説明

半導体装置、画像表示装置、半導体装置の製造方法、及び画像表示装置の製造方法

【課題】 CMOS−TFTを構成するp型及びn型TFTの各しきい値電圧を独立に効率良く(最小限のフォトリソグラフィーで)高精度に制御する。
【解決手段】 CMOS−TFTを製造するに際して、しきい値電圧(Vthp ,Vthn )制御として極低濃度にp型不純物(B:ボロン)の非選択的添加(p型及びn型TFTの双方に添加)及び選択的添加(n型TFTのみに添加)を連続的に行なう。具体的には、当初図4(a)のようにId −Vg 特性がp型及びn型TFT共に負シフトした状態から、非選択的添加により図4(b)のようにp型及びn型TFT共に正シフトさせてVthp を先ず仕様値とし、続いて選択的添加によりn型TFTのみ正シフトさせてVthn を仕様値に調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )型の半導体装置及びその製造方法、並びにこのCMOS型の半導体装置を備えた画像表示装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、エキシマレーザを用いた結晶化技術等の進歩によって、低温多結晶シリコン膜を用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を備えた周辺駆動回路一体型の液晶表示装置が登場し始めている。この周辺駆動回路は、高性能且つ低消費電力に対応可能なp型及びn型の各薄膜トランジスタ(以下、p型TFT、n型TFTと記す。)を備えたCMOS型のトランジスタ(以下、CMOS−TFTと記す。)を主構成要素として構成されている。
【0003】単結晶のCMOS型大規模集積回路(以下、単結晶LSIと記す。)と同様に、しきい値電圧(Vth)の設定はCMOS−TFTの最重要課題の一つである。通常、CMOS−TFTの動作半導体層には不純物無添加(ノンドープ)の多結晶シリコン膜が用いられるため、理論的にはゲート絶縁膜中の電荷量及び動作半導体層のゲート絶縁膜との界面電荷密度を調整すれば、しきい値電圧を容易に設定することができるはずである。しかしながら実際には、以下に示すような原因により、界面電荷密度の調整によるノンドープの動作半導体層を有するCMOS−TFTのしきい値電圧設定は極めて困難である。
【0004】(1)薄膜トランジスタのゲート絶縁膜はプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition )等による堆積膜であり、熱酸化膜のような優れたバルク特性を有していないため、必然的にゲート絶縁膜中に固定電荷が発生してしまう。例えば、SiH4 とN2 O系のプラズマCVDによるシリコン酸化膜(SiO2 膜)の中で、充分に分解されていないSiH4 とN2 O系の分子は正固定電荷になるため、フラットバンド電圧が負の方向にシフトする原因になる。このフラットバンド電圧は、動作半導体層とゲート絶縁膜との界面やゲート絶縁膜を評価する場合の重要な基準となる値であり、理論値からのシフトが大きいほど劣ると評価される。
【0005】(2)プラズマCVDや低圧CVD等により形成された絶縁膜は、熱酸化膜のような優れたSi/SiO2 界面特性を有していないため、界面準位に関わる電荷がフラットバンド電圧のシフトの原因になる。特に、ガラス基板を用いた薄膜トランジスタの場合、強酸系または強アルカリ系の基板洗浄剤が使用できないため、清浄な界面を得ることは困難である。
【0006】(3)多結晶シリコン膜の粒界準位により、界面準位と同じように、キャリアを捕獲したり、放出したりすることでフラットバンド電圧のシフトが起こり得る。特に、多結晶シリコン膜中(特に粒界中)に含まれるカーボン(C)、窒素(N)、酸素(O)等の不純物は、何らかの形でフラットバンド電圧に影響を与えるおそれがある。
【0007】上述の各原因で、ノンドープの多結晶シリコン膜を用いたCMOS−TFTのしきい値電圧(即ちId−Vg特性)は、p型及びn型TFTが共に負方向に1〜2V程度シフトしている場合が多く見られる。ゲート絶縁膜の成膜条件の最適化によって、ある程度しきい値電圧を正方向にシフトさせることができるが、任意に所望値まで制御することができないうえ、調整の範囲も狭い。そこで、CMOS−TFTの各チャネル領域への不純物添加によるしきい値電圧制御の手法が提案されている。
【0008】具体的には、動作半導体層の初期状態となるアモルファスシリコン膜をプラズマCVD法で形成する時、反応ガス(SiH4 )と希釈ガス(H2 )と共に、p型不純物を含有したB2 6 ガスを数〜十数ppm(ガス比)添加するものである。添加したB2 6 はプラズマ放電によって分解されアモルファスシリコン膜に取り込まれる。この手法の利点は、プロセスを追加することなくアモルファスシリコン膜全体(p型及びn型TFT共に)に不純物を添加できることにある。
【0009】この手法は、好適なしきい値電圧調整法として単結晶LSIの製造に広く用いられている。ところが、液晶表示装置の基板の如き大面積基板に対応可能な質量分離型イオン注入装置が未だ開発中であるため、非質量分離型イオン源(例えばRFプラズマ型イオン源)を用いたイオンドーピング装置が一般的に用いられている。即ち、RFプラズマ型イオン源を用いて、所定濃度の不純物(ドーパント)をp型またはn型TFTのチャネル領域に添加して、不純物のドーズ量でしきい値電圧(フラットバンド電圧)を調整する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以下に述べるように、CMOS−TFTは単結晶LSIに比してしきい値電圧制御の精度の要求水準が格段に厳しく、従来の制御法では満足な制御が得られないという問題がある。
【0011】先ず、上述のCMOS−TFTに高水準のしきい値電圧制御精度が要求される理由について説明する前提として、CMOS−TFTとそれを用いた周辺回路構成上の特徴を述べる。
【0012】第1に、CMOS−TFTの周辺回路のサイズが大きいことが挙げられる。CMOS−TFT(特に低温多結晶シリコン膜を有するCMOS−TFT)の移動度は30〜150(cm2 /Vs)であり、単結晶LSIのMOSトランジスタの1/20〜1/5程度と低値であるため、これと同等の駆動力を得るにはおよそ同じ比率でデバイス・サイズ(チャネル幅)を増加させなければならない。また、例えばCMOS−TFTを備えた液晶表示装置では、信号線及び走査線が共に長く、配線抵抗及び浮遊容量が大きいため、周辺回路の負荷は単結晶LSIのそれより遙かに大きい。
【0013】液晶表示装置の周辺回路の具体例として、液晶表示装置のゲート側駆動回路について説明する。このゲート側駆動回路は、CMOS−TFTの駆動能力を段階的に増加させるため、複数段のインバータが設けられており、前後段のチャネル幅の増加比は3倍程度、最終出力段のチャネル幅は1.5mm程度である。従ってこの場合、1ビット当たりの全てのCMOS−TFTのチャネル幅合計は数mmに達する。
【0014】第2に、液晶表示装置の周辺回路の電源電圧が単結晶LSIのそれよりも遙かに高いことが挙げられる。単結晶LSIの代表的な電源電圧値が3.3(V)であるのに対して、5V駆動液晶対応のゲート側駆動回路の駆動電圧値は約16(V)である。また、CMOS−TFTのS値としきい値電圧の絶対値とが共に大きいことも、電源電圧値が高くなるもう一つの原因である。
【0015】以下、上述のCMOS−TFT独自の特徴を踏まえ、CMOS−TFTにしきい値電圧制御の高い精度が要求される理由について説明する。
【0016】入力信号は、出力信号と共に電源電圧(Vdd)の幅を持ってローレベル“L”(接地電位GND)とハイレベル“H”(電源電圧Vdd)との間で変化する(例えば図19参照)。入力信号レベルが“L”の場合、p型TFTが導通し、n型TFTが遮断されることにより、出力信号レベルが“H”になる。逆に、入力信号レベルが“H”の場合、n型TFTが導通し、p型TFTが遮断されることにより、出力信号レベルが“L”になる。n型TFTのしきい値電圧(即ちId−vg曲線)が負側にシフトすると、入力信号レベルが“L”の時に、n型TFTが完全に遮断されず、「貫通電流」と称されるリーク電流が“Vdd(電源電位)→p型TFT→n型TFT→GND(接地電位)”の順序で流れる。
【0017】この貫通電流は、n型TFTのId−Vg曲線のVg=0(V)時のドレイン電流I0 (以下、ゼロ電流と記す。)に等しい。しきい値電圧が負側にシフトするほどゼロ電流が大きくなる。同様に、p型TFTのしきい値電圧が正側にシフトすると、入力信号レベルが“H”の時に、p型TFTのゼロ電流に起因する貫通電流が発生する。
【0018】上述のように、貫通電流の発生により、CMOS−TFTの消費電力が大幅に増加する。上述のゲート側駆動回路の例として消費電力を試算すると、貫通電流によるスタティック消費電力は、単位チャンネル幅当たり1(nA/μm)と仮定した場合、数十mW以上に達する可能性がある。
【0019】CMOS−TFTの上述した第1及び第2の特徴により、しきい値電圧のシフトが少しでも存在すると、周辺回路全体の消費電力が著しく増大することになる。更に、大きな貫通電流は、信号振幅の低下や局在的発熱、TFT特性の進行的劣化等の重大な不良または障害の原因になる。
【0020】このように、CMOS−TFTは単結晶LSIとは異なり、貫通電流の発生が致命的なダメージを生むことになるため、貫通電流の発生を抑止するためには高精度にしきい値電圧を設定することが必須である。上述した従来のイオンドーピングによるしきい値電圧制御法ではこのような高い要求精度を満たすことができず、満足な結果を得ることは困難である。これは具体的には従来のしきい値電圧制御法の以下に示すような性質に因る。
【0021】(1)p型不純物のイオン注入により、動作半導体層の全体が弱P型半導体になるため、n型TFTとp型TFTのしきい値電圧が共に正側にシフトし、原理的に双方をそれぞれ単独的に設定することができない。従って、従来の手法ではCMOS−TFTにおけるしきい値電圧の最適化が困難であることは明白である。更にこの事実から、上述の手法ではCMOS−TFTの貫通電流を大幅に削減することは原理的に不可能であることがわかる。
【0022】(2)従来の手法では、結晶化前にアモルファスシリコン膜にp型不純物を添加し過ぎると、レーザ結晶化の場合、結晶粒径が小さくなったり、熱結晶化(SPC)の場合、核形成や結晶成長が発生し難くなり、結晶性が劣化するおそれがある。
【0023】(3)RFプラズマイオン源を用いた場合、イオン電流密度が大きいため、微小イオン電流が要求される低ドーズ量(およそ5×1012(1/cm2 )以下)のドープは極めて困難である。また、RFイオン源を用いるため、イオン電流のパラメータ(例えば、RF電力、圧力、電極とチャンバー内壁の状態)が多すぎて、イオンの種類またはイオン電流の安定性と再現性に劣る。
【0024】(4)ガラス基板を用いた低温製造工程においては、不純物の活性化率は低い。特に、チャネル領域へのドーズ量が比較的に高い場合、イオン損傷が回復し難く、活性化が不充分となる。このため、より低ドーズ量のチャネルドープ工程が望まれるが、従来のRFプラズマイオン源を用いたイオンドーピング装置では良好な低ドーズ量ドーピングを行なうことはできない。また、選択的添加でCMOS−TFTのしきい値電圧を最適化しようとすると、通常2回以上のフォトリソグラフィー工程が必要であり、製造工程の複雑化を招来する。
【0025】本発明はかかる実情に鑑み、CMOS−TFTのしきい値電圧を容易且つ確実に高精度に設定することを可能とする半導体装置の製造方法及びしきい値電圧が高精度に設定されたCMOS−TFTを有する半導体装置を提供することを目的とする。
【0026】また本発明は、電気特性が異なりそれぞれ動作電圧の異なる複数種のCMOS−TFTを備えた画像表示装置について、各しきい値電圧を容易且つ確実に高精度に設定することを可能とする製造方法及び各しきい値電圧がそれぞれ高精度に設定されたCMOS−TFTを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体装置の製造方法は、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS型を対象とし、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域を含む全体に、非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに、選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び前記選択的添加により、前記p型及びn型薄膜トランジスタのしきい値電圧をそれぞれ独立に設定する。
【0028】この場合、前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の形成時にガス添加又はイオンドーピングにより行ない、前記選択的添加は、イオンドーピングにより行なうことが好適である。
【0029】より好ましくは、前記イオンドーピングを、DCフィラメント型イオン源を有する非質量分離型イオンドーピング装置を用いて行なう。
【0030】また、前記非選択的添加により、前記動作半導体層となる薄膜のp型不純物濃度を1×1018/cm3 以下とすることが好適である。
【0031】また、前記非選択的添加におけるイオンドーピングのドーズ量を1×1011/cm2 〜1×1013/cm2 の範囲内の値とすることが好適である。
【0032】また、前記非選択的添加のガス添加量を1ppm〜10ppmの範囲内の値とすることが好適である。
【0033】また、前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧の絶対値の差が僅少となるように調整することが好適である。
【0034】具体的には、本発明の製造方法は、前記非選択的添加を施した後、前記動作半導体層となる薄膜を前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域にそれぞれ島状に分離形成する工程を含み、しかる後、前記選択的添加を施す。
【0035】また、LDD構造の半導体装置を製造するため、本発明の製造方法は、前記非選択的添加が施された前記薄膜から分離形成された前記各島状の領域の上層に、ゲート絶縁膜及びゲート電極を前記島状の領域、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極の順に幅狭となるようにパターン形成する工程を有し、前記選択的添加を、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、p型不純物が前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜を通過して前記ゲート電極下に対応する前記島状の領域内に止まる条件で行い、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のn型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まるような更なる高濃度のn型不純物の添加とを施す工程と、p型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のp型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で更なる高濃度のp型不純物の添加とを施す工程とを含む。
【0036】更に、LDD構造の半導体装置を製造するため、本発明の製造方法の他の態様は、前記非選択的添加が施された前記薄膜から分離形成された前記各島状の領域の上層に、ゲート絶縁膜及びゲート電極を前記島状の領域、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極の順に幅狭となるようにパターン形成する工程と、前記各島状の領域を含む全体に、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のp型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で更なる高濃度のp型不純物の添加とを施す工程とを有し、前記選択的添加を、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、p型不純物が前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜を通過して前記ゲート電極下に対応する前記島状の領域内に止まる条件で行い、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で対応する部位がn型となり得る濃度のn型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で対応する部位がn型となり得る濃度のn型不純物の添加とを施す工程を含む。
【0037】本発明の半導体装置の製造方法の別の態様は、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなり、動作電圧の異なる少なくとも2種の素子群に分類される複数のCMOSトランジスタを備えた半導体装置を対象としており、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域に非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び/又は前記選択的添加を、前記各素子群の全体に対して前記各素子群に必要な所定回数だけ順次行なうことにより、前記各素子群毎に前記各動作電圧に応じたしきい値電圧を設定し、前記各素子群を構成する前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧をそれぞれ独立に設定する。
【0038】なお、非選択的添加とは該当する素子群のCMOS−TFTのp型領域及びn型領域の全体にp型不純物を添加することを示し、選択的添加とは該当する素子群のCMOS−TFTのn型領域のみに低濃度のp型不純物を添加することを示す。また、当該半導体装置を製造する工程全体では非選択的添加及び選択的添加の双方を行なうが、所定の素子群については所定回数の非選択的添加のみで好適な結果を得られる場合もある。
【0039】この場合、前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の形成時にガス添加又はイオンドーピングにより行ない、前記選択的添加は、イオンドーピングにより行なうことが好適である。
【0040】より好ましくは、前記イオンドーピングを、DCフィラメント型イオン源を有する非質量分離型イオンドーピング装置を用いて行なう。
【0041】また、前記非選択的添加により、前記動作半導体層となる薄膜のp型不純物濃度を1×1018/cm3 以下とする。
【0042】また、前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧を共に前記動作電圧に応じた低値とし、両者のしきい値電圧の絶対値の差が僅少となるように設定する。
【0043】本発明の半導体装置の製造方法の更に別の態様は、複数の画素が行列状に配設されてなる画像表示部と、前記画像表示部の行方向を駆動制御する第1の制御回路と、前記画像表示部の列方向を駆動制御する第2の制御回路とを含む画像表示装置、例えば液晶表示装置を対象としており、前記画像表示部、前記第1及び第2の制御回路の少なくとも1つに設けられ、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなる動作電圧の異なる各CMOSトランジスタを形成するに際して、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域に非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び/又は前記選択的添加を、それぞれ前記各CMOSトランジスタに必要な所定回数だけ順次行なうことにより、前記各動作電圧に応じて前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧を独立に設定する。
【0044】本発明の半導体装置は、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS型の半導体装置であって、前記p型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向にほぼ均一又はブロードに変化する濃度分布にp型不純物が1×1018/cm3 以下の濃度となるように添加されてなる第1の動作半導体層を有しており、前記n型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向について表面近傍にピークをもつ濃度分布にp型不純物が前記第1の動作半導体層に比して高濃度となるように添加されてなる第2の動作半導体層を有する。
【0045】本発明の半導体装置の別の態様は、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS型の半導体装置であって、前記p型及びn型薄膜トランジスタは、それぞれのチャネル領域に互いに異なる濃度分布にp型不純物が添加されており、前記p型及びn型薄膜トランジスタの各しきい値電圧が当該添加がない場合に比して正側にシフトしてそれぞれ独立の所望値とされ、両者のしきい値電圧の差の絶対値が僅少とされている。
【0046】本発明の画像表示装置は、複数の画素が行列状に配置された画像表示部と、前記画像表示部の行方向を駆動制御する第1の制御回路と、前記画像表示部の列方向を駆動制御する第2の制御回路とを備え、前記画像表示部、前記第1の制御回路及び前記第2の制御回路の少なくとも1つの構成要素としてp型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなる動作電圧の異なる各CMOSトランジスタを備え、前記p型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向にほぼ均一又はブロードに変化する濃度分布となるようにp型不純物が添加されてなる第1の動作半導体層を有しており、前記n型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向について表面近傍にピークをもつ濃度分布にp型不純物が前記第1の動作半導体層に比して若干高濃度となるように添加されてなる第2の動作半導体層を有するように構成されている。
【0047】
【作用】CMOS−TFTは、p型不純物の添加量に対するしきい値電圧の依存性がp型TFTの方がn型TFTより大きい(図2(a)参照)ことが本発明者によって初めて見出された。即ち、p型TFT及びn型TFTのチャネル領域に同一濃度のp型不純物を添加しても、しきい値電圧の変化量が異なる。換言すれば、双方のTFTにとってしきい値電圧制御のための最適なp型不純物の添加量が異なり、p型TFTの方がn型TFTより比較的低い添加濃度によって最適なしきい値電圧を得ることができる。
【0048】また、p型不純物の添加量に対する依存性として、2つの異なる領域が存在する。即ち、低い添加濃度を示す領域aと、比較的高い添加濃度を示す領域bである(図2(a),(b)参照)。領域aにおいては、n型TFTのしきい値電圧(Vthn )は殆ど不変であるのに対し、p型TFTのしきい値電圧(Vthp )は大きく変化する。領域bにおいては、n型TFT及びp型TFTは共にしきい値電圧がほぼ同様に変化する。
【0049】p型TFT及びn型TFTが上述のような性質を示すことから、各々のしきい値電圧を容易に適値に設定する手法が以下のように示唆される。
【0050】ノンドープの多結晶シリコン膜中には、その内部に「n型類似(n型ライク)」の不純物準位、界面準位または粒界準位が存在しているため、弱n型の状態とされている。このn型類似準位の作用を外部からp型不純物を添加することによりキャンセルすることができる。領域aと領域bでは上述したようにp型不純物の依存性が異なり、領域bが通常予想できる依存性を示していることから、両領域の境界に位置するp型不純物濃度がn型類似準位を丁度キャンセルするのに必要な濃度であると考えられる。n型類似準位がキャンセルされれば、領域bにおいて本来あるべきしきい値電圧のp型不純物依存性が現れる。そして、p型TFTの方がn型TFTよりp型不純物添加に敏感であり、しきい値電圧制御のための最適な添加濃度はp型TFTの法が低いことから、各TFTのチャネル領域に同時にp型不純物を添加した場合には、p型TFTのしきい値電圧が先に所望値(仕様値)に調整される。
【0051】本発明の半導体装置の製造方法は、上述のしきい値電圧の特性を利用し、しきい値電圧の効率良い正確な調整を図る手法である。先ずp型不純物の非選択的添加、即ち双方のTFTのチャネル領域に同時にp型不純物を極低濃度となるように添加することにより、動作半導体層のn型類似準位を真性状態または弱p型状態に調整するとともに、p型TFTのしきい値電圧(Vthp )が仕様値となるように調整する。このとき、n型TFTのしきい値電圧(Vthn )は未だ仕様値に達していないため、続いてn型TFTのチャネル領域のみにp型不純物の非選択的添加を行なう。これにより、Vthn も仕様値に調整される。即ち本発明によれば、p型不純物の非選択的添加の際にはフォトリソグラフィーが不要であることも考慮して、必要最低限の手間によりp型TFT及びn型TFTの各しきい値電圧を独立に仕様値に設定することができる。
【0052】この場合、p型TFTの最適なVthp に要求されるp型不純物濃度が比較的低いため、不純物添加過多による結晶化工程への悪影響が避けられる。また、その後の活性化工程はアイランド形成する前に実施することができるため、基板シュリンケージの影響を受けずに高い温度で当該p型不純物の活性化を行なうことができる。
【0053】また、非選択的添加のプロファイル分布はフラットまたはブロードであるため、動作半導体層が全体的に上層部から下層部まで真性または弱P型半導体になり、ゲート絶縁膜の反対側の動作半導体層表面とゲート絶縁膜との界面近傍におけるバックチャネル(絶縁膜中固定電荷によるもの)の発生を抑えることができる。
【0054】また、非選択的添加によって、n型TFTのチャネル領域は既に真性または弱p型半導体になっているため、続く選択的添加におけるドーズ量を大幅に減らすことができ、イオン損傷が少ないために活性化率が高くなる。
【0055】また、しきい値電圧制御のp型不純物添加に、広い面積に対して低ドーズ量に対応可能なDC型イオン源を用いた非分離型イオンドーピング装置を用いれば、n型TFTのVthn を独立的且つ高精度をもって調整することができる。
【0056】更に本発明においては、動作電圧の異なる少なくとも2種の素子群に分類される複数のCMOS−TFTが必要な半導体装置(例えば液晶表示装置)を製造する際にも、上述のしきい値電圧制御法を適用する。このような半導体装置では、各CMOS−TFTを構成するp型及びn型TFTのしきい値電圧が異なるのみならず、動作電圧の異なる素子群間で前記しきい値電圧の絶対値も異なる。従って本発明では、例えばp型不純物の非選択的添加を各素子群全体から始め、続いて各素子群に応じてp型不純物の非選択的添加及び/又は選択的添加を所定回数行なう。
【0057】具体的には、例えば素子群A,B,C(動作電圧:A<B<C)を形成するに際して、先ず素子群A,B,Cとなる領域の全体に非選択的添加を施す。続いて、各素子群の動作電圧に応じて、例えばB,Cのみに非選択的添加を施した後、B,Cのみに選択的添加を施し、最後にCのみに選択的添加を施して、各素子群を構成するCMOS−TFTのp型及びn型TFTのしきい値電圧を調整する。なお、非選択的添加及び/又は選択的添加の態様は、各素子群の動作電圧によって異なるため、様々な組み合わせが考えられる。また、素子群の中には、n型TFTのみからなるものなども含まれる。
【0058】このように、各素子群の全体に対し、非選択的添加及び選択的添加を各素子群に応じた所定回数ずつ組み合わせて行なうことにより、各素子群毎に個別にしきい値電圧制御を行なう場合のようなフォトリソグラフィーの煩雑な工程を不要とし、しかも各素子群を構成するCMOS−TFTのp型及びn型TFTの各しきい値電圧を設定する。即ち、必要最低限の添加回数(及び手間)のみで、各素子群毎にCMOS−TFTのp型及びn型TFTのしきい値電圧をそれぞれ独立に仕様値に調整することができる。
【0059】この場合も、しきい値電圧制御のp型不純物添加に低ドーズ量に対応可能なDC型イオン源を用いた非分離型イオンドーピング装置を用いれば、より正確且つ確実にしきい値電圧制御が可能となる。
【0060】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した具体的な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】(第1の実施形態)先ず、図1〜図4を用いて第1の実施形態について説明する。ここでは、p型及びn型TFTを備えたいわゆるトップゲート型のCMOS−TFTを例示する。図1は、第1の実施形態に係るCMOS−TFTの主要構成を示す概略断面図である。なお、図1のCMOS−TFTは本発明の一例であり、他の構成のCMOS−TFTにも適用可能である。これらについては第2の実施形態で製造方法と共に説明する。
【0062】このCMOS−TFTは、ガラス等からなる基板1上に、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜2を介して一対のTFT(p型TFT3及びn型TFT4)を有している。
【0063】p型TFT3及びn型TFT4は、多結晶シリコン膜からなる島状の動作半導体層11,12を有しており、その上層にシリコン酸化膜等からなるゲート絶縁膜5を介して多結晶シリコン膜等からなる帯状のゲート電極6がパターン形成されて構成されている。p型TFT3の動作半導体層11には、ゲート電極6の両側に位置する部位にp型不純物が比較的高濃度となるようにイオン注入されて一対のソース/ドレイン13(p+ )が形成されている。他方、n型TFT4の動作半導体層12には、ゲート電極6の両側に位置する部位にn型不純物が比較的高濃度となるようにイオン注入されて一対のソース/ドレイン14(n+ )が形成されている。
【0064】更に、p型TFT3及びn型TFT4を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7が形成され、層間絶縁膜7にソース/ドレイン13,14の表面の一部を露出させる各コンタクト孔8が形成され、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン13,14と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9が形成されて、CMOS−TFTが構成されている。
【0065】そして、動作半導体層11,12の各ゲート電極6の直下に位置する部位、即ちチャネル領域11a,12aには、それぞれしきい値電圧(11aがVthp 、12aがVthn )制御のためにそれぞれ相異なる低濃度のp型不純物が添加されている。以下、このしきい値電圧制御の具体的作用及び及び各チャネル領域における濃度分布等の態様について説明する。ここで、p型不純物の添加について、非選択的添加とはCMOS−TFTのp型及びn型TFT領域の双方に添加することを、選択的添加とはCMOS−TFTのp型又はn型TFT領域の一方に添加することを表す。
【0066】図2は、アモルファスシリコン膜の成膜時でのしきい値電圧及びゼロ電流のp型不純物添加の濃度依存性を示す特性図である。図2(a),(b)に示すように、しきい値電圧とゼロ電流のp型不純物(ここではボロン(B)であり、以下の数値はプラズマCVDによる成膜時のB2 6 /SiH4 のガス流量比で計算した値である。)添加量に対する依存性には、2つの異なる領域が存在している。即ち、低い添加濃度における領域aと、比較的高い添加濃度における領域bである。両領域の境界のB添加濃度はおよそ3ppmである。
【0067】領域aにおいては、n型TFTのVthn がほとんど不変であるが、p型TFTのVthp は大きく変化する。他方、領域bにおいては、p型TFT及びn型TFT共に、しきい値電圧がB添加量濃度に従ってほぼ同等の割合で線形的に変化する。VthのB添加量依存性に関しては、n型TFTよりもp型TFTの方が強い。即ち、領域aにおいて、p型チャネル領域/n型チャネル領域に同じ濃度のp型不純物を添加しても、しきい値電圧の変化量がそれぞれ異なる。換言すれば、n型TFT/p型TFTに対する所望のしきい値電圧を設定するための最適なp型不純物添加濃度が異なる。例えば、p型TFTの仕様値(Vth=−3V)を満たすB添加濃度は6ppmであり、n型TFTの仕様値(Vth=+3V)を満たすB添加濃度は8.5ppmである。即ち、n型TFTよりp型TFTの方が比較的低い添加濃度でVthの仕様値が得られる。
【0068】上述の事実より、しきい値電圧制御について重要な結論が導かれる。即ち、p型不純物の非選択的添加、即ちp型TFTとn型TFTに同量のp型不純物添加を同時に行なうのみでは、p型TFTとn型TFTのしきい値電圧を同時に最適値に調整することはできない。
【0069】図2(b)に示すように、ゼロ電流(Vg =0V時のId )の傾向は、n型TFTとp型TFTとでは逆の傾向を示している。B添加濃度が増加すると、p型TFTのゼロ電流(Ip0)が増加し、n型のゼロ電流(In0)が減少する。例えば、ゼロ電流仕様値(ここで1×10-10 A)を満たすB添加濃度はp型TFTとn型TFTの場合、それぞれ6ppmと8ppmである。
【0070】上述の事実より、ゼロ電流の制御について重要な結論が導かれる。即ち、p型不純物の非選択的添加のみでは、p型TFTとn型TFTの各ゼロ電流を同時に最適値に調整することはできない。
【0071】本実施形態では、p型不純物の非選択的添加に加えて以下に示す選択的添加を行なうことで、1回のp型不純物添加のみでは不可能なp型TFTとn型TFTのしきい値電圧及びゼロ電流の最適値化を実現する。
【0072】図3に、本実施形態のCMOS−TFTのチャネル領域における深さ方向のp型不純物の分布プロファイルを示す。
【0073】先ず、非選択的添加をガス添加により行なう場合について説明する。1回目のp型不純物(B)添加、即ち非選択的添加をアモルファスシリコン膜形成の際のガス添加により行なう。このとき、図3(a)に示すように、濃度分布はチャネル深さ方向についてほぼフラット(均一)な分布となる。続いて、2回目のp型不純物(B)添加、即ち選択的添加を結晶化された多結晶シリコン膜のn型TFTの活性化領域のみに、DCフィラメント型のイオン源を用いた非質量分離型イオンドーピング装置(以下、単にDCイオンドーピング装置と記す。)を使用して行なう。このとき、図3(b)に示すように、n型TFTの活性化領域で表面近傍にピークがある濃度分布となる。
【0074】次に、非選択的添加をDCイオンドーピング装置を用いて行なう場合について説明する。1回目のp型不純物添加、即ち非選択的添加をDCイオンドーピング装置により行なう。このとき、図3(c)に示すように、濃度分布はチャネル深さ方向についてほぼブロード(フラット近似))の分布となる。続いて、2回目のp型不純物添加、即ち選択的添加を結晶化された多結晶シリコン膜のn型TFTの活性化領域のみに、DCイオンドーピング装置を使用して行なう。このとき、図3(d)に示すように、n型TFTの活性化領域で表面近傍にピークがある濃度分布となる。
【0075】不純物添加や結晶化により、動作半導体層の上下界面近傍の不純物濃度が若干増減することもあるが、非選択的添加により全体的にみれば上述のようなフラット分布またはブロード分布となる。また、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry )法のような不純物濃度の分析法を用いた場合、元々界面近傍の不純物濃度が均一であっても、評価法自体の問題によって界面近傍にピークらしきものが出現することがあるため、複数の分析法で再確認する必要がある。
【0076】続いて、上述の2回の不純物添加によりCMOS−TFTのしきい値電圧及びゼロ電流を調整する手法について、図4を用いて説明する。
【0077】先ず、ノンドープの動作半導体層を有するCMOS−TFTのId −Vg 特性を図4(a)に示す。この場合、Id −Vg 特性はp型TFT及びn型TFT共に負側にシフトしており、n型TFTのゼロ電流(In0)が大きい。この状態では貫通電流及び消費電力が極めて大きくなり、CMOS−TFTは正常動作することはできない。
【0078】1回目のp型不純物添加(非選択的添加)をp型TFT及びn型TFTのチャネル領域に対して行なった場合のId −Vg 特性を図4(b)に示す。この場合、Id −Vg 特性はp型TFT及びn型TFT共に正側にシフトしており、p型TFTのしきい値電圧(Vthp )及びゼロ電流(Ip0)が仕様値となる。ここで、p型不純物の深さ分布はp型TFT及びn型TFT共にフラットまたはブロード形状となっている。しかしながら、まだこの状態ではn型TFTはしきい値電圧(Vthn )が仕様値に達してはおらず、ゼロ電流(In0)も比較的大きい。この場合、CMOS−TFTはほぼ正常に動作可能であるが、貫通電流及び消費電力が大きく、動作性能を保証する製造マージンは殆どない状態である。
【0079】そして、図4(b)の状態に続いて2回目のp型不純物添加(選択的添加)をn型TFTのチャネル領域のみに対して行なった場合のId −Vg 特性を図4R>4(c)に示す。このとき、Id −Vg 特性は、図4(b)の場合に比して、n型TFTのみが正側にシフトしており、n型TFTのしきい値電圧(Vthn )及びゼロ電流(In0)が仕様値となる。従ってこのとき、p型TFT及びn型TFTの双方のしきい値電圧(Vthp ,Vthn )及びゼロ電流(Ip0,In0)が共に仕様値となる。ここで、p型不純物の深さ分布は図3(a),図3(c)のようにフラットまたはブロード形状とされており、n型不純物の深さ分布は図3(b),図3(d)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。この状態では、CMOS−TFTは極めて良好に正常に動作することは勿論のこと、貫通電流及び消費電力が極めて小さく、動作性能を保証する製造マージンは大きい。
【0080】なお、ここではp型不純物添加の順序として、非選択的添加に次いで選択的添加を行なう場合について説明したが、プロセス上問題なければ順序を変えてもよい。また、非選択的添加の回数については特に制限はない。
【0081】以上説明したように、第1の実施形態によれば、2種のp型不純物添加(非選択的添加及び選択的添加)を組み合わせて行なうことにより、容易且つ確実に必要最低限の手間によりp型TFT及びn型TFTの各しきい値電圧(及びゼロ電流)を独立に仕様値に設定することができる。
【0082】(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態について図5〜図8を用いて説明する。ここでは、CMOS−TFTの具体的な製造方法について例示する。なお、第1の実施形態のCMOS−TFTと同様の構成部材等については同符号を付して説明を省略する。図5及び図6は、CMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0083】先ず、図5(a)に示すように、ガラス等からなる基板1上に、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜2をプラズマCVD法またはスパッタ法により膜厚200nm〜300nm程度に形成した後、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン膜21を膜厚30nm〜100nm程度に形成する。このとき、しきい値電圧制御のための1回目のp型不純物添加として、原料ガスであるSiH4 に5〜6ppm(ガス比)の微量のB2 6 を添加(非選択的添加)することにより、アモルファスシリコン膜21が弱p型(p--)の出発膜となる。このように、p型不純物(B)添加が膜形成と同時に行なわれるため、B濃度分布は図3(a)のようにフラット形状となる。p--アモルファスシリコン膜21のB濃度の好適な範囲は、しきい値電圧及びゼロ電流制御を効果的に行なうことを考慮すれば、1〜10ppm(または1×1018/cm3 以下;理想的には1×1016〜1×1017cm3 )程度の極低濃度とすることが好ましい。
【0084】続いて、図5(b)に示すように、線状ビームのレーザ光を発するXeClエキシマレーザ(波長308nm)を用いて、室温及びN2 雰囲気中でp--アモルファスシリコン膜21にレーザ光を300〜400mJ/cm2 照射して結晶化させ、p--多結晶シリコン膜22とする。
【0085】続いて、図5(c)に示すように、p--多結晶シリコン膜22にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施し、p型TFTの構成要素となる動作半導体層11及びn型TFTの構成要素となる動作半導体層12をそれぞれ島状に分離形成する。
【0086】次に、フォトリソグラフィーにより動作半導体層11のみを覆うようにレジストマスク23を形成し、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加として、原料ガスを3%のB2 6 として加速電圧を10〜30keV、ドーズ量を前記非選択的添加より若干高い濃度(1×1017〜1×1018/cm3 程度)となるように、5×1014/cm2 程度でB(ボロン)のイオンドーピング(選択的添加)を施す。このとき、露出した動作半導体層12のみにBが添加され、p--の状態から比較的高いp型の状態(p- )に変わる。このときの動作半導体層12のB濃度分布は図3(b)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。
【0087】なお本実施形態では、この選択的添加を図7R>7に示すようなDCフィラメント型イオン源を有する非質量分離型イオンドーピング装置(DCイオンドーピング装置)を用いて行なう。このDCイオンドーピング装置は、原料ガスの導入口105を有し、内部でプラズマが生成されるプラズマ室101と、生成されたプラズマ中のイオンを引き出し、加速し、減速する引き出し電極102a、加速電極102b及び減速電極102cと、基板が設置されるチャンバー103と、原料ガスの排気口107とを備えて構成されている。プラズマ室101には、DCフィラメント型イオン源104が配されており、DC電源106からの高電圧印加により原料ガスをプラズマ化する。このDCイオンドーピング装置を用いれば、従来のRFイオン源を有する非質量分離型イオンドーピング装置に比して低ドーズ量の範囲(5×1010〜5×1012/cm2 )における制御性が大幅に向上することになる。
【0088】ここで、DCイオンドーピング装置による低ドーズ量ドーピングの実験例について述べる。この実験は、Bがガス添加されたアモルファスシリコン膜にBをイオンドーピングし、低ドーズ量におけるしきい値電圧及びゼロ電流の制御精度について調べたものである。
【0089】p型不純物としてBがLCエネルギー300mJ(大気圧、前処理なし)、LAエネルギー210mJ(大気圧)の条件で2ppm添加された膜厚350Å程度のアモルファスシリコン膜(保護膜なし)に対して、DCイオンドーピング装置を用いて加速電圧10keVでドーズ量を0〜1×1013/cm2 までの所定値として直接イオンドーピングした。なお、CMOS−TFTのLDD領域を形成した際に、n型LDDは加速電圧70keVでドーズ量1×1014/cm2 、p型LDDは加速電圧70keVでドーズ量1×1015/cm2 の各条件で形成した。
【0090】実験結果を図8に示す。ここで、図8(a)が移動度(cm2 /Vs)を、図8(b)がしきい値電圧(×10- 7 V)、図8(c)がオフ電流(A)、図8(d)がゼロ電流(A)をそれぞれ示す。このように、極めて低いドーズ量でもしきい値電圧及びゼロ電流に変化が生じており、制御可能であることがわかった。具体例として、1×1012/cm2 程度の極低ドーズ量でしきい値電圧に3V程度の変化が生じたことが確認できる。なお、ドーズ量の増加に伴う移動度の低下は、LDDのドーピング条件が一定であるためにLDD抵抗が増加したことに起因すると考えられる。
【0091】続いて、O2 プラズマを用いた灰化処理等によりレジストマスク23を除去した後、図5(d)に示すように、動作半導体層11,12を覆うように、プラズマCVD法または低圧CVD法により膜厚100nm〜120nm程度となるようにシリコン酸化膜を堆積し、ゲート絶縁膜5を形成する。次いで、基板1にアニール処理を施し、動作半導体層11,12に添加したBを活性化させるとともに、ゲート絶縁膜5の膜質を改善する。なお、上述のようにBのドーピングにDCイオンドーピング装置を用いるため、動作半導体層11,12の活性化が容易となる。これは、H3 + 等の水素イオンが少ないことに起因すると考えられる。
【0092】次に、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜5上に多結晶シリコン膜を堆積した後、この多結晶シリコン膜にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施して、動作半導体層11,12上でそれぞれ帯状に延在するゲート電極6をパターン形成する。次いで、DCイオンドーピング装置を用い、各ゲート電極6をマスクとして、動作半導体層11にはゲート電極6の両側に高濃度のp型不純物(例えばB)を、動作半導体層12にはゲート電極6の両側に高濃度のn型不純物(例えばP(リン))をそれぞれ選択的に(即ち、動作半導体層11のドーピング時には動作半導体層12をレジストマスクで覆い、動作半導体層12のドーピング時には動作半導体層11をレジストマスクで覆う。)イオンドーピングする。
【0093】続いて、イオンドーピングで用いたレジストマスクを除去した後、基板1にエキシマレーザアニール処理を施すことにより、図6(a)に示すように、動作半導体層11にはp型(p+ )のソース/ドレイン13を、動作半導体層12にはn型(n+ )のソース/ドレイン14をそれぞれ形成し、ゲート電極6及びソース/ドレイン13を有するp型TFT3と、ゲート電極6及びソース/ドレイン14を有するn型TFT4とをそれぞれ形成する。
【0094】しかる後、図6(b)に示すように、p型TFT3及びn型TFT4を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7を形成し、層間絶縁膜7にソース/ドレイン13,14の各々の一部を露出させるコンタクト孔8を形成し、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン13,14と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9をスパッタ法により形成して、CMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT3のチャネル領域11aがp--状態とされ、n型TFT4のチャネル領域12aがp-状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0095】以上説明したように、第2の実施形態によれば、2種のp型不純物添加(非選択的添加及び選択的添加)を組み合わせて行なうことにより、p型不純物の非選択的添加の際にはフォトリソグラフィーが不要であることも考慮すれば、必要最低限の手間によりp型TFT3及びn型TFT4の各しきい値電圧(及びゼロ電流)を独立に仕様値に設定することができる。
【0096】更に、しきい値電圧制御のp型不純物添加に低ドーズ量に対応可能なDCイオンドーピング装置を用いれば、特にn型TFT4のVthn を独立的且つ高精度をもって調整することができる。
【0097】以下、第2の実施形態に係るCMOS−TFTの製造方法のいくつかの変形例について説明する。なお、第2の実施形態で例示したCMOS−TFTと同様の構成部材等については同符号を付して説明を省略する。
【0098】−変形例1−先ず、変形例1について説明する。この変形例1では、第2の実施形態と同様な構成のCMOS−TFTの製造方法を例示するが、その工程が若干異なる点で相違する。図9は、変形例1のCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0099】先ず、図9(a)に示すように、ガラス等からなる基板1上に、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜2をプラズマCVD法またはスパッタ法により膜厚200nm〜300nm程度に形成した後、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン膜31を膜厚30nm〜100nm程度に形成する。このとき、不純物は無添加であるため、ノンドープのアモルファスシリコン膜31が出発膜となる。
【0100】続いて、図9(b)に示すように、線状ビームのレーザ光を発するXeClエキシマレーザ(波長308nm)を用いて、室温・N2 雰囲気中でアモルファスシリコン膜31にレーザ光を300〜400mJ/cm2 照射して結晶化させ、ノンドープの多結晶シリコン膜32とする。
【0101】続いて、図9(c)に示すように、多結晶シリコン膜32を覆うようにシリコン酸化膜を形成して保護膜33とする。次いで、しきい値電圧制御のための1回目のp型不純物添加として、DCイオンドーピング装置を用いて原料ガスを3%のB2 6 として保護膜33の膜厚に応じて加速電圧30〜80keVで調整し、多結晶シリコン膜32にBのイオンドーピング(非選択的添加)を施す。このとき、露出した保護膜33を介してノンドープの多結晶シリコン膜32にBが添加され、弱p型(p--)の多結晶シリコン膜34となる。このように、p型不純物(B)がドーピングされるため、B濃度分布は図3(c)のようにブロード形状となる。ここで、多結晶シリコン膜32中のB濃度は、しきい値電圧及びゼロ電流制御を効果的に行なうことを考慮すれば、1×1018/cm3 以下、理想的には1×1016〜1×1017cm3 (またはドーズ量で1×1011〜1×1013/cm2 )とすることが好適である。なお、保護膜33の形成が不要である場合もある。
【0102】続いて、図9(d)に示すように、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加として、フォトリソグラフィーにより多結晶シリコン膜34のp型TFT領域35のみを覆うようにレジストマスク37を形成し、DCイオンドーピング装置を用いて第2の実施形態と同じドーズ量条件で原料ガスを3%のB2 6として加速電圧10〜30keVでBのイオンドーピング(選択的添加)を施す。このとき、多結晶シリコン膜34の露出したn型TFT領域36のみにBが添加され、p--の状態から比較的高いp型の状態(p- )に変わる。このときのn型TFT領域36のB濃度分布は図3(d)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。
【0103】次いで、O2 プラズマを用いた灰化処理等によりレジストマスク37を除去した後、基板1にアニール処理を施し、多結晶シリコン膜34に添加したBを活性化させる。
【0104】続いて、p型TFT領域35及びn型TFT領域36とされた多結晶シリコン膜34にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施し、p型TFTの構成要素となる動作半導体層11及びn型TFTの構成要素となる動作半導体層12をそれぞれ島状に分離形成する。
【0105】次いで、動作半導体層11,12を覆うように、プラズマCVD法または低圧CVD法により膜厚100nm〜120nm程度となるようにシリコン酸化膜を堆積し、ゲート絶縁膜5を形成する。
【0106】続いて、第2の実施形態の図6(a)と同様に、低圧CVD法によりゲート絶縁膜5上に多結晶シリコン膜を堆積した後、この多結晶シリコン膜にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施して、動作半導体層11,12上でそれぞれ帯状に延在するゲート電極6をパターン形成する。次いで、DCイオンドーピング装置を用い、各ゲート電極6をマスクとして、動作半導体層11にはゲート電極6の両側に高濃度のp型不純物(例えばB)を、動作半導体層12にはゲート電極6の両側に高濃度のn型不純物(例えばP)をそれぞれ選択的にドーピングする。そして、基板1にアニール処理を施すことにより、動作半導体層11にはp型(p+ )のソース/ドレイン13を、動作半導体層12にはn型(n+ )のソース/ドレイン14をそれぞれ形成し、ゲート電極6及びソース/ドレイン13を有するp型TFT3と、ゲート電極6及びソース/ドレイン14を有するn型TFT4をそれぞれ形成する。
【0107】しかる後、図6(b)と同様に、p型TFT3及びn型TFT4を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7を形成し、層間絶縁膜7にソース/ドレイン13,14の表面の一部を露出させる各コンタクト孔8を形成し、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン13,14と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9をスパッタ法により形成して、CMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT3のチャネル領域11aがp--状態とされ、n型TFT4のチャネル領域12aがp- 状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0108】この変形例1によれば、第2の実施形態の製造方法が奏する諸効果に加え、図9(d)の工程において、レジストマスク37を除去した直後では未だ動作半導体層11,12のような島状パターンが存在しないため、基板シュリンゲージの影響を受けずに比較的高い温度でアニール処理(p型不純物の熱活性化)を行なうことができる。
【0109】また、選択的添加のみならず非選択的添加もDCイオンドーピング装置を用いて行なうので、更なる工程の簡略化を図ることができる。
【0110】−変形例2−次に、変形例2について説明する。この変形例2では、第2の実施形態と同様な構成のCMOS−TFTの製造方法を例示するが、その工程が若干異なる点で相違する。図10は、変形例2のCMOS−TFTの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
【0111】先ず、第2の実施形態の図5(a),図5(b)と同様に、しきい値電圧制御のための1回目の不純物添加として、アモルファスシリコン膜21の形成と共にp型不純物(B)の非選択的添加を行なった後、レーザ光照射によりp--多結晶シリコン膜22を形成する。
【0112】次いで、p--多結晶シリコン膜22にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施し、p型TFTの構成要素となる動作半導体層11及びn型TFTの構成要素となる動作半導体層12をそれぞれ島状に分離形成する。
【0113】続いて、図10(a)に示すように、動作半導体層11,12を覆うように、プラズマCVD法または低圧CVD法により膜厚100〜120nm程度となるようにシリコン酸化膜を堆積し、ゲート絶縁膜5を形成する。
【0114】次に、フォトリソグラフィーにより動作半導体層11のみを覆うようにレジストマスク23を形成し、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加として、原料ガスを3%のB2 6 として加速電圧10〜30keVでBのイオンドーピング(選択的添加)を施す。この場合、汚染防止や加速電圧の設定及び熱活性化時の基板シュリンゲージ等に注意する必要がある。
【0115】しかる後、レジストマスク23を除去し、第2の実施形態の図6(a),図6(b)と同様に、ゲート絶縁膜5上にゲート電極6をパターン形成し、ソース/ドレイン13,14をそれぞれ形成し、層間絶縁膜7やコンタクト孔8、金属配線膜9等を形成して、p型TFT3及びn型TFT4を備えたCMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT3のチャネル領域11aがp--状態とされ、n型TFT4のチャネル領域12aがp- 状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0116】なお、図10(b)に示すように、ゲート絶縁膜5を形成し、ゲート電極6をパターン形成した後、動作半導体層11のみを覆うようにレジストマスク23を形成し、ゲート電極6を通過して動作半導体層12内でドーパントが止まるような加速電圧でイオンドーピング(選択的添加)を施すようにしてもよい。この場合、加速電圧が高く設定されるため、マスク材料及びその除去方法を工夫する必要がある。また、BH+ イオン種を利用することにより、比較的低い加速電圧でイオンダメージを小さく抑えることができる。
【0117】この変形例2によれば、第2の実施形態と同様に、2種のp型不純物添加(非選択的添加及び選択的添加)を組み合わせて行なうことにより、p型不純物の非選択的添加の際にはフォトリソグラフィーが不要であることも考慮すれば、必要最低限の手間によりp型TFT3及びn型TFT4の各しきい値電圧(及びゼロ電流)を独立に仕様値に設定することができる。
【0118】−変形例3−次に、変形例3について説明する。この変形例3では、第2の実施形態と同様な構成のCMOS−TFTの製造方法を例示するが、CMOS−TFTがLDD構造を有する点で相違する。図11及び図12は、変形例3のCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0119】初めに、第2の実施形態の図5(a)〜図5R>5(c)と同様に、p型不純物(B)の非選択的添加及び選択的添加を行なってしきい値電圧制御し、p--の動作半導体層11とp- の動作半導体層12を形成する(図11(a))。
【0120】続いて、図11(b)に示すように、動作半導体層11,12を覆うように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜41を膜厚120nm程度に形成した後、シリコン酸化膜41を覆うようにスパッタ法によりアルミニウム合金膜42を膜厚300nm程度に形成する。
【0121】続いて、図11(c)に示すように、フォトリソグラフィーによりアルミニウム合金膜42上にレジストマスク43を形成し、このレジストマスク43を用いてドライエッチングによりアルミニウム合金膜42をパターニングし、シリコン酸化膜41を介した動作半導体層11,12上でそれぞれアルミニウム合金膜42を帯状に残す。次いで、所定の薬液、ここではリン酸系のエッチング溶液を用いてアルミニウム合金膜42にウェットエッチング(サイドエッチング)を施してレジストマスク43の縁から0.5〜1.0μm程度細らせ、ゲート電極50を形成する。
【0122】続いて、レジストマスク43をエッチングマスクとしてシリコン酸化膜41にドライエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を施してパターニングする。このとき、図11(d)(レジストマスク43を除去した後を示す。)に示すように、ゲート電極50、シリコン酸化膜41、動作半導体層11,12がこの順に幅狭となる階段形状に形成されることになる。
【0123】続いて、レジストマスク43を除去した後、図11(e)に示すように、更なるしきい値電圧制御のためにn型TFTの構成要素となる動作半導体層12のチャネル領域にp型不純物の選択的添加し、引き続いてLDD構造のソース/ドレインを形成する。
【0124】具体的には、先ず、動作半導体層11側を覆うレジストマスク44を形成し、動作半導体層12側のみにしきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加(選択的添加)を行なう。ここで、ドーパントがゲート電極50及びシリコン酸化膜41を通過して動作半導体層12のチャネル領域12aで止まる条件、例えば加速電圧を100keV、ドーズ量を前記非選択的添加より若干高い濃度(1×1017〜1×1018/cm3 程度)となるように、5×1014/cm2 程度でBのイオンドーピングを施す。この場合、ゲート電極50(アルミニウム合金膜42)を薄く(例えば200nm程度に)形成し、加速電圧を70keV程度に下げるようにしてもよい。このとき、露出した動作半導体層12のチャネル領域12aのみにBが添加され、この部分がp--の状態から比較的高いp型の状態(p- )に変わる。このときのチャネル領域12aのB濃度分布は図3(b)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。
【0125】次に、ドーパントがシリコン酸化膜41を通過して直下に位置する部位の動作半導体層12内で止まる条件、ここでは70keV程度の加速電圧でドーズ量を1×1014/cm2 程度として、露出した動作半導体層12側にn型不純物(例えばP)をイオンドーピングして、シリコン酸化膜41の直下に位置する動作半導体層12の部分(チャネル領域12a(p- )に隣接する部分)にn- 領域(LDD領域)12bを形成する。
【0126】次に、ドーパントが今度はシリコン酸化膜41を通過せずに露出した部位の動作半導体層12内で止まる条件、ここでは10keV程度の加速電圧でドーズ量を8×1015/cm2 程度として、露出した動作半導体層12側にn型不純物(例えばP)をイオンドーピングして、動作半導体層12の両側(n- 領域12bの外側)にn+ 領域12cを形成する。
【0127】続いて、レジストマスク44を除去した後、図12(a)に示すように、今度は動作半導体層12側を覆うレジストマスク45を形成し、ドーパントがシリコン酸化膜41を通過して直下に位置する部位の動作半導体層11内で止まる条件、ここでは70keV程度の加速電圧でドーズ量を5×1014/cm2 程度として、動作半導体層11側にp型不純物(例えばB)をイオンドーピングし、露出したシリコン酸化膜41の直下に位置する動作半導体層11の部分(チャネル領域11a(p--)に隣接する部分)にp- 領域(LDD領域)11bを形成する。
【0128】次に、ドーパントが今度はシリコン酸化膜41を通過せずに露出した部位の動作半導体層11内で止まる条件、ここでは10keV程度の加速電圧でドーズ量を1×1015/cm2 程度として、露出した動作半導体層11側にp型不純物(例えばB)をイオンドーピングして、動作半導体層11の両側(p- 領域11bの外側)にp+ 領域11cを形成する。
【0129】続いて、レジストマスク45を除去した後、図12(b)に示すように、基板1にエキシマレーザアニール処理を施して、チャネル領域11a,12aのp型不純物を活性化させるとともに、p- 領域11b及びp+ 領域11cを活性化させてLDD層46を有するソース/ドレイン47を形成し、n- 領域12b及びn+ 領域12cを活性化させてLDD層48を有するソース/ドレイン49を形成する。このとき、p型TFT51及びn型TFT52が形成される。
【0130】しかる後、図12(c)に示すように、p型TFT51及びn型TFT52を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7を形成し、層間絶縁膜7にソース/ドレイン47,49の表面の一部を露出させる各コンタクト孔8を形成し、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン47,49と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9をスパッタ法により形成して、LDD構造を有するCMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT51のチャネル領域11aがp--状態とされ、n型TFT52のチャネル領域12aがp- 状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0131】この変形例3によれば、第2の実施形態の製造方法が奏する諸効果に加え、CMOS−TFTがLDD層46,48を有するため、リーク電流の低減化及び特性安定化に寄与する。しかも、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加(選択的添加)時と、LDD構造のソース/ドレインを形成するための不純物添加時とをレジストマスクの形成/剥離を行なうことなく、両工程を連続して行なうので、最小限の工程数でしきい値電圧制御を行いつつもLDD構造の精緻なCMOS−TFTを製造することが可能となる。
【0132】−変形例4−次に、変形例4について説明する。この変形例3では、変形例3と同様な構成のCMOS−TFTの製造方法を例示するが、工程が若干異なる点で相違する。図13は、変形例4のCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0133】初めに、第2の実施形態の図5(a)〜図5R>5(c)と同様に、p型不純物(B)の非選択的添加及び選択的添加を行なってしきい値電圧制御し、p--の動作半導体層11とp- の動作半導体層12を形成する(図11(a))。
【0134】続いて、変形例3の図11(b)〜図11(d)と同様に、フォトリソグラフィーやドライエッチング、ウェットエッチング等の手法を用いて、ゲート電極50、シリコン酸化膜(ゲート絶縁膜)41、動作半導体層11,12をこの順に幅狭となる階段形状に形成する。
【0135】続いて、図13(a)に示すように、動作半導体層11,12の全面にp型不純物をイオンドーピングする。具体的には、先ずドーパントがシリコン酸化膜41を通過して直下に位置する部位の動作半導体層11,12内で止まる条件、ここでは70keV程度の加速電圧でドーズ量を5×1014/cm2 程度として、露出したシリコン酸化膜41を介して動作半導体層11,12にp型不純物(例えばB)をイオンドーピングする。このとき、露出したシリコン酸化膜41の直下に位置する部位の動作半導体層11の部分にp- 領域(LDD領域)11bが形成される。なお、露出したシリコン酸化膜41の直下に位置する動作半導体層12の部分にもp- 領域が形成される。
【0136】次に、ドーパントが今度はシリコン酸化膜41を通過せずに露出した部位の動作半導体層11,12内で止まる条件、ここでは10keV程度の加速電圧でドーズ量を1×1015/cm2 程度として、露出した動作半導体層11,12にp型不純物(例えばB)をイオンドーピングする。このとき、動作半導体層11の両側(p- 領域11bの外側)にp+ 領域11cが形成される。なお露出したシリコン酸化膜41の直下に位置する動作半導体層12の部分にもp+ 領域が形成される。
【0137】続いて、図13(b)に示すように、更なるしきい値電圧制御のためにn型TFTの構成要素となる動作半導体層12のチャネル領域にp型不純物の選択的添加した後、引き続いてLDD構造のソース/ドレインを形成する。
【0138】具体的には、先ず、動作半導体層11側を覆うレジストマスク53を形成し、動作半導体層12側のみにしきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加(選択的添加)を行なう。ここで、ドーパントがゲート電極50及びシリコン酸化膜41を通過して動作半導体層12のチャネル領域12aで止まる条件、例えば加速電圧を100keV、ドーズ量を前記非選択的添加より若干高い濃度(1×1017〜1×1018/cm3 程度)となるように、5×1014/cm2 程度でBのイオンドーピングを施す。この場合、ゲート電極50を薄く(例えば200nm程度に)形成し、加速電圧を70keV程度に下げるようにしてもよい。このとき、露出した動作半導体層12のチャネル領域12aのみにBが添加され、この部分がp--の状態から比較的高いp型の状態(p- )に変わる。このときのチャネル領域12aのB濃度分布は図3(b)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。
【0139】次に、ドーパントがシリコン酸化膜41を通過して直下に位置する動作半導体層12内で止まる条件、ここでは70keV程度の加速電圧で、p- 領域11b形成時よりも高濃度となるドーズ量、例えば1×1014/cm2 程度として、露出した動作半導体層12側にn型不純物(例えばP)をイオンドーピングする。このとき、露出したシリコン酸化膜41の直下に位置する動作半導体層12の部分には、p- 領域に替わってn- 領域(LDD領域)12bが形成される。
【0140】次に、ドーパントが今度はシリコン酸化膜41を通過せずに露出した部位の動作半導体層12内で止まる条件、ここでは10keV程度の加速電圧で、p+ 領域11c形成時よりも高濃度となるドーズ量、例えば8×1015/cm2 程度として、露出した動作半導体層12側にn型不純物(例えばP)をイオンドーピングする。このとき、動作半導体層12の両側(n- 領域12bの外側)には、p+ 領域に替わってn+ 領域12cが形成される。
【0141】しかる後、レジストマスク53を除去した後、図13(c)に示すように、基板1にエキシマレーザアニール処理を施して、チャネル領域11a,12aのp型不純物を活性化させるとともに、p- 領域11b及びp+ 領域11cを活性化させてLDD層46を有するソース/ドレイン47を形成し、n- 領域12b及びn+ 領域12cを活性化させてLDD層48を有するソース/ドレイン49を形成する。また、前記アニール処理によりシリコン酸化膜41の膜質を改善化されてゲート絶縁膜とされる。このとき、p型TFT51及びn型TFT52が形成される。
【0142】しかる後、図13(d)に示すように、p型TFT51及びn型TFT52を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7を形成し、層間絶縁膜7にソース/ドレイン47,49の表面の一部を露出させる各コンタクト孔8を形成し、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン47,49と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9をスパッタ法により形成して、LDD構造を有するCMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT51のチャネル領域11aがp--状態とされ、n型TFT52のチャネル領域12aがp- 状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0143】この変形例4によれば、第2の実施形態の製造方法が奏する諸効果に加え、CMOS−TFTがLDD層46,48を有するため、リーク電流の低減化及び特性安定化に寄与する。しかも、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加(選択的添加)時と、LDD構造のソース/ドレインを形成するための不純物添加時とをレジストマスクの形成/剥離を行なうことなく、両工程を連続して行なうので、最小限の工程数でしきい値電圧制御を行いつつもLDD構造の精緻なCMOS−TFTを製造することが可能となる。
【0144】−変形例5−次に、変形例5について説明する。この変形例5では、第2の実施形態と同様な構成のCMOS−TFTの製造方法を例示するが、CMOS−TFTがいわゆるボトムゲート型のものである点で相違する。図14及び図15は、変形例5のCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0145】先ず、図14(a)に示すように、基板1上に、Cr,Ta,Mo,Al等の金属膜またはその合金膜をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施して、p型及びn型TFT側の領域にそれぞれ帯状のゲート電極61をパターン形成する。
【0146】続いて、図14(b)に示すように、ゲート電極61を覆うように、プラズマCVD法または低圧CVD法により膜厚300nm〜400nm程度、好ましくは300nm〜350nm程度となるように、単層のシリコン酸化膜(SiO2)、又は単層のシリコン窒化膜(SiNX )、又は多層のシリコン酸化膜(SiOX )、又は多層の絶縁膜SiNX (上層)/SiO2 (下層)を堆積し、ゲート絶縁膜62を形成する。次いで、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン膜63を膜厚30nm〜100nm程度に形成する。このとき、しきい値電圧制御のための1回目のp型不純物添加として、原料ガスであるSiH4 に5〜6ppm(ガス比)の微量のB2 6 を添加(非選択的添加)することにより、アモルファスシリコン膜63は弱p型(p--)の出発膜となる。このように、p型不純物(B)添加が膜形成と同時に行なわれるため、B濃度分布は図3(a)のようにフラット形状となる。p--アモルファスシリコン膜63のB濃度の好適な範囲は、しきい値電圧及びゼロ電流制御を効果的に行なうことを考慮すれば、1ppm〜10ppm(または1×1018/cm3 以下;理想的には1×1016〜1×1017cm3 )となる。
【0147】次いで、プラズマCVD法または低圧CVD法によりp--アモルファスシリコン膜63上にシリコン酸化膜を堆積し、このシリコン酸化膜にフォトリソグラフィー及びそれに続くドライエッチングを施して、p型及びn型TFT側の領域の各ゲート電極61の上層に位置する部位のみにシリコン酸化膜を残して、保護膜64を膜厚50nm〜100nm程度に形成する。なお、この保護膜64は場合によっては不要なこともある。
【0148】続いて、図14(c)に示すように、p--アモルファスシリコン膜63にエキシマレーザアニール処理を施して結晶化させてp--多結晶シリコン膜とした後、このp--多結晶シリコン膜をp型及びn型TFT側の領域でそれぞれ島状にパターニングし、動作半導体層65,66を形成する。そして、動作半導体層66のみを露出させるようにレジストマスク67を形成し、しきい値電圧制御のための2回目のp型不純物添加として、DCイオンドーピング装置を用い原料ガスを1%〜3%のB2 6 としてBのイオンドーピング(選択的添加)を施す。このとき、ドーパントを保護膜64を通過して動作半導体層66内に止める必要があるため、加速電圧を30〜60keV程度に調整する。このとき、露出した動作半導体層66のみにBが添加され、p--の状態から比較的高いp型の状態(p- )に変わる。このときの動作半導体層66のB濃度分布は図3(b)のように表面近傍にピークをもつ形状となる。
【0149】次いで、図14(d)に示すように、今度は保護膜64を通過しない程度の加速電圧、例えば5〜20keV程度、好ましくは10keV程度で動作半導体層66の露出した部位(即ち、保護膜64の両側の部位)に高濃度のn型不純物(例えばP)をドーピングする。
【0150】続いて、レジストマスク67を除去した後、図15(a)に示すように、今度は動作半導体層65のみを露出させるようにレジストマスク68を形成する。そして、保護膜64を通過しない程度の加速電圧、例えば5〜20keV程度、好ましくは10keV程度で動作半導体層65の露出した部位(即ち、保護膜64の両側の部位)に高濃度のp型不純物(例えばB)をドーピングする。
【0151】そして、レジストマスク68を除去した後、基板1にエキシマレーザアニール処理を施すことにより、チャネル領域65a,66aのp型不純物を活性化するとともに、動作半導体層65にはp型(p+ )のソース/ドレイン73を、動作半導体層66にはn型(n+ )のソース/ドレイン74をそれぞれ活性化により形成して、p型TFT71及びn型TFT72を完成させる。
【0152】しかる後、図15(b)に示すように、p型TFT71及びn型TFT72を覆うようにシリコン窒化膜等からなる層間絶縁膜7を形成し、層間絶縁膜7にソース/ドレイン73,74の表面の一部を露出させる各コンタクト孔8を形成し、コンタクト孔8を充填しソース/ドレイン73,74と接続されると共に層間絶縁膜7上で延在する金属配線膜9をスパッタ法により形成して、p型TFT71及びn型TFT72を備えたCMOS−TFTの主要構成を完成させる。完成したCMOS−TFTにおいては、p型TFT71のチャネル領域65aがp--状態とされ、n型TFT72のチャネル領域66aがp- 状態とされており、各しきい値電圧(及びゼロ電流)がそれぞれ独立に仕様値に調整されている。
【0153】この変形例5によれば、第2の実施形態と同様に、2種のp型不純物添加(非選択的添加及び選択的添加)を組み合わせて行なうことにより、p型不純物の非選択的添加の際にはフォトリソグラフィーが不要であることも考慮すれば、必要最低限の手間によりp型TFT71及びn型TFT72の各しきい値電圧(及びゼロ電流)を独立に仕様値に設定することができる。
【0154】(第3の実施形態)次に、本発明の第3の実施形態について図16〜図26を用いて説明する。第3の実施形態は、本発明をCMOS−TFTを含む周辺回路と一体化された液晶表示装置に適用したものである。
【0155】図16は、第3の実施形態に係るSVGA型の周辺回路一体化の低温多結晶シリコン膜を用いた液晶表示装置201(以下、単に液晶表示装置201と記す。)の全体構成を示す平面図である。
【0156】図16に示すように液晶表示装置201は、TFT基板202上に形成された、表示部203、信号側駆動回路204、ゲート側駆動回路205、コモン電極206、引出し端子部207を有して構成されている。
【0157】図17は、液晶表示装置201の表示部203、信号側駆動回路204、ゲート側駆動回路205を更に詳細に示す平面図である。表示部203の画素フォーマットは800×RGB×600からなる。表示データ分割数は8分割(RGB毎)、ビデオ信号線260の本数は24本(8本×RGB)、信号側駆動回路204のシフトレジスタは100段で動作周波数f=6.88MHz、ゲート側駆動回路205のシフトレジスタは150段で動作周波数f=40kHzである。ここで、信号側駆動回路204の出力であるアナログスイッチ制御信号261はアナログスイッチ220へ接続され、各ビデオ信号線260と表示部203の列方向に延在する信号線223との接続状態が制御される。また、ゲート側駆動回路205の出力は表示部203の行方向に延在する走査線222へ接続されている。
【0158】以下、図17に示す液晶表示装置201の各主要構成について説明する。
【0159】先ず、ゲート側駆動回路205の構成について述べる。図18は、図17に示す液晶表示装置201のゲート側駆動回路205を示す概略回路図である。ゲート側駆動回路205は低電圧部分と高電圧部分の主に2つの領域に分類される。
【0160】図18において、レベル変換回路211を境に低電圧部209と高電圧部210が形成されている。低電圧部209は5Vで動作するCMOS回路であり、高電圧部210は16Vで動作するCMOS回路であってその出力は表示部203内の各画素セル215に接続されている。即ち、表示部203は16Vで駆動する高電圧部に属する。ここで、低電圧部209の駆動電圧は、レベル変換回路211によって16Vまで昇圧され高電圧部210へと導かれる。
【0161】低電圧部209は、双方向スイッチ212、シフトレジスタ213、マルチプレクサ214を有して構成されている。図18に示すように、双方向スイッチ212、シフトレジスタ213はn型TFT及びp型TFTからなる複数のCMOS−TFT250、n型TFT251及びp型TFT252を含むCMOS回路から構成されており、マルチプレクサ214もCMOS回路から構成されている。
【0162】高電圧部210は、CMOS−TFT253が3段接続されたバッファ部216を有しており、レベル変換回路211からの信号はバッファ部216によって負荷駆動力を高められた状態で表示部203内の各画素セル215へ接続される。このような複数段のCMOS型バッファの場合、偶数段と奇数段の動作が異なるため、貫通電流を支配するTFTが異なることになる。
【0163】図19は、バッファ部216を構成するCMOS−TFT253の機能を説明する図である。ここで図19(a)は1段目のCMOS−TFT253を示している。入力端子(IN)へ信号Hが入力されるとCMOS−TFT253のp型TFTがオフし、n型TFTがオンするため、出力端子(OUT)がGNDと接続されて信号Lが出力される。この際、貫通電流として、オフしているp型TFTに微量のゼロ電流Ip0が流れる。
【0164】図19(b)は、2段目のCMOS−TFT253を示している。入力端子(IN)へ信号Lが入力されるとCMOS−TFT253のp型TFTがオンし、n型TFTがオフするため、出力端子(OUT)にVddが印加されて信号Hが出力される。この際、貫通電流として、オフしているn型TFTに微量のゼロ電流In0が流れる。ここで、後述するしきい値電圧制御法により、ゼロ電流Ip0,In0を仕様値に設定することができる。
【0165】次に、信号側駆動回路204の構成について説明する。図20は、図17に示す液晶表示装置201の信号側駆動回路204を示す概略回路図である。
【0166】信号側駆動回路204は、図21に示すシフトレジスタ217、バッファ部218及び図17に示すアナログスイッチ220から構成されている。先ず、図20を参照しながらシフトレジスタ217の構成について述べる。
【0167】図20に示すように、シフトレジスタ217は横方向に100段配置された各フリップフロップ(D−FF)219からなる。それぞれのフリップフロップ219には入力端子D、出力端子Qが設けられており、また、クロックCK,/CKが入力される。2段目以降の入力端子Dには隣接するフリップフロップ219の出力端子Qが接続される。
【0168】各フリップフロップ219の出力端子Qからの出力は、バッファ部218へ入力される。バッファ部218は、ゲート側駆動回路205のバッファ部216と同様に、CMOS−TFT254が多段に接続されて構成されている。
【0169】バッファ部218の最終段のから2段目のCMOS−TFT254への入力は、並列してCMOS−TFT235の入力へ接続されており、バッファ部218からの出力は2つに分岐されている。2つに分けられたバッファ部218の出力は、図17に示すアナログスイッチ220のトランスファーゲート240のそれぞれに接続される。
【0170】図21(a)は、シフトレジスタ217を構成する1つのフリップフロップ219の回路構成を示している。フリップフロップ219はCMOS−TFT255、n型TFT256及びp型TFT257を有して構成されており、入力Dに応じた出力QがクロックCK,/CKに同期して出力される。すなわち、図20において、1段目のフリップフロップ219への入力SPは、クロックCK,/CKのタイミングで順次2段目、3段目のフリップフロップ219へシフトされる。
【0171】図21(b)は、バッファ部218の回路構成を示している。バッファ部218は5段のCMOS−TFT258から構成されており、フリップフロップ219からの信号をバッファ部216と同様に遅延させ、負荷駆動力を高める役割を果たす。なお、図21(b)においては、前述したCMOS−TFT235の図示を省略している。
【0172】図22は、バッファ部218の出力が接続されるアナログスイッチ220の構成を示している。アナログスイッチ220は、n型TFT244とp型TFT243から構成されるトランスファゲート構造のスイッチ回路である。バッファ部218から2つに分岐された出力は、トランスファゲート240のそれぞれに接続される。なお、図22において端子236には図17に示すビデオ信号線260のそれぞれが接続され、端子237には画素セル215へ接続される信号線223が接続される。バッファ部218からの出力がトランスファゲート240へ伝達されると、アナログスイッチ220がオンしてビデオ信号線260の出力が信号線223へと伝えられる。
【0173】次に、上述した信号側駆動回路204とゲート側駆動回路205からの出力が接続される各画素セル215の構成について説明する。図17に示すように、各画素セル215は、液晶セル241、2つの画素TFT221及び液晶セル241と並列に接続されたキャパシタ242から構成されている。ここで、画素TFT221のそれぞれはn型TFTから構成されており、このn型TFTのゲート電極にはゲート側駆動回路205からの同一の走査線222が接続され、16Vの高電圧が印加される。また、一方の画素TFT221のドレインには、信号側駆動回路204からの信号線223が接続されている。
【0174】ゲート側駆動回路205のバッファ部216を介して走査線222に信号を伝達し、信号駆動回路204からの信号によりアナログスイッチ220がオン状態にされると、ビデオ信号線260からの信号が画素TFT221を介して液晶セル241へ伝達される。これにより、表示部203全体として画像等の表示が行われる。
【0175】以上説明したように、液晶表示装置201は、表示部203には16Vの高電圧が印加される2つのn型TFTから構成された画素TFT221が、ゲート側駆動回路205には5Vの低電圧が印加されるCMOS−TFTを有する低電圧部209及び16Vの高電圧が印加されるCMOS−TFTを有する高電圧部210がそれぞれ形成されており、信号側駆動回路204にも動作電圧の異なるCMOS−TFTが設けられて構成されている。即ち、液晶表示装置201の各CMOS−TFT及び画素TFT221は、動作電圧に応じた各素子群(低電圧素子群及び高電圧素子群)に分類される。この場合、各CMOS−TFTは動作電圧値に応じて最適なしきい値電圧値(仕様値)が素子群毎に異なるため、各々のCMOS−TFT(及び画素TFT221)のしきい値電圧を仕様値に調整するのは極めて困難である。
【0176】そこで本実施形態では、このように素子群毎にしきい値電圧の仕様値が異なる液晶表示装置に、以下に示すように本発明の特徴であるしきい値電圧制御法を適用する。なお以下の説明において、非選択的添加とは該当する素子群のCMOS−TFTのp型領域及びn型領域の全体に極低濃度のp型不純物を添加することを示し、選択的添加とは該当する素子群のCMOS−TFTのn型領域のみに低濃度のp型不純物を添加することを示す。
【0177】図23及び図24は、p型不純物添加に伴って変化するId −Vg 曲線の様子を示す特性図である。先ず、低電圧素子群及び高電圧素子群を構成する各CMOS−TFT(低圧動作CMOS−TFT及び高圧動作CMOS−TFT)、画素TFT221の形成領域に、第2の実施形態の場合と同様にアモルファスシリコン膜の形成時に同時にp型不純物(B)のガス添加(B2 6 :5ppm)を行なう。この状態におけるId −Vg 曲線は、低電圧素子群または高電圧素子群を問わず図23(a)に示すように、高圧動作CMOS−TFTのp型TFTのしきい値電圧(Vthp)は仕様値に調整されるものの、n型TFTのId −Vg 曲線が未だ負方向にシフトした状態にあり、しきい値電圧(Vthn )は仕様値外である。
【0178】続いて、低圧動作CMOS−TFTの形成領域のみにp型不純物(B)の非選択的添加を行なう。ここでは、DCイオンドーピング装置を用い、ドーズ量を1〜5×1012/cm2 程度とする。この状態における低圧動作CMOS−TFTのId −Vg 曲線は、図23(b)に示すように、p型TFT及びn型TFTが共に正方向にシフトして、しきい値電圧(Vthp ,Vthn )が双方共に仕様値に調整される。なおこの場合、低圧動作CMOS−TFTのp型TFT及びn型TFTは、高動作速度を実現する必要性から、高圧動作CMOS−TFTに比して高いゼロ電流(Ip0,In0:Ip0≒In0(理想的にはIp0=In0))で仕様値に達する。
【0179】続いて、高圧動作CMOS−TFTのn型TFTの形成領域及び画素TFT221の形成領域のみにp型不純物(B)の選択的添加を行なう。ここでは、DCイオンドーピング装置を用い、ドーズ量を1〜5×1012/cm2 程度とする。この状態における高圧動作CMOS−TFTのId −Vg 曲線は、図24(a)に示すように、図23(a)の状態からn型TFTのみが正方向にシフトして、しきい値電圧(Vthn )が仕様値となる。それと共に、画素TFT221のId−Vg 曲線もまた、図24(b)に示すように正方向にシフトして、しきい値電圧(Vthn )が仕様値となる。
【0180】このように、第3の実施形態によれば、動作電圧の異なる少なくとも2種の素子群に分類される複数のCMOS−TFT(及び一対のn型TFT等)が必要な液晶表示装置において、非選択的添加及び選択的添加を所定回数ずつ組み合わせて、各素子群を含む全体から非選択的添加を行ない、順次に高動作電圧のCMOS−TFTを有する素子群に対して非選択的添加及び選択的添加を施す。これにより、各素子群毎に個別にしきい値電圧制御を行なう場合のようなフォトリソグラフィーの煩雑な工程を不要とし、しかも各素子群を構成するCMOS−TFTのp型及びn型TFTの各しきい値電圧を設定する。即ち、必要最低限の添加回数(及び手間)のみで、各素子群毎にCMOS−TFTのp型及びn型TFTのしきい値電圧をそれぞれ独立に仕様値に調整することができる。
【0181】なお、非選択的添加及び/又は選択的添加の態様は、各素子群の動作電圧によって異なるため、様々な組み合わせが考えられる。例えば、本実施形態で液晶表示装置を製造する工程全体で見れば非選択的添加及び選択的添加の双方を行なうが、所定の素子群(本例では高圧動作CMOS−TFT)に着目すれば、上述のように所定回数の非選択的添加のみで好適な結果を得られる場合もある。
【0182】具体的に各素子群毎にみれば、低電圧素子群のCMOS−TFTについては、Vthp の絶対値とVthn の絶対値との差を僅差、即ち||Vthp |−|Vthn ||を小さくすることで好適な低電圧動作を実現し、高速動作及び低消費電力化が可能となる。他方、高電圧動作素子群のCMOS−TFTについては、Ip0及びIn0の消費電力の増加に与える影響が大きいことから、Ip0及びIn0を共に小さく(且つほぼ同一に)することによって低消費電力化を実現する。更に、画素TFT221については、オフ電流を小さくすることにより画素セル215の信号電荷リークの発生を抑止し、クロストークを防止して高画質を実現する。
【0183】なお、画素TFT221の代わりに高圧動作CMOS−TFTを設けてもよい。図25は、画素セル215の更に優れた他の構成例を示している。図25に示す画素セル215は、画素TFT221の構成が図1717に示す画素セル215と異なっており、CMOS−TFT259から構成されている。
【0184】CMOS−TFT259に本発明を適用することにより、CMOS−TFT259を構成するn型TFTとp型TFTのしきい値電圧の絶対値を略同一とすることができ、且つ、ゼロ電流Ip0,In0を最小限に抑えることができる。
【0185】ここで、画素TFT221をn型TFTから構成した場合には、画素TFT221がオフしている時のゼロ電流In0を最小限に抑えるためにn型TFTのゲートに印加する電圧を負の値とする必要が生じる。しかし、図25に示すように、画素TFTをCMOS−TFT259から構成し、本発明を適用することによって、ゼロ電流Ip0,In0を最小限に抑えることができるとともに、ゲートに負の電圧を印加する必要が生じなくなり、回路構成をより簡略化することが可能となる。
【0186】また、これによりCMOS−TFT259と、信号線223の根元のアナログスイッチ220とが同一構成となるため、CMOS−TFT259とアナログスイッチ220との同期をとることも容易となる。
【0187】−変形例−次に、第3の実施形態の変形例について図26を参照しながら説明する。この変形例は、上述した液晶表示装置201の構成をリア型投写パネル231に適用した例である。
【0188】リア型投写パネル231は、図26(a)に示すように、TFT基板232上に形成された、表示部233、信号側駆動回路234、ゲート側駆動回路235、引出し端子部207を有して構成されている。
【0189】この変形例においても、信号側駆動回路234と他の制御回路(インタフェイス、CPU等)の動作周波数が高いため、高い移動度をもつ高性能のCMOS−TFTが必要である。このため、図26(b)に示すように、高速動作回路領域にニッケル(Ni)等の結晶触媒物を半導体活性層の所定領域にに添加して、Ni添加領域245を形成する。この結晶触媒物は、アモルファスシリコンを結晶化する際に、結晶化を助長する役割を果たす。これにより、シリコンの結晶化を高め、高速動作のTFTを形成することが可能である。なお、高速動作回路領域以外の領域はニッケルを添加せずにNi無添加領域246としておく。
【0190】なお、結晶触媒物としては、ニッケル(Ni)の代わりにコバルト(Co)、白金(Pt)、Cu(銅)、鉄(Fe)等を用いてもよい。
【0191】変形例において、画素電極については、透過型の場合では透明電極(ITO等)を、反射型の場合では反射電極(Al等)を用いることが可能である。
【0192】この変形例によれば、第3の実施形態の場合と同様のしきい値電圧制御法により、各部分のCMOS−TFTの各しきい値電圧が最適値(仕様値)に調整されるため、パネル性能は勿論、しきい値シフトによる局在的発熱が生じることなく、進行性劣化が抑止されて液晶パネルとしての信頼性が大幅に改善される。
【0193】
【発明の効果】本発明によれば、CMOS−TFTのしきい値電圧を容易且つ確実に高精度に設定することを可能とする半導体装置の製造方法及びしきい値電圧が高精度に設定されたCMOS−TFTを有する半導体装置が実現する。
【0194】また、本発明によれば、電気特性が異なりそれぞれ動作電圧の異なる複数種のCMOS−TFTを備えた画像表示装置について、各しきい値電圧を容易且つ確実に高精度に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態におけるCMOS−TFTの主要構成を示す概略断面図である。
【図2】アモルファスシリコン膜の成膜時でのしきい値電圧及びゼロ電流のp型不純物(B)添加の濃度依存性を示す特性図である。
【図3】CMOS−TFTのチャネル深さ方向についてのp型不純物(B)濃度分布を示す特性図である。
【図4】p型不純物(B)添加によるId −Ig 特性の変化を示す特性図である。
【図5】第2の実施形態におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図6】図5に引き続き、CMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図7】非質量分離型イオンドーピング装置の主要構成を示す概略図である。
【図8】DCイオンドーピング装置による低ドーズ量ドーピングの実験例を示す特性図である。
【図9】第2の実施形態の変形例1におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図10】第2の実施形態の変形例2におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図11】第2の実施形態の変形例3におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図12】図11に引き続き、CMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図13】第2の実施形態の変形例4におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図14】第2の実施形態の変形例5におけるCMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図15】図14に引き続き、CMOS−TFTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図16】第3の実施形態の液晶表示装置の主要構成を示す概略平面図である。
【図17】液晶表示装置の各駆動回路の主要構成を示す概略平面図である。
【図18】液晶表示装置のゲート側駆動回路の主要構成を示す概略平面図である。
【図19】液晶表示装置の構成要素であるCMOS−TFTの機能を製造方法を説明するための模式図である。
【図20】液晶表示装置の信号側駆動回路において、シフトレジスタ及びバッファの主要構成を示す概略回路図である。
【図21】液晶表示装置の信号側駆動回路において、シフトレジスタのフリップフロップ部とバッファの主要構成を示す概略回路図である。
【図22】液晶表示装置の信号側駆動回路において、アナログスイッチの主要構成を示す概略回路図である。
【図23】各回路機能に応じてCMOS−TFT及び画素TFTのしきい値電圧を設定する原理説明図である。
【図24】各回路機能に応じてCMOS−TFT及び画素TFTのしきい値電圧を設定する原理説明図である。
【図25】液晶表示装置の画素セルの主要構成を示す概略回路図である。
【図26】第3の実施形態の変形例の液晶表示装置の主要構成を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下地絶縁膜
3,51,71 p型TFT
4,52,72 n型TFT
5,62 ゲート絶縁膜
6,50,61 ゲート電極
7 層間絶縁膜
8 コンタクト孔
9 金属配線膜
11,12,65,66 動作半導体層
11a,11b チャネル領域
11b p- 領域
11c p+ 領域
12b n- 領域
12c n+ 領域
13,14,47,49,73,74 ソース/ドレイン
21 アモルファスシリコン膜
22,34 p--多結晶シリコン膜
23,43,44,45,67,68 レジストマスク
31 ノンドープのアモルファスシリコン膜
32 ノンドープの多結晶シリコン膜
33 保護膜
35 p型TFT領域
36 n型TFT領域
41 シリコン酸化膜(ゲート絶縁膜)
42 アルミニウム合金膜
46,48 LDD層
63 p--アモルファスシリコン膜
64 保護膜
101 プラズマ室
102 引き出し電極
103 チャンバー
104 DCフィラメント型イオン源
105 原料ガスの導入口
106 DC電源
201 液晶表示装置
202,232 TFT基板
203,233 表示部
204,234 信号側駆動回路
205,235 ゲート側駆動回路
206,247 コモン基板
209 低電圧部
210 高電圧部
211 レベル変換回路
212 双方向スイッチ
213,217 シフトレジスタ
214 マルチプレクサ
215 画素セル
216,218 バッファ部
219 フリップフロップ
220 アナログスイッチ
221 画素TFT
222 走査線
223 信号線
235,250,253,254,255,258,259 CMOS−TFT
241 液晶セル
242 キャパシタ
243,252,257 p型TFT
244,251,256 n型TFT
260 ビデオ信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS型の半導体装置の製造方法において、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域を含む全体に、非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに、選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び前記選択的添加により、前記p型及びn型薄膜トランジスタのしきい値電圧をそれぞれ独立に設定することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の厚み方向にほぼ均一又はブロードに変化する濃度分布となるように行い、前記選択的添加は、前記薄膜の厚み方向について表面近傍にピークをもつ濃度分布となるように行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】 前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の形成時にガス添加又はイオンドーピングにより行ない、前記選択的添加は、イオンドーピングにより行なうことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】 前記動作半導体層となる薄膜を非晶質シリコン膜として前記非選択的添加を施した後、前記非晶質シリコン膜にレーザ光を照射して結晶化させる工程を含み、しかる後、前記多結晶シリコン膜に前記選択的添加を施すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】 非晶質シリコン膜にレーザ光を照射して結晶化させて多結晶シリコン膜を形成する工程を含み、しかる後、前記動作半導体層となる薄膜を前記多結晶のシリコン膜として前記非選択的添加を施すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】 前記選択的添加を施した後、前記動作半導体層となる薄膜を前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域にそれぞれ島状に分離形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】 前記非選択的添加を施した後、前記動作半導体層となる薄膜を前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域にそれぞれ島状に分離形成する工程を含み、しかる後、前記選択的添加を施すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】 前記各島状の領域の上層にゲート絶縁膜を介してゲート電極をパターン形成する工程を含み、しかる後、p型不純物が前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜を通過して前記ゲート電極下に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加を施すことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】 ゲート電極をパターン形成する工程と、前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程とを含み、しかる後、前記ゲート絶縁膜上に前記動作半導体層となる薄膜を形成し、前記非選択的添加及び前記選択的添加を施すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】 前記非選択的添加が施された前記薄膜から分離形成された前記各島状の領域の上層に、ゲート絶縁膜及びゲート電極を前記島状の領域、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極の順に幅狭となるようにパターン形成する工程を有し、前記選択的添加を、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、p型不純物が前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜を通過して前記ゲート電極下に対応する前記島状の領域内に止まる条件で行い、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のn型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まるような更なる高濃度のn型不純物の添加とを施す工程と、p型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のp型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で更なる高濃度のp型不純物の添加とを施す工程とを含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】 前記非選択的添加が施された前記薄膜から分離形成された前記各島状の領域の上層に、ゲート絶縁膜及びゲート電極を前記島状の領域、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極の順に幅狭となるようにパターン形成する工程と、前記各島状の領域を含む全体に、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で前記選択的添加に比して高濃度のp型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で更なる高濃度のp型不純物の添加とを施す工程とを有し、前記選択的添加を、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、p型不純物が前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜を通過して前記ゲート電極下に対応する前記島状の領域内に止まる条件で行い、n型となる前記島状の領域側のみ露出させた状態で、前記ゲート絶縁膜の露出部位を通過して当該露出部位に対応する前記島状の領域内に止まる条件で対応する部位がn型となり得る濃度のn型不純物の添加と、前記島状の領域の露出部位内に止まる条件で対応する部位がn型となり得る濃度のn型不純物の添加とを施す工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】 p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなり、動作電圧の異なる少なくとも2種の素子群に分類される複数のCMOSトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域に非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び/又は前記選択的添加を、前記各素子群の全体に対して前記各素子群に必要な所定回数だけ順次行なうことにより、前記各素子群毎に前記各動作電圧に応じたしきい値電圧を設定し、前記各素子群を構成する前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧を独立に設定することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】 前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の形成時にガス添加又はイオンドーピングにより行ない、前記選択的添加は、イオンドーピングにより行なうことを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】 複数の画素が行列状に配設されてなる画像表示部と、前記画像表示部の行方向を駆動制御する第1の制御回路と、前記画像表示部の列方向を駆動制御する第2の制御回路とを含む画像表示装置の製造方法において、前記画像表示部、前記第1及び第2の制御回路の少なくとも1つに設けられ、p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなる動作電圧の異なる各CMOSトランジスタを形成するに際して、動作半導体層となる薄膜の前記p型及びn型の薄膜トランジスタとなる領域に非選択的にp型不純物を添加する工程と、前記薄膜の前記n型の薄膜トランジスタとなる領域のみに選択的にp型不純物を前記非選択的添加に比して高濃度となるように添加する工程と、前記薄膜を熱処理して添加されたp型不純物を活性化する工程とを含み、前記非選択的添加及び/又は前記選択的添加を、それぞれ前記各CMOSトランジスタに必要な所定回数だけ順次行なうことにより、前記各動作電圧に応じて前記p型及びn型の各薄膜トランジスタのしきい値電圧を独立に設定することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項15】 前記画像表示部は、液晶セルを前記画素として有するとともに動作電圧の高いCMOSトランジスタを有しており、前記第1の制御回路は、比較的動作電圧の低いCMOSトランジスタを有する低電圧動作部と、前記動作電圧の高いCMOSトランジスタを有する高電圧動作部とを備えて構成されていることを特徴とする請求項14に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項16】 前記非選択的添加は、前記動作半導体層となる薄膜の形成時にガス添加又はイオンドーピングにより行ない、前記選択的添加は、イオンドーピングにより行なうことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】 p型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなるCMOS型の半導体装置において、前記p型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向にほぼ均一又はブロードに変化する濃度分布にp型不純物が1×1018/cm3 以下の濃度となるように添加されてなる第1の動作半導体層を有しており、前記n型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向について表面近傍にピークをもつ濃度分布にp型不純物が前記第1の動作半導体層に比して高濃度となるように添加されてなる第2の動作半導体層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項18】 前記p型及びn型の各薄膜トランジスタは、各動作半導体層、ゲート絶縁膜、ゲート電極がこの順に幅狭となるように形成されており、前記各動作半導体層のソース/ドレインが前記各幅に対応したLDD構造とされていることを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】 前記各薄膜トランジスタのソース/ドレインの下層にゲート絶縁膜を介してゲート電極がパターン形成されていることを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項20】 複数の画素が行列状に配置された画像表示部と、前記画像表示部の行方向を駆動制御する第1の制御回路と、前記画像表示部の列方向を駆動制御する第2の制御回路とを備え、前記画像表示部、前記第1の制御回路及び前記第2の制御回路の少なくとも1つの構成要素としてp型及びn型の各薄膜トランジスタが形成されてなる動作電圧の異なる各CMOSトランジスタを備え、前記p型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向にほぼ均一又はブロードに変化する濃度分布となるようにp型不純物が添加されてなる第1の動作半導体層を有しており、前記n型薄膜トランジスタは、そのチャネル領域に厚み方向について表面近傍にピークをもつ濃度分布にp型不純物が前記第1の動作半導体層に比して高濃度となるように添加されてなる第2の動作半導体層を有するように構成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項21】 前記p型薄膜トランジスタの前記チャネル領域のp型不純物濃度が1×1018/cm3 以下とされていることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】 前記画像表示部は、液晶セルを前記画素として有するとともに動作電圧の高いCMOSトランジスタを有しており、前記第1の制御回路は、比較的動作電圧の低いCMOSトランジスタを有するシフトレジスタと、前記動作電圧の高いCMOSトランジスタを有する出力バッファーとを備えて構成されていることを特徴とする請求項20に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2000−196096(P2000−196096A)
【公開日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−371901
【出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】