説明

半導体回路

【課題】低消費電流でノイズ耐性に優れた高圧側パワートランジスタを駆動する回路を提供する。
【解決手段】低圧側入力信号(HIN)に従って短い期間活性状態となるワンショットパルス(ON_B)を生成するワンショット回路(11)を設ける。第1および第2の電流供給部(14,16)により、入力信号およびワンショットパルスの発生するワンショットパルス信号に従って内部ノード(15)に電流を供給する。第1の内部ノードを流れる電流をウイルソンカレントミラー回路(20)で受け、電流検出部(R3)により電圧信号に変換し、ゲートドライバ(DRV)により、スイッチングパワートランジスタの駆動信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワートランジスタを駆動する半導体回路に関し、特に、低電位側からの入力信号のレベルシフトを行なって高電位側に配置されるパワートランジスタをオン・オフ駆動するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータまたはモータを駆動する電力装置においては、交流電圧を整流した数百Vの直流電圧を電源とするインバータ装置が用いられることが多い。このような高圧電力装置においては、同じパワースイッチングトランジスタを高圧側および低圧側に配置し、交互にオンおよびオフ状態に設定するトーテムポール型回路が単位回路として用いられる。
【0003】
出力段のスイッチングパワートランジスタ(高圧トランジスタ)をオン・オフ動作させるために、スイッチングパワートランジスタに対しオン/オフの指令信号を与え、正しい順序でオン・オフ動作させる。このオン・オフ指令信号は、駆動制御回路などの低電圧で動作する回路から与えられ、数Vから10V程度の低電圧の信号である。この様な低電圧の指令信号は、電力装置の低電圧側に配置されるスイッチングパワートランジスタに対してはレベル変換することなく与えることができる。しかしながら、高圧側に配置されるスイッチングパワートランジスタのオン・オフ制御のためには、オン・オフ指令信号を高圧側電源電圧までレベルシフトさせる必要がある。このため、低圧側の入力信号をレベルシフトして、高圧側のスイッチングパワートランジスタに伝達することが行なわれる。
【0004】
このような電力装置におけるスイッチングパワートランジスタ駆動のためのレベルシフト回路の構成が、従来、種々提案されている。
【0005】
特許文献1(特開平11−74779号公報)においては、カレントミラー回路のミラー電流を抵抗素子により電圧に変換してレベルシフトされた指令信号を生成する。このカレントミラー回路のマスタトランジスタと直列にドライブトランジスタが配置され、低圧側の入力信号に従って、ドライブトランジスタが選択的にオン/オフ状態に駆動され、応じてカレントミラー回路に電流が流れる。
【0006】
この特許文献1は、ドライブトランジスタのゲートに対しソフトスイッチ回路を設け、ドライブトランジスタのゲート電圧の立上がり速度を遅くする。これにより、カレントミラー回路のマスタ段を流れるレベルシフト電流が急激に変化する際の素子破壊を防止するとともに、ノイズによる誤動作の発生を防止することを図る。
【0007】
特許文献2(特開2002−300018号公報)は、同様に、カレントミラー回路およびドライブトランジスタを有するレベルシフト回路を開示する。レベルシフト回路および指令信号生成用のドライバに対してはフローティング電源が設けられ、出力ノード(高圧側および低圧側スイッチングトランジスタの接続ノード)の電圧がドライバのロー側電源電圧として利用される。
【0008】
この特許分家n2においては、出力ノードの電圧レベル変化時におけるフローティング電源電圧の変動による誤動作を防止するために、以下の構成を利用する。カレントミラー回路のミラー比を1より小さくする。ミラー電流を抵抗素子により電圧信号に変換してオン・オフ指令信号を生成する。カレントミラー回路のマスタ側の電流およびスレーブ側のミラー電流における正規の制御電流Icとこのフローティング電源の変動に伴う誤差電流Ieの比、Ic/Ieは、同じとなる。ドライバの入力論理しきい値を、誤差電流が流れた場合に、ドライバの出力信号が変化しないレベルに設定する。
【0009】
特許文献3(特開平7−297698号公報)は、抵抗素子とドライブトランジスタとの直列体によりレベルシフト回路を構成する。ドライブトランジスタのソース抵抗として、2つの抵抗素子を直列に接続し、スイッチングパワートランジスタのオン/オフ指令値に応じてドライブトランジスタのソース抵抗値を調整する。具体的に、ドライブトランジスタをソースフォロワ態様で動作させ、ソース抵抗に対するドライブトランジスタのソース電圧を一定にする。これにより、電流/電圧変換用の抵抗素子の生成する等価電圧レベルを変更し、オン/オフ指令信号を生成する。
【0010】
この特許文献3には、レベルシフト回路のトランジスタ数を低減するとともに、ドライブトランジスタをワンショットパルスで駆動し、消費電流を低減する。この場合、電流/電圧変換用の抵抗素子により生成されるパルス状の信号に従ってフリップフロップをセットまたはリセットして、スイッチングパワートランジスタに対するオン/オフ制御信号を生成する。
【0011】
特許文献4(特開平9−200020号公報)は、ゲートおよびドレインが交差結合されたトランジスタを有するラッチ型レベルシフト回路を開示する。交差結合されたトランジスタに対し、それぞれドライブトランジスタが設けられる。ドライブトランジスタのゲートには、抵抗素子(ソース抵抗)と並列に、抵抗および容量素子が直列に接続されるCR直列回路が接続される。レベルシフトされた信号に従ってオン/オフ指令信号を生成するドライブ回路は、高圧側基準電圧(VH)に結合されるフローティング電源が用いられる。フローティング電源のロー側電極は、電力装置の出力ノードと分離される。交差結合されたラッチ型レベルシフト回路の出力電圧レベルが変化するとき、大きなピーク電流が流れ、CR直列回路の容量素子に充電される。この容量素子の充電電位が、対応のドライブトランジスタのゲート入力電圧としきい値電圧の差よりも高くなると、ドライブトランジスタがオフする。
【0012】
特許文献4は、ドライブトランジスタをソースフォロワ態様で動作させ、ピーク電流が流れた後、バイアストランジスタのソースフォロワモード動作により、バイアス抵抗(ソース抵抗)に対して微小電流を流す。これにより、ラッチ型レベルシフト回路の消費電流を低減するとともに、高速で、ラッチ型レベルシフト回路のラッチ状態を反転して、高速スイッチング動作を保障することを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−74779号公報
【特許文献2】特開2002−300018号公報
【特許文献3】特開平7−297698号公報
【特許文献4】特開平9−200020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1(特開平11−74779号公報)に示される構成においては、ドライブトランジスタのゲート電圧の立上がり速度が遅くされている。従って、カレントミラー回路の動作状態移行時における過電流を抑制して、カレントミラー回路のピーク電流に起因するノイズを抑制することは可能である。しかしながら、ドライブトランジスタはMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)で構成されており、ドレイン−ソース間に寄生容量が存在する。したがって、この寄生容量を介してピーク電流が流れ、ピーク電流を十分に抑制するのが困難となる。また、このドライブトランジスタがオン状態の間カレントミラー回路から常時電流が流れ、消費電流を低減することができず、小消費電力用途に適用できない。
【0015】
また、ドライブトランジスタのゲート電圧が抑制されて、カレントミラー回路の電流が制限されている。従って、このカレントミラー回路のミラー電流により抵抗素子を用いてレベルシフト信号を生成する場合、このレベルシフト信号を高速で変化させることができず、出力段のスイッチングトランジスタを、高速でスイッチング動作させることができなくなるという問題生じる。
【0016】
特許文献2(特開2002−300018号公報)においては、レベルシフト用のカレントミラー回路のミラー比を1よりも小さくし、指令信号生成用の抵抗素子に流れる電流による損失を抑制するとともに、高圧側フローティング源オフセット電圧(出力ノードの電圧)の変動による誤差電流による誤動作を防止することを図る。しかしながら、この特許文献2の構成においては、カレントミラー回路のマスタ段と共通電源(COM)との間にドライブトランジスタが配置されているだけであり、カレントミラー回路から流れるピーク電流を抑制することができない。特に、そのミラー比を1よりも小さくしており、マスタトランジスタからの電流が大きくなり、ピーク電流の影響が大きくなり、電流消費を低減することが困難である。
【0017】
特許文献3(特開平7−297698号公報)は、高耐圧入力トランジスタのソース抵抗を、第1および第2の抵抗素子の直列体で構成し、高耐圧入力トランジスタのオンおよびオフ時にソース抵抗の抵抗値を変更する。このソース抵抗の変更は、第2の抵抗素子と並列に接続される短絡用トランジスタを選択的にオン状態に設定する。
【0018】
この特許文献3においては、高耐圧入力トランジスタおよび短絡用トランジスタのゲート電圧の制御のために入力信号の立上がりエッジおよび立下がりエッジそれぞれにワンショットのパルス信号を発生する2つのパルス発生回路を設け、これらの2つのパルス信号のOR信号により高耐圧入力トランジスタのゲート電圧を生成し、一方、1つのパルス発生回路からのパルスにより短絡用トランジスタのゲートを駆動する。この構成の場合、高耐圧入力トランジスタおよび短絡用トランジスタのオン状態のタイミングを正確に設定するのが困難となる。電流/電圧変換用の抵抗素子により十分な電圧レベルの差があるオン/オフ指令電圧を生成するためには、これらのトランジスタのオン状態へのタイミングマージンを十分確保する必要があり、高速で出力段のトランジスタをスイッチング動作させるのが困難となる。
【0019】
特許文献4(特開平9−200020号公報)においては、入力トランジスタをソースフォロアモードで動作させてCR直列回路の容量素子にラッチ型レベルシフト回路のピーク電流を充電して、この充電電流を抑制するとともに、入力信号のオン指令持続期間、ソース抵抗を介して微小電流を流し、全体としての電力消費を低減することを図る。入力トランジスタがオフ状態の間、CR回路の容量素子の充電電流が、CR直列回路の抵抗素子および対応のソース抵抗(バイアス抵抗)を介して放電される。したがって、RC時定数で決定される期間が、対応の入力トランジスタをオフ状態に維持するために必要とされる。高速動作時において、入力信号が高速に変化する場合、このCR直列回路の容量素子の充電電荷をすべて放電できず、対応の入力トランジスタがオフ状態からオン状態へ移行するタイミングが遅れ、出力スイッチングトランジスタを高速でスイッチング動作させるのが困難となるという問題が生じる。
【0020】
また、レベルシフトの回路構成としては、フローティング電源のロー側電極が、出力ノード(フローティングノード)に接続されることが多い。この場合、フローティング電圧(出力ノードの電圧)の変動により、ラッチ型レベルシフト回路に電流が流れた場合、入力トランジスタのドレイン−ソース間寄生容量を介して電流が流れ、この電流により、CR直列回路の容量素子が充電される。この容量素子の充電電位が高くなると、入力トランジスタが、ソースフォロアモードで動作できず、より深いオフ状態となることが考えられる。この場合、CR直列回路の容量素子の充電電荷をバイアス抵抗を介して放電するまで、入力トランジスタをオン状態に移行させることができず、高速スイッチング動作を実現するのが、より困難となるという問題が生じる。
【0021】
それゆえ、この発明の目的は、低消費電流かつ高速でスイッチング指令信号を生成することのできるノイズ耐性に優れたレベルシフト信号を生成することのできる半導体回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この発明に係る半導体回路は、入力信号の第1の論理状態への遷移に応答して第1の入力信号の第1の論理状態の期間よりも短いパルス幅のワンショットのパルス信号を生成するワンショットパルス発生回路と、この入力信号に従って第1の内部ノードに電流を供給する第1の電流供給部と、ワンショットパルス信号に従って第1の内部ノードに電流を供給する第2の電流供給部と、第1の内部ノードに流れる電流に応じた電流を第2の内部ノードに流すシフト電流生成回路と、高電位側基準電源と第2の内部ノードとの間に結合され、第2の内部ノードを流れる電流に応じた信号を生成する電流検出手段と、この電流検出手段の出力信号に従って半導体スイッチングトランジスタを選択的にオン状態に設定するスイッチ駆動回路を備える。
【発明の効果】
【0023】
第1の内部ノードに対し第1および第2の電流供給部を設け、第2の電流供給部をワンショット駆動している。したがって、高速で電流変化を生じさせてさせて出力トランジスタのオン・オフを制御信号を生成することができる。また、ワンショット駆動であり、電流消費の増大は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に従う半導体回路の構成を示す図である。
【図2】図1に示す半導体回路の動作を示すタイミング図である。
【図3】この発明の実施の形態2に従う半導体回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う半導体回路の全体の構成を示す図である。図1において、この発明の実施の形態1に従う半導体回路は、低圧側(低電位側)入力信号HINおよびLINに従って出力パワートランジスタQ1およびQ2を駆動する高圧ゲート駆動回路HVICである。出力パワートランジスタQ1およびQ2は、一例として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)で構成され、出力ノード27に接続される負荷回路30に対し正および負の電流を供給する。すなわち、出力パワートランジスタQ1は、導通時、高圧側電源ノードVMから出力ノード27を介して負荷回路30に正の電流を供給する。出力パワートランジスタQ2は、導通時、出力ノード27から共通電源ノードCOMへ電流を流し、負荷回路30に負の電流を供給する。
【0026】
高圧ゲート駆動回路HVICは、低圧側入力信号HINに従って出力パワートランジスタQ1を駆動する高電位側駆動回路1と、低圧側入力信号LINに従って出力パワートランジスタQ2を駆動する低電位側駆動回路2とを含む。低圧側入力信号HINおよびLINは、低圧側電源電圧VCCの振幅の低電圧の入力信号である。また、これらの低圧側入力信号HINおよびLINは、図示しない制御回路から生成され、それぞれ、出力パワートランジスタQ1およびQ2のオンおよびオフを指令するパルス状の指令信号である。
【0027】
低電位側駆動回路2は、低圧側電源電圧VCCと共通電源COMの電圧とを両動作電源電圧として受け、低圧側入力信号LINに従って電圧VCCの振幅のゲート駆動信号OUTLを生成して、出力パワートランジスタQ2のゲートへ与える。低電位側駆動回路2の内部構成は、単に出力パワートランジスタQ1およびQ2のデッドタイムを考慮して、低圧側入力信号LINの立上がりおよび立下がりに応答してゲート駆動信号OUTLを生成する構成を有し、レベルシフト動作は行わない。この低電位側駆動回路2は、内部に遅延回路およびバッファ回路を有しており、その内部構成については、ここでは、説明しない。
【0028】
高電位側駆動回路1は、低圧側入力信号HINをオン/オフ指令信号ON_Aとして受けるインバータ10と、低圧側入力信号HINの立上がりに応答してワンショットのパルス信号ON_Bを生成するワンショット回路11と、このワンショットパルス信号ON_Bを受けるインバータ12と、インバータ10の出力信号に従って内部ノード15に電流を供給する第1の電流供給部14と、インバータ12の出力信号に従って内部ノード15へ電流を供給する第2の電流供給部16とを含む。
【0029】
第1の電流供給部14は、低圧側電源電圧VCCを供給する電源ノードVCCと内部ノード15の間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)PT1と、抵抗素子R1とを含む。ここで、ノードとその上の電圧を同一符号で示す。
【0030】
第2の電流供給部16は、電源ノードVCCと内部ノード15の間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタPT2および抵抗素子R2を含む。第1の電流供給部14が供給する電流I1は、第2の電流供給部16が供給する電流I2よりも小さくされる。また、I1・R1=I2・R2の関係を満たす。ここで、抵抗素子R1およびR2は、抵抗値R1およびR2をそれぞれ有する。
【0031】
高電位側駆動回路1は、さらに、内部ノード15と共通電源COMの間に接続されるNチャネルMOSトランジスタNT1と、第1および第2の電流供給部14および16から供給される電流に応じた電流を流すウイルソンカレントミラー回路20と、ウイルソンカレントミラー回路20を流れる電流(シフト電流)に応じた電圧信号を発生して高圧側ゲート駆動信号OUT1を生成する高電位側フローティング部22を含む。
【0032】
NチャネルMOSトランジスタNT1は、インバータ10から与えられるオン/オフ指令信号ON_Aの反転信号がHレベル(論理ハイレベル)のとき導通し、内部ノード15と共通電源COMとを電気的に結合する。
【0033】
ウイルソンカレントミラー回路20は、レベルシフトに必要な電流を生成するシフト電流生成回路として機能し、高耐圧NチャネルMOSトランジスタHNT1と、2つのNPNバイポーラトランジスタBP1およびBP2とを含む。高耐圧MOSトランジスタHNT1は、そのゲートが内部ノード15に接続され、そのドレインが内部ノード21に接続される。バイポーラトランジスタBP1は、そのベースおよびコレクタが高耐圧MOSトランジスタHNT1のソースに接続され、そのエミッタが共通電源COMに結合される。バイポーラトランジスタBP2は、そのコレクタが内部ノード15に接続され、そのベースがバイポーラトランジスタBP1のベースに接続され、そのエミッタが共通電源COMに接続される。バイポーラトランジスタBP1およびBP2は、カレントミラー回路を構成し、バイポーラトランジスタBP1がマスタとして機能する。
【0034】
高電位側フローティング部22は、フローティング電源ノードVBと内部ノード21の間に接続される抵抗素子R3と、出力ノード27と内部ノード21の間に接続されるダイオード素子DDと、内部ノード21上の信号に従って高圧側ゲート駆動信号OUTHを生成するゲートドライバDRVを含む。
【0035】
抵抗素子R3は、シフト電流Ioが流れると電圧降下を生じさせ、内部ノード21にシフト電流に応じた電圧信号を生成する電流検出手段として機能する。
【0036】
ダイオード素子DDは、そのカソードが内部ノード21に接続され、アノードが出力ノード27に接続される。このダイオードDDは、出力ノード27が共通電源COMの電圧レベルに駆動されるときに内部ノード21から出力ノード27へ電流が流れ出力ノード27の電位変化に悪影響を及ぼすのを防止する。
【0037】
ゲートドライバDRVは、インバータ回路で構成され、内部ノード21の電圧が、自身の入力論理しきい値よりも低くなると、ゲート駆動信号OUTHをHレベルに駆動する。
【0038】
出力ノード27とフローティング電源ノードVBの間に、フローティング電源25が接続される。フローティング電源25は、正極がフローティング電源ノードVBに接続され、負極が出力ノード27に接続され、フローティング電源ノードVBと出力ノード27の間に電圧EVを生成する。フローティング電源25により、フローティング電源ノードVBと出力ノード27の電圧(フローティング電圧)VSの差を一定値に維持する。
【0039】
図2は、図1に示す半導体回路HVICの高電位側駆動回路1の動作を示すタイミング図である。以下、図2を参照して、図1に示す高圧駆動回路HVICの高電位側駆動回路1の動作について説明する。
【0040】
オン/オフ指令信号ON_Aが、低圧側入力信号HINに応じてHレベルに立上がると、ワンショット回路11がワンショットパルスのワンショットオン/オフ指令信号ON_Bを発生する。このワンショットオン/オフ指令信号ON_Bは、低圧側入力信号HIN(オン/オフ指令信号ON_A)のHレベル期間よりも短い期間Hレベルとなる信号である。
【0041】
オン/オフ指令信号ON_AおよびON_BがともにHレベルとなると、インバータ10および12の出力信号がLレベルとなり、MOSトランジスタPT1およびPT2がオン状態、MOSトランジスタNT1がオフ状態となり、低圧側電源ノードVCCから電流I1およびI2が、それぞれ、電流供給部14および16を介して内部ノード15に供給される。MOSトランジスタNT1はオフ状態であり、電流I1およびI2の合成電流、I1+I2が、ウイルソンカレントミラー回路20に供給される。
【0042】
ウイルソンカレントミラー回路20においては、内部ノード15への電流供給による電圧レベルの上昇に応じて、高耐圧MOSトランジスタHNT1がオン状態となり、フローティング電源25からフローティング電源ノードVBおよび抵抗素子R3を介して電流Ioが、高耐圧MOSトランジスタHNT1を介して流れる。高耐圧MOSトランジスタHNT1は、ゲートが電圧駆動のトランジスタであり、電流IrがバイポーラトランジスタBP2を介して流れる。
【0043】
この高電位側フローティング部22からの電流Ioは、MOSトランジスタHNT1を介して、バイポーラトランジスタBP1およびBP2のベースに供給されるとともに、バイポーラトランジスタBP1を介してエミッタ電流として共通電源COMに放電される。バイポーラトランジスタBP1およびBP2は、サイズが同じである。従って、バイポーラトランジスタBP1のベース電流Ibe(BP1)とバイポーラトランジスタBP2のベース電流Ibe(BP2)とは、互いに等しく、また、バイポーラトランジスタBP1およびBP2のエミッタ電流Ie(BP1)およびIe(BP2)も等しくなる。この場合、次式が成立する:
Ie(BP1)=Ibe(BP1)+Io、
Ie(BP2)=Ibe(BP2)+Ir、
従って、Io=Ir
すなわち、ウイルソンカレントミラー回路20において、高電位側フローティング部22から、供給される電流Ioは、電流供給部14および16が供給する電流Irに等しくなる。これにより、高電位側フローティング部22においては、抵抗素子R3における電圧降下により、内部ノード21の電圧レベルが、ゲートドライバDRVの入力論理しきい値Vthよりも低くなり、このゲートドライバDRVの出力するハイ側ゲート駆動信号OUTHが高速でHレベルのオン状態(ON)へ移行する。応じて、出力パワートランジスタQ1がオン状態となり、出力ノード27へ高電圧源VMから電流が供給される。
【0044】
このとき、出力ノード27が、ダイオード素子DDを介して高電位側フローティング部22の内部ノード21に結合されており、内部ノード21は、高圧側電源電圧VMレベルにまで上昇する。しかしながら、フローティング電源25により、フローティング電源ノードVDの電圧は、出力ノード27の電圧よりもフローティング電源25の電圧EVだけ高い電圧レベルに駆動され、ゲートドライバDRVの出力信号OUTHは、Hレベルに維持される。
【0045】
また、高耐圧MOSトランジスタHNT1は、そのゲート電圧よりもドレイン電圧が高くなり、ソースフォロワモードで動作し、高圧VMがバイポーラトランジスタBP1およびBP2へ供給されるのを防止するとともに、電流供給源14および16から供給される電流Irに等しい電流を高電位側フローティング部22から引抜く。
【0046】
ワンショット回路11からのワンショットオン/オフ指令信号ON_BがLレベルに低下すると、第2の電流供給部16においてMOSトランジスタPT2がオフ状態となる。応じて、第2の電流供給部16からの電流I2の供給が停止され、第1の電流供給部14からMOSトランジスタPT1を介して電流I1がウィルソンカレントミラー回路20に供給される。
【0047】
抵抗素子R3には、ウイルソンカレントミラー回路20を介して電流I1に等しい電流が流れる。この状態においても、内部ノード21の電圧VB−I1・R3は、ゲートドライバDRVの入力論理しきい値Vth+Vsよりも低く、ゲートドライバDRVの出力信号OUTHはHレベルに維持される。ここで、ゲートドライバDRVのロー側電源電圧は、フローティング電圧VSとしている。
【0048】
出力パワートランジスタQ1のオン状態への駆動時、短い期間大きな電流が流れるだけであり、高圧側出力パワートランジスタQ1のオン状態のときの消費電流を低減することができる。この場合、電流I1は、電流I2よりも小さくされており、より消費電流を低減することができる。電流I1が満たす条件としては、次式で表わされる。
【0049】
VB−I1・R3<Vth+Vs、
EV−I1・R3<Vth、
従って、I1>(EV−Vth)/R3.
オン/オフ指令信号ON_Aがオフ状態(OFF)へ移行すると、MOSトランジスタPT1がオフ状態となり、MOSトランジスタNT1がオン状態となる。このときワンショット回路11からのワンショットオン/オフ指令信号ON_Bはオフ状態(Lレベル)に維持されており、MOSトランジスタPT2はオフ状態である。従って、内部ノード15は、MOSトランジスタNT1により共通電源COMの電圧レベルに移行し、高耐圧MOSトランジスタHNT1がオフ状態となる。応じて、内部ノード21の電圧が、ゲートドライバDRVの入力論理しきい値よりも上昇し、ゲートドライバDRVからのゲート駆動信号OUTHがLレベルとなり、出力パワートランジスタQ1がオフ状態となる。
【0050】
高耐圧MOSトランジスタHNT1から供給される電流は、バイポーラトランジスタBP1により共通電源COMへ放電される。したがって、高耐圧MOSトランジスタHNT1がオフ状態のときに、フローティング電源ノードVBに電圧変動が生じ、高耐圧MOSトランジスタHNT1のドレイン−ソース間寄生容量を介してノイズ電流が流れても、バイポーラトランジスタBP1により放電され、高耐圧MOSトランジスタHNT1のソース電位がノイズまたは電源変動に起因してその電圧レベルが大きく上昇するのは防止される。これにより、高耐圧MOSトランジスタHNT1は、電流供給部14および16からの電流供給に従って高速でオン状態へ移行することができる。
【0051】
また、高耐圧MOSトランジスタHNT1は、ゲートがMOSトランジスタNT1を介して共通電源COMに結合され、オフ状態移行時、そのゲート容量に蓄積される電荷はMOSトランジスタNT1によりすべて放電され、高速にオン状態からオフ状態へ移行することができる。
【0052】
また、ウイルソンカレントミラー回路20を利用しているだけであり、フリップフロップなどの論理状態記憶回路は利用されていないため、ノイズが発生しても、そのノイズの影響は確実に抑制することができる。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態1に従えば、ワンショット回路によるワンショットパルスのオン指令信号に従って、ゲート駆動信号をオン状態に設定している。これによい理、出力パワートランジスタ駆動時に大きな電流が流れる期間を短縮することができ、消費電流を低減することができる。また、ウイルソンカレントミラー回路により、正確に、一定の電流を流しており、ノイズの影響を抑制して、ゲートドライバに対して高速かつ低消費電流でレベルシフトされたゲート駆動信号を生成することができる。
【0054】
[実施の形態2]
図3は、この発明の実施の形態2に従う半導体回路の構成を概略的に示す図である。図3に示す半導体回路は、以下の点で、図1に示す半導体回路とその構成が異なる。すなわち、高電位側フローティング部22において、ウイルソンカレントミラー回路20に供給される電流Ioのミラー電流を生成するカレントミラー回路が設けられる。このカレントミラー回路は、PチャネルMOSトランジスタPT3およびPT4を含む。MOSトランジスタPT3がそのゲートおよびドレインが相互接続され、ソースがフローティング電源ノードVBに接続される。MOSトランジスタPT4が、フローティング電源ノードVBと内部ノード30の間に接続されかつそのゲートがMOSトランジスタPT3のゲートに接続される。MOSトランジスタPT3およびPT4のサイズ(ゲート幅とゲート長の比)の比は、n:1に設定され、従って、MOSトランジスタPT4には、電流Io/nが流れる。
【0055】
内部ノード30と出力ノード27の間に抵抗素子R4が接続される。ゲートドライバZDRVは、内部ノード30の電圧レベルがHレベルとなると、ゲート駆動信号OUTHをHレベルに駆動するバッファで構成される。
【0056】
図3に示す半導体回路の他の構成は、図1に示す半導体回路の構成と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0057】
この図3に示す半導体回路の動作タイミングは、図2に示すタイミング図と同じである。オン/オフ指令信号ON_AおよびON_BがHレベルとなると、ウィルソンカレントミラー回路20に電流Ioが流れ、応じて、MOSトランジスタPT3およびPT4のカレントミラー動作により、抵抗素子R4に電流Io/nが流れる。この内部ノード30の電圧Io・R4(=(I1+I2))が、ゲートドライバZDRVの入力論理しきい値VTHよりも高くなると、ゲートドライバZDRVからのゲート駆動信号OUTHがHレベルとなる。ここで、抵抗素子R4の抵抗値をR4としている。
【0058】
ワンショット回路11からのワンショットオン/オフ指令信号ON_BがLレベルとなると、抵抗素子R4を流れる電流は、I1/nとなる。このとき抵抗素子R4に印加される電圧は、I1・R4/nは、ゲートドライバZDRVの入力論理しきい値VTHよりも高い電圧レベルであり、ゲート駆動信号OUTHは、Hレベルに維持される。従って、この場合、電流I1は以下の関係を満たす必要がある:
I1・R4/n>VTH、
従って、I1>n・VTH/R4.
フローティング電源ノードVBにおける変動により、またはノイズにより、フローティング電源ノードから誤差電流が流れる可能性がある。この場合、MOSトランジスタPT3を流れる正規電流Ioと誤差電流Ierの比、Io/Ierは、MOSトランジスタPT4を介して流れる電流においても同じ比が維持される。この誤差電流IerがMOSトランジスタPT3を流れた場合、抵抗素子R4の電圧降下は、Ier・R4/nであり、ゲートドライバZDRVの入力論理しきい値VTHよりも十分に低い電圧レベルである。従って、誤差電流Ierが流れても、ゲートドライバZDRVは、誤差電流による入力信号がLレベルであると判定することができ、誤差電流による誤動作を防止することができる。従って、入力論理しきい値VTH、抵抗素子R4の抵抗値R4、電流I1およびIerは以下の関係を満たす:
I1・R4/n>VTH、かつ
Ier・R4/n<VTH.
上述の関係を満たすように、ゲートドライバZDRVの入力論理しきい値、電流I1および抵抗素子R4の抵抗値を設定する。
【0059】
ウイルソンカレントミラー回路20において電流が流れない場合、高電位側フローティング部22においても、MOSトランジスタPT3およびPT4はオフ状態であり、内部ノード30の電位は、出力ノード27の電圧(フローティング電圧)VSに等しく、ゲートドライバZDRVにより、Lレベルと判定され、出力されるゲート駆動信号OUTHはLレベルに維持される。
【0060】
以上のように、この発明の実施の形態2に従えば、高電位側フローティング部22においてカレントミラー回路を配置し、ウィルソンカレントミラー回路を流れる電流よりも小さな電流によりゲートドライバに対する入力信号を生成している。従って、電流/電圧変換用の抵抗素子R4を流れる電流は、小さく、抵抗素子R4における電力損失を低減することができる。また、電源変動などのノイズが発生して誤差電流が流れても、ゲートドライバン入力論理しきい値により正規制御信号およびノイズによる誤差信号を識別することができ、確実にノイズによる誤動作を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明に係る半導体回路は、低圧側入力信号をレベルシフトして高圧側スイッチングトランジスタのオン/オフを制御する構成の回路に対し適用することにより、高速かつ低消費電流で動作するノイズ耐性の優れた高圧側スイッチングパワートランジスタを駆動する回路を実現することができる。
【0062】
この出力部のトランジスタとしては、IGBTに限定されず、パワーMOSトランジスタであってもよい。また、この出力部のパワートランジスタQ1およびQ2は、図1および3においてはハーフブリッジ構成に接続される構成を示すが、フルブリッジ構成の出力トランジスタ接続であってもよい。また、負荷回路30は、アクチュエータおよびモータのいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 高電位側駆動回路、2 低電位側駆動回路、11 ワンショット回路、14 第1の電流供給部、16 第2の電流供給部、20 ウイルソンカレントミラー回路、22 高電位側フローティング部、R1−R4 抵抗素子、HNT1 高耐圧MOSトランジスタ、BP1,BP2 バイポーラトランジスタ、DRV,ZDRV ゲートドライバ、Q1,Q2 出力パワートランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力ノードを前記低電圧側の電圧よりも高い電圧レベルに駆動する半導体スイッチングトランジスタのオンおよびオフを低電圧側からの入力信号に従って制御する半導体回路であって、
前記入力信号の第1の状態への遷移に応答して前記第1の入力信号の第1の論理状態の期間よりも短いパルス幅のワンショットのパルス信号を生成するワンショットパルス発生回路、
前記入力信号に従って第1の内部ノードに電流を供給する第1の電流供給部、
前記ワンショットパルス信号に従って前記第1の内部ノードに電流を供給する第2の電流供給部、
前記第1の内部ノードに流れる電流に応じた電流を第2の内部ノードに流すシフト電流生成回路、
高電位側基準電源と前記第2の内部ノードの間に結合され、前記第2の内部ノードを流れる電流に応じたレベルの電圧信号を生成する電流検出手段、および
前記電流検出手段の出力信号に従って前記半導体スイッチングトランジスタを選択的にオン状態に設定するスイッチ駆動回路を備える、半導体回路。
【請求項2】
前記シフト電流生成回路は、
前記第1の内部ノードにゲートが結合され、前記第1の内部ノードの電圧に応じて前記第2の内部ノードから電流を選択的に流す絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、
前記第1の内部ノードと共通電源との間に接続される第1のバイポーラトランジスタと、
前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記共通電源との間に接続されかつそのベースが前記第1のバイポーラトランジスタのベースに接続されかつ前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタからの電流を受ける第2のバイポーラトランジスタとを備える、請求項1記載の半導体回路。
【請求項3】
前記第2の電流供給部が流す電流は、前記第1の電流供給部が流す電流よりも大きい、請求項1に記載の半導体回路。
【請求項4】
前記電流検出手段は、
nを1よりも大きな実数として、ミラー比がn:1のミラー電流を生成するカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路のミラー電流を電圧信号に変換する抵抗素子とを備え、前記第2の内部ノードを流れる電流の1/n倍の電流に応じた電圧が電流検出信号として生成される、請求項1に記載の半導体回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−15136(P2011−15136A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156906(P2009−156906)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】