説明

半導体加速度センサ

【課題】構造的制限を設けることなく、X、Y、Z軸の検出感度の差を小さくし、且つ、ドリフトが小さく、3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供すること。
【解決手段】本発明によると、半導体基板に、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部との間に配置される可撓部と、前記可撓部に第1の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記複数のピエゾ抵抗素子をそれぞれ含む複数のブリッジ回路とを有し、前記ブリッジ回路に電圧を印加する高電位端及び低電位端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に第1の抵抗体を有する少なくとも1つの前記ブリッジ回路を備えることを特徴とする半導体加速度センサが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度センサに関する。特に、直交する少なくとも2軸方向の加速度を感知する半導体加速度センサ、及びそれを用いた電子部品、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末やゲーム機等を含め様々な電子機器の小型化が進み、且つ、機能の多様化が図られている。これに伴い、電子機器に搭載されるセンサの小型、高感度化が求められ、このような需要に応じる技術の一つとして、半導体製造技術を応用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が用いられている。このような小型センサの一つとして半導体加速度センサがあり、ピエゾ抵抗素子を用いた3軸加速度センサが開発され、実用化されている。
【0003】
ピエゾ抵抗素子を用いた3軸加速度センサは、一般に、基板上に形成された支持体である枠部と一体形成された直交するX軸方向とY軸方向とに設けられた梁である可撓部が、その交差部に錘を備えた構造を有する。3軸加速度センサにおいては、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向への加速度を検出するために、X軸方向及びZ軸方向への加速度を検出するためのピエゾ抵抗素子がX軸方向の可撓部の上部表面に、Y軸方向の加速度を検出するためのピエゾ抵抗素子がY軸方向の可撓部の上部表面にそれぞれ4つ設けられている。
【0004】
ピエゾ抵抗素子は、可撓部の枠部側と交差部側とにそれぞれ1つずつ配置されてピエゾ抵抗体対を構成し、ピエゾ抵抗体対は交差部を中心として可撓部の上部表面に左右対称に1組ずつ配置されて1軸の加速度センサを形成する。3軸加速度センサは、この1軸の加速度センサを可撓部に3つ形成することでX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向への加速度を検出する。
【0005】
ピエゾ抵抗素子を用いた3軸加速度センサが加速度を検出する場合、錘の傾きにより生じる可撓部の撓みが4つのピエゾ抵抗素子に応力を与え、ピエゾ抵抗素子には応力により電気抵抗の微小な変化が生じる。ピエゾ抵抗素子を用いた3軸加速度センサは、それぞれのピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化をホイートストンブリッジ回路により出力される電圧として加速度を検出する。
【0006】
ここで、ピエゾ抵抗素子を用いた3軸加速度センサは、X軸方向及びY軸方向、すなわち、3軸加速度センサの上部表面に対して水平方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の回転運動により生じるが、Z軸方向、すなわち、3軸加速度センサの上部表面に対して垂直方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の並進運動により生じる。X軸方向の加速度を検出するセンサとY軸方向の加速度を検出するセンサとは検出感度が同様となるが、このような撓み方の違いにより、X軸方向の加速度を検出するセンサとZ軸方向の加速度を検出するセンサとは、同じX軸方向に設けられた可撓部に配置されるにもかかわらず、検出感度が異なる。
【0007】
このような加速度を検出する軸ごとの検出感度の違いは、検出に用いるICチップでの演算により補正する。しかし、検出感度を高めるためには、3軸加速度センサそのものに対する改良が必要である。
【0008】
そこで、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するセンサとZ軸方向の加速度を検出するセンサとの感度の差を小さくする技術として、特許文献1には、X軸方向の可撓部上に配置されたX軸用ピエゾ抵抗素子の長手方向がX軸方向の可撓部の長手方向と平行で、Z軸用ピエゾ抵抗素子がX軸方向の可撓部の長手方向と角度を有するようにすることが開示されている。また、特許文献2には、ピエゾ抵抗素子が設けられた可撓部の断面積と、ピエゾ抵抗素子がない可撓部の断面積の比を調整することが開示されている。特許文献3には、4つのピエゾ素子に加わる電極薄膜による内部応力や周囲温度変化による熱応力等に違いが出るため、オフセット電圧が大きくかつオフセット電圧が変動する問題に対して、引き出し電極と同一の製造工程で同一幅の電極薄膜パターンを新たに設けることにより、ピエゾ抵抗素子を形成する可撓部領域の電極薄膜パターンレイアウトを検出軸方向および検出軸方向と垂直な方向の両方ともに均一化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−294781号公報
【特許文献2】特開2006−98323号公報
【特許文献2】特開2003−92413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの技術は3軸加速度センサの梁や、梁上に形成されるピエゾ抵抗素子の配置等の構造を調整するため、3軸加速度センサをさらに小型化する場合の障害となり、製造工程の増加による製造コストの上昇を招く。つまり、3軸加速度センサを微細化するには梁の幅を狭くすること望まれるが、可撓部の長手方向と角度を有するようにピエゾ抵抗素子を配置したり、引き出し電極と同一の製造工程で同一幅の電極薄膜パターンを新たに設けたりするような方法では、梁の幅を制限することになる。また、このような構造を有するように梁を微細化するには、さらに高度な微細化技術を要し、製造コストを上昇させることとなる。したがって、3軸加速度センサをさらに小型化するには、可撓部及び可撓部上に形成されるピエゾ抵抗素子の構造が単純で、且つ、3軸の検出感度が同程度となる3軸加速度センサが望まれる。
【0011】
本発明は、構造的制限を設けることなく、X、Y、Z軸の検出感度の差を小さくし、且つ、ドリフトが小さく、3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、半導体基板に、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部との間に配置される可撓部と、前記可撓部に第1の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記複数のピエゾ抵抗素子をそれぞれ含む複数のブリッジ回路とを有し、前記ブリッジ回路に電圧を印加する高電位端及び低電位端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に第1の抵抗体を有する少なくとも1つの前記ブリッジ回路を備えることを特徴とする半導体加速度センサが提供される。
【0013】
前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子または低電位端と、ブリッジを形成するピエゾ抵抗素子との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジを形成するピエゾ抵抗素子に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、前記半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0014】
前記半導体加速度センサは、前記高電位端及び前記低電位端のうちの他方と、前記ブリッジ回路との間に第2の抵抗体をさらに有してもよい。
【0015】
前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、前記半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0016】
前記半導体加速度センサは、前記ブリッジ回路の第1の出力端及び第2の出力端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に第3の抵抗体をさらに有してもよい。
【0017】
前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、前記半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0018】
前記半導体加速度センサは、前記第1の出力端及び前記第2の出力端のうちの他方と、前記ブリッジ回路との間に第4の抵抗体をさらに有してもよい。
【0019】
前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、前記半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0020】
前記半導体加速度センサは、前記第1の抵抗体、前記第2の抵抗体、前記第3の抵抗体及び前記第4の抵抗体を、前記枠部に有してもよい。
【0021】
前記半導体加速度センサは、抵抗素子を枠部に形成することで、半導体加速度センサを小型化するうえでの構造的制限を設けることなく、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる。また、半導体加速度センサは小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、前記半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0022】
前記半導体加速度センサは、前記複数のブリッジ回路が、前記第1の方向の加速度を検出する第1のブリッジ回路と、前記第2の方向の加速度を検出する第2のブリッジ回路と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向の加速度を検出する第3のブリッジ回路とを含み、前記第1のブリッジ回路または前記第2のブリッジ回路は前記錘部の水平方向まわりの回転運動による前記可撓部の撓みに基づいて前記第1の方向の加速度または前記第2の方向の加速度を検出し、前記第3のブリッジ回路は前記錘部の垂直方向への並進運動による前記可撓部の撓みに基づいて前記第3の方向の加速度を検出してもよい。
【0023】
半導体加速度センサの上部表面に対して水平方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の回転運動により生じるが、上部表面に対して垂直方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の並進運動により生じ、可撓部の撓み方の違いにより検出感度が異なるが、前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。
【0024】
前記半導体加速度センサは、検出感度が異なる前記第1、第2及び第3のブリッジ回路における検出感度差を小さくするように調整するために、前記第1、第2及び第3のブリッジ回路の少なくとも一つに前記抵抗体を有してもよい。
【0025】
前記半導体加速度センサは、複数のブリッジ回路の少なくとも一つに抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整し、検出感度が異なる複数のブリッジ回路の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。
【0026】
前記半導体加速度センサは、前記第1の方向の加速度及び前記第2の方向の加速度が、前記錘部の水平方向の回転運動により生じる前記可撓部の撓みによる前記第1のブリッジ回路の前記第1の出力端及び前記第2の出力端からの出力として検出され、前記第3の方向の加速度は、前記錘部の垂直方向への並進運動により生じる前記可撓部の撓みによる前記第3のブリッジ回路の前記第1の出力端及び前記第2の出力端からの出力として検出されてもよい。
【0027】
半導体加速度センサの上部表面に対して水平方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の回転運動により生じるが、上部表面に対して垂直方向の加速度を検出する場合、可撓部の撓みは錘の並進運動により生じ、可撓部の撓み方の違いにより検出感度が異なるが、前記半導体加速度センサは、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の検出感度差を小さくするように調整して第1の出力端及び第2の出力端からの出力として検出することができる。
【0028】
前記半導体加速度センサを有するセンサモジュールが提供される。
【0029】
前記半導体加速度センサを用いたセンサモジュールは、小型化と高精度化が求められる電子機器に実装して使用することが可能であり、前記センサモジュールは、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する。また、半導体加速度センサは小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、前記半導体加速度センサを用いることで、ドリフトを抑えてS/N比を向上させるセンサモジュールを提供することができる。
【0030】
前記半導体加速度センサを有する電子機器が提供される。
【0031】
電子機器においては、半導体加速度センサの小型化と高精度化が求められ、前記半導体加速度センサを実装することで、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、前記半導体加速度センサを用いることで、ドリフトを抑えてS/N比を向上させる電子機器を提供することができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態によると、半導体基板の一方の面に不純物を拡散して複数のピエゾ抵抗素子を形成し、前記半導体基板の一方の面に抵抗素子を形成し、所定数の前記ピエゾ抵抗素子を接続してブリッジ回路を形成し、前記ブリッジ回路に電圧を印加する高電位端及び低電位端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に前記抵抗体が配置されるように配線を形成し、前記半導体基板に、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部との間に配置される可撓部と、を形成し、第1の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子とは、前記可撓部に形成されることを、を含むこと特徴とする半導体加速度センサの製造方法が提供される。
【0033】
前記半導体加速度センサの製造方法によると、ドリフトを精度良く抑制し、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の検出感度差を小さくするように調整可能な半導体加速度センサの製造方法が提供される。
【0034】
前記半導体加速度センサの製造方法は、前記抵抗素子を前記枠部に形成してもよい。
【0035】
前記半導体加速度センサの製造方法においては、抵抗素子を枠部に形成することで、可撓部の幅や長さによる制限を受けることがない。したがって、半導体加速度センサを微細化する場合に、さらに高度な微細化技術を必要としたり、製造コストの上昇を招いたりすることはない。
【0036】
前記半導体加速度センサの製造方法は、前記ピエゾ抵抗素子と前記抵抗体とは同一の工程で形成されてもよい。
【0037】
前記半導体加速度センサの製造方法によると、ドリフトを精度良く抑制し、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の検出感度差を小さくするように調整可能な半導体加速度センサを製造するために、高電位端である電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間や、ブリッジ回路と出力端子との間に接続する抵抗素子をピエゾ抵抗素子と同一の工程で同時に形成することで、製造工程を増すことなく目的とする効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明よると、構造的制限を設けることなく、X、Y、Z軸の検出感度の差を小さくし、且つ、ドリフトが小さく、3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図であり、(a)はX軸方向、(b)はY軸方向、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る加速度センサ100の配線パターン図である。
【図3】発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図であり、(a)はX軸方向、(b)はY軸方向、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る加速度センサ200の配線パターン図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図であり、(a)はX軸方向、(b)はY軸方向、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路を示す。
【図6】本発明の一実施形態に係る加速度センサ300の配線パターン図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図であり、(a)はX軸方向、(b)はY軸方向、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路を示す。
【図8】本発明の一実施形態に係る加速度センサ400の配線パターン図である。
【図9】図8に示した半導体加速度センサ400の配線パターン図を再掲する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ400の分解斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ400の製造過程を説明する図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ400の製造過程を説明する図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る処理回路550の回路構成を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るセンサモジュール500を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る携帯型情報端末600を示す図である。
【図16】本発明の実施例及び比較例の半導体加速度センサの抵抗値、形状及び感度の一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明に係る半導体加速度センサについて説明する。但し、本発明の半導体加速度センサは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0041】
上述したように、可撓部に形成されるピエゾ抵抗素子の構造が単純で、且つ、3軸の検出感度が同程度となる3軸加速度センサを実現するための方法について、鋭意検討をおこなった。従来の解決方法は、ピエゾ抵抗素子の感度が同程度となるように、可撓部に形成するピエゾ抵抗素子の配置を調整する必要があるため、このような方法では3軸加速度センサを微細化するうえでの障害となる。
【0042】
一方、3軸加速度センサには、検出感度に影響を与える因子として、ドリフトがある。ドリフトとは、検出に用いる抵抗素子の出力値の時間変動であり、高精度な検出感度を維持するためには、3軸加速度センサにおけるドリフトの抑制が必要である。また、3軸加速度センサにおいては、X軸方向及びY軸方向に対してZ軸方向のドリフトが異なる挙動を示す。
【0043】
そこで、軸間の検出感度が異なる3軸加速度センサにおいて、ピエゾ抵抗素子の配置を調整することで3軸加速度センサの検出感度を高める従来の方法ではなく、ドリフトを抑制しつつ、構造的制限を設けることなく3軸の検出感度が同程度となる方法を検討した。
【0044】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図である。(a)は第1の方向であるX軸方向の加速度を検出するセンサ回路101を示し、(b)は第2の方向であるY軸方向の加速度を検出するセンサ回路102を示し、(c)は第3の方向であるZ軸方向を検出するためのセンサ回路103を示す。
【0045】
センサ回路101は、ピエゾ抵抗素子Rx1、ピエゾ抵抗素子Rx2、ピエゾ抵抗素子Rx3及びピエゾ抵抗素子Rx4が、X軸方向のブリッジ回路51を形成するよう接続され、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx2との接続端は、抵抗素子Rx5を介して高電位側である電源入力端子VDxに接続される。ピエゾ抵抗素子Rx3とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は、低電位側の端子VGxに接続される。ここで、端子VGxは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は高電位側(+)の出力端子Vxout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rx2とピエゾ抵抗素子Rx3との接続端は低電位側(−)の出力端子Vxout2に接続される。
【0046】
また、センサ回路102は、ピエゾ抵抗素子Ry1、ピエゾ抵抗素子Ry2、ピエゾ抵抗素子Ry3及びピエゾ抵抗素子Ry4が、Y軸方向のブリッジ回路52を形成するよう接続され、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry2との接続端は、抵抗素子Ry5を介して高電位側である電源入力端子VDyに接続される。ピエゾ抵抗素子Ry3とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は、低電位側の端子VGyに接続される。ここで、端子VGyは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vyout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Ry2とピエゾ抵抗素子Ry3との接続端は高電位側(+)の出力端子Vyout2に接続される。
【0047】
さらに、センサ回路103は、ピエゾ抵抗素子Rz1、ピエゾ抵抗素子Rz2、ピエゾ抵抗素子Rz3及びピエゾ抵抗素子Rz4が、Z軸方向のブリッジ回路を形成するよう接続され、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz2との接続端は、抵抗素子Rz5を介して高電位側である電源入力端子VDzに接続される。ピエゾ抵抗素子Rz3とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は、低電位側の端子VGzに接続される。ここで、端子VGzは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz3との接続端は高電位側(+)の出力端子Vzout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rz2とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vzout2に接続される。
【0048】
本発明の一実施形態に係るセンサ回路101は抵抗素子Rx5を接続することで、電源入力端子VDxからピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx2との接続端に印加される電圧を調整することができる。すなわち、センサ回路101の電源入力端子VDxと低電位側の端子VGxとの間に印加される電圧Vxは、ブリッジ回路51を形成する4つのピエゾ抵抗素子の合成抵抗と、抵抗素子Rx5とに分圧されるため、ブリッジ回路51には電圧Vx1が印加されることとなる。センサ回路101は、このような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0049】
また、センサ回路102は抵抗素子Ry5を有することで、電源入力端子VDyからピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry2との接続端に印加される電圧を調整することができる。同様に、センサ回路103は抵抗素子Rz5を有することで、電源入力端子VDzからピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz2との接続端に印加される電圧を調整することができる。センサ回路102及びセンサ回路103も上述のような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0050】
X軸方向の加速度を検出するセンサ回路101、Y軸方向の加速度を検出するセンサ回路102及びZ軸方向を検出するためのセンサ回路103は、抵抗素子Rx5、抵抗素子Ry5及び抵抗素子Rz5をそれぞれ有することで出力電圧を調整し、それぞれの軸方向で異なる検出感度を、ドリフトを抑制しながら調整することができる。Z軸方向の加速度を検出する加速度センサは、可撓部の撓み方がX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサとは異なり、一般に検出感度が高い。また、X軸方向及びY軸方向に対してZ軸方向のドリフトが高くなる傾向がある。このため、特にZ軸方向を検出するためのセンサ回路103に抵抗素子Rz5を接続することで出力電圧を調整し、ドリフトを抑制しながらX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。したがって、3軸全ての加速度を検出するセンサ回路に抵抗素子を接続する必要はなく、ドリフトを調整したい軸方向の加速度を検出するセンサ回路にのみ抵抗素子を接続するようにしてもよい。
【0051】
なお、本実施形態においては、抵抗素子Rx5、抵抗素子Ry5及び抵抗素子Rz5を電源入力端子側に接続する方法を説明したが、抵抗素子Rx5、抵抗素子Ry5及び抵抗素子Rz5は、低電位側の端子側に接続するようにしてもよい。
【0052】
次に、図2を参照して、3軸加速度センサにセンサ回路101、センサ回路102及びセンサ回路103を適用した本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ100を説明する。半導体加速度センサ100は、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112、X軸方向の可撓部111とY軸方向の可撓部112との交差部115(錘支持部)、枠部121及び錘部131を有する。
【0053】
X軸方向の可撓部111には、X軸方向の加速度を検出するために、ピエゾ抵抗素子Rx1、ピエゾ抵抗素子Rx2、ピエゾ抵抗素子Rx3及びピエゾ抵抗素子Rx4が形成され、配線10によりセンサ回路101が形成される。また、X軸方向の可撓部111には、Z軸方向の加速度を検出するために、ピエゾ抵抗素子Rz1、ピエゾ抵抗素子Rz2、ピエゾ抵抗素子Rz3及びピエゾ抵抗素子Rz4が形成され、配線10によりセンサ回路103が形成される。
【0054】
Y軸方向の可撓部112には、Y軸方向の加速度を検出するために、ピエゾ抵抗素子Ry1、ピエゾ抵抗素子Ry2、ピエゾ抵抗素子Ry3及びピエゾ抵抗素子Ry4が形成され、配線10によりセンサ回路102が形成される。なお、Y軸方向の可撓部112には、ダミー抵抗素子191及びダミー抵抗素子192を配置することで、X軸方向の可撓部111とのバランスを取るようにしてもよい。交差部115の下側には錘部131が形成され、加速度に応じて錘部131が揺れることで、X軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112を撓ませる。
【0055】
X軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112は枠部121により支えられ、枠部121には、電源入力端子VDx、VDy及びVDzと低電位側の端子VDx、VGy及びVGzと、出力端子Vxout1、Vxout2、Vyout1、Vyout2、Vzout1及びVzout2とが配置される。電源入力端子VDx、VDy及びVDzは3つの端子として示したが、1つの共通入力端子から分岐する構成にすることもできる。
【0056】
実施形態1の本発明に係る抵抗素子Rx5、抵抗素子Ry5及び抵抗素子Rz5は、枠部121に形成することが好ましい。抵抗素子を枠部121に形成するため、ピエゾ抵抗素子が検出するX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112で生じる撓みに影響を与えない。また、抵抗素子Rx5、抵抗素子Ry5及び抵抗素子Rz5は、如何なる抵抗素子で形成してもよいが、ピエゾ抵抗素子により形成することで製造工程を増すことなく目的とする効果を得ることができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、半導体加速度センサ100がX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112を有する例を示したが、本発明に係る半導体加速度センサ100は梁状の可撓部の代わりにダイヤフラム状の可撓部としてもよい。すなわち、ダイヤフラムで錘部を支持し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するピエゾ抵抗素子を、ダイヤフラムの上部表面に互いに直交する軸方向に配置してもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、電源入力端子とブリッジを形成するピエゾ抵抗素子との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジを形成するピエゾ抵抗素子に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、抵抗素子を半導体加速度センサの枠部に形成することで、半導体加速度センサを小型化するうえでの構造的制限を設けることなく、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる優れた効果を奏する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0059】
(実施形態2)
実施形態1においては、ブリッジ回路と、電源入力端子または低電位側の端子との間に抵抗素子を接続して3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の検出感度差を小さくするように調整する方法について説明したが、実施形態2においては、ブリッジ回路と、電源入力端子及び低電位側の端子の両方との間に抵抗素子を接続する例について説明する。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図である。(a)はX軸方向の加速度を検出するセンサ回路201を示し、(b)はY軸方向の加速度を検出するセンサ回路202を示し、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路203を示す。
【0061】
センサ回路201は、4つのピエゾ抵抗素子を含むX軸方向のブリッジ回路51を有し、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx2との接続端は、抵抗素子Rx6aを介して高電位側である電源入力端子VDxに接続される。ピエゾ抵抗素子Rx3とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は、抵抗素子Rx6bを介して低電位側の端子VGxに接続される。ここで、端子VGxは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は高電位側(+)の出力端子Vxout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rx2とピエゾ抵抗素子Rx3との接続端は低電位側(−)の出力端子Vxout2に接続される。
【0062】
また、センサ回路202は、4つのピエゾ抵抗素子を含むY軸方向のブリッジ回路52を有し、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry2との接続端は、抵抗素子Ry6aを介して高電位側である電源入力端子VDyに接続される。ピエゾ抵抗素子Ry3とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は、抵抗素子Ry6bを介して低電位側の端子VGyに接続される。ここで、端子VGyは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vyout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Ry2及びピエゾ抵抗素子Ry3の他端は高電位側(+)の出力端子Vyout2に接続される。
【0063】
さらに、センサ回路203は、4つのピエゾ抵抗素子を含むZ軸方向のブリッジ回路を有し、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz2との接続端は、抵抗素子Rz6aを介して高電位側である電源入力端子VDzに接続される。ピエゾ抵抗素子Rz3とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は、抵抗素子Rz6bを介して低電位側の端子VGzに接続される。ここで、端子VGzは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz3との接続端は高電位側(+)の出力端子Vzout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rz2とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vzout2に接続される。
【0064】
本発明の一実施形態に係るセンサ回路201は抵抗素子Rx6a及び抵抗素子Rx6bをブリッジ回路51に接続することで、ブリッジ回路51の両端に印加される電圧を調整することができる。すなわち、センサ回路201の電源入力端子VDxと低電位側の端子VGxとの間に印加される電圧Vxは、ブリッジ回路51を形成する4つのピエゾ抵抗素子の合成抵抗と、抵抗素子Rx6aと、抵抗素子Rx6bとに分圧されるため、ブリッジ回路51には電圧Vx1が印加されることとなる。センサ回路201は、このような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0065】
例えば、電源入力端子VDxと低電位側の端子VGxとの間に印加される電圧が3Vである時に、4つのピエゾ抵抗素子の抵抗と、抵抗素子Rx6aと、抵抗素子Rx6bとの抵抗値が等しい場合、ブリッジ回路51に印加される電圧Vx1、抵抗素子Rx6aに印加される電圧Vx2及び抵抗素子Rx6bに印加される電圧Vx3は、それぞれ1Vに分圧されることとなり、センサ回路201の出力電圧は、1/3に低下するが、ドリフトは、1/9に低減できる。
【0066】
同様に、センサ回路202は抵抗素子Ry6a及びRy6bをブリッジ回路52に接続することで、ブリッジ回路52の一端に印加される電圧を調整することができる。同様に、センサ回路203は抵抗素子Rz6a及びRz6bをブリッジ回路53に接続することで、ブリッジ回路53の一端に印加される電圧を調整することができる。センサ回路202及びセンサ回路203も上述のような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0067】
X軸方向の加速度を検出するセンサ回路201、Y軸方向の加速度を検出するセンサ回路202及びZ軸方向を検出するためのセンサ回路203は、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、及び抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bをそれぞれ有することで出力電圧を調整し、それぞれの軸方向で異なる検出感度を、ドリフトを抑制しながら調整することができる。Z軸方向の加速度を検出する加速度センサ203は、可撓部の撓み方がX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサとは異なり、一般に検出感度が高い。また、X軸方向及びY軸方向に対してZ軸方向のドリフトが高くなる傾向がある。このため、特にZ軸方向を検出するためのセンサ回路203に抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bとを接続することで、ドリフ出力電圧を調整しトを抑制しながらX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。したがって、3軸全ての加速度を検出するセンサ回路に抵抗素子を接続する必要はなく、ドリフトを調整したい軸方向の加速度を検出するセンサ回路にのみ抵抗素子を接続するようにしてもよい。
【0068】
次に、図4を参照して、3軸加速度センサにセンサ回路201、センサ回路202及びセンサ回路203を適用した本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ200を説明する。半導体加速度センサ200は、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112、X軸方向の可撓部111とY軸方向の可撓部112との交差部115(錘支持部)、枠部121及び錘部131を有する。
【0069】
X軸方向の可撓部111には、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出するための各ピエゾ抵抗素子の配置及び構成は実施形態1と同様である。また、加速度センサで検出する機構も実施形態1と同様である。
【0070】
実施形態2の本発明に係る抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a及び抵抗素子Rz6bは、枠部121に形成することが好ましい。抵抗素子を枠部121に形成するため、ピエゾ抵抗素子が検出するX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112で生じる撓みに影響を与えない。また、抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a及び抵抗素子Rz6bは、如何なる抵抗素子で形成してもよいが、ピエゾ抵抗素子により形成することで製造工程を増すことなく目的とする効果を得ることができる。
【0071】
本実施形態においては、抵抗素子をブリッジ回路の両端に接続することで、ブリッジ回路の両端に印加される電圧のバランスを取ることができる。また、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bは、それぞれ同じ抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよいが、それぞれ異なる抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよい。抵抗素子を形成する位置に制約があるような場合は、電源入力端子側の抵抗素子と低電位側の抵抗素子との抵抗値を変えることで抵抗素子を形成する位置の制約に対応することもできる。
【0072】
なお、本実施形態においては、半導体加速度センサ200がX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112を有する例を示したが、本発明に係る半導体加速度センサ200は梁状の可撓部の代わりに膜状の可撓部としてダイヤフラムを用いてもよい。すなわち、ダイヤフラムで錘部を支持し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するピエゾ抵抗素子を、ダイヤフラムの上部表面に互いに直交する軸方向に配置してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。また、抵抗素子を半導体加速度センサの枠部に形成することで、半導体加速度センサを小型化するうえでの構造的制限を設けることなく、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる優れた効果を奏する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0074】
(実施形態3)
実施形態1及び2においては、ブリッジ回路と、電源入力端子及び低電位側の端子との間に抵抗素子を接続して3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の検出感度差を小さくするように調整する方法について説明したが、実施形態3においては、さらにブリッジ回路と出力端子との間に抵抗素子を接続する例について説明する。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図である。(a)はX軸方向の加速度を検出するセンサ回路301を示し、(b)はY軸方向の加速度を検出するセンサ回路302を示し、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路303を示す。
【0076】
センサ回路301は、4つのピエゾ抵抗素子を含むX軸方向のブリッジ回路51を有し、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx2との接続端は、抵抗素子Rx6aを介して高電位側である電源入力端子VDxに接続される。ピエゾ抵抗素子Rx3とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は、抵抗素子Rx6bを介して低電位側の端子VGxに接続される。ここで、端子VGxは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は抵抗素子Rx7を介して、高電位側(+)の出力端子Vxout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rx2とピエゾ抵抗素子Rx3との接続端は低電位側(−)の出力端子Vxout2に接続される。
【0077】
また、センサ回路302は、4つのピエゾ抵抗素子を含むY軸方向のブリッジ回路52を有し、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry2との接続端は、抵抗素子Ry6aを介して高電位側である電源入力端子VDyに接続される。ピエゾ抵抗素子Ry3とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は、抵抗素子Ry6bを介して低電位側の端子VGyに接続される。ここで、端子VGyは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vyout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Ry2とピエゾ抵抗素子Ry3との接続端は抵抗素子Ry7を介して、高電位側(+)の出力端子Vyout2に接続される。
【0078】
さらに、センサ回路303は、4つのピエゾ抵抗素子を含むZ軸方向のブリッジ回路を有し、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz2との接端は、抵抗素子Rz6aを介して高電位側である電源入力端子VDzに接続される。ピエゾ抵抗素子Rz3とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は、抵抗素子Rz6bを介して低電位側の端子VGzに接続される。ここで、端子VGzは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz3との接続端は抵抗素子Rz7を介して高電位側(+)の出力端子Vzout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rz2とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は低電位側(−)の出力端子Vzout2に接続される。
【0079】
本発明の一実施形態に係るセンサ回路301は抵抗素子Rx6a及び抵抗素子Rx6bをブリッジ回路51に接続することで、ブリッジ回路51の両端に印加される電圧を調整することができる。すなわち、センサ回路301の電源入力端子VDxと低電位側の端子VGxとの間に印加される電圧Vxは、ブリッジ回路51を形成する4つのピエゾ抵抗素子の合成抵抗と、抵抗素子Rx6aと、抵抗素子Rx6bとに分圧されるため、ブリッジ回路51には電圧Vx1が印加されることとなる。センサ回路301は、このような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0080】
同様に、センサ回路302は抵抗素子Ry6a及びRy6bをブリッジ回路52に接続することで、ブリッジ回路52の両端に印加される電圧を調整することができる。同様に、センサ回路303は抵抗素子Rz6a及びRz6bをブリッジ回路53に接続することで、ブリッジ回路53の両端に印加される電圧を調整することができる。センサ回路302及びセンサ回路303も上述のような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0081】
X軸方向の加速度を検出するセンサ回路301、Y軸方向の加速度を検出するセンサ回路302及びZ軸方向を検出するためのセンサ回路303は、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、及び抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bをそれぞれ有することで出力電圧を調整し、それぞれの軸方向で異なる検出感度を、ドリフトを抑制しながら調整することができる。Z軸方向の加速度を検出する加速度センサ303は、可撓部の撓み方がX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサとは異なり、一般に検出感度が高い。また、X軸方向及びY軸方向に対してZ軸方向のドリフトが高くなる傾向がある。このため、特にZ軸方向を検出するためのセンサ回路303に抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bとを接続することで出力電圧を調整し、ドリフトを抑制しながらX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。したがって、3軸全ての加速度を検出するセンサ回路に抵抗素子を接続する必要はなく、ドリフトを調整したい軸方向の加速度を検出するセンサ回路にのみ抵抗素子を接続するようにしてもよい。
【0082】
なお、本実施形態においては、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aとRy6b、及び抵抗素子Rz6aとRz6bを接続する実施形態2のセンサ回路を基に説明したが、ブリッジ回路の電源入力端子又は低電位側の端子の何れかに抵抗素子を接続する実施形態1のセンサ回路を用いてもよい。また、抵抗素子Rx7、抵抗素子Ry7及び抵抗素子Rz7を高電位側の出力端子に接続する方法を説明したが、抵抗素子Rx7、抵抗素子Ry7及び抵抗素子Rz7は、低電位側の出力端子に接続するようにしてもよい。
【0083】
次に、図6を参照して、3軸加速度センサにセンサ回路301、センサ回路302及びセンサ回路303を適用した本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ300を説明する。半導体加速度センサ300は、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112、X軸方向の可撓部111とY軸方向の可撓部112との交差部115(錘支持部)、枠部121及び錘部131を有する。
【0084】
X軸方向の可撓部111には、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出するための各ピエゾ抵抗素子の配置及び構成は実施形態1と同様である。また、加速度センサで検出する機構も実施形態1と同様である。
【0085】
実施形態3の本発明に係る抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a、抵抗素子Rz6b、抵抗素子Rx7、抵抗素子Ry7及び抵抗素子Rz7は、枠部121に形成することが好ましい。また、抵抗素子を枠部121に形成するため、ピエゾ抵抗素子が検出するX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112で生じる撓みに影響を与えない。また、抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a、抵抗素子Rz6b、抵抗素子Rx7、抵抗素子Ry7及び抵抗素子Rz7は、如何なる抵抗素子で形成してもよいが、ピエゾ抵抗素子により形成することで製造工程を増すことなく目的とする効果を得ることができる。
【0086】
本実施形態においては、抵抗素子をブリッジ回路の両端に接続することで、ブリッジ回路の両端に印加される電圧のバランスを取ることができる。また、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bは、それぞれ同じ抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよいが、それぞれ異なる抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよい。抵抗素子を形成する位置に制約があるような場合は、電源入力端子側の抵抗素子と低電位側の抵抗素子との抵抗値を変えることで抵抗素子を形成する位置の制約に対応することもできる。
【0087】
なお、本実施形態においては、半導体加速度センサ300がX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112を有する例を示したが、本発明に係る半導体加速度センサ300は梁状の可撓部の代わりに膜状の可撓部としてダイヤフラムを用いてもよい。すなわち、ダイヤフラムで錘部を支持し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するピエゾ抵抗素子を、ダイヤフラムの上部表面に互いに直交する軸方向に配置してもよい。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。さらに、抵抗素子を半導体加速度センサの枠部に形成することで、半導体加速度センサを小型化するうえでの構造的制限を設けることなく、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる優れた効果を奏する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0089】
(実施形態4)
実施形態3においては、ブリッジ回路と一方の出力端子との間に抵抗素子を接続する例について説明したが、実施形態4においては、ブリッジ回路と両方の出力端子との間に抵抗素子を接続する例について説明する。
【0090】
図7は、本発明の一実施形態に係るセンサ回路の回路図である。(a)はX軸方向の加速度を検出するセンサ回路401を示し、(b)はY軸方向の加速度を検出するセンサ回路402を示し、(c)はZ軸方向を検出するためのセンサ回路403を示す。
【0091】
センサ回路401は、4つのピエゾ抵抗素子を含むX軸方向のブリッジ回路51を有し、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx2との接続端は、抵抗素子Rx6aを介して高電位側である電源入力端子VDxに接続される。ピエゾ抵抗素子Rx3とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は、抵抗素子Rx6bを介して低電位側の端子VGxに接続される。ここで、端子VGxは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rx1とピエゾ抵抗素子Rx4との接続端は抵抗素子Rx8aを介して、高電位側(+)の出力端子Vxout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rx2とピエゾ抵抗素子Rx3との接続端は抵抗素子Rx8bを介して、低電位側(−)の出力端子Vxout2に接続される。
【0092】
また、センサ回路402は、4つのピエゾ抵抗素子を含むY軸方向のブリッジ回路52を有し、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry2との接続端は、抵抗素子Ry6aを介して高電位側である電源入力端子VDyに接続される。ピエゾ抵抗素子Ry3とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は、抵抗素子Ry6bを介して低電位側の端子VGyに接続される。ここで、端子VGyは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Ry1とピエゾ抵抗素子Ry4との接続端は抵抗素子Ry8bを介して、低電位側(−)の出力端子Vyout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Ry2とピエゾ抵抗素子Ry3との接続端は抵抗素子Ry8aを介して、高電位側(+)の出力端子Vyout2に接続される。
【0093】
さらに、センサ回路403は、4つのピエゾ抵抗素子を含むZ軸方向のブリッジ回路を有し、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz2との接続端は、抵抗素子Rz6aを介して高電位側である電源入力端子VDzに接続される。ピエゾ抵抗素子Rz3とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は、抵抗素子Rz6bを介して低電位側の端子VGzに接続される。ここで、端子VGzは接地されてもよい。各ピエゾ抵抗素子に生じた電気抵抗の微小な変化を電圧として出力するため、ピエゾ抵抗素子Rz1とピエゾ抵抗素子Rz3との接続端は抵抗素子Rz8aを介して、高電位側(+)の出力端子Vzout1に接続され、ピエゾ抵抗素子Rz2とピエゾ抵抗素子Rz4との接続端は抵抗素子Rz8bを介して、低電位側(−)の出力端子Vzout2に接続される。
【0094】
本発明の一実施形態に係るセンサ回路401は抵抗素子Rx6a及び抵抗素子Rx6bをブリッジ回路51に接続することで、ブリッジ回路51の両端に印加される電圧を調整することができる。すなわち、センサ回路401の電源入力端子VDxと低電位側の端子VGxとの間に印加される電圧Vxは、ブリッジ回路51を形成する4つのピエゾ抵抗素子の合成抵抗と、抵抗素子Rx6aと、抵抗素子Rx6bとに分圧されるため、ブリッジ回路51には電圧Vx1が印加されることとなる。センサ回路401は、このような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0095】
同様に、センサ回路402は抵抗素子Ry6a及びRy6bをブリッジ回路52に接続することで、ブリッジ回路52の両端に印加される電圧を調整することができる。同様に、センサ回路403は抵抗素子Rz6a及びRz6bをブリッジ回路53に接続することで、ブリッジ回路53の両端に印加される電圧を調整することができる。センサ回路402及びセンサ回路403も上述のような電圧の調整により、出力電圧も低下するが、ドリフトの抑制効果はブリッジ抵抗にかかる電圧の2乗に比例する。例えば、電圧の調整により、出力電圧が1/2に低下しても、ドリフトは1/2、すなわち、1/4に抑制することができる。
【0096】
X軸方向の加速度を検出するセンサ回路401、Y軸方向の加速度を検出するセンサ回路402及びZ軸方向を検出するためのセンサ回路403は、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、及び抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bをそれぞれ有することで出力電圧を調整し、それぞれの軸方向で異なる検出感度を、ドリフトを抑制しながら調整することができる。Z軸方向の加速度を検出する加速度センサ403は、可撓部の撓み方がX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度とは異なり、一般に検出感度が高い。また、X軸方向及びY軸方向に対してZ軸方向のドリフトが高くなる傾向がある。このため、特にZ軸方向を検出するためのセンサ回路403に抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bとを接続することで出力電圧を調整し、ドリフトを抑制しながらX軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。したがって、3軸全ての加速度を検出するセンサ回路に抵抗素子を接続する必要はなく、ドリフトを調整したい軸方向の加速度を検出するセンサ回路にのみ抵抗素子を接続するようにしてもよい。
【0097】
なお、本実施形態においては、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aとRy6b、及び抵抗素子Rz6aとRz6bを接続する実施形態2のセンサ回路を基に説明したが、ブリッジ回路の電源入力端子又は低電位側の端子の何れかに抵抗素子を接続する実施形態1のセンサ回路を用いてもよい。
【0098】
次に、図8を参照して、3軸加速度センサにセンサ回路401、センサ回路402及びセンサ回路403を適用した本発明の一実施形態に係る半導体加速度センサ400を説明する。半導体加速度センサ400は、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112、X軸方向の可撓部111とY軸方向の可撓部112との交差部115(錘支持部)、枠部121及び錘部131を有する。
【0099】
X軸方向の可撓部111には、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出するための各ピエゾ抵抗素子の配置及び構成は実施形態1と同様である。また、センサで検出する機構も実施形態1と同様である。
【0100】
実施形態4の本発明に係る抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a、抵抗素子Rz6b、抵抗素子Rx8a、抵抗素子Rx8b、抵抗素子Ry8a、抵抗素子Ry8b、抵抗素子Rz8a及び抵抗素子Rz8bは、枠部121に形成することが好ましい。また、抵抗素子を枠部121に形成するため、ピエゾ抵抗素子が検出するX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112で生じる撓みに影響を与えない。また、抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a、抵抗素子Rz6b、抵抗素子Rx8a、抵抗素子Rx8b、抵抗素子Ry8a、抵抗素子Ry8b、抵抗素子Rz8a及び抵抗素子Rz8bは、如何なる抵抗素子で形成してもよいが、ピエゾ抵抗素子により形成することで製造工程を増すことなく目的とする効果を得ることができる。
【0101】
本実施形態においては、抵抗素子をブリッジ回路の両端に接続することで、ブリッジ回路の両端に印加される電圧のバランスを取ることができる。また、抵抗素子Rx6aと抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6aと抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6aと抵抗素子Rz6bは、それぞれ同じ抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよいが、それぞれ異なる抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよい。また、抵抗素子Rx8a、抵抗素子Rx8b、抵抗素子Ry8a、抵抗素子Ry8b、抵抗素子Rz8a及び抵抗素子Rz8bもそれぞれ同じ抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよいが、それぞれ異なる抵抗値の抵抗素子の組で形成してもよい。抵抗素子を形成する位置に制約があるような場合は、電源入力端子側の抵抗素子と低電位側の抵抗素子との抵抗値を変えることで抵抗素子を形成する位置の制約に対応することもできる。
【0102】
なお、本実施形態においては、半導体加速度センサ400がX軸方向の可撓部111及びY軸方向の可撓部112を有する例を示したが、本発明に係る半導体加速度センサ400は梁状の可撓部の代わりに膜状の可撓部としてダイヤフラムを用いてもよい。すなわち、ダイヤフラムで錘部を支持し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するピエゾ抵抗素子を、ダイヤフラムの上部表面に互いに直交する軸方向に配置してもよい。
【0103】
以上説明したように、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間に抵抗素子を接続することで、ブリッジ回路に印加される電圧を調整することができ、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整することができる。さらに、抵抗素子を半導体加速度センサの枠部に形成することで、半導体加速度センサを小型化するうえでの構造的制限を設けることなく、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する半導体加速度センサを提供することができる優れた効果を奏する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させることができる。
【0104】
(実施形態5)(半導体加速度センサの製造方法)
上述の実施形態の本発明に係る半導体加速度センサの製造方法を以下に述べる。本実施形態においては、製造方法の一例として実施形態4で説明した半導体加速度センサ400を用いて説明する。なお、実施形態1〜3で説明した半導体加速度センサも同様の製造方法により製造される。図9は、図8に示した半導体加速度センサ400の配線パターン図を再掲する図であり、図10は半導体加速度センサ400の分解斜視図である。また、図11及び図12は、半導体加速度センサ400の製造工程を図9及び図10のA−A’断面に沿う断面図で説明する図である。
【0105】
図10を参照すると、半導体加速度センサ400は、シリコン基板1上に形成したシリコン酸化膜3、さらにその上にシリコン膜5を積層したSOI基板を用いて加速度センサ本体450を形成し、支持基板141に接合する。シリコン膜5及びシリコン酸化膜3には、枠部121と、枠部121の内側に配置されたX軸方向の可撓部111と、Y軸方向の可撓部112と、X軸方向の可撓部111とY軸方向の可撓部112との交差部115と、を形成する。また、シリコン膜5及びシリコン酸化膜3には、枠部121、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112及び交差部115に囲まれた開口部117を形成する。
【0106】
シリコン基板1には枠部123及び錘部131を形成し、錘部131は枠部123の内壁と離間して配置されている。交差部115と錘部131とはシリコン酸化膜3を介して接合されている。本実施形態においては錘部131が略クローバー形状を有するが、錘部131の形状は、これに限定されるものではない。
【0107】
支持基板141としては例えば、ガラスなどがある。支持基板141がガラスである場合には、センサ本体と陽極接合により接合することができる。支持基板141はガラスに限定されず、金属(ステンレス、Fe−36%Ni合金からなるインバーなど)、絶縁性樹脂、Siなどの半導体を用いることができる。接合方法として、直接接合、共晶接合、接着剤による接着などから適宜選択することができる。また、支持基板141を設けずに、センサ本体を直接実装基板やパッケージ基板に搭載させることも可能である。
【0108】
次に、半導体加速度センサ400の製造工程を説明する。図11(a)に示したSOI基板は、SIMOX、貼り合せ法等により製造される。シリコン酸化膜3は、後述の工程でエッチングストッパ層としても機能する。
【0109】
本実施形態においては、ピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4及びピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4をX軸方向の可撓部111に、ピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4をY軸方向の可撓部112に、抵抗素子Rx6a、抵抗素子Rx6b、抵抗素子Ry6a、抵抗素子Ry6b、抵抗素子Rz6a、抵抗素子Rz6b、抵抗素子Rx8a、抵抗素子Rx8b、抵抗素子Ry8a、抵抗素子Ry8b、抵抗素子Rz8a及び抵抗素子Rz8bを枠部121に、それぞれ形成する。
【0110】
SOI基板のシリコン膜5側に不純物拡散用のマスク7を形成する(図11(b))マスク7の材料としては、例えばシリコン窒化膜(Si)やシリコン酸化膜(SiO)などを用いることができる。シリコン膜5全面に熱酸化あるいはプラズマCVD法によりシリコン酸化膜を成膜した後、シリコン窒化膜を成膜し、シリコン窒化膜上にレジストパターン(図示せず)を形成し、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜にピエゾ抵抗素子及び抵抗素子に対応する開口をRIE(Reactive Ion Etching)及び熱リン酸などのウェットエッチングにより形成する。マスク7は1層構造でも良く、シリコン膜5側からシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の2層構造でもよい。なお、マスク7を2層構造として場合、シリコン窒化膜は後述する不純物の拡散防止に用いることができる。
【0111】
各ピエゾ抵抗素子及び各抵抗素子を熱拡散法やイオン注入法により形成する(図11(c))。例えば、熱拡散法を用いてシリコン膜5にホウ素を拡散する場合、BBrなどを少なくともマスク7が形成された面に曝し、不純物を堆積して不純物拡散層を形成する。ピエゾ抵抗素子及び抵抗素子は、形成の条件を適宜調整することにより拡散領域表面における不純物濃度の調整をすることができる。また、ピエゾ抵抗素子及び抵抗素子は、形成する幅、長さ及び断面積により抵抗値を調整することができる。抵抗値は長さを調整することで、簡便に設計変更が可能である。上述の実施形態において抵抗素子は、一つの抵抗値を与える一つの抵抗素子として示したが、複数の抵抗素子を直列に接続して一つの抵抗値を与えるようにしてもよい。すなわち、抵抗素子Rは、抵抗素子R’と抵抗素子R”を直列に接続することで形成してもよい。
【0112】
次に、シリコン膜5上に絶縁層9を形成する(図11(d))。例えば、シリコン膜5の表面に熱酸化あるいはプラズマCVD法などを用いて、SiOの絶縁層を形成する。絶縁層9上にレジストをマスクとしたRIEによってコンタクトホール13を形成する。SiOの膜はTEOS(Si(OC)/O、SiH/NOなどのガスを用いて形成できる。SiOの膜の厚さを30nm〜1μmとすると、応力の範囲が−200MPa〜+200MPaとなり、加速度センサの感度やオフセット電圧への影響を小さくできる。絶縁層9上にレジストをマスクとしたRIEによってコンタクトホール13を形成する。
【0113】
つづいて、コンタクトホール13を介してピエゾ抵抗素子及び抵抗素子に接続するように配線10を形成する(図11(e))。配線10はAl,Al−Si,Al−Ndなどの金属材料をスパッタ法などにより成膜し、それをパターニングすることで得られる。なお、配線10とピエゾ抵抗素子及び抵抗素子との間でオーミックコンタクトを形成するために、熱処理(380℃〜420℃)するのが好ましい。なお、配線10上に保護膜としてシリコン窒化膜(Si)などの膜を形成してもよい。電源入力端子VDx、VDy及びVDz、接地端子VGx、VGy及びVGz、出力端子Vxout1、Vxout2、Vyout1、Vyout2、Vzout1及びVzout2は、配線10と同一の材料を用いて同一の工程で形成することができる。
【0114】
その後、シリコン膜5をシリコン酸化膜3の上面が露出するまでRIEなどによりエッチングを行い、開口部117を設けて、枠部121、X軸方向の可撓部111、Y軸方向の可撓部112及び交差部115を形成する(図12(f))。また、錘部131が下方(支持基板141)へ変位するために必要な間隔のギャップを形成するために、マスクを用いて枠部123の内枠に沿った開口部を形成する。ギャップは、加速度センサのダイナミックレンジに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜10μm程度である。
【0115】
さらに、枠部123及び錘部131を形成するために、シリコン基板1の下面にマスクを形成する。このマスクを用いてシリコン基板1をシリコン酸化膜3の下面が露出するまでエッチングする。エッチングには、例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いる。DRIEでは材料層を厚み方向に侵食しながら掘り進むエッチングステップと、エッチングによる侵食の進行に伴って形成される側壁にポリマーの壁を形成するデポジションステップと、を交互に繰り返す。掘り進んだ穴の側壁は、順次ポリマーの壁が形成されて保護されるため、ほぼ厚み方向にのみ侵食を進ませることが可能である。エッチングガスとしてSF等のイオン・ラジカル供給ガスを用い、デポジションガスとしてC等を用いることができる。
【0116】
その後、エッチングストッパとして用いた部分の不要なシリコン酸化膜3をRIEあるいはウェットエッチングにより除去する。これにより、シリコン酸化膜3は、枠部121と枠部123、交差部115と錘部131の間のみに存在するようになる(図12(f))。以上の工程でセンサ本体450が製造される。
【0117】
最後に、センサ本体450と支持基板141とを接合する(図12(g))。支持基板141の材料としてガラスを用いる場合には、Naイオンなどの可動イオンを含む、いわゆるパイレックス(登録商標)ガラスであって、SOI基板110との接合には陽極接合を用いる。なお、陽極接合時の静電引力により錘部131が支持基板141の上面にスティッキングするのを防ぐために、支持基板141の上面にスパッタ法によりCrなどのスティッキング防止膜(図示せず)を形成してもよい。これによりセンサ本体400と支持基板141とが接合され、半導体加速度センサ400が構成される。以上は加速度センサの製造方法の一例であって、順序は、適宜に変更可能であり、上記の順序に限定されない。
【0118】
以上説明したように、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサの製造方法によると、ドリフトを精度良く抑制し、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ間の出力電圧を調整することで検出感度差を小さくするように調整可能な半導体加速度センサを製造するために、電源入力端子及び低電位側の端子とブリッジ回路との間や、ブリッジ回路と出力端子との間に接続する抵抗素子をピエゾ抵抗素子と同一の工程で同時に形成することができる優れた効果を奏する。
【0119】
なお、本実施形態においては、ピエゾ抵抗素子と抵抗素子とはSOI基板上に同じ工程で同時に形成する方法で説明したが、本発明に係るピエゾ抵抗素子や抵抗素子は、例えばPZTなどを用いて別途製造して、貼付けてもよい。本発明に係るピエゾ抵抗素子や抵抗素子としてPZTを用いると、高い圧電特性を得ることができる。
【0120】
(実施形態6)
本実施形態においては、上述の実施形態に示した本発明に係る半導体加速度センサをセンサモジュールとして電子機器に実装するする例について説明する。なお、本明細書において電子機器とは、半導体技術を利用して機能しうる装置全般を指し、電子部品を実装した基板も電子機器の範囲に含まれるものとする。
【0121】
半導体加速度センサ100、200、300又は400は、例えば、IC等の能動素子を搭載する回路基板上に実装され、ワイヤボンディング接続等の周知の方法および材料によって電源入力端子VDx、接地端子VGx、出力端子Vxout1、出力端子Vxout2、電源入力端子VDy、接地端子VGy、出力端子Vyout1、出力端子Vyout2、電源入力端子VDz、接地端子VGz、出力端子Vzout1及び出力端子Vzout2と、電子回路基板もしくはIC等の能動素子とを接続することにより、半導体加速度センサと電子回路とを1つのセンサモジュールとして提供することができる。このセンサモジュールは、例えば、ゲーム機、携帯電話等の携帯型端末機に実装して使用することが可能である。
【0122】
図13は、半導体加速度センサ100により検出される加速度検出信号を処理する処理回路550の回路構成の一例を示す図である。処理回路550は、アンプ回路(Amp)551と、フィルタ回路553とを有する。なお、半導体加速度センサ200、300又は400にも同様に適用できる。
【0123】
アンプ回路551は、受けた加速度に応じて半導体加速度センサ100から出力されるX、Y及びZ軸方向の各加速度検出信号(抵抗値変化)を所定の増幅率で増幅してフィルタ回路553に出力する。フィルタ回路553は、抵抗とキャパシタ等を含む回路であり、信号に含まれたノイズ成分を通過させるフィルタ機能を有する。フィルタ回路553は、低周波数の信号成分をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度検出信号として出力する。
【0124】
図14は、半導体加速度センサ100と上述の処理回路550とを電子機器に実装するためのセンサモジュール500の一例を示す図である。センサモジュール500には、上述の処理回路550を含む信号処理チップ501と、メモリチップ503と、半導体加速度センサ100を含むセンサチップ505とが基板507上に実装される。信号処理チップ501、メモリチップ503及びセンサチップ505は、ボンディングワイヤ509により接続される。メモリチップ503は、半導体加速度センサ100を出荷前の補正値や、信号処理チップ501の制御用のプログラムやパラメータ等を記憶する。
【0125】
センサモジュール500は電子機器として、例えば、携帯型端末機に実装した例について説明する。図15は、センサモジュール500を実装した電子機器として携帯型情報端末600の一例を示す図である。携帯型情報端末600は、表示部601と、入力部603とを有し、センサモジュール500は入力部603側の携帯型情報端末600の内部に実装される。携帯型情報端末600は、その内部に各種プログラムを記憶し、各種プログラムにより通信処理や情報処理等を実行する機能を有する。この携帯型情報端末600では、センサモジュール500により検出される加速度をアプリケーションプログラムで利用することにより、例えば、落下時の加速度を検出して電源をオフさせる等の機能を付加することが可能になる。
【0126】
本実施形態の本発明に係るセンサモジュール500を携帯型端末機に実装することにより、新たな機能を実現することができ、携帯型端末機の利便性や信頼性を向上させることが可能になる。
【0127】
また、ゲーム機のコントローラや、携帯型のゲーム機においては、半導体加速度センサの小型化と高精度化が求められ、本実施形態の本発明に係るセンサモジュール500を実装することで、ドリフトが小さく3軸間の信号出力の変動を低減する。半導体加速度センサは、小型化により検出感度が低下する傾向にあるが、本実施形態の本発明に係る半導体加速度センサは、ドリフトを抑えることでS/N比を向上させるため好適である。
【実施例】
【0128】
上述の実施形態で説明した本発明に係る半導体加速度センサについて、以下に実施例を挙げて、その効果を述べる。図16は実施例及び比較例の半導体加速度センサの抵抗値、形状及び感度の一覧表である。
【0129】
実施例1−1、1−2及び1−3の半導体加速度センサは、比較例1の半導体加速度センサに本発明に係る抵抗素子を接続したものである。比較例1の半導体加速度センサは、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出するセンサに比してZ軸方向を検出するためのセンサ回路の検出感度が高くなっている。実施例1−1及び1−2は実施形態1の半導体加速度センサに相当し、実施例1−1はZ軸方向を検出するためのセンサ回路103の電源入力端子VDzとブリッジ回路53との間に抵抗素子Rz5を接続したものであり、実施例1−2はZ軸方向を検出するためのセンサ回路103の低電位側の端子VGzとブリッジ回路53との間に抵抗素子Rz5を接続したものである。また、実施例1−3の半導体加速度センサは実施形態2の半導体加速度センサに相当し、電源入力端子VDzとブリッジ回路53との間及び低電位側の端子VGzとブリッジ回路53との間に同じ抵抗値(抵抗素子Rz5の半分の抵抗値)の抵抗素子Rz6a及び抵抗素子Rz6bをそれぞれ接続したものである。ここで、実施例1−1、1−2及び1−3の半導体加速度センサにおいては、ブリッジ回路53に抵抗素子を接続するため、ブリッジ回路53の合成抵抗は接続した抵抗素子の抵抗値だけ減少する。
【0130】
図16からわかるように、実施例1−1、1−2及び1−3の半導体加速度センサは、Z軸方向の加速度を検出するためのセンサ回路103のブリッジ回路53に抵抗素子を接続することで出力電圧を調整し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。
【0131】
また、比較例2の半導体加速度センサは、比較例1の半導体加速度センサとブリッジ回路の合成抵抗は同じであるが、可撓部及び錘部が異なる。具体的には、比較例2の半導体加速度センサは、可撓部の幅は比較例1の半導体加速度センサと等しいが長さが異なり、且つ、錘部の重量が異なる。さらに、比較例3の半導体加速度センサは、比較例2の半導体加速度センサに対して可撓部の幅が異なる。また、比較例1、比較例2及び比較例3の半導体加速度センサは、それぞれ絶縁層9の成膜条件が異なり、比較例2及び比較例3の半導体加速度センサも、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサに比してZ軸方向の加速度を検出するためのセンサ回路の検出感度が高くなっている。
【0132】
実施例2の半導体加速度センサは、比較例2の半導体加速度センサに実施形態1の本発明に係る抵抗素子を接続したものである。具体的には、Z軸方向を検出するためのセンサ回路103の電源入力端子VDzとブリッジ回路53との間に抵抗素子Rz5を接続したものである。また、実施例3の半導体加速度センサは、比較例3の半導体加速度センサに実施形態1の本発明に係る抵抗素子を接続したもので、Z軸方向を検出するためのセンサ回路103の電源入力端子VDzとブリッジ回路53との間に抵抗素子Rz5を接続したものである。
【0133】
図16からわかるように、実施例2及び実施例3の半導体加速度センサは、Z軸方向の加速度を検出するためのセンサ回路103のブリッジ回路53に抵抗素子を接続することで出力電圧を調整し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。
【0134】
以上説明したように、本発明に係る半導体加速度センサは、可撓部の幅、長さ、錘部の重量等がどのようであっても、Z軸方向の加速度を検出するためのセンサ回路103のブリッジ回路53に抵抗素子を接続することで出力電圧を調整し、X軸方向及びY軸方向の加速度を検出する加速度センサと検出感度を同程度に調整することができる。本実施例のおいてはZ軸方向の加速度を検出するための加速度センサの検出感度が高い場合について例示したが、X軸方向またはY軸方向の加速度を検出する加速度センサも同様の効果を奏することは明らかである。
【0135】
本発明に係る半導体加速度センサは、ブリッジ回路に抵抗素子を接続することでブリッジ回路に印加される電圧小さくなるため、ドリフト抑制される。また、本発明に係る半導体加速度センサにおいては、抵抗素子を接続することでブリッジ回路の合成抵抗が小さくなるが、検出感度への影響は無視できる程度である。
【符号の説明】
【0136】
1 シリコン基板
3 シリコン酸化膜
5 シリコン膜
7 マスク
9 絶縁層
10 配線
13 コンタクトホール
51 X軸方向のブリッジ回路
52 Y軸方向のブリッジ回路
53 Z軸方向のブリッジ回路
100 一実施形態に係る半導体加速度センサ
101 X軸方向のセンサ回路
102 Y軸方向のセンサ回路
103 Z軸方向のセンサ回路
111 X軸方向の可撓部
112 Y軸方向の可撓部
115 交差部
117 開口部
121 枠部
123 枠部
131 錘部
141 支持基板
191 ダミー抵抗素子
192 ダミー抵抗素子
200 一実施形態に係る半導体加速度センサ
201 X軸方向のセンサ回路
202 Y軸方向のセンサ回路
203 Z軸方向のセンサ回路
300 一実施形態に係る半導体加速度センサ
301 X軸方向のセンサ回路
302 Y軸方向のセンサ回路
303 Z軸方向のセンサ回路
400 一実施形態に係る半導体加速度センサ
401 X軸方向のセンサ回路
402 Y軸方向のセンサ回路
403 Z軸方向のセンサ回路
450 センサ本体
500 センサモジュール
501 信号処理チップ
503 メモリチップ
505 センサチップ
507 基板
509 ボンディングワイヤ
550 処理回路
551 アンプ回路
553 フィルタ回路
600 携帯型情報端末
601 表示部
603 入力部
Rx1 ピエゾ抵抗素子
Rx2 ピエゾ抵抗素子
Rx3 ピエゾ抵抗素子
Rx4 ピエゾ抵抗素子
Rx5 抵抗素子
Rx6a 抵抗素子
Rx6b 抵抗素子
Rx7 抵抗素子
Rx8a 抵抗素子
Rx8b 抵抗素子
Ry1 ピエゾ抵抗素子
Ry2 ピエゾ抵抗素子
Ry3 ピエゾ抵抗素子
Ry4 ピエゾ抵抗素子
Ry5 抵抗素子
Ry6a 抵抗素子
Ry6b 抵抗素子
Ry7 抵抗素子
Ry8a 抵抗素子
Ry8b 抵抗素子
Rz1 ピエゾ抵抗素子
Rz2 ピエゾ抵抗素子
Rz3 ピエゾ抵抗素子
Rz4 ピエゾ抵抗素子
Rz5 抵抗素子
Rz6a 抵抗素子
Rz6b 抵抗素子
Rz7 抵抗素子
Rz8a 抵抗素子
Rz8b 抵抗素子
VDx 電源入力端子
VGx 接地端子
Vxout1 出力端子
Vxout2 出力端子
VDy 電源入力端子
VGy 接地端子
Vyout1 出力端子
Vyout2 出力端子
VDz 電源入力端子
VGz 接地端子
Vzout1 出力端子
Vzout2 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部との間に配置される可撓部と、前記可撓部に第1の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記複数のピエゾ抵抗素子をそれぞれ含む複数のブリッジ回路とを有し、
前記ブリッジ回路に電圧を印加する高電位端及び低電位端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に第1の抵抗体を有する少なくとも1つの前記ブリッジ回路を備えることを特徴とする半導体加速度センサ。
【請求項2】
前記高電位端及び前記低電位端のうちの他方と、前記ブリッジ回路との間に第2の抵抗体をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の半導体加速度センサ。
【請求項3】
前記ブリッジ回路の第1の出力端及び第2の出力端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に第3の抵抗体をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項4】
前記第1の出力端及び前記第2の出力端のうちの他方と、前記ブリッジ回路との間に第4の抵抗体をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の半導体加速度センサ。
【請求項5】
前記第1の抵抗体、前記第2の抵抗体、前記第3の抵抗体及び前記第4の抵抗体を、前記枠部に有すること特徴とする請求項4に記載の半導体加速度センサ。
【請求項6】
前記複数のブリッジ回路は、前記第1の方向の加速度を検出する第1のブリッジ回路と、前記第2の方向の加速度を検出する第2のブリッジ回路と、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向の加速度を検出する第3のブリッジ回路とを含み、
前記第1のブリッジ回路または前記第2のブリッジ回路は前記錘部の水平方向まわりの回転運動による前記可撓部の撓みに基づいて前記第1の方向の加速度または前記第2の方向の加速度を検出し、
前記第3のブリッジ回路は前記錘部の垂直方向への並進運動による前記可撓部の撓みに基づいて前記第3の方向の加速度を検出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の半導体加速度センサ。
【請求項7】
検出感度が異なる前記第1、第2及び第3のブリッジ回路における検出感度差を小さくするように調整するために、前記第1、第2及び第3のブリッジ回路の少なくとも一つに前記抵抗体を有することを特徴とする請求項6に記載の半導体加速度センサ。
【請求項8】
前記第1の方向の加速度及び前記第2の方向の加速度は、前記錘部の水平方向の回転運動により生じる前記可撓部の撓みによる前記第1のブリッジ回路の前記第1の出力端及び前記第2の出力端からの出力として検出され、
前記第3の方向の加速度は、前記錘部の垂直方向への並進運動により生じる前記可撓部の撓みによる前記第3のブリッジ回路の前記第1の出力端及び前記第2の出力端からの出力として検出されることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体加速度センサ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一に記載の半導体加速度センサを有するセンサモジュール。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一に記載の半導体加速度センサを有する電子機器。
【請求項11】
半導体基板の一方の面に不純物を拡散して複数のピエゾ抵抗素子を形成し、
前記半導体基板の一方の面に抵抗素子を形成し、
所定数の前記ピエゾ抵抗素子を接続してブリッジ回路を形成し、
前記ブリッジ回路に電圧を印加する高電位端及び低電位端のうちの何れか一方と、前記ブリッジ回路との間に前記抵抗体が配置されるように配線を形成し、
前記半導体基板に、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部との間に配置される可撓部と、を形成し、
第1の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子と、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のピエゾ抵抗素子とは、前記可撓部に形成されることを、を含むこと特徴とする半導体加速度センサの製造方法。
【請求項12】
前記抵抗素子を前記枠部に形成することを特徴とする請求項11に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項13】
前記ピエゾ抵抗素子と前記抵抗体とは同一の工程で形成されることを特徴とする請求項11または12に記載の半導体加速度センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−220686(P2011−220686A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86320(P2010−86320)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】