説明

制御可能なサージ電流耐性を有するパワースイッチング素子

半導体スイッチング素子は、ワイドバンドギャップパワートランジスタと、前記パワートランジスタと並列に接続されたワイドバンドギャップサージ電流トランジスタと、前記サージ電流トランジスタを駆動するように構成された駆動トランジスタを含む。前記半導体スイッチング素子の、オン状態での出力電流のほぼすべては、前記パワートランジスタのドレイン−ソース電圧が第一の電圧範囲内にあるときには、前記パワートランジスタのチャネルを通って流れる。当該第一の電圧範囲は、例えば、通常動作中に期待されるドレイン−ソース電圧に対応し得る。その一方で、前記半導体スイッチング素子は、さらに、オン状態で、前記パワートランジスタのドレイン−ソース電圧が第二の(より高い)電圧範囲内にあるときには、出力電流が、前記サージ電流トランジスタ、および前記パワートランジスタのチャネルの両方を通って流れるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2009年6月2日に出願された米国仮特許出願第61/183,214号に基づいて、米国特許法第119条(e)による優先権を主張するものであり、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、半導体素子に関するものであり、特に、サージ電流耐性を有するパワー半導体素子に関する。
【背景技術】
【0003】
パワーMOS電界効果トランジスタ(“MOSFET”)は、よく知られたタイプの半導体トランジスタであり、高電力の応用分野においてスイッチング素子として用いられ得る。パワーMOSFETは、ゲートバイアス電圧を、素子のゲート電極に適用することによって、オンまたはオフにされ得る。パワーMOSFETをオンにする(すなわち、“オン状態”にある)とき、電流は、MOSFETのチャネルを介して流れる。バイアス電圧がゲート電極から取り除かれた(または、しきい値レベルよりも減少した)とき、電流はチャンネルを介して流れることをやめる。例として、n型MOSFETは、ゲートバイアス電圧がかけられたときにオンになり、素子のP型チャネル領域において、導電性のn型反転層を生成するのに十分である。当該n型反転層は、MOSFETのn型ソースおよびドレイン領域を電気的に接続し、それによって、その間の多数キャリアの伝導を可能にする。
【0004】
パワーMOSFETのゲート電極は、薄い絶縁体層によって、チャネル領域から分離される。MOSFETのゲートはチャネル領域から絶縁されているので、最小ゲート電流は、導電状態でMOSFETを維持するため、または、MOSFETをオン状態とオフ状態との間でスイッチングするために必要とされる。ゲートは、チャネル領域でキャパシタ(コンデンサ)を形成するので、ゲート電流は、スイッチングの間、小さく保たれる。よって、最小充放電電流(“変位電流”)は、スイッチングの間、必要とされ、より単純なゲート駆動回路を可能にする。さらに、MOSFETは、電流伝導がただ1つの多数キャリアの移動を介して生じるユニポーラ素子であるので、MOSFETは非常に高速なスイッチング速度を示すことができる。しかしながら、パワーMOSFETのドリフト領域は、比較的高いオン抵抗を示し、それは、少数キャリア注入がないことから起こる。この増加した抵抗は、順方向電流密度を制限でき、パワーMOSFETを用いて成し遂げられる。
【0005】
ほとんどのパワー半導体素子は、ケイ素(シリコン“Si”)から形成されるが、その他様々な半導体材料も用いられている。炭化ケイ素(“SiC”)は、これら代替材料の1つである。炭化ケイ素は、例えば、広いバンドギャップ、高い電界破壊強度(electric field breakdown strength)、高い熱伝導率、高融点、および、高飽和電子ドリフト速度を含む、潜在的に有利な半導体特性を有する。よって、例えば、ケイ素などの他の半導体材料で形成されるデバイスに比べて、炭化ケイ素で形成される電子デバイスは、より高温で、高出力密度で、より高速で、より高い電力レベルで、かつ/または、高い放射線密度のもので動作する性能を備え得る。パワー炭化ケイ素MOSFETは、比較的大きな出力電流を処理し、比較的高い阻止電圧をサポートする機能により、様々な電力応用分野においてスイッチング素子として用いられることが当該技術分野において周知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの応用において、スイッチによって送電される電流の量は、著しく変化し得る。例として、送電網で用いられるスイッチによって送られる電流は、当該送電網における利用者の変動する電力要求に基づいて変化する。ゆえに、送電網で用いられるスイッチは、たとえ、平均電流レベルは最大(ピーク)電流レベルよりも非常に低いとしても、最大レベルに対応するように作られなければならない。特に、電力変動の存在、および/または、短絡あるいは送電網内でサージ電流を生成し得るその他の障害のために、サージ電流耐性は、将来の送電網の信頼性にとって重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に従って、半導体スイッチング素子は提供される。当該半導体スイッチング素子は、パワートランジスタと、前記パワートランジスタと並列に接続されたサージ電流トランジスタと、前記サージ電流トランジスタを駆動するように構成された駆動トランジスタを含む。これらの素子は、オン状態で、当該素子の実質上すべての出力電流が、チャネルの両端の電圧が第一の電圧範囲内にあるときに、パワートランジスタのチャネルを流れるように構成される。その一方で、出力電流は、チャネルの両端の電圧が第二の(より高い)電圧範囲内にあるときに、サージ電流トランジスタとパワートランジスタのチャネルの両方を流れる。サージ電流トランジスタは、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含み、パワートランジスタは、パワーMOSFETを含み、駆動トランジスタは、駆動MOSFETを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、これらの素子は、半導体スイッチング素子を流れるサージ電流を飽和させるように構成され得る。そのような実施形態では、飽和レベルは、パワーMOSFETのチャネルの両端の電圧と、パワーMOSFETおよび駆動MOSFETのゲートに印加されるバイアス電圧との関数となり得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、パワーMOSFETのゲートは、駆動MOSFETのゲートに電気的に接続され、パワーMOSFETの第一のソース/ドレイン領域は、BJTのコレクタに電気的に接続され、パワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、BJTのエミッタに電気的に接続され得る。駆動MOSFETの第一のソース/ドレイン領域は、BJTのコレクタに電気的に接続され、駆動MOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、BJTのベースに電気的に接続され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、スイッチング素子は、n型炭化ケイ素ドリフト層と、当該n型炭化ケイ素ドリフト層におけるp型炭化ケイ素ベース層および炭化ケイ素p型ウェルを含むことができる。n型炭化ケイ素エミッタ領域は、p型炭化ケイ素ベース層上に与えられ、駆動MOSFETの第一のn型ソース/ドレイン領域は、炭化ケイ素p型ウェルの上部に与えられる。パワーMOSFETの第一のn型ソース/ドレイン領域は、炭化ケイ素p型ウェルの上部に与えられる。本素子は、n型炭化ケイ素エミッタ領域に近接するp型炭化ケイ素ベース層において高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域、および、当該高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域と駆動MOSFETの第一のソース/ドレイン領域との間の電気的接続を含むこともできる。そのような実施形態において、n型炭化ケイ素ドリフト層は、BJTのコレクタ、パワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域および駆動MOSFETの第二のソース/ドレイン領域として機能することができる。
【0011】
本発明の更なる実施形態によると、半導体スイッチは、第一のスイッチング速度を有する第一の半導体と、第二の(より遅い)スイッチング速度を有する第二の半導体を含む。これらのスイッチは、当該スイッチの実質上すべての出力電流が、出力電流レベルの第一範囲で、第一の半導体素子を流れるように構成される。その一方で、出力電流は、出力電流レベルの第二の(より高い)範囲で、第一および第二の半導体素子の両方を流れる。
【0012】
いくつかの実施形態では、第一の半導体素子は、ユニポーラ素子とし、第二の半導体素子は、バイポーラ素子とすることができる。例えば、第一の半導体素子はパワーMOSFETとすることができ、第二の半導体素子はBJTとすることができる。BJTおよびパワーMOSFETは、BJTのコレクタとパワーMOSFETの第一のソース/ドレイン領域が第一の共通ノードを形成し、BJTのエミッタとパワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域は第二の共通ノードを形成するように、並列に実装され得る。パワー半導体スイッチは、BJTのベースにベース電流を供給するように構成された駆動MOSFETも含むことができる。いくつかの実施形態では、BJT、パワーMOSFETおよび駆動MOSFETは、それぞれ炭化ケイ素半導体素子とすることができる。
【0013】
本発明の更なる実施形態によると、パワースイッチング素子は、第一のワイドバンドギャップMOSFETと、第二のワイドバンドギャップMOSFETと、ワイドバンドギャップBJTを含む。これらの素子において、第一のMOSFETのゲートは、第二のMOSFETのゲートに電気的に接続され、第一のMOSFETの第一のソース/ドレイン領域は、第二のMOSFETの第一のソース/ドレイン領域に、およびBJTのコネクタに電気的に接続される。第一のMOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、BJTのコレクタに電気的に接続され、第二のMOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、BJTのベースに電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態による制御可能なサージMOSFET(“CST”)の回路図である。
【図2】図2は、コレクタ電圧とベースバイアス電圧に相関して、図1のCSTを流れる、測定された電流を示すグラフである。
【図3】図3は、図1のCSTの実施形態の概略断面図であり、本デバイスは、平面状のゲート電極構造を備える一体構造(モノリシック構造)として実装される。
【図4】図4は、図1のCSTの別の実施形態の概略断面図であり、本デバイスは、トレンチゲート電極構造を備える一体構造(モノリシック構造)として実装される。
【図5】図5は、図1のCSTのさらに別の実施形態の概略断面図であり、本デバイスは、ハイブリッド構造として実装される。
【図6】図6は、本発明の実施形態による制御可能なサージMOSFETの測定されたスイッチング時間を示すグラフである。
【図7】図7は、同等規格の炭化ケイ素BJTおよびMOSFETに対するオン抵抗を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明のある実施形態によるCSTパワースイッチの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、本発明の実施形態が示された、添付の図面を参照して以下に十分に説明する。しかしながら、当該発明は、多くの異なる形式で具現化することは可能であり、ここに示される実施形態に限定するものとみなすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本明細書等における開示が十分かつ完全であり、当業者に発明の範囲が十分に伝わるために与えられるものである。図面において、層や領域のサイズおよび相対的なサイズは、明確さのために誇張しているものもある。当然のことながら、要素または層は、別の要素または層“の上”、“に接続される”あるいは“に結合される”と言うとき、それは、その他の要素または層の直上、その他の要素または層に直接接続され、あるいは、その他の要素または層に直接されること、または、間に挟まれた要素または層が存在し得る。対照的に、要素が、別の要素または層“の直上”、“直接接続される”あるいは“直接結合される”と言うとき、間に挟まれた要素または層は存在しない。本明細書で用いられる用語“および/または(かつ/または)”は、1以上の列挙された項目のすべての組合せを含む。同様の番号は、全体を通して同様の要素を参照する。
【0016】
用語「第一の」および「第二の」は、様々な領域、層、および/または、要素を記述するために本願明細書において用いられるけれども、これらの領域、層、および/または、要素は、これらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、一方の領域、一方の層、または、一方の要素を、他方の領域、他方の層、または、他方の要素と区別するためにのみ用いられる。それゆえに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、以下で説明される第一の領域、第一の層、または、第一の要素は、第二の領域、第二の層、または、第二の要素と呼ばれることもあり、第二の領域、第二の層、または、第二の要素は、第一の領域、第一の層、または、第一の要素と呼ばれることもある。
【0017】
さらに、相対的な用語(“下”または“下部”および“上”または“上部”など)は、本明細書では、図面で説明するように、一方の要素と他方の要素との関係を記載するために用いられる。相対的な用語は、図面に表された配置に加えて、素子の異なる配置も包含することを意図している。例えば、もし図面における素子が配置転換されたならば、他の要素の“下側”に記載された要素は、当該他の要素の“上側”に向けられる。したがって、典型的な用語“下”は、図の特定の配向性に依存して、“下”と“上”の両方の配置を包含することができる。同様に、もし図面の1つにおける素子が配置転換されたならば、他の要素の“下方”または“下”というように記載された要素は、当該他の要素の“上方”に向けられる。したがって、典型的な用語“下方”または“下”は、上方と下方の両方の配置を包含することができる。
【0018】
本願明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態のみを記載するためにのみ用いられ、本発明の限定を意図するものではない。本願明細書において、単数形は、文脈において明確に示されていなければ、複数形も含まれることを意図する。さらに、当然のことながら、本願明細書で用いられる用語“からなる”、“構成する”、“含む”および/または“包含する”は、定まった特徴、要素、および/または、構成要素の存在を明確に記述し、1以上の特徴、要素、構成要素、および/または、それらのグループの存在あるいは追加を排除するものではない。
【0019】
本発明の実施形態は、概略である断面図を参照して、本願明細書に記載される。よって、例えば、製造技術および/または許容誤差の結果として、図の形状からの差異が予想される。このように、本発明の実施形態は、本願明細書で記載される領域の特定の形状に限定されると解釈すべきではなく、例えば、製造の結果生じる形状の誤差を含む。例えば、長方形のように図示された注入領域は、注入領域から非注入領域への2値の変化というよりはむしろ、典型的には、その端部において、曲線あるいは湾曲した特徴、および/または、注入の濃度の勾配を備えるものである。さらに、注入によって形成される埋没領域は、埋没領域と、注入を行う表面との間の領域において、結果的に、いくらかの注入をもたらす。それゆえに、図に示される領域は、本来は概略図であり、それらの形状は、素子の領域の実際の形状を示すことを意図しておらず、本発明の範囲を限定することも意図していない。
【0020】
別段の定めがなければ、本願明細書で用いられる全ての用語(技術的および科学的な用語を含む)は、本発明の属する技術分野における当業者によって、一般に理解されるような意味を有するものである。さらに、当然のことながら、一般に用いられる辞書において定義されるような用語は、本願の開示および関連分野に照らして、それらの意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈すべきであり、本願明細書において特に定義がない限りは、理想的または非常に形式的な意味で解釈されない。
【0021】
本願明細書において、ソースおよびドレイン領域は、一般に“ソース/ドレイン領域”と称されることもあり、それは、ソース領域またはドレイン領域のいずれかを参照するために用いられる用語である。さらに、当然のことながら、本願明細書に記載されている実施形態は、どんな方法および/またはどんな組合せでも一緒にすることができる。
【0022】
ハイパワー炭化ケイ素MOSFETは、現在、5000ボルト以上のような高い阻止電圧を要求する応用において、広く用いられている。例として、炭化ケイ素MOSFETは、市販されており、少なくとも10kVの電圧を阻止し得る電流密度10A/cm2以上で定められている。そのようなハイパワー炭化ケイ素MOSFETを形成するために、複数の“ユニットセル”は典型的に形成される。ただし、各ユニットセルは、ゲート電極、ソース領域およびドレイン領域を含む1つのMOSFETを含む。実際には、1つの電極は、典型的には、すべてのユニットセルに対するゲート電極として機能する半導体基板の表面上に形成される。半導体基板の反対面は、素子用の普通のドレイン(または、ソース)として機能する。複数のソース(または、ドレイン)領域は、ゲート電極の開口部内に置かれる。また、これらのソース領域は、お互いに電気的に接続される。
【0023】
上で述べたように、典型的なハイパワー炭化ケイ素MOSFETのゲート電極は、ユニットセルのソース(または、ドレイン)領域へのアクセスを与える当該ゲート電極において備えられる開口部とともに、素子の全活性領域にわたる。さらに、素子の定格電流を増すために、典型的には、ユニットセルの数が増やされる。素子の全ゲート領域は、ユニットセルの数の関数であるので、定格電流が増加すると、活性領域のサイズは、概して増大する。炭化ケイ素MOSFETの活性領域が増大するにつれて、MOSFETの各ユニットセルの下層のチャネルからゲート電極を分離するゲート絶縁層の全体の領域も増大する。
【0024】
残念ながら、欠陥なく、炭化ケイ素基板と炭化ケイ素基板上のゲート絶縁層の両方を製造することは困難である。炭化ケイ素基板および/またはゲート絶縁層に存在する欠陥は、ハイパワー炭化ケイ素MOSFETが、例えば、最小降伏電圧、定格電流などの様々な性能パラメータを達成できなくなる原因となる。活性領域およびゲート絶縁層のサイズが増大するにつれて、致命的な欠陥が現れる可能性も増加し得る。よって、高い定格電流を有する炭化ケイ素MOSFETの製造量(すなわち、仕様を満たす、製造された素子の割合)は、比較的低いものとなり得る。
【0025】
さらに、上述のように、炭化ケイ素またはその他のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETスイッチが、例えば、電量供給などに採用される特定の応用分野において、当該スイッチは、スイッチおよび/または、送電網における短絡を結果として生じ得るサージ電流を周期的に流れるピーク電流レベルを処理するために見積もらなければならない。ピークサージ電流は、例えば、スイッチを流れる平均的な電流の5倍以上となり得る。これらサージ電流を処理するために、各MOSFETスイッチにおけるユニットセルの数は、対応する要因によって増やす必要がある。これは、製造コストを著しく増加させ、炭化ケイ素基板および/またはゲート絶縁層における欠陥が原因となる上述の問題のために、製造量を非常に低下させ得る。さらに、ある一定のバイアス条件のもとで、パワー炭化ケイ素MOSFETは、チャネルの端から端までの電圧の非常に小さな増加が、サージ電流レベルの自然飽和なしに、電流の流れにおいて非常に大きな増加を結果として導き得ることで、制御不能になり得る。そのようなサージ状態の間に流れ得る非常に高い電流レベルは、MOSFETおよび/またはMOSFETスイッチから下流にあるその他の装置にダメージを与えるか、破壊する可能性がある。
【0026】
本発明の実施形態に従って、サージ電流を処理できるパワースイッチング装置および/または回路構成が提供される。これらの装置は、通常の動作状況において非常に高速のスイッチング速度(例えば、パワーMOSFETの速度に匹敵する速度)を備えることができる。本発明の実施形態によれば、パワースイッチング装置のスイッチング速度は、当該装置がサージ電流レベルの電流を導電しているときに減速し得るものの、このようなスイッチングの状況下でさえも、当該装置は、送電網や様々なその他の応用に対して十分すぎるほどのスイッチング速度をなおも示すことができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、ハイパワー炭化ケイ素、または、その他のワイドバンドギャップMOSFETスイッチは、制御可能なサージ電流耐性を含む。本明細書では、コントローラブル(制御可能な)サージMOSFET、すなわち、“CST”と称されるこれらのデバイスは、パワーMOSFETと並列に、MOSゲートバイポーラ接合トランジスタ(“BJT”)と連結する。MOSゲートBJTは、CSTの通常の動作中に、わずかな電流しか伝導しないか、電流を伝導しないことができる。しかしながら、サージ電流がCSTで受け取られたとき、MOSゲートBJTの駆動MOSFETは、BJTを作動させて、それにより、サージ電流はパワーMOSFETとBJTとの間で分流する。例えば、本発明の実施形態に従うパワーCSTは、100アンペアまたはそれ以上と同じ高さのサージ電流を伝導することができる。さらに、本発明の実施形態に従う当該CSTは、サージ電流を自然に飽和させることができ、それにより、サージ電流を締めるパワースイッチを提供し、当該スイッチは、CST自体と下流装置の両方をサージ電流のダメージから保護することができる。
【0028】
当業者に周知のように、BJTは、ドープした半導体で構成される3端子の素子である。BJTは、半導体材料中で互いに近接して形成される2つのpn接合を含む。作動中、電荷担体は、pn接合うちの一方に隣接する半導体の第一の領域(エミッタと呼ばれる)に入る。電荷担体の多くは、他方のpn接合に隣接する半導体の第二の領域(コレクタと呼ばれる)から素子を出る。コレクタおよびエミッタは、同じ導電型を備える半導体の領域で形成される。(ベースとして知られている)半導体の第三の領域は、コレクタとエミッタの間に配置され、コレクタとエミッタの導電型とは反対の導電型を有する。それゆえに、BJTの2つのpn接合が形成され、コレクタはベースに接触し、ベースはエミッタに接触する。BJTのベースを介して少量の電流を流すことによって、比例して、大きな電流がエミッタからコレクタを通過する。
【0029】
BJTは、“PNP”素子または“NPN”素子であり得る。PNP BJTでは、エミッタとコレクタは、p型の領域の半導体で形成され、2つのp型領域の間に置かれるベースは、n型の領域の半導体で形成される。NPN BJTでは、エミッタおよびコレクタは、n型領域の半導体で形成され、2つのn型領域の間に置かれるベースは、p型領域の半導体で形成される。
【0030】
トランジスタのベースを通って電流を流すことによって、BJTが“オン”になる(すなわち、それは、エミッタとコレクタ間に電流が流れるようにバイアスがかけられる)ことから、BJTは電流制御素子である。例えば、NPN BJTでは、典型的にトランジスタは、ベース−エミッタpn接合に順方向にバイアスをかけるために、正の電圧をベースに印加することによって作動する。このように、素子はバイアスがかけられると、正孔(ホール)がトランジスタのベースに流れ込み、それらはエミッタに注入される。正孔は、ベースがp型領域であるので“多数キャリア”と呼ばれ、正孔は平衡状態のもとで、そのような領域において、支配的な電荷担体である。同時に、電子はエミッタからベースに注入され、それら電子はコレクタの方に拡散する。これら電子は、“少数キャリア”と呼ばれる。なぜなら、平衡状態のもとで、電子は、p型ベース領域において支配的な電荷担体ではないからである。
【0031】
BJTのベースは、少数キャリア(すなわち、NPN BJTにおけるエミッタからベースに注入される電子)の割合を最小するために、比較的薄く作られており、当該少数キャリアは、ベースとエミッタとの間を流れる多数キャリアと再結合する。コレクタ−ベースpn接合は、正の電圧をコレクタに印加することによって逆バイアスがかけられる。これは、ベースからコレクタに注入される電子を掃引(スイープ)することを容易にする。BJTは、エミッタ−コレクタ電流が電子と正孔の両方(すなわち、多数キャリアと少数キャリアの両方)を含む電流であるので、 “バイポーラ”素子と称される。これは、多数キャリアのみを含む、MOSFETなどのユニポーラ素子とは対照的である。BJTのベースを流れる大部分の電流は、エミッタ−コレクタ電流を制御する。
【0032】
図1は、本発明のある実施形態に従うCST100の回路図である。図1に示されるように、CST100は、例えば、20アンペアの炭化ケイ素MOSFETなどのような、n型パワーMOSFET110を含む。パワーMOSFET110は、ゲート112、ドレイン114およびソース116を備える。例えば、20アンペアの炭化ケイ素BJT130などのような、NPNパワーBJTは、サージ電流を処理するために、パワーMOSFET110に並列に与えられる。BJT130は、ベース132、コレクタ134およびエミッタ136を含む。ゲート122、ドレイン124およびソース126を備える第2のn型炭化ケイ素MOSFET120も与えられ、本願明細書では、駆動MOSFET120と呼ばれる。CST100は、ゲート端子102、ドレイン端子104およびソース端子106を含む。
【0033】
図1に示すように、パワーMOSFET110のゲート112および駆動MOSFET120のゲート122は、CST100のゲート端子102に電気的に接続される。パワーMOSFET110のドレイン114、駆動MOSFET120のドレイン124およびBJT130のコレクタ134は、一般に、CST100のドレイン端子104に連結される。MOSFET110のソース116およびBJT100のエミッタ136は、一般に、CST100のソース端子106に連結される。駆動MOSFET120およびBJT130は、ダーリントントランジスタとして構成され、これにより、駆動MOSFET120のチャネル電流は、MOSFET120のソース126を介して、BJT130のベース132を駆動する。BJT130は、高い電流増幅率を有しているから、BJT130を駆動するために大きな電流を供給する必要はないので、駆動MOSFET120は、比較的小さなMOSFETとなり得る。
【0034】
BJT130は、電流増幅率βBJTを有する。よって、BJTがその活性領域で動作するサージ状態の中に、CST100の相互コンダクタンスgm,CSTは、駆動MOSFET120の相互コンダクタンスgm,MOSFETとBJT130の電流増幅率βBJTの関数である。BJT130の比較的大きな電流増幅率のために、CST100の相互コンダクタンスは、かなり高くなり得る。結果として、CST100の順電圧降下は、サージ電流状態にも関わらず、比較的低いままである。
【0035】
図1のCST100は、以下のように動作することができる。外部駆動回路(図1に図示せず)は、CST100のゲート端子102に接続される。外部駆動回路は、MOSFET110のゲート112のしきい値電圧よりも大きいバイアス電圧を、CST100のゲート端子102に印加するとき、反対層は、チャネル118として動作するゲート112下に形成される。当該チャネル118は、電流がパワーMOSFET110のドレイン104からソース106に流れることを許す。しかしながら、パワーMOSFET110のドレイン−ソース電圧VDS(すなわち、ドレイン端子104とソース端子106との間の電圧降下)は、例えば、およそ2.5ボルト未満である限りは、駆動MOSFET120は、BJT130をオンにするために、BJT130のベース132に十分な電流を供給しない。それゆえに、例えば、約2.5ボルト未満のドレイン−ソース電圧に対して、CST100は、実質的に、パワーMOSFETと同じように動作する。しかしながら、ドレイン−ソース電圧が、およそ2.5ボルトを超えるとき、駆動MOSFET120のチャネル128を通る電流は、BJT130をオンにするのに十分である。この時点で、パワーMOSFET110およびBJT130は、並列に導電し、そして、CST100を流れる電流は、これら2つの電流経路に分かれる。このように、BJT130は、CST100を通るサージ電流を処理するために利用され得る。
【0036】
本発明の実施形態に従うCSTは、従来のパワーMOSFETと比較して多数の利点を示すことができる。第一に、パワーMOSFET110、駆動MOSFET120およびBJT130は、すべて炭化ケイ素デバイス(または、異なるワイドバンドギャップ半導体)を含むことができる。したがって、炭化ケイ素およびその他のワイドバンドギャップ半導体を用いることのできる上述の利点は、電力応用が、本発明の実施形態に従うCSTで達成される。
【0037】
第二に、オン状態のドリフト領域の低い抵抗のおかげで、炭化ケイ素BJTは、典型的に、同じサイズの炭化ケイ素MOSFETよりも、非常に大きな電流を流すことができる。例えば、炭化ケイ素BJTは、典型的に、同じサイズの炭化ケイ素MOSFETよりも2から5倍(または、それ以上)の電流密度をサポートし得る。それによって、本発明の実施形態に従うCSTは、同じサイズのMOSFETスイッチに比べると、サージ電流耐性において、著しい増加を与えることができる。例えば、BJTが、同じサイズのMOSFETによってサポートさせる電流密度の4倍の電流密度をサポートすると仮定すれば、MOSFETと同じサイズのBJT(それにより、単独型(スタンドアローン)のMOSFETのほぼ2倍の大きさの素子を結果として生じる)を含む、本発明の実施形態によるCSTは、単独型のMOSFETによってサポートされ得る電流よりも5倍高い電流をサポートすることができる。それゆえに、本発明の実施形態に従うCSTは、小型の素子で、非常に大きなサージ電流をサポートすることができる。
【0038】
第三に、本発明の実施形態に従うCSTは、通常の動作中に、高周波数(すなわち、高いスイッチング速度)で動作することができ、ほぼ全ての電流は、通常の動作状態の間、CSTのパワーMOSFETを通り抜け、BJTは比較的小さく、それゆえに、スイッチング速度に著しい影響を与える、大きな静電容量を回路に加えない。言い換えれば、BJTは、サージ状態の間のみ、オン状態になるので、それが、通常の動作状態において、素子のスイッチング特性に実質的に影響を及ぼすことはなく、それゆえに、CSTは、そのような通常の動作状態において、ユニポーラ素子として動作する。上述のように、MOSFETにおける電流伝導は、多数キャリア輸送を通してのみ生じるので、BJTにおいて生じる過剰少数キャリアの再結合に関係する遅延は、MOSFET素子において存在せず、BJTのスイッチング速度よりも桁違いに速いスイッチング速度を許容する。本発明の実施形態に従うCSTのスイッチング速度は、BJTを流れる電流の二極性のために、CSTがより高い電流を流しているときに減少し得るものの、多くの応用において、BJTは、わずかな割合の時間のみで電流を流し得る。
【0039】
第四に、本発明の実施形態によるCSTは、BJTの低い飽和電圧のために、低い電圧降下とともに制御可能な(固定された)サージ電流耐性を持つことができる。これは、熱破損なしに、短絡(ショート)を乗り切るように、素子を手助けする。
【0040】
第五に、本発明の実施形態によるCSTは、同程度の定格のMOSFETスイッチを製造するコストに比べて、低い増分製造費となり得る。特に、炭化ケイ素BJTの製造コストは、同じサイズの炭化ケイ素MOSFETの製造コストよりも非常に小さく、BJTに対するデバイス歩留まりは、典型的に、MOSチャネルおよびゲート誘電体がないために、同等のサイズのMOSFETの歩留まりよりも非常に高い。BJTは、同程度のサイズのMOSFETよりも大きな電流密度をサポートするので、CSTチップのサイズは、同様のサージ電流レベルを処理するように設計されたMOSFETのサイズよりも、非常に小さくなり得る。
【0041】
図2は、図1のCST100の電流−電圧(I−V)特性を示すグラフである。図2に示すように、約2.5ボルト未満のドレイン−ソース電圧VDSにおいて、CST100は、駆動MOSFETの出力特性を示し、低いドレイン−ソース電圧で、CST100を通る電流は、駆動MOSFET110のチャネル118を通って伝導される。しかしながら、VDSが約2.5ボルトを超えるとき、駆動MOSFET120は、BJT130をオンにするために、BJT130に十分なベース電流を供給し、BJT130は、CST100を通る過剰な(サージ)電流を処理し始める。
【0042】
図2に示すように、CST100は20ボルトのゲート電圧VGおよび8ボルトの順電圧降下VCEで、約100アンペアの全サージ電流をサポートすることができる。全サージ電流は、パワーMOSFET110およびBJT130を通る電流の合計であり、BJT130は100アンペアのうちの約60を伝導する。BJT130を流れる電流は、デバイスのワイヤボンディングによって、この事例に制限される。また、図2は、サージ電流がゲートバイアスに応えてうまく制御されること(すなわち、ゲート電圧VGが10ボルトに減少するならば、サージ電流が、8ボルトの順電圧降下において、約100アンペアから約22アンペアに落ちること)も示す。さらに、図2に示されるように、CSTを流れるサージ電流は、VDSが増加するにつれて飽和する。例として、10ボルトのゲート電圧に対して、素子を流れる全電流IDSは、およそ30アンペアで飽和する。結果として、サージ電流はCST100に熱損傷を引き起こす可能性は高くなく、CST100はサージ電流からその他の下流の構成要素を保護することができる。
【0043】
200W/cm2パッケージのワット損の極限も、図2に示される。以上のように、通常の動作(すなわち、この極限以下の動作)中、CST100は、炭化ケイ素MOSFETの応答の特性であるI−V特性を示し、これら通常の動作状態において、出力電流はパワーMOSFET110によって、実質的に伝導されることを示す。しかしながら、図2に示されるように、200W/cm2のラインをはるかに超え得るサージ電流が発生したとき、I−V特性は、実質的に炭化ケイ素MOSFETの応答特性からはずれ、BJT130は、かなりの量の出力電流を伝導し始めることを示す。図2に示されるサージ電流が200W/cm2パッケージのワット損の限界を明らかに超えている間に、これらのサージ電流は典型的にまれに起こり、かつ、短い期間で起こる。それゆえに、CST100は、典型的に損傷なしにサージ電流を乗り越えることができる。
【0044】
さらに、図2に示されるように、サージ状態での順電圧降下は、CST100の高相互コンダクタンスの結果として、比較的低い値(例えば、100アンペアのサージ電流に対して8ボルト)のままとすることができる。対照的に、数学上の計算では、全100アンペアのサージ電流が、パワーMOSFET110とCST100のBJT130の組み合わせた面積と等しい平面面積を有する単一のMOSFETによって、代わりに流されたならば、サージ状態での順電圧降下が20ボルトを超え得る。20ボルト超から8ボルトへの順電圧降下におけるこの減少は、パッケージに関する熱放散および熱応力を著しく減少され得る。
【0045】
本発明の実施形態によるCSTは、モノリシック素子またはハイブリッド素子として製造され得る。図3および4は、本発明の実施形態に従うCSTの2つの例示的なものリック実装の構造的な概略断面図である。一方、図5は、本発明の実施形態に従うハイブリッドCSTの平面図である。
【0046】
図3に示されるように、本発明の特定の実施形態に従って、図1のCST100の回路図を有するCST200は、単一の基板上にモノリシック素子として実装され得る。図3のように、CST200はパワーMOSFET210、駆動MOSFET220およびBJT230を含む。3つ全ての素子210、220、230は、同一のバルク単結晶n型炭化ケイ素基板250上に形成される。いくつかの実施形態では、基板250は省略され得る。n-炭化ケイ素ドリフト層255は、基板250上に提供され得る。p型炭化ケイ素層260は、n-ドリフト層255の上側に備えられる。p型炭化ケイ素層260の少なくとも一部は、高濃度にドープされ得る(p+)。以下で述べられるように、p型炭化ケイ素層260は、BJT230のベース232として動作でき、MOSFET210および220のソース領域が形成されるp−ウェル262を形成するためにも用いられる。高濃度にドープされた(n+)n型炭化ケイ素層265は、p型炭化ケイ素層260の上側に形成される。さらに、第二の高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層270は、p型炭化ケイ素層260の一部の上に備えられる。すべての層255,260,265および270は、4H−SiC層を含む。
【0047】
さらに、図3に示されるように、高濃度にドープされた(n+)n型炭化ケイ素層265は、それぞれ、MOSFET210と220のソースとして動作する領域216と226、およびBJT230のエミッタとして動作する領域236を含む。n-ドリフト層t255の一部は、それぞれ、MOSFET210と220のドレイン領域214と224として動作し、また、n-ドリフト層255もBJT230のコレクタ234として動作する。チャネル領域218は、MOSFET210のソース領域216およびドレイン領域214の間のpウェル262に備えられ、チャネル領域228はMOSFET220のソース領域226およびドレイン領域224の間に備えられる。パワーMOSFET210の絶縁されたゲート電極212は、n-ドリフト層255、p−ウェル262およびソース領域216上に形成される。ゲート212は、例えば、ドープされたポリシリコンまたは炭化ケイ素層を含み、ゲート212の周囲にある絶縁層213は、例えば、二酸化ケイ素を含むことができる。さらに、駆動MOSFET220の絶縁されたゲート222は、n-ドリフト層255、p−ウェル262、ソース領域226および第二の高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層270の上に形成される。ゲート222は、例えば、ドープされたポリシリコンまたは炭化ケイ素層を含み、ゲート222の周辺になる絶縁層223は、二酸化ケイ素を含むことができる。金属層246またはその他の導電層は、第二の高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層を介して、駆動MOSFET220のソース領域226をBJT230のベース232に電気的に接続される。
【0048】
オーミックコンタクト240(例えば、金属層)は、n+ソース領域216上に形成され(CST200において、オーミックコンタクト240は、さらに、ソース領域216を隣接したユニットセルのソース領域に電気的に接続する)、オーミックコンタクト242は、BJT230のエミッタ領域236上に形成される。オーミックコンタクト240および242は、CST200のソース端子206を形成するために、導電線、電線、その他同様のものを介して(図3には図示せず)、互いに電気的に接続され得る。オーミックコンタクト244は、CST200のドレイン端子204として動作するn+炭化ケイ素基板250の裏面上に形成される。ゲート電極212および222は、CST200のゲート端子202を形成するために、導電線、電線、その他同様のものを介して(図3には図示せず)、互いに電気的に接続され得る。
【0049】
キャリア濃度に関して、上記のようにp+およびn+導電型の領域およびエピタキシャル層は、製造上の過度な欠陥を引き起こすことなく、できるだけ高濃度にドープされ得る。p型炭化ケイ素領域を生成するための適切なドーパントは、アルミニウム、ホウ素またはガリウムを含む。n型炭化ケイ素領域を生成するための適切なドーパントは、窒素およびリンを含む。
【0050】
CST200の動作についてここで説明する。パワーMOSFET210のしきい値電圧を超えるバイアス電圧が、ゲート212に印加されたときに、n型反転層がチャネル218に生成され、電子電流219がMOSFET210のチャネル218を横断して流れる。この電流は、図1のCST100のソース106からドレイン104への電流の流れを含む。素子を流れる電流が増えると、駆動MOSFET220のドレイン−ソース電圧VDSが増加する。VDSが約2.5ボルトを超えるとき、電子電流は229は、駆動MOSFET220のドレイン224からソース226に流れ、BJT230のベース232に流れ込む。この電子電流229はBJT230をオン状態にする。この電子電流229に応答して、電子電流239はBJT230のコレクタ234(すなわち、図3における基板250)から、n-炭化ケイ素層255およびベース232を通って、BJT230のエミッタ236(すなわち、図3のSiC領域265)に流れる。したがって、駆動MOSFET220およびBJT230が一旦オン状態になると、素子を通る電流は、駆動MOSFET210とBJT230とで分かれ、BJT230は、電流密度が増加するにつれて、電流の大部分を対処する。
【0051】
図4は、本発明の実施形態に従う、トレンチゲート構造を備えるCST300の断面図である。CST300は、図1のCST100の回路図を有し得る。図4に示されるように、CST300は、バルク単結晶n型炭化ケイ素基板350上に、モノリシック素子として実装され、パワーMOSFET310、駆動MOSFET320およびBJT330を包含する。また、当然のことながら、いくつかの実施形態において、基板350は省略され得る。
【0052】
図4に示されるように、n-炭化ケイ素ドリフト層355は、基板350上に備えられる。高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層360は、n-ドリフト層355の上面に備えられる。p型炭化ケイ素層360の少なくとも一部は、高濃度にドープされ得る(p+)。p型炭化ケイ素層360の一部分332は、BJT330のベースとして動作し、一方、p型炭化ケイ素層360の一部分362は、MOSFET310および320のソース領域316と326が形成されるp−ウェルを形成するために用いられる。高濃度にドープされた(n+)n型炭化ケイ素層365は、p型炭化ケイ素層360の上面に形成される。さらに、高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層370は、p型炭化ケイ素層360の一部上に備えられる。全ての層355,360,365および370は、4H−SiC層を含むことができる。
【0053】
さらに、図4に示されるように、高濃度にドープされた(n+)n型炭化ケイ素層365は、それぞれMOSFET310と320のソースとして動作する領域316と326、および、BJT310のエミッタとして動作する領域336を含む。さらに、n-ドリフト層355は、BJT330のコレクタ334として動作する。
【0054】
パワーMOSFET310の絶縁されたゲート電極312は、p型炭化ケイ素層360を通って、n-ドリフト層355の上部に及ぶように形成される。ゲート312は、炭化ケイ素層を含むことができ、ゲート312の周辺の絶縁層313は、例えば、二酸化ケイ素を含み得る。同様に、駆動MOSFET320の絶縁されたゲート電極322は、p型炭化ケイ素層360を通ってn-ドリフト層355の上部に及ぶように形成される。ゲート322は、炭化ケイ素層を含むことができ、ゲート322の周辺の絶縁層323は、例えば、炭化ケイ素を含み得る。チャネル領域318は、ソース領域316と(MOSFET310のドレイン領域314として動作する)n-ドリフト層355との間のp−ウェル362に備えられ、チャネル領328は、ソース領域326と(MOSFET320のドレイン領域324としても動作する)n-ドリフト層355との間に備えられる。金属層346は、駆動MOSFET320のソース領域326を、第二の高濃度にドープされた(p+)p型炭化ケイ素層370を介してBJT330のベース332に電気的に接続する。
【0055】
オーミックコンタクト340は、n+ソース領域316上に形成され、オーミックコンタクト342は、BJT330のエミッタ領域336上に形成される。オーミックコンタクト340および342は、CST300のソース端子306を形成するために、導電線、電線、その他同様のものを介して(図4には図示せず)、互いに電気的に接続され得る。オーミックコンタクト344は、CST300のドレイン端子304として動作するn+炭化ケイ素基板350の裏面上に形成される。ゲート電極312および322は、CST300のゲート端子302を形成するために、導電線、電線、その他同様のものを介して(図4には図示せず)、互いに電気的に接続され得る。
【0056】
CST300の動作は、上述したCST200の動作と同様であるので、ここでは繰り返し説明はしない。
【0057】
図3および4は、単独型の素子として動作することができ、当然のことながら、典型的な応用において、図3および4に示された素子は、通電性能および阻止電圧性能を増した、より大きくハイパワーのスイッチのユニットセルを含み得る。そのようなハイパワーCSTを形成するために、複数のCST200または300は並列に実装され得る。いくつかの実施形態では、パワーMOSFET210または310は、駆動MOSFET220または320、および/または、BJT230または330から空間的に分離され得る。一方、その他の実施形態において、トランジスタは、素子の至るところに混ぜられ得る。いずれにしても、個別のパワーMOSFET210、個別の駆動MOSFET220(または、320)および個別のBJT230(または、330)の組合せは、機能的にハイパワーCSTのユニットセルとみなされ得る。
【0058】
図3および4は、それぞれ、本発明の実施形態に従ったnチャネルCST200および300の構造を図示するが、当然のことながら、pチャネルCSTは、本発明の更なる実施形態に従って提供され得る。例えば、典型的な実施形態では、pチャネルCSTのユニットセルは、それぞれの半導体の極性が反転していることを除いて、図3および4に示されるような同様の構造を備えることができる。
【0059】
図3および4は、本発明の実施形態に従って、単一の基板上に形成されるモノリシック素子として実装されたCSTを図示する。本発明の更なる実施形態によれば、CSTは2つ以上のチップを含むハイブリッド素子として実装され得る。図5は、本発明の実施形態に従うハイブリッドCST400の平面図である。
【0060】
図5に示されるように、CST400は、第一半導体チップ401および第二半導体チップ403を含む。第一半導体チップ401は、当該チップの上面の大部分を包含するソース416と、当該チップ401の裏面(基板側)を含むドレイン414とを備えるパワーMOSFET410を含む。チップ401は、さらに、当該チップ401の上面の右上角を包含するソース426とパワーMOSFET410のドレイン414と共有するドレイン424を備える駆動MOSFET420を含み、このようにして、当該チップ401の裏面(基板側)を含む。
【0061】
第二の半導体チップ403は、ベース432、コレクタ434およびエミッタ436を包含するBJT430を含む。図5に示されるように、チップ403の上面の大部分は、BJT430のエミッタ436を含み、チップの上面の残りの部分は、BJT430のベース432を含む。コレクタ434は、チップ403の裏側(基板側)を含む。(一組の電線として図6に示される)電気的接続440は、駆動MOSFET420が駆動電流をBJT430に供給できるように、駆動MOSFET420のソース426とBJT430のベース432との間に備えられる。
【0062】
さらに、本発明の実施形態によるCSTは、当該素子がバイポーラ接合トランジスタを含むにもかかわらず、高速なスイッチング速度を示すことができる。これは、図6において見ることができ、図3のCST200の測定されたスイッチング時間を図示するグラフである。図6では、曲線450は、CSTのゲート端子に印加されるバイアス電圧VGを時間の関数として示し、曲線460は、CSTのドレイン−ソース電圧VDSを時間の関数として示し、曲線470は、コレクタ電流(IDS)を時間の関数として示す。図6に示すように、20ボルトのバイアス電圧VG(曲線450)は、CSTのゲート端子に印加される。それに応じて、ドレイン−ソース電圧VDS(曲線460)は、ほぼゼロに追い込まれ、コレクタ電流IDS(曲線470)が流れ始める。図6に示されるように、オン状態にする際のCSTに対する時間は、およそ100ナノ秒(ns)である。その後、バイアス電圧VGが取り除かれ(曲線450)、それに応じて、ドレイン−ソース電圧VDS(曲線460)は、20ボルトを超えて増加し、コレクタ電流IDS(曲線470)は停止する。図6に示されるように、オフ状態にする際のCSTに対する時間は、およそ250ナノ秒(ns)である。
【0063】
したがって、図6は、CSTがおよそ350ナノ秒(ns)程度(ほぼ3MHzのスイッチング周波数に対応)の理論的なスイッチング速度を有することができることを示す。実際のスイッチング速度は、典型的には理論的なスイッチング速度より一桁小さいものの、それでも、これは約300kMz程度のスイッチング周波数を示し、それは、送電網のスイッチングの応用分野に対して典型的に要求される20kHzのスイッチング周波数をはるかに超えるものである。これら高速なスイッチング速度は、本発明の実施形態に従うCSTによって達成され得る。なぜなら、そこに含まれるBJTは、ほとんどユニポーラ素子として動作し、それゆえに、ほとんどのBJTで生じる過剰少数キャリアの再結合に関連する遅延は、本発明の実施形態によるCSTにおいて、ほとんど問題にならないからである。
【0064】
図7は、比較対象となり得るBJTとMOSFETに対する特定のオン抵抗を示すグラフである。特に、図7は、ドレイン電圧の関数として、1.2kV BJTの固有オン抵抗と比較した、1.2kV MOSFETに対する固有オン抵抗を示し、さらに、ドレイン電圧VDSの関数として、3.3kV BJTの固有オン抵抗と比較した、3.3kV BJTの固有オン抵抗を示す。特に、曲線500は、2.5ボルトオフセットで、1.2kV SiC BJTに対するRsp,onのグラフであり、一方、曲線510は、2.5ボルトオフセットで、3.3kV SiC BJTに対するRsp,onのグラフである。曲線530の破線の延長部分は、3.3kV SiC MOSFETに対する傾向線を示す。
【0065】
図7に示されるように、低いドレイン電圧で、各パワーMOSFETの固有オン抵抗は、その同等の定格のBJTの固有オン抵抗よりも低い。しかしながら、ドレイン電圧が増すにつれてこの関係は逆転して、BJTの固有オン抵抗が、(一旦、オフセットが占められる)約3.5ボルトを超えるドレイン電圧で、同等の定格のMOSFETの固有オン抵抗よりも低くなる。本発明の実施形態によるCSTのBJTを通過する電流に対して、パワーMOSFETを通過する電流の比率は、MOSFETとBJTの固有オン抵抗の比率によって変化する。よって、図7は、低いドレイン電圧において、電流は、完全にまたは少なくとも主として、パワーMOSFETによって伝導されるが、より高いドレイン電圧では、BJTはますます大きな割合の電流を伝導することになる。
【0066】
図8は、本発明のある実施形態によるCST600を示し、それは、20アンペア炭化ケイ素MOSFET610、駆動炭化ケイ素MOSFET620、および、20アンペア炭化ケイ素BJT630を含む。これらトランジスタ610,620および630のそれぞれは、1600ボルト阻止電圧を有する。パワーMOSFET610およびBJT630に対するチップサイズは、それぞれ、4×4mm2および3.5×3.5mm2である。
【0067】
それゆえに、本発明のいくつかの実施形態に従うと、半導体スイッチング素子は、ワイドバンドギャップパワーMOSFETと、前記パワーMOSFETと並列に接続されたワイドバンドギャップBJTと、前記BJTのベースに接続されるチャネルを備えるワイドバンドギャップ駆動MOSFETを含む。実質的に、半導体スイッチング素子のオン状態出力電流のすべては、パワーMOSFETのチャネルの両端の電圧が第一の電圧範囲内にあるときに、パワーMOSFETのチャネルを通って流れる。当該第一の電圧範囲は、例えば、通常動作中にチャネルの両端に期待される電圧と対応し得る。対照的に、半導体スイッチング素子は、さらに、パワーMOSFETのチャネルの両端の電圧が、第二のより高い電圧範囲内にあるときに、オン状態で出力電流がBJTとパワーMOSFETのチャネルの両方を通って流れるように構成される。
【0068】
本発明のさらなる実施形態に従うと、パワー半導体スイッチは、第一のスイッチング速度を有する第一のワイドバンドギャップ半導体素子と、前記第一のスイッチング速度よりも遅い、第二のスイッチング速度を有する第二のワイドバンドギャップ半導体素子とを含む。これらのスイッチは、実質的に、素子(デバイス)の出力電流のすべては、第一の範囲の出力電流レベルに対して、第一のワイドバンドギャップ半導体素子を通って流れ、これにより、素子(デバイス)の出力電流は、出力電流レベルの第一の範囲における出力電流レベルよりも高い、第二の範囲の出力電流レベルに対して、第一および第二のワイドバンドギャップ半導体素子の両方を通って流れる。
【0069】
本発明は、MOSゲートBJTのサージ電流路を含む炭化ケイ素MOSFETに関して主に上述しているが、当然のことながら、その他の実施形態において、本素子は、炭化ケイ素以外、例えば、窒化ガリウム、セレン化亜鉛、または、その他のII−VIまたはIII−Vワイドバンドギャップ化合物半導体を含むことができる。本明細書において、用語ワイドバンドギャップは、少なくとも1.4電子ボルト(eV)のバンドギャップを有する任意の半導体を包含する。同様に、当然のことながら、その他の実施形態では、ワイドバンドギャップパワートランジスタは、酸化物層ではないゲート絶縁層を備えることができ、本発明は、MOSFETトランジスタを含む素子に限定されることはない。
【0070】
上述のように、本発明の実施形態によるCSTは、サージ電流を処理することを容易にし、また、自然にサージ電流を飽和することができる。本明細書において、用語「サージ電流」は、CSTのパワートランジスタ(例えば、上述した実施形態のパワーMOSFET)の定格電流の2倍以上の電流を言う。当業者にとって周知であるように、トランジスタの定格電流は、トランジスタパッケージのパッケージ電力損失限界を超えない最大チャネル電流である。
【0071】
上記実施形態は、特定の図面に関して記載されているが、当然のことながら、本発明のいくつかの実施形態は、付加的かつ/または間にはさまれた層、構造または要素、および/または、特定の層、構造または要素は取り除かれ得る。本発明のいくつかの典型的な実施形態は記載されているが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点から実質的に出発することなしに、多くの変更が典型的な本実施形態において可能である。したがって、そのようなすべての変更は、請求項において定められるような本発明の範囲内に含まれることを意図する。それゆえに、当然のことながら、前記のものは、本発明の実例であり、開示された特定の実施形態に限定するものと見なすべきではない。そして開示された実施形態だけでなくその他の実施形態に対する変更は、特許請求の範囲内に包含されることを意図する。本発明は、請求項によって定められ、請求項に含まれるものと同等である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドバンドギャップパワートランジスタと、
前記ワイドバンドギャップパワートランジスタと並列に接続されるワイドバンドギャップサージ電流トランジスタと、
前記ワイドバンドギャップサージ電流トランジスタを駆動するように構成されるワイドバンドギャップ駆動トランジスタと
を含む半導体スイッチング素子であって、
前記半導体スイッチング素子は、オン状態で、ワイドバンドギャップパワートランジスタのドレイン−ソース電圧が第一の電圧範囲内にあるときに、当該半導体スイッチング素子の実質的にすべての出力電流が、前記ワイドバンドギャップパワートランジスタのチャネルを通って流れるように構成され、
さらに、前記半導体スイッチング素子は、オン状態で、前記ワイドバンドギャップパワートランジスタの前記ドレイン−ソース電圧が、前記第一の電圧範囲における電圧よりも高い電圧を有する第二の電圧範囲内にあるときに、前記出力電流は、前記ワイドバンドギャップサージ電流トランジスタ、および、前記ワイドバンドギャップパワートランジスタのチャネルの両方を流れるように構成されること
を特徴とする半導体スイッチング素子。
【請求項2】
前記ワイドバンドギャップパワートランジスタは、ワイドバンドギャップパワーMOSFETと含み、
前記ワイドバンドギャップサージ電流トランジスタは、ワイドバンドギャップバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含み、
前記ワイドバンド駆動トランジスタは、前記ワイドバンドギャップBJTにベース電流を供給するように構成されるワイドバンドギャップトランジスタ駆動MOSFETを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項3】
前記半導体スイッチング素子は、当該半導体スイッチング素子を通って流れるサージ電流を飽和させるように構成されること
を特徴とする請求項2に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項4】
飽和レベルは、前記ワイドバンドギャップパワーMOSFETのドレイン−ソース電圧と、前記ワイドバンドギャップパワーMOSFETのゲートとワイドバンドギャップ駆動MOSFETのゲートに印加されるバイアス電圧との関数であること
を特徴とする請求項3に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップサージ電流トランジスタ、前記ワイドバンドギャップパワートランジスタおよび前記ワイドバンドギャップ駆動トランジスタのそれぞれは、炭化ケイ素に基づいた素子であること
を特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項6】
前記ワイドバンドギャップBJT、前記ワイドバンドギャップパワーMOSFETおよび前記ワイドバンドギャップ駆動MOSFETのそれぞれは、炭化ケイ素に基づいた素子を含み、
前記パワーMOSFETのゲートは、前記駆動MOSFETのゲートに電気的に接続され、
前記パワーMOSFETの第一のソース/ドレイン領域は、前記BJTのコレクタに電気的に接続され、
前記パワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、前記BJTのエミッタに電気的に接続されること
を特徴とする請求項2に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項7】
前記駆動MOSFETの第一のソース/ドレイン領域は、前記BJTのコレクタに電気的に接続され、前記駆動MOSFETの第二のソース/ドレイン領域は、前記BJTのベースに電気的に接続されること
を特徴とする請求項6に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項8】
n型炭化ケイ素ドリフト層と、
p型炭化ケイ素ベース層と、
前記n型炭化ケイ素ドリフト層上のp型炭化ケイ素p−ウェルと、
前記p型炭化ケイ素ベース層上のn型炭化ケイ素エミッタ領域と、
前記炭化ケイ素p−ウェルの上部における前記駆動MOSFETの第一のn型ソース/ドレイン領域と、
前記炭化ケイ素p−ウェルの上部における前記パワーMOSFETの第一のn型ソース/ドレイン領域と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項9】
前記n型炭化ケイ素エミッタ領域に隣接する前記p型炭化ケイ素ベース層上に、高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域と、
前記高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域と前記駆動MOSFETの前記第一のn型ソース/ドレイン領域との間に電気的な接続と
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項10】
前記n型炭化ケイ素ドリフト層は、前記BJTのコレクタ、前記パワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域、および、前記駆動MOSFETの第二のソース/ドレイン領域を含むこと
を特徴とする請求項9に記載の半導体スイッチング素子。
【請求項11】
第一のスイッチング速度を有する第一のワイドバンドギャップ半導体素子と、
前記第一のスイッチング速度よりも遅い第二のスイッチング速度を有する第二のワイドバンドギャップ半導体素子と、
を含むパワー半導体スイッチであって、
前記パワー半導体スイッチは、出力電流レベルの第一の範囲で、出力電流が前記第一のワイドバンドギャップ半導体素子を通って流れるように構成され、
前記パワー半導体スイッチは、さらに、出力電流レベルの前記第一の範囲における出力電流レベルよりも高い出力電流レベルの第二の範囲で、前記第一のワイドバンドキャップ半導体素子および前記第二のワイドバンドキャップ半導体素子の両方を通って流れるように構成されること
を特徴する、オン状態のときに出力電流を伝導するパワー半導体スイッチ。
【請求項12】
前記第一のワイドバンドギャップ半導体素子はユニポーラ素子であり、
前記第二のワイドバンドギャップ半導体素子はバイポーラ素子であり、
出力電流レベルの前記第二の範囲は、サージ電流レベルを含むこと
を特徴する請求項11に記載のパワー半導体スイッチ。
【請求項13】
前記第一のワイドバンドギャップ半導体素子はパワーMOSFETを含み、
前記第二のワイドバンドキャップ半導体素子はバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含むこと
を特徴する請求項12に記載のパワー半導体スイッチ。
【請求項14】
前記BJTのコレクタおよび前記パワーMOSFETの第一のソース/ドレイン領域が、第一の共通ノードを形成し、
前記BJTのエミッタおよび前記パワーMOSFETの第二のソース/ドレイン領域が、第二の共通ノードを形成するように、
前記BJTおよび前記パワーMOSFETは、並列に実装されること
を特徴する請求項13に記載のパワー半導体スイッチ。
【請求項15】
前記BJTのベースにベース電流を供給するように構成される駆動MOSFETをさらに含むこと
を特徴する請求項14に記載のパワー半導体スイッチ。
【請求項16】
前記BJT、前記パワーMOSFET、前記駆動MOSFETのそれぞれは、炭化ケイ素半導体素子を含むこと
を特徴とする請求項15に記載のパワー半導体スイッチ。
【請求項17】
ゲート、第一のソース/ドレイン領域および第二のソース/ドレイン領域を有する第一のワイドバンドギャップMISFETと、
ゲート、第一のソース/ドレイン領域および第二のソース/ドレイン領域を有する第二のワイドバンドギャップMISFETと、
ベース、コレクタおよびエミッタを有するワイドバンドギャップバイポーラ接合トランジスタ(“BJT”)と
を含み、
前記第一のワイドバンドギャップMISFETのゲートは、前記第二のワイドバンドキャップMISFETのゲートに電気的に接続され、
前記第一のワイドバンドキャップMISFETの第一のソース/ドレイン領域は、前記第二のワイドバンドギャップMISFETの第一のソース/ドレイン領域と前記コレクタに電気的に接続され、
前記第一のワイドバンドギャップMISFETの第二のソース/ドレイン領域は、前記エミッタに電気的に接続され、
前記第二のワイドバンドギャップMISFETの第二のソース/ドレイン領域は、前記ベースに電気的に接続されること
を特徴するパワースイッチング素子。
【請求項18】
前記BJTは、前記パワースイッチング素子を通って流れるサージ電流の少なくとも一部に対して、電流通過の経路を提供するように構成されること
を特徴する請求項17に記載のハイパワースイッチング素子。
【請求項19】
前記BJTは、前記第一のワイドバンドギャップMISFETおよび前記第二のワイドバンドギャップMISFETは、炭化ケイ素に基づく素子を含むこと
を特徴する請求項17に記載のハイパワースイッチング素子。
【請求項20】
前記コレクタ、前記パワーMISFETの第一のn型ソース/ドレイン領域および前記駆動MISFETの第一のn型ソース/ドレイン領域を含むn型炭化ケイ素ドリフト層と、
前記n型炭化ケイ素ドリフト層上に、前記ベースを含むp型炭化ケイ素ベース層と、
前記n型炭化ケイ素ドリフト層上に、p型炭化ケイ素p−ウェルと、
前記p型炭化ケイ素ベース層上に、前記エミッタを含むn型炭化ケイ素エミッタ層と、
前記pウェル上にあり、かつ、第一のゲート絶縁層によって、前記駆動MISFETの第二のn型ソース/ドレイン領域と前記n型炭化ケイ素ドリフト層から分離された第一のゲート電極と、
前記pウェル上にあり、かつ、第二のゲート絶縁層によって、前記パワーMISFETの第二のn型ソース/ドレイン領域と前記n型炭化ケイ素ドリフト層から分離された第二のゲート電極と、
を含み、
前記駆動MISFETの第一のソース/ドレイン領域は、前記炭化ケイ素p−ウェルの上部にn型炭化ケイ素領域を含み、
前記パワーMISFETの第一のソース/ドレイン領域は、前記炭化ケイ素p−ウェルの上部にn型炭化ケイ素領域を含むこと
を特徴する請求項17に記載のハイパワースイッチング素子。
【請求項21】
前記n型炭化ケイ素エミッタ領域に隣接する前記p型炭化ケイ素ベース層上に、高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域と、
前記高濃度にドープされたp型炭化ケイ素領域と前記駆動MISFETの第一のn型ソース/ドレイン領域との間に電気的な接続とを含むこと
を特徴する請求項20に記載のハイパワースイッチング素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−529178(P2012−529178A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513973(P2012−513973)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035713
【国際公開番号】WO2010/141238
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】