説明

光半導体用熱硬化性組成物、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材及び光半導体素子

【課題】透明性、耐熱性、耐光性、及び、ハウジング材への密着性に優れ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる光半導体用熱硬化性組成物を提供する。
【解決手段】分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤と、下記一般式で表されるフェノール化合物とを含有する光半導体用熱硬化性組成物。


は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、Rは任意の置換基、Rは水素又は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた透明性を有し、耐熱性、耐光性、及び、ハウジング材への密着性に優れ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる光半導体用熱硬化性組成物に関する。更に、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材、及び、これらを用いてなる光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の光半導体素子の発光素子は、直接大気と触れると大気中の水分や浮遊するゴミ等により急速にその発光特性を低下させるため、通常、封止剤で封止された構造となっている。このような発光素子を封止する封止剤を構成する樹脂としては、接着力が高く力学的な耐久性に優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が用いられていた。
【0003】
また、近年、LEDは、自動車用ヘッドライトや照明等の高輝度が要求される用途に用いられるようになってきており、そのため、発光素子を封止する封止剤には、点灯時の発熱量の増大に耐え得る高い耐熱性とともに、高輝度化に伴う光劣化を防ぐ高い耐光性が要求されるようになってきている。
しかしながら、エポキシ系樹脂からなる従来の封止剤は、密着性が高い、透湿性が低い等の利点を有するものの、短波長の光に対する耐光性が低く、充分な耐熱性及び耐光性を有するとは言い難い。また、自動車用ヘッドライトや照明等の高輝度が要求される用途に用いた場合、光劣化により着色してしまったり、(原因は不明であるが)輝度が低下してしまったりするという問題があった。
【0004】
例えば、エポキシ樹脂の耐熱性を上げるために化合物の添加が検討されているが(例えば、特許文献1参照)、近年のLED等の光半導体素子の高輝度化に対して充分な耐熱性を満たすものではなかった。
【0005】
一方、エポキシ樹脂に代えて、より耐熱性及び耐光性に優れるシリコーン樹脂をLEDの発光素子を封止する封止剤に用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、シリコーン樹脂は、一般に軟質で表面タック性を有しているため、発光素子表面に異物を付着させやすく、封止時に発光面を損傷することがあった。これに対して、架橋密度を高めたシリコーン樹脂は、機械的強度に劣り、また、発光素子を封入するハウジング材等との密着性が不充分となるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−73452号公報
【特許文献2】特開2002−314142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた透明性を有し、耐熱性、耐光性、及び、ハウジング材への密着性に優れ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる光半導体用熱硬化性組成物を提供することを目的とする。更に、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材、及び、これらを用いてなる光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤と、下記一般式(A)で表されるフェノール化合物とを含有する光半導体用熱硬化性組成物である。
【0008】
【化1】

【0009】
式(A)中、Rは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意の置換基を表し、Rは水素又は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、熱硬化剤と、特定の骨格構造をフェノール化合物とを含有する熱硬化性組成物は、優れた透明性を有し、かつ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、上記一般式(A)で表されるフェノール化合物を含有する。このフェノール化合物は、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の酸化防止剤として機能するものである。本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、上記一般式(A)で表されるフェノール化合物を含有することで、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる。
【0012】
上記一般式(A)においてR、Rで表される炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、tert−ブチル基又はtert−ペンチル基が好適である。
【0013】
上記一般式(A)においてRは、任意の置換基を表す。Rで表される任意の置換基としては特に限定されないが、例えば、直接結合している元素が3級炭素又は4級炭素であることが好ましく、4級炭素であることがより好ましい。4級炭素と結合していることによって本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐熱性がより向上する。
【0014】
上記一般式(A)で表される上記フェノール化合物は、第6位に置換基を有さないものである。第6位に置換基を有さないことにより、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐熱性がより一層向上する。これは、上記第6位に置換基を有さない置換フェノール誘導体は、OH基に対して一方のオルト位のみにアルキル基を有する構造であり、OH基周辺の立体障害を取り除くことができるため、発生する黄変原因物質を安定化、又は、分解させる機能が高まるからであると考えられる。
【0015】
なお、本明細書において上記置換フェノール化合物におけるアルキル基等の置換基の位置番号は、OH基に結合した炭素を第1位として時計回り、又は、反時計回りに第2、第3、第4、第5、第6と番号を振った場合の番号を意味する。従って、IUPACの命名法とは必ずしも一致しない。
【0016】
上記一般式(A)で表されるフェノール化合物としては特に限定されず、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。なかでも、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートが好適である。なかでも、下記式(A−1)で表されるビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステルは、耐熱性がより向上することから特に好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
上記一般式(A)で表されるフェノール化合物は、市販品を用いることもできる。市販されているフェノール化合物としては特に限定されず、例えば、アデカスタブAO−30、AO−40(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer BBM−S、Sumilizer WX−R、Sumilizer WX−RA、Sumilizer WX−RC(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O3(上記式(A−1)で表される化合物)、HOSTANOX OSP 1(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ W−300、アンテージ クリスタル(以上、いずれも川口化学工業社製)、SEENOX BCS(シプロ化成社製)等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(A)で表されるフェノール化合物の配合量としては特に限定されないが、後述するシリコーン樹脂(後述する2官能シリコーン樹脂を含有する場合、後述するシリコーン樹脂と2官能シリコーン樹脂との合計)100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は2.0重量部である。フェノール化合物の配合量が0.01重量部未満であると、上記フェノール化合物を添加する効果が得られないことがあり、2.0重量部を超えると、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。フェノール化合物の配合量のより好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.0重量部である。
【0020】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂を含有する。
本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、上記シリコーン樹脂としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂であれば特に限定されないが、例えば、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有するものが好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
上記一般式(1)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
上記シリコーン樹脂が、平均組成式が上記一般式(1)で表される樹脂成分を含有することで、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、光半導体素子の封止剤として用いた場合に、封止する発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子を封止した際に、該光半導体素子のハウジング材等への密着性に優れたものとなる。
なお、上記平均組成式が上記式(1)で表されるとは、本発明の光半導体用熱硬化性組成物が上記式(1)で表される樹脂成分のみを含有する場合だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物である場合に、含有する樹脂成分の組成の平均をとると上記式(1)で表される場合も意味する。
【0024】
上記一般式(1)中、R〜Rの少なくとも1個は、環状エーテル含有基を表す。
上記環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基等が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
なお本明細書において環状エーテル含有基とは、環状エーテル基を少なくとも基の一部に含んでいればよく、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基等の他の骨格と環状エーテル基を含有していてもよい基を意味する。
【0025】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0026】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0027】
上記シリコーン樹脂は、上記環状エーテル含有基の含有量の好ましい下限が0.1モル%、好ましい上限が50モル%である。環状エーテル含有基の含有量が0.1モル%未満であると、上記シリコーン樹脂と後述する熱硬化剤との反応性が著しく低下し、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化性が不充分となることがある。環状エーテル含有基の含有量が50モル%を超えると、上記シリコーン樹脂と熱硬化剤との反応に関与しない環状エーテル含有基が増え、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐熱性が低下することがある。環状エーテル含有基の含有量のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は40モル%であり、更に好ましい下限は5モル%、更に好ましい上限は30モル%である。
なお、本明細書において、上記環状エーテル含有基の含有量とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記環状エーテル含有基の量を意味する。
【0028】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、上記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表す。
【0029】
上記直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0031】
【化4】

【0032】
上記一般式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0033】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0034】
【化5】

【0035】
上記一般式(1−3)及び(1−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0036】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(SiO4/2)で表される構造単位(以下、四官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−5)、(1−6)又は(1−7)で表される構造、すなわち、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の3つ若しくは2つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0037】
【化6】

【0038】
上記一般式(1−5)、(1−6)及び(1−7)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0039】
上記一般式(1−2)〜(1−7)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
また、上記一般式(1)中、aは、a/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.2の関係を満たす数値である。a/(a+b+c+d)が0.2を超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐熱性が悪くなることがある。
【0041】
また、上記一般式(1)中、bは、b/(a+b+c+d)の下限が0.3、上限が1.0の関係を満たす数値である。b/(a+b+c+d)が0.3未満であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化物が硬くなりすぎ、封止剤やダイボンディング材、アンダーフィル等半導体周辺部材として用いた場合に、部材と被着体の間でクラック等が発生することがある。
【0042】
また、上記一般式(1)中、cは、c/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.5の関係を満たす数値である。c/(a+b+c+d)が0.5を超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。
【0043】
更に、上記一般式(1)中、dは、d/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.3の関係を満たす数値である。d/(a+b+c+d)が0.3を超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。
【0044】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(1)の(RSiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−30ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO3/2、(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−70ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(SiO4/2、(1−5)、(1−6)及び(1−7)の四官能構造単位に相当する各ピークは−90〜−120ppm付近に現れる。
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって一般式(1)の比率を測定することが可能である。
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMR測定で上記一般式(1)の官能構造単位の見分けがつかない場合等のときは、29Si−NMR測定結果だけではなく、H−NMRや19F−NMR等で測定した結果を必要に応じて用いることにより構造単位の比率を見分けることができる。
【0045】
上記シリコーン樹脂は、RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有することが好ましい。RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有することにより、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は更に優れた耐熱性を有するものとなり、使用条件下での膜減り等の問題を防止することができる。また、SiO4/2の構造単位を適宜有することにより、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の粘度を所望の範囲に調整することが容易となり、好ましい。なお、上記シリコーン樹脂が、RSiO2/2の構造単位のみを含有する場合、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、耐熱性が不充分であったり、また、3次元的な架橋が不充分になりやすく、硬化後に膜減りを起こすことがある。
【0046】
上記R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。このようなR〜Rとしては、例えば、上述したR〜Rと同様のものが挙げられる。更に、上記RSiO2/2の構造単位、RSiO3/2の構造単位、及び、SiO4/2の構造単位には、上記一般式(1−2)〜(1−7)で表される二官能構造単位、三官能構造単位及び四官能構造単位と同様の構造が含まれる。
【0047】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、RSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有するとは、未硬化の状態で1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位と、RSiO3/2の構造単位及び/又はSiO4/2の構造単位とを有する樹脂を用いてもよく、RSiO2/2のみの構造単位を有する樹脂と、RSiO3/2の構造単位を有する樹脂及び/又はSiO4/2の構造単位を有する樹脂の混合物を用いてもよい。なかでも、樹脂の1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位及びRSiO3/2の構造単位を有する樹脂が好ましい。
【0048】
上記1分子の骨格中にRSiO2/2の構造単位とRSiO3/2の構造単位とを有する樹脂としては、上記一般式(1)中、a=d=0で表される樹脂を用いることができる。
この場合において、b/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.5、好ましい上限は0.95であり、より好ましい下限は0.6、より好ましい上限は0.9である(以下、条件(1)ともいう)。またc/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.5、より好ましい下限は0.1、より好ましい上限は0.4である(以下、条件(2)ともいう)。
【0049】
上記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される樹脂成分を含有することが好ましい。なお、上記シリコーン樹脂が、平均組成式が下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される樹脂成分を含有するとは、本発明の光半導体用熱硬化性組成物がシリコーン樹脂として下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される樹脂成分のみを含有する場合だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物である場合に、含有する樹脂成分の組成の平均をとると下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される場合も意味する。
【0050】
【化7】

【0051】
一般式(2)中、e及びfは、e/(e+f)=0.5〜0.95、f/(e+f)=0.05〜0.5を満たし、R10〜R12は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR10〜R12は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
【化8】

【0053】
一般式(3)中、g、h及びiは、(g+h)/(g+h+i)=0.5〜0.95、i/(g+h+i)=0.05〜0.5を満たし、R13〜R17は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR13〜R17は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R1314SiO2/2)と(R1516SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【0054】
【化9】

【0055】
一般式(4)中、j、k及びlは、j/(j+k+l)=0.5〜0.95、(k+l)/(j+k+l)=0.05〜0.5を満たし、R18〜R21は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR18〜R21は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R20SiO3/2)と(R21SiO3/2)とは構造が異なるものである。
【0056】
上記一般式(2)〜(4)中、環状エーテル含有基は、グリシジル基又はエポキシシクロヘキシル基のいずれか一方を含むことが好ましい。
【0057】
上記シリコーン樹脂は、上記一般式(2)〜(4)で表される構造単位中、三官能構造単位中に環状エーテル含有基を有することが好ましい。即ち、一般式(2)においてはR12、一般式(3)においてはR17、一般式(4)においてはR20及び/又はR21が環状エーテル含有基であることが好ましい。
環状エーテル含有基が三官能構造体中に含まれると、環状エーテル含有基がシリコーン樹脂のポリシロキサン骨格の外側に出やすくなり、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化物が充分な3次元的架橋構造をとって耐熱性が充分なものとなり、また、硬化物に膜減りが生じることを好適に防止できる。
【0058】
上記シリコーン樹脂は、アルコキシ基を0.5〜10モル%含有することが好ましい。このようなアルコキシ基を含有することによって耐熱性や耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂中にアルコキシ基を含有することにより硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止できているためと考えられる。
【0059】
また、このように硬化速度が飛躍的に向上することにより、硬化促進剤を添加する場合には比較的少ない添加量でも充分な硬化性が得られるようになる。
【0060】
アルコキシ基が0.5モル%未満であると、硬化速度が充分に得られず耐熱性が悪くなることがあり、10モル%を超えると、シリコーン樹脂や組成物の貯蔵安定性が悪くなったり、耐熱性が悪くなったりする。アルコキシ基のより好ましい下限は1モル%であり、より好ましい上限は5モル%である。
【0061】
なお、本明細書において、上記アルコキシ基の含有量は、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0062】
上記シリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シラノール基はポリマーの貯蔵安定性を著しく悪化させるほか、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性も著しく悪くなるために好ましくない。このようなシラノール基は、真空化で加熱することで減少させることが可能であり、シラノール基の量は赤外分光法等を用いて測定可能である。
【0063】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、好ましい上限は5万である。シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が1000未満であると、熱硬化時に揮発成分が多くなり、封止剤として使用したときに膜減りが多くなり好ましくない。シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が5万を超えると、粘度調節が困難になるため好ましくない。シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は15000である。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、Waters社製の測定装置(カラムが昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度が40℃、流速が1mL/min、溶媒がテトラヒドロフラン、標準物質がポリスチレン)を用いて測定した値を意味する。
【0064】
上記シリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、例えば、(1)SiH基を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル基を有するビニル化合物のハイドロシリレーション反応により置換基を導入する方法、(2)シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0065】
上記方法(1)において、ハイドロシリレーション反応とは、必要に応じて触媒の存在下、SiH基とビニル基とを反応させる方法である。
【0066】
上記SiH基を有するシリコーン樹脂としては、分子内にSiH基を含有し、上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物を反応させた後、上述した一般式(1)で表される構造、好ましくは、上記一般式(2)〜(4)のいずれかで表される構造となるようなものを使用すればよい。
【0067】
上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド等エポキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0068】
上記ハイドロシリレーション反応時に必要に応じて使用する触媒としては、例えば、周期表第8族の金属の単体、該金属固体をアルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に担持させたもの、該金属の塩、錯体等が挙げられる。上記周期表第8族の金属としては、具体的には、例えば、白金、ロジウム、ルテニウムが好適であり、特に白金が好ましい。
上記白金を用いたハイドロシリレーション化反応触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンとの錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金等が挙げられる。
【0069】
上記方法(2)において、シロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(5)、(6)、(7)及び(8)のシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0070】
【化10】

【0071】
上記一般式(5)〜(8)中、R22〜R27は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0072】
上記一般式(5)〜(8)中、R22〜R27が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0073】
また、上記一般式(5)〜(8)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0074】
上記一般式(5)で表される化合物としては、具体的には例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
上記一般式(6)で表される化合物としては、具体的には例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
上記一般式(7)で表される化合物としては、具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0077】
上記一般式(8)で表される化合物としては、具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0078】
上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(9)、(10)、(11)で表される環状エーテル含有基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0079】
【化11】

【0080】
上記一般式(9)、(10)、(11)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33は環状エーテル基であり、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0081】
一般式(9)、(10)、(11)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33で表される環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基等が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0082】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0083】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0084】
上記一般式(9)、(10)中、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0085】
また、上記一般式(9)、(10)、(11)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0086】
上記一般式(9)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(ジメチル)メチルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(ジメチル)メトキシシラン等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(10)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
上記一般式(11)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記シロキサン化合物と環状エーテル基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させてシリコーン樹脂を合成する方法が挙げられる。
【0090】
上記水の配合量としては、上記シロキサン化合物と上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整される。
【0091】
上記酸性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の有機酸、これらの酸無水物又は誘導体等が挙げられる。
【0092】
上記塩基性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、ナトリウムシラノレート化合物、アルカリ金属のシラノール化合物等が挙げられる。
上記アルカリ金属の水酸化物としては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属のアルコキシドとしては特に限定されず、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、セシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては特に限定されず、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物、セシウムシラノレート化合物等が挙げられる。
上記塩基性触媒としては、なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0093】
上記酸又は塩基性触媒の添加量としては特に限定されないが、上記シロキサン化合物及び環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物との合計量に対して、好ましい下限は10ppm、好ましい上限は1万ppmであり、より好ましい下限は100ppm、より好ましい上限は5000ppmである。
なお、上記酸又は塩基性触媒は、固形分をそのまま添加してもよく、少量の水や上記シロキサン化合物等に溶解してから添加してもよい。
【0094】
上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応においては、合成するシリコーン樹脂が反応系から析出することを防止できるとともに、上記水及び上記縮合反応による遊離水を共沸により除去できる等の観点から有機溶剤を用いてもよい。
上記有機溶剤としては、例えば、芳香族系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤等が挙げられる。上記有機溶剤としては、なかでも、芳香族系有機溶剤が好適に用いられる。
上記芳香族系有機溶剤としては特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記ケトン系有機溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
上記脂肪族系有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
【0095】
本発明の光半導体用熱構成組成物は、分子内にグリシジル含有基を1個以上有する2官能シリコーン樹脂を含有することが好ましい。
このような2官能シリコーン樹脂を配合することにより、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、硬化物の耐クラック性が著しく向上する。これは、上記硬化物において、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂の環状エーテル含有基の反応より発生する架橋点の隙間に、上記シリコーン樹脂と比較すると骨格が柔軟な上記2官能シリコーン樹脂が入り込むからであると推察される。
【0096】
本明細書において、グリシジル含有基とは、グリシジル基を少なくとも基の一部に含んでいればよく、例えば、アルキル基、アルキルエーテル基等の他の骨格とグリシジル基を含有していてもよい基を意味する。
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0097】
このようなグリシジル含有基を分子内に1個以上有する2官能シリコーン樹脂としては特に限定されないが、平均組成式が下記一般式(12)又は(13)で表される樹脂成分を含有することが好ましい。上記2官能シリコーン樹脂が下記一般式(12)又は(13)で表される樹脂成分を含有することで、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、硬化物が適度な柔軟性を有することなり、耐クラック性が極めて優れたものとなる。
なお、2官能シリコーン樹脂が、平均組成式が下記一般式(12)又は(13)で表されるとは、本発明の光半導体用熱硬化性組成物が2官能シリコーン樹脂として下記一般式(12)又は(13)で表される樹脂成分のみを含有する場合だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物である場合に、含有する樹脂成分の組成の平均をとると下記一般式(12)又は(13)で表される場合も意味する。
【0098】
【化12】

【0099】
一般式(12)中、R36及び/又はR37は、グリシジル含有基であり、R34、R35は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R36又はR37のいずれか一方のみがグリシジル含有基である場合、他方は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表す。また、m/(m+n)の好ましい下限は0.6、好ましい上限は0.95、より好ましい下限は0.7、より好ましい上限は0.9であり、n/(m+n)の好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.4、より好ましい下限は0.1、より好ましい上限は0.3である。
【0100】
【化13】

【0101】
一般式(13)中、R42及び/又はR43は、グリシジル含有基であり、R38、R39、R40、R41は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R42又はR43のいずれか一方のみがグリシジル含有基である場合、他方は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表す。また、o+p/(o+p+q)の好ましい下限は0.6、好ましい上限は0.95、より好ましい下限は0.7、より好ましい上限は0.9であり、q/(o+p+q)の好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.4、より好ましい下限は0.1、より好ましい上限は0.3である。ただし、(R3839SiO2/2)と(R4041SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【0102】
上記2官能シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1500、好ましい上限は5万である。上記2官能シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が1500未満であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化物の耐クラック性が不充分となることがあり、5万を超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の粘度調節が困難になることがある。上記2官能シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は2万である。
【0103】
このような2官能シリコーン樹脂の合成方法としては特に限定されず、例えば、上述したシリコーン樹脂を合成する方法と同様の方法が挙げられる。すなわち、SiH基を有するシリコーン樹脂(b)と、グリシジル含有基を有するビニル化合物とのハイドロシリレーション反応により置換基を導入する方法(方法(3))、アルコキシシラン化合物とグリシジル含有基を有すアルコキシシラン化合物とを縮合反応させる方法(方法(4))等が挙げられる。
【0104】
上記方法(3)で2官能シリコーン樹脂を合成する場合、上記SiH基を有するシリコーン樹脂(b)としては、例えば、分子内にSiH基を含有し、上記グリシジル含有基を有するビニル化合物と反応させた後、上述した一般式(11)又は(12)で表される構造となるようなものが挙げられる。
【0105】
上記方法(4)で上記2官能シリコーン樹脂を合成する場合、上記アルコキシシラン化合物としては特に限定されず、例えば、上記一般式(6)の化合物と同様のものが挙げられる。
また、上記グリシジル含有基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、上述した上記一般式(10)の化合物と同様のものが上げられる。
【0106】
上記アルコキシシラン化合物とグリシジル含有基を有するアルコキシシラン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上述したシリコーン樹脂を合成する場合のアルコキシシラン化合物と環状エーテル含有基を有するアルコキシシラン化合物とを反応させる場合と同様の方法が挙げられる。
【0107】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、上述したシリコーン樹脂に対する上記2官能シリコーン樹脂の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は120重量部である。上記2官能シリコーン樹脂の配合量が10重量部未満であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化物の耐クラック性が充分に発揮されないことがあり、120重量部を超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の硬化物の耐熱性に劣り、該硬化物が熱環境下で黄変しやすくなる場合がある。上記2官能シリコーン樹脂の配合量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0108】
なお、本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、上記シリコーン樹脂及び2官能シリコーン樹脂の合計は、全樹脂成分を100重量部とした場合に、好ましい下限が90重量部である。より好ましい下限は95重量部、更に好ましい下限は97重量部、特に好ましい下限は99重量部である。
【0109】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物において、上述した樹脂以外に、本発明の効果を妨げない範囲で更にエポキシ基と反応可能な硬化性化合物を含有してもよい。そのような化合物としては例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基を有する化合物が挙げられる。中でも、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては特に限定はされず、従来公知の種々のエポキシ化合物を用いることができる。
上記エポキシ基と反応可能なその他の硬化性化合物の配合量としては特に限定はされないが、好ましい上限は、上述したシリコーン樹脂(上記2官能シリコーン樹脂を含有する場合、上記シリコーン樹脂と2官能シリコーン樹脂との合計)100重量部に対して10重量部である。より好ましい上限は5重量部、更に好ましい上限は3重量部、特に好ましい上限は1重量部である。
【0110】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、上記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤としては、上記シリコーン樹脂の環状エーテル含有基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、これらフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物等の脂環式酸無水物類、3−メチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等のアルキル置換グルタル酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/又はイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、ジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類、芳香族酸無水物類等の酸無水物が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物である。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記熱硬化剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂(上記2官能シリコーン樹脂を含有する場合、上記シリコーン樹脂と2官能シリコーン樹脂との合計)100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は200重量部である。この範囲であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、充分に架橋反応が進行し、耐熱性及び耐光性に優れるとともに、透湿度が充分に低いものとなる。上記熱硬化剤の配合量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0112】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂(上記2官能シリコーン樹脂を含有する場合、上記シリコーン樹脂と2官能シリコーン樹脂との合計)100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限5重量部である。上記硬化促進剤の配合量が0.01重量部未満であると、上記硬化促進剤を添加する効果が得られず、5重量部を超えると、硬化物の着色や耐熱性、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。上記硬化促進剤の配合量のより好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0114】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、接着性付与のためにカップリング剤を含有してもよい。
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記カップリング剤の配合割合としては、上記シリコーン樹脂(上記2官能シリコーン樹脂を含有する場合、上記シリコーン樹脂と2官能シリコーン樹脂との合計)100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記カップリング剤の配合割合が0.1重量部未満であると、カップリング剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、5重量部を超えると、余剰のカップリング剤が揮発し、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を硬化させたときに、膜減り等を起こすことがある。
【0116】
また、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、粘度を調節するために、シリカ微粉末や高分子量シリコーン樹脂等が添加されていてもよい。特に、シリカ微粉末は、増粘性作用だけでなく、チキソ性付与剤としても働くため、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の流動性のコントロールや蛍光体の沈殿等の防止効果も出るために好ましい。
【0117】
上記シリカ微粉末の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい上限は100nmである。上記シリカ微粉末の平均粒子径が100nmを超えると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物の透明性が低下することがある。
【0118】
また、上記シリカ微粉末は性能上、BET比表面積の好ましい下限が30m/g、好ましい上限が500m/gである。BET比表面積が30m/g未満であると、増粘効果及びチキソ性の改善効果が不充分であり、500m/gを超えると、シリカ微粉末の凝集が強くなり分散し難くなり好ましくない。
【0119】
このようなシリカ微粉末としては、例えば、Aerosil 50(比表面積が50m/g)、Aerosil 90(比表面積が90m/g)、Aerosil 130(比表面積が130m/g)、Aerosil 200(比表面積が200m/g)、Aerosil 300(比表面積が300m/g)、Aerosil 380(比表面積が380m/g)、Aerosil OX50(比表面積が50m/g)、Aerosil TT600(比表面積が200m/g)、Aerosil R972(比表面積が110m/g)、Aerosil R974(比表面積が170m/g)、Aerosil R202(比表面積が100m/g)、Aerosil R812(比表面積が260m/g)、Aerosil R812S(比表面積が220m/g)、Aerosil R805(比表面積が150m/g)、RY200(比表面積が100m/g)、RX200(比表面積が140m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0120】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、必要に応じて、消泡剤、着色剤、蛍光体、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー、難燃剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0121】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物の粘度としては特に限定されないが、好ましい下限は500mPa・s、好ましい上限が50000mPa・sである。本発明の光半導体用熱硬化性組成物の粘度が500mPa・s未満であると、光半導体素子の封止剤として用いたときに、液ダレが起こり光半導体素子を封止できないことがあり、50000mPa・sを超えると、均一かつ正確に光半導体素子を封止できないことがある。本発明の光半導体用熱硬化性組成物の粘度のより好ましい下限は1000mPa・s、より好ましい上限が10000mPa・sである。
なお、本明細書において、上記粘度は、E型粘度計(東機産業社製、TV−22型)を用いて25℃、5rpmの条件で測定した値である。
【0122】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、初期光線透過率が90%以上であることが好ましい。本発明の光半導体用熱硬化性組成物の初期光線透過率が90%未満であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記初期光線透過率は、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0123】
また、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、耐光性試験後の光線透過率の低下率が10%未満であることが好ましい。本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐光性試験後の光線透過率の低下率が10%以上であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記耐光性試験とは、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物に、高圧水銀ランプに波長340nm以下の光をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで24時間照射する試験であり、上記耐光試験後の光線透過率は、上記耐光性試験後の上記硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0124】
また、本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、耐熱性試験後の光線透過率の低下率が10未満であることが好ましい。本発明の光半導体用熱硬化性組成物の耐熱性試験後の光線透過率の低下率が10%以上であると、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体素子の光学特性が不充分となる。なお、上記耐熱性試験とは、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を硬化させた厚さ1mmの硬化物を150℃のオーブンに500時間放置する試験であり、上記耐熱性試験後の光線透過率は、上記耐熱性試験後の上記硬化物を用いて、波長400nmの光の透過率を日立製作所社製「U−4000」を用いて測定した値である。
【0125】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有し、好ましくは平均組成式が上述した一般式(1)で表される構造のシリコーン樹脂を有するため、透明性が高く、発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、ハウジング材への密着性に優れたものとなる。
【0126】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上述したリン系化合物、フェノール化合物、シリコーン樹脂、熱硬化剤、微粒子、硬化促進剤及び添加剤等の各所定量を混合する方法等が挙げられる。
【0127】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物の用途としては特に限定されないが、例えば、封止剤、ハウジング材、リード電極や放熱板等に接続するためのダイボンド材、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子をフリップチップ実装した場合のアンダーフィル材、発光素子上のパッシベーション膜として用いることができる。なかでも、光半導体素子からの発光による光を効率よく取り出すことのできる光半導体装置を製造できることから、封止剤、アンダーフィル材、ダイボンド材として好適に用いることができる。
本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体用封止剤もまた、本発明の1つである。
本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体素子用ダイボンド材もまた、本発明の1つである。
本発明の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなる光半導体素子用アンダーフィル材もまた、本発明の1つである。
【0128】
本発明の光半導体素子用封止剤を用いて上記発光素子を封止する場合、他の封止剤を併用してもよい。この場合、本発明の光半導体素子用封止剤で上記発光素子を封止した後、その周囲を上記他の封止剤で封止してもよく、上記発光素子を上記他の封止剤で封止した後、その周囲を本発明の光半導体用封止剤で封止してもよい。
上記その他の封止剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等が挙げられる。また、表面改質剤を含有すると液を塗布して表面に保護層を設けることもできる。
【0129】
本発明の光半導体素子用封止剤で発光素子を封止する方法としては特に限定されず、例えば、モールド型枠中に本発明の光半導体素子用封止剤を予め注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後、硬化させる方法、発光素子を挿入した型枠中に本発明の光半導体素子用封止剤を注入し硬化する方法等が挙げられる。
本発明の光半導体素子用封止剤を注入する方法としては、例えば、ディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。更に、その他の封止方法としては、本発明の光半導体素子用封止剤を発光素子上へ滴下、孔版印刷、スクリーン印刷、又は、マスクを介して塗布し硬化させる方法、底部に発光素子を配置したカップ等に本発明の光半導体素子用封止剤をディスペンサー等により注入し、硬化させる方法等が挙げられる。
更に、本発明の光半導体素子用封止剤は、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド材、発光素子上のパッシベーション膜、パッケージ基板として用いることもできる。
【0130】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物は、シリコーン樹脂が分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有し、好ましくは平均組成式が上記一般式(1)で表される樹脂成分を含有するため、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、光半導体素子用封止剤として用いた場合、封止する発光素子の発熱や発光による変色が無く耐熱性及び耐光性に優れるとともに、発光ダイオード等の光半導体素子の発光素子を封止した際に、該光半導体素子のハウジング材等への密着性に優れたものとなる。
なお、ハウジング材としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等からなる従来公知のものが挙げられる。
【0131】
本発明の光半導体用熱硬化性組成物、本発明の光半導体素子用封止剤、本発明の光半導体素子用ダイボンド材及び/又は本発明の光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子もまた、本発明の1つである。
【0132】
図1及び図2は、本発明の光半導体素子用封止剤及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図であり、図3は、本発明の光半導体用封止剤及び光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【0133】
図1に示す光半導体素子は、発光素子11が放熱板16上に本発明の光半導体素子用ダイボンド材10を介して設置されており、発光素子11と、ハウジング材の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極14とが金ワイヤー13でそれぞれ電気的に接続されている。そして、発光素子11、本発明の光半導体素子用ダイボンド材10及び金ワイヤー13が本発明の光半導体素子用封止剤12で封止されている。
【0134】
図2は、本発明の光半導体素子用ダイボンド材が上述した金、銀、及び、銅からなる群より選択される少なくとも一種を含む粒子を含有することで高い導電性を有する場合の光半導体素子を示す。
図2に示す光半導体素子は、発光素子21が本発明の光半導体素子用ダイボンド材20を介して設置されており、ハウジング材25の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極24のうち、一方のリード電極24の末端は、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20とハウジング材25との間に形成され、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20を介して発光素子21と電気的に接続され、他方のリード電極24は、金ワイヤー23で発光素子21に電気的に接続されている。そして、発光素子21、本発明の光半導体素子用ダイボンド材20及び金ワイヤー23が本発明の光半導体素子用封止剤22で封止されている。
【0135】
図3に示す本発明の光半導体素子は、発光素子31がバンプ33を介して設置されており、発光素子31とハウジング材35との間に本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30が形成されている。ハウジング材35の上面から側面を通って底面へ延長された2本のリード電極34は、それぞれ一方の末端がバンプ33とハウジング材35との間に形成されて発光素子31と電気的に接続されている。そして、発光素子31及び本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30が本発明の光半導体素子用封止剤32で封止されている。図3に示す本発明の光半導体素子において、本発明の光半導体素子用アンダーフィル材30は、発光素子31とリード電極34とをバンプ33で接続した後、発光素子31の下方に形成された空間に横の隙間から充填することで形成される。
【0136】
本発明の光半導体素子は、具体的には、例えば、発光ダイオード、半導体レーザー、フォトカプラ等が挙げられる。このような本発明の光半導体素子は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト、スイッチング素子等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0137】
本発明によれば、優れた透明性を有し、耐熱性、耐光性、及び、ハウジング材への密着性に優れ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる光半導体用熱硬化性組成物を提供することができる。更に、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材、及び、これらを用いてなる光半導体素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0138】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0139】
(合成例1)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(750g)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(150g)を入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.9g)/水(250g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(2.1g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーAを得た。ポリマーAの分子量はMn=11000、Mw=25000であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.90(EpMeSiO2/20.10
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラムが昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度が40℃、流速が1mL/min、溶媒がテトラヒドロフラン、標準物質がポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0140】
(合成例2)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(440g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(160g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.2g)/水(170g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.3g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーBを得た。ポリマーBの分子量はMn=2000、Mw=3800であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.83(EpSiO3/20.17
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は22モル%、エポキシ当量は550g/eq.であった。
なお、ポリマーBの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0141】
(合成例3)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(440g)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(160g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.2g)/水(170g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.3g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーCを得た。ポリマーCの分子量はMn=2300、Mw=4800であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.84(EpSiO3/20.16
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は22モル%、エポキシ等量は550g/eq.であった。
なお、ポリマーCの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0142】
(合成例4)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(400g)、トリメトキシメチルシラン(100g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(100g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.3g)/水(180g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.4g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーDを得た。ポリマーDの分子量はMn=3200、Mw=5400であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.71(MeSiO3/20.18(EpSiO3/20.11
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は15モル%、エポキシ当量は780g/eq.であった。
なお、ポリマーDの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0143】
(合成例5)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(350g)、トリメトキシメチルシラン(125g)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(125g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.2g)/水(190g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.3g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーEを得た。ポリマーEの分子量はMn=2900、Mw=4600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.65(MeSiO3/20.22(EpSiO3/20.13
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は19モル%、エポキシ当量は660g/eq.であった。
なお、ポリマーEの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0144】
(合成例6)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン(400g)、トリメトキシメチルシラン(50g)、テトラメトキシシラン(50g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(100g)を入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム(1.3g)/水(180g)をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸(1.4g)を入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーFを得た。ポリマーFの分子量はMn=2600、Mw=3600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.73(MeSiO3/20.09(EpSiO3/20.10(SiO4/20.08
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
なお、ポリマーFの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0145】
(実施例1)
ポリマーA(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、スミライザー BBM−S(下記式(A−2)で表されるフェノール化合物、住友化学工業社製)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0146】
【化14】

【0147】
(実施例2)
ポリマーB(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、30g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、スミライザー BBM−S(上記式(A−2)で表されるフェノール化合物、住友化学工業社製)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0148】
(実施例3)
スミライザー BBM−Sの代わりに、HOSTANOX O3(上記式(A−1)で表されるフェノール化合物、クラリアント社製、0.5g)を用いた以外は、実施例2と同様にして、光半導体素子用封止剤、及び、その硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0149】
(実施例4)
ポリマーBの代わりにポリマーCを用いた以外は、実施例3と同様にして、光半導体素子用封止剤、及び、その硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0150】
(実施例5)
ポリマーBの代わりにポリマーDを用いた以外は、実施例3と同様にして、光半導体素子用封止剤、及び、その硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0151】
(実施例6)
ポリマーBの代わりにポリマーEを用いた以外は、実施例3と同様にして、光半導体素子用封止剤、及び、その硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0152】
(実施例7)
ポリマーBの代わりにポリマーFを用いた以外は、実施例3と同様にして、光半導体素子用封止剤、及び、その硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0153】
(比較例1)
ポリマーA(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0154】
(比較例2)
ポリマーA(100g)、リカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、25g)、U−CAT SA 102(硬化促進剤、サンアプロ社製、0.5g)、アンテージ W−500(下記式(B)で表されるフェノール化合物、川口化学工業社製、0.5g)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0155】
【化15】

【0156】
(比較例3)
セロキサイド2021(脂環エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製、100g)、リカシッドMH−700G(新日本理化社製、100g)、U−CAT SA 102(サンアプロ社製、0.5g)、HOSTANOX O3(上記式(A−1)で表されるフェノール化合物、クラリアント社製、0.5g)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。硬化物は目視で無色透明であった。
【0157】
(比較例4)
YX−8000(水添ビスフェノールAエポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製、100g)、リカシッドMH−700G(新日本理化社製、64g)、HOSTANOX O3(上記式(A−1)で表されるフェノール化合物、クラリアント社製、0.5gを入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。硬化物は目視で赤茶色がかっていた。
【0158】
(比較例5)
VDT−431(ビニル基を有するポリシロキサン、Gelest社製、45g)、HMS−031(オルガノハイドロジェンポリシロキサン、Gelest社製、55g)、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(Pt濃度2重量%、0.05g)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。この封止剤を型に充填し、100℃、3時間加熱した後、更に150℃、3時間加熱して硬化し、厚さ1mmの硬化物を得た。得られた硬化物は、目視で無色透明であった。
【0159】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した封止剤及びその硬化物について以下の評価を行った。
【0160】
(1)初期光線透過率
厚さ1mmの硬化物を用いて400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。
【0161】
(2)初期全光束及び耐湿熱試験後の全光束
(光半導体素子用ダイボンド材の作製)
ポリマーC(30g)に平均粒径3μm、最大粒径20μmのフレーク状銀粉(170g)を入れ攪拌し、三本ロールを用いて混錬を行った。
そのフレーク状の銀粉入りポリマー(100g)にリカシッドMH−700G(酸無水物、新日本理化社製、3.75g)、U−CAT SA 102(サンアプロ社製、0.075g)、HOSTANOX O3(上記式(A−1)で表されるフェノール化合物、クラリアント社製、0.075g)を入れ混合し、脱泡を行い、光半導体素子用ダイボンド材を得た。
【0162】
(光半導体素子の作製)
リード電極付きハウジング材(PPA)に、作製した光半導体素子用ダイボンド材を用いて、主発光ピークが460nmの発光素子を実装し、180℃で15分間硬化させ発光素子を固定した。続いて、発光素子とリード電極とを金ワイヤーで電気的に接続し、実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した光半導体素子用封止剤を注入し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱するか(実施例1〜7、比較例1〜4)、又は、100℃、3時間加熱した後、更に150℃、3時間加熱して(比較例5)硬化させ、図2に示す構造の光半導体素子を作製した。
得られた光半導体素子を、23℃の温度下、積分球を用いた全光束測定装置を用いて電流値20mAの全光束測定を行った(初期全光束)。また、上記で得られた光半導体素子を85℃、85RH%環境下で20mAの通電試験を1000時間行い、試験後の光半導体素子を23℃の温度下、積分球を用いた全光束測定装置を用いて電流値20mAの全光束測定を行った(耐湿熱試験後の全光束)。
初期の全光束と耐湿熱試験後の全光束を用いて下記式を用いて全光束保持率を算出した。
全光束保持率=(耐湿熱試験後の全光束/初期全光束)×100
全光束保持率が90%以上を◎、90%未満〜80%以上を○、80%未満〜70%以上を△、70%未満を×と評価した。
【0163】
(3)密着性試験
アルミニウム、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に実施例及び比較例で調製した光半導体用封止剤を塗布し、100℃、3時間加熱した後、更に130℃、3時間加熱するか(実施例1〜7、比較例1〜4)、又は、100℃、3時間加熱した後、更に150℃、3時間加熱して(比較例5)硬化させ薄膜を作製し、JIS K−5400に準拠し、すきま間隔1mm、100個のます目で碁盤目テープ法を用いて密着性試験を行った。
なお、表1中、剥離個数0の場合を○、剥離個数1〜70の場合を△、剥離個数71〜100の場合を×として評価した。
【0164】
【表1】

【0165】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明によれば、優れた透明性を有し、耐熱性、耐光性、及び、ハウジング材への密着性に優れ、高輝度が要求される用途に用いた場合にも光半導体の輝度低下を効果的に防止することができる光半導体用熱硬化性組成物を提供することができる。更に、光半導体素子用封止剤、光半導体素子用ダイボンド材、光半導体素子用アンダーフィル材、及び、これらを用いてなる光半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の光半導体用封止剤及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の光半導体用封止剤及び光半導体素子用ダイボンド材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光半導体用封止剤及び光半導体素子用アンダーフィル材を用いてなる光半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
10、20 光半導体素子用ダイボンド材
11、21、31 発光素子
12、22、32 光半導体用封止剤
13、23 金ワイヤー
14、24、34 リード電極
15、25、35 ハウジング材
16 放熱板
30 光半導体用アンダーフィル材
33 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤と、下記一般式(A)で表されるフェノール化合物とを含有することを特徴とする光半導体用熱硬化性組成物。
【化1】

式(A)中、Rは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意の置換基を表し、Rは水素又は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【請求項2】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつ、前記環状エーテル含有基の含有量が0.1〜50モル%であることを特徴とする請求項1記載の光半導体用熱硬化性組成物。
【化2】

式(1)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項3】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される樹脂成分を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の光半導体用熱硬化性組成物。
【化3】

一般式(2)中、e及びfは、e/(e+f)=0.5〜0.95、f/(e+f)=0.05〜0.5を満たし、R10〜R12は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR10〜R12は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【化4】

一般式(3)中、g、h及びiは、(g+h)/(g+h+i)=0.5〜0.95、i/(g+h+i)=0.05〜0.5を満たし、R13〜R17は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR13〜R17は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R1314SiO2/2)と(R1516SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【化5】

一般式(4)中、j、k及びlは、j/(j+k+l)=0.5〜0.95、(k+l)/(j+k+l)=0.05〜0.5を満たし、R18〜R21は、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR18〜R21は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R20SiO3/2)と(R21SiO3/2)とは構造が異なるものである。
【請求項4】
熱硬化剤は、酸無水物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の光半導体用熱硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用封止剤。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用ダイボンド材。
【請求項7】
請求項1、2、3又は4記載の光半導体用熱硬化性組成物を用いてなることを特徴とする光半導体素子用アンダーフィル材。
【請求項8】
請求項1、2、3又は4記載の光半導体用熱硬化性組成物、請求項5記載の光半導体素子用封止剤、請求項6記載の光半導体素子用ダイボンド材及び/又は請求項7記載の光半導体素子用アンダーフィル材を用いることを特徴とする光半導体素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−263531(P2009−263531A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115796(P2008−115796)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】