説明

半導体装置の製造方法および基板処理装置

【課題】表面ラフネスが良好な金属酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ウエハを収容した処理容器内に金属原子を含む原料を供給し排気する工程と、処理容器内に反応ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことでウエハ上に金属膜を形成する工程(S5)と、処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで金属膜を酸化させる工程(S6)と、を1セットとして、このセットを所定回数行う(S7)ことによりウエハ上に所定膜厚の金属酸化膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)の高集積化及び高性能化に伴い、ゲート絶縁膜への高誘電率絶縁膜の適用が検討されている。また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のキャパシタにおいては、酸化ハフニウム(HfO)膜や酸化ジルコニウム(ZrO)膜などの高誘電率絶縁膜が使用され、32nm世代以降では、さらに高い誘電率を有するチタン酸ストロンチウム(SrTiO)膜や酸化チタン(TiOx)膜の使用が検討されている。
【0003】
特許文献1には、基板上にチタン酸ストロンチウムまたはチタン酸ストロンチウムバリウムの薄膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、薄膜を形成する工程は、基板上に二酸化チタンの層を数層形成する工程と、数層形成した二酸化チタンの層の上に酸化ストロンチウムと二酸化チタンとを含む積層膜、または酸化バリウムと酸化ストロンチウムと二酸化チタンとを含む積層膜を形成する工程と、を有する半導体装置の製造方法及び基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−170711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、酸化チタン(TiO)膜は、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、TiClのような前駆体(プリカーサ)と、HOもしくはOのような酸化源を用いて成膜される。
しかしながら、TiO膜は低温でも結晶化するため、成膜途中で結晶化が進行し、その膜表面の粗さ(表面ラフネス)が大きいため、これがリーク電流による劣化に繋がる。
また、誘電率を上げるためにはルチル構造を有する結晶体にする必要があるが、結晶構造は下部電極等の影響を受けるため、下部電極上に直接ルチル構造を有するTiO膜を形成することは困難である。
【0006】
本発明は、表面ラフネスが良好な(膜表面の粗さが小さい)金属酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理容器内に金属原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に反応ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成する工程と、前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記金属膜を酸化させる工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にチタン原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に窒化ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化チタン膜を形成する工程と、前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記窒化チタン膜を酸化させる工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の酸化チタン膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に金属原子を含む原料を供給する原料供給系と、前記処理容器内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、前記処理容器内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、基板を収容した前記処理容器内への前記原料の供給および排気と、前記処理容器内への前記反応ガスの供給および排気と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成し、前記処理容器内への前記酸化ガスの供給および排気を行うことで、前記金属膜を酸化させ、これを1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成するように、前記原料供給系、前記反応ガス供給系、前記酸化ガス供給系、前記排気系を制御するコントローラと、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面ラフネスが良好な金属酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウエハ処理時における断面構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウエハ搬送時における断面構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のガス供給系の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程における各ガス供給のタイミングを示す成膜シーケンス図である。
【図6】実施例におけるXPS分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウエハ処理時における断面構成図であり、図2は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウエハ搬送時における断面構成図である。
【0013】
<処理室>
図1及び図2に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は、処理容器12を備えている。処理容器12は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器12は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されている。処理容器12内には、基板としてのウエハ14を処理する処理室16が構成されている。
【0014】
処理室16内には、ウエハ14を支持する支持台18が設けられている。ウエハ14が直接触れる支持台18の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ20が設けられている。また、支持台18には、ウエハ14を加熱する加熱手段としてのヒータ22が内蔵されている。なお、支持台18の下端部は、処理容器12の底部を貫通している。
【0015】
処理室16の外部には、昇降機構24が設けられている。この昇降機構24を作動させることにより、サセプタ20上に支持されるウエハ14を昇降させることが可能となっている。支持台18は、ウエハ14の処理時には図1で示される位置(ウエハ処理位置)まで上昇し、ウエハ14の搬送時には図2で示される位置(ウエハ搬送位置)まで下降する。なお、支持台18の下端部の周囲は、ベローズ26により覆われており、処理室16内は気密に保持されている。
【0016】
また、処理室16の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン28が鉛直方向に設けられている。支持台18には、リフトピン28を貫通させるための貫通孔30が、リフトピン28に対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台18をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン28の上端部が支持台18の上面から突出して、リフトピン28がウエハ14を下方から支持するように構成されている。
【0017】
支持台18をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン28は支持台18の上面から埋没して、支持台18上面に設けられたサセプタ20がウエハ14を下方から支持するように構成される。なお、リフトピン28は、ウエハ14と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0018】
<ウエハ搬送口>
処理室16の内壁側面には、処理室16の内外にウエハ14を搬送するためのウエハ搬送口32が設けられている。ウエハ搬送口32にはゲートバルブ34が設けられており、このゲートバルブ34を開けることにより、処理室16内と搬送室(予備室)36内とが連通するように構成されている。搬送室36は密閉容器39内に形成されており、搬送室36内にはウエハ14を搬送する搬送ロボット38が設けられている。
【0019】
搬送ロボット38には、ウエハ14を搬送する際にウエハ14を支持する搬送アーム38aが備えられている。支持台18をウエハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ34を開くことにより、搬送ロボット38により処理室16内と搬送室36内との間でウエハ14を搬送することが可能なように構成されている。処理室16内に搬送されたウエハ14は、上述したようにリフトピン28上に一時的に載置される。
【0020】
<排気系>
処理室16の内壁側面であって、ウエハ搬送口32の反対側には、処理室16内の雰囲気を排気する排気口40が設けられている。排気口40には排気管42が接続されており、排気管42には、処理室16内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器44、原料回収トラップ46、及び真空ポンプ48が順に直列に接続されている。主に、排気口40、排気管42、圧力調整器44、原料回収トラップ46、真空ポンプ48により排気系(排気ライン)が構成される。
【0021】
<ガス導入口>
処理室16の上部に設けられる後述のシャワーヘッド52の上面(天井壁)には、処理室16内に各種ガスを供給するためのガス導入口50が設けられている。なお、ガス導入口50に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0022】
<シャワーヘッド>
ガス導入口50と、ウエハ処理位置におけるウエハ14との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド52が設けられている。シャワーヘッド52は、ガス導入口50から導入されるガスを分散させるための分散板52aと、分散板52aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台18上のウエハ14の表面に供給するためのシャワー板52bと、を備えている。分散板52a及びシャワー板52bには、複数の通気孔が設けられている。
【0023】
分散板52aは、シャワーヘッド52の上面及びシャワー板52bと対向するように配置されており、シャワー板52bは、支持台18上のウエハ14と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド52の上面と分散板52aとの間、及び分散板52aとシャワー板52bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口50から供給されるガスを分散させるための分散室(第1バッファ空間)52c、及び分散板52aを通過したガスを拡散させるための第2バッファ空間52dとしてそれぞれ機能する。
【0024】
<排気ダクト>
処理室16の内壁側面には、段差部54が設けられている。そして、この段差部54は、コンダクタンスプレート56をウエハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート56は、内周部にウエハ14を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。
【0025】
コンダクタンスプレート56の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口58が設けられている。排出口58は、コンダクタンスプレート56の外周部がコンダクタンスプレート56の内周部を支えることができるよう、不連続に形成される。
【0026】
一方、支持台18の外周部には、ロワープレート60が係止している。ロワープレート60は、リング状の凹部60aと、凹部60aの内側上部に一体的に設けられたフランジ部60bとを備えている。凹部60aは、支持台18の外周部と、処理室16の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられる。
【0027】
凹部60aの底部のうち排気口40付近の一部には、凹部60a内から排気口40側ヘガスを排出(流通)させるためのプレート排気口60cが設けられている。フランジ部60bは、支持台18の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部60bが支持台18の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート60が、支持台18の昇降に伴い、支持台18と共に昇降されるようになっている。
【0028】
支持台18がウエハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート60もウエハ処理位置まで上昇する。その結果、ウエハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート56が、ロワープレート60の凹部60aの上面部分を塞ぎ、凹部60aの内部をガス流路領域とする排気ダクト62が形成されることとなる。
【0029】
このとき、排気ダクト62(コンダクタンスプレート56及びロワープレート60)及び支持台18によって、処理室16内が、排気ダクト62よりも上方の処理室上部と、排気ダクト62よりも下方の処理室下部とに、仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート56及びロワープレート60は、排気ダクト62の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0030】
ここで、ウエハ処理時における処理室16内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口50からシャワーヘッド52の上部へと供給されたガスは、分散室(第1バッファ空間)52cを経て分散板52aの多数の孔から第2バッファ空間52dへと入り、さらにシャワー板52bの多数の孔を通過して処理室16内に供給され、ウエハ14上に均一に供給される。
【0031】
ウエハ14上に供給されたガスは、ウエハ14の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウエハ14に接触した後の余剰なガスは、支持台18の外周に設けられた排気ダクト62上(すなわちコンダクタンスプレート56上)を、ウエハ14の径方向外側に向かって放射状に流れ、排気ダクト62上に設けられた排出口58から、排気ダクト62内のガス流路領域内(凹部60a内)へと排出される。
【0032】
その後、ガスは排気ダクト62内を流れ、プレート排気口60cを経由して排気口40へと排気される。以上の通り、処理室16の下部への、すなわち支持台18の裏面や処理室16の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0033】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口50に接続されるガス供給系の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系(ガス供給ライン)の構成図である。
【0034】
本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、常温で液体状態である液体原料を気化する気化部としてのバブラと、バブラにて液体原料を気化させて得た原料ガスを処理室16内に供給する原料ガス供給系と、原料ガスとは異なる反応ガス(窒化ガス)を処理室16内に供給する反応ガス供給系(窒化ガス供給系)と、酸化ガスを処理室16内に供給する酸化ガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる基板処理装置は、処理室16内にパージガスを供給するパージガス供給系と、バブラからの原料ガスを処理室16内に供給することなく処理室16をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系とを有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0035】
<バブラ>
処理室16の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ80aが設けられている。バブラ80aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ80aの周りには、バブラ80aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ82が設けられている。原料としては、例えば、Ti(チタニウム)元素を含む無機金属液体原料であるTiClが用いられる。なお、原料としては、有機金属液体原料であるTDMAT(Tetrakis−Dimethyl−Amido−Titanium)等の原料を用いるようにしてもよい。
【0036】
バブラ80aには、キャリアガス供給管84aが接続されている。キャリアガス供給管84aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管84aの下流側端部はバブラ80a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管84aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)86aと、キャリアガスの供給を制御するバルブVa1、Va2が設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガスやArガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管84a、MFC86a、バルブVa1、Va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0037】
上記構成により、バルブVa1、Va2を開き、キャリアガス供給管84aからMFC86aで流量制御されたキャリアガスをバブラ80a内に供給することにより、バブラ80a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させることが可能となる。なお、原料ガスの供給流量は、キャリアガスの供給流量から割り出すことができる。すなわち、キャリアガスの供給流量を制御することにより原料ガスの供給流量を制御することができる。
【0038】
<原料ガス供給系>
バブラ80aには、バブラ80a内で生成された原料ガスを処理室16内に供給する原料ガス供給管88aが接続されている。原料ガス供給管88aの上流側端部は、バブラ80aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管88aの下流側端部は、高耐久高速ガスバルブVを介してガス導入口50に接続されている。高耐久高速ガスバルブVは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成されたバルブである。なお、原料ガス供給管88aには、処理室16内への原料ガスの供給を制御するバルブVa3が設けられている。
【0039】
上記構成により、バブラ80aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブVa3を開くことにより、原料ガス供給管88aから処理室16内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管88a、バルブVa3、高耐久高速ガスバルブVにより原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
主に、キャリアガス供給系、バブラ80a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0040】
<反応ガス供給系(窒化ガス供給系)>
処理室16の外部には、反応ガス(窒化ガス)を供給する反応ガス供給源90bが設けられている。反応ガス供給源90bには、反応ガス供給管92bの上流側端部が接続されている。反応ガス供給管92bの下流側端部は、高耐久高速ガスバルブVを介してガス導入口50(図1、2参照)に接続されている。反応ガス供給管92bには、反応ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)86bと、反応ガスの供給を制御するバルブVb1、Vb2が設けられている。反応ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガスが用いられる。
主に、反応ガス供給源90b、反応ガス供給管92b、MFC86b、バルブVb1、Vb2により、反応ガス供給系(反応ガス供給ライン)、すなわち窒化ガス供給系(窒化ガス供給ライン)が構成される。
【0041】
<酸化ガス供給系>
また、処理室16の外部には、酸化ガスを供給する酸化ガス供給源90cが設けられている。酸化ガス供給源90cには、酸化ガス供給管92cの上流側端部が接続されている。酸化ガス供給管92cの下流側端部は、高耐久高速ガスバルブVを介してガス導入口50(図1、2参照)に接続されている。酸化ガス供給管92cには、酸化ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)86cと、酸化ガスの供給を制御するバルブVc1、Vc2が設けられている。酸化ガスとしては、例えばオゾン(O)ガスが用いられる。
主に、酸化ガス供給源90c、酸化ガス供給管92c、MFC86c、バルブVc1、Vc2により、酸化ガス供給系(酸化ガス供給ライン)が構成される。
【0042】
<パージガス供給系>
また、処理室16の外部には、パージガスを供給するためのパージガス供給源90d、90eが設けられている。パージガス供給源90d、90eには、パージガス供給管92d、92eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管92dの下流側端部は反応ガス供給管92bおよび酸化ガス供給管92cに合流して、高耐久高速ガスバルブVを介してガス導入口50に接続されている。パージガス供給管92eの下流側端部は原料ガス供給管88aに合流して、高耐久高速ガスバルブVを介してガス導入口50に接続されている。パージガス供給管92d、92eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)86d、86eと、パージガスの供給を制御するバルブVd1、Vd2、Ve1、Ve2がそれぞれ設けられている。パージガスとしては、例えばNガスやArガス等の不活性ガスが用いられる。
主に、パージガス供給源90d、90e、パージガス供給管92d、92e、MFC86d、86e、バルブVd1、Vd2、Ve1、Ve2により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0043】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管88aのバルブVa3よりも上流側には、ベント管94aの上流側端部が接続されている。また、ベント管94a下流側端部は排気管42の圧力調整器44よりも下流側であって原料回収トラップ46よりも上流側に接続されている。ベント管94aには、ガスの流通を制御するためのバルブVa4が設けられている。
【0044】
上記構成により、バルブVa3を閉じ、バルブVa4を開くことで、原料ガス供給管88a内を流れるガスを、処理室16内に供給することなく、ベント管94aを介して処理室16をバイパスさせ、排気管42より処理室16外へと排気することが可能となる。主に、ベント管94a、バルブVa4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0045】
なお、バブラ80aの周りには、サブヒータ82が設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管84a、原料ガス供給管88a、ベント管94a、排気管42、処理容器12、シャワーヘッド52等の周囲にもサブヒータ82が設けられている。サブヒータ82はこれらの部材を、例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再液化を防止するように構成されている。
【0046】
<コントローラ>
なお、本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ100を有している。コントローラ100は、ゲートバルブ34、昇降機構24、搬送ロボット38、ヒータ22、サブヒータ82、圧力調整器(APC)44、真空ポンプ48、バルブVa1〜Va4、Vb1、Vb2、Vc1、Vc2、Vd1、Vd2、Ve1、Ve2、高耐久高速ガスバルブV、流量コントローラ86a、86b、86c、86d、86e等の動作を制御する。
【0047】
(2)基板処理工程
続いて、本発明の実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いてウエハ上に薄膜を形成する基板処理工程について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。また、図5は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程における各ガス供給のタイミングを示す成膜シーケンス図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ100によって制御される。
【0048】
なお、ここでは、
基板を収容した処理容器内に金属原子(Ti)を含む原料(TiCl)を供給し排気する工程と、処理容器内に反応ガスとして窒化ガス(NH)を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、ALD法により基板上に金属膜(TiN膜)を形成する工程(S5)と、
処理容器内に酸化ガス(O)を供給し排気することで、金属膜を酸化させる工程(S6)と、
を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜(TiO膜)を形成する例について説明する。
なお、本明細書では、金属膜という用語は金属原子を含む導電性の物質を意味しており、これには、金属単体で構成される膜の他、導電性の金属窒化膜、導電性の金属酸化膜、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜等も含まれる。TiN膜は導電性の金属窒化膜、すなわち金属膜であり、TiO膜は絶縁膜である。以下、これを詳細に説明する。
【0049】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
工程1(S1)において、昇降機構24を作動させ、支持台18を、図2に示すウエハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ34を開き、処理室16と搬送室36とを連通させる。そして、搬送ロボット38により搬送室36内から処理室16内へ処理対象のウエハ14を搬送アーム38aで支持した状態で搬入する。処理室16内に搬入したウエハ14は、支持台18の上面から突出しているリフトピン28上に一時的に載置される。搬送ロボット38の搬送アーム38aが処理室16内から搬送室36内へ戻ると、ゲートバルブ34が閉じられる。
【0050】
工程2(S2)において、昇降機構24を作動させ、支持台18を、図1に示すウエハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン28は支持台18の上面から埋没し、ウエハ14は、支持台18上面のサセプタ20上に載置される。
【0051】
<圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4)>
工程3(S3)において、圧力調整器(APC)44により、処理室16内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する。
また、工程4(S4)において、ヒータ22に供給する電力を調整し、ウエハ14の表面温度が所定の処理温度となるように制御する。
ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述するALD−TiN工程(S5)において、ALD法によりTiN膜を形成可能な処理温度、処理圧力であって、かつ、後述する酸化工程(S6)において、TiN膜を酸化してTiO膜に変化させることが可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、ALD−TiN工程(S5)で用いる原料ガスが自己分解しない程度の処理温度、処理圧力であって、酸化工程(S6)で用いる酸化ガスによりTiNの酸化反応が生じる程度の処理温度、処理圧力である。
【0052】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び昇温工程(S4)においては、真空ポンプ48を作動させつつ、バルブVa3、Vb2、Vc2を閉じ、バルブVd1、Vd2、Ve1、Ve2を開くことで、処理室16内にNガスを常に流しておく。これにより、ウエハ14上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0053】
工程S1〜S4と並行して、原料を気化させて原料ガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブVa1、Va2を開き、キャリアガス供給管84aからMFC86aで流量制御されたキャリアガスをバブラ80a内に供給することにより、バブラ80a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ48を作動させつつ、バルブVa3を閉じたまま、バルブVa4を開くことにより、原料ガスを処理室16内に供給することなく処理室16をバイパスして排気しておく。バブラ80aにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブVa3、Va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブVa3、Va4の切り替えにより、処理室16内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0054】
<ALD−TiN工程(S5)>
〔原料ガス供給工程(S5a)〕
工程S5aにおいて、真空ポンプ48を作動させたまま、バルブVa4を閉じ、バルブVa3を開いて、処理室16内への原料ガス(Ti原料)の供給を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内のウエハ14上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。このとき処理温度、処理圧力は原料ガスが自己分解しない程度の処理温度、処理圧力とされるので、ウエハ14上に供給された原料ガスはウエハ14表面に吸着する。正確には、原料ガスのガス分子がウエハ14表面上に化学吸着する。これによりウエハ14上に原料ガスの化学吸着層が形成される。
【0055】
なお、処理室16内への原料ガスの供給時には、反応ガス供給管92b、酸化ガス供給管92c内への原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室16内における原料ガスの拡散を促すように、バルブVd1、Vd2は開いたままとし、処理室16内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0056】
バルブVa3を開き原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブVa3を閉じ、バルブVa4を開いて、処理室16内への原料ガスの供給を停止する。
【0057】
〔パージ工程(S5b)〕
工程S5bにおいて、バルブVa3を閉じ、原料ガスの供給を停止した後は、バルブVd1、Vd2、Ve1、Ve2を開き、処理室16内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内に供給され、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。これにより、処理室16内に残留している原料ガスを除去し、処理室16内をNガスによりパージする。
【0058】
〔反応ガス供給工程(S5c)〕
工程S5cにおいて、処理室16内のパージが完了したら、バルブVb1、Vb2を開き、処理室16内への反応ガスとしての窒化ガス(NHガス)の供給を開始する。反応ガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内のウエハ14上に均一に供給され、ウエハ14表面に吸着している原料ガスと反応して、ウエハ14上に金属膜としての窒化チタン膜(TiN膜)を生成する。正確には、ウエハ14上に吸着している原料ガスのガス分子と反応して、ウエハ14上に1原子層未満(1Å未満)程度のTiN膜を生成する。余剰な反応ガスや反応副生成物は、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。
【0059】
なお、処理室16内への反応ガスの供給時には、原料ガス供給管88a内への反応ガスの侵入を防止するように、また、処理室16内における反応ガスの拡散を促すように、バルブVe1、Ve2は開いたままとし、処理室16内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0060】
バルブVb1、Vb2を開き、反応ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブVb1、vb2を閉じ、処理室16内への反応ガスの供給を停止する。
【0061】
〔パージ工程(S5d)〕
工程S5dにおいて、バルブVb1、vb2を閉じ、反応ガスの供給を停止した後は、バルブVd1、vd2、ve1、ve2を開き、処理室16内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内に供給され、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。これにより、処理室16内に残留している反応ガスや反応副生成物を除去し、処理室16内をNガスによりパージする(パージ工程)。
【0062】
〔所定回数実施工程(S5e)〕
工程S5eにおいて、以上の原料ガス供給工程、パージ工程、反応ガス供給工程、パージ工程を1サイクルとして、このALDサイクルを所定回数(nサイクル)実施することにより、ウエハ14上に、所定膜厚の窒化チタン膜(TiN膜)を形成する。
【0063】
<酸化工程(S6)>
〔酸化ガス供給工程(S6a)〕
工程S6aにおいて、ALD−TiN工程(S5)が終了したら、バルブVc1、vc2を開き、処理室16内への酸化ガス(Oガス)の供給を開始する。酸化ガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内のウエハ14上に均一に供給される。酸化ガスは、ウエハ14上に形成された窒化チタン膜(TiN膜)を酸化させ、TiN膜を酸化チタン膜(TiO膜)へと変化させる。余剰な酸化ガスや反応副生成物は、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。
【0064】
なお、処理室16内への酸化ガスの供給時には、原料ガス供給管88a内への酸化ガスの侵入を防止するように、また、処理室16内における酸化ガスの拡散を促すように、バルブVe1、ve2は開いたままとし、処理室16内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0065】
バルブVc1、Vc2を開き、酸化ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブVc1、Vc2を閉じ、処理室16内への酸化ガスの供給を停止する。
【0066】
〔パージ工程(S6b)〕
工程S6bにおいて、バルブVc1、Vc2を閉じ、酸化ガスの供給を停止した後は、バルブVd1、Vd2、Ve1、Ve2を開き、処理室16内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド52により分散されて処理室16内に供給され、排気ダクト62内を流れ、排気口40、排気管42へと排気される。これにより、処理室16内に残留している酸化ガスや反応副生成物を除去し、処理室16内をNガスによりパージする。
【0067】
<所定回数実施工程(S7)>
工程S7において、上述のALD−TiN工程(S6)と、酸化工程(S6)と、を1セットとしてこのセットを所定回数(m回)実施することにより、ウエハ14上に所定膜厚の酸化チタン膜(TiO膜)を形成する。
【0068】
<基板搬出工程(S11)>
工程S8において、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所定膜厚のTiO膜を形成した後のウエハ14を処理室16内から搬送室36内へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0069】
なお、本実施形態におけるALD−TiN工程(S5)でのウエハ14の処理条件としては、
処理温度:250〜500℃、
処理圧力:1〜1000Pa、
原料ガス(TiCl)供給流量:1〜1000sccm、供給時間:1〜300秒、
反応ガス(NH)供給流量:1〜5000sccm、供給時間:1〜300秒、
パージガス(N)供給流量:1〜10000sccm、供給時間:1〜300秒、
ALDサイクル数:1〜40回、
TiN膜厚:0.1〜2.0nm、
が例示される。
【0070】
また、本実施形態における酸化工程(S6)でのウエハ14の処理条件としては、
処理温度:250〜500℃、
処理圧力:1〜3000Pa、
酸化ガス(O)供給流量:1〜10000sccm、供給時間:1〜100秒、
パージガス(N)流量:1〜10000sccm、供給時間:1〜300秒、
が例示される。
【0071】
なお、所定回数実施工程(S7)でのALD−TiN工程(S5)と酸化工程(S6)のセットの実施回数としては、1〜200回が例示され、最終的に形成されるTiO膜のトータル膜厚としては、1〜10nmが例示される。
【0072】
なお、処理温度を250℃未満とすると、ALD−TiN工程(S5)において、ウエハ上に原料ガスが吸着しなくなる。また、処理温度が500℃を超えると、ALD−TiN工程(S5)において、原料が自己分解してCVDによる成膜反応が生じて成膜レートが上昇し、膜厚を制御するのが難しくなる。よって、ALD−TiN工程(S5)において、CVDによる成膜反応を生じさせることなくALDによる成膜反応を生じさせ、膜厚を制御可能とするためには、処理温度を250℃以上、500℃以下とする必要がある。
【0073】
また、本実施形態においては、ALD−TiN工程(S5)と酸化工程(S6)とを、同一の処理温度および/または同一の処理圧力にて行うのが好ましい。すなわち、本実施形態では、ALD−TiN工程(S5)と酸化工程(S6)とを、一定の処理温度および/または一定の処理圧力で行うのが好ましい。処理温度、処理圧力を上述の例示範囲内の所定値に設定すれば、ALD法による金属膜の成膜と金属膜の酸化とを、同一コンディションで実現することができる。この場合、ALD−TiN工程(S5)から酸化工程(S6)へ移行する際、および、酸化工程(S6)からALD−TiN工程(S5)へ移行する際の、処理温度変更工程、処理圧力変更工程が不要となり、スループットを向上させることが可能となる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例について説明する。本実施例に係る評価サンプルの作成は、上述の実施形態に係る基板処理装置を用いて行い、各工程における各処理条件は、上述の実施形態にて示した各処理条件の範囲内に設定して行った。評価サンプルは、ALD−TiN工程(S5)においてALD−TiN膜を膜厚2〜3nm程度成膜し、酸化工程(S6)においてOパージを行い、これらの工程を繰り返し(S7)、ALD−TiN膜が膜厚10nm形成されるようにして作成した。
そして、評価サンプルのXPS分析を行った。
【0075】
図6は、上記のようにALD−TiN工程(S5)及び酸化工程(S6)を繰り返し形成したサンプル(以下、O処理を施したALD−TiN膜と称す)のXPS分析結果を示し、図6(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、N1sスペクトル、Ti2pスペクトル及びO1sスペクトルの分析結果を示す。また、比較のため、酸化工程(S6)を行わずALD−TiN工程(S5)のみで形成したサンプル(以下、O処理を施していないALD−TiN膜)の分析結果を併せて示す。XPS分析は、光電子の脱出角度を45度として実施しており、得られた結果は、膜表面から6nm程度の情報を反映している。
【0076】
図6(a)、(b)に示すように、破線で示すO処理を施していないALD−TiN膜では、N1sスペクトル及びTi2pスペクトルにおいて、Ti−N結合(397eV、456eV付近)が確認される。
一方、図6(a)、(b)に示すように、実線で示すO処理を施したALD-TiN膜では、N1sスペクトル及びTi2pスペクトルにおいて、Ti−N結合が消滅し、図6(b)、(c)に示すように、Ti2pスペクトル及びO1sスペクトルにおいて、Ti−O結合(459eV、530eV付近)が確認される。
これらの結果から、ALD−TiN膜をO処理(酸化工程(S5))することで、ALD−TiN膜(TiN膜)の全体が酸化されTiOx膜となることがわかる。
【0077】
このように、本実施形態によれば、まずALD法によりTiN膜を数nm程度形成した後、O処理を施すことでTiN膜を酸化させTiOx膜を形成するため、成膜途中におけるTiOx膜の結晶化を防止することができる。このため、基板上に直接TiOx膜を成膜する場合と比較して、表面ラフネスが良好なTiOx膜を成膜することができる。
また、TiN膜を形成後、この膜を酸化させるため、基板上に直接TiOx膜を成膜する場合と比較して、ルチル構造を有するTiO膜を形成し易くすることができる。
【0078】
なお、上記実施例では、高誘電率絶縁膜としてTiOx膜を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、HfOやZrO、TiO、Nb、Ta、SrTiO、BaSrTiO、PZTなどの高誘電率絶縁膜を用いた場合にも適用でき、かつ、それぞれを積層した構造でも適用できる。
また、酸化源としてOを用いたが、本発明はこれに限らず、NOやNO、Oガス、さらには、これらをプラズマで活性化したガスなど、酸素原子を含むガスによる処理にも適用することができる。
【0079】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0080】
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理容器内に金属原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に反応ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成する工程と、前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記金属膜を酸化させる工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0081】
本発明の他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にチタン原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に窒化ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化チタン膜を形成する工程と、前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記窒化チタン膜を酸化させる工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の酸化チタン膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0082】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に金属原子を含む原料を供給する原料供給系と、前記処理容器内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、前記処理容器内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、基板を収容した前記処理容器内への前記原料の供給および排気と、前記処理容器内への前記反応ガスの供給および排気と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成し、前記処理容器内への前記酸化ガスの供給および排気を行うことで、前記金属膜を酸化させ、これを1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成するように、前記原料供給系、前記反応ガス供給系、前記酸化ガス供給系、前記排気系を制御するコントローラと、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0083】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内にチタン原子を含む原料を供給する原料供給系と、前記処理容器内に窒化ガスを供給する窒化ガス供給系と、前記処理容器内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、基板を収容した前記処理容器内への前記原料の供給および排気と、前記処理容器内への前記窒化ガスの供給および排気と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化チタン膜を形成し、前記処理容器内への前記酸化ガスの供給および排気を行うことで、前記窒化チタン膜を酸化させ、これを1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の酸化チタン膜を形成するように、前記原料供給系、前記窒化ガス供給系、前記酸化ガス供給系、前記排気系を制御するコントローラと、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0084】
12 処理容器
14 ウエハ
16 処理室
40 排気口
42 排気管
50 ガス導入口
52 シャワーヘッド
58 排出口
80a バブラ
82 サブヒータ
84a キャリアガス供給管
88a 原料ガス供給管
90b 反応ガス供給源
90c 酸化ガス供給源
90d パージガス供給源
92b 反応ガス供給管
92c 酸化ガス供給管
92d パージガス供給管
92e パージガス供給管
94a ベント管
100 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理容器内に金属原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に反応ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成する工程と、
前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記金属膜を酸化させる工程と、
を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を収容した処理容器内にチタン原子を含む原料を供給し排気する工程と、前記処理容器内に窒化ガスを供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に窒化チタン膜を形成する工程と、
前記処理容器内に酸化ガスを供給し排気することで、前記窒化チタン膜を酸化させる工程と、
を1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の酸化チタン膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に金属原子を含む原料を供給する原料供給系と、
前記処理容器内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理容器内に酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
基板を収容した前記処理容器内への前記原料の供給および排気と、前記処理容器内への前記反応ガスの供給および排気と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、基板上に金属膜を形成し、
前記処理容器内への前記酸化ガスの供給および排気を行うことで、前記金属膜を酸化させ、
これを1セットとしてこのセットを所定回数行うことにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成するように、前記原料供給系、前記反応ガス供給系、前記酸化ガス供給系、前記排気系を制御するコントローラと、を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−66263(P2011−66263A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216454(P2009−216454)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】