説明

半導体構造およびその製作方法(チャネルの応力向上のための低ヤング率スペーサ)

【課題】チャネル領域を有する半導体基板を使用する半導体構造およびその製作方法を提供すること。
【解決手段】ゲート電極が、半導体基板上に配置される。スペーサが、ゲート電極の側壁に隣接して配置される。このスペーサは、約10〜約50GPaのモジュラスを有する材料で形成される。このモジュラスは、チャネル領域内に向上した応力をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には半導体構造内における物理的応力に関する。より詳細には、本発明は、例えば金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体構造内における物理的応力によって誘発される電荷キャリア移動度の変更に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの設計および開発における最近の進歩により、半導体デバイス構成要素へ物理的負荷応力を導入することが必要となってきた。物理的負荷応力は、しばしば電荷キャリア移動度を変更させる。特に、向上した電荷キャリア移動度は、一般に半導体デバイス性能を向上させる。
【0003】
半導体デバイス内での応力に誘発された性能向上には、さまざまな例がある。例えば、U.S.Patent No. 6,717,216では、Doris等が、デバイス内に電荷キャリア移動度の向上をもたらすために、アンダーカット領域内に圧縮応力を有するシリコン・オン・インシュレータ電界効果トランジスタデバイスを教示している。さらに、U.S.Patent No. 6,825,529では、Chidambarrao等が、ゲート側壁スペーサ材料が、ゲート電極下の半導体チャネル領域内の引張応力または圧縮応力に影響を及ぼすことができるということを教示している。
【0004】
電荷キャリア移動度の変更をもたらす、半導体構造内のさまざまな場所における圧縮応力または引張応力の他の例も知られている。一般にピエゾ抵抗係数が、例えば半導体基板のドーピングおよび結晶方位を含むいくつかの変数の関数として異なることから、通常、n型FETデバイスおよびp型FETデバイスは、圧縮応力および引張応力に対して異なった反応をする。したがって、n型FETデバイスおよびp型FETデバイス内で応力が加わる構成要素は、特別に工作され、最適化されることを必要とする場合が多い。
【特許文献1】U.S. Patent No. 6,717,216
【特許文献2】U.S. Patent No. 6,825,529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体の設計および開発における傾向は、より小さい寸法でも向上した性能を維持することである。したがって、性能が向上したMOSFETなどの半導体デバイスを形成する新規な構造および方法の必要性が、引き続き存在するであろう。この目的のために、半導体技術においては、物理的に応力を加えられた構造が引き続き使用されるものと思われる。半導体デバイスの性能向上のために物理的応力を有利に使用する、代替の半導体構造および製作方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、性能が向上した、例えばMOSFETなどの半導体構造を提供する。
【0007】
本発明は、この半導体構造を容易に製造するための方法も提供する。
【0008】
本発明に従えば、半導体構造は半導体基板を含み、この半導体基板は、半導体基板表面上に(すなわち、突き出て(over))配置されたゲート電極と、半導体基板内のゲート電極下のチャネル領域とを含む。スペーサが、ゲート電極の側壁に隣接して形成される。このスペーサは、約10〜約50ギガパスカル(GPa)のヤング率(Young's modulus)を有する材料で形成される。通常のスペーサ材料と比較して、このヤング率は非常に低い。このより低ヤング率のスペーサにより、エッチ・ストップ窒化物ライナからチャネルまでの応力の伝わりが向上する。この向上は、スペーサが、プラズマCVD(PECVD)、または高速熱化学気相成長(RTCVD)した窒化シリコン(通常、約350GPaのヤング率を有する)、あるいは低温酸化(LTO)またはPECVD堆積を使用して形成された酸化シリコン(通常、約70GPaのヤング率を有する)で作製されるその他の類似構造と相関している。
【0009】
本発明は、指定された範囲のヤング率を有するスペーサは、本発明で教示する範囲を上回るヤング率(すなわち、50GPaを超える)を有する(前述の)材料で形成されたスペーサを有する類似の半導体構造と比較して、特定の半導体構造内で向上した応力をもたらすという観測に基づくものである。引張エッチ・ストップ窒化物ライナを低ヤング率スペーサと組み合わせて使用すると、向上した長手方向引張応力および垂直圧縮応力がn型FETのチャネル領域において得られる。圧縮エッチ・ストップ窒化物ライナを低ヤング率スペーサと組み合わせて使用すると、向上した長手方向圧縮応力および垂直引張応力がp型FETのチャネル領域において得られる。これらの向上した応力はさらに、向上した電荷キャリア移動度ももたらす。本発明は、特に、n型FET、p型FET、およびそれらの組合せを含む電界効果トランジスタに適用できる。
【0010】
本発明は、特定のプラズマCVD法を利用して形成される特定の酸化シリコン材料から構成される、比較的低ヤング率のスペーサも提供する。本発明の方法を使用して形成されるスペーサは、電界効果トランジスタを製作する際にフッ化水素酸エッチング液が使用される場合に、特に低いエッチング速度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、半導体構造および半導体構造の製作方法を提供する。この半導体構造は、電荷キャリア移動度に関する性能を向上させて製作することができる。本発明は、半導体構造内のゲート電極側壁に隣接して形成された、特定範囲のヤング率を有するスペーサを使用することによって、前述の結果を達成する。このヤング率範囲は、一般に低いものである。「低い」とは、約50GPa未満ということであり、好ましくは約10〜約50GPaであることを意味する。低ヤング率を有する側壁スペーサは、非常に応力が加えられたエッチ・ストップ窒化物ライナと併せて使用されると、ゲート電極下のチャネル内に、向上した横方向の圧縮応力と向上した垂直方向の引張応力とをもたらす。適切な半導体基板結晶方位と組み合わさると、このスペーサは半導体構造内で向上した電荷キャリア移動度を提供することを支援する。
【0012】
本発明は、電界効果トランジスタに適用可能であることが好ましいが、本発明はそれに限定されない。本発明は、ゲートが、それに隣接して形成されたスペーサを有する、半導体基板内のチャネル領域上のゲート型電極またはそれに関連した構造を使用できるいくつかの半導体デバイスのいずれにも適用できる。
【0013】
図1〜図3は、本発明の一実施形態に従って電界効果トランジスタを製造する際の漸進的な段階の結果を示す一連の概略断面図を示している。
【0014】
図1は、半導体基板10を示している。半導体基板10上には埋め込まれた絶縁体層12が配置され、埋め込まれた絶縁体層12上には半導体表面層14が配置される。埋め込まれた絶縁体層12は、結晶または非結晶の酸化物または窒化物であってもよい。層10、12、および14を含む基板は、例えばSIMOX(separation by ion implantation of oxygen)や層転写技法などの従来の方法を利用して形成される。
【0015】
半導体基板10、埋め込まれた絶縁体層12、および半導体表面層14の構造は、通常はシリコン・オン・インシュレータ半導体基板であるSOI(semiconductor-on-insulator semiconductor)半導体基板を含む。しかし、本発明は、シリコン・オン・インシュレータ半導体基板内に形成される半導体構造には限定されない。本発明は、バルク半導体基板またはSGOI(SiGe-on-insulator)基板内に形成される半導体デバイスも含む。本発明は、通常、シリコン半導体基板、シリコンゲルマニウム合金半導体基板、および化合物半導体基板を使用して実施してもよい。
【0016】
本発明は、バルク・シリコン半導体基板、SOI半導体基板、または、異なる結晶方位の少なくとも2つの表面領域を有することができるHOT(hybrid oriented technology)半導体基板を用いて実施することができる。シリコン半導体基板の一般的な結晶配列は、(100)、(111)、および(110)である。ハイブリッド基板は、第1の結晶方位を有する1つの表面領域と、第1の結晶方位と異なる第2の結晶方位の第2の表面領域とを含むことができる。
【0017】
また図1は、半導体表面層14上に配置されたゲート誘電層16と、ゲート誘電層16の少なくとも一部上に配置されたゲート電極も示している。最後に図1は、半導体表面層14内に配置され、ゲート電極18下の半導体表面層内のチャネル領域によって分離された軽度にドーピングした一対の拡張領域20aおよび20bを示している。
【0018】
ゲート誘電層16は、通常、約10〜約70オングストロームの厚さに形成された酸化物、窒化物、酸窒化物、またはそれらの組合せから構成される。好ましくは、ゲート誘電体16として、真空中の測定で約4.0以上の誘電率を有する酸化物が使用される。ゲート電極18は、通常、約1000〜約3000オングストロームの厚さに形成された高濃度にドーピング(すなわち1立方センチメートルあたり1×1020〜1×1021ドーパント原子)したポリシリコン材料で形成される。ドーピングしたポリシリコンに加えて、ゲート電極はまた、ドーピングしたpoly−SiGe、導電性元素金属、導電性元素金属合金、導電性元素金属シリサイド、導電性元素金属の窒化物、または、ドーピングしたpoly−Siとの組合せを含む、それらの任意の組合せも含むことができる。
【0019】
軽度にドーピングした一対の拡張領域20aおよび20bは、比較的低ドーズ量のイオン注入法を利用して形成されて、1立方センチメートルあたり約1×1020〜約5×1020ドーパント原子の濃度で適切な極性のドーパントを提供する。軽度にドーピングした一対の拡張領域20aおよび20bは、本発明の一部の実施形態では任意でもよい。また、図1には特に示していないが、本発明の一部の実施形態では、任意のハロ・イオン注入を使用してもよい。
【0020】
図2は、ゲート電極18およびゲート誘電層16に隣接し、それらと結合するように配置された一対のスペーサ22aおよび22bを示している。また図2は、軽度にドーピングした一対の拡張領域20aおよび20bを組み込む一対のソース/ドレイン領域20a’および20b’も示している。一対のソース/ドレイン領域20a’および20b’も、半導体表面層14内に配置されている。一対のソース/ドレイン領域20a’および20b’は、ゲート電極18下のチャネル領域に境界を接するように続いている。
【0021】
一対のスペーサ22aおよび22bは、本発明の主題の一部を提供する材料で形成される。スペーサ22aおよび22bを形成する際の材料の制限は、さらに詳細に以下で開示する。
【0022】
一対のソース/ドレイン領域20aおよび20bは、追加のイオン注入法を使用しながら、適切なドーパント濃度および極性に形成される。
【0023】
図3は、ソース/ドレイン領域20aおよび20bならびにゲート電極18上に配置された一連のシリサイド領域24a、24b、および24cを示している。図3は、電界効果トランジスタを覆うエッチ・ストップ・ライナ層26も示している。
【0024】
一連のシリサイド層24a、24b、および24cは、約50〜約300オングストロームの厚さに形成されるシリサイド材料が生じるように、従来の自己整合化(すなわちサリサイド化)プロセスを利用して形成される。一連のシリサイド層24a、24b、および24cは、ソース/ドレイン領域20aおよび20bならびにゲート電極18の向上した伝導率を提供することを支援する。一般に、このようなシリサイド材料には、これらには限定されないが、チタンシリサイド、プラチナシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド、および他の合金の組合せが含まれる。
【0025】
シリサイドはゲート電極18上に示されているが、本発明は、シリサイドがゲート電極18上に配置されない実施形態も意図している。このような実施形態では、サリサイド化プロセス中、誘電体キャップがゲート電極18上にある。
【0026】
最後に、エッチ・ストップ・ライナ層26が、約300〜約2000オングストロームの厚さに形成される窒化シリコン材料、またはその他のエッチ・ストップ誘電体材料で通常形成される。このライナ中の固有応力は、n型FETへの張力付与で2GPaまで、p型FETへの圧縮力付与で−3.5〜−4GPaまで変化することがある。
【0027】
最後に図3は、電界効果トランジスタ用の結晶方位基準軸を示している。(001)に配向された基板を利用して形成される場合、結晶方位面は、L=(110)、T=(1−10)、およびV=(001)である。(110)に配向された基板を利用して形成される場合、結晶方位面はL=(110)、T=(001)、およびV=(1−10)である。
【0028】
本発明は、ゲート電極18下のチャネル領域内の電荷キャリア移動度への一対のスペーサ22aおよび22bの材料特性の影響に関する。この目的のために、本発明は、一対スペーサの22aおよび22bが、好ましくは約10〜約50GPa、より好ましくは約10〜約25GPa、最も好ましくは約15〜約20GPaのヤング率を有する比較的柔らかい材料を含むものとする。この後に一連の応力トポグラフィ・グラフで示すように、特定のシリコン半導体基板結晶方位に製作される場合、前述の範囲の柔らかさ(低ヤング率材料は、より高いヤング率の材料よりも柔らかい)は、電界効果トランジスタの向上した電荷キャリア移動度性能をもたらす。
【0029】
本発明は、約10〜約50GPaのヤング率を有するスペーサを形成するために使用することができる材料のタイプを具体的には限定しない。実際的な観点から、導体材料、半導体材料、および誘電体材料を含む、いくつかの材料のいずれをも使用することができる。酸化シリコン誘電体材料が望ましい。プラズマCVD法を使用して形成される未ドープ酸化シリコン誘電体材料も望ましい。このような方法は、以下のものを使用できる。(1)シリコンおよび酸素の原料としてシランおよび亜酸化窒素、(2)窒素、ヘリウム、または水素などのキャリヤ・ガス、(3)10トール未満、より好ましくは1トール未満の堆積圧力、(4)1秒あたり約5〜約25オングストローム、より好ましくは1秒あたり約10〜約20オングストロームの堆積速度、(5)約400℃〜約480℃、より好ましくは約430℃〜約450℃の堆積温度。
【0030】
前述の制限は、スペーサ22aおよび22bを形成する未ドープ酸化シリコン材料の形成にとって望ましい。これらの制限を使用すると、本発明は、スペーサ22aおよび22bに、フッ化水素酸エッチング液中での特に低いエッチング速度を提供する。このエッチング速度は、熱酸化物のエッチング速度のわずかに約2倍程度であり、他の化学気相成長法で堆積させた酸化シリコンのエッチング速度の1/5程度であってもよい。これらの状況下では、一対のスペーサ22aおよび22bを最小限にエッチングしながら、半導体構造のサリサイド化前フッ化水素酸洗浄を実行できる。
【0031】
図4は、本発明に従っていない電界効果トランジスタの長手方向応力のトポグラフィ・グラフを示している。この電界効果トランジスタは、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)半導体基板内に製作される。
【0032】
図4は、埋め込まれた酸化物層12を示している。埋め込まれた酸化物層12上には、シリコン表面層14が配置されている。シリコン表面層14上には、ゲート電極18が配置されている。スペーサ22bが、ゲート電極18に結合している。最後に、エッチ・ストップ・ライナ層26が、ゲート電極18、スペーサ22b、およびシリコン表面層14の露出部を覆って形成されている。
【0033】
図4に示す応力トポグラフィ・グラフは、各種構成要素のヤング率に対して以下の値を使用して計算される。(1)スペーサ22bは、それぞれ70GPaおよび350GPaのヤング率を有する酸化物および窒化物材料から構成され、窒化物エッチ・ストップ・ライナ層26は、350GPaのヤング率を有するものと仮定し(また、エッチ・ストップ・ライナ層26は、まず約−2GPaの固有圧縮応力で堆積される)、(2)ゲート電極18およびシリコン表面層14は、150GPaのヤング率を有するものと仮定し、(3)(参照符合は、図をわかりやすくするために省略されるが、ゲート18の下の黒くなった線として最小に示される)ゲート誘電体層16は、70GPaのヤング率を有するものと仮定する。圧縮応力窒化物エッチ・ストップ層ライナ26が、p型FET上に使用される。引張窒化物ライナがn型FET上に使用される場合には、応力値は逆転する。
【0034】
図4は、シリコン表面層14内のゼロ応力線30を示している。ゼロ応力線30の右には、50MPa引張応力の単一の引張応力トポグラフィ線がある。ゼロ応力線30の左には、−50MPa圧縮応力間隔で増加し、ゲート電極18の下で−150MPa圧縮応力で終わる一連の3本の圧縮応力線がある。
【0035】
図5は、計算アルゴリズムが、70GPaのヤング率を有する酸化シリコンおよび350GPaのヤング率を有する窒化物の材料を含むスタックではなく、(本発明の範囲内の)20GPaのスペーサ22bのヤング率を使用すること以外は、図4の応力トポグラフィ・グラフと一致している応力トポグラフィ・グラフである。図5に示すように、参照符号30は、やはりシリコン表面層14内のゼロ応力線に対応する。参照符号30の右には、50MPa引張応力の単一の引張等応力線がある。参照符号30の左には、ゲート電極18下のチャネル領域内の−250MPaの降伏圧縮応力で終わる一連の5本の等応力線がある。ここでも、これはp型FET用である。
【0036】
したがって、図4と図5を比較するとわかるように、70GPaのヤング率を有する酸化物および約350GPaの窒化物のより高ヤング率のスタックと比較して、約20GPaの概ね低ヤング率のスペーサを使用すると、電界効果トランジスタのチャネル領域内で長手方向により高い圧縮応力が生じる。
【0037】
図6および図7は、長手方向ではなく垂直方向の応力であるという以外は、図4および図5の応力トポグラフィ・グラフと一致している一対の応力トポグラフィ・グラフを示している。図4および図5と同様に、図6および図7のどちらにも、シリコン表面層14内にゼロ応力線30が示されている。ゼロ応力線30の左には、引張等応力線があり、ゼロ応力線30の右には、圧縮等応力線がある。スペーサ22bが、向上した硬度と、70GPaのヤング率を有する酸化物および350GPaのヤング率を有する窒化シリコンを有するスタックとを有する材料で形成される限りでは、図6は図4と一致する。スペーサ22bが、低下した硬度と、20GPaのヤング率とを有する材料で形成される限りでは、図7は図5と一致する。
【0038】
図6と図7の比較からわかるように、約20GPaのヤング率の比較的柔らかいスペーサ22bを有する図7のゲート電極18下のチャネル領域内には、追加の引張等応力線がある。したがって、図7の半導体構造は、向上した電荷キャリア移動度を特定の結晶方位およびドーパント極性の半導体基板に提供できる向上した引張垂直応力を有する。
【0039】
図8および図9は、図4〜図7の応力トポグラフィ・グラフにおいて示された応力情報をまとめたものである。
【0040】
図8で、参照符号61は、20GPaのヤング率のスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの長手方向応力プロファイルに対応する。参照符号62は、70/350GPaのヤング率を有する結合された酸化物/窒化物スタックを有するスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの長手方向応力プロファイルに対応する。図8からわかるように、低ヤング率スペーサは、一般にゲート電極範囲の中央から約0.02ミクロンの距離を有するチャネル領域内でより大きな圧縮応力を提供する。
【0041】
図9では、参照符号71は、20GPaのヤング率のスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの垂直応力プロファイルに対応する。参照符号72は、70/350GPaのヤング率を有する結合された酸化物/窒化物スタックを有するスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの垂直応力プロファイルに対応する。図9からわかるように、低ヤング率スペーサ内に製作された電界効果トランジスタのチャネル領域は、より高い引張応力を有する。
【0042】
n極性およびp極性に関する長手方向、横方向、垂直方向の順の(001)シリコンのピエゾ抵抗係数は、以下の通りである(単位は1e−11/pascal)。(1)n型シリコンの場合、−31.6、−17.6、および53.4、(2)p型シリコンの場合、71.8、−1.1、および−66.3。(110)p型シリコンのピエゾ抵抗係数は、71.8、−66.3、および−1.1である。結晶方位(001)のシリコンは、通常、バルク・シリコンである。結晶方位(110)のシリコンは、通常、シリコン・オン・インシュレータ半導体基板に由来する。電荷キャリア移動度の向上は、通常、ピエゾ抵抗係数を掛けた負荷応力の合計として計算され、長手方向、垂直方向、および横方向それぞれに関して合計される。
【0043】
チャネル領域内の寸法的に適切な向上した応力の結果として、本発明は、n型FETデバイスおよびp型FETデバイス両方の中での電荷キャリア移動度を向上させる機会を提供する。長手方向圧縮応力は、(001)シリコン半導体基板上に製作される場合であっても、(110)シリコン半導体基板上に製作される場合であってもp型FETデバイスに有利である。垂直引張応力は、(110)シリコン半導体基板上に製作されるp型FET、または(001)シリコン半導体基板上に製作されるn型FETに有利である。
【0044】
本発明の一実施形態に従う電界効果トランジスタの電荷キャリア移動度の増大を概算するのに使用できる、いくつかの計算アルゴリズムがある。高ヤング率スペーサと比較した低ヤング率スペーサに関するおおよその合計として、n型FETは電荷キャリア移動度が約16パーセント向上したものと予想され、p型FETは電荷キャリア移動度が約20パーセント向上したものと予想される。さらに、p型FETトランジスタには、(001)シリコン表面と比較すると、(110)シリコン表面上に形成された場合に、電荷キャリア移動度の有利性が加わる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を限定するものではなく、本発明を例示するものである。本発明、さらには添付の特許請求の範囲に従う一実施形態をそのまま提供しつつ、本発明の好ましい実施形態に従って、方法、材料、構造、および寸法に対して改変および修正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の電界効果トランジスタを製作する際の一段階の結果を示す概略断面図である。
【図2】本発明の電界効果トランジスタを製作する際の一段階の結果を示す概略断面図である。
【図3】本発明の電界効果トランジスタを製作する際の一段階の結果を示す概略断面図である。
【図4】本発明の製作されていない電界効果トランジスタの横応力のトポグラフィ・グラフである。
【図5】本発明の製作された電界効果トランジスタの横応力のトポグラフィ・グラフである。
【図6】本発明の製作されていない電界効果トランジスタの垂直応力のトポグラフィ・グラフである。
【図7】本発明の製作された電界効果トランジスタの垂直応力のトポグラフィ・グラフである。
【図8】図4〜図7のトポグラフィ・グラフをまとめた横応力のグラフである。
【図9】図4〜図7のトポグラフィ・グラフをまとめた垂直応力のグラフである。
【符号の説明】
【0047】
10 半導体基板
12 埋め込まれた酸化物層
12 埋め込まれた絶縁体層
14 半導体表面層
16 ゲート誘電層
18 ゲート電極
20a スペーサ拡張領域
20a’ ソース/ドレイン領域
20b スペーサ拡張領域
20b’ ソース/ドレイン領域
22a スペーサ
22b スペーサスペーサ
24a シリサイド領域
24b シリサイド領域
24c シリサイド領域
26 エッチ・ストップ・ライナ層
30 ゼロ応力線
61 20GPaのヤング率スペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの長手方向応力プロファイル
62 70/350GPaのヤング率を有する結合された酸化物/窒化物スタックを有するスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの長手方向応力プロファイル
71 20GPaのヤング率スペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの垂直応力プロファイル
72 70/350GPaのヤング率を有する結合された酸化物/窒化物スタックを有するスペーサを備えて製作された電界効果トランジスタの垂直応力プロファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル領域を含む半導体基板と、
前記チャネル領域上の前記半導体基板上に配置されるゲート電極と、
前記ゲート電極の側壁に隣接するスペーサとを含み、
前記スペーサが、10〜50GPaのヤング率を有する材料で形成される半導体構造。
【請求項2】
前記スペーサが誘電体材料から構成される、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記スペーサが導体材料から構成される、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
チャネル領域を含む半導体基板上にゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極の側壁に隣接するスペーサを形成するステップとを含み、
前記スペーサが、10〜50GPaのヤング率を有する材料で形成される、半導体構造の製作方法。
【請求項5】
チャネル領域を有する半導体基板上にゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極の側壁に隣接するスペーサを形成するステップとを含み、
前記スペーサが、10〜50GPaのヤング率を有する酸化シリコン材料で形成される、半導体構造の製作方法。
【請求項6】
前記酸化シリコン材料が、プラズマCVD法を使用して形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマCVD法が、シリコン原料としてシランを、酸化剤原料として亜酸化窒素を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマCVD法が、400℃〜480℃の堆積温度を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマCVD法が、1秒あたり5〜25オングストロームの堆積速度を使用する、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−129223(P2007−129223A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294911(P2006−294911)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】