内燃機関の燃料噴射制御装置
【課題】燃料噴射量の学習制御を行う燃料噴射制御装置に対し、この学習制御の中止に伴って発生する燃焼音の増大を軽減する。
【解決手段】自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで、単発噴射による燃料噴射量学習制御を禁止する。これにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させることができ、高い燃料圧力で上記学習制御が行われていた場合であっても、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射が可能になる。その結果、燃焼音の増大を抑えることができる。
【解決手段】自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで、単発噴射による燃料噴射量学習制御を禁止する。これにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させることができ、高い燃料圧力で上記学習制御が行われていた場合であっても、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射が可能になる。その結果、燃焼音の増大を抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射量を適切に得るための学習制御が実行可能なディーゼルエンジン等の内燃機関における燃料噴射制御装置に係る。特に、本発明は、自動化マニュアルトランスミッション(自動制御式マニュアルトランスミッションとも呼ばれる)が接続された内燃機関における燃料噴射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、自動車用ディーゼルエンジン等の内燃機関では、燃焼騒音の低減やNOx排出量の削減を目的として、メイン噴射に先立って極少量の燃料を気筒内に向けて噴射するパイロット噴射が行われている。
【0003】
このようなパイロット噴射を実施するエンジンにおいて、そのパイロット噴射量の最適値はそのときのエンジンの運転状態によって異なる。一般に、このパイロット噴射量は、エンジンのシリンダ容量にもよるが概ね数mm3程度であり、エンジン回転数等に基づいて求められる目標パイロット噴射量でパイロット噴射が実行されるようになっている。具体的には、燃料噴射圧に応じて燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ場合もある)の開閉制御(開弁時間の制御)が行われるようになっている。
【0004】
ここで問題となるのが燃料噴射システムの個体差による燃料噴射量のばらつき(個体ばらつき)や経時的な燃料噴射量の変化である。すなわち、燃料噴射システムに使用されているインジェクタの個体差(噴射量のばらつき)および各センサの個体差(センサ出力のばらつき)や、経時的なインジェクタの特性の変化(インジェクタの劣化)は、マイクロコンピュータ等によって求められた目標パイロット噴射量と実際に噴射される実パイロット噴射量との間にずれを生じさせることになり、このようなずれが生じると適正なパイロット噴射量が得られないことになる。そして、実パイロット噴射量が目標パイロット噴射量から大幅にずれてしまう状況では、燃焼騒音の増大、PM(Paticulate Matter:微粒子)排出量の増大、エンジンの失火等を引き起こしてしまう可能性がある。
【0005】
このため、従来より、例えば下記の特許文献に開示されているようなパイロット噴射量の学習動作が行われている。この特許文献にはコモンレール式のディーゼルエンジンにおけるパイロット噴射量の学習動作が開示されている。
【0006】
上述した如く、パイロット噴射は、燃料噴射圧に応じてインジェクタの開弁時間を適宜設定して目標パイロット噴射量での燃料噴射が実行されるようにしている。そのため、エンジンの制御系に備えられたエンジンECUには、複数段階(例えば4段階)のコモンレール圧(例えば30MPa、60MPa、90MPa、120MPa)それぞれに対し、パイロット噴射量とインジェクタへの通電時間(開弁時間)との関係が気筒別(インジェクタ別)にそれぞれ記憶されたパイロット噴射量設定マップが格納されている。つまり、エンジン回転数等に応じて決定された目標パイロット噴射量が得られるように、パイロット噴射量設定マップに従い、コモンレール圧に応じたインジェクタへの通電時間が求められるようになっている。
【0007】
上記パイロット噴射量の学習動作は、上記パイロット噴射量設定マップ上の学習値を適宜補正していくことにより、上記燃料噴射システムの個体ばらつきや噴射量の経時変化が生じていても適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにするためのものである。
【0008】
この学習動作として具体的には、インジェクタへの指令噴射量が零となる無噴射時(例えば走行中にアクセル開度が「0」となったときなど)にパイロット噴射量と同等の極少量の燃料を特定の気筒(ピストンが上死点付近にある気筒)に向けて噴射し(以下、この燃料噴射を「単発噴射」と呼ぶ)、この単発噴射に伴うエンジン回転数の変化量など(エンジン運転状態の変化量)を認識する。そして、正確に所定量の単発噴射が実行された場合のエンジン運転状態の変化量データと、実際に単発噴射を行った場合のエンジン運転状態の変化量とを比較し、そのずれ量に応じて上記パイロット噴射量設定マップの学習値を補正していく。このような動作を上記パイロット噴射量設定マップ上の各コモンレール圧毎に且つ各気筒毎に実行していき、全ての気筒に対してコモンレール圧に関わりなく適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにしている。
【0009】
また、この学習動作中に、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行うなどして学習実行条件が解除された場合には学習動作を中止している。
【0010】
ところで、車両に搭載される変速機として、特許文献3に開示されているように、変速操作(ギヤ段の切り換え)をシフトアクチュエータ及びセレクトアクチュエータによって自動的に行う自動化マニュアルトランスミッション(AMTまたはMMTと呼ばれている)が知られている。このような自動化マニュアルトランスミッションとエンジン等の駆動源との接続には、アクチュエータによって係脱が切り換えられる自動クラッチが適用されている。
【0011】
そして、このような自動化マニュアルトランスミッションに接続されるエンジンにおいても上述した単発噴射による燃料噴射量の学習動作が行われる。この場合にも、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行い、それに伴って自動化マニュアルトランスミッションからのトルクアップ要求があった場合に、その時点で学習動作を中止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−139951号公報
【特許文献2】特開2007−187009号公報
【特許文献3】特開2008−151328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記自動化マニュアルトランスミッションが接続されたエンジンにおいて、上記学習制御による単発噴射を実行する際、コモンレール圧が比較的高い状況、つまり、学習燃料圧力を高く設定した場合の学習動作が行われている状況において、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行った場合には以下に述べるような不具合が生じてしまう。
【0014】
つまり、この運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に伴って自動化マニュアルトランスミッションからトルクアップ要求があった場合に、その要求に応えるべく、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されることになるため、たとえ学習動作を中止したとしても、未だコモンレール圧が比較的高い状況で燃料噴射が開始されてしまう。このため、混合気の燃焼が急速に起こり(単位時間当たりにおける熱発生量が多くなり)、比較的大きな燃焼音が発生してしまうことになる。上述した如くパイロット噴射量の学習制御は、アクセル開度「0」等のようなインジェクタへの指令噴射量が零となっている際に実行される場合が多いため、このような状況から比較的大きな燃焼音が発生する状況に移行してしまうと運転者等の乗員に違和感を与えてしまうことになる。
【0015】
上記自動化マニュアルトランスミッションにあっては、変速速度を高めて変速に要する時間の短縮化を図るために、アクセルペダルの踏み込み操作が行われた場合の燃料噴射量制御としては、なまし制御が行われず、アクセルペダルの踏み込み操作が行われて自動化マニュアルトランスミッションからトルクアップ要求があると、それと略同時に燃料噴射量が増量される。このため、上記燃焼音の課題は顕著である。尚、一般的な手動変速機(MT)の場合には、燃料噴射量のなまし制御が行われるため、上記学習動作の中止に伴ってコモンレール圧が低下していき、燃料噴射が開始される際には、比較的低いコモンレール圧となっているため、上記燃焼音が大きくなる不具合は比較的発生しにくいものとなっている。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料噴射量の学習制御を行う燃料噴射制御装置に対し、この学習制御の中止に伴って発生する燃焼音の増大を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止することにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させ、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射を可能にしている。
【0018】
−解決手段−
具体的に、本発明は、自動制御式マニュアルトランスミッションが接続された車両用内燃機関の特定の気筒内に燃料噴射弁から燃料噴射を行い、その燃料噴射に伴う内燃機関の運転状態の変化に基づいて目標燃料噴射量に対する実燃料噴射量の偏差を求めて実燃料噴射量を補正する燃料噴射量学習制御を実行するよう構成された燃料噴射制御装置を前提としている。この燃料噴射制御装置に対し、上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止する学習制御禁止手段を備えさせている。
【0019】
この場合、学習制御禁止手段は、燃料噴射量学習制御を禁止するのと略同時に、燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を低下させる燃圧低下制御を実行するようにしている。
【0020】
この特定事項により、上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生した場合、その変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料噴射量学習制御が禁止され、仮に燃料噴射量学習制御において燃料圧力が高く設定されていた場合には、その燃料圧力を早いタイミングから降下させることが可能になる。このため、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射が行われ、これによって、燃焼音を低く抑えることが可能になる。
【0021】
上記燃圧低下制御を実行する場合の具体的な手法としては、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時のトルク要求に応じた燃料噴射が開始されるタイミングにおいて、燃焼音が所定音量以下に低下するような燃料圧力まで低下させるようにしている。
【0022】
これにより、燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力を、燃焼音が所定音量以下となる値に設定することが可能になる。例えば、燃料噴射弁に燃料を供給するポンプの制御によって所定燃料圧まで圧力低下させるものや、燃料噴射弁への燃料供給経路の途中にリリーフバルブ等の調整弁を設けておき、その開度を調整することによって所定燃料圧まで圧力低下させるものなどが挙げられる。
【0023】
上記変速時の要求トルクが大きい場合の対策として以下のものが挙げられる。つまり、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時に要求される内燃機関のトルク値が所定の燃焼音限界トルク値を超えている場合には、自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時における燃料噴射量のなまし制御を実行する構成としている。
【0024】
これは、変速の応答性よりも燃焼音の抑制を優先した制御であって、これにより、変速時の要求トルクが大きい場合であっても燃焼音を低く抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで燃料噴射量学習制御を禁止することにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させ、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射を可能にしている。これにより、学習制御の中止に伴って燃焼音が増大してしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る車両のパワートレーンの概略構成を示す図である。
【図2】エンジンの燃料噴射システムの概略構成を示す図である。
【図3】自動クラッチの構成を示す断面図である。
【図4】自動化マニュアルトランスミッションの変速操作装置を示す図である。
【図5】シフト装置の斜視図である。
【図6】エンジンECUおよびトランスミッションECUを含む制御ブロックを示す図である。
【図7】変速制御に用いる変速マップを示す図である。
【図8】燃料噴射量学習制御時における燃料噴射制御の手順を示すフローチャート図である。
【図9】燃料噴射量学習禁止時における燃料圧力の変化を示す図である。
【図10】変形例に係る燃料噴射量学習制御時における燃料噴射制御の手順を示すフローチャート図である。
【図11】変形例におけるトランスミッションの要求トルクに対する燃料噴射量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、コモンレール式のディーゼルエンジン(内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る車両のパワートレーンの概略構成を示している。この図1に示すように、車両のパワートレーンは、エンジン1と、自動クラッチ2と、変速機3と、エンジンECU101と、トランスミッションECU102を備えている。これらエンジン1、自動クラッチ2、変速機3、及び、各ECU101,102について以下に説明する。
【0029】
−エンジン−
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11は、自動クラッチ2のフライホイール21(図3)に連結されている。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数Ne)はエンジン回転数センサ401によって検出される。
【0030】
エンジン1の吸気系には電子制御式のスロットルバルブ12が設けられており、スロットルモータ13の駆動により、必要に応じて吸入空気量を減少させることが可能となっている。このスロットルバルブ12の開度はスロットル開度センサ402によって検出される。
【0031】
次に、上記エンジン1の燃料噴射システムについて説明する。図2は本実施形態に係るエンジン1の燃料噴射システムを示す全体構成図である。この図2に示す燃料噴射システムは、高圧燃料を蓄える蓄圧容器としてのコモンレール110と、燃料タンク111からフィードポンプ112によって汲み上げられた燃料を加圧してコモンレール110に供給する高圧燃料ポンプ113と、コモンレール110より供給される高圧燃料をエンジン1の気筒内(燃焼室1a)に噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)114と、この燃料噴射システムを電子制御する上記エンジンECU101とを備えている。
【0032】
上記コモンレール110は、エンジンECU101により目標燃料圧力が設定され、高圧燃料ポンプ113から供給された高圧燃料を目標燃料圧力で蓄圧するようになっている。また、このコモンレール110には、蓄圧された燃料圧力(以下、レール圧と呼ぶ)を検出してエンジンECU101に出力する圧力センサ(燃料圧力検知手段)115と、レール圧を低下させる場合に開放されるリリーフバルブ116とが取り付けられている。
【0033】
上記高圧燃料ポンプ113は、エンジン1のクランクシャフト11からの駆動力を受けて回転するカム軸14の回転に同期してシリンダ113a内を往復運動するプランジャ113bと、フィードポンプ112からシリンダ113a内の加圧室113cに吸入される燃料量を調量する電磁調量弁117とを備えている。そして、この高圧燃料ポンプ113では、プランジャ113bがシリンダ113a内を上死点から下死点に向かって移動する際に、フィードポンプ112より送り出された燃料が電磁調量弁117で調量され、この燃料が吸入弁118を押し開いて加圧室113cに吸入される。その後、プランジャ113bがシリンダ113a内を下死点から上死点へ向かって移動する際に、プランジャ113bによって加圧室113cの燃料が加圧され、その加圧された燃料が、吐出弁119を押し開いてコモンレール110に圧送されるようになっている。上記電磁調量弁117は、エンジンECU101からの制御信号によって制御されて燃料供給経路の通路面積を可変とするものであり、この通路面積を変更することによって加圧室113cに導入される燃料量を調量して高圧燃料ポンプ113からの燃料の吐出圧を調節し、これによってレール圧を調節する構成となっている。具体的に、アクセル開度が「0」となるなどして燃料の無噴射時(フューエルカット時)には、電磁調量弁117は全閉となる一方、レール圧を昇圧する場合には電磁調量弁117の開度が大きく設定されるようになっている。
【0034】
上記インジェクタ114は、エンジン1の気筒毎に備えられ、それぞれ高圧配管120を介してコモンレール110に接続されている。このインジェクタ114は、エンジンECU101の指令に基づいて作動する電磁弁114aと、この電磁弁114aへの通電時に燃料を噴射するノズル114bとを備えている。電磁弁114aは、コモンレール110の高圧燃料が印加される圧力室から低圧側に通じる低圧通路を開閉するもので、通電時に低圧通路を開放し、通電停止時に低圧通路を遮断する。
【0035】
上記ノズル114bは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁114aへの通電により低圧通路が開放されて圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル114b内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール110より供給された高圧燃料を噴孔より気筒内に噴射する。一方、電磁弁114aへの通電停止により低圧通路が遮断されて、圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル114b内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する。
【0036】
エンジンECU101は、クランクシャフト11の回転に伴って発信されるパルス波に基づいてエンジン回転数を検出する上記エンジン回転数センサ401と、アクセル開度(エンジン負荷)を検出するアクセル開度センサ405、及び上記レール圧を検出する上記圧力センサ115等が接続され、これらのセンサ401,405,115で検出されたセンサ情報に基づいて、コモンレール110の目標レール圧と、エンジン1の運転状態に適した噴射時期及び噴射量等を演算し、その演算結果に従って、高圧燃料ポンプ113の電磁調量弁117及びインジェクタ114の電磁弁114aを電子制御するようになっている。
【0037】
また、エンジンECU101による燃料噴射制御では、膨張行程の開始時に実行されるメイン噴射に先立って極小量のパイロット噴射を実施するようになっており、このパイロット噴射量を適切に得るためのパイロット噴射量学習制御(以下、単に学習制御と呼ぶ)が実行されるようになっている。この学習制御の詳細については後述する。上述した如く、メイン噴射に先立って極小量のパイロット噴射を実施することにより、メイン噴射時の拡散燃焼を活発化させ、燃料を噴射してから着火するまでの着火遅れ時間の短縮化を図ることができ、その結果、燃焼騒音の低減やNOx排出量の削減が図れるようにしている。
【0038】
−自動クラッチ・変速機−
次に、上記自動クラッチ2の具体的な構成を図3を参照して説明する。
【0039】
本実施形態における自動クラッチ2は、乾式単板の摩擦クラッチ20(以下、単に「クラッチ20」という)及びクラッチ操作装置200を備えている。
【0040】
クラッチ20は、フライホイール21、クラッチディスク22、プレッシャプレート23、ダイヤフラムスプリング24、及び、クラッチカバー25などを備えている。
【0041】
フライホイール21はクランクシャフト11に取り付けられている。また、このフライホイール21には、クラッチカバー25が一体回転可能に取り付けられている。クラッチディスク22は、変速機3の入力軸31にスプライン嵌合によって固定されている。クラッチディスク22は、フライホイール21に対向配置されている。
【0042】
プレッシャプレート23は、クラッチディスク22とクラッチカバー25との間に配置されている。このプレッシャプレート23は、ダイヤフラムスプリング24の外周部によってフライホイール21側へ押し付けられている。このプレッシャプレート23の押し付けにより、クラッチディスク22とプレッシャプレート23との間、及び、フライホイール21とクラッチディスク22との間でそれぞれ摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、クラッチ20が接続(継合)された状態となり、フライホイール21、クラッチディスク22及びプレッシャプレート23が一体となって回転する。
【0043】
このようにして、クラッチ20が継合状態になると、エンジン1から変速機3に動力が伝達される。この動力伝達に伴ってエンジン1からクラッチ20を介して変速機3に伝達されるトルクは、「クラッチトルク」と呼ばれる。このクラッチトルクは、クラッチ20が切断された状態ではほぼ「0」であり、クラッチ20が徐々に継合されてクラッチディスク22の滑りが減少するにつれて増大し、最終的にクラッチ20が完全に継合された状態では、クランクシャフト11の回転トルクに一致する。
【0044】
クラッチ操作装置200は、レリーズベアリング201、レリーズフォーク202、油圧式のクラッチアクチュエータ203、及び、油圧回路204などを備えており、クラッチ20のプレッシャプレート23を軸方向変位させることによって、当該プレッシャプレート23とフライホイール21との間にクラッチディスク22を強く挟む状態もしくは引き離す状態に設定する。
【0045】
レリーズベアリング201は、変速機3の入力軸31に軸方向変位可能に嵌合されており、ダイヤフラムスプリング24の中央部分に当接している。
【0046】
レリーズフォーク202は、レリーズベアリング201をフライホイール21側に向けて移動させる部材である。クラッチアクチュエータ203は、シリンダ203aとピストンロッド203bとを有し、油圧によってピストンロッド203bを進退(前進・後退)させることにより、レリーズフォーク202が支点202aを中心として回動する。
【0047】
油圧回路204は、クラッチアクチュエータ203に供給する作動油の油圧を制御する回路である。油圧回路204には、励磁コイルへの通電により弁体を動作させるソレノイドバルブ等が設けられており、そのソレノイドバルブの励磁コイルへの通電または非通電を行うことによって、クラッチアクチュエータ203のピストンロッド203bが前進・後退する。
【0048】
そして、以上の自動クラッチ2のクラッチ操作装置200(油圧回路204)には上記トランスミッションECU102からのソレノイド制御信号(油圧指令値)が供給され、そのソレノイド制御信号に基づいてクラッチアクチュエータ203が駆動制御される。
【0049】
具体的には、図3に示す状態(クラッチ継合状態)から、クラッチアクチュエータ203が駆動されてピストンロッド203bが前進すると、レリーズフォーク202が回動(図3の時計周り方向に回動)され、これに伴ってレリーズベアリング201がフライホイール21側に向けて移動する。このようにしてレリーズベアリング201が移動することにより、ダイヤフラムスプリング24の中央部分つまりレリーズベアリング201に当接するダイヤフラムスプリング24の部分がフライホイール21側に向けて移動する(ダイヤフラムスプリング24が反転する)。これによって、ダイヤフラムスプリング24によるプレッシャプレート23の押し付け力が弱くなり、摩擦力が減少する結果、クラッチ20が切断された状態になる。
【0050】
一方、クラッチ切断状態から、クラッチアクチュエータ203のピストンロッド203bが後退すると、ダイヤフラムスプリング24の弾性力によってプレッシャプレート23がフライホイール21側に向けて押し付けられる。このプレッシャプレート23の押し付けにより、クラッチディスク22とプレッシャプレート23との間、及び、フライホイール21とクラッチディスク22との間でそれぞれ摩擦力が発生し、これら摩擦力によってクラッチ20が接続(継合)された状態になる。
【0051】
変速機3は、例えば前進6段、後進1段の平行歯車式変速機などの一般的なマニュアルトランスミッションと同様の構成を有している。変速機3の入力軸31は、上記したクラッチ20のクラッチディスク22に連結されている(図3参照)。また、図1に示すように、変速機3の出力軸32の回転は、ドライブシャフト4、ディファレンシャルギア5及び車軸6などを介して駆動輪7に伝達される。
【0052】
変速機3の入力軸31の回転数は、入力軸回転数センサ403によって検出される。また、変速機3の出力軸32の回転数は、出力軸回転数センサ404によって検出される。これら入力軸回転数センサ403及び出力軸回転数センサ404の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)に基づいて、現在のギヤ段を判定することができる。
【0053】
本実施形態における変速機3には、シフトフォーク及びセレクトアンドシフトシャフト等を有する変速操作装置300が設けられており、全体としてギヤ変速操作を自動的に行う自動化(自動制御式)マニュアルトランスミッション(AMT)を構成している。
【0054】
変速操作装置300には、図4(セレクトアンドシフトシャフトと一体的に設けられたガイドプレート上のゲート溝及びその周辺部を示す図)に示すように、セレクト方向の操作(セレクト操作)を行う油圧式のセレクトアクチュエータ301、シフト方向の操作(シフト操作)を行う油圧式のシフトアクチュエータ302、及び、これらアクチュエータ301,302に供給する作動油の油圧を制御する油圧回路303などを備えている。
【0055】
変速操作装置300には、ギア段を規定するシフト位置を有する複数のゲートがセレクト方向に沿って配列されている。具体的には、図4に示すように、1速(1st)と2速(2nd)とを規定する第1ゲート311、3速(3rd)と4速(4th)とを規定する第2ゲート312、及び、5速(5th)と6速(6th)とを規定する第3ゲート313、後退(Rev)を規定する第4ゲート314がセレクト方向に沿って配列されている。
【0056】
そして、これら第1ゲート311〜第4ゲート314のうち、いずれか1つのゲート(例えば第1ゲート311)を、セレクトアクチュエータ301の駆動によって選択した状態で、シフトアクチュエータ302を駆動することによって、ギヤ段の切り換え(例えばニュートラル(N)→1速(1st))を行うことができる。
【0057】
油圧回路303には、励磁コイルへの通電により弁体を動作させるソレノイドバルブ等が設けられており、そのソレノイドバルブの励磁コイルへの通電または非通電を行うことによって、セレクトアクチュエータ301及びシフトアクチュエータ302の各アクチュエータへの油圧の供給または油圧の解放を制御する。
【0058】
そして、以上の変速操作装置300の油圧回路303にはトランスミッションECU102からのソレノイド制御信号(油圧指令値)が供給され、そのソレノイド制御信号に基づいてセレクトアクチュエータ301及びシフトアクチュエータ302がそれぞれ個別に駆動制御され、変速機3のセレクト操作及びシフト操作が自動的に実行される。
【0059】
一方、車両の運転席の近傍にはシフト装置9が配置されている。図5に示すように、シフト装置9には、シフトレバー9aが変位可能に設けられている。また、シフト装置9には、リバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、ドライブ(D)位置及び、シーケンシャル(S)位置が設定されており、運転者が所望の変速位置へシフトレバー9aを変位させることが可能となっている。これらリバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、ドライブ(D)位置、シーケンシャル(S)位置(下記の「+」位置及び「−」位置も含む)の各変速位置は、シフトポジションセンサ406(図1参照)によって検出される。
【0060】
以下、それら変速位置が選択される状況と、そのときの変速機3の動作態様について各変速位置(「N位置」、「R位置」、「D位置」、「S位置」)ごとに説明する。
【0061】
「N位置」は、変速機3の入力軸31と出力軸32との連結を切断する際に選択される位置であり、シフトレバー9aが「N位置」に操作されると、変速機3の入力側ギヤ群33と出力側ギヤ群34とのギヤ対が噛み合わない状態となり、各変速ギア列での動力伝達が切断される。
【0062】
「R位置」は、車両を後退させる際に選択される位置であり、シフトレバー9aがこの「R位置」に操作されると、変速機3は後進ギヤ段に切り換えられる。
【0063】
「D位置」は、車両を前進させる際に選択される位置であり、シフトレバー9aがこの「D位置」に操作されると、車両の運転状態などに応じて、変速機3の複数の前進ギヤ段(前進6速)が自動的に変速制御される。つまり、オートマチックモードでの変速動作が行われる。
【0064】
「S位置」は、複数の前進ギヤ段(前進6速)の変速動作を運転者が手動によって行う際に選択される位置であって、このS位置の前後に「−」位置及び「+」位置が設けられている。「+」位置は、シフトアップのときにシフトレバー9aが操作される位置であり、「−」位置は、シフトダウンのときにシフトレバー9aが操作される位置である。
【0065】
そして、シフトレバー9aがS位置にあるときに、シフトレバー9aがS位置を中立位置として「+」位置または「−」位置に操作されると、変速機3の前進ギヤ段がアップまたはダウンされる。具体的には、「+」位置への1回操作ごとにギヤ段が1段ずつアップ(例えば1st→2nd→・・→6th)される。一方、「−」位置への1回操作ごとにギヤ段が1段ずつダウン(例えば6th→4th→・・1st)される。
【0066】
なお、以上のシフトレバー9aに加えて、シフトアップ用パドルスイッチ(「+」位置への操作スイッチ)と、シフトダウン用パドルスイッチ(「−」位置への操作スイッチ)とを、ハンドルまたはステアリングコラム等に設けておき、シフトレバー9aがS位置に操作されているときに、シフトアップ用パドルスイッチを1回操作するごとにギヤ段を1段ずつアップし、シフトダウン用パドルスイッチを1回操作するごとにギヤ段を1段ずつダウンするという構成を付加しておいてもよい。また、上記シフトレバー9aを備えさせず、パドルスイッチのみによって手動変速操作が行われる構成としてもよい。この場合、インストルメントパネル上やコンソールパネル上に「オートマチックモード」を選択するためのオートマチックモードスイッチや、「後退(リバース)」を選択するためのリバーススイッチが設けられる。また、必要に応じて、「ニュートラル」を選択するためのニュートラルスイッチが設けられる場合もある。
【0067】
−エンジンECU、トランスミッションECU−
エンジンECU101は、走行状況に応じてエンジン1へ供給する混合気や燃焼タイミングを制御することによりエンジン1を駆動するものである。
【0068】
トランスミッションECU102は、変速操作装置300を制御することにより変速機3における適宜の変速段つまり動力伝達経路を成立させるものである。
【0069】
また、これらエンジンECU101とトランスミッションECU102とは、エンジン制御やトランスミッション制御に必要な情報を互いに送受信(例えばCAN通信による送受信)が可能に接続されている。
【0070】
エンジンECU101およびトランスミッションECU102は、図示していないが、共に一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされており、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。
【0071】
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0072】
図6に示すように、エンジンECU101には、上記エンジン回転数センサ401、スロットル開度センサ402、吸入空気量を検出するエアフローメータ407などのエンジン1の運転状態を検出する各種センサが接続されており、その各センサの信号が入力される。また、このエンジンECU101は、スロットルモータ13、インジェクタ114の燃料噴射量や燃料噴射タイミングなどのエンジン1の各部を制御する。
【0073】
トランスミッションECU102には、上記入力軸回転数センサ403、出力軸回転数センサ404、アクセル開度センサ405、シフトポジションセンサ406、駆動輪7の速度(車輪速度)を検出する車輪速センサ408などが接続されている。
【0074】
また、このトランスミッションECU102は、上記変速操作装置300にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて変速操作装置300の油圧回路303に備えられているリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速段(第1変速段〜第6変速段、後退変速段など)を達成するように、上記各アクチュエータ301,302を制御する。
【0075】
−変速マップ−
上記「オートマチックモード」における変速機3の変速制御は、例えば図7に示すような変速マップ(変速条件)に従って行われる。この変速マップは、車速Vおよびアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速Vおよびアクセル開度θTHに応じて、適正な変速段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、上記トランスミッションECU102のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(変速段の切り換えライン)によって区画されている。尚、図7に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップおよびシフトダウンの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
【0076】
シフトレバー9aが「ドライブ(D)位置」に操作されている「オートマチックモード」での動作について説明する。
【0077】
トランスミッションECU102は、上記出力軸回転数センサ404の出力信号から車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ405の出力信号からアクセル開度θTHを算出し、それら車速Vおよびアクセル開度θTHに基づいて図7の変速マップを参照して目標変速段を算出する。さらに、上記入力軸回転数センサ403および出力軸回転数センサ404の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)を求めて現在変速段を判定し、その現在変速段と目標変速段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0078】
その判定結果により、変速の必要がない場合(現在変速段と目標変速段とが同じで、変速段が適切に設定されている場合)には、現在変速段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機3の変速操作装置300に出力する。
【0079】
一方、現在変速段と目標変速段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、変速機3の変速段が「4速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図7に示す点Aから点Bに変化した場合、シフトアップ変速線[4→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機操作装置300に出力して、4速の変速段から5速の変速段への変速(4→5アップ変速)を行う。
【0080】
また、例えば、変速機3の変速段が「6速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図7に示す点Cから点Dに変化した場合、シフトダウン変速線[6→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機操作装置300に出力して、6速の変速段から5速の変速段への変速(6→5ダウン変速)を行う。
【0081】
−微小燃料噴射量学習制御−
次に、微小燃料噴射量学習制御(微小噴射制御または微小Q制御とも呼ばれる)の概略について説明する。この微小燃料噴射量学習制御は、例えばインジェクタ114の経時的な燃料噴射量の変化(噴射特性の変化)に応じた学習値を取得するための制御である。つまり、目標とする微小燃料噴射量(微小燃料噴射量の指示値:目標燃料噴射量)と実際の微小燃料噴射量(実燃料噴射量)との間にずれを生じさせることのない学習値を取得するための制御である。
【0082】
具体的に、微小燃料噴射量学習制御としては、自動車の走行中であってエンジン無負荷時に行われる。具体的には、インジェクタ114への指令噴射量が零となる無噴射時(例えば走行中にアクセル開度が「0」となったときなど)にパイロット噴射量と同等の極少量の燃料を特定の気筒(ピストンが上死点付近にある気筒)に向けて単発噴射を実行し、この単発噴射に伴うエンジン回転数の変化量など(エンジン運転状態の変化量)を認識する。そして、正確に所定量の単発噴射が実行された場合のエンジン運転状態の変化量データと、実際に単発噴射を行った場合のエンジン運転状態の変化量とを比較し、そのずれ量に応じて上記パイロット噴射量設定マップの学習値を補正していく。このような動作を上記パイロット噴射量設定マップ上の各コモンレール圧毎に且つ各気筒毎に実行していき、全ての気筒に対してコモンレール圧に関わりなく適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにしている。
【0083】
ところが、上記学習制御において単発噴射を実行する際、コモンレール圧が比較的高い状況、つまり、学習燃料圧力が高く設定された場合の学習動作が行われている状況において、従来では、運転者がアクセルペダル8の踏み込み操作を行うなどしてトランスミッションECU102からトルクアップ要求があった場合には、その要求に応えるべく、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されることになるため、たとえ学習動作を中止したとしても、未だコモンレール圧が比較的高い状況で燃料噴射が開始されてしまうことになっていた。このため、その混合気の燃焼が急速に起こり、比較的大きな燃焼音が発生してしまうことになっていた。本実施形態は、このような不具合を解消するために以下のような燃料噴射制御を実施している。以下、図8のフローチャートに沿って具体的に説明する。この図8に示すルーチンは、上記微小燃料噴射量学習制御中において、所定時間毎、または、クランクシャフト11の所定角度回転毎に実行される。
【0084】
先ず、ステップST1において、トランスミッションECU102から変速時トルク制御開始情報を取得する。この変速時トルク制御開始情報としては、上述した如く車両の走行状態が変化して、シフトダウン変速線やシフトアップ変速線を跨ぐ状態となった場合に例えば「ON」信号がトランスミッションECU102から出力され、変速線を跨ぐような走行状態の変化がない場合には例えば「OFF」信号がトランスミッションECU102から出力されることになる。
【0085】
その後、ステップST2に移り、上記変速時トルク制御開始情報は、変速時トルク制御を開始する情報(上記「ON」信号)であるか否かを判定する。
【0086】
ここで、変速時トルク制御開始情報が「OFF」信号であった場合には、変速要求は生じていないとして本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
一方、変速時トルク制御開始情報が「ON」信号であった場合には、変速要求が生じており、つまり、車両の走行状態が変速線を跨ぐ状態に変化したとして、ステップST3において上記学習制御(インジェクタ微小噴射量学習制御)を禁止する(学習制御禁止手段による燃料噴射量学習制御の禁止)。これにより、仮に学習制御において目標コモンレール圧が高く設定されていた場合には、この学習制御の禁止に伴ってコモンレール圧は低下していく。例えば、上記電磁調量弁117を全閉にするなどして高圧燃料ポンプ113からの燃料供給を停止したり、または、上記リリーフバルブ116を開放することで、コモンレール110内の燃料を燃料タンク111に回収する(本発明でいう燃圧低下制御)。
【0088】
また、この場合のコモンレール110内の圧力減量速度としては、ステップST4によって、変速時学習制御禁止状態専用の圧力減量速度マップに切り替えられる。上記エンジンECU101のROMには、エンジン回転数等をパラメータとしてコモンレール110内の圧力減量速度を決定する圧力減量速度マップが通常時と変速時学習制御禁止状態時の2つ格納されており、この圧力減量速度マップに従って求められた圧力減量速度が得られるように、上記電磁調量弁117の開度調整や上記リリーフバルブ116の開度調整を行うようにしている。このステップST4では、この圧力減量速度マップを変速時学習制御禁止状態時のマップに切り替える。例えば、エンジン回転数が高いほどリリーフバルブ116の開度を大きく設定して圧力減量速度を高くするといったような動作が行われる。この圧力減量速度の設定動作はこれに限定されるものではない。
【0089】
これにより、車両の走行状態が変速線を跨ぐ状態に変化した時点であって未だトランスミッションECU102からのトルクアップ要求信号が発進される前段階からコモンレール110の内圧を降下させる動作が開始されることになる。つまり、上記学習制御中におけるコモンレール圧が比較的高い状況であったとしても、上記トランスミッションECU102のトルクアップ要求に応じて燃料噴射量の増量を開始するタイミングではコモンレール圧が十分に低下していることになる。このため、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されてしまって混合気の燃焼が急速に起こり大きな燃焼音が発生してしまうといった状況を招くことが回避される。
【0090】
特に、上記ステップST4のように、圧力減量速度を調整可能としておき、コモンレール圧を急速に降下させることが可能な構成としておけば、変速時間が比較的短く設定されている変速機3であっても、コモンレール圧を十分に低下させた状態でトランスミッションECU102のトルクアップ要求に応じた燃料噴射が開始されることになるので、燃焼音の抑制効果を確実に得ることができる。
【0091】
図9は、上述した如く学習制御中におけるコモンレール圧が比較的高い状況で学習制御が禁止された場合の燃料圧力(コモンレール圧)の変化を示す図である。図中の二点鎖線は従来の燃料圧力の変化を示している。つまり、トランスミッションECUからのトルクアップ要求に応じて学習制御を禁止する場合である。これに対し、図中の実線は、例えば電磁調量弁117の開度調整によってコモンレール110の内圧を降下させる場合の燃料圧力の変化を示している。この場合、トランスミッションECUからのトルクアップ要求がなされてインジェクタ114からの燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力は図中のP1であり、十分に圧力が降下している。更に、図中の破線で示す曲線は、例えばリリーフバルブ116の開度を大きく設定して圧力減量速度を高く設定した場合の燃料圧力の変化を示している。この場合、トランスミッションECUからのトルクアップ要求がなされてインジェクタ114からの燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力は図中のP2であり、よりいっそ圧力が降下している。
【0092】
以上のように、本実施形態によれば、従来のものに比べて、学習制御の禁止に伴ってコモンレール110の内圧を急速に降下させることができ、燃焼音の抑制効果を良好に得ることができる。
【0093】
(変形例)
次に、本発明の変形例について説明する。本変形例は、上記トランスミッションECU102の要求トルクが比較的高い場合の対策である。以下、図10のフローチャートに沿って具体的に説明する。この図10に示すルーチンも、上記微小燃料噴射量学習制御中において、所定時間毎、または、クランクシャフト11の所定角度回転毎に実行される。また、この図10に示すフローチャートにおけるステップST1〜ステップST4の動作は、上述した実施形態において図8で示したステップST1〜ステップST4の動作と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0094】
上記ステップST3及びステップST4の学習制御禁止時の動作が行われた後、ステップST5に移る。このステップST5では、この学習制御禁止動作が実行中であるか否かを判定する。つまり、微小燃料噴射量学習制御中に変速時トルク制御が開始され、本来学習制御実行中にも拘わらず禁止されているか否かを判定する。この判定がNOである場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
一方、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST6に移り、上記トランスミッションECU102が要求しているトルクと、予め設定されている燃焼音限界トルクとを比較する。ここで、燃焼音限界トルクとは、比較的大きな燃焼音が発生するような燃料噴射量によって得られるトルクに相当する。つまり、この燃焼音限界トルクを超えるトルクが得られるような燃料噴射量に設定した場合には、燃焼音が大きくなりすぎてしまうことになる。この燃焼音限界トルクの値は、予め実験やシミュレーションによって求められ、例えば上記エンジンECU101のROMに記憶されている。
【0096】
そして、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルク以下である場合には、ステップST6でNO判定され、本ルーチンを終了する。
【0097】
一方、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルクを超えている場合には、ステップST6でYES判定され、ステップST7に移る。このステップST7では、燃料噴射量のなまし制御が行われる。つまり、運転者のアクセル操作量に対する燃料噴射量のなまし制御と同様の噴射量なまし制御を行い、急激なトルク上昇を抑制して燃焼音の増大を抑えるといった制御を実行する。
【0098】
図11は、このような燃料噴射量のなまし制御が行われる場合の要求トルクに対する燃料噴射量の変化を示す図である。実線が、なまし制御が行われた場合の燃料噴射量の変化であり、二点鎖線が、なまし制御が行われない場合の燃料噴射量の変化である。つまり、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルク以下である場合(上記ステップST6でNO判定された場合)には、二点鎖線で示すように燃料噴射量が変化され、変速の応答性を高める制御が行われる。一方、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルクを超えている場合(上記ステップST6でYES判定された場合)には、実線で示すように燃料噴射量が変化され、変速の応答性をある程度犠牲にして燃焼音の増大を抑えるといった制御が行われることになる。この場合、燃料噴射量の増量初期時の単位時間当たりにおける燃料噴射増量分は、なまし制御が行われない場合と同様にして急速な燃料噴射増量を行い、この燃料噴射増量が所定値(図11におけるQ1)を超えた時点から、単位時間当たりにおける燃料噴射増量分を少なくしていき、なまし制御が行われるようにしている。これにより、燃焼音の増大を抑えながらも、比較的速い変速動作を可能にしている。
【0099】
−他の実施形態−
以上説明した実施形態及び変形例では、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に搭載され前進6段変速の変速機3に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両等、その他の形態の車両に搭載された変速機にも適用可能である。また、上記段数の異なる変速機(例えば前進5段変速のもの)に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、自動化マニュアルトランスミッションが接続され且つ単発噴射を行うことで噴射量学習制御を行うディーゼルエンジンの燃料噴射制御に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 エンジン(内燃機関)
3 変速機(自動制御式マニュアルトランスミッション)
102 トランスミッションECU
114 インジェクタ(燃料噴射弁)
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射量を適切に得るための学習制御が実行可能なディーゼルエンジン等の内燃機関における燃料噴射制御装置に係る。特に、本発明は、自動化マニュアルトランスミッション(自動制御式マニュアルトランスミッションとも呼ばれる)が接続された内燃機関における燃料噴射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、自動車用ディーゼルエンジン等の内燃機関では、燃焼騒音の低減やNOx排出量の削減を目的として、メイン噴射に先立って極少量の燃料を気筒内に向けて噴射するパイロット噴射が行われている。
【0003】
このようなパイロット噴射を実施するエンジンにおいて、そのパイロット噴射量の最適値はそのときのエンジンの運転状態によって異なる。一般に、このパイロット噴射量は、エンジンのシリンダ容量にもよるが概ね数mm3程度であり、エンジン回転数等に基づいて求められる目標パイロット噴射量でパイロット噴射が実行されるようになっている。具体的には、燃料噴射圧に応じて燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ場合もある)の開閉制御(開弁時間の制御)が行われるようになっている。
【0004】
ここで問題となるのが燃料噴射システムの個体差による燃料噴射量のばらつき(個体ばらつき)や経時的な燃料噴射量の変化である。すなわち、燃料噴射システムに使用されているインジェクタの個体差(噴射量のばらつき)および各センサの個体差(センサ出力のばらつき)や、経時的なインジェクタの特性の変化(インジェクタの劣化)は、マイクロコンピュータ等によって求められた目標パイロット噴射量と実際に噴射される実パイロット噴射量との間にずれを生じさせることになり、このようなずれが生じると適正なパイロット噴射量が得られないことになる。そして、実パイロット噴射量が目標パイロット噴射量から大幅にずれてしまう状況では、燃焼騒音の増大、PM(Paticulate Matter:微粒子)排出量の増大、エンジンの失火等を引き起こしてしまう可能性がある。
【0005】
このため、従来より、例えば下記の特許文献に開示されているようなパイロット噴射量の学習動作が行われている。この特許文献にはコモンレール式のディーゼルエンジンにおけるパイロット噴射量の学習動作が開示されている。
【0006】
上述した如く、パイロット噴射は、燃料噴射圧に応じてインジェクタの開弁時間を適宜設定して目標パイロット噴射量での燃料噴射が実行されるようにしている。そのため、エンジンの制御系に備えられたエンジンECUには、複数段階(例えば4段階)のコモンレール圧(例えば30MPa、60MPa、90MPa、120MPa)それぞれに対し、パイロット噴射量とインジェクタへの通電時間(開弁時間)との関係が気筒別(インジェクタ別)にそれぞれ記憶されたパイロット噴射量設定マップが格納されている。つまり、エンジン回転数等に応じて決定された目標パイロット噴射量が得られるように、パイロット噴射量設定マップに従い、コモンレール圧に応じたインジェクタへの通電時間が求められるようになっている。
【0007】
上記パイロット噴射量の学習動作は、上記パイロット噴射量設定マップ上の学習値を適宜補正していくことにより、上記燃料噴射システムの個体ばらつきや噴射量の経時変化が生じていても適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにするためのものである。
【0008】
この学習動作として具体的には、インジェクタへの指令噴射量が零となる無噴射時(例えば走行中にアクセル開度が「0」となったときなど)にパイロット噴射量と同等の極少量の燃料を特定の気筒(ピストンが上死点付近にある気筒)に向けて噴射し(以下、この燃料噴射を「単発噴射」と呼ぶ)、この単発噴射に伴うエンジン回転数の変化量など(エンジン運転状態の変化量)を認識する。そして、正確に所定量の単発噴射が実行された場合のエンジン運転状態の変化量データと、実際に単発噴射を行った場合のエンジン運転状態の変化量とを比較し、そのずれ量に応じて上記パイロット噴射量設定マップの学習値を補正していく。このような動作を上記パイロット噴射量設定マップ上の各コモンレール圧毎に且つ各気筒毎に実行していき、全ての気筒に対してコモンレール圧に関わりなく適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにしている。
【0009】
また、この学習動作中に、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行うなどして学習実行条件が解除された場合には学習動作を中止している。
【0010】
ところで、車両に搭載される変速機として、特許文献3に開示されているように、変速操作(ギヤ段の切り換え)をシフトアクチュエータ及びセレクトアクチュエータによって自動的に行う自動化マニュアルトランスミッション(AMTまたはMMTと呼ばれている)が知られている。このような自動化マニュアルトランスミッションとエンジン等の駆動源との接続には、アクチュエータによって係脱が切り換えられる自動クラッチが適用されている。
【0011】
そして、このような自動化マニュアルトランスミッションに接続されるエンジンにおいても上述した単発噴射による燃料噴射量の学習動作が行われる。この場合にも、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行い、それに伴って自動化マニュアルトランスミッションからのトルクアップ要求があった場合に、その時点で学習動作を中止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−139951号公報
【特許文献2】特開2007−187009号公報
【特許文献3】特開2008−151328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記自動化マニュアルトランスミッションが接続されたエンジンにおいて、上記学習制御による単発噴射を実行する際、コモンレール圧が比較的高い状況、つまり、学習燃料圧力を高く設定した場合の学習動作が行われている状況において、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行った場合には以下に述べるような不具合が生じてしまう。
【0014】
つまり、この運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に伴って自動化マニュアルトランスミッションからトルクアップ要求があった場合に、その要求に応えるべく、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されることになるため、たとえ学習動作を中止したとしても、未だコモンレール圧が比較的高い状況で燃料噴射が開始されてしまう。このため、混合気の燃焼が急速に起こり(単位時間当たりにおける熱発生量が多くなり)、比較的大きな燃焼音が発生してしまうことになる。上述した如くパイロット噴射量の学習制御は、アクセル開度「0」等のようなインジェクタへの指令噴射量が零となっている際に実行される場合が多いため、このような状況から比較的大きな燃焼音が発生する状況に移行してしまうと運転者等の乗員に違和感を与えてしまうことになる。
【0015】
上記自動化マニュアルトランスミッションにあっては、変速速度を高めて変速に要する時間の短縮化を図るために、アクセルペダルの踏み込み操作が行われた場合の燃料噴射量制御としては、なまし制御が行われず、アクセルペダルの踏み込み操作が行われて自動化マニュアルトランスミッションからトルクアップ要求があると、それと略同時に燃料噴射量が増量される。このため、上記燃焼音の課題は顕著である。尚、一般的な手動変速機(MT)の場合には、燃料噴射量のなまし制御が行われるため、上記学習動作の中止に伴ってコモンレール圧が低下していき、燃料噴射が開始される際には、比較的低いコモンレール圧となっているため、上記燃焼音が大きくなる不具合は比較的発生しにくいものとなっている。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料噴射量の学習制御を行う燃料噴射制御装置に対し、この学習制御の中止に伴って発生する燃焼音の増大を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止することにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させ、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射を可能にしている。
【0018】
−解決手段−
具体的に、本発明は、自動制御式マニュアルトランスミッションが接続された車両用内燃機関の特定の気筒内に燃料噴射弁から燃料噴射を行い、その燃料噴射に伴う内燃機関の運転状態の変化に基づいて目標燃料噴射量に対する実燃料噴射量の偏差を求めて実燃料噴射量を補正する燃料噴射量学習制御を実行するよう構成された燃料噴射制御装置を前提としている。この燃料噴射制御装置に対し、上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止する学習制御禁止手段を備えさせている。
【0019】
この場合、学習制御禁止手段は、燃料噴射量学習制御を禁止するのと略同時に、燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を低下させる燃圧低下制御を実行するようにしている。
【0020】
この特定事項により、上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生した場合、その変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料噴射量学習制御が禁止され、仮に燃料噴射量学習制御において燃料圧力が高く設定されていた場合には、その燃料圧力を早いタイミングから降下させることが可能になる。このため、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射が行われ、これによって、燃焼音を低く抑えることが可能になる。
【0021】
上記燃圧低下制御を実行する場合の具体的な手法としては、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時のトルク要求に応じた燃料噴射が開始されるタイミングにおいて、燃焼音が所定音量以下に低下するような燃料圧力まで低下させるようにしている。
【0022】
これにより、燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力を、燃焼音が所定音量以下となる値に設定することが可能になる。例えば、燃料噴射弁に燃料を供給するポンプの制御によって所定燃料圧まで圧力低下させるものや、燃料噴射弁への燃料供給経路の途中にリリーフバルブ等の調整弁を設けておき、その開度を調整することによって所定燃料圧まで圧力低下させるものなどが挙げられる。
【0023】
上記変速時の要求トルクが大きい場合の対策として以下のものが挙げられる。つまり、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時に要求される内燃機関のトルク値が所定の燃焼音限界トルク値を超えている場合には、自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時における燃料噴射量のなまし制御を実行する構成としている。
【0024】
これは、変速の応答性よりも燃焼音の抑制を優先した制御であって、これにより、変速時の要求トルクが大きい場合であっても燃焼音を低く抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、自動化マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで燃料噴射量学習制御を禁止することにより、変速動作に伴うトルクアップ要求よりも早いタイミングで燃料圧力の低下動作を開始させ、上記トルクアップ要求に応じた燃料噴射時にあっては、比較的低い燃料圧力での燃料噴射を可能にしている。これにより、学習制御の中止に伴って燃焼音が増大してしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る車両のパワートレーンの概略構成を示す図である。
【図2】エンジンの燃料噴射システムの概略構成を示す図である。
【図3】自動クラッチの構成を示す断面図である。
【図4】自動化マニュアルトランスミッションの変速操作装置を示す図である。
【図5】シフト装置の斜視図である。
【図6】エンジンECUおよびトランスミッションECUを含む制御ブロックを示す図である。
【図7】変速制御に用いる変速マップを示す図である。
【図8】燃料噴射量学習制御時における燃料噴射制御の手順を示すフローチャート図である。
【図9】燃料噴射量学習禁止時における燃料圧力の変化を示す図である。
【図10】変形例に係る燃料噴射量学習制御時における燃料噴射制御の手順を示すフローチャート図である。
【図11】変形例におけるトランスミッションの要求トルクに対する燃料噴射量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、コモンレール式のディーゼルエンジン(内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る車両のパワートレーンの概略構成を示している。この図1に示すように、車両のパワートレーンは、エンジン1と、自動クラッチ2と、変速機3と、エンジンECU101と、トランスミッションECU102を備えている。これらエンジン1、自動クラッチ2、変速機3、及び、各ECU101,102について以下に説明する。
【0029】
−エンジン−
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11は、自動クラッチ2のフライホイール21(図3)に連結されている。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数Ne)はエンジン回転数センサ401によって検出される。
【0030】
エンジン1の吸気系には電子制御式のスロットルバルブ12が設けられており、スロットルモータ13の駆動により、必要に応じて吸入空気量を減少させることが可能となっている。このスロットルバルブ12の開度はスロットル開度センサ402によって検出される。
【0031】
次に、上記エンジン1の燃料噴射システムについて説明する。図2は本実施形態に係るエンジン1の燃料噴射システムを示す全体構成図である。この図2に示す燃料噴射システムは、高圧燃料を蓄える蓄圧容器としてのコモンレール110と、燃料タンク111からフィードポンプ112によって汲み上げられた燃料を加圧してコモンレール110に供給する高圧燃料ポンプ113と、コモンレール110より供給される高圧燃料をエンジン1の気筒内(燃焼室1a)に噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)114と、この燃料噴射システムを電子制御する上記エンジンECU101とを備えている。
【0032】
上記コモンレール110は、エンジンECU101により目標燃料圧力が設定され、高圧燃料ポンプ113から供給された高圧燃料を目標燃料圧力で蓄圧するようになっている。また、このコモンレール110には、蓄圧された燃料圧力(以下、レール圧と呼ぶ)を検出してエンジンECU101に出力する圧力センサ(燃料圧力検知手段)115と、レール圧を低下させる場合に開放されるリリーフバルブ116とが取り付けられている。
【0033】
上記高圧燃料ポンプ113は、エンジン1のクランクシャフト11からの駆動力を受けて回転するカム軸14の回転に同期してシリンダ113a内を往復運動するプランジャ113bと、フィードポンプ112からシリンダ113a内の加圧室113cに吸入される燃料量を調量する電磁調量弁117とを備えている。そして、この高圧燃料ポンプ113では、プランジャ113bがシリンダ113a内を上死点から下死点に向かって移動する際に、フィードポンプ112より送り出された燃料が電磁調量弁117で調量され、この燃料が吸入弁118を押し開いて加圧室113cに吸入される。その後、プランジャ113bがシリンダ113a内を下死点から上死点へ向かって移動する際に、プランジャ113bによって加圧室113cの燃料が加圧され、その加圧された燃料が、吐出弁119を押し開いてコモンレール110に圧送されるようになっている。上記電磁調量弁117は、エンジンECU101からの制御信号によって制御されて燃料供給経路の通路面積を可変とするものであり、この通路面積を変更することによって加圧室113cに導入される燃料量を調量して高圧燃料ポンプ113からの燃料の吐出圧を調節し、これによってレール圧を調節する構成となっている。具体的に、アクセル開度が「0」となるなどして燃料の無噴射時(フューエルカット時)には、電磁調量弁117は全閉となる一方、レール圧を昇圧する場合には電磁調量弁117の開度が大きく設定されるようになっている。
【0034】
上記インジェクタ114は、エンジン1の気筒毎に備えられ、それぞれ高圧配管120を介してコモンレール110に接続されている。このインジェクタ114は、エンジンECU101の指令に基づいて作動する電磁弁114aと、この電磁弁114aへの通電時に燃料を噴射するノズル114bとを備えている。電磁弁114aは、コモンレール110の高圧燃料が印加される圧力室から低圧側に通じる低圧通路を開閉するもので、通電時に低圧通路を開放し、通電停止時に低圧通路を遮断する。
【0035】
上記ノズル114bは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁114aへの通電により低圧通路が開放されて圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル114b内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール110より供給された高圧燃料を噴孔より気筒内に噴射する。一方、電磁弁114aへの通電停止により低圧通路が遮断されて、圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル114b内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する。
【0036】
エンジンECU101は、クランクシャフト11の回転に伴って発信されるパルス波に基づいてエンジン回転数を検出する上記エンジン回転数センサ401と、アクセル開度(エンジン負荷)を検出するアクセル開度センサ405、及び上記レール圧を検出する上記圧力センサ115等が接続され、これらのセンサ401,405,115で検出されたセンサ情報に基づいて、コモンレール110の目標レール圧と、エンジン1の運転状態に適した噴射時期及び噴射量等を演算し、その演算結果に従って、高圧燃料ポンプ113の電磁調量弁117及びインジェクタ114の電磁弁114aを電子制御するようになっている。
【0037】
また、エンジンECU101による燃料噴射制御では、膨張行程の開始時に実行されるメイン噴射に先立って極小量のパイロット噴射を実施するようになっており、このパイロット噴射量を適切に得るためのパイロット噴射量学習制御(以下、単に学習制御と呼ぶ)が実行されるようになっている。この学習制御の詳細については後述する。上述した如く、メイン噴射に先立って極小量のパイロット噴射を実施することにより、メイン噴射時の拡散燃焼を活発化させ、燃料を噴射してから着火するまでの着火遅れ時間の短縮化を図ることができ、その結果、燃焼騒音の低減やNOx排出量の削減が図れるようにしている。
【0038】
−自動クラッチ・変速機−
次に、上記自動クラッチ2の具体的な構成を図3を参照して説明する。
【0039】
本実施形態における自動クラッチ2は、乾式単板の摩擦クラッチ20(以下、単に「クラッチ20」という)及びクラッチ操作装置200を備えている。
【0040】
クラッチ20は、フライホイール21、クラッチディスク22、プレッシャプレート23、ダイヤフラムスプリング24、及び、クラッチカバー25などを備えている。
【0041】
フライホイール21はクランクシャフト11に取り付けられている。また、このフライホイール21には、クラッチカバー25が一体回転可能に取り付けられている。クラッチディスク22は、変速機3の入力軸31にスプライン嵌合によって固定されている。クラッチディスク22は、フライホイール21に対向配置されている。
【0042】
プレッシャプレート23は、クラッチディスク22とクラッチカバー25との間に配置されている。このプレッシャプレート23は、ダイヤフラムスプリング24の外周部によってフライホイール21側へ押し付けられている。このプレッシャプレート23の押し付けにより、クラッチディスク22とプレッシャプレート23との間、及び、フライホイール21とクラッチディスク22との間でそれぞれ摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、クラッチ20が接続(継合)された状態となり、フライホイール21、クラッチディスク22及びプレッシャプレート23が一体となって回転する。
【0043】
このようにして、クラッチ20が継合状態になると、エンジン1から変速機3に動力が伝達される。この動力伝達に伴ってエンジン1からクラッチ20を介して変速機3に伝達されるトルクは、「クラッチトルク」と呼ばれる。このクラッチトルクは、クラッチ20が切断された状態ではほぼ「0」であり、クラッチ20が徐々に継合されてクラッチディスク22の滑りが減少するにつれて増大し、最終的にクラッチ20が完全に継合された状態では、クランクシャフト11の回転トルクに一致する。
【0044】
クラッチ操作装置200は、レリーズベアリング201、レリーズフォーク202、油圧式のクラッチアクチュエータ203、及び、油圧回路204などを備えており、クラッチ20のプレッシャプレート23を軸方向変位させることによって、当該プレッシャプレート23とフライホイール21との間にクラッチディスク22を強く挟む状態もしくは引き離す状態に設定する。
【0045】
レリーズベアリング201は、変速機3の入力軸31に軸方向変位可能に嵌合されており、ダイヤフラムスプリング24の中央部分に当接している。
【0046】
レリーズフォーク202は、レリーズベアリング201をフライホイール21側に向けて移動させる部材である。クラッチアクチュエータ203は、シリンダ203aとピストンロッド203bとを有し、油圧によってピストンロッド203bを進退(前進・後退)させることにより、レリーズフォーク202が支点202aを中心として回動する。
【0047】
油圧回路204は、クラッチアクチュエータ203に供給する作動油の油圧を制御する回路である。油圧回路204には、励磁コイルへの通電により弁体を動作させるソレノイドバルブ等が設けられており、そのソレノイドバルブの励磁コイルへの通電または非通電を行うことによって、クラッチアクチュエータ203のピストンロッド203bが前進・後退する。
【0048】
そして、以上の自動クラッチ2のクラッチ操作装置200(油圧回路204)には上記トランスミッションECU102からのソレノイド制御信号(油圧指令値)が供給され、そのソレノイド制御信号に基づいてクラッチアクチュエータ203が駆動制御される。
【0049】
具体的には、図3に示す状態(クラッチ継合状態)から、クラッチアクチュエータ203が駆動されてピストンロッド203bが前進すると、レリーズフォーク202が回動(図3の時計周り方向に回動)され、これに伴ってレリーズベアリング201がフライホイール21側に向けて移動する。このようにしてレリーズベアリング201が移動することにより、ダイヤフラムスプリング24の中央部分つまりレリーズベアリング201に当接するダイヤフラムスプリング24の部分がフライホイール21側に向けて移動する(ダイヤフラムスプリング24が反転する)。これによって、ダイヤフラムスプリング24によるプレッシャプレート23の押し付け力が弱くなり、摩擦力が減少する結果、クラッチ20が切断された状態になる。
【0050】
一方、クラッチ切断状態から、クラッチアクチュエータ203のピストンロッド203bが後退すると、ダイヤフラムスプリング24の弾性力によってプレッシャプレート23がフライホイール21側に向けて押し付けられる。このプレッシャプレート23の押し付けにより、クラッチディスク22とプレッシャプレート23との間、及び、フライホイール21とクラッチディスク22との間でそれぞれ摩擦力が発生し、これら摩擦力によってクラッチ20が接続(継合)された状態になる。
【0051】
変速機3は、例えば前進6段、後進1段の平行歯車式変速機などの一般的なマニュアルトランスミッションと同様の構成を有している。変速機3の入力軸31は、上記したクラッチ20のクラッチディスク22に連結されている(図3参照)。また、図1に示すように、変速機3の出力軸32の回転は、ドライブシャフト4、ディファレンシャルギア5及び車軸6などを介して駆動輪7に伝達される。
【0052】
変速機3の入力軸31の回転数は、入力軸回転数センサ403によって検出される。また、変速機3の出力軸32の回転数は、出力軸回転数センサ404によって検出される。これら入力軸回転数センサ403及び出力軸回転数センサ404の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)に基づいて、現在のギヤ段を判定することができる。
【0053】
本実施形態における変速機3には、シフトフォーク及びセレクトアンドシフトシャフト等を有する変速操作装置300が設けられており、全体としてギヤ変速操作を自動的に行う自動化(自動制御式)マニュアルトランスミッション(AMT)を構成している。
【0054】
変速操作装置300には、図4(セレクトアンドシフトシャフトと一体的に設けられたガイドプレート上のゲート溝及びその周辺部を示す図)に示すように、セレクト方向の操作(セレクト操作)を行う油圧式のセレクトアクチュエータ301、シフト方向の操作(シフト操作)を行う油圧式のシフトアクチュエータ302、及び、これらアクチュエータ301,302に供給する作動油の油圧を制御する油圧回路303などを備えている。
【0055】
変速操作装置300には、ギア段を規定するシフト位置を有する複数のゲートがセレクト方向に沿って配列されている。具体的には、図4に示すように、1速(1st)と2速(2nd)とを規定する第1ゲート311、3速(3rd)と4速(4th)とを規定する第2ゲート312、及び、5速(5th)と6速(6th)とを規定する第3ゲート313、後退(Rev)を規定する第4ゲート314がセレクト方向に沿って配列されている。
【0056】
そして、これら第1ゲート311〜第4ゲート314のうち、いずれか1つのゲート(例えば第1ゲート311)を、セレクトアクチュエータ301の駆動によって選択した状態で、シフトアクチュエータ302を駆動することによって、ギヤ段の切り換え(例えばニュートラル(N)→1速(1st))を行うことができる。
【0057】
油圧回路303には、励磁コイルへの通電により弁体を動作させるソレノイドバルブ等が設けられており、そのソレノイドバルブの励磁コイルへの通電または非通電を行うことによって、セレクトアクチュエータ301及びシフトアクチュエータ302の各アクチュエータへの油圧の供給または油圧の解放を制御する。
【0058】
そして、以上の変速操作装置300の油圧回路303にはトランスミッションECU102からのソレノイド制御信号(油圧指令値)が供給され、そのソレノイド制御信号に基づいてセレクトアクチュエータ301及びシフトアクチュエータ302がそれぞれ個別に駆動制御され、変速機3のセレクト操作及びシフト操作が自動的に実行される。
【0059】
一方、車両の運転席の近傍にはシフト装置9が配置されている。図5に示すように、シフト装置9には、シフトレバー9aが変位可能に設けられている。また、シフト装置9には、リバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、ドライブ(D)位置及び、シーケンシャル(S)位置が設定されており、運転者が所望の変速位置へシフトレバー9aを変位させることが可能となっている。これらリバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、ドライブ(D)位置、シーケンシャル(S)位置(下記の「+」位置及び「−」位置も含む)の各変速位置は、シフトポジションセンサ406(図1参照)によって検出される。
【0060】
以下、それら変速位置が選択される状況と、そのときの変速機3の動作態様について各変速位置(「N位置」、「R位置」、「D位置」、「S位置」)ごとに説明する。
【0061】
「N位置」は、変速機3の入力軸31と出力軸32との連結を切断する際に選択される位置であり、シフトレバー9aが「N位置」に操作されると、変速機3の入力側ギヤ群33と出力側ギヤ群34とのギヤ対が噛み合わない状態となり、各変速ギア列での動力伝達が切断される。
【0062】
「R位置」は、車両を後退させる際に選択される位置であり、シフトレバー9aがこの「R位置」に操作されると、変速機3は後進ギヤ段に切り換えられる。
【0063】
「D位置」は、車両を前進させる際に選択される位置であり、シフトレバー9aがこの「D位置」に操作されると、車両の運転状態などに応じて、変速機3の複数の前進ギヤ段(前進6速)が自動的に変速制御される。つまり、オートマチックモードでの変速動作が行われる。
【0064】
「S位置」は、複数の前進ギヤ段(前進6速)の変速動作を運転者が手動によって行う際に選択される位置であって、このS位置の前後に「−」位置及び「+」位置が設けられている。「+」位置は、シフトアップのときにシフトレバー9aが操作される位置であり、「−」位置は、シフトダウンのときにシフトレバー9aが操作される位置である。
【0065】
そして、シフトレバー9aがS位置にあるときに、シフトレバー9aがS位置を中立位置として「+」位置または「−」位置に操作されると、変速機3の前進ギヤ段がアップまたはダウンされる。具体的には、「+」位置への1回操作ごとにギヤ段が1段ずつアップ(例えば1st→2nd→・・→6th)される。一方、「−」位置への1回操作ごとにギヤ段が1段ずつダウン(例えば6th→4th→・・1st)される。
【0066】
なお、以上のシフトレバー9aに加えて、シフトアップ用パドルスイッチ(「+」位置への操作スイッチ)と、シフトダウン用パドルスイッチ(「−」位置への操作スイッチ)とを、ハンドルまたはステアリングコラム等に設けておき、シフトレバー9aがS位置に操作されているときに、シフトアップ用パドルスイッチを1回操作するごとにギヤ段を1段ずつアップし、シフトダウン用パドルスイッチを1回操作するごとにギヤ段を1段ずつダウンするという構成を付加しておいてもよい。また、上記シフトレバー9aを備えさせず、パドルスイッチのみによって手動変速操作が行われる構成としてもよい。この場合、インストルメントパネル上やコンソールパネル上に「オートマチックモード」を選択するためのオートマチックモードスイッチや、「後退(リバース)」を選択するためのリバーススイッチが設けられる。また、必要に応じて、「ニュートラル」を選択するためのニュートラルスイッチが設けられる場合もある。
【0067】
−エンジンECU、トランスミッションECU−
エンジンECU101は、走行状況に応じてエンジン1へ供給する混合気や燃焼タイミングを制御することによりエンジン1を駆動するものである。
【0068】
トランスミッションECU102は、変速操作装置300を制御することにより変速機3における適宜の変速段つまり動力伝達経路を成立させるものである。
【0069】
また、これらエンジンECU101とトランスミッションECU102とは、エンジン制御やトランスミッション制御に必要な情報を互いに送受信(例えばCAN通信による送受信)が可能に接続されている。
【0070】
エンジンECU101およびトランスミッションECU102は、図示していないが、共に一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされており、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。
【0071】
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0072】
図6に示すように、エンジンECU101には、上記エンジン回転数センサ401、スロットル開度センサ402、吸入空気量を検出するエアフローメータ407などのエンジン1の運転状態を検出する各種センサが接続されており、その各センサの信号が入力される。また、このエンジンECU101は、スロットルモータ13、インジェクタ114の燃料噴射量や燃料噴射タイミングなどのエンジン1の各部を制御する。
【0073】
トランスミッションECU102には、上記入力軸回転数センサ403、出力軸回転数センサ404、アクセル開度センサ405、シフトポジションセンサ406、駆動輪7の速度(車輪速度)を検出する車輪速センサ408などが接続されている。
【0074】
また、このトランスミッションECU102は、上記変速操作装置300にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて変速操作装置300の油圧回路303に備えられているリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速段(第1変速段〜第6変速段、後退変速段など)を達成するように、上記各アクチュエータ301,302を制御する。
【0075】
−変速マップ−
上記「オートマチックモード」における変速機3の変速制御は、例えば図7に示すような変速マップ(変速条件)に従って行われる。この変速マップは、車速Vおよびアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速Vおよびアクセル開度θTHに応じて、適正な変速段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、上記トランスミッションECU102のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(変速段の切り換えライン)によって区画されている。尚、図7に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップおよびシフトダウンの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
【0076】
シフトレバー9aが「ドライブ(D)位置」に操作されている「オートマチックモード」での動作について説明する。
【0077】
トランスミッションECU102は、上記出力軸回転数センサ404の出力信号から車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ405の出力信号からアクセル開度θTHを算出し、それら車速Vおよびアクセル開度θTHに基づいて図7の変速マップを参照して目標変速段を算出する。さらに、上記入力軸回転数センサ403および出力軸回転数センサ404の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)を求めて現在変速段を判定し、その現在変速段と目標変速段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0078】
その判定結果により、変速の必要がない場合(現在変速段と目標変速段とが同じで、変速段が適切に設定されている場合)には、現在変速段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機3の変速操作装置300に出力する。
【0079】
一方、現在変速段と目標変速段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、変速機3の変速段が「4速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図7に示す点Aから点Bに変化した場合、シフトアップ変速線[4→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機操作装置300に出力して、4速の変速段から5速の変速段への変速(4→5アップ変速)を行う。
【0080】
また、例えば、変速機3の変速段が「6速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図7に示す点Cから点Dに変化した場合、シフトダウン変速線[6→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を変速機操作装置300に出力して、6速の変速段から5速の変速段への変速(6→5ダウン変速)を行う。
【0081】
−微小燃料噴射量学習制御−
次に、微小燃料噴射量学習制御(微小噴射制御または微小Q制御とも呼ばれる)の概略について説明する。この微小燃料噴射量学習制御は、例えばインジェクタ114の経時的な燃料噴射量の変化(噴射特性の変化)に応じた学習値を取得するための制御である。つまり、目標とする微小燃料噴射量(微小燃料噴射量の指示値:目標燃料噴射量)と実際の微小燃料噴射量(実燃料噴射量)との間にずれを生じさせることのない学習値を取得するための制御である。
【0082】
具体的に、微小燃料噴射量学習制御としては、自動車の走行中であってエンジン無負荷時に行われる。具体的には、インジェクタ114への指令噴射量が零となる無噴射時(例えば走行中にアクセル開度が「0」となったときなど)にパイロット噴射量と同等の極少量の燃料を特定の気筒(ピストンが上死点付近にある気筒)に向けて単発噴射を実行し、この単発噴射に伴うエンジン回転数の変化量など(エンジン運転状態の変化量)を認識する。そして、正確に所定量の単発噴射が実行された場合のエンジン運転状態の変化量データと、実際に単発噴射を行った場合のエンジン運転状態の変化量とを比較し、そのずれ量に応じて上記パイロット噴射量設定マップの学習値を補正していく。このような動作を上記パイロット噴射量設定マップ上の各コモンレール圧毎に且つ各気筒毎に実行していき、全ての気筒に対してコモンレール圧に関わりなく適正なパイロット噴射量でパイロット噴射が行えるようにしている。
【0083】
ところが、上記学習制御において単発噴射を実行する際、コモンレール圧が比較的高い状況、つまり、学習燃料圧力が高く設定された場合の学習動作が行われている状況において、従来では、運転者がアクセルペダル8の踏み込み操作を行うなどしてトランスミッションECU102からトルクアップ要求があった場合には、その要求に応えるべく、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されることになるため、たとえ学習動作を中止したとしても、未だコモンレール圧が比較的高い状況で燃料噴射が開始されてしまうことになっていた。このため、その混合気の燃焼が急速に起こり、比較的大きな燃焼音が発生してしまうことになっていた。本実施形態は、このような不具合を解消するために以下のような燃料噴射制御を実施している。以下、図8のフローチャートに沿って具体的に説明する。この図8に示すルーチンは、上記微小燃料噴射量学習制御中において、所定時間毎、または、クランクシャフト11の所定角度回転毎に実行される。
【0084】
先ず、ステップST1において、トランスミッションECU102から変速時トルク制御開始情報を取得する。この変速時トルク制御開始情報としては、上述した如く車両の走行状態が変化して、シフトダウン変速線やシフトアップ変速線を跨ぐ状態となった場合に例えば「ON」信号がトランスミッションECU102から出力され、変速線を跨ぐような走行状態の変化がない場合には例えば「OFF」信号がトランスミッションECU102から出力されることになる。
【0085】
その後、ステップST2に移り、上記変速時トルク制御開始情報は、変速時トルク制御を開始する情報(上記「ON」信号)であるか否かを判定する。
【0086】
ここで、変速時トルク制御開始情報が「OFF」信号であった場合には、変速要求は生じていないとして本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
一方、変速時トルク制御開始情報が「ON」信号であった場合には、変速要求が生じており、つまり、車両の走行状態が変速線を跨ぐ状態に変化したとして、ステップST3において上記学習制御(インジェクタ微小噴射量学習制御)を禁止する(学習制御禁止手段による燃料噴射量学習制御の禁止)。これにより、仮に学習制御において目標コモンレール圧が高く設定されていた場合には、この学習制御の禁止に伴ってコモンレール圧は低下していく。例えば、上記電磁調量弁117を全閉にするなどして高圧燃料ポンプ113からの燃料供給を停止したり、または、上記リリーフバルブ116を開放することで、コモンレール110内の燃料を燃料タンク111に回収する(本発明でいう燃圧低下制御)。
【0088】
また、この場合のコモンレール110内の圧力減量速度としては、ステップST4によって、変速時学習制御禁止状態専用の圧力減量速度マップに切り替えられる。上記エンジンECU101のROMには、エンジン回転数等をパラメータとしてコモンレール110内の圧力減量速度を決定する圧力減量速度マップが通常時と変速時学習制御禁止状態時の2つ格納されており、この圧力減量速度マップに従って求められた圧力減量速度が得られるように、上記電磁調量弁117の開度調整や上記リリーフバルブ116の開度調整を行うようにしている。このステップST4では、この圧力減量速度マップを変速時学習制御禁止状態時のマップに切り替える。例えば、エンジン回転数が高いほどリリーフバルブ116の開度を大きく設定して圧力減量速度を高くするといったような動作が行われる。この圧力減量速度の設定動作はこれに限定されるものではない。
【0089】
これにより、車両の走行状態が変速線を跨ぐ状態に変化した時点であって未だトランスミッションECU102からのトルクアップ要求信号が発進される前段階からコモンレール110の内圧を降下させる動作が開始されることになる。つまり、上記学習制御中におけるコモンレール圧が比較的高い状況であったとしても、上記トランスミッションECU102のトルクアップ要求に応じて燃料噴射量の増量を開始するタイミングではコモンレール圧が十分に低下していることになる。このため、比較的多量の燃料が短時間のうちに気筒内に噴射されてしまって混合気の燃焼が急速に起こり大きな燃焼音が発生してしまうといった状況を招くことが回避される。
【0090】
特に、上記ステップST4のように、圧力減量速度を調整可能としておき、コモンレール圧を急速に降下させることが可能な構成としておけば、変速時間が比較的短く設定されている変速機3であっても、コモンレール圧を十分に低下させた状態でトランスミッションECU102のトルクアップ要求に応じた燃料噴射が開始されることになるので、燃焼音の抑制効果を確実に得ることができる。
【0091】
図9は、上述した如く学習制御中におけるコモンレール圧が比較的高い状況で学習制御が禁止された場合の燃料圧力(コモンレール圧)の変化を示す図である。図中の二点鎖線は従来の燃料圧力の変化を示している。つまり、トランスミッションECUからのトルクアップ要求に応じて学習制御を禁止する場合である。これに対し、図中の実線は、例えば電磁調量弁117の開度調整によってコモンレール110の内圧を降下させる場合の燃料圧力の変化を示している。この場合、トランスミッションECUからのトルクアップ要求がなされてインジェクタ114からの燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力は図中のP1であり、十分に圧力が降下している。更に、図中の破線で示す曲線は、例えばリリーフバルブ116の開度を大きく設定して圧力減量速度を高く設定した場合の燃料圧力の変化を示している。この場合、トランスミッションECUからのトルクアップ要求がなされてインジェクタ114からの燃料噴射が開始されるタイミングでの燃料圧力は図中のP2であり、よりいっそ圧力が降下している。
【0092】
以上のように、本実施形態によれば、従来のものに比べて、学習制御の禁止に伴ってコモンレール110の内圧を急速に降下させることができ、燃焼音の抑制効果を良好に得ることができる。
【0093】
(変形例)
次に、本発明の変形例について説明する。本変形例は、上記トランスミッションECU102の要求トルクが比較的高い場合の対策である。以下、図10のフローチャートに沿って具体的に説明する。この図10に示すルーチンも、上記微小燃料噴射量学習制御中において、所定時間毎、または、クランクシャフト11の所定角度回転毎に実行される。また、この図10に示すフローチャートにおけるステップST1〜ステップST4の動作は、上述した実施形態において図8で示したステップST1〜ステップST4の動作と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0094】
上記ステップST3及びステップST4の学習制御禁止時の動作が行われた後、ステップST5に移る。このステップST5では、この学習制御禁止動作が実行中であるか否かを判定する。つまり、微小燃料噴射量学習制御中に変速時トルク制御が開始され、本来学習制御実行中にも拘わらず禁止されているか否かを判定する。この判定がNOである場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
一方、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST6に移り、上記トランスミッションECU102が要求しているトルクと、予め設定されている燃焼音限界トルクとを比較する。ここで、燃焼音限界トルクとは、比較的大きな燃焼音が発生するような燃料噴射量によって得られるトルクに相当する。つまり、この燃焼音限界トルクを超えるトルクが得られるような燃料噴射量に設定した場合には、燃焼音が大きくなりすぎてしまうことになる。この燃焼音限界トルクの値は、予め実験やシミュレーションによって求められ、例えば上記エンジンECU101のROMに記憶されている。
【0096】
そして、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルク以下である場合には、ステップST6でNO判定され、本ルーチンを終了する。
【0097】
一方、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルクを超えている場合には、ステップST6でYES判定され、ステップST7に移る。このステップST7では、燃料噴射量のなまし制御が行われる。つまり、運転者のアクセル操作量に対する燃料噴射量のなまし制御と同様の噴射量なまし制御を行い、急激なトルク上昇を抑制して燃焼音の増大を抑えるといった制御を実行する。
【0098】
図11は、このような燃料噴射量のなまし制御が行われる場合の要求トルクに対する燃料噴射量の変化を示す図である。実線が、なまし制御が行われた場合の燃料噴射量の変化であり、二点鎖線が、なまし制御が行われない場合の燃料噴射量の変化である。つまり、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルク以下である場合(上記ステップST6でNO判定された場合)には、二点鎖線で示すように燃料噴射量が変化され、変速の応答性を高める制御が行われる。一方、トランスミッションECU102が要求しているトルクが上記燃焼音限界トルクを超えている場合(上記ステップST6でYES判定された場合)には、実線で示すように燃料噴射量が変化され、変速の応答性をある程度犠牲にして燃焼音の増大を抑えるといった制御が行われることになる。この場合、燃料噴射量の増量初期時の単位時間当たりにおける燃料噴射増量分は、なまし制御が行われない場合と同様にして急速な燃料噴射増量を行い、この燃料噴射増量が所定値(図11におけるQ1)を超えた時点から、単位時間当たりにおける燃料噴射増量分を少なくしていき、なまし制御が行われるようにしている。これにより、燃焼音の増大を抑えながらも、比較的速い変速動作を可能にしている。
【0099】
−他の実施形態−
以上説明した実施形態及び変形例では、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に搭載され前進6段変速の変速機3に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両等、その他の形態の車両に搭載された変速機にも適用可能である。また、上記段数の異なる変速機(例えば前進5段変速のもの)に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、自動化マニュアルトランスミッションが接続され且つ単発噴射を行うことで噴射量学習制御を行うディーゼルエンジンの燃料噴射制御に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 エンジン(内燃機関)
3 変速機(自動制御式マニュアルトランスミッション)
102 トランスミッションECU
114 インジェクタ(燃料噴射弁)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動制御式マニュアルトランスミッションが接続された車両用内燃機関の特定の気筒内に燃料噴射弁から燃料噴射を行い、その燃料噴射に伴う内燃機関の運転状態の変化に基づいて目標燃料噴射量に対する実燃料噴射量の偏差を求めて実燃料噴射量を補正する燃料噴射量学習制御を実行するよう構成された燃料噴射制御装置において、
上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止する学習制御禁止手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記学習制御禁止手段は、燃料噴射量学習制御を禁止するのと略同時に、燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を低下させる燃圧低下制御を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記燃圧低下制御は、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時のトルク要求に応じた燃料噴射が開始されるタイミングにおいて、燃焼音が所定音量以下に低下するような燃料圧力まで低下させるようにしていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時に要求される内燃機関のトルク値が所定の燃焼音限界トルク値を超えている場合には、自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時における燃料噴射量のなまし制御を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項1】
自動制御式マニュアルトランスミッションが接続された車両用内燃機関の特定の気筒内に燃料噴射弁から燃料噴射を行い、その燃料噴射に伴う内燃機関の運転状態の変化に基づいて目標燃料噴射量に対する実燃料噴射量の偏差を求めて実燃料噴射量を補正する燃料噴射量学習制御を実行するよう構成された燃料噴射制御装置において、
上記燃料噴射量学習制御の実行中に上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速要求が発生したタイミングで上記燃料噴射量学習制御を禁止する学習制御禁止手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記学習制御禁止手段は、燃料噴射量学習制御を禁止するのと略同時に、燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を低下させる燃圧低下制御を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記燃圧低下制御は、上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時のトルク要求に応じた燃料噴射が開始されるタイミングにおいて、燃焼音が所定音量以下に低下するような燃料圧力まで低下させるようにしていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時に要求される内燃機関のトルク値が所定の燃焼音限界トルク値を超えている場合には、自動制御式マニュアルトランスミッションの変速時における燃料噴射量のなまし制御を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−185316(P2010−185316A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28931(P2009−28931)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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