説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】ストレスライナー膜などにおいて膜割れを発生させることなくチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させる。
【解決手段】半導体装置では、NMOSトランジスタのゲート電極103の側面の横に、サイドウォール107が設けられている。サイドウォール107の高さはゲート電極103の高さの1/3以下であり、半導体基板100の上面における幅はゲート電極103とn型ソース領域またはn型ドレイン領域108との間隔以下である。また、ゲート電極103およびサイドウォール107を覆うように1.7GPa以上の引張り応力を有するストレスライナー膜111が半導体基板の上面に設けられており、その膜厚は25nm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びその製造方法に関わり、特にライナーSiN膜(ストレスライナー膜)を有する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置における大容量化は著しく、ゲート電極の幅を40nm以下にするところにまでMOS(mental-oxide semiconductor)トランジスタの微細化は進展している。また、半導体装置の高速処理化に対応して、トランジタのチャネル領域にストレスを印加することで半導体装置の駆動力を上げるという歪技術も既に実用化されている。
【0003】
トランジスタのチャネル領域に歪を導入すると、チャネル領域のバンド構造が変化し、結果としてチャネル領域のキャリアの有効質量が変化してバンド占有率の変化等が起こり、チャネル領域におけるキャリア移動度が変化する。
【0004】
チャネル領域に歪を入れるためには、チャネル領域にストレスを印加すればよい。チャネル領域へ印加するストレスは、NMOS(negative channel mental-oxide semiconductor)トランジスタのチャネル領域にストレスを印加する場合とPMOS(positive channel mental-oxide semiconductor)トランジスタのチャネル領域にストレスを印加する場合とで相異なり、NMOSトランジスタでは引張り応力をPMOSトランジスタでは圧縮応力をチャネル領域へ印加すればよいということが知られている。
【0005】
トランジスタのチャネル領域におけるキャリア移動度を上げる技術として最も簡易な歪技術は、膜応力を持つSiN膜をコンタクトライナー膜に使用することである(特許文献1を参照。)。 この場合、コンタクトライナー膜としては、NMOSトランジスタには引張り応力をもつSiN膜を使用し、PMOSトランジスタには圧縮応力をもつSiN膜を使用する。また、チャネル領域におけるキャリア移動度をさらに上げるためには、チャネル領域へ印加するストレスを増やせばよく、そのためにはコンタクトライナーSiN膜を分厚くすればよい。
【特許文献1】特開2003−60076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MOSトランジスタの微細化が進むにつれMOSトランジスタ間距離も益々狭くなってきており、ライナーSiN膜の膜厚を厚くすることが難くなってきている。この問題の解決策としては、例えば文献X. Chen et.al., VLSI p74, 2006に開示されているように、トランジスタからサイドウォール部をなくすことでライナーSiN膜の膜厚を上げる方法が提案されている。
【0007】
ところが、トランジスタからサイドウォール部をなくしてライナーSiN膜を分厚くすると、以下に示す2つの問題が発生することがわかった。
【0008】
第1の問題としては、NMOSトランジスタのストレスライナー膜の膜厚を25nm以上厚くしてもチャネル領域におけるキャリア移動度を上げることができないということである。NMOSトランジスタにライナーSiN膜を設ける方法としては、SiN膜を成膜したのちにそのSiN膜に対して膜収縮を起こさせることにより引張り応力を発生させるという方法が取られる。しかしながら、ライナーSiN膜を膜厚にすると、膜を収縮させる工程において、ゲート電極の横においてライナーSiN膜に割れが発生する。その理由としては、ライナーSiN膜が膜厚になると、ライナーSiN膜を収縮させる際の収縮長が長くなるのでゲート電極の側面では上方および横方向への引張り力が大きくなり、その結果、ゲート電極とライナーSiN膜との境界においてライナーSiN膜に割れが発生するからであろうと考えられる。ライナーSiN膜に割れが発生すると、チャネル領域へストレスを有効に印加することができなくなり、チャネル領域におけるキャリア移動度の向上が図れなくなる。
【0009】
第2の問題としては、ライナーSiN膜を膜厚にすると、トランジスタのチャネル領域へ印加されるストレスが大きくなるだけでなく、ゲート電極の側面上に設けられたオフセットサイドウォールへ掛かるストレスも大きくなりゲート電極とオフセットサイドウォールとの界面で剥離が発生してしまうということである。オフセットサイドウォールがゲート電極の側面から剥がれてしまうと、ライナーSiN膜からのストレスがチャネル領域へ有効に掛からなくなり、チャネル領域におけるキャリア移動度の向上が図れなくなる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ストレスライナー膜などにおいて割れが生じることなくチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置では、NMOSトランジスタのゲート電極の側面上にはオフセットサイドウォールが設けられており、オフセットサイドウォールの横にはサイドウォールが設けられている。サイドウォールの高さはゲート電極の高さの1/3以下であり、半導体基板の上面における幅はゲート電極とn型ソース領域またはn型ドレイン領域との間隔以下である。また、ゲート電極およびサイドウォールを覆うように1.7GPa以上の引張り応力を有するストレスライナー膜が半導体基板の上面に設けられており、その膜厚は25nm以上である。
【0012】
上記構成では、NMOSトランジスタがこのようなサイドウォールを有しているので、ストレスライナー膜を形成するときには、ストレスライナー膜を横方向に引っ張ったときの引張り力の方向とストレスライナー膜を上方向に引っ張ったときの引張り力の方向とがなす角度が90度より大きくなり、ストレスライナー膜の膜厚が25nm以上であってもストレスライナー膜における膜割れの発生を防止することができる。よって、ストレスライナー膜の厚膜化とストレスライナー膜における膜割れの防止とを両立させることが可能になり、ストレスライナー膜において膜割れが生じることなくチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。なお、ストレスライナー膜は25nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の半導体装置では、半導体基板内にNMOSトランジスタとPMOSトランジスタとを分離するための分離領域が設けられており、ゲート電極の横に設けられたサイドウォールの高さは、NMOSトランジスタではゲート電極の高さの1/3以下であるが、PMOSトランジスタではゲート電極の高さと略同一であることが好ましい。
【0014】
これにより、NMOSトランジスタでは、ストレスライナー膜の厚膜化とストレスライナー膜における膜割れの防止とを両立させることが可能になり、PMOSトランジスタでは、ストレスライナー膜からチャネル領域へ印加される引張応力を抑制できる。
【0015】
本発明の半導体装置では、オフセットサイドウォールは、ゲート電極を酸化して形成されていても良い。
【0016】
これにより、オフセットサイドウォールとゲート電極との密着性を上げることができる。よって、ストレスライナー膜の膜厚を25nm以上とすることによりチャネル領域に印加されるストレスを大きくしても、オフセットサイドウォールがゲート電極から剥がれることを防止できる。
【0017】
本発明の半導体装置では、断面L字状の第2サイドウォールが、オフセットサイドウォールの側面および半導体基板の上面とサイドウォールとの間に設けられていてもよい。
【0018】
本発明の第1の半導体装置の製造方法では、NMOSトランジスタのゲート電極の横にサイドウォールを形成する際には、サイドウォールの高さをゲート電極の高さの1/3以下とし、半導体基板の上面におけるサイドウォールの幅をゲート電極とn型ソース領域またはn型ドレイン領域との間の間隔以下とする。また、ゲート電極、オフセットサイドウォールおよびサイドウォールを覆うように、引張り応力が1.7GPa以上であるストレスライナー膜を設ける。このとき、その膜厚を25nm以上とする。
【0019】
上記方法では、ストレスライナー膜を形成するときには、ストレスライナー膜を横方向に引っ張ったときの引張り力の方向とストレスライナー膜を上方向に引っ張ったときの引張り力の方向とがなす角度が90度より大きくなる。よって、膜厚が25nm以上であるストレスライナー膜を設けても、ストレスライナー膜における膜割れの発生を防止することができる。よって、膜割れが生じることなくストレスライナー膜を設けることができるとともに、チャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第2の半導体装置の製造方法では、まず、半導体基板内にNMOSトランジスタ形成領域とPMOSトランジスタ形成領域とを区切るための分離領域を設ける。その後、ゲート電極の横にサイドウォールを形成するが、NMOSトランジスタのゲート電極の横にサイドウォールを形成する際には、サイドウォールの高さをゲート電極の高さの1/3以下とし、半導体基板の上面におけるサイドウォールの幅をゲート電極とn型ソース領域またはn型ドレイン領域との間の間隔以下とする。一方、PMOSトランジスタのゲート電極の横にサイドウォールを形成する際には、サイドウォールの高さをゲート電極の高さと略同一とする。それから、ゲート電極、オフセットサイドウォールおよびサイドウォールを覆うように、引張り応力が1.7GPa以上であるストレスライナー膜を半導体基板の上面上に設ける。このとき、その膜厚を25nm以上とする。
【0021】
上記方法では、NMOSトランジスタ形成領域では、膜割れが生じることなく分厚いストレスライナー膜を設けることができる。よって、NMOSトランジスタのチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【0022】
また、PNMOトランジスタでは、ストレスライナー膜からチャネル領域へ印加される引張応力を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
ストレスライナー膜などにおいて膜割れが生じることなくチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、同一の構成要件には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0025】
(第1の実施形態)
図1には、本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の構造を示す。図2(a)〜(e)には、本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す。
【0026】
本実施形態では、半導体装置としてNMOSトランジスタを例に挙げ、その製法および構成を説明する。以下では、まず、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す。
【0027】
図2(a)に示す工程では、公知の方法を用いて、まず、半導体基板(例えば、シリコン基板)100内にシャロートレンチ(分離領域)101を形成し、次に、半導体基板100の上面にゲート絶縁膜102およびゲート電極103を順に形成し、その後、ゲート電極103の側面にオフセットサイドウォール104を形成する。ここで、ゲート電極103の電極材料としてはポリシリコンまたはTiNなどのメタルを用いることができ、オフセットサイドウォール104としてはSiO2膜を用いることができる。
【0028】
図2(b)に示す工程では、まず、イオン注入法を用いて、半導体基板100内にn型エクステンション領域105を形成する。次に、ゲート電極103の上面と面一となるように半導体基板100の上面にSiO2膜を堆積させたのちに、SiO2膜に対してドライエッチングを行う。これにより、オフセットサイドウォール104の表面および半導体基板100の上面の一部分を覆うように、断面L字状のサイドウォール(第2サイドウォール)106が形成される。その後、ゲート電極103の上面と面一となるように半導体基板100の上面にSiN膜を堆積させた後、SiN膜に対してドライエッチングを行う。例えばLP-CVDによりSiN膜を30nm程度成膜した後、ドライエッチでエッチバックする。これにより、サイドウォール106を覆うように、サイドウォール107が形成される。
【0029】
図2(c)に示す工程では、まず、イオン注入法および活性化アニール法により、半導体基板100内にn型ソース・ドレイン領域108を形成する。このとき、サイドウォール107は、n型ソース・ドレイン領域108をイオン注入により形成する際のセルフアライメントのマスクとして機能する。その後、ゲート電極103およびn型ソース・ドレイン領域108をシリサイド化させ、シリサイド層109を形成する。
【0030】
図2(d)に示す工程では、サイドウォール107をエッチングして、サイドウォール110とする。このエッチングにより、サイドウォール110の高さをゲート電極103の高さの1/3以下とし、半導体基板100の上面におけるサイドウォール110の幅をn型ソース領域(またはドレイン領域)108とゲート電極103との間隔以下とする。エッチング方法としては、例えば熱燐酸によるウエットエッチを採用することができる。
【0031】
図2(e)に示す工程では、ストレスライナー膜111をゲート電極103およびサイドウォール110を覆うように半導体基板100の上面に設ける。ストレスライナー膜111としては1.7GPa以上の引張応力を持つSiN膜を用いることが好ましく、膜厚が25nm以上100nm以下となるようにストレスライナー膜111を設けることが好ましい。具体的には、300℃でSiH4ガスおよびNH3ガスを流してCVD(Chemical Vapor Deposition)法でHリッチなSiN膜を形成した後、400℃で紫外光を照射してHを脱離させると、SiN膜で膜収縮が起こり、その結果、SiN膜の引張り応力を1.7GPa以上とすることができる。このとき、SiN膜の膜収縮率は10%以上であることが好ましい。これにより、本実施形態にかかる半導体装置を製造することができる。
【0032】
上記方法を用いて製造された半導体装置の構造を簡単に記すと、半導体基板100の上面には、ゲート絶縁膜102およびゲート電極103が順に設けられており、ゲート電極103の側面にはオフセットサイドウォール104が設けられている。オフセットサイドウォール104の横には、断面L字状のSiO2膜からなるサイドウォール106が設けられており、サイドウォール106の上には、SiN膜からなるサイドウォール110が設けられている。また、ストレスライナー膜111が、ゲート電極103およびサイドウォール110を覆うように半導体基板100の上に設けられている。
【0033】
サイドウォール110の高さはゲート電極103の高さの1/3以下であり、半導体基板100の上面におけるサイドウォール110幅はゲート電極103とn型ソース領域またはドレイン領域108との間隔以下である。ストレスライナー膜111は1.7GPa以上の引張応力を持ち、その膜厚は25nm以上100nm以下である。
【0034】
このように、本実施形態の半導体装置ではサイドウォール110の高さがゲート電極103の高さの1/3以下であるとともに半導体基板100の上面におけるサイドウォール110の幅がゲート電極103とn型ソース領域またはドレイン領域108との間隔以下である。よって、ストレスライナー膜111を分厚くしても(例えば、膜厚を25nm以上としても)、ストレスライナー膜111の形成時には、ストレスライナー膜を横方向に引っ張ったときの引張り力の方向とストレスライナー膜を上方向に引っ張ったときの引張り力の方向とがなす角度は90度より大きくなる。よって、ストレスライナー膜111において膜割れが発生することなくストレスライナー膜111を膜厚にすることができるので、NMOSトランジスタのチャネル領域へ印加するストレスを有効に増大させることができる。これにより、本実施形態では、半導体装置のチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態では、断面L字状のサイドウォール106が設けられていなくても良い。その場合には、オフセットサイドウォール104の横には、サイドウォール110が設けられていればよい。
【0036】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、半導体装置の具体例としてNMOSトランジスタを例に挙げ、その構成および製造方法を説明した。本発明の第2の実施形態では、半導体装置の具体例としてCMOS(complementary mental-oxide semiconductor)トランジスタを例に挙げ、その構成および製造方法を説明する。
【0037】
図3には、本発明の第2の実施形態にかかるCMOSトランジスタの構造を示す。図4(a)〜図5(c)には、本発明の第2の実施形態にかかるCMOSトランジスタの製造方法を示す。
【0038】
図4(a)に示す工程では、まず、半導体基板100内にシャロートレンチ101を形成し、半導体基板100をNMOSトランジスタ形成領域Tr._NとPMOSトランジスタ形成領域Tr._Pとに分離する。次に、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nでは、半導体基板100の上面上にゲート絶縁膜102およびゲート電極103を順に形成した後、ゲート電極103の側面にオフセットサイドウォール104を形成し、その後、イオン注入法により半導体基板100内にn型エクステンション領域105を形成する。また、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pでは、半導体基板100の上面上にゲート絶縁膜102およびゲート電極203を順に形成した後、ゲート電極203の側面にオフセットサイドウォール104を形成し、その後、イオン注入法により半導体基板100内にp型エクステンション領域205を形成する。
【0039】
図4(b)に示す工程では、NMOSトランジスタ形成領域Tr._NとPMOSトランジスタ形成領域Tr._Pとにおいて、それぞれ、断面L字状のサイドウォール106をゲート電極103,203の横に形成した後、サイドウォール107をサイドウォール106の上に形成する。その後、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nには、半導体基板100内にn型ソース・ドレイン領域108を形成し、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pには、半導体基板100内にp型ソース・ドレイン領域208を形成する。
【0040】
図4(c)に示す工程では、ゲート電極103,203とn型ソース・ドレイン領域108とp型ソース・ドレイン領域208とをシリサイド化させ、シリサイド層109を形成する。
【0041】
図5(a)に示す工程では、ゲート電極103,203とサイドウォール107とを覆うように半導体基板100の上面にSiO2膜を設け、その後、SiO2膜のうちPMOSトランジスタ形成領域Tr._P内に設けられた部分のみを残存させるようにSiO2膜をエッチングする。これにより、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pにマスク212を形成することができる。このとき、マスクの厚みを20nm程度とすることが好ましい。
【0042】
図5(b)に示す工程では、サイドウォール107に対してエッチングを行う。このエッチングにより、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nに形成されたサイドウォール107はエッチングされてサイドウォール110となる。具体的には、上記第1の実施形態で記載したように、サイドウォール110の高さはゲート電極103の高さの1/3以下となり、半導体基板100の上面におけるサイドウォール110の幅はゲート電極103とn型ソース領域またはドレイン領域108との間隔以下となる。一方、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pに形成されたサイドウォール107は、マスク212に覆われているのでエッチングされない。その後、マスク212を除去する。
【0043】
図5(c)に示す工程では、図2(e)に示す工程と同じく、ゲート電極103,203およびサイドウォール107,110を覆うように半導体基板100の上面にストレスライナー膜111を設ける。
【0044】
上記方法を用いて製造された半導体装置の構造を簡単に記すと、半導体装置は、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとを備えている。NMOSトランジスタは上記第1の実施形態にかかる半導体装置と同一の構造を有しており、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとではサイドウォールの形状が相異なる。具体的には、NMOSトランジスタでは、断面L字状のサイドウォール106の横には、高さがゲート電極103の高さの1/3以下であり、半導体基板100の上面における幅がゲート電極103とn型ソース・ドレイン領域108との間隔以下であるサイドウォール110が設けられている。一方PMOSトランジスタでは、断面L字状のサイドウォール106の横には、高さがゲート電極203の高さと略同一のサイドウォール107が設けられている。
【0045】
このように、本実施形態の半導体装置では、NMOSトランジスタのゲート電極103の側面の上には、上記第1の実施形態と同じように、サイドウォール110が設けられている。そのため、ストレスライナー膜111の膜厚を25nm以上としても、ストレスライナー膜111の形成時にはストレスライナー膜を横方向に引っ張ったときの引張り力の方向とストレスライナー膜を上方向に引っ張ったときの引張り力の方向とがなす角度が90度より大きくなる。よって、ストレスライナー膜111の膜割れを発生させることなくストレスライナー膜111を膜厚にすることができるので、NMOSトランジスタのチャネル領域へ印加するストレスを有効に増大させることができる。
【0046】
また、本実施形態の半導体装置では、PMOSトランジスタのゲート電極203の側面の上には、ゲート電極203の高さと同一の高さを有するサイドウォール107が設けられている。よって、ストレスライナー膜111からチャネル領域へ印加される引張応力を抑制できる。これにより、本実施形態では、半導体装置のチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同じく、断面L字状のサイドウォール106が設けられていなくても良い。その場合には、オフセットサイドウォール104の横には、サイドウォール107,110が設けられていればよい。
【0048】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、上記第2の実施形態の変形である。具体的には、上記第2の実施形態ではゲート電極の側面上にSiO2膜を堆積させているが、本実施形態ではゲート電極の側面を酸化させている。以下、具体的に説明する。
【0049】
図6(a)〜図7(c)には、本発明の第3の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す。
【0050】
図6(a)に示す工程では、まず、半導体基板100内にシャロートレンチ101を形成し、半導体基板100をNMOSトランジスタ形成領域Tr._NとPMOSトランジスタ形成領域Tr._Pとに分離する。次に、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nでは、半導体基板100の上面上にゲート絶縁膜102およびゲート電極103を順に形成し、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pでは、半導体基板100の上面上にゲート絶縁膜102およびゲート電極203を順に形成する。
【0051】
図6(b)に示す工程では、まず、プラズマ酸化を行って、基板の上面のうち露出している部分とゲート電極103,203の表面とを酸化させる。これにより、例えば5nmの厚さの酸化膜304が形成される。次に、イオン注入法により、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nでは半導体基板100内にn型エクステンション領域105を形成し、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pでは半導体基板100内にp型エクステンション領域205を形成する。
【0052】
図6(c)に示す工程では、まず、半導体基板100の上面にSiN膜を設けた後、そのSiN膜にドライエッチングを行う。これにより、酸化膜304のうちゲート電極103,203の側面上に形成された部分を覆うように、サイドウォール107が形成される。その後、イオン注入法及び活性化アニール法により、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nでは半導体基板100内にn型ソース・ドレイン領域108を形成し、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pでは半導体基板100内にp型ソース・ドレイン領域208を形成する。
【0053】
図6(d)に示す工程では、まず、サイドウォール107をマスクとして酸化膜304をドライエッチングする。これにより、酸化膜304は、ゲート電極103,203の側面とサイドウォール107との間、および、サイドウォール107と半導体基板100との間にのみ、残存する。ここで、酸化膜304のうちゲート電極103,203の側面に設けられた部分は上記第1の実施形態におけるオフセットサイドウォール104と略同一の機能を奏する。その後、酸化膜304が除去された部分をシリサイド化して、シリサイド層109を形成する。
【0054】
図7(a)に示す工程では、図5(a)に示す工程と同じく、ゲート電極103,203とサイドウォール107とを覆うように半導体基板100の上面にSiO2膜を設け、その後、その後、SiO2膜のうちPMOSトランジスタ形成領域Tr._P内に設けられた部分のみを残存させるようにSiO2膜をエッチングする。これにより、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pにマスク212を形成することができる。
【0055】
図7(b)に示す工程では、図5(b)に示す工程と同じく、サイドウォール107をエッチングする。このエッチングにより、NMOSトランジスタ形成領域Tr._Nでは、サイドウォール107がエッチングされてサイドウォール110となる。一方、PMOSトランジスタ形成領域Tr._Pでは、サイドウォール107はマスク212に覆われているのでエッチングされない。その後、マスク212を除去する。
【0056】
図7(c)に示す工程では、図2(e)に示す工程と同じく、ストレスライナー膜111をゲート電極103,203を覆うように半導体基板100の上面に設ける。
【0057】
上記方法を用いて製造された半導体装置の構造は、上記第2の実施形態における半導体装置の構造と酷似しているが、上記第2の実施形態では、オフセットサイドウォール104とサイドウォール107またはサイドウォール110との間に断面略L字状のサイドウォール106が設けられているが、本実施形態では、断面略L字状のサイドウォール106が設けられていない。そのため、酸化膜304の上に、サイドウォール107または110が設けられている。
【0058】
このように、半導体装置が断面L字状のサイドウォールを備えていなくても、本実施形態にかかる半導体装置は上記第2の実施形態に記載のようにかかる半導体装置と略同一の効果を奏する。具体的には、NMOSトランジスタでは、ストレスライナー膜111の膜厚を25nm以上としても、ストレスライナー膜111の形成時にはストレスライナー膜を横方向に引っ張ったときの引張り力の方向とストレスライナー膜を上方向に引っ張ったときの引張り力の方向とがなす角度が90度より大きくなる。よって、ストレスライナー膜111の膜割れを発生させることなくストレスライナー膜111を膜厚にすることができる。また、PMOSトランジスタでは、ストレスライナー膜111からチャネル領域へ印加される引張応力を抑制できる。これにより、本実施形態では、半導体装置のチャネル領域におけるキャリア移動度を向上させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、ゲート電極103,203の酸化により形成された酸化膜304をオフセットサイドウォールとして用いているので、ストレス印加によるオフセットサイドウォールの膜剥がれを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、膜応力を有するライナーSiN膜を有するとともにゲート幅が40nm程度以下であるMOSトランジスタを備えた半導体装置の製造方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の構成を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の前半部分を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の後半部分を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の前半部分を示す断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の後半部分を示す断面図。
【符号の説明】
【0062】
100 半導体基板
101 シャロートレンチ
102 ゲート絶縁膜
103 ゲート電極
104 オフセットサイドウォール
105 n型エクステンション領域
106 サイドウォール
107 サイドウォール
108 n型ソース・ドレイン領域
109 シリサイド層
110 サイドウォール
111 ストレスライナー膜
203 ゲート電極
205 p型エクステンション領域
208 p型ソース・ドレイン領域
212 マスク
304 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMOSトランジスタを備え、
前記NMOSトランジスタは、
半導体基板内に互いに間隔を開けて配置されたn型ソース領域およびn型ドレイン領域と、
前記半導体基板のうち前記n型ソース領域と前記n型ドレイン領域との間に挟まれたチャネル領域上に、ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側面上に設けられたオフセットサイドウォールと、
前記オフセットサイドウォールの側面の一部分を覆うように前記半導体基板の上面の上に設けられ、SiN膜からなるサイドウォールと、
前記ゲート電極と前記サイドウォールとを覆うように前記半導体基板の前記上面の上に設けられ、1.7GPa以上の引張り応力を有するストレスライナー膜とを有し、
前記サイドウォールの高さは、前記ゲート電極の高さの1/3以下であり、
前記半導体基板の前記上面における前記サイドウォールの幅は、前記ゲート電極と前記n型ソース領域または前記n型ドレイン領域との間隔以下であり、
前記ストレスライナー膜の膜厚は、25nm以上である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板内には、前記NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとを分離するための分離領域が設けられており、
前記PMOSトランジスタは、
前記半導体基板内で互いに間隔を開けて配置されたp型ソース領域およびp型ドレイン領域と、
前記半導体基板のうち前記p型ソース領域と前記p型ドレイン領域との間に挟まれたチャネル領域上に、ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側面上に設けられたオフセットサイドウォールと、
前記オフセットサイドウォールの側面の上に設けられ、SiN膜からなるサイドウォールと、
前記ゲート電極と前記サイドウォールとを覆うように前記半導体基板の上面の上に設けられ、1.7GPa以上の引張り応力を有するストレスライナー膜とを有し、
前記サイドウォールの高さは、前記ゲート電極の高さと略同一であり、
前記ストレスライナー膜の膜厚は、25nm以上である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記オフセットサイドウォールは、前記ゲート電極を酸化して形成されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の半導体装置において、
断面L字状の第2サイドウォールが、前記オフセットサイドウォールの側面および前記半導体基板の前記上面と前記サイドウォールとの間に設けられている、半導体装置。
【請求項5】
NMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上面上に、ゲート絶縁膜およびゲート電極を順に設ける工程と、
前記ゲート電極の側面上に、オフセットサイドウォールを設ける工程と、
前記オフセットサイドウォールの側面の一部分を覆うように前記半導体基板の上面の上に、SiN膜からなるサイドウォールを設ける工程と、
前記サイドウォールを設けた後に、イオン注入法により前記半導体基板内にn型ソース領域およびn型ドレイン領域を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記サイドウォールとを覆うように、前記半導体基板の前記上面の上に引張り応力が1.7GPa以上であるストレスライナー膜を設ける工程とを備え、
前記サイドウォールを設ける工程では、前記サイドウォールの高さを前記ゲート電極の高さの1/3以下とし、且つ、前記半導体基板の前記上面における前記サイドウォールの幅を前記ゲート電極と前記n型ソース領域または前記n型ドレイン領域との間隔以下とし、
前記ストレスライナー膜を設ける工程では、前記ストレスライナー膜の膜厚を25nm以上とする、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板内に、PMOSトランジスタ形成領域とNMOSトランジスタ形成領域とを区切るための分離領域を設ける工程と、
前記半導体基板の上面のうち前記PMOSトランジスタ形成領域および前記NMOSトランジスタ形成領域に、それぞれ、ゲート絶縁膜およびゲート電極を順に設ける工程と、
前記ゲート電極の側面上に、それぞれ、オフセットサイドウォールを設ける工程と、
前記オフセットサイドウォールの側面を覆うように前記半導体基板の前記上面の上に、それぞれ、SiN膜からなるサイドウォールを設ける工程と、
前記サイドウォールを設けた後に、イオン注入法により、前記半導体基板内のうち前記PMOSトランジスタ形成領域にp型ソース領域およびp型ドレイン領域を形成し、前記NMOSトランジスタ形成領域にn型ソース領域およびn型ドレイン領域を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記サイドウォールとを覆うように、それぞれ、前記半導体基板の前記上面の上に引張り応力が1.7GPa以上であるストレスライナー膜を設ける工程とを備え、
前記サイドウォールを設ける工程においては、前記NMOSトランジスタ形成領域では、前記サイドウォールの高さを前記ゲート電極の高さの1/3以下とする一方、前記PMOSトランジスタ形成領域では、前記サイドウォールの高さを前記ゲート電極の高さと略同一とし、
前記ストレスライナー膜を設ける工程においては、前記ストレスライナー膜の膜厚を25nm以上とする、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記オフセットサイドウォールを形成する工程では、前記ゲート電極の側壁を酸化する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記オフセットサイドウォールを設けた後に、第2サイドウォールで、前記オフセットサイドウォールの側面および前記半導体基板の前記上面を覆い、
前記第2サイドウォールを設けた後に、前記第2サイドウォールの上に前記サイドウォールを設ける、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−164218(P2009−164218A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340022(P2007−340022)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】