説明

半導体装置、半導体装置の保管方法、半導体装置の製造方法、及び半導体製造装置

【課題】樹脂バリを除去する作業を行わずとも、半導体パッケージの外観が損なわれることを抑制し、かつ半導体パッケージの薄型化を図る。
【解決手段】半導体パッケージ100は、半導体チップ60と、半導体チップ60をダイパッド52に搭載したリードフレーム50と、半導体チップ60、及びダイパッド52を上面及び下面から封止した樹脂10と、を備え、樹脂10は、表面に設けられた凹部30と、裏面に設けられ、平面視で凹部30の内側に位置する凹部40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部を有する半導体装置、半導体装置の保管方法、半導体装置の製造方法、及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、温度変化やほこり等に影響されてその特性が変化してしまいやすいことから、樹脂により封止されて使用に供される。半導体チップを樹脂封止する工程は、半導体チップを配置した金型に樹脂を充填することにより半導体パッケージを形成した後、半導体パッケージを金型からエジェクタピンで押し出すことにより行われる。
【0003】
しかし、半導体チップを樹脂封止する工程において、半導体パッケージに形成されたエジェクタピン跡の周辺に樹脂バリが生じることがある。特許文献1によれば、半導体パッケージの外形寸法に狂いが生じると記載されている。また特許文献2によれば、樹脂封止した後のベーク工程において半導体パッケージの平坦度が不均一になると記載されている。これらは半導体パッケージの品質不良につながる。そして半導体パッケージの形成後に樹脂バリを除去する作業を行うことは、作業工程上きわめて不利である。これらの問題を解決するために、例えば特許文献1、及び2に記載の技術がある。
【0004】
特許文献1、及び2に記載の技術は、エジェクタピンが樹脂を押圧する部分の周辺に凹陥部を形成するというものである。これにより、樹脂バリを除去する作業を行わずとも、半導体パッケージに形成された凹陥部内に樹脂バリを形成することで、半導体パッケージの品質不良を抑制することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−61284号公報
【特許文献2】特開2006−073600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体パッケージを重ねて保管する場合、半導体パッケージに樹脂バリがあると半導体パッケージ表面にキズが生じ、半導体パッケージ表面の外観が損なわれることがある。特許文献1、及び2に記載の技術によってこの問題を解決することも考えられる。しかしその一方で、半導体パッケージは薄型化が求められる。特許文献1、及び2に記載の技術は、エジェクタピン跡による凹部の深さ、及びエジェクタピン跡の周辺に形成される凹陥部の深さが確保できる厚みを有する半導体パッケージにしか適用できない。このため薄型化した半導体パッケージには適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体チップと、
前記半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームと、
前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から封止した樹脂と、
を備え、
前記樹脂は、
表面に設けられた第1凹部と、
裏面に設けられ、平面視で前記第1凹部の内側に位置する第2凹部と、
を有する半導体装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、半導体パッケージの裏面に設けられた第2凹部は、平面視において半導体パッケージの表面に設けられた第1凹部の内側に位置する。これにより、半導体パッケージを重ねて保管する場合に、上側に位置する半導体パッケージの裏面に設けられた第2凹部の周縁部に形成される樹脂バリは、下側の半導体パッケージの第1凹部の内側に位置するため、下側に位置する半導体パッケージの表面に接触しない。よって、半導体パッケージの表面にキズが生じることを防止できる。そして半導体パッケージは、エジェクタピン跡による凹部の深さが確保できる厚みを有すればよい。従って、半導体パッケージの形成後に樹脂バリを除去する作業を行わずとも、半導体パッケージの外観が損なわれることを抑制し、かつ半導体パッケージの薄型化を図ることができる。
【0009】
本発明によれば、半導体装置の保管方法であって、前記半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームと、前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から封止した樹脂と、を備え、前記樹脂は、表面において設けられた第1凹部と、裏面に設けられ、平面視で前記第1凹部の内側に位置する第2凹部と、を有しており、平面視において、上側の前記半導体装置の前記第2凹部が、下側の前記半導体装置の前記第1凹部の内側に位置するように前記半導体装置を重ね合わせる半導体装置の保管方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、金型のキャビティ内に半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームを配置する工程と、前記キャビティに樹脂を充填し、前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から前記樹脂によって封止する工程と、前記キャビティの上面から突出する第1エジェクタピン、及び前記キャビティの底面から突出する第2エジェクタピンにより前記リードフレームを金型から押し出す工程と、を備え、平面視において前記第2エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分は、前記第1エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分の内側に位置する半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、キャビティにおいて半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームを保持し、前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から樹脂によって封止する金型と、前記キャビティの上面から突出する第1エジェクタピンと、前記キャビティの底面から突出する第2エジェクタピンと、を備え、平面視において前記第2エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分は、前記第1エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分の内側に位置する半導体製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂バリを除去する作業を行わずとも、半導体パッケージの外観が損なわれることを抑制し、かつ半導体パッケージの薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体パッケージを示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体パッケージを示す平面図である。
【図3】図1に示す半導体パッケージの保管方法を示す断面図である。
【図4】図1に示す半導体パッケージの製造装置を示す断面図である。
【図5】図1に示す半導体パッケージの製造方法を示す断面図である。
【図6】図1に示す半導体パッケージを示す断面図である。
【図7】比較例に係る半導体パッケージを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体パッケージ100を示す断面図である。図1は、後述する図2のA−A'断面を示す。半導体パッケージ100は、半導体チップ60と、リードフレーム50と、樹脂10とを備える。
【0016】
半導体チップ60は、リードフレーム50のダイパッド52上に搭載されている。半導体チップ60とダイパッド52は、樹脂10により上面及び下面から封止されている。リード端子54は、樹脂10の外側に延伸している。樹脂10は、表面に凹部30と、裏面に凹部40を有する。凹部30は、後述するエジェクタピン320により形成されている。凹部40は、後述するエジェクタピン340により形成されている。
【0017】
図2は、図1に示す半導体パッケージ100を示す平面図である。凹部40は、平面視において凹部30の内側に位置する。
【0018】
図3は、図1に示す半導体パッケージ100の保管方法を示す断面図である。半導体パッケージ100の保管方法では、複数の半導体パッケージ100はリードフレーム50が互いにつながったフレーム単位で保管されており、複数のフレームが重ねて保管される。また半導体パッケージ100は重ね合わされて保管される。上記したように、平面視において凹部40は凹部30の内側に位置する。このため平面視において、上側の半導体パッケージ100の裏面に設けられた凹部40は、下側の半導体パッケージ100の表面に設けられた凹部30の内側に位置する。
【0019】
図4は、図1に示す半導体パッケージ100の製造装置を示す断面図である。製造装置は、上金型300と、下金型310と、エジェクタピン320と、エジェクタピン340とを備える。上金型300と下金型310は、重なり合ってキャビティ360を形成する。上金型300は、キャビティ360の上面に貫通穴370を有する。下金型310は、キャビティ360の下面に貫通穴380を有する。エジェクタピン320は、貫通穴370の中からキャビティ360内に向けて突出可能である。またエジェクタピン340は、貫通穴380の中からキャビティ360内に向けて突出可能である。
【0020】
図5は、図1に示す半導体パッケージ100の製造方法を示す断面図である。まずキャビティ360に、半導体チップ60をダイパッド52に搭載したリードフレーム50を配置する(図5(a))。次いで、エジェクタピン320をキャビティ360の上面から僅かに突出させ、かつエジェクタピン340をキャビティ360の下面から僅かに突出させた状態で、キャビティ360内を樹脂10で充填する(図5(b))。これによりキャビティ360内に半導体パッケージ100が成形される。このとき、キャビティ360の上面から突出したエジェクタピン320によって、半導体パッケージ100の表面に凹部30が形成される。同様に、キャビティ360の下面から突出したエジェクタピン340によって、半導体パッケージ100の裏面に凹部40が形成される。
【0021】
そして半導体パッケージ100の表面をエジェクタピン320により押す(図5(c))。これにより半導体パッケージ100は、上金型300から分離する。また半導体パッケージ100の裏面をエジェクタピン340により押す(図5(d))。これにより半導体パッケージ100は、下金型310から分離する。凹部30、及び凹部40の周縁部には、樹脂バリ(図示せず)が形成される。
【0022】
図6は、図1に示す半導体パッケージ100を示す断面図である。図6に示す断面図は、リード端子54を曲げた後における半導体パッケージ100を示す。半導体パッケージ100のリード端子54は、実装基板に実装する際の実装面側に曲がっている。すなわち凹部40が設けられた裏面を実装面とする。また凹部30が設けられた表面を捺印面とし、凹部30と重ならない位置において捺印する。
【0023】
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。図7は、比較例に係る半導体パッケージ200の断面図であり、本実施形態に係る図1に対応する。比較例によれば、半導体パッケージ200に形成された凹部40は、平面視において凹部30の内側に位置しない。そのため半導体パッケージ200を重ね合わせた場合、上側に位置する半導体パッケージ200の裏面に設けられた凹部40の周縁部に形成された樹脂バリは、下側に位置する半導体パッケージ200の表面に設けられた凹部30の内側に位置せず、下側に位置する半導体パッケージ200の表面に接触する。これにより、半導体パッケージ200の表面にキズが生じる。
【0024】
これに対して本実施形態によれば、半導体パッケージ100に形成された凹部40は、平面視において凹部30の内側に位置する。そのため半導体パッケージ100を重ね合わせて保管する場合、上側に位置する半導体パッケージ100の裏面に設けられた凹部40の周縁部に形成された樹脂バリは、下側に位置する半導体パッケージ100の表面に設けられた凹部30の内側に位置し、下側に位置する半導体パッケージ100の表面に接触しない。従って、半導体パッケージ100の表面にキズが生じることを防止することができる。
【0025】
そして半導体パッケージ100は、凹部30、及び凹部40の深さが確保できる厚みを有すればよい。従って、半導体パッケージの成型後に樹脂バリを除去する作業を行わずとも、半導体パッケージの表面における外観が損なわれることを抑制し、かつ半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また捺印面である半導体パッケージの表面にキズが生じることを抑制できるため、半導体パッケージに捺印された情報の認識性を良好に保つことができる。さらに捺印面である半導体パッケージの表面において、エジェクタピンにより形成される凹部以上に凹陥部を広げる必要がなく、捺印面が狭くなることを抑制できる。
【0026】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 樹脂
30 凹部
40 凹部
50 リードフレーム
52 ダイパッド
54 リード端子
60 半導体チップ
100 半導体パッケージ
200 半導体パッケージ
300 上金型
310 下金型
320 エジェクタピン
340 エジェクタピン
360 キャビティ
370 貫通穴
380 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームと、
前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から封止した樹脂と、
を備え、
前記樹脂は、
表面に設けられた第1凹部と、
裏面に設けられ、平面視で前記第1凹部の内側に位置する第2凹部と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1凹部、及び前記第2凹部はエジェクタピンにより形成された跡である半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記表面を捺印面とする半導体装置。
【請求項4】
半導体装置の保管方法であって、
前記半導体装置は、
半導体チップと、
前記半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームと、
前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から封止した樹脂と、
を備え、
前記樹脂は、
表面において設けられた第1凹部と、
裏面に設けられ、平面視で前記第1凹部の内側に位置する第2凹部と、
を有しており、
平面視において、上側の前記半導体装置の前記第2凹部が、下側の前記半導体装置の前記第1凹部の内側に位置するように前記半導体装置を重ね合わせる半導体装置の保管方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の保管方法において、
複数の前記半導体装置は、前記リードフレームが互いにつながったフレーム単位で保管されており、複数の前記フレームを重ねて保管する半導体装置の保管方法。
【請求項6】
金型のキャビティ内に半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームを配置する工程と、
前記キャビティに樹脂を充填し、前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から前記樹脂によって封止する工程と、
前記キャビティの上面から突出する第1エジェクタピン、及び前記キャビティの底面から突出する第2エジェクタピンにより前記リードフレームを金型から押し出す工程と、
を備え、
平面視において前記第2エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分は、前記第1エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分の内側に位置する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
キャビティにおいて半導体チップをダイパッドに搭載したリードフレームを保持し、前記半導体チップ、及び前記ダイパッドを上面及び下面から樹脂によって封止する金型と、
前記キャビティの上面から突出する第1エジェクタピンと、
前記キャビティの底面から突出する第2エジェクタピンと、
を備え、
平面視において前記第2エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分は、前記第1エジェクタピンのうち前記樹脂に押圧する部分の内側に位置する半導体製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−805(P2012−805A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136045(P2010−136045)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】