説明

光結合構造およびその製造方法、光モジュール

【課題】半導体プロセスの作製精度によって、一組の光素子の高さに位置ずれが生じた場合であっても、高さを調整可能にする。
【解決手段】基板2と、この基板2の搭載面上に配置されて互いに光学的に結合される光導波路3と発光素子51とを備える。また、発光素子51と基板2との間に設けられて発光素子51を支持し、搭載面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座41と、この可変形台座41に支持された発光素子51を基板2に固定する固定材6とを備える。そして、可変形台座41は、荷重による変形量が発光素子51の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光通信等で用いられる光モジュールに関し、各光素子を光結合する光結合構造およびその製造方法、ならびに光結合構造を備える光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータの通信装置内・通信装置間での光リンクなどで、比較的低コストで小型な光モジュールの実現が期待されている。
【0003】
これらの光モジュールを実現するために、発光素子と受光素子を平面光導波路(以下、特に明記する場合を除き単に光導波路と称する。)を介して同一基板上に搭載したハイブリッド集積型の光モジュールが提案されている。この種の光モジュールでは、光導波路と発光素子とを光学的に高効率に結合させるために、光導波路の光軸と発光素子の光軸とを水平方向のみならず垂直方向にも1μm前後の寸法精度で位置決めする必要がある。そして、無調芯実装によって光素子を固定する方法が提案されている。
【0004】
従来の光結合構造としては、光素子と光導波路のコア層との高さ方向の位置ずれを抑えるために、基板上に光素子支持用の支持台座が配置される構成が開示されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。また、特許文献1には、石英等の光導波路と同じ材料で支持台座が形成される構成(図2,3参照)や、光素子と支持台座との間隙にはんだ材料等の固定材料が設けられ、この固定材料によって光素子が基板上に固定される構成(図7参照)が開示されている。
【0005】
また、従来の光結合構造の製造方法としては、下クラッド層の間の、支持台座の高さに相当する部分に、エッチングマスクを形成するために、下クラッド層を2回に分けて成膜し、この下クラッド層にコア層および、上クラッド層をそれぞれ成膜する方法が開示されている(例えば、特許文献2(図1,2)参照。)。そして、光素子の搭載部分を形成する工程では、台座形成用にマスクされた部分だけを残し、その他の部分をエッチングで除去していた。このため、支持台座からコア層の中心までの高さが精度良く形成されれば良く、支持台座の高さによらずに高精度な位置合わせを行っていた。
【0006】
また、従来の光結合構造として、光素子と基板との仮接続を行うために、Au等のメタルバンプが基板上に形成され、光素子の搭載部の下に電気的接続および機械的接続を補強するためのAuSnはんだ膜が配置される構成が開示されている(例えば、特許文献3(図1〜5)参照。)。
【0007】
この構成では、メタルバンプの形成時に高さを調節し、続いてメタルバンプ上に光素子を搭載して仮接続し、そして基板を加熱してはんだ膜を溶融する各工程を採っており、製造工程が複雑である。また、メタルバンプで仮接続する場合には、光素子の位置ずれが生じたときに、光素子や基板の電極に剥離が生じていない状態で再接続することが困難であるため、歩留まりの低下が問題となっていた。また、メタルバンプによる仮接続では、光素子の高さを位置決めするとともに光素子と基板とを固定するという役割を担っているので、良好な接続強度を得るために十分な荷重を加える必要があり、荷重範囲が制限され、メタルバンプ高さの微調整も難しかった。
【特許文献1】特開平5−196844号公報(3−4頁、図1−3、7)
【特許文献2】特開平9−304663号公報(3−4頁、図1、2)
【特許文献3】特開2002−111113号公報(3−5頁、図1−5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の光結合構造では、半導体プロセス等の作製精度によって光導波路のコアと支持台座の高さとに位置ずれが生じた場合に、支持台座に支持される光素子の光軸の高さ方向の位置ずれを調整することができなかった。このため、この従来の光結合構造では、歩留まりの低下を招いていた。
【0009】
また、エッチングマスクを用いて支持台座を基板上に形成するためには、下クラッド層を2段階に作製する必要があるので、半導体プロセスが複雑になるという問題があった。
【0010】
また、従来のメタルバンプによる固定方法では、メタルバンプによる光素子の接続強度を良好に確保するために、十分な荷重を負荷する必要があるので、高さ方向の調整範囲が限られ、光素子の高さ方向の位置の微調整ができず、また位置ずれが生じた場合でも、再接続が難しいので、歩留まりが低下するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、光素子を支持する支持台座に高さ方向の位置ずれが生じた場合であっても、光素子の光軸の高さ方向の位置ずれを調整することができる光結合構造を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、変形する可変形部材を備えることによって、下クラッド層の2段階での形成を不要とし、半導体プロセスを簡略化できる光結合構造を提供することにある。
【0013】
さらに、本発明の別の目的は、固定部材を備えることによって、接着固定機能を可変形部材から分離し、接合強度が荷重による影響を受けなくし、荷重で可変形部材を変形させることによって、高さ方向の調整範囲が広く、微調整することができる光結合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明に係る光結合構造は、基板と、この基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子とを備える光結合構造であって、光素子の少なくとも一方と基板との間に設けられて光素子を支持し、載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形部材と、この可変形部材に支持された光素子を基板に固定する固定部材とを備える。そして、可変形部材は、荷重による変形量が光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる。
【0015】
以上のように構成された本発明の光結合構造によれば、可変形部材の高さ方向に荷重を負荷して可変形部材の高さを調整することによって、可変形部材に支持される光素子の光軸の高さが調整されるので、半導体プロセスの作製精度によって光素子の一方の光軸と可変形部材の高さとに位置ずれが生じた場合であっても、高さ方向の位置ずれを調整することが可能にされている。また、この光結合構造によれば、可変形部材によって高さ方向の位置が調整された光素子が、固定部材によって基板に固定される。
【0016】
また、本発明に係る光結合構造は、導波路型素子の少なくとも一方に、スポットサイズ変換手段が設けられてもよい。この構成によれば、位置ずれが良好に抑えられるので、光結合効率が更に向上される。
【0017】
また、本発明に係る他の光結合構造は、可変形台座の高さとコア層の光軸の高さ方向の位置との位置ずれを検出する検出手段を備えてもよい。この構成によれば、検出手段を介して検出された位置ずれに基づいて可変形部材が変形されることで、更に高精度に光軸を調整することができる。
【0018】
また、本発明に係る光モジュールは、上述した本発明の光結合構造を備え、光信号を入出力する。
【0019】
また、本発明に係る光結合構造の製造方法は、基板と、この基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、光素子の少なくとも一方と基板との間に設けられて光素子を支持し、載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形部材と、この可変形部材に支持された光素子を基板に固定する固定部材とを備え、可変形部材は、荷重による変形量が光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、可変形部材を、この可変形部材の高さ方向に荷重を負荷して高さを変形させ、荷重量に応じて可変形部材の変形量を調整することによって、光素子の光軸の高さ方向の位置を調整し、固定部材で光素子を基板に固定する。
【0020】
また、本発明に係る光結合構造の製造方法は、基板と、この基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、光素子の少なくとも一方と基板との間に設けられて光素子を支持し、載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座と、この可変形部材に支持された光素子を基板に固定する固定部材とを備え、可変形台座は、荷重による変形量が光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、光素子の一方は基板上に下クラッド層、コア層、上クラッド層の順に積層されてなる光導波路であり、光素子の他方は受光素子または発光素子であり、
基板上に下クラッド層を形成する工程と、下クラッド層上の、受光素子または発光素子を支持する支持領域にエッチングマスクを形成する工程と、下クラッド層上の支持領域以外の部分にコア層を形成する工程と、コア層をコアの形状に加工する工程と、コア上に上クラッド層を形成する工程と、支持領域をエッチングして受光素子または発光素子を支持する可変形台座を形成する工程とを有する。
【0021】
また、本発明に係る光結合構造の製造方法は、基板と、この基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、光素子の少なくとも一方と基板との間に設けられて光素子を支持し、載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座と、この可変形部材に支持された光素子を基板に固定する固定部材とを備え、可変形台座は、荷重による変形量が光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、光素子の一方は基板上に第1下クラッド層、第2下クラッド層、コア層、上クラッド層の順に積層されてなる光導波路であり、光素子の他方は受光素子または発光素子であり、
基板上に第1下クラッド層を形成する工程と、第1下クラッド層上の、受光素子または発光素子を支持する支持領域にエッチングマスクを形成する工程と、第1下クラッド層上に第2下クラッド層を形成する工程と、第2下クラッド層上の支持領域以外の部分にコア層を形成する工程と、コア層をコアの形状に加工する工程と、コア上に上クラッド層を形成する工程と、支持領域をエッチングして受光素子または発光素子を支持する可変形台座を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0022】
上述したように、本発明に係る光結合構造によれば、可変形部材に支持された光素子の光軸の高さ方向の位置を調整することが可能になり、半導体プロセスで発生した高さ方向の位置ずれを調整することが可能になり、光モジュールの歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は光結合構造を示す図で、図1(a)が光素子の搭載前の光結合構造の断面図、図1(b)が光素子の搭載後の光結合構造の断面図を示す。
【0025】
図1(a)に示すように、第1の実施形態の光結合構造1は、基板2の搭載面(載置面)上に形成された光導波路3と、この光導波路3と互いに光軸が合わせられる発光素子51と、この発光素子51を支持し搭載面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座41とを備えている。
【0026】
光導波路3は、基板2の搭載面上に、下クラッド層33、コア層32、上クラッド層31の順に積層されて形成されている。可変形台座41は、基板2の搭載面上の、発光素子51を搭載する領域に配置されている。なお、本実施形態では、発光素子51を備える構成として説明するが、図示しないが、発光素子51の代わりに受光素子を備える構成にされてもよいことは勿論である。
【0027】
図1(b)に示すように、発光素子51が可変形台座41の支持面上に搭載された状態で、光結合構造1は、発光素子51と、荷重によって高さ方向に変形量Δh分だけ変形した可変形台座41と、可変形台座41と基板2との間で加熱溶融後に冷却されることで発光素子51を基板2に固定する固定材6とを備えて構成されている。
【0028】
可変形台座41は、荷重を負荷した状態で加熱することによって変形する材料からなる。また、可変形台座41は、荷重による変形量が発光素子51の変形量よりも大きく、荷重量または温度に対応する変形量が一意的に定まる、つまり荷重に対して変形量が線形関係を有する材料からなる。可変形台座41の材料としては、例えばポリマー樹脂等が好ましい。可変形台座41の変形は、塑性変形であっても、固定材6としてはんだ材や接着剤等を併用する場合は弾性変形であってもよい。また、光導波路3の材料は、可変形台座41の材料と同一でなくてもよい。なお、可変形台座41は、変形によって高さを調整する機能のみを持ち、メタルバンプのように基板2と発光素子51とを接着固定する機能を有していない。したがって、固定材6によって発光素子51を基板2に固定する前であれば、可変形台座41の高さの調整を繰り返し行うこともできるので、発光素子51の搭載時の歩留まりを向上することができる。
【0029】
なお、発光素子51としては、例えば端面発光型の半導体レーザ等が用いられてよい。また、発光素子の代わりの受光素子としては例えば導波路型フォトダイオード等が用いられてもよい。
【0030】
次に、光結合構造1について、可変形台座41の高さ調整方法を、図1、図2を参照して説明する。図2は、可変形台座41について、荷重量と変形量の関係を示す図である。
【0031】
可変形台座41の支持面上に発光素子51を搭載し、可変形台座41に荷重をかけた状態で、固定材6を加熱して溶融する。このとき、コア層32の高さと、発光素子51の光軸(活性層)の高さとが一致するように可変形台座41の高さ方向の変形量Δhを調整する。可変形台座41に負荷する単位面積当たりの荷重量と、可変形台座41の高さ方向の変形量Δhとの関係は、図2に示すように、直線的な関係を示すので、荷重量を徐々に大きくするのに伴って可変形台座41が高さ方向の下方に徐々に変形されて、可変形台座41の高さの調整が実現される。
【0032】
上述した高さ調整方法によって、発光素子51の光軸の高さ方向に対する高精度な位置決めが実現されるが、発光素子51の光軸の水平方向に対する位置決めについては、光導波路3に対して高精度に位置決めされた基板2と、発光素子51側とに位置決め用のマーカ部をそれぞれ形成し、これらマーカ部の相対位置を画像認識することで、良好に位置決めすることができる。上述した高さ調整方法とこの水平方向の位置決め方法とを組み合わせることにより、例えば、光結合構造に光信号を入力して、その光信号の出力をモニターしながら、光軸を調整する工程が不要となり、製造コストを低減できるという効果がある。
【0033】
光導波路3と可変形台座41とを備える光結合構造1の製造方法について、図面を参照して説明する。図3は光結合構造1の製造工程を説明するための断面図である。
【0034】
まず、図3(a)に示すように、Si等からなる基板2上に、下クラッド層33を第1下クラッド層331と第2下クラッド層332の2回に分けて成膜する。基板2上に第1下クラッド層331を成膜した後、この第1下クラッド331上の、可変形台座41を形成する部分にエッチングストップ用のメタル等のエッチングマスク7を形成する。
【0035】
続いて、図3(b)に示すように、第1下クラッド層331の上に第2下クラッド層332を形成する。次に、第2下クラッド層332の上に、コア層32を成膜して、RIE(Reactive Ion Etching)等のエッチングを用いて光導波路3の形状に基づいてコア321を形成する。
【0036】
続いて、図3(c)に示すように、コア321を覆うようにコア321上に上クラッド層31を成膜し、エッチングマスク71で発光素子51の搭載部分のみを露出させる。
【0037】
さらに、図3(d)に示すように、発光素子51の搭載部分をエッチングによって形成することで、可変形台座41には、エッチングマスク71で覆われた部分だけが残り、その他の部分がエッチングされる。このため、可変形台座41の支持面からコア層32の中心まで高さ方向の距離が精度良く形成されていれば、可変形台座41の高さにかかわらずに高精度な位置決めを行うことができる。
【0038】
そして、図3(e)に示すように、可変形台座41の支持面上に発光素子51を搭載し、発光素子51を固定材6で基板2に接合することによって光結合構造1が完成する。
【0039】
この製造方法では、可変形台座41の材料として、ポリマー樹脂が用いられるのが最適であり、コア層の形成には感光性材料等を用いることも可能である。
【0040】
また、上述の製造方法では、下クラッド層33を2回に分けて形成した場合について述べたが、下クラッド層を1回で形成し、上述の第2下クラッド層332の厚さ分だけ可変形台座を高さ方向の下方に変形させることも可能である。この工程を図4に示す。図4は光結合構造1の他の製造方法を説明するための断面図である。
【0041】
他の製造方法では、図4(a)〜(c)に示すように、基板2上に、第1下クラッド層と第2下クラッド層を1層の下クラッド層33として連続して形成し、この下クラッド層の上にエッチングマスク7を形成する工程のみが異なり、他の工程は、図3に示した製造方法と同様である。
【0042】
この製造方法によれば、上述した下クラッド層の2回形成が解消されるので、製造工程の簡略化が図れる。また、可変形台座は、支持面に発光素子を搭載した状態での設定高さに対して可変形台座の高さをあらかじめ高めに設定しておくことで、コア層の高さが設定値よりも高く形成された場合であっても調整することが可能である。
【0043】
また、必要に応じて、光導波路3と導波路型の発光素子51との一方あるいは両方に、ビームスポット径を変えるスポットサイズ変換器が設けられ、荷重量あるいは温度によって光軸の高さ方向の位置を微調整することによって、位置ずれが良好に抑えられるので、光結合効率を向上することができる。
【0044】
上述したように、本実施形態の光結合構造1によれば、可変形台座が設けられることによって、光導波路の光軸と発光素子の光軸との高さ方向の位置ずれ量を調整することができるので、半導体プロセス時に発生した高さ方向の位置ずれを調整可能になり、光モジュールの歩留まりを向上させることができる。
【0045】
また、この光結合構造1によれば、可変形台座41を備えることによって、下クラッド層が1層で形成された場合であっても、可変形台座41で発光素子51の高さ方向の位置を調整することが可能であるため、下クラッド層を2段階に形成する必要がなくなり、半導体プロセスの工程を簡略化することができる。
【0046】
また、光結合構造1によれば、発光素子51を基板2に接合して固定する固定機能を固定材6にのみ持たせ、荷重によって変形して発光素子51の高さ方向の位置を調整する調整機構のみを可変形台座41が持つことで、比較的簡素な方法で歩留まりが良好になり、可変形台座に負荷する荷重量が制約されず、発光素子51の高さ方向の位置調整範囲が広く確保され、可変形台座41によって固定する必要がないので、可変形台座41を微少量だけ変形させることが可能になり、微調整することもできる。
【0047】
(実施例)
本実施形態の光結合構造1のさらなる具体例を示す。光結合構造1において、基板2はSiからなり、光導波路3および可変形台座41が、ポリイミド系のポリマー樹脂によって形成された。発光素子51は、端面発光型の半導体レーザであり、活性層の厚さ方向の中心、つまり光軸から、可変形台座41の発光素子51の支持面までの高さ方向の距離は4μmである。このため、第2下クラッド層332の厚さとコア層32の厚さの1/2との和を4μmに設定した。しかし、半導体プロセス後、第2下クラッド層332の厚さが設定値よりも0.5μm薄くなってしまった。そこで、可変形台座41に荷重量を5gfかけて、可変形台座41を0.5μmだけ高さ方向に対して下方に変形させて、発光素子51を固定材6で基板2に固定することで、コア層32の厚さ方向の中心と可変形台座41の支持面との差が4μmとなり、光導波路3の光軸と発光素子51の光軸とを高精度に位置決めすることができた。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図5を参照して説明する。図5(a)は光結合構造1Aの平面図、図5(b)は図5(a)におけるA−A断面図である。
【0049】
図5に示すように、第2の実施形態の光結合構造1Aは、光導波路3と発光素子51との光軸の高さ方向の位置を調整するために、シート状の可変形基材42が、発光素子51と基板2との間に配置され発光素子51を支持している。
【0050】
可変形基材42は、光導波路3と別途に形成されてもよく、可変形基材42を耐熱性接着テープなどで固定し、荷重量によって高さを調整することも可能である。このため、基板2上に光導波路3を形成した後、コア層の高さ方向の中心の位置が設定よりも数μm程度と大きくずれてしまった場合であっても、位置ずれ量に近い厚さをもつ可変形基材42を用いることで、光導波路3に対して発光素子51の光軸の高さ方向の位置を荷重量によって微調整することができる。
【0051】
また、図5に示した構成では、発光素子51は、複数のチャンネルを有するアレイ構造である場合を示しているが、この場合には各チャンネルに可変形基材42をそれぞれ配置する必要がなく、高さ方向の位置決めを一括して行うことができるという効果がある。なお、発光素子51の搭載方法については、第1の実施形態と同様である。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図6を参照して説明する。図6(a)は光結合構造の光導波路方向に沿って切断した断面図、図6(b)は図6(a)におけるA−A断面図である。
【0053】
図6に示すように、第3の実施形態の光結合構造1Bには、光導波路3の光軸に対する光ファイバ52の光軸の高さ方向の位置を調整するために、光ファイバ52と基板2との間に、光ファイバ52を支持する可変形基材43が配置されている。
【0054】
可変形基材43は、第1の実施形態のように光導波路3の形成時に配置されても、あるいは別途に作製されて貼り付けられてもよい。また、基板2がSiからなる場合には、光ファイバ52を支持するV溝を異方性エッチングによって形成することが可能である。基板2がSi以外からなる場合であっても、例えば、ガラス等からなる場合には切削加工、樹脂材等からなる場合には型押しによってV溝を形成することも可能である。光ファイバ52を可変形基材43上に搭載する工程では、第1の実施形態と同様に、光ファイバ52に荷重を高さ方向の下方に負荷することで、可変形基材43を変形させて、可変形基材43の高さを調整する。
【0055】
なお、本実施形態では、光ファイバ52の光軸の高さを調整することが可能であるため、光ファイバ52の固定構造としてはV溝に限定されることなく、他の形状の溝であってもよい。また、他の固定構造としては、例えば図6(c)に示すように、光ファイバ52の下側に設けられたシート状の可変形基材43と、光ファイバ52の径方向の両側に突き当てられて光ファイバ52を保持する保持壁34とを有して構成される固定構造が採られてもよい。
【0056】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、図7を参照して説明する。図7は光導波路方向に沿って切断した断面図である。
【0057】
図7に示すように、第4の実施形態の光結合構造1Cには、光導波路3の光軸に対して光導波路53の光軸の高さを調整するために、基板2上に、光導波路53を支持する可変形基材44が設けられている。したがって、可変形基材44は、光導波路53と基板2との間に配置されている。そして、光導波路3は、基板2上に設けられたミラー81を介して、固定材83で固定された光学部材82に光結合されている。
【0058】
なお、基板2をプリント回路基板として形成し、光導波路53をフィルム状光導波路として形成することも可能である。また、可変形基材44はシート状であっても、第1の実施形態と同様に、光導波路53を支持する複数の可変形台座が配列される構成であっても良い。後者の場合には、基板に電気配線を設けることが可能となり、配線の自由度が増加する。また、可変形基材44は、第1の実施形態のように光導波路3の形成時に配置されても、光導波路53の形成時に配置されてもよく、また基板2と別体に作製されて貼り付けられてもよい。
【0059】
この光結合構造1Cは、第1の実施形態と同様に、光導波路3の光軸に対して光導波路53の光軸を高さ方向に位置決めして基板2上に搭載する際、可変形基材44に荷重を高さ方向の下向きに負荷して高さが調整される。
【0060】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について、図8を参照して説明する。図8(a)は光導波路方向に沿って切断した断面図であり、図8(b)はA−A断面図である。
【0061】
図8に示すように、第5の実施形態の光結合構造1Dは、光導波路3の光軸に対する遮光板54の光軸の高さ方向の位置を調整するために、可変形基材45が、遮光板54と基板2との間に配置され、この可変形基材45に遮光板54が支持されている。
【0062】
この光結合構造1Dによれば、ピンホール541を有する遮光板54を備えることで、光導波路3から光導波路9へ進入する迷光を除去する効果がある。ここで、可変形基材45は、第1の実施形態のように光導波路3の形成時に配置されても、別途に作製されて貼り付けられてもよい。遮光板54の搭載方法については、第1の実施形態と同様に、遮光板54に荷重を下方に負荷して光導波路3の光軸に対する遮光板54のピンホール541の高さ方向の位置を調整して、固定材61で固定する。遮光板54は、導波路構造を有していないバルク型の光素子であるが、高さ調整をする用途であれば、導波路型素子を平面光導波路、光ファイバ、端面発光素子あるいは導波路型受光素子としてもよく、バルク型の光素子としては光アイソレータ、レンズ、光フィルタであってもよい。また、バルク型の光素子どうしの組み合わせであっても良い。
【0063】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について、図9を参照して説明する。
【0064】
図9に示すように、第6の実施形態の光結合構造1Eには、可変形台座41で高さ方向の位置の変形量を検出するための検出手段としてのモニター構造部が基板2の搭載面上に設けられている。このモニター構造部は、可変形台座41の高さと等しく形成された台座高さマーク部47と、この台座高さマーク部47上に光導波路3のコア層32の高さと等しく形成されたコア高さマーク部46とを有して構成されている。
【0065】
半導体プロセス時のウェハ面内方向のばらつきがあるため、ウェハから切り出す光結合構造ごとに上述のモニター構造部を設けることで、例えば触針方式や光学方式の段差計等の高さ測定器を用いて台座高さマーク部47およびコア高さマーク部46を検出することによって、可変形台座41の高さおよびコア層32の高さを検出することができる。コア層32の高さと可変形台座41の高さとの差に、設定値からのずれが生じている場合には、このずれ量をモニター構造部によって検出して、可変形台座41の荷重量を調整し、可変形台座41の変形量を調整する。なお、本実施形態における可変形台座41は、上述した実施形態における可変形基材として形成されてもよい。このようなモニター構造部によれば、台座高さマーク部47およびコア高さマーク部46の高さを検出することで、光導波路3の光軸に対して発光素子51の光軸を、更に高精度に調整することが可能となる。
【0066】
また、上述した光結合構造1Eにおける他の検出方法としては、可変形台座41の荷重量をいくつかの条件で変化させ、可変形台座41の高さを変えて発光素子を個々搭載し、荷重量に対する結合損の関係を求め、この関係に基づいて結合損が最小になるような荷重量を決定する方法が採られてもよい。
【0067】
なお、本発明に係る光モジュールは、例えば、地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータ等の通信装置内・通信装置間での光リンクに使用されて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態の光結合構造を示す模式図であって、(a)が発光素子を搭載する前の可変形台座付近の断面図を示し、(b)が発光素子を搭載して可変形台座が変形量Δhだけ変形した状態を示す断面図である。
【図2】可変形台座の高さの変形量と、荷重量との関係を示す図である。
【図3】第1の実施形態の光結合構造の製造工程の一例を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態の光結合構造の他の製造工程を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態の光結合構造を示す模式図であって、(a)が平面図、(b)がA−A断面図である。
【図6】第3の実施形態の光結合構造を示す模式図であって、(a)が光導波路方向に沿って切断した断面図、(b)がA−A断面図、(c)が変形例を示す断面図である。
【図7】第4の実施形態の光結合構造による模式図で光導波路方向に沿って切断した断面図である。
【図8】第5の実施形態の光結合構造を示す模式図であって、(a)が光導波路方向に沿って切断した断面図、(b)がA−A断面図である。
【図9】第6の実施形態の光結合構造を示す模式図であって、(a)が側面図、(b)が平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1、1A,1B,1C,1D,1E 光結合構造
2 基板
3 光導波路
31 上クラッド層
32 コア層
321 コア
33 下クラッド層
331 第1下クラッド層
332 第2下クラッド層
41 可変形台座
42、43、44、45 可変形基材
51 発光素子
52 光ファイバ
53 光導波路
6 固定材
7 エッチングマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子とを備える光結合構造であって、
前記光素子の少なくとも一方と前記基板との間に設けられて前記光素子を支持し、前記載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形部材と、
前記可変形部材に支持された前記光素子を前記基板に固定する固定部材とを備え、
前記可変形部材は、荷重による変形量が前記光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなることを特徴とする光結合構造。
【請求項2】
一組の前記光素子は導波路型素子である請求項1に記載の光結合構造。
【請求項3】
前記導波路型素子は、平面光導波路である請求項2に記載の光結合構造。
【請求項4】
前記導波路型素子は、一方が平面光導波路で、他方が光ファイバである請求項2に記載の光結合構造。
【請求項5】
前記導波路型素子は、一方が平面光導波路で、他方が受光素子または発光素子であり、
前記可変形部材は、前記基板および前記導波路型素子の少なくとも一方に固定されていない請求項2に記載の光結合構造。
【請求項6】
前記平面光導波路は、前記基板上に下クラッド層、コア層、上クラッド層の順に積層されて形成され、
前記可変形部材は、前記受光素子または発光素子を支持する可変形台座である請求項5に記載の光結合構造。
【請求項7】
前記可変形台座の高さは、荷重が負荷されていない状態で、前記下クラッド層の厚さと等しい請求項6に記載の光結合構造。
【請求項8】
前記可変形台座の高さは、荷重が負荷されていない状態で、前記下クラッド層の厚さよりも低い請求項6に記載の光結合構造。
【請求項9】
前記可変形台座は、前記受光素子または発光素子を支持する支持面から、該受光素子または発光素子の光軸までの高さと前記可変形台座の高さとの和が、前記下クラッド層の厚さと前記コア層の厚さの1/2との和よりも大きく形成されている請求項6ないし8のいずれか1項に記載の光結合構造。
【請求項10】
前記受光素子または発光素子は、複数のチャンネルを有するアレイ構造である請求項6ないし9のいずれか1項に記載の光結合構造。
【請求項11】
前記受光素子または発光素子の周囲には、シート状の前記可変形基材が配置されている請求項6ないし10のいずれか1項に記載の光結合構造。
【請求項12】
前記導波路型素子の少なくとも一方には、スポットサイズ変換手段が設けられている請求項2ないし11のいずれか1項に記載の光結合構造。
【請求項13】
一組の前記光素子は、一方が導波路型素子で、他方が導波路構造を有していないバルク型素子である請求項1に記載の光結合構造。
【請求項14】
前記導波路型素子は、平面光導波路、受光素子または発光素子、光ファイバのいずれかであり、前記バルク型素子は、ピンホールを有する遮光板、光アイソレータ、レンズのうちいずれかまたはそれらの組み合わせである請求項13に記載の光結合構造。
【請求項15】
前記可変形台座の高さと前記コア層の光軸の前記高さ方向の位置との位置ずれを検出する検出手段を備えている請求項6ないし14のいずれか1項に記載の光結合構造。
【請求項16】
前記可変形台座は、前記平面光導波路の下クラッド層からなる請求項3に記載の光結合構造。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の光結合構造を備え、光信号を入出力する光モジュール。
【請求項18】
基板と、該基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、前記光素子の少なくとも一方と前記基板との間に設けられて前記光素子を支持し、前記載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形部材と、前記可変形部材に支持された前記光素子を前記基板に固定する固定部材とを備え、前記可変形部材は、荷重による変形量が前記光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、
前記可変形部材を、該可変形部材の前記高さ方向に荷重を負荷して高さを変形させ、荷重量に応じて前記可変形部材の変形量を調整することによって、前記光素子の光軸の前記高さ方向の位置を調整し、前記固定部材で前記光素子を前記基板に固定する光結合構造の製造方法。
【請求項19】
前記荷重量と、前記一組の光素子間の結合損との関係から、該結合損が最小となるような前記荷重量を導き出し、該荷重量に基づいて前記可変形部材を変形させ、前記光素子の光軸の前記高さ方向の位置を調整する請求項18に記載の光結合構造の製造方法。
【請求項20】
基板と、該基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、前記光素子の少なくとも一方と前記基板との間に設けられて前記光素子を支持し、前記載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座と、前記可変形台座に支持された前記光素子を前記基板に固定する固定部材とを備え、前記可変形台座は、荷重による変形量が前記光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、
前記光素子の一方は、前記基板上に下クラッド層、コア層、上クラッド層の順に積層されてなる光導波路であり、前記光素子の他方は、受光素子または発光素子であり、
前記基板上に前記下クラッド層を形成する工程と、
前記下クラッド層上の、前記受光素子または発光素子を支持する支持領域にエッチングマスクを形成する工程と、
前記下クラッド層上の前記支持領域以外の部分に前記コア層を形成する工程と、
前記コア層をコアの形状に加工する工程と、
前記コア上に前記上クラッド層を形成する工程と、
前記支持領域をエッチングして前記受光素子または発光素子を支持する前記可変形台座を形成する工程とを有する光結合構造の製造方法。
【請求項21】
基板と、該基板の載置面上に配置されて互いに光学的に結合される一組の光素子と、前記光素子の少なくとも一方と前記基板との間に設けられて前記光素子を支持し、前記載置面に直交する高さ方向に負荷する荷重によって高さが変形する可変形台座と、前記光素子を前記基板に固定する固定部材とを備え、前記可変形台座は、荷重による変形量が前記光素子の変形量よりも大きく、荷重量に対応する変形量が一意的に定まる材料からなる光結合構造の製造方法であって、
前記光素子の一方は、前記基板上に第1下クラッド層、第2下クラッド層、コア層、上クラッド層の順に積層されてなる光導波路であり、前記光素子の他方は、受光素子または発光素子であり、
前記基板上に前記第1下クラッド層を形成する工程と、
前記第1下クラッド層上の、前記受光素子または発光素子を支持する支持領域にエッチングマスクを形成する工程と、
前記第1下クラッド層上に前記第2下クラッド層を形成する工程と、
前記第2下クラッド層上の前記支持領域以外の部分に前記コア層を形成する工程と、
前記コア層をコアの形状に加工する工程と、
前記コア上に前記上クラッド層を形成する工程と、
前記支持領域をエッチングして前記受光素子または発光素子を支持する前記可変形台座を形成する工程とを有する光結合構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−133011(P2007−133011A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323725(P2005−323725)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】