半導体装置の製造方法及び基板処理装置
【課題】W等の金属膜の酸化を防止しつつ、金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に金属膜が形成された少なくとも1枚のウエハ310を処理室318内に搬入する工程と、金属膜を含むウエハ310表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、酸化膜の形成工程は、ウエハ310を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を処理室318内に供給する工程と、ウエハ310を所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを処理室318内に供給する工程と、を有し、処理室318内の加熱温度と、水素に対する第2の反応物質の供給比を制御することにより、金属膜の酸化を制御する。
【解決手段】表面に金属膜が形成された少なくとも1枚のウエハ310を処理室318内に搬入する工程と、金属膜を含むウエハ310表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、酸化膜の形成工程は、ウエハ310を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を処理室318内に供給する工程と、ウエハ310を所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを処理室318内に供給する工程と、を有し、処理室318内の加熱温度と、水素に対する第2の反応物質の供給比を制御することにより、金属膜の酸化を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、例えば、半導体集積回路の製造方法において、処理対象となる基板の一例である半導体ウエハにALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD(Chemical vapor deposition)法等により酸化膜を形成する際に有効な技術に関するものである。本発明は、特に、W(タングステン)等の下地の金属膜が形成された基板に対しその金属膜の酸化を防止しつつ酸化膜を形成する半導体装置(半導体デバイス)の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高密度化や多層配線化等に伴って下地となる金属膜に対し低温での酸化膜の形成が要求され、更にはそのような要求を満たす酸化膜材料も要求されている。
【0003】
上記要求を満たすCVD酸化膜形成方法として、テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC2H5)4)の熱分解による成膜(680〜700℃)が主として用いられてきたが、この方法に対しては不純物の再拡散を防止するために更なる低温化が求められており、その代替法としてビスターシャリーブチルアミノシランとO2等との組み合わせによる酸化膜形成方法(580〜600℃)も用いられるようになっている。
【0004】
また、更なる低温での酸化膜の形成が可能な酸化膜形成方法(400〜500℃)としては、トリエトキシシラン(HSi(OC2H5)3)やビスメチルシリルエタン(H2Si(CH3)CH2CH2Si(CH3)H2)等の原料とO2との組み合わせによる酸化膜形成方法や、トリスジメチルアミノシラン(TDMAS:SiH[N(CH3)2]3)とオゾン(O3)との組み合わせによる酸化膜形成方法等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近では電極材料としてW等からなる金属膜が用いられることが多くなり、上記のような酸化膜材料を用いて金属膜上に酸化膜を形成すると、金属膜が酸化してしまうという問題点がある。
【0006】
本発明の主な目的は、W等の金属膜の酸化を防止しつつ、金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、
を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、
前記酸化膜の形成工程は、
前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、
前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、
を有し、
前記処理室内の加熱温度と、水素に対する前記第2の反応物質の供給比を制御することにより、前記金属膜の酸化を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質と第2の触媒を供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の更に他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質をプラズマ励起により活性化させた状態で、第2の触媒と共に供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱手段と、
シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内へ供給する第1の処理ガス供給手段と、
酸素原子を含む第2の反応物質及び水素を前記処理室内へ供給する第2の処理ガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段と、
を有し、
前記処理室内を450℃以下に加熱しつつ、前記基板に対して前記第1の反応物質と、前記第2の反応物質及び水素とを交互に供給し、前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施例に係る選択酸化装置の概略的な構成を示す図面である。
【図3】図3は、温度とH2に対するH2Oの分圧とに対するWの酸化・還元領域とSiの酸化・還元領域とを示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】図5は、図4のALD酸化膜形成装置の変形例を示す横断面図である。
【図6】図6は、通常のALD法により酸化膜を形成する際の概略的なシーケンスを示す図面である。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施例においてW膜上に酸化膜を形成する際の概略的なシーケンス(A)を示す図面である。
【図8】図8は、シーケンス(A)の概略的な変形例を示す図面であって触媒を用いた場合のシーケンス(B)を示すものである。
【図9】図9は、シーケンス(A)の概略的な変形例を示す図面であってプラズマ励起を用いた場合のシーケンス(C)を示すものである。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、図1の半導体装置の変形例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、本発明の好ましい実施例の概略について説明する。
本実施例は金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する技術に関するものであり、以下では、金属膜の一例としてW(タングステン)膜を使用し、そのW膜に対してシリコンを含む酸化膜の一例としてSi酸化膜を形成する場合について説明している。
【0014】
酸化原料(酸化剤)の一例としてH2O(水)を用いた場合のW膜の酸化については、WとH2OによるWO3H2O、WO3等のW酸化物の形成、離脱により酸化反応が進行すると考えられている((1)、(2)式)。特に、(1)式の現象により、Wが消費されW膜が減ってしまい、その上にSiOを成膜するとパターン性が悪化する。
【0015】
W+4H2O=WO3H2O(gas)+3H2 … (1)
W+3H2O=WO3(solid)+3H2 … (2)
【0016】
WとH2Oの反応において、WO2が形成される場合の活性化エネルギーは5.9eVであり、WO3が形成される場合の活性化エネルギーは4.7eVであり、WO3H2Oが形成される場合の活性化エネルギーは1.2eVであることから、(1)式がWとH2Oの主たる反応となる。
【0017】
(1)式の反応平衡定数は(3)式で表される。(3)式を書き直すと、(3)式は(4)式となる。
K=(PWO3H2O)(PH2)3/(PH2O)4 … (3)
PWO3H2O=(PH2O)4/(PH2)3exp(−ΔG/kT) … (4)
【0018】
(4)式からWの酸化を低減するためには、H2Oの分圧を低減し、H2の分圧を増大させて、成膜温度を下げる必要がある。
【0019】
一方、酸化原料の他例としてO3(オゾン)を用いた場合のW膜の酸化については、WとO3は下記の(5)式〜(8)式のような反応によりW酸化物を形成すると考えられる。(5)式に示す通りにO3は加熱によりO2と活性な酸素ラジカル(O*)とに分解し、(6)式に示す通りに活性な酸素ラジカルはW表面に吸着してWO3を生成する。
O3=O2+O* … (5)
W+3O*=WO3 … (6)
【0020】
そしてWと活性な酸素ラジカルとに対しH2を供給すると、(7)式に示す通りに活性な酸素ラジカルとH2とでH2Oが生成され、(8)式に示す通りにWとH2OとでW酸化物が生成される。結果的に、Wと活性な酸素ラジカルとに対しH2を供給すると、(1)式と同様の(8)式が導出される。
W+O*+H2=W+H2O … (7)
W+4H2O=WO3[H2O](gas)+3H2 … (8)
【0021】
通常、H2濃度はO3濃度に比べて大きな値をとるので、(7)式で生成されるH2O濃度はO3濃度に依存する。
【0022】
(8)式の反応平衡定数は(3)式と同様の(9)式で表される。(9)式を書き直すと、(9)式は(10)式となり、(4)式と同様に表される。
K=(PWO3H2O)(PH2)3/(PH2O)4 … (9)
PWO3H2O=(PH2O)4/(PH2)3exp(−ΔG/kT) … (10)
【0023】
酸化原料としてO3を用いた場合にもH2Oを用いた場合と同様に、(10)式からWの酸化を低減するためには、H2Oの分圧を低減し、H2の分圧を増大させて、成膜温度を下げる必要がある。
【0024】
(4),(10)式から、H2分圧を一定としてH2O分圧を増加させた場合、Wの酸化量は増大する。逆に、H2O分圧を一定としてH2分圧を増大させた場合はWの酸化量は減少する。このようにWの酸化量はH2O(又はO3)とH2との分圧に依存している。
【0025】
本発明の好ましい実施例においては、W上にSi原料とH2O(又はO3)のような酸化原料を交互に供給する場合に、H2O(又はO3)によるWの酸化を防止するためH2O(又はO3)供給時にH2を同時に供給してH2Oの分圧を低減してWの酸化を防止しつつ、Si原料をH2O(又はO3)により酸化させるようになっている。
【0026】
なお、H2O(又はO3)とH2との分圧比は供給比と略同様であるため、「分圧比」と「供給比」とは互いに同様のものと考えてよい。
【0027】
次に、図1を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置について説明する。
【0028】
図1は本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の概略構成を示す断面図であり、特にMPU/ASICメタルハーフピッチ65nm以降の先端デバイスであってALD法によりSi酸化膜が形成されている半導体装置の一例を示している。
【0029】
半導体装置15はSi基板20を有しており、Si基板20の表面近傍にはSiO2層21が埋め込まれている。SiO2層21上のSi層23には素子分離のためのSiO2領域22が形成され、各SiO2層22間に複数の素子領域16が形成されている。各素子領域16にはソース領域24,25とドレイン領域27,26が形成されている。ソース領域25とドレイン領域26との間のSi層23の表面にはゲート酸化膜28が形成されている。
【0030】
ゲート酸化膜28上にはゲート電極31が形成されている。ゲート電極31はW膜30から構成されている。ゲート電極31の側面にはサイドウォールとしてのSiO膜32とSiN膜33とがこの順に形成されている。低濃度のソース領域25と低濃度のドレイン領域26はゲート電極31に対して自己整合的に形成されており、高濃度のソース領域24と高濃度のドレイン領域27はSiO膜32,SiN膜33に対して自己整合的に形成されている。半導体装置15では、ゲート酸化膜28、ゲート電極31、ソース領域24,25、ドレイン領域27,26を備えるMOSトランジスタ17が各素子領域16に形成されている。
【0031】
なお、ゲート電極31の構成材料として酸化が問題とならないポリサイド(WSix/PolySi)が用いられる場合、サイドウォールとしてのSiO膜32とSiN膜33とはそれぞれ680℃,700℃の温度でCVD法により形成されるが、PolySi電極では空乏化による駆動力の低下が生ずるため、半導体装置15のようなMPU/ASICメタルハーフピッチ65nm以降の世代では、上記の通りにゲート電極としてメタルゲート(W膜30)が使用されている。
【0032】
また、ゲート電極31の側面に対し直接的にSiN膜33を形成すると接合容量を持つため、本実施例に係る半導体装置15のように、デバイス構造の縮小化に伴ってゲート電極31の側面をSiO膜32で絶縁するのが一般的となっている。更に、Si基板20については、接合容量やリーク電流を低減するため、Si基板20の下層はSOI(Silicon On Insulater)等の絶縁材料が用いられる傾向にある。
【0033】
MOSトランジスタ17が形成されたSi基板20の表面の全面にはエッチングストッパとなるSiN層34が形成されている。SiN層34上には層間絶縁膜となるSiO2膜35が形成されている。SiN層34とSiO2層35とには、MOSトランジスタ17のソース領域24とドレイン領域27とを露出させるビアホール36が形成されている。ソース領域24とドレイン領域27とからSiO2層35の上面に至る部分には、ビアホール36を介して配線金属37が延在している。
【0034】
SiO2層35の上面の全面には、SiO2層35上に露出した配線金属37を覆うようにSiN層38が形成されている。SiN層38上には低誘電率のポーラス層39が形成され、ポーラス層39上にはSiO2層40が設けられている。ポーラス層39とSiO2層40とからなる層間絶縁膜にはビアホール41が形成されており、ビアホール41には配線金属42が埋め込まれている。以後、SiN層38を介在させた状態でポーラス層39とSiO2層40とからなる層間絶縁膜が複数層にわたって積層されており、その各層に対し配線金属42が貫通するように形成されている。
【0035】
以上の半導体装置15では、W膜30を形成した後にSiO膜32とSiN膜33とが順次形成されるが、SiO膜32を形成させる際に、W膜30が酸化されるとWの酸化による体積膨張で形状が変わるという問題を引き起こすため、本発明の好ましい実施例では、W膜30の酸化を防止しつつW膜30に対しALD法によりSiO膜32が形成されている。
【0036】
次に、図2を参照しながら、本発明の好ましい実施例を実現するにあたって検討した選択酸化装置について説明する。
【0037】
図2は、本発明の好ましい実施例に係る選択酸化装置の概略的な構成を示す図面であり、例えばSiとWとが同時にウエハ表面に存在するような半導体装置において、Wの酸化を防止しつつSiを選択的に酸化させるための概略的な構造を示している。
【0038】
選択酸化装置50は主には、ガス供給機構60、触媒式水分発生装置(CWVG)70、処理炉80、ロードロック室90等で構成されている。ガス供給機構60にはN2,H2,O2の各ガスの供給管61〜65が設けられている。供給管62〜65にはそれぞれバルブ62a〜65aとマスフローコントローラ62b〜65bとが1つずつ設けられており、バルブ62a〜65aの開閉とマスフローコントローラ62b〜65bの制御とで各ガスの供給やその停止、流量調整等を行うことができるようになっている。N2の供給管61は各供給管62〜64に連結しており、各供給管62〜64内のガスをパージすることができるようになっている。
【0039】
CWVG70は触媒によりH2とO2とからH2Oを生成するリアクタ71を有している。リアクタ71の一方の側には、H2の供給管62とO2の供給管63とが互いに連結して構成された供給管66が接続されている。リアクタ71の他方の側には、当該リアクタ71で生成したH2Oを処理炉80に供給する供給管72が接続されている。供給管66と供給管72との各中途部にはヒータ73〜75が設けられており、供給管66と供給管72とを流通するガスを加熱することができるようになっている。また供給管72にはH2の供給管64が接続されている。
【0040】
処理炉80はウエハに対し処理を行う処理室を構成するもので、当該処理炉80には多数枚のウエハ81を搭載したボート82が収容されるようになっている。処理炉80の内部には側壁に沿って延在するノズル83が設けられている。ノズル83は供給管72と連結しており、供給管72からのガスの供給を受けて処理炉80の内部にそのガスを供給するようになっている。処理炉80には排気管84が接続されており、処理炉80の内部の余分なガスを排気することができるようになっている。処理炉80の外部にはヒータ85が設けられており、処理炉80の内部を加熱することができるようになっている。
【0041】
ロードロック室90は処理炉80の下部に設けられている。ロードロック室90の上部にはゲートバルブ91が設けられており、ゲートバルブ91を介してボート82を処理炉80とロードロック室90との間で昇降することができるようになっている。ロードロック室90の側部にもゲートバルブ92が設けられており、ゲートバルブ92を介してボート82をロードロック室90の内部と外部との間で搬入・搬出することができるようになっている。ロードロック室90にはN2の供給管65が通じており、ロードロック室90の内部をN2雰囲気にすることができるようになっている。またロードロック室90には、真空ポンプ93に接続された排気管94が接続されている。排気管94の中途部にはバルブ95が設けられており、バルブ95を開けた状態で真空ポンプ93を作動させることでロードロック室90の内部を真空引きすることができるようになっている。
【0042】
以上の選択酸化装置50では、供給管62,63,66を通じてH2とO2とをリアクタ71に供給してH2Oを発生させるとともに、供給管64を通じて供給管72にH2を供給することができる。そしてH2OとH2とを混合した状態で供給管72からノズル83を通じて処理炉80の内部に流入させ、ウエハ81に対しH2OとH2とを供給し、Wの酸化を防止しつつSiを選択的に酸化させることができるようになっている。
【0043】
次に、図3を参照しながら、W膜の酸化を防止しつつそのW膜上に酸化膜を形成する際の原理について説明する。
【0044】
図3は、温度とH2に対するH2Oの分圧とに対するWの酸化・還元領域とSiの酸化・還元領域とを示す概略図である。
【0045】
酸化原料の一例としてH2Oを用いた場合、H2O分圧が高い領域ではWの酸化が進行し、温度が高い領域ではSiO2の還元が行われ、この中間領域ではWO3の還元とSiの酸化とが同時に進行する。Siの酸化速度はH2O分圧と共に上昇し酸化膜厚は増大する。
【0046】
図3から、温度が100〜450℃の範囲においてH2に対するH2Oの分圧比が図3中符号400で示す曲線(酸化還元境界線)以下である場合には、WO3は還元されWの酸化を防止することができることがわかる。詳しくは、温度とH2に対するH2Oの分圧比とを(T(℃),H2O/H2)とした場合に、(T(℃),H2O/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)となっており、温度が100〜450℃の範囲内においてH2に対するH2Oの分圧比がこれら各点を結ぶ直線(図3中符号500で示す直線)以下であれば、WO3は還元されWの酸化を防止することができることがわかる。
例えば、温度が400℃でH2に対するH2Oの分圧比を2×10−1以下とすれば、WO3は還元されWの酸化を防止することができる。
【0047】
なお、Wの酸化を防止しつつSiを酸化させるためには温度の下限値を100℃とする必要があり、その下限値を100℃とするのは、温度が100℃未満ではSiに対するH2Oの酸化能力が失われるか、又は低減するからである。
【0048】
酸化原料の他例としてO3を用いた場合には、十分なH2雰囲気下においては、温度が450℃以下の低温領域で(11),(12)式に示す通りにO3からH2Oが生成され、温度が450℃を上回る領域でも(13),(14)式に示す通りにO3からH2Oが生成され、酸化原料の一例としてH2Oを用いた場合と同様に、最終的にはWO3の還元とSiの酸化とがH2Oの分圧で表現される。
O3=O2+O* … (11)
O*+H2=H2O … (12)
O3=3O* … (13)
3O*+3H2=3H2O … (14)
【0049】
ただし、酸化原料の他例としてO3を用いた場合、温度が450℃以下の低温領域では1モルのO3に対して1モルの酸素ラジカルが生成される((11)式参照)のに対し、温度が450℃を上回る高温領域では1モルのO3に対して3モルの酸素ラジカルが生成される((13)式参照)ため、低温領域と高温領域とでH2O濃度が変わることに考慮すべきである。
【0050】
なお、処理温度が450℃以下の低温領域で酸化原料としてO3を用いた場合においては、(11),(12)式に基づき、1モルのO3から1モルのH2Oが生成される(400℃でのO3の熱分解は99.9%である。)から、酸化原料としてO3を用いてもこのO3は酸化原料としてのH2Oと同等のものと考えることができ、ひいては温度とH2に対するO3の分圧比との関係も温度とH2に対するH2Oの分圧比との関係と同等のものと考えることができる。
【0051】
次に、図4を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置について説明する。
【0052】
図4は、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0053】
ALD酸化膜形成装置202はロードロック室300を有している。ロードロック室300の上部にはマニホールド302とOリング303とを介して処理炉304が設けられている。処理炉304の内部には複数枚のウエハ310を搭載したボート312が収容されており、ウエハ310の表面にはW膜が形成された状態となっている。ボート312はシールキャップ314により回転自在に支持されている。シールキャップ314はOリング316を介してマニホールド302のフランジ部に密着しており、処理炉304の下部が閉塞されている。ALD酸化膜形成装置202では、少なくともシールキャップ314、Oリング316、マニホールド302、Oリング303、処理炉304により、ウエハ310に対し処理を行う処理室318が形成されている。
【0054】
処理炉304にはノズル320,324が設けられている。ノズル320,324は処理炉304の内壁に沿って延在しており、その中途部に多数の供給孔322,326が設けられている。ノズル320にはSi原料(例えばTDMAS)を流入させるようになっており、そのSi原料を供給孔322から処理室318に供給することができるようになっている。他方、ノズル324には酸化原料(例えばH2OやO3)を流入させるようになっており、その酸化原料を供給孔326から処理室318に供給することができるようになっている。
【0055】
マニホールド302には排気管330が接続されており、処理炉304のガスを排気することができるようになっている。処理炉304の外部にはヒータ340が設けられており、処理室318を加熱することができるようになっている。
【0056】
以上のALD酸化膜形成装置202では、基本的に、処理室318をヒータ340で加熱しながら、処理室318に対しノズル320,324を通じてSi原料とH2O等の酸化原料とを交互に複数回繰り返し供給し、ウエハ310のW膜上にSi酸化膜を形成することができるようになっている。特に本実施例では、ノズル324を通じた酸化原料の供給に際しそれに加えてH2も同時に供給するようになっており、W膜の酸化を防止しつつSi酸化膜を形成するようになっている。
【0057】
なお、酸化原料としてH2Oを用いる場合には、例えば、上記選択酸化装置50の供給管72をノズル324に連結してH2OとH2とを同時に処理室318に供給することができる。
【0058】
また、図3から、ヒータ340により処理室318のウエハ310を400℃の低温領域で加熱する場合は、ウエハ310のW膜の酸化を防止するためには、H2に対するH2Oの分圧比を2×10−1以下にする必要がある。
【0059】
更に、酸化原料としてはH2O以外にもO2やO3等を使用することができる。O2やO3をH2と同時に供給すると、O2やO3をH2と反応させてH2Oを生成することができるからである。酸化原料としてO2を用いる場合は、H2と反応させるために処理室318の温度を少なくとも500℃以上に上げる必要があるが、酸化原料としてO3を用いる場合は低温での生成が可能である((11),(12)式参照)。
【0060】
また、処理室318には、ノズル320からピリジン(CAS No.110-86-1, C5H5N, 分子量79.1)のような触媒をSi原料とともに供給してSi酸化膜を形成してもよいし、ノズル320及びノズル324からピリジンのような触媒をSi原料とH2Oとともに供給してSi酸化膜を形成してもよい。
【0061】
更に、ALD酸化膜形成装置の他例としてプラズマを発生させる装置を使用し、H2とプラズマ励起させたO2とでH2Oを発生させるようにしてもよい。
【0062】
下記に、図5を参照しながら、図4のALD酸化膜形成装置の変形例であって、プラズマを発生可能なALD酸化膜形成装置の一例を示す。
【0063】
処理炉304には、処理室318にO2を供給するためのノズル114が設けられている。ノズル114は処理炉304の内壁に沿って延在しており、その中途部に多数の供給孔211が形成されている。更に、処理炉304には、1対の電極230,231とそれを保護するカバー218,220とが設けられている。電極230,231とカバー218,220も処理炉304の内壁に沿って延在しており、電極230,231がカバー218,220に挿通された状態となっている。
【0064】
電極230,231間にはバリアブルコンデンサ232と交流電源233とが設けられており、制御装置9がバリアブルコンデンサ232と交流電源233とに接続されている。
【0065】
また、処理炉304には、ノズル114、電極230,231及びカバー218,220を囲むように隔壁212が設けられている。隔壁212は処理炉304の内壁に沿って立設されており、ノズル114等と同様に、供給孔238が形成されている。
【0066】
以上のALD酸化膜形成装置202では、電極230,231間に電圧を印加すると、隔壁212と処理炉304の内壁とで囲まれた領域でプラズマを発生させることができるようになっている。この場合において、ノズル114を通じてO2を処理炉304に供給すると、酸素ラジカルが生成され、当該酸素ラジカルが隔壁212の供給孔238を通じて処理室318に供給され、処理室318内でH2Oを発生させることができる。
なお、O2の供給と同時にAr、N2のような不活性ガスを処理炉304に供給してもよい。
【0067】
次に、図6〜図9を参照しながら、ALD酸化膜形成装置を用いた本発明の好ましい実施例に係る酸化膜の形成方法を説明する。
【0068】
まず、図6を参照しながら、通常のALD法によるSi酸化膜のプロセスシーケンスについて説明する。
Si酸化膜の形成に先立ち、W膜が形成された複数のウエハ310をボート312に搭載した状態でこれらウエハ310をロードロック室300から処理室318に搬入し、図6に示すサイクルの処理を繰り返し実行する。1つのサイクルは主には4つのステップから構成されている。
【0069】
第1のステップでは、ヒータ340により処理室318内のウエハ310を所定の温度に加熱しながら、ノズル320から処理室318内にSi原料を供給し、ウエハ318の表面にこの原料を吸着させる。
第2のステップでは、不活性ガスにより処理室318内をパージして当該処理室318内に残留したSi原料を排気管330から処理室318外に排出する。
第3のステップでは、ヒータ340により処理室318内のウエハ310を第1のステップと略同じ温度で加熱しながら、酸化原料(例えばH2OやO3)をノズル324から処理室318内に供給し、ウエハ310の表面に吸着しているSi原料と酸化原料との反応によりSi酸化膜を形成する。
第4のステップでは、不活性ガスにより処理室318内をパージし、処理室318内に残留した酸化原料を排気管330から処理室318外に排出する。
【0070】
第1〜第4のステップの各処理時間は、例えば、第1のステップ(Si原料供給工程)では1〜30秒であり、第2のステップ(パージ工程)では5〜15秒であり、第3のステップ(酸化原料供給工程)では5〜60秒であり、第4のステップ(パージ工程)では3秒である。
【0071】
なお、第1〜第4のステップの処理は、処理ガス(Si原料ガス、酸化原料ガス)の供給や排気等のタイミング、処理室318内の圧力、ヒータ340の動作等を制御しながら実行する。
【0072】
これに対し、本発明の好ましい実施例では、下記のシーケンス(A)〜(C)を採用する。
具体的にシーケンス(A)では、図7に示す通り、第1,第2,第4のステップを前述した図6のALD酸化膜の形成工程と同様とし、第3のステップにおいて、酸化原料(例えばH2OやO3)とH2とを同時にノズル324から処理室318内に供給する。
【0073】
特にシーケンス(A)では、第3のステップにおいて、処理室318の加熱温度とH2に対するH2Oの供給比とを制御してW膜の酸化を防止するようにする。すなわち、図3においてWO3が還元される領域を選択するように、処理室318の加熱温度とH2に対するH2Oの供給比とを制御する。
【0074】
例えば、処理室318を400℃に加熱しながら酸化原料としてH2Oを供給する場合は、H2に対するH2Oの供給比を2×10−1以下とする。処理室318を100〜450℃の範囲内で加熱する場合は、H2に対するH2Oの供給比を図3中符号400で示す曲線以下(又は図3中符号500で示す直線以下)とする。その結果、シーケンス(A)では、W膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、450℃又はそれ以下という低温でもSi原料が酸化され、W膜の酸化を防止しつつ、そのW膜上に450℃又はそれ以下という低温でSi酸化膜を形成することができる。
【0075】
また、処理室318を100〜450℃に加熱しながら酸化原料としてO3を供給する場合も、H2に対するO3の供給比を、H2に対するH2Oの供給比と同等に扱うことで、W膜の酸化を防止しつつ、そのW膜上に450℃以下という低温でSi酸化膜を形成することができる。
【0076】
シーケンス(A)の変形例に係るシーケンス(B)では、図8に示す通り、基本的には第1〜第4のステップをシーケンス(A)のステップと同様とし、特に第3のステップにおいて酸化原料(例えばH2O)とH2とに加えて触媒を処理室318に供給する。触媒としては前述のピリジンのような原料が使用可能であり、当該触媒により450℃以下という低温でSi酸化膜を容易に形成することができる。
なお、シーケンス(B)では、第1のステップにおいても、Si原料に加えてピリジンのような触媒を処理室318に供給してもよい。
【0077】
シーケンス(A)の変形例に係るシーケンス(C)では、基本的に第1〜第4のステップをシーケンス(A)のステップと同様とする。そして特に、図5に示すようなプラズマを発生可能なALD酸化膜形成装置を用いるとともに酸化原料としてO2を用い、第3のステップにおいて、プラズマ励起させたO2と、励起させていないH2とを、同時に処理室318内に供給する。
【0078】
なお、本発明の好ましい実施例では、Wの酸化を防止しつつ低温で酸化膜を形成することを目的としているから、Wを酸化することがない所望の膜厚まで酸化膜を形成した後は、H2の供給を行わずに酸化膜を形成してもよく、この場合には酸化膜の生産性(成膜速度)を向上させることができる。
【0079】
すなわち、Wが酸化しないと考えられる所望の膜厚までは、シーケンス(A)〜(C)に従うような酸化原料とH2との同時供給で酸化膜の成膜を行い、Wが酸化しない膜厚に達したら、それ以降はH2の供給を行わずに図6のシーケンスに従うような通常のALD法による成膜に切り替える。ここでいう「通常のALD法」とは、H2の供給を行わない状態で、Si原料と酸化原料とを交互に複数回繰り返し供給してSi酸化膜を形成する方法のことである。
【0080】
W上に形成した酸化膜の膜厚と、この酸化膜を透過してWを酸化させる酸化原料との関係については、酸化膜中の酸素の拡散係数を算出することにより求めることができる。
【0081】
本実施例において、O3によるWの酸化を回避することができる酸化膜の膜厚X0は、線則に則って(15)式で表される。
X0=B/A×t … (15)
「B/A」=Ce−E2/kTであり、「C」=18.35Å/秒であり、「E2」=7.5×10−2eVであり、「k」はボルツマン定数であってk=8.62×10−5eVK−1であり、「t」はO3の供給時間(酸化時間)である。
【0082】
例えば、処理室318を300℃に加熱しながらO3を用いてSi酸化膜の成膜を行う場合において、Kの値は273+300=573(K)であり、B/Aの値は約4.01Å/秒と算出することができる。O3の供給時間を5秒とすると、X0の値は約20Åと算出することができる。Si酸化膜の1層当たりの膜厚は約0.7Åであるから、Si酸化膜を29層分だけ積層すればSi酸化膜の膜厚が20Åに達し、O3によるWの酸化を回避することができると考えられる。
【0083】
従って、この場合においては、Si酸化膜を29層分だけ積層してその膜厚が20Åに達するまでは、O3とH2との供給を行うALD法によりSi酸化膜を形成し、Si酸化膜の膜厚が20Åに達した後は、O3とH2との供給工程においてH2の供給を行わずに、通常のALD法によりSi酸化膜を形成すればよい。その結果、Si酸化膜の生産性(成膜速度)を向上させることができる。
【0084】
次に、図10を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置について説明する。
【0085】
当該基板処理装置は、半導体装置(IC(Integrated Circuits))の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置の一例として構成されるもので、以下の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し酸化処理等を行なう縦型の装置を使用した場合について述べる。
図10は、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【0086】
基板処理装置101では、基板の一例としてシリコン等からなるウエハ200が使用され、ウエハ200を収納するウエハキャリアとしてカセット110が使用される。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設されている。正面メンテナンス口103には開閉自在な正面メンテナンス扉104が建て付けられている。
【0087】
メンテナンス扉104には、カセット搬入搬出口112が筐体111内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口112はフロントシャッタ113によって開閉されるようになっている。
【0088】
カセット搬入搬出口112の筐体111内側にはカセットステージ114が設置されている。カセット110は、工場内搬送装置(図示略)によって、カセットステージ114上に搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりされるようになっている。カセットステージ114は、工場内搬送装置によって、カセット110内でウエハ200が垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置されるように構成されている。
【0089】
筐体111内の前後方向の略中央下部には、カセット棚105が設置されている。カセット棚105は複数段複数列にわたり複数個のカセット110を収容可能な棚であり、カセット110内のウエハ200を出し入れすることが可能となるように配置されている。カセット棚105はスライドステージ106上に横行可能に設置されている。カセット棚105の上方にはバッファ棚107が設置されており、予備のカセット110を保管することができるようになっている。
【0090】
カセットステージ114とカセット棚105との間にはカセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されている。カセット搬送装置118は、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセット110をカセットステージ114とカセット棚105とバッファ棚107との間で搬送するようになっている。
【0091】
カセット棚105の後方にはウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(図示略)とで構成されている。なお、ウエハ移載装置エレベータは耐圧筐体140の左側端部に設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータとの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cでウエハ200をピックアップしてそのウエハ200をボート217に装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0092】
バッファ棚107の後方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーンユニット134aが設置されている。クリーンユニット134aは、供給ファン及び防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0093】
ウエハ移載装置エレベータ側と反対側である右側端部にも、クリーンエアを供給するクリーンユニット(図示略)が設置されている。当該クリーンユニットもクリーンユニット134aと同様に供給ファン及び防塵フィルタで構成されている。当該クリーンユニットから供給されたクリーンエアはウエハ移載装置125aの近傍を流通し、その後に筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0094】
ウエハ移載装置125aの後側には、大気圧未満の圧力(負圧)を維持可能な機密性能を有する耐圧筐体140が設置されており、耐圧筐体140によりボート217を収容可能な容積を有するロードロック方式の待機室であるロードロック室141が形成されている。
【0095】
耐圧筐体140の正面壁140aにはウエハ搬入搬出口142が開設されており、ウエハ搬入搬出口142はゲートバルブ143によって開閉されるようになっている。耐圧筐体140の側壁にはロードロック室141へ窒素ガス等の不活性ガスを給気するためのガス供給管144と、ロードロック室141を負圧に維持しながらロードロック室141内のガスを排気するため排気管(図示略)とがそれぞれ接続されている。
【0096】
ロードロック室141の上方には処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は炉口ゲートバルブ147により開閉されるように構成されている。
【0097】
図10に模式的に示されているように、ロードロック室141にはボート217を昇降させるためのボートエレベータ115が設置されている。ボートエレベータ115には連結具としてのアーム(図示略)が連結されており、当該アームには蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するもので、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0098】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0099】
次に、基板処理装置101の動作について説明する。
【0100】
カセット110がカセットステージ114に供給されるに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口112からカセットステージ114上に搬入される。このとき、カセット110内のウエハ200は垂直姿勢に保持され、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。
【0101】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセットステージ114から持ち上げられるとともに、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となりかつカセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、右周り縦方向90°回転させられる。引き続いて、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないしバッファ棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット搬送装置118によってカセット棚105に移載されるか、もしくは直接カセット棚105に搬送される。
【0102】
その後、スライドステージ106がカセット棚105を水平移動させ、移載の対象となるカセット110をウエハ移載装置125aに対峙する様に位置決めする。そして、予め内部が大気圧状態とされていたロードロック室141のウエハ搬入搬出口142がゲートバルブ143の動作により開放され、ウエハ200がカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ウエハ搬入搬出口142を通じてロードロック室141に搬入され、ボート217へ移載されて装填される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ200をボート217に装填する。
【0103】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、ウエハ搬入搬出口142がゲートバルブ143によって閉じられ、ロードロック室141が真空引きされ減圧される。ロードロック室141が処理炉202内の圧力と同圧に減圧されると、処理炉202の下端部が炉口ゲートバルブ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されて、シールキャップ219に支持されたボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。
【0104】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理(前述のSi酸化膜の形成処理)が実施される。処理後は、ボートエレベータ115によりボート217が引き出され更に、ロードロック室140内部を大気圧に復圧させた後にゲートバルブ143が開かれる。その後は、上記と逆の手順で、カセット110及びウエハ200が筐体111の外部に搬出される。
【実施例2】
【0105】
次に、図11を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の変形例について説明する。
【0106】
図11は、図1の半導体装置の変形例を示す図面である。
図11の半導体装置15は、図1の半導体装置15と略同様の構成を有しているが、ゲート電極31が下層のpoly-Si層29とその上層のW膜30とから構成されている。このような半導体装置15においても、W膜30を形成した後にSiO膜32とSiN膜33とが順次形成されるが、SiO膜32を形成させる際に、W膜30が酸化されるとWの酸化による体積膨張で形状が変わるという問題を引き起こすため、酸化原料の供給の際にH2を供給しながらW膜の酸化を防止つつ、W膜30に対しALD法によりSiO膜32が形成されている。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の好ましい実施の形態によれば、表面にタングステン膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、前記基板を400℃に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、前記基板を400℃に加熱しながら、第2の反応物質である水と、水素とを、前記水素に対する前記水の比率を2×10−1以下として前記処理室内に供給する工程と、を交互に複数回繰り返して、前記タングステン膜を含む基板表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0108】
本発明の好ましい実施の形態によれば、特定の比率で水と水素とを処理室内に供給するから、タングステン膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、400℃以下という低温でも第1の反応物質が酸化される。そのため、タングステン膜の酸化を防止しつつ、そのタングステン膜上に400℃という低温でシリコン酸化膜を形成することができる。
【0109】
本発明の他の好ましい実施の形態によれば、表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、前記酸化膜の形成工程は、前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0110】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、酸素原子を含む第2の反応物質と水素とを処理室内に供給するから、金属膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、低温でも第1の反応物質が酸化される。そのため、金属膜の酸化を防止しつつ、その金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる。
【0111】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記第1の反応物質の供給と前記第2の反応物質及び前記水素の供給とを交互に複数回繰り返して前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供され、この製造方法の一例としてALD法が使用される。
【0112】
好ましくは、前記金属膜がタングステン膜であり、前記所定の温度が100〜450℃であり、前記第2の反応物質が水であり、前記水素に対する前記水の供給比が、前記所定の温度と前記水素に対する前記水の供給比とを(T,H2O/H2)とした場合に、(T,H2O/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)の各点を結ぶ直線以下である半導体装置の製造方法が提供される。
【0113】
好ましくは、前記金属膜がタングステン膜であり、前記所定の温度が100〜450℃であり、前記第2の反応物質がオゾンであり、前記水素に対する前記オゾンの供給比が、前記所定の温度と前記水素に対する前記オゾンの供給比とを(T,O3/H2)とした場合に、(T,O3/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)の各点を結ぶ直線以下である半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記酸化膜の厚さが所望の厚さに達した後は、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素の供給を行わずに前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
好ましくは、前記所望の厚さが次式で定義されるX0である半導体装置の製造方法が提供される。
X0=B/A(t+τ)
但し、「B/A」=Ce−E2/kTであり、「C」=18.35Å/秒であり、「E2」=7.5×10−2eVであり、「k」はボルツマン定数であってk=8.62×10−5eVK−1であり、「t」は前記第2の反応物質の供給時間である。
【0116】
好ましくは、前記所定の温度が300℃であり、前記第2の反応物質がオゾンであり、前記酸化膜の形成工程では、前記酸化膜の厚さが20Åに達するまで、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素を前記処理室内に供給し、前記酸化膜の厚さが20Åに達した後は、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素の前記処理室内への供給を行わずに前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0117】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記第1の反応物質と前記第2の反応物質及び前記水素とが同時に前記処理室内に存在するように、前記第1の反応物質の供給と前記第2の反応物質及び前記水素の供給とを同時に行って前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供され、この製造方法の一例としてCVD法が使用される。
【0118】
更に好ましくは、シリコン原子を含む第1の反応物質が、TDMAS(Tris dimethyl amino silane)等のシリコンの有機化合物である半導体装置の製造方法が提供される。
【0119】
更に好ましくは、第2の反応物質が、水、オゾン、酸素等の酸化原料である半導体装置の製造方法が提供される。
【0120】
更に好ましくは、第2の反応物質及び水素を供給する際に、ピリジン等の触媒を添加して酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0121】
更に好ましくは、第2の反応物質及び水素を供給する際に、酸化原料の一例としての酸素を励起させるために、プラズマ励起を使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【0122】
更に好ましくは、第1の反応物質の供給工程の後や第2の反応物質及び水素の供給工程の後に、不活性ガスで処理室内をパージする半導体装置の製造方法が提供され、その不活性ガスの一例としてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)を使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【0123】
更に好ましくは、処理室内の温度を0〜700℃とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0124】
更に好ましくは、酸化膜の形成工程での処理室圧力を1〜10000Paとする半導体装置の製造方法が提供される。
【0125】
なお、明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む2006年1月17日提出の日本国特許出願2006−008611号の開示内容全体は、本国際出願で指定した指定国、又は選択した選択国の国内法令の許す限り、そのまま引用してここに組み込まれる。
【0126】
種々の典型的な実施の形態を示しかつ説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明の好ましい実施の形態によれば、金属膜の酸化を防止しつつ、その金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる。その結果、本発明は、下地となる金属膜が形成された基板に対しその金属膜の酸化を防止しつつ酸化膜を形成する半導体装置の製造方法に特に好適に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、例えば、半導体集積回路の製造方法において、処理対象となる基板の一例である半導体ウエハにALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD(Chemical vapor deposition)法等により酸化膜を形成する際に有効な技術に関するものである。本発明は、特に、W(タングステン)等の下地の金属膜が形成された基板に対しその金属膜の酸化を防止しつつ酸化膜を形成する半導体装置(半導体デバイス)の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高密度化や多層配線化等に伴って下地となる金属膜に対し低温での酸化膜の形成が要求され、更にはそのような要求を満たす酸化膜材料も要求されている。
【0003】
上記要求を満たすCVD酸化膜形成方法として、テトラエトキシシラン(TEOS:Si(OC2H5)4)の熱分解による成膜(680〜700℃)が主として用いられてきたが、この方法に対しては不純物の再拡散を防止するために更なる低温化が求められており、その代替法としてビスターシャリーブチルアミノシランとO2等との組み合わせによる酸化膜形成方法(580〜600℃)も用いられるようになっている。
【0004】
また、更なる低温での酸化膜の形成が可能な酸化膜形成方法(400〜500℃)としては、トリエトキシシラン(HSi(OC2H5)3)やビスメチルシリルエタン(H2Si(CH3)CH2CH2Si(CH3)H2)等の原料とO2との組み合わせによる酸化膜形成方法や、トリスジメチルアミノシラン(TDMAS:SiH[N(CH3)2]3)とオゾン(O3)との組み合わせによる酸化膜形成方法等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近では電極材料としてW等からなる金属膜が用いられることが多くなり、上記のような酸化膜材料を用いて金属膜上に酸化膜を形成すると、金属膜が酸化してしまうという問題点がある。
【0006】
本発明の主な目的は、W等の金属膜の酸化を防止しつつ、金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、
を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、
前記酸化膜の形成工程は、
前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、
前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、
を有し、
前記処理室内の加熱温度と、水素に対する前記第2の反応物質の供給比を制御することにより、前記金属膜の酸化を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質と第2の触媒を供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の更に他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質をプラズマ励起により活性化させた状態で、第2の触媒と共に供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の態様によれば、
表面に金属膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱手段と、
シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内へ供給する第1の処理ガス供給手段と、
酸素原子を含む第2の反応物質及び水素を前記処理室内へ供給する第2の処理ガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段と、
を有し、
前記処理室内を450℃以下に加熱しつつ、前記基板に対して前記第1の反応物質と、前記第2の反応物質及び水素とを交互に供給し、前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施例に係る選択酸化装置の概略的な構成を示す図面である。
【図3】図3は、温度とH2に対するH2Oの分圧とに対するWの酸化・還元領域とSiの酸化・還元領域とを示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】図5は、図4のALD酸化膜形成装置の変形例を示す横断面図である。
【図6】図6は、通常のALD法により酸化膜を形成する際の概略的なシーケンスを示す図面である。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施例においてW膜上に酸化膜を形成する際の概略的なシーケンス(A)を示す図面である。
【図8】図8は、シーケンス(A)の概略的な変形例を示す図面であって触媒を用いた場合のシーケンス(B)を示すものである。
【図9】図9は、シーケンス(A)の概略的な変形例を示す図面であってプラズマ励起を用いた場合のシーケンス(C)を示すものである。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、図1の半導体装置の変形例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、本発明の好ましい実施例の概略について説明する。
本実施例は金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する技術に関するものであり、以下では、金属膜の一例としてW(タングステン)膜を使用し、そのW膜に対してシリコンを含む酸化膜の一例としてSi酸化膜を形成する場合について説明している。
【0014】
酸化原料(酸化剤)の一例としてH2O(水)を用いた場合のW膜の酸化については、WとH2OによるWO3H2O、WO3等のW酸化物の形成、離脱により酸化反応が進行すると考えられている((1)、(2)式)。特に、(1)式の現象により、Wが消費されW膜が減ってしまい、その上にSiOを成膜するとパターン性が悪化する。
【0015】
W+4H2O=WO3H2O(gas)+3H2 … (1)
W+3H2O=WO3(solid)+3H2 … (2)
【0016】
WとH2Oの反応において、WO2が形成される場合の活性化エネルギーは5.9eVであり、WO3が形成される場合の活性化エネルギーは4.7eVであり、WO3H2Oが形成される場合の活性化エネルギーは1.2eVであることから、(1)式がWとH2Oの主たる反応となる。
【0017】
(1)式の反応平衡定数は(3)式で表される。(3)式を書き直すと、(3)式は(4)式となる。
K=(PWO3H2O)(PH2)3/(PH2O)4 … (3)
PWO3H2O=(PH2O)4/(PH2)3exp(−ΔG/kT) … (4)
【0018】
(4)式からWの酸化を低減するためには、H2Oの分圧を低減し、H2の分圧を増大させて、成膜温度を下げる必要がある。
【0019】
一方、酸化原料の他例としてO3(オゾン)を用いた場合のW膜の酸化については、WとO3は下記の(5)式〜(8)式のような反応によりW酸化物を形成すると考えられる。(5)式に示す通りにO3は加熱によりO2と活性な酸素ラジカル(O*)とに分解し、(6)式に示す通りに活性な酸素ラジカルはW表面に吸着してWO3を生成する。
O3=O2+O* … (5)
W+3O*=WO3 … (6)
【0020】
そしてWと活性な酸素ラジカルとに対しH2を供給すると、(7)式に示す通りに活性な酸素ラジカルとH2とでH2Oが生成され、(8)式に示す通りにWとH2OとでW酸化物が生成される。結果的に、Wと活性な酸素ラジカルとに対しH2を供給すると、(1)式と同様の(8)式が導出される。
W+O*+H2=W+H2O … (7)
W+4H2O=WO3[H2O](gas)+3H2 … (8)
【0021】
通常、H2濃度はO3濃度に比べて大きな値をとるので、(7)式で生成されるH2O濃度はO3濃度に依存する。
【0022】
(8)式の反応平衡定数は(3)式と同様の(9)式で表される。(9)式を書き直すと、(9)式は(10)式となり、(4)式と同様に表される。
K=(PWO3H2O)(PH2)3/(PH2O)4 … (9)
PWO3H2O=(PH2O)4/(PH2)3exp(−ΔG/kT) … (10)
【0023】
酸化原料としてO3を用いた場合にもH2Oを用いた場合と同様に、(10)式からWの酸化を低減するためには、H2Oの分圧を低減し、H2の分圧を増大させて、成膜温度を下げる必要がある。
【0024】
(4),(10)式から、H2分圧を一定としてH2O分圧を増加させた場合、Wの酸化量は増大する。逆に、H2O分圧を一定としてH2分圧を増大させた場合はWの酸化量は減少する。このようにWの酸化量はH2O(又はO3)とH2との分圧に依存している。
【0025】
本発明の好ましい実施例においては、W上にSi原料とH2O(又はO3)のような酸化原料を交互に供給する場合に、H2O(又はO3)によるWの酸化を防止するためH2O(又はO3)供給時にH2を同時に供給してH2Oの分圧を低減してWの酸化を防止しつつ、Si原料をH2O(又はO3)により酸化させるようになっている。
【0026】
なお、H2O(又はO3)とH2との分圧比は供給比と略同様であるため、「分圧比」と「供給比」とは互いに同様のものと考えてよい。
【0027】
次に、図1を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置について説明する。
【0028】
図1は本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の概略構成を示す断面図であり、特にMPU/ASICメタルハーフピッチ65nm以降の先端デバイスであってALD法によりSi酸化膜が形成されている半導体装置の一例を示している。
【0029】
半導体装置15はSi基板20を有しており、Si基板20の表面近傍にはSiO2層21が埋め込まれている。SiO2層21上のSi層23には素子分離のためのSiO2領域22が形成され、各SiO2層22間に複数の素子領域16が形成されている。各素子領域16にはソース領域24,25とドレイン領域27,26が形成されている。ソース領域25とドレイン領域26との間のSi層23の表面にはゲート酸化膜28が形成されている。
【0030】
ゲート酸化膜28上にはゲート電極31が形成されている。ゲート電極31はW膜30から構成されている。ゲート電極31の側面にはサイドウォールとしてのSiO膜32とSiN膜33とがこの順に形成されている。低濃度のソース領域25と低濃度のドレイン領域26はゲート電極31に対して自己整合的に形成されており、高濃度のソース領域24と高濃度のドレイン領域27はSiO膜32,SiN膜33に対して自己整合的に形成されている。半導体装置15では、ゲート酸化膜28、ゲート電極31、ソース領域24,25、ドレイン領域27,26を備えるMOSトランジスタ17が各素子領域16に形成されている。
【0031】
なお、ゲート電極31の構成材料として酸化が問題とならないポリサイド(WSix/PolySi)が用いられる場合、サイドウォールとしてのSiO膜32とSiN膜33とはそれぞれ680℃,700℃の温度でCVD法により形成されるが、PolySi電極では空乏化による駆動力の低下が生ずるため、半導体装置15のようなMPU/ASICメタルハーフピッチ65nm以降の世代では、上記の通りにゲート電極としてメタルゲート(W膜30)が使用されている。
【0032】
また、ゲート電極31の側面に対し直接的にSiN膜33を形成すると接合容量を持つため、本実施例に係る半導体装置15のように、デバイス構造の縮小化に伴ってゲート電極31の側面をSiO膜32で絶縁するのが一般的となっている。更に、Si基板20については、接合容量やリーク電流を低減するため、Si基板20の下層はSOI(Silicon On Insulater)等の絶縁材料が用いられる傾向にある。
【0033】
MOSトランジスタ17が形成されたSi基板20の表面の全面にはエッチングストッパとなるSiN層34が形成されている。SiN層34上には層間絶縁膜となるSiO2膜35が形成されている。SiN層34とSiO2層35とには、MOSトランジスタ17のソース領域24とドレイン領域27とを露出させるビアホール36が形成されている。ソース領域24とドレイン領域27とからSiO2層35の上面に至る部分には、ビアホール36を介して配線金属37が延在している。
【0034】
SiO2層35の上面の全面には、SiO2層35上に露出した配線金属37を覆うようにSiN層38が形成されている。SiN層38上には低誘電率のポーラス層39が形成され、ポーラス層39上にはSiO2層40が設けられている。ポーラス層39とSiO2層40とからなる層間絶縁膜にはビアホール41が形成されており、ビアホール41には配線金属42が埋め込まれている。以後、SiN層38を介在させた状態でポーラス層39とSiO2層40とからなる層間絶縁膜が複数層にわたって積層されており、その各層に対し配線金属42が貫通するように形成されている。
【0035】
以上の半導体装置15では、W膜30を形成した後にSiO膜32とSiN膜33とが順次形成されるが、SiO膜32を形成させる際に、W膜30が酸化されるとWの酸化による体積膨張で形状が変わるという問題を引き起こすため、本発明の好ましい実施例では、W膜30の酸化を防止しつつW膜30に対しALD法によりSiO膜32が形成されている。
【0036】
次に、図2を参照しながら、本発明の好ましい実施例を実現するにあたって検討した選択酸化装置について説明する。
【0037】
図2は、本発明の好ましい実施例に係る選択酸化装置の概略的な構成を示す図面であり、例えばSiとWとが同時にウエハ表面に存在するような半導体装置において、Wの酸化を防止しつつSiを選択的に酸化させるための概略的な構造を示している。
【0038】
選択酸化装置50は主には、ガス供給機構60、触媒式水分発生装置(CWVG)70、処理炉80、ロードロック室90等で構成されている。ガス供給機構60にはN2,H2,O2の各ガスの供給管61〜65が設けられている。供給管62〜65にはそれぞれバルブ62a〜65aとマスフローコントローラ62b〜65bとが1つずつ設けられており、バルブ62a〜65aの開閉とマスフローコントローラ62b〜65bの制御とで各ガスの供給やその停止、流量調整等を行うことができるようになっている。N2の供給管61は各供給管62〜64に連結しており、各供給管62〜64内のガスをパージすることができるようになっている。
【0039】
CWVG70は触媒によりH2とO2とからH2Oを生成するリアクタ71を有している。リアクタ71の一方の側には、H2の供給管62とO2の供給管63とが互いに連結して構成された供給管66が接続されている。リアクタ71の他方の側には、当該リアクタ71で生成したH2Oを処理炉80に供給する供給管72が接続されている。供給管66と供給管72との各中途部にはヒータ73〜75が設けられており、供給管66と供給管72とを流通するガスを加熱することができるようになっている。また供給管72にはH2の供給管64が接続されている。
【0040】
処理炉80はウエハに対し処理を行う処理室を構成するもので、当該処理炉80には多数枚のウエハ81を搭載したボート82が収容されるようになっている。処理炉80の内部には側壁に沿って延在するノズル83が設けられている。ノズル83は供給管72と連結しており、供給管72からのガスの供給を受けて処理炉80の内部にそのガスを供給するようになっている。処理炉80には排気管84が接続されており、処理炉80の内部の余分なガスを排気することができるようになっている。処理炉80の外部にはヒータ85が設けられており、処理炉80の内部を加熱することができるようになっている。
【0041】
ロードロック室90は処理炉80の下部に設けられている。ロードロック室90の上部にはゲートバルブ91が設けられており、ゲートバルブ91を介してボート82を処理炉80とロードロック室90との間で昇降することができるようになっている。ロードロック室90の側部にもゲートバルブ92が設けられており、ゲートバルブ92を介してボート82をロードロック室90の内部と外部との間で搬入・搬出することができるようになっている。ロードロック室90にはN2の供給管65が通じており、ロードロック室90の内部をN2雰囲気にすることができるようになっている。またロードロック室90には、真空ポンプ93に接続された排気管94が接続されている。排気管94の中途部にはバルブ95が設けられており、バルブ95を開けた状態で真空ポンプ93を作動させることでロードロック室90の内部を真空引きすることができるようになっている。
【0042】
以上の選択酸化装置50では、供給管62,63,66を通じてH2とO2とをリアクタ71に供給してH2Oを発生させるとともに、供給管64を通じて供給管72にH2を供給することができる。そしてH2OとH2とを混合した状態で供給管72からノズル83を通じて処理炉80の内部に流入させ、ウエハ81に対しH2OとH2とを供給し、Wの酸化を防止しつつSiを選択的に酸化させることができるようになっている。
【0043】
次に、図3を参照しながら、W膜の酸化を防止しつつそのW膜上に酸化膜を形成する際の原理について説明する。
【0044】
図3は、温度とH2に対するH2Oの分圧とに対するWの酸化・還元領域とSiの酸化・還元領域とを示す概略図である。
【0045】
酸化原料の一例としてH2Oを用いた場合、H2O分圧が高い領域ではWの酸化が進行し、温度が高い領域ではSiO2の還元が行われ、この中間領域ではWO3の還元とSiの酸化とが同時に進行する。Siの酸化速度はH2O分圧と共に上昇し酸化膜厚は増大する。
【0046】
図3から、温度が100〜450℃の範囲においてH2に対するH2Oの分圧比が図3中符号400で示す曲線(酸化還元境界線)以下である場合には、WO3は還元されWの酸化を防止することができることがわかる。詳しくは、温度とH2に対するH2Oの分圧比とを(T(℃),H2O/H2)とした場合に、(T(℃),H2O/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)となっており、温度が100〜450℃の範囲内においてH2に対するH2Oの分圧比がこれら各点を結ぶ直線(図3中符号500で示す直線)以下であれば、WO3は還元されWの酸化を防止することができることがわかる。
例えば、温度が400℃でH2に対するH2Oの分圧比を2×10−1以下とすれば、WO3は還元されWの酸化を防止することができる。
【0047】
なお、Wの酸化を防止しつつSiを酸化させるためには温度の下限値を100℃とする必要があり、その下限値を100℃とするのは、温度が100℃未満ではSiに対するH2Oの酸化能力が失われるか、又は低減するからである。
【0048】
酸化原料の他例としてO3を用いた場合には、十分なH2雰囲気下においては、温度が450℃以下の低温領域で(11),(12)式に示す通りにO3からH2Oが生成され、温度が450℃を上回る領域でも(13),(14)式に示す通りにO3からH2Oが生成され、酸化原料の一例としてH2Oを用いた場合と同様に、最終的にはWO3の還元とSiの酸化とがH2Oの分圧で表現される。
O3=O2+O* … (11)
O*+H2=H2O … (12)
O3=3O* … (13)
3O*+3H2=3H2O … (14)
【0049】
ただし、酸化原料の他例としてO3を用いた場合、温度が450℃以下の低温領域では1モルのO3に対して1モルの酸素ラジカルが生成される((11)式参照)のに対し、温度が450℃を上回る高温領域では1モルのO3に対して3モルの酸素ラジカルが生成される((13)式参照)ため、低温領域と高温領域とでH2O濃度が変わることに考慮すべきである。
【0050】
なお、処理温度が450℃以下の低温領域で酸化原料としてO3を用いた場合においては、(11),(12)式に基づき、1モルのO3から1モルのH2Oが生成される(400℃でのO3の熱分解は99.9%である。)から、酸化原料としてO3を用いてもこのO3は酸化原料としてのH2Oと同等のものと考えることができ、ひいては温度とH2に対するO3の分圧比との関係も温度とH2に対するH2Oの分圧比との関係と同等のものと考えることができる。
【0051】
次に、図4を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置について説明する。
【0052】
図4は、本発明の好ましい実施例に係るALD酸化膜形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0053】
ALD酸化膜形成装置202はロードロック室300を有している。ロードロック室300の上部にはマニホールド302とOリング303とを介して処理炉304が設けられている。処理炉304の内部には複数枚のウエハ310を搭載したボート312が収容されており、ウエハ310の表面にはW膜が形成された状態となっている。ボート312はシールキャップ314により回転自在に支持されている。シールキャップ314はOリング316を介してマニホールド302のフランジ部に密着しており、処理炉304の下部が閉塞されている。ALD酸化膜形成装置202では、少なくともシールキャップ314、Oリング316、マニホールド302、Oリング303、処理炉304により、ウエハ310に対し処理を行う処理室318が形成されている。
【0054】
処理炉304にはノズル320,324が設けられている。ノズル320,324は処理炉304の内壁に沿って延在しており、その中途部に多数の供給孔322,326が設けられている。ノズル320にはSi原料(例えばTDMAS)を流入させるようになっており、そのSi原料を供給孔322から処理室318に供給することができるようになっている。他方、ノズル324には酸化原料(例えばH2OやO3)を流入させるようになっており、その酸化原料を供給孔326から処理室318に供給することができるようになっている。
【0055】
マニホールド302には排気管330が接続されており、処理炉304のガスを排気することができるようになっている。処理炉304の外部にはヒータ340が設けられており、処理室318を加熱することができるようになっている。
【0056】
以上のALD酸化膜形成装置202では、基本的に、処理室318をヒータ340で加熱しながら、処理室318に対しノズル320,324を通じてSi原料とH2O等の酸化原料とを交互に複数回繰り返し供給し、ウエハ310のW膜上にSi酸化膜を形成することができるようになっている。特に本実施例では、ノズル324を通じた酸化原料の供給に際しそれに加えてH2も同時に供給するようになっており、W膜の酸化を防止しつつSi酸化膜を形成するようになっている。
【0057】
なお、酸化原料としてH2Oを用いる場合には、例えば、上記選択酸化装置50の供給管72をノズル324に連結してH2OとH2とを同時に処理室318に供給することができる。
【0058】
また、図3から、ヒータ340により処理室318のウエハ310を400℃の低温領域で加熱する場合は、ウエハ310のW膜の酸化を防止するためには、H2に対するH2Oの分圧比を2×10−1以下にする必要がある。
【0059】
更に、酸化原料としてはH2O以外にもO2やO3等を使用することができる。O2やO3をH2と同時に供給すると、O2やO3をH2と反応させてH2Oを生成することができるからである。酸化原料としてO2を用いる場合は、H2と反応させるために処理室318の温度を少なくとも500℃以上に上げる必要があるが、酸化原料としてO3を用いる場合は低温での生成が可能である((11),(12)式参照)。
【0060】
また、処理室318には、ノズル320からピリジン(CAS No.110-86-1, C5H5N, 分子量79.1)のような触媒をSi原料とともに供給してSi酸化膜を形成してもよいし、ノズル320及びノズル324からピリジンのような触媒をSi原料とH2Oとともに供給してSi酸化膜を形成してもよい。
【0061】
更に、ALD酸化膜形成装置の他例としてプラズマを発生させる装置を使用し、H2とプラズマ励起させたO2とでH2Oを発生させるようにしてもよい。
【0062】
下記に、図5を参照しながら、図4のALD酸化膜形成装置の変形例であって、プラズマを発生可能なALD酸化膜形成装置の一例を示す。
【0063】
処理炉304には、処理室318にO2を供給するためのノズル114が設けられている。ノズル114は処理炉304の内壁に沿って延在しており、その中途部に多数の供給孔211が形成されている。更に、処理炉304には、1対の電極230,231とそれを保護するカバー218,220とが設けられている。電極230,231とカバー218,220も処理炉304の内壁に沿って延在しており、電極230,231がカバー218,220に挿通された状態となっている。
【0064】
電極230,231間にはバリアブルコンデンサ232と交流電源233とが設けられており、制御装置9がバリアブルコンデンサ232と交流電源233とに接続されている。
【0065】
また、処理炉304には、ノズル114、電極230,231及びカバー218,220を囲むように隔壁212が設けられている。隔壁212は処理炉304の内壁に沿って立設されており、ノズル114等と同様に、供給孔238が形成されている。
【0066】
以上のALD酸化膜形成装置202では、電極230,231間に電圧を印加すると、隔壁212と処理炉304の内壁とで囲まれた領域でプラズマを発生させることができるようになっている。この場合において、ノズル114を通じてO2を処理炉304に供給すると、酸素ラジカルが生成され、当該酸素ラジカルが隔壁212の供給孔238を通じて処理室318に供給され、処理室318内でH2Oを発生させることができる。
なお、O2の供給と同時にAr、N2のような不活性ガスを処理炉304に供給してもよい。
【0067】
次に、図6〜図9を参照しながら、ALD酸化膜形成装置を用いた本発明の好ましい実施例に係る酸化膜の形成方法を説明する。
【0068】
まず、図6を参照しながら、通常のALD法によるSi酸化膜のプロセスシーケンスについて説明する。
Si酸化膜の形成に先立ち、W膜が形成された複数のウエハ310をボート312に搭載した状態でこれらウエハ310をロードロック室300から処理室318に搬入し、図6に示すサイクルの処理を繰り返し実行する。1つのサイクルは主には4つのステップから構成されている。
【0069】
第1のステップでは、ヒータ340により処理室318内のウエハ310を所定の温度に加熱しながら、ノズル320から処理室318内にSi原料を供給し、ウエハ318の表面にこの原料を吸着させる。
第2のステップでは、不活性ガスにより処理室318内をパージして当該処理室318内に残留したSi原料を排気管330から処理室318外に排出する。
第3のステップでは、ヒータ340により処理室318内のウエハ310を第1のステップと略同じ温度で加熱しながら、酸化原料(例えばH2OやO3)をノズル324から処理室318内に供給し、ウエハ310の表面に吸着しているSi原料と酸化原料との反応によりSi酸化膜を形成する。
第4のステップでは、不活性ガスにより処理室318内をパージし、処理室318内に残留した酸化原料を排気管330から処理室318外に排出する。
【0070】
第1〜第4のステップの各処理時間は、例えば、第1のステップ(Si原料供給工程)では1〜30秒であり、第2のステップ(パージ工程)では5〜15秒であり、第3のステップ(酸化原料供給工程)では5〜60秒であり、第4のステップ(パージ工程)では3秒である。
【0071】
なお、第1〜第4のステップの処理は、処理ガス(Si原料ガス、酸化原料ガス)の供給や排気等のタイミング、処理室318内の圧力、ヒータ340の動作等を制御しながら実行する。
【0072】
これに対し、本発明の好ましい実施例では、下記のシーケンス(A)〜(C)を採用する。
具体的にシーケンス(A)では、図7に示す通り、第1,第2,第4のステップを前述した図6のALD酸化膜の形成工程と同様とし、第3のステップにおいて、酸化原料(例えばH2OやO3)とH2とを同時にノズル324から処理室318内に供給する。
【0073】
特にシーケンス(A)では、第3のステップにおいて、処理室318の加熱温度とH2に対するH2Oの供給比とを制御してW膜の酸化を防止するようにする。すなわち、図3においてWO3が還元される領域を選択するように、処理室318の加熱温度とH2に対するH2Oの供給比とを制御する。
【0074】
例えば、処理室318を400℃に加熱しながら酸化原料としてH2Oを供給する場合は、H2に対するH2Oの供給比を2×10−1以下とする。処理室318を100〜450℃の範囲内で加熱する場合は、H2に対するH2Oの供給比を図3中符号400で示す曲線以下(又は図3中符号500で示す直線以下)とする。その結果、シーケンス(A)では、W膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、450℃又はそれ以下という低温でもSi原料が酸化され、W膜の酸化を防止しつつ、そのW膜上に450℃又はそれ以下という低温でSi酸化膜を形成することができる。
【0075】
また、処理室318を100〜450℃に加熱しながら酸化原料としてO3を供給する場合も、H2に対するO3の供給比を、H2に対するH2Oの供給比と同等に扱うことで、W膜の酸化を防止しつつ、そのW膜上に450℃以下という低温でSi酸化膜を形成することができる。
【0076】
シーケンス(A)の変形例に係るシーケンス(B)では、図8に示す通り、基本的には第1〜第4のステップをシーケンス(A)のステップと同様とし、特に第3のステップにおいて酸化原料(例えばH2O)とH2とに加えて触媒を処理室318に供給する。触媒としては前述のピリジンのような原料が使用可能であり、当該触媒により450℃以下という低温でSi酸化膜を容易に形成することができる。
なお、シーケンス(B)では、第1のステップにおいても、Si原料に加えてピリジンのような触媒を処理室318に供給してもよい。
【0077】
シーケンス(A)の変形例に係るシーケンス(C)では、基本的に第1〜第4のステップをシーケンス(A)のステップと同様とする。そして特に、図5に示すようなプラズマを発生可能なALD酸化膜形成装置を用いるとともに酸化原料としてO2を用い、第3のステップにおいて、プラズマ励起させたO2と、励起させていないH2とを、同時に処理室318内に供給する。
【0078】
なお、本発明の好ましい実施例では、Wの酸化を防止しつつ低温で酸化膜を形成することを目的としているから、Wを酸化することがない所望の膜厚まで酸化膜を形成した後は、H2の供給を行わずに酸化膜を形成してもよく、この場合には酸化膜の生産性(成膜速度)を向上させることができる。
【0079】
すなわち、Wが酸化しないと考えられる所望の膜厚までは、シーケンス(A)〜(C)に従うような酸化原料とH2との同時供給で酸化膜の成膜を行い、Wが酸化しない膜厚に達したら、それ以降はH2の供給を行わずに図6のシーケンスに従うような通常のALD法による成膜に切り替える。ここでいう「通常のALD法」とは、H2の供給を行わない状態で、Si原料と酸化原料とを交互に複数回繰り返し供給してSi酸化膜を形成する方法のことである。
【0080】
W上に形成した酸化膜の膜厚と、この酸化膜を透過してWを酸化させる酸化原料との関係については、酸化膜中の酸素の拡散係数を算出することにより求めることができる。
【0081】
本実施例において、O3によるWの酸化を回避することができる酸化膜の膜厚X0は、線則に則って(15)式で表される。
X0=B/A×t … (15)
「B/A」=Ce−E2/kTであり、「C」=18.35Å/秒であり、「E2」=7.5×10−2eVであり、「k」はボルツマン定数であってk=8.62×10−5eVK−1であり、「t」はO3の供給時間(酸化時間)である。
【0082】
例えば、処理室318を300℃に加熱しながらO3を用いてSi酸化膜の成膜を行う場合において、Kの値は273+300=573(K)であり、B/Aの値は約4.01Å/秒と算出することができる。O3の供給時間を5秒とすると、X0の値は約20Åと算出することができる。Si酸化膜の1層当たりの膜厚は約0.7Åであるから、Si酸化膜を29層分だけ積層すればSi酸化膜の膜厚が20Åに達し、O3によるWの酸化を回避することができると考えられる。
【0083】
従って、この場合においては、Si酸化膜を29層分だけ積層してその膜厚が20Åに達するまでは、O3とH2との供給を行うALD法によりSi酸化膜を形成し、Si酸化膜の膜厚が20Åに達した後は、O3とH2との供給工程においてH2の供給を行わずに、通常のALD法によりSi酸化膜を形成すればよい。その結果、Si酸化膜の生産性(成膜速度)を向上させることができる。
【0084】
次に、図10を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置について説明する。
【0085】
当該基板処理装置は、半導体装置(IC(Integrated Circuits))の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置の一例として構成されるもので、以下の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し酸化処理等を行なう縦型の装置を使用した場合について述べる。
図10は、本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【0086】
基板処理装置101では、基板の一例としてシリコン等からなるウエハ200が使用され、ウエハ200を収納するウエハキャリアとしてカセット110が使用される。基板処理装置101は筐体111を備えており、筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設されている。正面メンテナンス口103には開閉自在な正面メンテナンス扉104が建て付けられている。
【0087】
メンテナンス扉104には、カセット搬入搬出口112が筐体111内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口112はフロントシャッタ113によって開閉されるようになっている。
【0088】
カセット搬入搬出口112の筐体111内側にはカセットステージ114が設置されている。カセット110は、工場内搬送装置(図示略)によって、カセットステージ114上に搬入されたり、カセットステージ114上から搬出されたりされるようになっている。カセットステージ114は、工場内搬送装置によって、カセット110内でウエハ200が垂直姿勢を保持し、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置されるように構成されている。
【0089】
筐体111内の前後方向の略中央下部には、カセット棚105が設置されている。カセット棚105は複数段複数列にわたり複数個のカセット110を収容可能な棚であり、カセット110内のウエハ200を出し入れすることが可能となるように配置されている。カセット棚105はスライドステージ106上に横行可能に設置されている。カセット棚105の上方にはバッファ棚107が設置されており、予備のカセット110を保管することができるようになっている。
【0090】
カセットステージ114とカセット棚105との間にはカセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されている。カセット搬送装置118は、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセット110をカセットステージ114とカセット棚105とバッファ棚107との間で搬送するようになっている。
【0091】
カセット棚105の後方にはウエハ移載機構125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(図示略)とで構成されている。なお、ウエハ移載装置エレベータは耐圧筐体140の左側端部に設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータとの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cでウエハ200をピックアップしてそのウエハ200をボート217に装填(チャージング)したり、ボート217から脱装(ディスチャージング)したりするように構成されている。
【0092】
バッファ棚107の後方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するクリーンユニット134aが設置されている。クリーンユニット134aは、供給ファン及び防塵フィルタで構成されており、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0093】
ウエハ移載装置エレベータ側と反対側である右側端部にも、クリーンエアを供給するクリーンユニット(図示略)が設置されている。当該クリーンユニットもクリーンユニット134aと同様に供給ファン及び防塵フィルタで構成されている。当該クリーンユニットから供給されたクリーンエアはウエハ移載装置125aの近傍を流通し、その後に筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0094】
ウエハ移載装置125aの後側には、大気圧未満の圧力(負圧)を維持可能な機密性能を有する耐圧筐体140が設置されており、耐圧筐体140によりボート217を収容可能な容積を有するロードロック方式の待機室であるロードロック室141が形成されている。
【0095】
耐圧筐体140の正面壁140aにはウエハ搬入搬出口142が開設されており、ウエハ搬入搬出口142はゲートバルブ143によって開閉されるようになっている。耐圧筐体140の側壁にはロードロック室141へ窒素ガス等の不活性ガスを給気するためのガス供給管144と、ロードロック室141を負圧に維持しながらロードロック室141内のガスを排気するため排気管(図示略)とがそれぞれ接続されている。
【0096】
ロードロック室141の上方には処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は炉口ゲートバルブ147により開閉されるように構成されている。
【0097】
図10に模式的に示されているように、ロードロック室141にはボート217を昇降させるためのボートエレベータ115が設置されている。ボートエレベータ115には連結具としてのアーム(図示略)が連結されており、当該アームには蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219はボート217を垂直に支持するもので、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0098】
ボート217は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0099】
次に、基板処理装置101の動作について説明する。
【0100】
カセット110がカセットステージ114に供給されるに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口112からカセットステージ114上に搬入される。このとき、カセット110内のウエハ200は垂直姿勢に保持され、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。
【0101】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセットステージ114から持ち上げられるとともに、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となりかつカセット110のウエハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、右周り縦方向90°回転させられる。引き続いて、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないしバッファ棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット搬送装置118によってカセット棚105に移載されるか、もしくは直接カセット棚105に搬送される。
【0102】
その後、スライドステージ106がカセット棚105を水平移動させ、移載の対象となるカセット110をウエハ移載装置125aに対峙する様に位置決めする。そして、予め内部が大気圧状態とされていたロードロック室141のウエハ搬入搬出口142がゲートバルブ143の動作により開放され、ウエハ200がカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ウエハ搬入搬出口142を通じてロードロック室141に搬入され、ボート217へ移載されて装填される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、後続のウエハ200をボート217に装填する。
【0103】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、ウエハ搬入搬出口142がゲートバルブ143によって閉じられ、ロードロック室141が真空引きされ減圧される。ロードロック室141が処理炉202内の圧力と同圧に減圧されると、処理炉202の下端部が炉口ゲートバルブ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されて、シールキャップ219に支持されたボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。
【0104】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理(前述のSi酸化膜の形成処理)が実施される。処理後は、ボートエレベータ115によりボート217が引き出され更に、ロードロック室140内部を大気圧に復圧させた後にゲートバルブ143が開かれる。その後は、上記と逆の手順で、カセット110及びウエハ200が筐体111の外部に搬出される。
【実施例2】
【0105】
次に、図11を参照しながら、本発明の好ましい実施例に係る半導体装置の変形例について説明する。
【0106】
図11は、図1の半導体装置の変形例を示す図面である。
図11の半導体装置15は、図1の半導体装置15と略同様の構成を有しているが、ゲート電極31が下層のpoly-Si層29とその上層のW膜30とから構成されている。このような半導体装置15においても、W膜30を形成した後にSiO膜32とSiN膜33とが順次形成されるが、SiO膜32を形成させる際に、W膜30が酸化されるとWの酸化による体積膨張で形状が変わるという問題を引き起こすため、酸化原料の供給の際にH2を供給しながらW膜の酸化を防止つつ、W膜30に対しALD法によりSiO膜32が形成されている。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の好ましい実施の形態によれば、表面にタングステン膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、前記基板を400℃に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、前記基板を400℃に加熱しながら、第2の反応物質である水と、水素とを、前記水素に対する前記水の比率を2×10−1以下として前記処理室内に供給する工程と、を交互に複数回繰り返して、前記タングステン膜を含む基板表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0108】
本発明の好ましい実施の形態によれば、特定の比率で水と水素とを処理室内に供給するから、タングステン膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、400℃以下という低温でも第1の反応物質が酸化される。そのため、タングステン膜の酸化を防止しつつ、そのタングステン膜上に400℃という低温でシリコン酸化膜を形成することができる。
【0109】
本発明の他の好ましい実施の形態によれば、表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、前記酸化膜の形成工程は、前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0110】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、酸素原子を含む第2の反応物質と水素とを処理室内に供給するから、金属膜が仮に酸化されたとしてもその酸化物は還元されるし、低温でも第1の反応物質が酸化される。そのため、金属膜の酸化を防止しつつ、その金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる。
【0111】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記第1の反応物質の供給と前記第2の反応物質及び前記水素の供給とを交互に複数回繰り返して前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供され、この製造方法の一例としてALD法が使用される。
【0112】
好ましくは、前記金属膜がタングステン膜であり、前記所定の温度が100〜450℃であり、前記第2の反応物質が水であり、前記水素に対する前記水の供給比が、前記所定の温度と前記水素に対する前記水の供給比とを(T,H2O/H2)とした場合に、(T,H2O/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)の各点を結ぶ直線以下である半導体装置の製造方法が提供される。
【0113】
好ましくは、前記金属膜がタングステン膜であり、前記所定の温度が100〜450℃であり、前記第2の反応物質がオゾンであり、前記水素に対する前記オゾンの供給比が、前記所定の温度と前記水素に対する前記オゾンの供給比とを(T,O3/H2)とした場合に、(T,O3/H2)=(100℃,8×10−4),(200℃,2×10−2),(300℃,9×10−2),(400℃,2×10−1),(450℃,2.5×10−1)の各点を結ぶ直線以下である半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記酸化膜の厚さが所望の厚さに達した後は、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素の供給を行わずに前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
好ましくは、前記所望の厚さが次式で定義されるX0である半導体装置の製造方法が提供される。
X0=B/A(t+τ)
但し、「B/A」=Ce−E2/kTであり、「C」=18.35Å/秒であり、「E2」=7.5×10−2eVであり、「k」はボルツマン定数であってk=8.62×10−5eVK−1であり、「t」は前記第2の反応物質の供給時間である。
【0116】
好ましくは、前記所定の温度が300℃であり、前記第2の反応物質がオゾンであり、前記酸化膜の形成工程では、前記酸化膜の厚さが20Åに達するまで、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素を前記処理室内に供給し、前記酸化膜の厚さが20Åに達した後は、前記第2の反応物質及び前記水素の供給工程において、前記水素の前記処理室内への供給を行わずに前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0117】
好ましくは、前記酸化膜の形成工程では、前記第1の反応物質と前記第2の反応物質及び前記水素とが同時に前記処理室内に存在するように、前記第1の反応物質の供給と前記第2の反応物質及び前記水素の供給とを同時に行って前記酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供され、この製造方法の一例としてCVD法が使用される。
【0118】
更に好ましくは、シリコン原子を含む第1の反応物質が、TDMAS(Tris dimethyl amino silane)等のシリコンの有機化合物である半導体装置の製造方法が提供される。
【0119】
更に好ましくは、第2の反応物質が、水、オゾン、酸素等の酸化原料である半導体装置の製造方法が提供される。
【0120】
更に好ましくは、第2の反応物質及び水素を供給する際に、ピリジン等の触媒を添加して酸化膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0121】
更に好ましくは、第2の反応物質及び水素を供給する際に、酸化原料の一例としての酸素を励起させるために、プラズマ励起を使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【0122】
更に好ましくは、第1の反応物質の供給工程の後や第2の反応物質及び水素の供給工程の後に、不活性ガスで処理室内をパージする半導体装置の製造方法が提供され、その不活性ガスの一例としてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)を使用する半導体装置の製造方法が提供される。
【0123】
更に好ましくは、処理室内の温度を0〜700℃とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0124】
更に好ましくは、酸化膜の形成工程での処理室圧力を1〜10000Paとする半導体装置の製造方法が提供される。
【0125】
なお、明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む2006年1月17日提出の日本国特許出願2006−008611号の開示内容全体は、本国際出願で指定した指定国、又は選択した選択国の国内法令の許す限り、そのまま引用してここに組み込まれる。
【0126】
種々の典型的な実施の形態を示しかつ説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明の好ましい実施の形態によれば、金属膜の酸化を防止しつつ、その金属膜上に低温で酸化膜を形成することができる。その結果、本発明は、下地となる金属膜が形成された基板に対しその金属膜の酸化を防止しつつ酸化膜を形成する半導体装置の製造方法に特に好適に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、
を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、
前記酸化膜の形成工程は、
前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、
前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、
を有し、
前記処理室内の加熱温度と、水素に対する前記第2の反応物質の供給比を制御することにより、前記金属膜の酸化を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質と第2の触媒を供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の触媒と前記第2の触媒は同じ物質であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質をプラズマ励起により活性化させた状態で、第2の触媒と共に供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
表面に金属膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱手段と、
シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内へ供給する第1の処理ガス供給手段と、
酸素原子を含む第2の反応物質及び水素を前記処理室内へ供給する第2の処理ガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段と、
を有し、
前記処理室内を450℃以下に加熱しつつ、前記基板に対して前記第1の反応物質と、前記第2の反応物質及び水素とを交互に供給し、前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする基板処理装置。
【請求項1】
表面に金属膜が形成された少なくとも1枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記金属膜を含む基板表面にシリコンを含む酸化膜を形成する工程と、
を少なくとも備える半導体装置の製造方法であって、
前記酸化膜の形成工程は、
前記基板を所定の温度に加熱しながら、シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内に供給する工程と、
前記基板を前記所定の温度に加熱しながら、酸素原子を含む第2の反応物質と、水素とを前記処理室内に供給する工程と、
を有し、
前記処理室内の加熱温度と、水素に対する前記第2の反応物質の供給比を制御することにより、前記金属膜の酸化を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質と第2の触媒を供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の触媒と前記第2の触媒は同じ物質であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
表面に金属膜が形成された基板を処理室内に搬入する第1の工程と、
前記処理室内にシリコン原子を含む第1の反応物質と第1の触媒を供給する第2の工程と、
前記処理室内に酸素原子を含む第2の反応物質をプラズマ励起により活性化させた状態で、第2の触媒と共に供給する第3の工程と、
前記基板を前記処理室外へ搬出する第4の工程と、
を有し、前記基板を450℃以下の温度に保ちつつ前記第2の工程と前記第3の工程とを交互に複数回繰り返して前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
表面に金属膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱手段と、
シリコン原子を含む第1の反応物質を前記処理室内へ供給する第1の処理ガス供給手段と、
酸素原子を含む第2の反応物質及び水素を前記処理室内へ供給する第2の処理ガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段と、
を有し、
前記処理室内を450℃以下に加熱しつつ、前記基板に対して前記第1の反応物質と、前記第2の反応物質及び水素とを交互に供給し、前記基板上にシリコン酸化膜を形成することを特徴とする基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−176330(P2011−176330A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74752(P2011−74752)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2007−554910(P2007−554910)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2007−554910(P2007−554910)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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