出力装置及び半導体集積装置
【課題】データパターンに関わらず、低消費電流を図ることができる出力装置を提供する。
【解決手段】外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力するドライバ回路9からの差動信号を出力する出力装置であって、ドライバ回路9から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部11と、中継バッファ部11から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅アンプ部12と、ドライバ回路9に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部13とを備える。
【解決手段】外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力するドライバ回路9からの差動信号を出力する出力装置であって、ドライバ回路9から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部11と、中継バッファ部11から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅アンプ部12と、ドライバ回路9に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送に係り、より詳しくは、これら高速シリアル通信で使用されるデータ送信装置の出力装置、及びにその出力装置を備えた半導体集積装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製品のインターフェース速度が高速化されており、高速シリアル通信を使ったシステムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、差動信号を伝送する一対の伝送線路に接続された第1及び第2の各出力端子を備え、外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換し、第1及び第2の各出力端子に出力するドライバ回路において、第1の出力端子は、第1のプルアップ抵抗回路を介して所定の電源電圧に接続されると共に、第1のプルダウン抵抗回路を介して接地電圧に接続され、第2の出力端子は、第2のプルアップ抵抗回路を介して電源電圧に接続されると共に、第2のプルダウン抵抗回路を介して接地電圧に接続され、第1及び第2の各プルアップ抵抗回路、並びに第1及び第2の各プルダウン抵抗回路は、データ信号に応じて抵抗値がそれぞれ変化することで、高速シリアル通信システムにおいて用いられる送信側ドライバ回路の消費電力を低減するようにしている。
また特許文献2は、しきい値(しきい値電圧Vtha、Vthb、Vthc)を異ならせた複数の素子又は回路(入力バッファ回路)を含み、これら素子又は回路に共通の入力(入力電圧)が同時に加えられた場合に、しきい値に応じて異なる時期に状態変化を生じる構成とすることで、入力による状態変化の生起タイミングを変移させるようにした半導体集積回路が開示されている。
【特許文献1】特開2007−36848公報
【特許文献2】特開2006−262421公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高速シリアル通信において、伝送路の反射波に起因する信号劣化を防ぐために、データ出力部と伝送路とのインピーダンス整合は必要不可欠である。
図13は、特許文献1に示されている従来の高速シリアル通信システムの送信側ドライバ回路の構成を示した図である。
この図13に示すドライバ回路109は、4つのインバータ120〜123と、2つのデータ生成回路部124、125と、2つのエンファシス制御回路部126、127とを備える。各インバータ120、123の出力端は、対応する各エンファシス制御回路部126、127の入力端にそれぞれ接続され、各インバータ121、122の出力端は、対応する各データ生成回路部124、125の入力端にそれぞれ接続されている。また、データ生成回路部124及びエンファシス制御回路部126の各出力端は、出力端OUT1を構成し、データ生成回路部125及びエンファシス制御回路部127の各出力端は、出力端OUT2を構成する。
データ生成回路部124は、出力端OUT1と所定の電源電圧Vccとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第1の部分抵抗回路PR11〜15と、出力端OUT1とGNDとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第2の部分抵抗回路DR11〜15とを備える。ここで、第1の各部分抵抗回路PR11〜PR15は全て同じ構成であり、第2の各部分抵抗回路DR11〜DR15は全て同じ構成である。
【0005】
第1の部分抵抗回路PR11及び第2の部分抵抗回路DR11についてそれぞれ説明すると、第1の部分抵抗回路PR11は、直列に接続されたP型金属酸化膜電界効果トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」という。)P11と抵抗R11とからそれぞれ構成され、第2の部分抵抗回路DR11は、直列に接続されたN型金属酸化膜電界効果トランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」という。)N11と抵抗R21とからそれぞれ構成されている。各トランジスタP11〜P15、N11〜N15のゲートは、インバータ121の出力端にそれぞれ接続されている。
また、データ生成回路部125は、出力端OUT2と電源電圧Vccとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第1の部分抵抗回路PR21〜PR25と、出力端OUT2とGNDとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第2の部分抵抗回路DR21〜DR25とを備える。ここでも、第1の各部分抵抗回路PR21〜PR25は全て同じ構成であり、第2の各部分抵抗回路DR21〜DR25は全て同じ構成である。
一例として第1の部分抵抗回路PR21及び第2の部分抵抗回路DR21についてそれぞれ説明すると、第1の部分抵抗回路PR21は、直列に接続されたPMOSトランジスタP21と抵抗R31とからそれぞれ構成され、第2の部分抵抗回路DR21は、直列に接続されたNMOSトランジスタN21と抵抗R41とからそれぞれ構成されている。各トランジスタP21〜P25、N21〜N25のゲートは、インバータ122の出力端にそれぞれ接続されている。
【0006】
エンファシス制御回路部126は、出力端OUT1と所定の電源電圧Vccとの間で直列に接続されたPMOSトランジスタP16と抵抗R16とからなる第1の部分抵抗回路PR16、及び出力端OUT1とGNDとの間で直列に接続されたNMOSトランジスタN16と抵抗R26とからなる第2の部分抵抗回路DR16をそれぞれ備える。各トランジスタP16、N16のゲートは、インバータ120の出力端にそれぞれ接続されている。
エンファシス制御回路部127は、出力端OUT2と所定の電源電圧Vccとの間で直列に接続されたPMOSトランジスタP26と抵抗R36とからなる第1の部分抵抗回路PR26、及び出力端OUT2とGNDとの間で直列に接続されたNMOSトランジスタN26と抵抗R46とからなる第2の部分抵抗回路DR26をそれぞれ備える。各トランジスタP26、N26のゲートは、インバータ123の出力端にそれぞれ接続されている。
このように構成されるドライバ回路109は、スイッチであるPMOSトランジスタP11〜P16、NMOSトランジスタN11〜N16、PMOSトランジスタP21〜P26、NMOSトランジスタN21〜N26のオン・オフを切り替えることにより、出力端OUT1/OUT2の電圧レベルを切り替え、なおかつインピーダンス整合を図るようにしている。
【0007】
しかしながら、図13に示す従来のドライバ回路では、PMOSトランジスタP11〜P16及びP21〜P26、NMOSトランジスタN11〜N16及びN21〜N26のサイズをスイッチに直列に接続している抵抗R11〜R16、R21〜R26、R31〜R36、R41〜R46に対して充分小さいオン抵抗になるように設計しなければならない。このため、スイッチのサイズが大きくなる。
例えば、90nmプロセスにおいて、5Ω程度のオン抵抗とすると、PMOSトランジスタは、270um/0.08um、NMOSトランジスタは、90um/0.08um程度となる。よって、PMOSトランジスタP11〜P16、P21〜P26、及びNMOSトランジスタN11〜N16、N21〜N26を2.5GHz程度の周波数で駆動するためには、図13に示すインバータ120〜123のサイズは、少なくともゲート容量がスイッチのサイズの1/4以上にする必要がある。
さらに、インバータ120〜123の前段に配置する図示しないインバータのサイズも、インバータ120〜123のサイズの1/4以上は必要となるので、データ入力部のインバータが小さい場合は、複数のインバータが最終段を駆動させるまでに必要となる。このように、従来のドライバ回路では、大きなインバータを駆動させるために小さいインバータから徐々にサイズを大きくするという方法が採られている。インバータを用いるメリットしては、データの切り替わり時のみ電流が流れるので、常に電流を流す場合と比べて低消費電流化を図ることができる点が挙げられる。
しかしながら、インバータによるデータ授受の場合は、データパターンによって消費電流に違いが生じ、データパターン依存の電源電圧の変動が生じるのでジッタ増大の要因になるという問題点があった。
【0008】
また、電源電圧の変動を抑制する技術としては特許文献2がある。
図14は特許文献2に開示されている半導体集積回路の回路図である。
この図14に示す半導体集積回路のLSI202には複数の入力バッファ回路として、3組の入力バッファ回路241、242、243が設置されている。各入力バッファ回路241、242、243には、レベルが異なる複数のしきい値電圧Vtha、Vthb、Vthcが設定され、これらしきい値電圧Vtha、Vthb、Vthcの大小関係はVtha<Vthb<Vthcである。入力端子261、262、263には入力電圧Vinが加えられ、この入力電圧Vinは、一定の時間的レベル変化を以て立ち上がる電圧又は立ち下がる電圧である。そして、このような入力電圧Vinを受けると、各入力バッファ回路241、242、243には電気的な状態変化が生じ、出力端子281、282、283には出力電圧Vouta、Voutb、Voutcが取り出される。この場合、各入力バッファ回路241、242、243にはLSI202の電源端子210、212に接続された電源回路214により電圧VDD、Vss(VDD>Vss)が加えられている。
【0009】
このLSI202において、入力バッファ回路241は、第1のトランジスタ411及び第2のトランジスタ412からなるインバータで構成されている。トランジスタ411はpMOSトランジスタ、トランジスタ412はnMOSトランジスタで構成され、これらトランジスタ411、412はCMOS回路のインバータを構成している。各トランジスタ411、412の共通接続されたゲートには入力端子261が形成されて入力電圧Vinが加えられ、各トランジスタ411、412の共通接続されたドレインには出力端子281が形成されて出力電圧Voutaが取り出される。トランジスタ411のソースには電源回路214が接続されて電圧VDD、トランジスタ412のソースには電源回路214が接続されて電圧Vssが加えられている。そして、出力端子281に取り出される出力電圧Voutaは、トランジスタ411が導通した場合に高レベル(電圧VDD)、トランジスタ412が導通した場合に低レベル(電圧Vss)となる。このように従来の半導体集積回路においては閾値を異ならせることにより、貫通電流の量を減らすことを可能にし、その結果、電源電圧の変動量を抑えることを目的とした発明である。しかしながら、データパターンによる電源電圧の変動の差を完全に打ち消すことは出来ないのでジッタを無くすことは困難であった。
本発明では、データパターンに関わらず、低消費電流を図ることができる出力装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力する駆動回路からの差動信号を出力する出力装置であって、前記駆動回路から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部と、該中継バッファ部から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅部と、前記駆動回路に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の出力装置において、前記中継バッファ部は、n個(但し、nは自然数)の低電圧差動対により構成され、i番目(iは1〜Nの自然数)の前記低電圧差動対は、それぞれ差動信号が入力される第1及び第2の入力端子、及び差動信号を出力する第1及び第2の出力端子を有し、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対の第1及び第2の出力端子は、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続され、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続され、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の出力装置において、前記n個の低電圧差動対は、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の出力装置において、i番目の前記低電圧差動対と、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対のサイズの比は、i番目の前記低電圧差動対の出力インピーダンスと、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の出力装置において、前記中継バッファ部は、n個(nは自然数)の対をなす第1及び第2のコンパレータにより構成され、i番目(但し、iは1〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータは、それぞれ正極側の入力端子と負極側の入力端子を有し、前記i番目の第1のコンパレータの正極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの負極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの出力端子からは、前記i番目の第2のコンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記i−1番目(但し、iは2〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータの出力端子は、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続され、前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続され、前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の出力装置において、前記n個の第1及び第2のコンパレータは、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の出力装置において、前記i番目(但し、iは2〜N)の第1及び第2のコンパレータと、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータのサイズの比は、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータの出力インピーダンスと、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置において、前記増幅部は、対をなし、入力された信号の振幅を増幅して出力する第1及び第2の増幅用コンパレータにより構成され、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ正極側の入力端子及び負極側の入力端子を有し、前記第1の増幅用コンパレータの正極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記第1の増幅用コンパレータの負極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記第1の増幅用コンパレータの出力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記中継バッファ部から出力された差動信号が前記第1及び第2のコンパレータの入力端子にそれぞれ入力され、前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続され、前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の本発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の出力装置において、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ定電流減を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、高速シリアル伝送に用いられる半導体集積装置であって、請求項1乃至9の何れか一項に記載の出力装置を用いてシリアル信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の出力装置によれば、入力される入力信号のデータパターンに関わらず、消費電流をほぼ一定に保つことができるので、電源変動に強く、ジッタの無い出力装置を実現することができる。従って、本発明の出力装置を高速シリアル通信に用いることで、電源変動に強く低消費電流のデータ転送装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の出力装置が適用される高速シリアル通信システムの構成を示した図である。
この図1に示す高速シリアル通信システム1は、半導体集積装置によって構成され、送信側回路2、受信側回路3、及び差動伝送線路4を備える。差動伝送線路4は、送信側回路2と受信側回路3との間に設けられた往路伝送線路5と復路伝送線路6とにより構成されている。受信側回路3は、受信側レシーブ回路7と、差動伝送線路4の終端抵抗である2つの抵抗R1、R2と、コンデンサCとを備える。受信側レシーブ回路7の2つの入力端は差動伝送線路4に接続されている。以下では、受信側レシーブ回路7の一方の入力端と往路伝送線路5との接続部を「RXP」といい、受信側レシーブ回路7の他方の入力端と復路伝送線路6との接続部を「RXM」という。各抵抗R1、R2は、2つの接続部RXP、RXMの間で直列に接続され、各抵抗R1、R2の接続部は、コンデンサCを介して接地電圧GNDに接続されている。なお、コンデンサCは、バイパスコンデンサとして作用する。
【0018】
送信側回路2は、デジタル回路8、ドライバ回路9、及び出力装置10を備える。出力装置10の2つの出力端OUT1、OUT2は、対応する往路伝送線路5及び復路伝送線路6にそれぞれ接続されている。以下では、出力端OUT1と往路伝送線路5との接続部を「TXP」といい、出力端OUT2と復路伝送線路6との接続部を「TXM」という。デジタル回路8は、相反する信号レベルを有する一対のシリアルデータ信号SDTAP、SDATAM、及び相反する信号レベルを有する一対のエンファシス制御信号EMPHP、EMPHMをそれぞれ生成し、それらをドライバ回路9にそれぞれ出力する。
ドライバ回路9は、デジタル回路8からそれぞれ出力された各シリアルデータ信号SDTAP、SDTAMを低振幅のアナログ差動信号に変換して出力装置10を介して往路伝送線路5及び復路伝送線路6に出力する。
送信側回路2は、差動伝送線路4を介して、アナログ差動信号を受信側回路3に送信する。そして、その差動信号は、受信側レシーブ回路7に入力される。各抵抗R1、R2は、受信側回路3におけるインピーダンス整合用の終端抵抗であり、差動伝送線路4上で伝送される差動信号の電圧振幅は、各抵抗R1、R2の抵抗値によって決まる。高速シリアル通信システムでは、差動伝送線路4における差動インピーダンスZdiffは100Ωであり、各抵抗R1、R2の抵抗値はそれぞれ50Ωである。インピーダンス整合は、差動伝送線路4上において、低振幅の差動信号を送受信する際に信号品質を良好なものにするために必要とされる。
【0019】
<第1の実施形態>
図2は、上記した出力装置10の構成を示した図である。
この図2に示すように、出力装置10は、中継バッファ部11、増幅アンプ部12、データ出力部13を備える。ドライバ回路9から出力される差動信号P1及びその反転である信号M1が中継バッファ部11に入力される。中継バッファ部11から低振幅で出力された信号BP、DMは、増幅アンプ部12に入力される。増幅アンプ部12では、入力された信号BP、DMの振幅を増幅する。増幅アンプ部12で増幅された信号DP、DMは、データ出力部13に入力され、データ出力部13を介して出力される。この場合、増幅アンプ部12から出力される信号DP、DMは、ドライバ回路9から出力される差動信号P1、M1に比べて大きな駆動力を持って出力されることになる。
このように出力装置10を構成した場合は、中継バッファ部11では低振幅の信号を伝送しているので低消費電流での信号伝送が可能になる。増幅アンプ部12において振幅を増幅して信号を伝送しているので、データ出力部13を駆動させるのに大きな振幅が必要な場合でもデータ出力部13の駆動が可能になる。
【0020】
図3は本実施形態の出力装置の構成を詳細に示した図である。なお、図2と同一部位には同一符号を付して説明は省略する。
この図3に示すように、中継バッファ部11は、低電圧差動対LVDS1、LVDS2により構成されている。なお、図3では、2つの低電圧差動対LVDSにより中継バッファ部11を構成する場合を例に挙げて説明するが、これはあくまでも一例であり、データ出力部13のサイズによって決定されるものである。
また、本実施形態では、低電圧差動対LVDS1、LVDS2は同じ構成としているが異なるサイズであってもよい。例えば、低電圧差動対LVDS1のサイズを「1」とすると、低電圧差動対LVDS2のサイズを「2」で構成してもよい。
また、i番目の低電圧差動対LVDSi(但し、iは2以上の整数)と、(i−1)番目の低電圧差動対LVDSi−1のサイズの比は、i番目の低電圧差動対LVDSiの出力インピーダンスと、i番目の低電圧差動対LVDSiの出力に接続される負荷容量、例えば(i−1)番目の低電圧差動対LVDSi−1の入力容量や、配線容量の積が常に一定になるように定める。
【0021】
増幅アンプ部12は、等価の第1の増幅用コンパレータCMPAP及び第2の増幅用コンパレータCMPAMにより構成される。第1の増幅用コンパレータCMPAP、CMPAMは、中継バッファ部11から出力された信号BP、BMの振幅を増幅して出力する機能を有する。
第1の増幅用コンパレータCMPAPの正側の入力は、第2の増幅用コンパレータCMPAMの負側の入力と接続され、中継バッファ部11の出力信号BPが入力される。また第1の増幅用コンパレータCMPAPの負側入力は、第2の増幅用コンパレータCMPAMの正側入力と接続され、中継バッファ部11の出力信号BMが入力される。この場合、第1の増幅用コンパレータCMPAPの出力信号DPは、第2の増幅用コンパレータCMPAMの出力信号DMの反転信号が出力される。
データ出力部13は、インバータPD、MDにより構成され、増幅アンプ部12から出力される出力信号DP、Dmを反転して出力する。
【0022】
図4は低電圧差動対の回路構成を示した図である。
図4において、LPi及びLMiはi番目の入力端子を示し、LPOi及びLMOiはi番目の出力端子を示している。n1〜n4はnチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタという)、p1〜p4はpチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタという)、ni1は電流源を示している。
i番目の入力端子(第1の入力端子)LPiはトランジスタn1、n4と接続され、i番目の入力端子(第2の入力端子)LMiはトランジスタn2、n4と接続されている。対をなすトランジスタn1、n4は、同じサイズで構成され、同様にトランジスタn2、n3、トランジスタp1、p4、及びトランジスタp2、p3は同じサイズで構成される。
i番目の出力端子(第1の出力端子)LPOiは、トランジスタp1及びトランジスタn1のドレインと接続され、i番目の出力端子(第2の出力端子)LMOiはトランジスタp4、n4のドレインと接続されている。トランジスタp1、P2のゲートは、トランジスタp2、n2、p3、n3のドレイン、及びトランジスタp3、p4のゲートに接続されている。
【0023】
入力端子LPiには、入力端子LMiの反転のデータが入力されるので、対をなすトランジスタn1、n3またはトランジスタn2、n4の何れか一方が必ずオンすることになる。これにより、中継バッファ部11を構成する低電圧差動対LVDSiには、データパターンに関わらず、電流源ni1の電流が電源電圧(VDDA)から接地電圧まで流れることになる。
また、このとき出力端子LPOi、LMOiから出力される出力信号の振幅はVdda(電源電圧)−Vcmとなる。
ここで、例えばVdda−Vcm=0.5Vddaだった時の消費電流について以下に示す。この時の入力トランジスタのゲート容量をCnとする。
nチャネルトランジスタが振幅増幅差動アンプ部12と同じサイズのインバータの充放電電流は、pチャネルトランジスタがnチャネルトランジスタと同等の駆動力を持つように設計した場合、ゲート容量が3Cnなので、充放電電荷Q1は、
Q1=4×Cn×Vdda・・・(式1)
となる。
【0024】
またpチャンネルトランジスタとnチャンネルトランジスタが同時にオンした時に貫通電流が流れるので、その電流量をItとすると、インバータが1Tで消費する電流量I1は、
I1=It+4×Cn×Vdda・・・(式2)
となる。
PCIExpressのデータパターンの平均は1.5T程度なのでPCI−Expressでのインバータの消費電流Iinvは、
Iinv=0.67×It+2.67×Cn×Vdda・・・(式3)
となる。
一方、インバータの立ち上がり/立ち下がり(Tr/Tf)時間が1/4Tで、低電圧差動対のTr/Tfも1/4Tになるようにすると、ni1の電流値Ini1は、
Iin1=2×Cn×Vdda/T・・・(式4)
となる。
よって、低電圧差動対消費電流Ilvdsは、
Ilvds=2×Cn×Vdda・・・(式5)
となる。
よって、i番目の低電圧差動対LVDSiに定常電流を流していても、インバータの消費電流より小さくなる。よって低電圧差動対の入力にはpチャネルMOSトランジスタよりもnチャネルMOSトランジスタを用いたほうが消費電流は小さくなる。
【0025】
図5はコンパレータの回路構成を示した図であり、この図5を用いて増幅差動アンプ12を構成する増幅用コンパレータCMPAP(M)について説明する。
AP、AMは入力端子、AMOは出力端子、n5〜n8はnチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタという)、p5〜p8はpチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタという)、ni2、pi2は定電流源を示している。
入力端子APは、トランジスタn5、トランジスタp7のゲートと接続され、入力端子AMはトランジスタn6、p8と接続される。入力端子APには、図3に示した中継バッファ部11の出力側に接続され、中継バッファ部11の出力信号BP、またはBMの何れか一方が入力され、入力端子AMには他方の出力信号BM、またはBPが入力される。つまり、入力端子APに出力信号BPが入力された場合、入力端子AMには出力信号BMが入力される。
【0026】
また逆に入力端子APに出力信号BMが入力された場合は、入力端子AMに出力信号BPが入力される。トランジスタn5、n6のソースに接続されている電流源ni2の電流値と、トランジスタp7、p8のソースに接続されている電流源pi2の電流値は等しい。また、それぞれ対をなすトランジスタn5、n6と、トランジスタp5、p6と、トランジスタp7、p8と、トランジスタn7、n8のサイズそれぞれは等しい。
この場合、入力端子AP、AMに入力される信号BP、BMは差動の関係にあるので、この図5に示すコンパレータでは、信号のパターンによらず常に電流源から一定の電流を消費することになる。つまり、消費電流はデータパターンによらず常に一定に保つことができる。また、このような構成を採ることで、振幅増幅差動アンプ12からは、大振幅の信号を出力することが可能になり、データ出力部13を駆動させるのに大振幅の信号を必要とする場合でも駆動可能である。
【0027】
図6は、中継バッファ部11、増幅アンプ部12の代わりにインバータを用いた出力装置の消費電流と、本実施形態の出力装置の消費電流の概略を示した図である。なお、電源と回路の間には配線抵抗があるものとする。
図6(a)はデータパターン、図6(b)は消費電流、図6(c)は電源電圧をそれぞれ示した図であり、(b)(c)に示す実線はインバータを用いたときの消費電流、破線は本発明の消費電流を示したものである。なお、横軸は(a)、(b)、(c)共に時間tである。
この図6(a)、(b)、(c)に示すように、インバータを用いた場合、データパターンが1T連続で遷移する場合、充放電電流、及び貫通電流が最も多く流れるため消費電流が最大となる。また逆にデータの遷移が少ない場合は消費電流が最小となる。
電源電圧は、電源についた配線抵抗に電流が流れることで変化するので、消費電流が最大の時に最も下がる。また、消費電流が最小の時に電源電圧は最大となる。つまり、インバータを用いた場合の電源電圧の変動量は、データパターンに依存することになる。電源電圧が下がるとインバータの駆動力が下がるので、Tr/Tfが劣化し、電源電圧の変動はジッタの原因となる。
一方、本実施形態の出力装置の消費電流は、定常電流を流しているので、データパターンに依存せず常に一定である。よって、電源の変動量はインバータに比べて充分小さい。したがって、本実施形態の出力装置を用いれば低消費電力と電源電圧変動の抑制を同時に実現することが可能である。
【0028】
<第2の実施形態>
次に、本発明の出力装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態に係る出力装置の全体構成は、図2に示した第1の本実施形態の出力装置の構成と同じであり、各構成要素が第1の実施形態とは異なるものである。
図7は第2の実施形態にかかる中継バッファ部の構成を示した図である。
図7に示す出力装置は、図3に示した出力装置とは中継バッファ部11の構成が異なる。この図7に示す中継バッファ部11は、対となるコンパレータCMPP1、CMPM1と、CMPP2、CMPM2で構成されている。なお、図7では、中継バッファ11を構成するコンパレータの対は2つだが、この限りではなく、中継バッファ11のコンパレータの対の数はデータ出力部13のサイズによって決定されるものである。
また、対となるコンパレータCMPP1、CMPM1は、サイズ、構成とも等価であるのに対して、コンパレータCMPP2、CMPM2は同じ構成だが、サイズは異なるものである。例えば、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1のサイズを「1」とすると、i番目のコンパレータCMPPiのサイズは「2」で構成される。
なお、i番目のコンパレータCMPPiと、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1のサイズの比は、i番目のコンパレータCMPPiの出力インピーダンスと、i番目のコンパレータCMPPiの出力に接続される負荷容量、例えば、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1の入力容量や配線容量の積が常に一定になるように決定される。
なお、増幅アンプ部12は、データ出力部13の構成は、図3に示した第1の実施形態に係る出力装置10と同様の構成なので説明は省略する。
【0029】
図8は、中継バッファ部11に設けられているi番目の第1及び第2のコンパレータCMPPi(CMPMi)の構成を示した図である。
この図8において、Pi及びMiは入力端子、POiは出力端子、n10、n11はnチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタと称する)、p10〜p11はpチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタと称する)、ni3は電流源をそれぞれ示している。
入力端子Piはトランジスタn10と接続され、入力端子Miはトランジスタn11と接続されている。対をなすトランジスタn10、n11は同じサイズで構成される。
また同様にトランジスタp10、p11も同じサイズで構成される。
出力端子POiは、トランジスタp11及びトランジスタn11のドレインと接続されている。トランジスタp11のゲート、トランジスタp10のゲート、ドレインが接続されている。入力端子Piには、入力端子Miの反転のデータが入力されるので、トランジスタn10、n11のどちらか一方がオンすることになるので、データパターンに関わらず、コンパレータには電流源ni3の電流が電源電圧(VDDA)から接地電圧まで流れることになる。よって電源変動のデータパターン依存性を除去することが可能である。
また、第1の実施形態と同様に、入力部にnチャネルMOSトランジスタを用いることで同等の駆動力を持ったインバータや、pチャネルMOSトランジスタを用いたコンパレータと比べて、消費電流を小さくすることができる。
【0030】
<第3の実施形態>
次に、本発明の出力装置の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態に係る出力装置の全体構成は、図2に示した第1の本実施形態の出力装置の構成と同じであり、各構成要素が第1の実施形態とは異なるものである。
図9は、第3の実施形態に係る出力装置の各構成を示した図である。
高速通信では、データの送信の際に出力インピーダンスを50Ω終端し、さらにデータパターンによって振幅を変化させるディエンファシスまたはエンファシス機能を仕様として策定しているものも多い。そこで、図9では50Ω終端とディエンファシス機能を有する出力装置に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
この図9に示す出力装置の中継バッファ部11は、等価の構成でサイズが等しい複数の第1の低電圧差動対LVDS11、LVDS21・・・LVDS241と、第2の低電圧差動対LVDS12、LVDS22・・・LVDS242からなる。但し、第1の低電圧差動対LVDS11・・・LVDS241と、第2の低電圧差動対LVDS12の構成は同じだがサイズは異なる。これらの構成は図4に示した低電圧差動対と同様の構成である。また、各低電圧差動対LVDSi2(iは1〜24)から出力された低振幅の信号は増幅アンプ部12を構成する第1の増幅用コンパレータCMPAPi、CMPAMi(iは1〜24)に入力され、振幅を増幅されて、データ出力部13を構成するインバータPDi、MDi(iは1〜24)に入力される。
データ出力部13は、図14に示したインバータと同様の構成をしたインバータPD、MDが共に24個ある。
【0031】
以下、図10を用いてデータ出力部13のインバータPDi及びMDi(iは1〜24)について説明する。
図10はデータ出力部のインバータの回路構成を示した図である。
なお、データ出力部のインバータDMiはインバータPDiと同様の構成なので説明を省略する。
この図10において、APiは入力端子、TXPは出力端子、PSW2i−1はpチャネルMOSトランジスタ、NSW2i−1はnチャネルMOSトランジスタ、PR2i−1は1200Ωの抵抗、NR2i−1は1200Ω(50)の抵抗である。
i番目の入力端子APiは、(i−1)番目のトランジスタPSW2i−1と、(i−1)番目のトランジスタNSW2i−1のゲートと接続されており、入力端子APiにハイレベルの電圧が入力されるとトランジスタNSW2i−1がオンとなり、出力端子TXPと接地電圧の間に1200Ωの抵抗が接続される。入力端子APiにローレベルの電圧が入力されると、トランジスタPSW2i−1がオンとなり、出力端子TXPと電源電圧の間に1200Ω抵抗が接続される。トランジスタPSW2i−1、NSW2i−1のゲートに入力される電圧は、トランジスタPSW2i−1及びNSW2i−1のオン抵抗が1200Ωと比べて充分低くならないと出力インピーダンスに影響を与えるので、入力端子APiに入力される信号は大振幅を要求される。
データ出力部13のインバータPDi、MDiに入力される信号によって、出力の振幅を調整することが可能である。本実施例では抵抗分圧で振幅を変えることにより、ディエンファシス、エンファシス機能に対応することが可能である。
【0032】
図11、図12はエンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図であり、図11(a)は電源電圧1.0VでTXP−TXMが0.5Vになるようにスイッチが切り替わった状態を示す。
データ出力部13のインバータPDiの全てのスイッチ(トランジスタPSW2i−1、NSW2i−1)にはローレベルの信号が、データ出力部MDiの全てのスイッチ(トランジスタPSW2i、NSW2i)にはハイレベルの信号が入力されているものとする。データ出力部13のインバータPDにローレベルの信号が入力されると、pチャネルMOSトランジスタのスイッチPWS2i−1が全てオンになり、nチャネルMOSトランジスタのスイッチNSW2i−1が全てオフとなる。
同様にデータ出力部13のインバータMDにハイレベルの信号が入力されると、nチャネルMOSトランジスタのスイッチNSW2iが全てオンになり、pチャネルMOSトランジスタのスイッチPSW2iが全てオフとなる。
図11(b)に上述の状態の等価回路を示す。データ出力部13のインバータPDは電源電圧から1200Ωの抵抗が並列に24個、TXPに並列に接続されているのと等価の状態であるので、データ出力部13のインバータPDの出力インピーダンスは50Ωである。一方で、データ出力部13のインバータMDはTXMから接地電圧に1200Ωの抵抗が24個並列に接続されているのと等価の状態であるので、データ出力部13のインバータMDの出力インピーダンスは50Ωである。よって終端抵抗とデータ出力部の抵抗分圧によりTXP−TXMは500mVとなる。
【0033】
図12(a)は電源電圧1.0VでTXP−TXMが0.25Vになるようにスイッチが切り替わった状態を示す。
データ出力部13のインバータPDは24個のスイッチのうち18個にローが入力され、6個にハイが入力されている。この時ローが入力されているスイッチはpチャネルMOSトランジスタのスイッチがオンになり、ハイが入力されているスイッチはnチャネルMOSトランジスタのスイッチがオンになる。
一方でデータ出力部13のインバータMDは24個のスイッチのうち18個にハイが入力され、6個にローが入力されている。
図12(b)に等価回路を示す。データ出力部13のインバータPDは、18個の抵抗が電源電圧とTXPに接続され、6個の抵抗が接地電圧とTXPに接続されているので、電源電圧から接地電圧の抵抗分圧は66.6Ωと200Ωで分圧されることになる。出力インピーダンスとしては50Ωである。
一方で、データ出力部13のインバータMDは18個の抵抗がTXMと接地電圧に接続され、6個の抵抗が電源電圧とTXMに接続されているので、電源電圧から接地電圧の抵抗分圧は200Ωと66.6Ωで抵抗分圧されることになる。出力インピーダンスとしては50Ωである。
スイッチを分割してデータを送信することで、出力インピーダンスを50Ωに保持しながら、出力電圧のレベルを変えることが可能になり、所望のエンファシスレベル、ディエンファシスレベルを得ることも可能となる。本実施例の出力装置は消費電流がデータパターンに依存せずに常に一定なので、電源変動のデータパターン依存性も少なく、低消費電流の高速シリアル出力装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る出力装置が適用される高速シリアル通信システムの構成を示した図である。
【図2】本実施形態の出力装置の構成を示した図である。
【図3】本実施形態の出力装置の構成を詳細に示した図である。
【図4】低電圧差動対の回路構成を示した図である。
【図5】コンパレータの回路構成を示した図である。
【図6】中継バッファ部、増幅アンプ部の代わりにインバータを用いた出力装置と、本実施形態の出力装置の消費電流の概略を示した図である。
【図7】第2の実施形態にかかる中継バッファ部の構成を示した図である。
【図8】中継バッファ部に設けられているi番目の第1及び第2のコンパレータの構成を示した図である。
【図9】第3の実施形態に係る出力装置の各構成を示した図である。
【図10】データ出力部の構成を説明するための図である。
【図11】エンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図である。
【図12】エンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図である。
【図13】特許文献1に開示されている従来の高速シリアル通信システムの送信側ドライバ回路の構成を示した図である。
【図14】特許文献2に開示されている半導体集積回路の回路図である。
【符号の説明】
【0035】
1…高速シリアル通信システム、2…送信側回路、3…受信側回路、4…差動伝送線路、5…往路伝送線路、6…復路伝送線路6、7…受信側レシーブ回路、8…デジタル回路、9…ドライバ回路、10…出力装置、11…中継バッファ部、12…増幅アンプ部、13…データ出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送に係り、より詳しくは、これら高速シリアル通信で使用されるデータ送信装置の出力装置、及びにその出力装置を備えた半導体集積装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製品のインターフェース速度が高速化されており、高速シリアル通信を使ったシステムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、差動信号を伝送する一対の伝送線路に接続された第1及び第2の各出力端子を備え、外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換し、第1及び第2の各出力端子に出力するドライバ回路において、第1の出力端子は、第1のプルアップ抵抗回路を介して所定の電源電圧に接続されると共に、第1のプルダウン抵抗回路を介して接地電圧に接続され、第2の出力端子は、第2のプルアップ抵抗回路を介して電源電圧に接続されると共に、第2のプルダウン抵抗回路を介して接地電圧に接続され、第1及び第2の各プルアップ抵抗回路、並びに第1及び第2の各プルダウン抵抗回路は、データ信号に応じて抵抗値がそれぞれ変化することで、高速シリアル通信システムにおいて用いられる送信側ドライバ回路の消費電力を低減するようにしている。
また特許文献2は、しきい値(しきい値電圧Vtha、Vthb、Vthc)を異ならせた複数の素子又は回路(入力バッファ回路)を含み、これら素子又は回路に共通の入力(入力電圧)が同時に加えられた場合に、しきい値に応じて異なる時期に状態変化を生じる構成とすることで、入力による状態変化の生起タイミングを変移させるようにした半導体集積回路が開示されている。
【特許文献1】特開2007−36848公報
【特許文献2】特開2006−262421公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高速シリアル通信において、伝送路の反射波に起因する信号劣化を防ぐために、データ出力部と伝送路とのインピーダンス整合は必要不可欠である。
図13は、特許文献1に示されている従来の高速シリアル通信システムの送信側ドライバ回路の構成を示した図である。
この図13に示すドライバ回路109は、4つのインバータ120〜123と、2つのデータ生成回路部124、125と、2つのエンファシス制御回路部126、127とを備える。各インバータ120、123の出力端は、対応する各エンファシス制御回路部126、127の入力端にそれぞれ接続され、各インバータ121、122の出力端は、対応する各データ生成回路部124、125の入力端にそれぞれ接続されている。また、データ生成回路部124及びエンファシス制御回路部126の各出力端は、出力端OUT1を構成し、データ生成回路部125及びエンファシス制御回路部127の各出力端は、出力端OUT2を構成する。
データ生成回路部124は、出力端OUT1と所定の電源電圧Vccとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第1の部分抵抗回路PR11〜15と、出力端OUT1とGNDとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第2の部分抵抗回路DR11〜15とを備える。ここで、第1の各部分抵抗回路PR11〜PR15は全て同じ構成であり、第2の各部分抵抗回路DR11〜DR15は全て同じ構成である。
【0005】
第1の部分抵抗回路PR11及び第2の部分抵抗回路DR11についてそれぞれ説明すると、第1の部分抵抗回路PR11は、直列に接続されたP型金属酸化膜電界効果トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」という。)P11と抵抗R11とからそれぞれ構成され、第2の部分抵抗回路DR11は、直列に接続されたN型金属酸化膜電界効果トランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」という。)N11と抵抗R21とからそれぞれ構成されている。各トランジスタP11〜P15、N11〜N15のゲートは、インバータ121の出力端にそれぞれ接続されている。
また、データ生成回路部125は、出力端OUT2と電源電圧Vccとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第1の部分抵抗回路PR21〜PR25と、出力端OUT2とGNDとの間で並列にそれぞれ接続された5つの第2の部分抵抗回路DR21〜DR25とを備える。ここでも、第1の各部分抵抗回路PR21〜PR25は全て同じ構成であり、第2の各部分抵抗回路DR21〜DR25は全て同じ構成である。
一例として第1の部分抵抗回路PR21及び第2の部分抵抗回路DR21についてそれぞれ説明すると、第1の部分抵抗回路PR21は、直列に接続されたPMOSトランジスタP21と抵抗R31とからそれぞれ構成され、第2の部分抵抗回路DR21は、直列に接続されたNMOSトランジスタN21と抵抗R41とからそれぞれ構成されている。各トランジスタP21〜P25、N21〜N25のゲートは、インバータ122の出力端にそれぞれ接続されている。
【0006】
エンファシス制御回路部126は、出力端OUT1と所定の電源電圧Vccとの間で直列に接続されたPMOSトランジスタP16と抵抗R16とからなる第1の部分抵抗回路PR16、及び出力端OUT1とGNDとの間で直列に接続されたNMOSトランジスタN16と抵抗R26とからなる第2の部分抵抗回路DR16をそれぞれ備える。各トランジスタP16、N16のゲートは、インバータ120の出力端にそれぞれ接続されている。
エンファシス制御回路部127は、出力端OUT2と所定の電源電圧Vccとの間で直列に接続されたPMOSトランジスタP26と抵抗R36とからなる第1の部分抵抗回路PR26、及び出力端OUT2とGNDとの間で直列に接続されたNMOSトランジスタN26と抵抗R46とからなる第2の部分抵抗回路DR26をそれぞれ備える。各トランジスタP26、N26のゲートは、インバータ123の出力端にそれぞれ接続されている。
このように構成されるドライバ回路109は、スイッチであるPMOSトランジスタP11〜P16、NMOSトランジスタN11〜N16、PMOSトランジスタP21〜P26、NMOSトランジスタN21〜N26のオン・オフを切り替えることにより、出力端OUT1/OUT2の電圧レベルを切り替え、なおかつインピーダンス整合を図るようにしている。
【0007】
しかしながら、図13に示す従来のドライバ回路では、PMOSトランジスタP11〜P16及びP21〜P26、NMOSトランジスタN11〜N16及びN21〜N26のサイズをスイッチに直列に接続している抵抗R11〜R16、R21〜R26、R31〜R36、R41〜R46に対して充分小さいオン抵抗になるように設計しなければならない。このため、スイッチのサイズが大きくなる。
例えば、90nmプロセスにおいて、5Ω程度のオン抵抗とすると、PMOSトランジスタは、270um/0.08um、NMOSトランジスタは、90um/0.08um程度となる。よって、PMOSトランジスタP11〜P16、P21〜P26、及びNMOSトランジスタN11〜N16、N21〜N26を2.5GHz程度の周波数で駆動するためには、図13に示すインバータ120〜123のサイズは、少なくともゲート容量がスイッチのサイズの1/4以上にする必要がある。
さらに、インバータ120〜123の前段に配置する図示しないインバータのサイズも、インバータ120〜123のサイズの1/4以上は必要となるので、データ入力部のインバータが小さい場合は、複数のインバータが最終段を駆動させるまでに必要となる。このように、従来のドライバ回路では、大きなインバータを駆動させるために小さいインバータから徐々にサイズを大きくするという方法が採られている。インバータを用いるメリットしては、データの切り替わり時のみ電流が流れるので、常に電流を流す場合と比べて低消費電流化を図ることができる点が挙げられる。
しかしながら、インバータによるデータ授受の場合は、データパターンによって消費電流に違いが生じ、データパターン依存の電源電圧の変動が生じるのでジッタ増大の要因になるという問題点があった。
【0008】
また、電源電圧の変動を抑制する技術としては特許文献2がある。
図14は特許文献2に開示されている半導体集積回路の回路図である。
この図14に示す半導体集積回路のLSI202には複数の入力バッファ回路として、3組の入力バッファ回路241、242、243が設置されている。各入力バッファ回路241、242、243には、レベルが異なる複数のしきい値電圧Vtha、Vthb、Vthcが設定され、これらしきい値電圧Vtha、Vthb、Vthcの大小関係はVtha<Vthb<Vthcである。入力端子261、262、263には入力電圧Vinが加えられ、この入力電圧Vinは、一定の時間的レベル変化を以て立ち上がる電圧又は立ち下がる電圧である。そして、このような入力電圧Vinを受けると、各入力バッファ回路241、242、243には電気的な状態変化が生じ、出力端子281、282、283には出力電圧Vouta、Voutb、Voutcが取り出される。この場合、各入力バッファ回路241、242、243にはLSI202の電源端子210、212に接続された電源回路214により電圧VDD、Vss(VDD>Vss)が加えられている。
【0009】
このLSI202において、入力バッファ回路241は、第1のトランジスタ411及び第2のトランジスタ412からなるインバータで構成されている。トランジスタ411はpMOSトランジスタ、トランジスタ412はnMOSトランジスタで構成され、これらトランジスタ411、412はCMOS回路のインバータを構成している。各トランジスタ411、412の共通接続されたゲートには入力端子261が形成されて入力電圧Vinが加えられ、各トランジスタ411、412の共通接続されたドレインには出力端子281が形成されて出力電圧Voutaが取り出される。トランジスタ411のソースには電源回路214が接続されて電圧VDD、トランジスタ412のソースには電源回路214が接続されて電圧Vssが加えられている。そして、出力端子281に取り出される出力電圧Voutaは、トランジスタ411が導通した場合に高レベル(電圧VDD)、トランジスタ412が導通した場合に低レベル(電圧Vss)となる。このように従来の半導体集積回路においては閾値を異ならせることにより、貫通電流の量を減らすことを可能にし、その結果、電源電圧の変動量を抑えることを目的とした発明である。しかしながら、データパターンによる電源電圧の変動の差を完全に打ち消すことは出来ないのでジッタを無くすことは困難であった。
本発明では、データパターンに関わらず、低消費電流を図ることができる出力装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力する駆動回路からの差動信号を出力する出力装置であって、前記駆動回路から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部と、該中継バッファ部から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅部と、前記駆動回路に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の出力装置において、前記中継バッファ部は、n個(但し、nは自然数)の低電圧差動対により構成され、i番目(iは1〜Nの自然数)の前記低電圧差動対は、それぞれ差動信号が入力される第1及び第2の入力端子、及び差動信号を出力する第1及び第2の出力端子を有し、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対の第1及び第2の出力端子は、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続され、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続され、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の出力装置において、前記n個の低電圧差動対は、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の出力装置において、i番目の前記低電圧差動対と、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対のサイズの比は、i番目の前記低電圧差動対の出力インピーダンスと、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の出力装置において、前記中継バッファ部は、n個(nは自然数)の対をなす第1及び第2のコンパレータにより構成され、i番目(但し、iは1〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータは、それぞれ正極側の入力端子と負極側の入力端子を有し、前記i番目の第1のコンパレータの正極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの負極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの出力端子からは、前記i番目の第2のコンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記i−1番目(但し、iは2〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータの出力端子は、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続され、前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続され、前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の出力装置において、前記n個の第1及び第2のコンパレータは、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の出力装置において、前記i番目(但し、iは2〜N)の第1及び第2のコンパレータと、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータのサイズの比は、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータの出力インピーダンスと、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置において、前記増幅部は、対をなし、入力された信号の振幅を増幅して出力する第1及び第2の増幅用コンパレータにより構成され、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ正極側の入力端子及び負極側の入力端子を有し、前記第1の増幅用コンパレータの正極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記第1の増幅用コンパレータの負極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記第1の増幅用コンパレータの出力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記中継バッファ部から出力された差動信号が前記第1及び第2のコンパレータの入力端子にそれぞれ入力され、前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続され、前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の本発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の出力装置において、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ定電流減を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、高速シリアル伝送に用いられる半導体集積装置であって、請求項1乃至9の何れか一項に記載の出力装置を用いてシリアル信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の出力装置によれば、入力される入力信号のデータパターンに関わらず、消費電流をほぼ一定に保つことができるので、電源変動に強く、ジッタの無い出力装置を実現することができる。従って、本発明の出力装置を高速シリアル通信に用いることで、電源変動に強く低消費電流のデータ転送装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の出力装置が適用される高速シリアル通信システムの構成を示した図である。
この図1に示す高速シリアル通信システム1は、半導体集積装置によって構成され、送信側回路2、受信側回路3、及び差動伝送線路4を備える。差動伝送線路4は、送信側回路2と受信側回路3との間に設けられた往路伝送線路5と復路伝送線路6とにより構成されている。受信側回路3は、受信側レシーブ回路7と、差動伝送線路4の終端抵抗である2つの抵抗R1、R2と、コンデンサCとを備える。受信側レシーブ回路7の2つの入力端は差動伝送線路4に接続されている。以下では、受信側レシーブ回路7の一方の入力端と往路伝送線路5との接続部を「RXP」といい、受信側レシーブ回路7の他方の入力端と復路伝送線路6との接続部を「RXM」という。各抵抗R1、R2は、2つの接続部RXP、RXMの間で直列に接続され、各抵抗R1、R2の接続部は、コンデンサCを介して接地電圧GNDに接続されている。なお、コンデンサCは、バイパスコンデンサとして作用する。
【0018】
送信側回路2は、デジタル回路8、ドライバ回路9、及び出力装置10を備える。出力装置10の2つの出力端OUT1、OUT2は、対応する往路伝送線路5及び復路伝送線路6にそれぞれ接続されている。以下では、出力端OUT1と往路伝送線路5との接続部を「TXP」といい、出力端OUT2と復路伝送線路6との接続部を「TXM」という。デジタル回路8は、相反する信号レベルを有する一対のシリアルデータ信号SDTAP、SDATAM、及び相反する信号レベルを有する一対のエンファシス制御信号EMPHP、EMPHMをそれぞれ生成し、それらをドライバ回路9にそれぞれ出力する。
ドライバ回路9は、デジタル回路8からそれぞれ出力された各シリアルデータ信号SDTAP、SDTAMを低振幅のアナログ差動信号に変換して出力装置10を介して往路伝送線路5及び復路伝送線路6に出力する。
送信側回路2は、差動伝送線路4を介して、アナログ差動信号を受信側回路3に送信する。そして、その差動信号は、受信側レシーブ回路7に入力される。各抵抗R1、R2は、受信側回路3におけるインピーダンス整合用の終端抵抗であり、差動伝送線路4上で伝送される差動信号の電圧振幅は、各抵抗R1、R2の抵抗値によって決まる。高速シリアル通信システムでは、差動伝送線路4における差動インピーダンスZdiffは100Ωであり、各抵抗R1、R2の抵抗値はそれぞれ50Ωである。インピーダンス整合は、差動伝送線路4上において、低振幅の差動信号を送受信する際に信号品質を良好なものにするために必要とされる。
【0019】
<第1の実施形態>
図2は、上記した出力装置10の構成を示した図である。
この図2に示すように、出力装置10は、中継バッファ部11、増幅アンプ部12、データ出力部13を備える。ドライバ回路9から出力される差動信号P1及びその反転である信号M1が中継バッファ部11に入力される。中継バッファ部11から低振幅で出力された信号BP、DMは、増幅アンプ部12に入力される。増幅アンプ部12では、入力された信号BP、DMの振幅を増幅する。増幅アンプ部12で増幅された信号DP、DMは、データ出力部13に入力され、データ出力部13を介して出力される。この場合、増幅アンプ部12から出力される信号DP、DMは、ドライバ回路9から出力される差動信号P1、M1に比べて大きな駆動力を持って出力されることになる。
このように出力装置10を構成した場合は、中継バッファ部11では低振幅の信号を伝送しているので低消費電流での信号伝送が可能になる。増幅アンプ部12において振幅を増幅して信号を伝送しているので、データ出力部13を駆動させるのに大きな振幅が必要な場合でもデータ出力部13の駆動が可能になる。
【0020】
図3は本実施形態の出力装置の構成を詳細に示した図である。なお、図2と同一部位には同一符号を付して説明は省略する。
この図3に示すように、中継バッファ部11は、低電圧差動対LVDS1、LVDS2により構成されている。なお、図3では、2つの低電圧差動対LVDSにより中継バッファ部11を構成する場合を例に挙げて説明するが、これはあくまでも一例であり、データ出力部13のサイズによって決定されるものである。
また、本実施形態では、低電圧差動対LVDS1、LVDS2は同じ構成としているが異なるサイズであってもよい。例えば、低電圧差動対LVDS1のサイズを「1」とすると、低電圧差動対LVDS2のサイズを「2」で構成してもよい。
また、i番目の低電圧差動対LVDSi(但し、iは2以上の整数)と、(i−1)番目の低電圧差動対LVDSi−1のサイズの比は、i番目の低電圧差動対LVDSiの出力インピーダンスと、i番目の低電圧差動対LVDSiの出力に接続される負荷容量、例えば(i−1)番目の低電圧差動対LVDSi−1の入力容量や、配線容量の積が常に一定になるように定める。
【0021】
増幅アンプ部12は、等価の第1の増幅用コンパレータCMPAP及び第2の増幅用コンパレータCMPAMにより構成される。第1の増幅用コンパレータCMPAP、CMPAMは、中継バッファ部11から出力された信号BP、BMの振幅を増幅して出力する機能を有する。
第1の増幅用コンパレータCMPAPの正側の入力は、第2の増幅用コンパレータCMPAMの負側の入力と接続され、中継バッファ部11の出力信号BPが入力される。また第1の増幅用コンパレータCMPAPの負側入力は、第2の増幅用コンパレータCMPAMの正側入力と接続され、中継バッファ部11の出力信号BMが入力される。この場合、第1の増幅用コンパレータCMPAPの出力信号DPは、第2の増幅用コンパレータCMPAMの出力信号DMの反転信号が出力される。
データ出力部13は、インバータPD、MDにより構成され、増幅アンプ部12から出力される出力信号DP、Dmを反転して出力する。
【0022】
図4は低電圧差動対の回路構成を示した図である。
図4において、LPi及びLMiはi番目の入力端子を示し、LPOi及びLMOiはi番目の出力端子を示している。n1〜n4はnチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタという)、p1〜p4はpチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタという)、ni1は電流源を示している。
i番目の入力端子(第1の入力端子)LPiはトランジスタn1、n4と接続され、i番目の入力端子(第2の入力端子)LMiはトランジスタn2、n4と接続されている。対をなすトランジスタn1、n4は、同じサイズで構成され、同様にトランジスタn2、n3、トランジスタp1、p4、及びトランジスタp2、p3は同じサイズで構成される。
i番目の出力端子(第1の出力端子)LPOiは、トランジスタp1及びトランジスタn1のドレインと接続され、i番目の出力端子(第2の出力端子)LMOiはトランジスタp4、n4のドレインと接続されている。トランジスタp1、P2のゲートは、トランジスタp2、n2、p3、n3のドレイン、及びトランジスタp3、p4のゲートに接続されている。
【0023】
入力端子LPiには、入力端子LMiの反転のデータが入力されるので、対をなすトランジスタn1、n3またはトランジスタn2、n4の何れか一方が必ずオンすることになる。これにより、中継バッファ部11を構成する低電圧差動対LVDSiには、データパターンに関わらず、電流源ni1の電流が電源電圧(VDDA)から接地電圧まで流れることになる。
また、このとき出力端子LPOi、LMOiから出力される出力信号の振幅はVdda(電源電圧)−Vcmとなる。
ここで、例えばVdda−Vcm=0.5Vddaだった時の消費電流について以下に示す。この時の入力トランジスタのゲート容量をCnとする。
nチャネルトランジスタが振幅増幅差動アンプ部12と同じサイズのインバータの充放電電流は、pチャネルトランジスタがnチャネルトランジスタと同等の駆動力を持つように設計した場合、ゲート容量が3Cnなので、充放電電荷Q1は、
Q1=4×Cn×Vdda・・・(式1)
となる。
【0024】
またpチャンネルトランジスタとnチャンネルトランジスタが同時にオンした時に貫通電流が流れるので、その電流量をItとすると、インバータが1Tで消費する電流量I1は、
I1=It+4×Cn×Vdda・・・(式2)
となる。
PCIExpressのデータパターンの平均は1.5T程度なのでPCI−Expressでのインバータの消費電流Iinvは、
Iinv=0.67×It+2.67×Cn×Vdda・・・(式3)
となる。
一方、インバータの立ち上がり/立ち下がり(Tr/Tf)時間が1/4Tで、低電圧差動対のTr/Tfも1/4Tになるようにすると、ni1の電流値Ini1は、
Iin1=2×Cn×Vdda/T・・・(式4)
となる。
よって、低電圧差動対消費電流Ilvdsは、
Ilvds=2×Cn×Vdda・・・(式5)
となる。
よって、i番目の低電圧差動対LVDSiに定常電流を流していても、インバータの消費電流より小さくなる。よって低電圧差動対の入力にはpチャネルMOSトランジスタよりもnチャネルMOSトランジスタを用いたほうが消費電流は小さくなる。
【0025】
図5はコンパレータの回路構成を示した図であり、この図5を用いて増幅差動アンプ12を構成する増幅用コンパレータCMPAP(M)について説明する。
AP、AMは入力端子、AMOは出力端子、n5〜n8はnチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタという)、p5〜p8はpチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタという)、ni2、pi2は定電流源を示している。
入力端子APは、トランジスタn5、トランジスタp7のゲートと接続され、入力端子AMはトランジスタn6、p8と接続される。入力端子APには、図3に示した中継バッファ部11の出力側に接続され、中継バッファ部11の出力信号BP、またはBMの何れか一方が入力され、入力端子AMには他方の出力信号BM、またはBPが入力される。つまり、入力端子APに出力信号BPが入力された場合、入力端子AMには出力信号BMが入力される。
【0026】
また逆に入力端子APに出力信号BMが入力された場合は、入力端子AMに出力信号BPが入力される。トランジスタn5、n6のソースに接続されている電流源ni2の電流値と、トランジスタp7、p8のソースに接続されている電流源pi2の電流値は等しい。また、それぞれ対をなすトランジスタn5、n6と、トランジスタp5、p6と、トランジスタp7、p8と、トランジスタn7、n8のサイズそれぞれは等しい。
この場合、入力端子AP、AMに入力される信号BP、BMは差動の関係にあるので、この図5に示すコンパレータでは、信号のパターンによらず常に電流源から一定の電流を消費することになる。つまり、消費電流はデータパターンによらず常に一定に保つことができる。また、このような構成を採ることで、振幅増幅差動アンプ12からは、大振幅の信号を出力することが可能になり、データ出力部13を駆動させるのに大振幅の信号を必要とする場合でも駆動可能である。
【0027】
図6は、中継バッファ部11、増幅アンプ部12の代わりにインバータを用いた出力装置の消費電流と、本実施形態の出力装置の消費電流の概略を示した図である。なお、電源と回路の間には配線抵抗があるものとする。
図6(a)はデータパターン、図6(b)は消費電流、図6(c)は電源電圧をそれぞれ示した図であり、(b)(c)に示す実線はインバータを用いたときの消費電流、破線は本発明の消費電流を示したものである。なお、横軸は(a)、(b)、(c)共に時間tである。
この図6(a)、(b)、(c)に示すように、インバータを用いた場合、データパターンが1T連続で遷移する場合、充放電電流、及び貫通電流が最も多く流れるため消費電流が最大となる。また逆にデータの遷移が少ない場合は消費電流が最小となる。
電源電圧は、電源についた配線抵抗に電流が流れることで変化するので、消費電流が最大の時に最も下がる。また、消費電流が最小の時に電源電圧は最大となる。つまり、インバータを用いた場合の電源電圧の変動量は、データパターンに依存することになる。電源電圧が下がるとインバータの駆動力が下がるので、Tr/Tfが劣化し、電源電圧の変動はジッタの原因となる。
一方、本実施形態の出力装置の消費電流は、定常電流を流しているので、データパターンに依存せず常に一定である。よって、電源の変動量はインバータに比べて充分小さい。したがって、本実施形態の出力装置を用いれば低消費電力と電源電圧変動の抑制を同時に実現することが可能である。
【0028】
<第2の実施形態>
次に、本発明の出力装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態に係る出力装置の全体構成は、図2に示した第1の本実施形態の出力装置の構成と同じであり、各構成要素が第1の実施形態とは異なるものである。
図7は第2の実施形態にかかる中継バッファ部の構成を示した図である。
図7に示す出力装置は、図3に示した出力装置とは中継バッファ部11の構成が異なる。この図7に示す中継バッファ部11は、対となるコンパレータCMPP1、CMPM1と、CMPP2、CMPM2で構成されている。なお、図7では、中継バッファ11を構成するコンパレータの対は2つだが、この限りではなく、中継バッファ11のコンパレータの対の数はデータ出力部13のサイズによって決定されるものである。
また、対となるコンパレータCMPP1、CMPM1は、サイズ、構成とも等価であるのに対して、コンパレータCMPP2、CMPM2は同じ構成だが、サイズは異なるものである。例えば、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1のサイズを「1」とすると、i番目のコンパレータCMPPiのサイズは「2」で構成される。
なお、i番目のコンパレータCMPPiと、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1のサイズの比は、i番目のコンパレータCMPPiの出力インピーダンスと、i番目のコンパレータCMPPiの出力に接続される負荷容量、例えば、(i−1)番目のコンパレータCMPPi−1の入力容量や配線容量の積が常に一定になるように決定される。
なお、増幅アンプ部12は、データ出力部13の構成は、図3に示した第1の実施形態に係る出力装置10と同様の構成なので説明は省略する。
【0029】
図8は、中継バッファ部11に設けられているi番目の第1及び第2のコンパレータCMPPi(CMPMi)の構成を示した図である。
この図8において、Pi及びMiは入力端子、POiは出力端子、n10、n11はnチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタと称する)、p10〜p11はpチャネルトランジスタ(以下、単にトランジスタと称する)、ni3は電流源をそれぞれ示している。
入力端子Piはトランジスタn10と接続され、入力端子Miはトランジスタn11と接続されている。対をなすトランジスタn10、n11は同じサイズで構成される。
また同様にトランジスタp10、p11も同じサイズで構成される。
出力端子POiは、トランジスタp11及びトランジスタn11のドレインと接続されている。トランジスタp11のゲート、トランジスタp10のゲート、ドレインが接続されている。入力端子Piには、入力端子Miの反転のデータが入力されるので、トランジスタn10、n11のどちらか一方がオンすることになるので、データパターンに関わらず、コンパレータには電流源ni3の電流が電源電圧(VDDA)から接地電圧まで流れることになる。よって電源変動のデータパターン依存性を除去することが可能である。
また、第1の実施形態と同様に、入力部にnチャネルMOSトランジスタを用いることで同等の駆動力を持ったインバータや、pチャネルMOSトランジスタを用いたコンパレータと比べて、消費電流を小さくすることができる。
【0030】
<第3の実施形態>
次に、本発明の出力装置の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態に係る出力装置の全体構成は、図2に示した第1の本実施形態の出力装置の構成と同じであり、各構成要素が第1の実施形態とは異なるものである。
図9は、第3の実施形態に係る出力装置の各構成を示した図である。
高速通信では、データの送信の際に出力インピーダンスを50Ω終端し、さらにデータパターンによって振幅を変化させるディエンファシスまたはエンファシス機能を仕様として策定しているものも多い。そこで、図9では50Ω終端とディエンファシス機能を有する出力装置に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
この図9に示す出力装置の中継バッファ部11は、等価の構成でサイズが等しい複数の第1の低電圧差動対LVDS11、LVDS21・・・LVDS241と、第2の低電圧差動対LVDS12、LVDS22・・・LVDS242からなる。但し、第1の低電圧差動対LVDS11・・・LVDS241と、第2の低電圧差動対LVDS12の構成は同じだがサイズは異なる。これらの構成は図4に示した低電圧差動対と同様の構成である。また、各低電圧差動対LVDSi2(iは1〜24)から出力された低振幅の信号は増幅アンプ部12を構成する第1の増幅用コンパレータCMPAPi、CMPAMi(iは1〜24)に入力され、振幅を増幅されて、データ出力部13を構成するインバータPDi、MDi(iは1〜24)に入力される。
データ出力部13は、図14に示したインバータと同様の構成をしたインバータPD、MDが共に24個ある。
【0031】
以下、図10を用いてデータ出力部13のインバータPDi及びMDi(iは1〜24)について説明する。
図10はデータ出力部のインバータの回路構成を示した図である。
なお、データ出力部のインバータDMiはインバータPDiと同様の構成なので説明を省略する。
この図10において、APiは入力端子、TXPは出力端子、PSW2i−1はpチャネルMOSトランジスタ、NSW2i−1はnチャネルMOSトランジスタ、PR2i−1は1200Ωの抵抗、NR2i−1は1200Ω(50)の抵抗である。
i番目の入力端子APiは、(i−1)番目のトランジスタPSW2i−1と、(i−1)番目のトランジスタNSW2i−1のゲートと接続されており、入力端子APiにハイレベルの電圧が入力されるとトランジスタNSW2i−1がオンとなり、出力端子TXPと接地電圧の間に1200Ωの抵抗が接続される。入力端子APiにローレベルの電圧が入力されると、トランジスタPSW2i−1がオンとなり、出力端子TXPと電源電圧の間に1200Ω抵抗が接続される。トランジスタPSW2i−1、NSW2i−1のゲートに入力される電圧は、トランジスタPSW2i−1及びNSW2i−1のオン抵抗が1200Ωと比べて充分低くならないと出力インピーダンスに影響を与えるので、入力端子APiに入力される信号は大振幅を要求される。
データ出力部13のインバータPDi、MDiに入力される信号によって、出力の振幅を調整することが可能である。本実施例では抵抗分圧で振幅を変えることにより、ディエンファシス、エンファシス機能に対応することが可能である。
【0032】
図11、図12はエンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図であり、図11(a)は電源電圧1.0VでTXP−TXMが0.5Vになるようにスイッチが切り替わった状態を示す。
データ出力部13のインバータPDiの全てのスイッチ(トランジスタPSW2i−1、NSW2i−1)にはローレベルの信号が、データ出力部MDiの全てのスイッチ(トランジスタPSW2i、NSW2i)にはハイレベルの信号が入力されているものとする。データ出力部13のインバータPDにローレベルの信号が入力されると、pチャネルMOSトランジスタのスイッチPWS2i−1が全てオンになり、nチャネルMOSトランジスタのスイッチNSW2i−1が全てオフとなる。
同様にデータ出力部13のインバータMDにハイレベルの信号が入力されると、nチャネルMOSトランジスタのスイッチNSW2iが全てオンになり、pチャネルMOSトランジスタのスイッチPSW2iが全てオフとなる。
図11(b)に上述の状態の等価回路を示す。データ出力部13のインバータPDは電源電圧から1200Ωの抵抗が並列に24個、TXPに並列に接続されているのと等価の状態であるので、データ出力部13のインバータPDの出力インピーダンスは50Ωである。一方で、データ出力部13のインバータMDはTXMから接地電圧に1200Ωの抵抗が24個並列に接続されているのと等価の状態であるので、データ出力部13のインバータMDの出力インピーダンスは50Ωである。よって終端抵抗とデータ出力部の抵抗分圧によりTXP−TXMは500mVとなる。
【0033】
図12(a)は電源電圧1.0VでTXP−TXMが0.25Vになるようにスイッチが切り替わった状態を示す。
データ出力部13のインバータPDは24個のスイッチのうち18個にローが入力され、6個にハイが入力されている。この時ローが入力されているスイッチはpチャネルMOSトランジスタのスイッチがオンになり、ハイが入力されているスイッチはnチャネルMOSトランジスタのスイッチがオンになる。
一方でデータ出力部13のインバータMDは24個のスイッチのうち18個にハイが入力され、6個にローが入力されている。
図12(b)に等価回路を示す。データ出力部13のインバータPDは、18個の抵抗が電源電圧とTXPに接続され、6個の抵抗が接地電圧とTXPに接続されているので、電源電圧から接地電圧の抵抗分圧は66.6Ωと200Ωで分圧されることになる。出力インピーダンスとしては50Ωである。
一方で、データ出力部13のインバータMDは18個の抵抗がTXMと接地電圧に接続され、6個の抵抗が電源電圧とTXMに接続されているので、電源電圧から接地電圧の抵抗分圧は200Ωと66.6Ωで抵抗分圧されることになる。出力インピーダンスとしては50Ωである。
スイッチを分割してデータを送信することで、出力インピーダンスを50Ωに保持しながら、出力電圧のレベルを変えることが可能になり、所望のエンファシスレベル、ディエンファシスレベルを得ることも可能となる。本実施例の出力装置は消費電流がデータパターンに依存せずに常に一定なので、電源変動のデータパターン依存性も少なく、低消費電流の高速シリアル出力装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る出力装置が適用される高速シリアル通信システムの構成を示した図である。
【図2】本実施形態の出力装置の構成を示した図である。
【図3】本実施形態の出力装置の構成を詳細に示した図である。
【図4】低電圧差動対の回路構成を示した図である。
【図5】コンパレータの回路構成を示した図である。
【図6】中継バッファ部、増幅アンプ部の代わりにインバータを用いた出力装置と、本実施形態の出力装置の消費電流の概略を示した図である。
【図7】第2の実施形態にかかる中継バッファ部の構成を示した図である。
【図8】中継バッファ部に設けられているi番目の第1及び第2のコンパレータの構成を示した図である。
【図9】第3の実施形態に係る出力装置の各構成を示した図である。
【図10】データ出力部の構成を説明するための図である。
【図11】エンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図である。
【図12】エンファシス時、ディエンファシス時のスイッチの状態を示した図である。
【図13】特許文献1に開示されている従来の高速シリアル通信システムの送信側ドライバ回路の構成を示した図である。
【図14】特許文献2に開示されている半導体集積回路の回路図である。
【符号の説明】
【0035】
1…高速シリアル通信システム、2…送信側回路、3…受信側回路、4…差動伝送線路、5…往路伝送線路、6…復路伝送線路6、7…受信側レシーブ回路、8…デジタル回路、9…ドライバ回路、10…出力装置、11…中継バッファ部、12…増幅アンプ部、13…データ出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力する駆動回路からの差動信号を出力する出力装置であって、
前記駆動回路から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部と、該中継バッファ部から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅部と、前記駆動回路に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部と、を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項2】
請求項1記載の出力装置において、
前記中継バッファ部は、n個(但し、nは自然数)の低電圧差動対により構成され、i番目(iは1〜Nの自然数)の前記低電圧差動対は、それぞれ差動信号が入力される第1及び第2の入力端子、及び差動信号を出力する第1及び第2の出力端子を有し、
i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対の第1及び第2の出力端子は、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続され、
前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子がi番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続され、
前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続されることを特徴とする前記出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力装置において、
前記n個の低電圧差動対は、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の出力装置において、
i番目の前記低電圧差動対と、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対のサイズの比は、i番目の前記低電圧差動対の出力インピーダンスと、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する出力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の出力装置において、
前記中継バッファ部は、n個(nは自然数)の対をなす第1及び第2のコンパレータにより構成され、i番目(但し、iは1〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータは、それぞれ正極側の入力端子と負極側の入力端子を有し、前記i番目の第1のコンパレータの正極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの負極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの出力端子からは、前記i番目の第2のコンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記i−1番目(但し、iは2〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータの出力端子は、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続され、
前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続され、
前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする出力装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の出力装置において、
前記n個の第1及び第2のコンパレータは、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の出力装置において、
前記i番目(但し、iは2〜N)の第1及び第2のコンパレータと、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータのサイズの比は、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータの出力インピーダンスと、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する出力装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置において、
前記増幅部は、対をなし、入力された信号の振幅を増幅して出力する第1及び第2の増幅用コンパレータにより構成され、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ正極側の入力端子及び負極側の入力端子を有し、前記第1の増幅用コンパレータの正極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの負極側の入力端子と接続され、
前記第1の増幅用コンパレータの負極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの正極側の入力端子と接続され、
前記第1の増幅用コンパレータの出力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記中継バッファ部から出力された差動信号が前記第1及び第2のコンパレータの入力端子にそれぞれ入力され、
前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続され、
前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする出力装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の出力装置において、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ定電流減を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項10】
高速シリアル伝送に用いられる半導体集積装置であって、請求項1乃至9の何れか一項に記載の出力装置を用いてシリアル信号を出力することを特徴とする半導体集積装置。
【請求項1】
外部から入力されたデータ信号を差動信号に変換して出力する駆動回路からの差動信号を出力する出力装置であって、
前記駆動回路から入力された差動信号を低振幅で差動出力する中継バッファ部と、該中継バッファ部から出力される差動信号が入力され、振幅を増幅して出力する増幅部と、前記駆動回路に比べて高い駆動力で差動出力をするデータ出力部と、を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項2】
請求項1記載の出力装置において、
前記中継バッファ部は、n個(但し、nは自然数)の低電圧差動対により構成され、i番目(iは1〜Nの自然数)の前記低電圧差動対は、それぞれ差動信号が入力される第1及び第2の入力端子、及び差動信号を出力する第1及び第2の出力端子を有し、
i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対の第1及び第2の出力端子は、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続され、
前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子がi番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続され、
前記i−1番目の前記低電圧差動対の第1の出力端子が、i番目の前記低電圧差動対の第2の入力端子と接続された場合、前記i−1番目の前記低電圧差動対の第2の出力端子が前記i番目の前記低電圧差動対の第1の入力端子と接続されることを特徴とする前記出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力装置において、
前記n個の低電圧差動対は、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の出力装置において、
i番目の前記低電圧差動対と、i−1番目(但し、iは2〜N)の前記低電圧差動対のサイズの比は、i番目の前記低電圧差動対の出力インピーダンスと、i番目の前記低電圧差動対の第1及び第2の入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する出力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の出力装置において、
前記中継バッファ部は、n個(nは自然数)の対をなす第1及び第2のコンパレータにより構成され、i番目(但し、iは1〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータは、それぞれ正極側の入力端子と負極側の入力端子を有し、前記i番目の第1のコンパレータの正極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの負極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの負極側の入力端子は、前記i番目の第2のコンパレータの正極側の入力端子と接続され、前記i番目の第1のコンパレータの出力端子からは、前記i番目の第2のコンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記i−1番目(但し、iは2〜N)において対をなす第1及び第2のコンパレータの出力端子は、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続され、
前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続され、
前記i−1番目の第1のコンパレータの出力端子が前記i番目の第2のコンパレータの入力端子と接続された場合、前記i−1番目の第2のコンパレータの出力端子が前記i番目の第1のコンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする出力装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の出力装置において、
前記n個の第1及び第2のコンパレータは、それぞれ定電流源を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の出力装置において、
前記i番目(但し、iは2〜N)の第1及び第2のコンパレータと、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータのサイズの比は、前記i−1番目の第1及び第2のコンパレータの出力インピーダンスと、前記i番目の第1及び第2のコンパレータの入力端子に接続される負荷容量の積が電流値に関わらず略一定であるように定められていることを特徴する出力装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置において、
前記増幅部は、対をなし、入力された信号の振幅を増幅して出力する第1及び第2の増幅用コンパレータにより構成され、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ正極側の入力端子及び負極側の入力端子を有し、前記第1の増幅用コンパレータの正極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの負極側の入力端子と接続され、
前記第1の増幅用コンパレータの負極側の入力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの正極側の入力端子と接続され、
前記第1の増幅用コンパレータの出力端子は、前記第2の増幅用コンパレータの出力端子の反転信号を出力し、前記中継バッファ部から出力された差動信号が前記第1及び第2のコンパレータの入力端子にそれぞれ入力され、
前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続され、
前記中継バッファ部の第1の出力端子が前記第2の増幅用コンパレータの入力端子と接続された場合、前記中継バッファ部の第2の出力端子が前記第1の増幅用コンパレータの入力端子と接続されることを特徴とする出力装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の出力装置において、前記第1及び第2の増幅用コンパレータは、それぞれ定電流減を有し、電流モードロジックを構成していることを特徴とする出力装置。
【請求項10】
高速シリアル伝送に用いられる半導体集積装置であって、請求項1乃至9の何れか一項に記載の出力装置を用いてシリアル信号を出力することを特徴とする半導体集積装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−105858(P2009−105858A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278128(P2007−278128)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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