるか否かを判定する形状判定手段(例えば、実施の形態でのステップS23)と、前記凸形状の領域と、車両左右方向で前記凸形状の領域に隣接する領域との間に、所定の段差が存在するか否かを判定する段差有無判定手段(例えば、実施の形態でのステップS24)と、前記形状判定手段により前記長さが前記所定長さ範囲内かつ前記角度が前記所定角度範囲内であると判定された前記凸形状の領域と、前記段差有無判定手段により前記所定の段差が存在すると判定された前記凸形状の領域とのうちから、最も長い形状の前記凸形状の領域を選択する選択手段(例えば、実施の形態でのステップS26)と、前記選択手段により選択された前記凸形状の領域の車両上下方向の最大高さが、前記頭部領域の車両上下方向の高さ範囲内に含まれるか否かを判定する高さ判定手段(例えば、実施の形態でのステップS27)とを備え、前記高さ判定手段により前記最大高さが前記高さ範囲内に含まれていると判定された場合に、前記サイドクッションが存在すると判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る乗員検知装置によれば、乗員(つまり大人や子供)の頭部領域の断面画像と、乗員領域の断面画像(例えば、乗員領域の重心位置を含む断面での画像など)とを比較することにより、体積が同程度である大人とチャイルドシートとを精度良く判別することができる。
すなわち、大人が存在する場合には、頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との比較から肩部が検出され、大人の代わりにチャイルドシートが存在する場合には、頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との比較から肩部は検出されない。
これにより、乗員の頭部領域が検知された場合に、大人が存在するのか、あるいは、チャイルドシートに着座した子供が存在するのかを、的確に判定することができる。
【0010】
さらに、本発明の第2態様に係る乗員検知装置によれば、車室内において撮像が容易であってチャイルドシートに特有の形状を有するサイドクッションの有無を判定することにより、乗員の頭部領域が検知された場合に、大人が存在するのか、あるいは、チャイルドシートに着座した子供が存在するのかを、的確に判定することができる。
【0011】
さらに、本発明の第3態様に係る乗員検知装置によれば、サイドクッションの特徴として、凸形状(例えば、筒型の形状)の領域の有無と、凸形状の領域が所定形状を有するか否かと、子供とサイドクッションとの間の段差の有無と、子供の頭部領域に対する相対的な高さの関係とを判定することにより、サイドクッションの有無およびチャイルドシートの有無を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシート領域除去画像における頭部領域の重心位置C1と乗員領域の重心位置C2との例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る頭部領域の重心位置C1を含む頭部領域断面D1と乗員領域の重心位置C2を含む乗員領域断面D2との例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシート領域除去画像を各頭部領域断面D1および乗員領域断面D2によって破断してなる頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るシート領域除去画像を各頭部領域断面D1および乗員領域断面D2によって破断してなる頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る乗員検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す乗員判定の処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の変形例に係るシート領域除去画像および該シート領域除去画像の断面図の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態の変形例に係るモデルパターンおよび該モデルパターンの断面図の例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例に係るシート領域除去画像のモデルパターンに対する類似度と、類似度が閾値以上の凸形状検出領域Gとの例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態の変形例に係るシート領域除去画像においてB方向センター領域以外の領域を除去するための境界面SSと凸形状検出領域Gとの例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態の変形例に係るTH画像(つまり、単眼距離画像センサの撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態の変形例に係るシート座標系においてT方向に対して傾斜角度θGsで傾斜すると共にB方向に平行な所定の基準面Dと、凸形状検出領域GにB方向で隣接する所定幅の近傍領域Fと、基準面Dから突出する凸形状検出領域Gの高さhおよび近傍領域Fの高さhkとの例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態の変形例に係るTH画像(つまり、単眼距離画像センサの撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)において2つの凸形状検出領域G1,G2の例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態の変形例に係るHB画像(つまり、単眼距離画像センサの撮像領域を車両前後方向から見たフロントビュー画像)において凸形状検出領域Gと頭部領域との例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態の変形例に係る乗員検知装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る乗員検知装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施の形態による乗員検知装置10は、例えば図1、図2に示すように、単眼距離画像センサ11と、制御装置12とを備えて構成され、例えば車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御するエアバッグシステム15の一部を構成している。
【0015】
単眼距離画像センサ11は単眼の撮像装置であって、例えば、車両13のルーフ前部の中央部(例えば、左右のサンバイザー間の位置など)に配置され、少なくとも車室内のシート16(例えば、助手席)およびシート16に着座した乗員やシート16に設置されたチャイルドシートなどを撮像対象として含み、これらの撮像対象を斜め上方の前方側から撮像するように設定されている。
【0016】
単眼距離画像センサ11は、例えば、発光部21と、受光部22と、処理部23とを備えて構成されている。
【0017】
発光部21は、例えば、赤外線領域の光を発光するLEDなどの発光体31と、発光体31の発光を制御する駆動回路32と、発光体31の発光による光を撮像対象に向けて拡散させる散乱板33とを備えて構成されている。
【0018】
駆動回路32は、例えば、受光部22から出力される発光制御の指令信号と、処理部23から出力される光量制御の指令信号とに応じて制御される。
【0019】
受光部22から出力される発光制御の指令信号は、発光部21の動作と受光部22の動作との同期をとって、発光部21から出力された発光パルスと、この発光パルスが撮像対象で反射されて受光部22に入力されて成る受光パルスとの位相差(時間差)を検知可能にするために、発光パルスの発光タイミングを指示する。
処理部23から出力される光量制御の指令信号は、発光部21から出力される発光パルスの発光量を指示する。
【0020】
受光部22は、例えば、発光部21から撮像対象に向けて照射された発光パルスが撮像対象で反射されてなる受光パルスを受けるレンズ36と、フィルター37と、レンズ36およびフィルター37を透過した受光パルスを検出するCMOSセンサなどの受光素子38とを備えて構成されている。
【0021】
受光部22は、処理部23から出力される制御信号に応じて発光部21に発光制御の指令信号を出力すると共に、受光素子38による受光パルスの検出結果として画像データを出力する。
この画像データは、受光素子38において受光パルスが検出された位置(つまり、撮像対象での発光パルスの反射点の位置)に対応する二次元配列の画素から構成され、各画素は、受光素子38で検出された受光パルスの光量(つまり、パルス数)の情報と、発光パルスと受光パルスとの位相差(時間差)の情報とを有している。
【0022】
処理部23は、発光部21に光量制御の指令信号を出力すると共に、受光部22に各種動作を指示する制御信号を出力しており、例えば、距離画像生成部41と、輝度画像生成部42とを備えて構成されている。
【0023】
距離画像生成部41は、受光部22から出力された画像データに基づき、各画素毎に、発光パルスと受光パルスとの位相差(時間差)の情報と発光パルスおよび受光パルスの速度(つまり光の速度)とから、3次元空間での単眼距離画像センサ11から撮像対象の反射点までの距離の情報を生成する。そして、二次元配列の各画素毎に単眼距離画像センサ11から撮像対象までの距離を示す距離画像を生成して、この距離画像を制御装置12に出力する。
【0024】
輝度画像生成部42は、受光部22から出力される画像データに基づき、二次元配列の各画素毎に受光素子38により検出された受光パルスの光量(つまり、パルス数)を示す輝度画像を生成して、この輝度画像を制御装置12に出力する。
【0025】
制御装置12は、例えば、画像処理部51と、頭部領域検知部52と、シート領域検知部53と、体積判定部54と、ブースターシート判定部55と、乗員判定部56と、駆動制御部57とを備えて構成されている。
【0026】
画像処理部51は、先ず、単眼距離画像センサ11から出力された距離画像に基づき、二次元配列の各画素毎の距離の情報に対応する3次元空間での撮像対象の反射点の位置をカメラ座標系で記述し、このカメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)を、二次元配列の各画素毎に対応させて示す3つのX画像およびY画像およびZ画像(XYZ画像)を生成する。
【0027】
なお、カメラ座標系は、例えば単眼距離画像センサ11の受光素子38の撮像面に直交する受光軸をZ軸とするXYZ座標系である。
そして、これらのXYZ画像に対して、輝度画像を参照して平滑化およびノイズ除去などの画像処理を行なう。
【0028】
さらに、画像処理部51は、カメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)を、シート座標系つまり車両前後方向をT方向かつ車両左右方向をB方向かつ車両上下方向をH方向とするTBH座標系での各軸成分(T座標、B座標、H座標)に変換して、予め記憶している車室内の所定の構造物(例えば、ピラー、ドア、ダッシュボード、センターコンソールなど)に関連するデータを除去する。
そして、このデータ除去後のシート座標系での各軸成分(T座標、B座標、H座標)をカメラ座標系での各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)に変換して、この変換後の各軸成分(X座標、Y座標、Z座標)による3つのX画像およびY画像およびZ画像(XYZ画像)を出力する。
【0029】
頭部領域検知部52は、例えば、XYZ画像あるいは距離画像に対して、適宜の特徴量抽出や、テンプレートマッチングや、人体モデルとの比較などの各種の処理を行なうことによって、乗員の頭部が存在する頭部領域を検知する。
【0030】
例えば、頭部領域検知部52は、所定の大きさの球形状の領域を頭部領域として距離画像から抽出する処理では、先ず、距離画像を構成する複数の画素(v,u)毎に3次元空間での法線ベクトルN(v,u)の逆方向に固定長の逆ベクトルを算出し、該逆ベクトルにより指定される3次元空間での位置座標を内部座標とする。
【0031】
そして、頭部領域検知部52は、3次元空間を構成する複数の単位空間、例えば所定長(50mmなど)を一辺の長さとする複数の立方体(ボクセル空間V)毎に該単位空間内に含まれる内部座標の総数に係るスコア値を算出する。
そして、複数の画素(v,u)毎に対応する内部座標が含まれる単位空間のスコア値を、所定の大きさの球形状の指標として、複数の画素(v,u)毎の画素値に対応させて示すスコア画像を生成する。
【0032】
そして、頭部領域検知部52は、3次元空間での複数の内部座標の分布に対してエッジを抽出し、該エッジに応じて複数に分割された画像領域により構成される内部エッジ画像を生成する。
そして、複数の画像領域のうち内部座標の平均値の差が所定差以下の画像領域同士を単一の結合領域に結合した後に、スコア値の平均値が閾平均値以下の画像領域と、体積が上限体積値以上または下限体積値以下の画像領域と、所定方向の幅寸法(例えば、B方向幅など)が所定閾値以上の画像領域とを、頭部領域の候補から除外する。
そして、これらの処理を実行した後に、頭部領域の候補として残っている複数の画像領域のうち、スコア値の平均値が最も高い画像領域を、乗員の頭部が存在する頭部領域であると判定する。
【0033】
シート領域検知部53は、例えば、XYZ画像あるいは距離画像に対して、適宜の特徴量抽出や、テンプレートマッチングや、シートモデルとの比較などの各種の処理を行なうことによって、シート16が存在する領域を検知する。
例えば、シート領域検知部53は、法線ベクトルN(v,u)が車両左右方向(B方向)に傾く角度が所定閾角度以下である領域を正面領域として距離画像から抽出する。
【0034】
そして、シート領域検知部53は、頭部領域検知部52によって複数の画像領域に分割された内部エッジ画像を参照しつつ、正面領域が抽出された画像領域毎に対して、正面領域のシート座標系でのB軸の最大値および最小値から、車両左右方向(B方向)の位置(例えば、中心位置など)および長さ(B方向幅)を算出する。
そして、B方向の位置が所定位置範囲内かつB方向の長さ(B方向幅)が所定長さ範囲内である正面領域を、シート16のヘッドレスト16aが存在するヘッドレスト領域であると検知し、該ヘッドレスト領域に基づきヘッドレスト16aの位置を算出する。
【0035】
そして、シート領域検知部53は、シート座標系でのTH画像(つまり、単眼距離画像センサ11の撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)などにおいて、ヘッドレスト16aの位置を中心とする2つの異なる円弧間においてシート16の腰部の領域を探索する。
そして、腰部の領域の厚さから、予め記憶している所定シート厚さを車両後方側から差し引いて、あるいは、予め記憶している所定人体厚さを車両前方側から差し引いて腰部の位置を算出し、ヘッドレスト16aの位置および腰部の位置に基づきシート16の前面形状を算出する。
そして、算出した前面形状よりも車両後方側の領域をシート16の領域であると検知し、このシート16の領域をXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)から除去する。
【0036】
体積判定部54は、シート領域検知部53によってXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)からシート16の領域が除去されて得られるシート領域除去画像に基づき、例えばシート領域除去画像を構成する複数の単位空間(例えば、ボクセル空間V)のうち少なくとも一点以上のデータ点を含む単位空間の総数などに基づき、頭部領域検知部52により検知された頭部領域を含む領域(乗員領域)の体積を推定する。
そして、推定した乗員領域の体積が所定体積範囲内であるか否かを判定し、この判定結果を出力する。
なお、乗員領域の体積に対する所定体積範囲は、例えば成人女性の体積あるいはチャイルドシートなどの補助シート及び補助シートに着座した子供の体積が含まれる体積範囲に設定されている。
【0037】
ブースターシート判定部55は、体積判定部54によって乗員領域の体積が所定体積範囲内であると判定された場合に、シート領域除去画像に基づいて、乗員領域を上体および下肢に区分し、乗員領域の全体積に対する上体の体積の比率が所定比率以下であるか否かを判定する。
【0038】
例えば、ブースターシート判定部55は、シート領域除去画像に基づき、シート座標系でのTH画像(つまり、単眼距離画像センサ11の撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)を生成し、このTH画像に対して2値化および細線化の処理を行ない、上体と下肢との境界位置である腰位置を検知する。
そして、乗員領域の全体積に対する上体の体積の比率が所定比率以下である場合には、乗員領域がブースターシート及びブースターシートに着座した子供であると判定する。
【0039】
乗員判定部56は、ブースターシート判定部55において乗員領域の全体積に対する上体の体積の比率が所定比率よりも大きいと判定された場合に、シート領域除去画像に基づき、乗員の肩部が検知されるか否かを判定する。
そして、この判定結果において乗員の肩部が検知された場合には、乗員領域には大人が存在すると判定し、一方、乗員の肩部が検知されない場合には、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する。
【0040】
例えば、乗員判定部56は、先ず、図3に示すように、シート領域除去画像に基づいて、頭部領域検知部52によって検知された頭部領域の重心位置C1と、乗員領域の重心位置C2とを算出する。
そして、例えば図4(A),(B)に示すように、車両上下方向に直交する平面に平行な断面つまりシート座標系でのT軸およびB軸によるTB面として、頭部領域の重心位置C1を含む頭部領域断面D1と、乗員領域の重心位置C2を含む乗員領域断面D2とを設定する。
【0041】
そして、乗員判定部56は、例えば図5(A),(B),図6(A),(B)に示すように、シート領域除去画像を各頭部領域断面D1および乗員領域断面D2によって破断してなる頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像とを生成する。
そして、頭部領域の断面画像における車両左右方向(例えば、B方向のセンターコンソール側)の端点つまりB座標が最小となるデータ点と、乗員領域の断面画像における車両左右方向(例えば、B方向のセンターコンソール側)の端点つまりB座標が最小となるデータ点との間のB方向距離BWを算出する。
【0042】
そして、例えば図5(A),(B)に示すように、B方向距離BWが所定の閾値未満である場合には、乗員の頭部領域周辺に存在するチャイルドシートのサイドクッションなどに起因して乗員の肩部が検知されないと判断して、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する。
一方、例えば図6(A),(B)に示すように、乗員の肩部が検知されたと判断して、乗員領域には大人が存在すると判定する。
【0043】
駆動制御部57は、乗員判定部56による判定結果と、例えば車両13の急減速を検出する加速度センサなどの衝突センサ70から出力される検出結果の信号とに基づき、車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御する。
【0044】
本実施の形態による乗員検知装置10は上記構成を備えており、次に、この乗員検知装置10の動作について説明する。
【0045】
先ず、例えば図7に示すステップS01においては、単眼距離画像センサ11から出力された距離画像に対する前処理として、カメラ座標系でのXYZ画像を生成し、これらのXYZ画像に対して輝度画像を参照して平滑化およびノイズ除去などの画像処理を行なう。
そして、画像処理後のXYZ画像を、一時的にシート座標系の画像に変換して車室内の所定の構造物(例えば、ピラー、ドア、ダッシュボード、センターコンソールなど)に関連するデータを除去し、この除去後の画像を、再びカメラ座標系でのXYZ画像に変換する。
【0046】
次に、ステップS02においては、距離画像を構成する複数の画素(v,u)毎に3次元空間での法線ベクトルN(v,u)の逆方向に固定長の逆ベクトルにより指定される内部座標を算出する。
そして、3次元空間を構成する複数の単位空間(ボクセル空間V)毎に該単位空間内に含まれる内部座標の総数に係るスコア値を算出し、スコア値が所定の大きさの球形状の指標となることに応じて、乗員の頭部領域を抽出する。
【0047】
次に、ステップS03においては、法線ベクトルN(v,u)が車両左右方向(B方向)に傾く角度が所定閾角度以下である領域を正面領域として、B方向の位置が所定位置範囲内かつB方向の長さ(B方向幅)が所定長さ範囲内である正面領域をシート16のヘッドレスト16aが存在するヘッドレスト領域であると検知する。
そして、シート16はシートバック16bの角度が変化した場合であっても、ヘッドレスト16aの位置と腰部の位置との相対的な位置関係は不変であることに応じて、ヘッドレスト16aの位置から腰部の位置を算出し、ヘッドレスト16aの位置および腰部の位置に基づきシート16の前面形状を算出する。
そして、算出した前面形状よりも車両後方側の領域をシート16の領域であると検知し、このシート16の領域をXYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)から除去する。
【0048】
次に、ステップS04においては、XYZ画像(あるいはXYZ画像に対応する距離画像)からシート16の領域が除去されて得られるシート領域除去画像に基づき、頭部領域検知部52により検知された頭部領域を含む領域(乗員領域)の体積を推定する。
そして、推定した乗員領域の体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する。
【0049】
次に、ステップS05においては、乗員領域の体積が所定体積範囲内であると判定された場合に、シート領域除去画像に基づいて、乗員領域を上体および下肢に区分し、乗員領域の全体積に対する上体の体積の比率が所定比率以下であるか否かを判定する。
【0050】
次に、ステップS06においては、ブースターシート判定部55において乗員領域の全体積に対する上体の体積の比率が所定比率よりも大きいと判定された場合に、シート領域除去画像に基づき、乗員の肩部が検知されるか否かを判定する。
そして、この判定結果において乗員の肩部が検知された場合には、乗員領域には大人が存在すると判定し、一方、乗員の肩部が検知されない場合には、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する。
【0051】
次に、ステップS07においては、乗員判定の処理による判定結果と、例えば車両13の急減速を検出する加速度センサなどの衝突センサ70から出力される検出結果の信号とに基づき、車両13に搭載されたエアバッグ(例えば、フロントエアバッグ)14の展開を制御し、エンドに進む。
【0052】
以下に、上述したステップS06での乗員判定の処理について説明する。
先ず、例えば図8に示すステップS11においては、シート領域除去画像に基づいて、頭部領域検知部52によって検知された頭部領域の重心位置C1を算出する。
次に、ステップS12においては、シート領域除去画像に基づいて、乗員領域の重心位置C2を算出する。
【0053】
次に、ステップS13においては、車両上下方向に直交する平面に平行な断面として、頭部領域の重心位置C1を含む頭部領域断面D1と、乗員領域の重心位置C2を含む乗員領域断面D2とを設定し、シート領域除去画像を各頭部領域断面D1および乗員領域断面D2によって破断してなる頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像とを生成する。
【0054】
次に、ステップS14においては、頭部領域の断面画像における車両左右方向(B方向)の端点つまりB軸成分が最小となるデータ点と、乗員領域の断面画像における車両左右方向(B方向)の端点つまりB軸成分が最小となるデータ点との間のB方向距離BWを算出し、このB方向距離BWが所定の閾値以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS17に進む。
【0055】
そして、ステップS15においては、乗員の肩部が検知されたと判断して、ステップS16に進み、このステップS16においては、乗員領域には大人が存在すると判定し、リターンに進む。
【0056】
また、ステップS17においては、乗員の肩部が検知されないと判断して、ステップS18に進み、このステップS18においては、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定し、リターンに進む。
【0057】
上述したように、本実施の形態による乗員検知装置10によれば、乗員(つまり大人や子供)の頭部領域の断面画像と、乗員領域の断面画像とを比較することにより、体積が同程度である大人とチャイルドシートとを精度良く判別することができる。
すなわち、大人が存在する場合には、頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との比較から乗員の肩部が検出され、大人の代わりにチャイルドシートが存在する場合には、頭部領域の断面画像と乗員領域の断面画像との比較から乗員の肩部は検出されない。
これにより、乗員の頭部領域が検知された場合に、大人が存在するのか、あるいは、チャイルドシートに着座した子供が存在するのかを、的確に判定することができる。
【0058】
しかも、B方向のセンターコンソール側のみで肩部の有無を判定するだけでよく、左右の肩部の一方が単眼距離画像センサ11に対して隠蔽されている場合であっても、大人とチャイルドシートとを精度良く判別することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態において、乗員判定部56は乗員の肩部が検出されるか否かに応じて大人とチャイルドシートとを判別するとしたが、これに限定されず、例えば図9に示す上述した実施の形態の変形例のように、サイドクッションの有無に応じて大人とチャイルドシートとを判別してもよい。
【0060】
この変形例において、乗員判定部56は、先ず、例えば図9に示すようなシート領域除去画像に対して、例えば図10に示すような所定のモデルパターンを用いた畳み込み積分の演算などによりパターンマッチングの処理を行ない、単眼距離画像センサ11に向かい突出する凸型形状の領域を抽出する。
図10に示すモデルパターンは、例えば所定サイズの円錐形状であり、底面から頂点に向かうことに伴い、単眼距離画像センサ11に対する距離が短くなる(単眼距離画像センサ11に近づく)ように設定されている。
【0061】
そして、乗員判定部56は、例えば図11(A),(B)に示すように、モデルパターンに対する類似度に関して所定の閾値を用いた閾値処理を行ない、類似度が閾値以上の領域のみを抽出して、凸形状検出領域Gとして設定する。
【0062】
次に、乗員判定部56は、シート座標系においてB方向のセンターコンソール(図示略)側の領域(B方向センター領域)にチャイルドシートの左右のサイドクッションのうちの一方(単眼距離画像センサ11側のサイドクッション)が含まれるとして、このB方向センター領域以外の領域を除去するための境界面SSを設定する。
この境界面SSは、例えばシート座標系においてB方向に直交する平面(つまり、T軸およびH軸によるTH平面)などであって、例えば図12(A),(B)に示すように、凸形状検出領域GのうちからB方向センター領域以外の領域が境界面SSによって除去される。
【0063】
次に、乗員判定部56は、凸形状検出領域Gが所定形状範囲であるか否かを判定し、この所定形状範囲から逸脱する凸形状検出領域Gを除去する。
この所定形状範囲は、チャイルドシートのサイドクッションの形状が一般的に含まれる形状範囲に設定されている。
【0064】
例えば図13に示すように、乗員判定部56は、TH画像(つまり、単眼距離画像センサ11の撮像領域を車両左右方向から見たサイドビュー画像)において、凸形状検出領域GのT方向での幅XTとH方向での幅YHとに基づき、下記数式(1),(2)を用いて、凸形状検出領域Gの長さLとT方向に対する傾斜角度θGとを算出する。
【0065】
【数1】

【0066】
【数2】

【0067】
そして、乗員判定部56は、凸形状検出領域Gの長さLが所定長さ範囲(例えば、20cm<L<100cmなど)、かつ、傾斜角度θGが所定角度範囲(例えば、20°<θG<70°など)であるか否かを判定し、この判定結果が「NO」となる凸形状検出領域Gを除去する。
【0068】
さらに、乗員判定部56は、例えば図9に示すようなシート領域除去画像に基づき、乗員領域のB方向に、例えばチャイルドシートのサイドクッションと乗員(子供)とに起因する所定段差が存在するか否かを判定する。
【0069】
先ず、乗員判定部56は、例えば図14(A)に示すように、シート座標系においてT方向に対して傾斜角度θGsで傾斜すると共にB方向に平行な所定の基準面Dを設定する。
この傾斜角度θGsは、例えば下記数式(3)に示すように、シート座標系においてH方向から見た乗員領域の面積Stと、T方向から見た乗員領域の面積Sfとの比率に応じて設定される。
【0070】
【数3】

【0071】
そして、乗員判定部56は、例えば図14(B)に示すように、シート領域除去画像の乗員領域において、凸形状検出領域GにB方向で隣接する所定幅(例えば、5cmなど)の近傍領域Fを設定する。
なお、所定の基準面Dは、少なくとも凸形状検出領域Gおよび近傍領域Fよりも車両後方側に配置され、この基準面Dから車両前方側に凸形状検出領域Gおよび近傍領域Fが突出するように設定されている。
【0072】
そして、乗員判定部56は、例えば図14(C)に示すように、B方向に直交すると共に基準面Dに含まれる軸線DLの軸線方向に所定間隔(例えば、2cmなど)をおいた位置L1,L2,…毎に、基準面Dに直交する平面内において基準面Dから突出する凸形状検出領域Gの高さhおよび近傍領域Fの高さhkを算出する。
そして、各位置L1,L2,…毎に、凸形状検出領域Gの高さhが近傍領域Fの高さhkよりも高いか否かを判定し、この判定結果が「YES」となる位置数が所定数以上の場合には、所定段差が存在すると判定する。一方、この判定結果が「YES」となる位置数が所定数未満の場合には、所定段差が存在しないと判定する。
【0073】
そして、乗員判定部56は、例えば所定形状範囲の形状を有すると判定された凸形状検出領域Gが複数存在する場合、あるいは、所定段差が存在すると判定された凸形状検出領域Gが複数存在する場合には、複数の凸形状検出領域Gのうちから最も長い長さを有する凸形状検出領域Gをサイドクッションの候補として選択する。
【0074】
例えば図15に示すように、2つの凸形状検出領域G1,G2が存在し、凸形状検出領域G1の長さL1が凸形状検出領域G2の長さL2よりも長い場合には、凸形状検出領域G1がサイドクッションの候補として選択される。
【0075】
そして、乗員判定部56は、凸形状検出領域Gが頭部領域検知部52により検知された頭部領域に対して所定位置範囲内に存在するか否かを判定し、所定位置範囲内に存在する場合には、凸形状検出領域Gがサイドクッションであると判定し、所定位置範囲内に存在しない場合には、凸形状検出領域Gがサイドクッションではない(つまり、サイドクッションを検知できない)と判定する。
【0076】
例えば図16に示すように、乗員判定部56は、頭部領域検知部52により検知された頭部領域HAのH座標範囲(つまり、H座標の最小値HD_MINと最大値HD_MAXとの間の範囲)内に凸形状検出領域GのH座標の最大値SD_MAXが含まれるか否かを判定する。
そして、頭部領域HAのH座標範囲内に凸形状検出領域GのH座標の最大値SD_MAXが含まれる場合には、凸形状検出領域Gがサイドクッションであると判定し、一方、頭部領域HAのH座標範囲内に凸形状検出領域GのH座標の最大値SD_MAXが含まれない場合には、凸形状検出領域Gがサイドクッションではない(つまり、サイドクッションを検知できない)と判定する。
【0077】
そして、乗員判定部56は、サイドクッションが検知された場合には、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定し、一方、サイドクッションが検知されない場合には、乗員領域には大人が存在すると判定する。
【0078】
以下に、この変形例での乗員判定の処理について説明する。
先ず、例えば図17に示すステップS21においては、シート領域除去画像に対して所定のモデルパターンを用いた畳み込み積分の演算などによりパターンマッチングの処理を行ない、単眼距離画像センサ11に向かい突出する凸型形状の領域を抽出する。
そして、モデルパターンに対する類似度に関して所定の閾値を用いた閾値処理を行ない、類似度が閾値以上の領域のみを抽出して、凸形状検出領域Gとして設定する。
【0079】
次に、ステップS22においては、凸形状検出領域GのうちからB方向センター領域以外の領域を除去する。
次に、ステップS23においては、所定形状範囲、つまり長さLが所定長さ範囲(例えば、20cm<L<100cmなど)、かつ、T方向に対する傾斜角度θGが所定角度範囲(例えば、20°<θG<70°など)の凸形状検出領域Gが存在するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、所定形状範囲から逸脱する凸形状検出領域Gを除去して、後述するステップS26に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS24に進む。
【0080】
次に、ステップS24においては、シート領域除去画像に基づき、乗員領域のB方向にチャイルドシートのサイドクッションに起因する所定段差が存在するか否かを判定する。
このステップS24では、B方向に直交すると共に基準面Dに含まれる軸線DLの軸線方向に所定間隔(例えば、2cmなど)をおいた位置L1,L2,…毎に、基準面Dから突出する凸形状検出領域Gの高さhが近傍領域Fの高さhkよりも高いか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」となる位置数が所定数以上の場合には、所定段差が存在すると判定する。一方、この判定結果が「YES」となる位置数が所定数未満の場合には、所定段差が存在しないと判定する。
そして、ステップS24での判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、乗員領域には大人が存在すると判定して、リターンに進む。
一方、ステップS24での判定結果が「YES」の場合には、ステップS26に進む。
【0081】
そして、ステップS26においては、所定形状範囲の形状を有すると判定された凸形状検出領域Gが複数存在する場合、あるいは、所定段差が存在すると判定された凸形状検出領域Gが複数存在する場合には、複数の凸形状検出領域Gのうちから最も長い長さを有する凸形状検出領域Gをサイドクッションの候補として選択する。
【0082】
次に、ステップS27においては、頭部領域HAのH座標範囲(つまり、H座標の最小値HD_MINと最大値HD_MAXとの間の範囲)内に凸形状検出領域GのH座標の最大値SD_MAXが含まれるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS28に進み、このステップS28においては、凸形状検出領域Gがサイドクッションではない(つまり、サイドクッションを検知できない)と判定して、上述したステップS25に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS29に進み、このステップS29においては、凸形状検出領域Gがサイドクッションであると判定する。
【0083】
次に、ステップS30においては、乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定して、リターンに進む。
【0084】
この変形例によれば、車室内において撮像が容易であってチャイルドシートに特有の形状を有するサイドクッションの有無を判定することにより、乗員の頭部領域が検知された場合に、大人が存在するのか、あるいは、チャイルドシートに着座した子供が存在するのかを、的確に判定することができる。
【0085】
さらに、サイドクッションの特徴として、凸型形状(例えば、筒型などの形状)の領域(凸形状検出領域G)の有無と、凸形状検出領域Gが所定形状を有するか否かと、子供とサイドクッションとの間の所定段差の有無と、子供の頭部領域に対する凸形状検出領域Gの相対的な高さの関係とを判定することにより、サイドクッションの有無およびチャイルドシートの有無を容易かつ精度良く判定することができる。
【0086】
しかも、B方向のセンターコンソール側のみでサイドクッションの有無を判定するだけでよく、左右のサイドクッションの一方が単眼距離画像センサ11に対して隠蔽されている場合であっても、大人とチャイルドシートとを精度良く判別することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 乗員検知装置
11 単眼距離画像センサ
12 制御装置
22 受光部(撮像手段)
23 処理部(距離画像生成手段)
51 画像処理部
52 頭部領域検知部(頭部領域検知手段)
53 シート領域検知部(シート領域検知手段)
54 体積判定部(体積判定手段)
55 ブースターシート判定部
56 乗員判定部(乗員判定手段)
57 駆動制御部
ステップS11〜S15、S17 肩部判定手段
ステップS13 断面画像生成手段
ステップS21〜S29 サイドクッション判定手段
ステップS21 凸形状領域抽出手段
ステップS23 形状判定手段
ステップS24 段差有無判定手段
ステップS26 選択手段
ステップS27 高さ判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段と、
前記距離画像に基づき、前記車室内の乗員の頭部領域を検知する頭部領域検知手段および前記車室内のシートの領域を検知するシート領域検知手段と、
前記シートの領域を前記距離画像から除去して得られるシート領域除去画像に基づき、前記頭部領域を有する乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する体積判定手段と、
前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積範囲内であると判定された場合に、車両上下方向に直交する平面に平行な断面画像として前記頭部領域の断面画像および前記乗員領域の断面画像を前記距離画像に基づき生成する断面画像生成手段と、
前記頭部領域の断面画像と前記乗員領域の断面画像とを比較し、該比較結果に基づいて前記乗員の肩部の有無を判定する肩部判定手段と、
前記肩部判定手段により前記乗員の肩部が存在すると判定された場合には前記乗員領域には大人が存在すると判定し、前記肩部判定手段により前記乗員の肩部が存在しないと判定された場合には前記乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定する乗員判定手段と
を備えることを特徴とする乗員検知装置。
【請求項2】
車室内の撮像領域を撮像して撮像結果を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された撮像結果に基づき、3次元空間での前記撮像領域の距離の情報を有する距離画像を生成する距離画像生成手段と、
前記距離画像に基づき、前記車室内の乗員の頭部領域を検知する頭部領域検知手段および前記車室内のシートの領域を検知するシート領域検知手段と、
前記シートの領域を前記距離画像から除去して得られるシート領域除去画像に基づき、前記頭部領域を有する乗員領域の体積を推定し、該体積が所定体積範囲内であるか否かを判定する体積判定手段と、
前記体積判定手段により前記乗員領域の体積が前記所定体積範囲内であると判定された場合に、チャイルドシートのサイドクッションが存在するか否かを判定するサイドクッション判定手段と、
前記サイドクッション判定手段により前記サイドクッションが存在すると判定された場合には前記乗員領域にはチャイルドシートおよび該チャイルドシートに着座した子供が存在すると判定し、前記サイドクッション判定手段により前記サイドクッションが存在しないと判定された場合には前記乗員領域には大人が存在すると判定する乗員判定手段とを備えることを特徴とする乗員検知装置。
【請求項3】
前記サイドクッション判定手段は、
前記シート領域除去画像において凸形状の領域を抽出する凸形状領域抽出手段と、
前記凸形状の領域の長さが所定長さ範囲内かつ前記凸形状の領域が車両上下方向に直交する平面に対してなす角度が所定角度範囲内であるか否かを判定する形状判定手段と、
前記凸形状の領域と、車両左右方向で前記凸形状の領域に隣接する領域との間に、所定の段差が存在するか否かを判定する段差有無判定手段と、
前記形状判定手段により前記長さが前記所定長さ範囲内かつ前記角度が前記所定角度範囲内であると判定された前記凸形状の領域と、前記段差有無判定手段により前記所定の段差が存在すると判定された前記凸形状の領域とのうちから、最も長い形状の前記凸形状の領域を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記凸形状の領域の車両上下方向の最大高さが、前記頭部領域の車両上下方向の高さ範囲内に含まれるか否かを判定する高さ判定手段とを備え、
前記高さ判定手段により前記最大高さが前記高さ範囲内に含まれていると判定された場合に、前記サイドクッションが存在すると判定することを特徴とする請求項2に記載の乗員検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−127811(P2012−127811A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279651(P2010−279651)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】