説明

半導体装置及びその製造方法

本発明は、それぞれ金属及びさらなる元素の両方を含む化合物の第1及び第2の導電材料を有するゲート領域(1D,2D)を持つNMOST1及びPMOST2を備えるCMOS装置(10)に関する。本発明によれば第1及び第2の導電材料は共に前記金属としてモリブデンとタングステンとを含む群から選択される金属を含む化合物を有し、前記第1の導電材料は前記さらなる元素として酸素を有し、前記第2の導電材料は前記さらなる元素としてカルコゲナイドを有する。本発明はこのような装置の魅力的な製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は基板と、第1のソース及びドレイン領域、第1の導電型の第1のチャネル、第1の絶縁領域により前記第1のチャネルから分離され第1の導電材料を含む第1のゲート領域を有する第1の電界効果トランジスタと、第2のソース及びドレイン領域、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のチャネル、第2の絶縁領域により前記第2のチャネルから分離され前記第1の導電材料と異なる第2の導電材料を含む第2のゲート領域を有する第2の電界効果トランジスタと、を有する半導体ボディと、を備え、前記第1及び第2の導電材料は金属とさらなる元素との両方を含む化合物を有する半導体装置に関する。0.1ミクロン領域以下の先端CMOS(相補型金属酸化膜半導体)装置では、様々な理由で金属ゲート又は合金ゲートによるポリシリコンゲートの置き換えが望まれている。本発明はこのような装置の製造方法にも関する。
【0002】
導入パラグラフで説明されたような装置は2000年10月10日に発行されたUS特許6,130,123により知られている。ここでは、CMOS装置のNMOST(N型MOSトランジスタ)及びPMOSTでの使用に適した様々な導電材料が記載されている。前者に適した金属又は合金の例で仕事関数が約4.2eVのものはRu,Zr,Nb,Ta、MoSi及びTaSiである。後者で、約5.2eVの仕事関数を有するその他の中での好適な材料は、Ni,RuO2,MoN及びTaNである。
【0003】
公知の材料の欠点は、既存のIC技術に必ずしも非常に相性が良いとは限らないということである。これは材料がゲート誘電体、キャッピング層及びスペーサの材料を有するゲートスタックの材料に相性が良くあるべきであるという要件を含む。
【0004】
そのため本発明の目的は上記欠点を避け、IC技術に極めて相性が良く製造が容易な装置を提供することである。
【0005】
これを達成するため、導入パラグラフで述べられたタイプの装置は、前記第1及び第2の導電材料が前記金属としてモリブデンとタングステンとを含む群から選択される金属を含む化合物を有し、前記第2の導電材料は前記さらなる元素として酸素を有し、前記第1の導電材料は前記さらなる元素としてカルコゲナイドを有することを特徴とする。カルコゲナイドは元素S,Se及びTeを有する。一方では、材料は現在のIC技術、例えば導電トラックや特に異なるレベルの導電トラック間の接続、において非常に一般的な金属を含む。他方では、本発明による装置におけるさらなる元素はいくつかの利点を備える。第1に、CMOS装置における2つの関連した仕事関数、すなわちそれぞれ5.2eV及び4.1eV、の良好な範囲を与える。さらに一方ではモリブデンとタングステンの両方が、他方ではすべてVI族の元素である酸素とカルコゲナイドが、同じように作用し、すべて現在のIC技術に相性が良い。特に後者は化合物が本発明による方法で製造された場合に持つ。
【0006】
好適な実施例では金属としてモリブデンが選択され、カルコゲナイドとしてテルリウムが選択される。これらの元素を用いて良好な結果が得られる。モリブデン膜にTeを注入したとき、得られる材料の仕事関数は4.1eVに極めて近く、そのためNMOSTでの使用に非常に適している。酸素の添え字が2又はそれより小さい酸化モリブデンは仕事関数が5.2に極めて近い材料をもたらし、そのためPMOSTでの使用に非常に適している。このように好適な金属元素はモリブデンである。
【0007】
好適には、第1及び第2のゲート領域は第1及び第2の導電材料上に導電性でシリコンへのバリヤとしての役割を果たす別の材料の領域を備える。別の材料は窒化チタンのような金属窒化物を有することが好適である。窒化タンタルのような他の金属窒化物も用いることができる。これは装置の効果的な製造を促進する。
【0008】
基板と、第1のソース及びドレイン領域、第1の導電型の第1のチャネル、第1の絶縁領域により前記第1のチャネルから分離され第1の導電材料を含む第1のゲート領域を有する第1の電界効果トランジスタと、第2のソース及びドレイン領域、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のチャネル、第2の絶縁領域により前記第2のチャネルから分離され前記第1の導電材料と異なる第2の導電材料を含む第2のゲート領域を有する第2の電界効果トランジスタと、を有する半導体ボディと、を備え、前記第1及び第2の導電材料には金属とさらなる元素との両方を含む化合物を有する材料が選択される半導体装置の製造方法は、本発明により、前記第1及び第2の導電材料には共に前記金属としてモリブデンとタングステンとを含む群から選択される金属が選択され、前記第2の導電材料は前記さらなる元素として酸素が選択され、前記第1の導電材料は前記さらなる元素としてカルコゲナイドが選択されることを特徴とする。このようにして本発明による半導体装置が得られる。
【0009】
本発明による方法に好適な実施例では、金属としてモリブデンが選択され、カルコゲナイドとしてテルリウムが選択される。
【0010】
第1の変形例は、第1及び第2の絶縁領域上に、第1の絶縁領域の場所ではカルコゲナイドのイオンが注入され、第2の絶縁領域の場所ではマスクにより注入に対して保護される金属の膜が形成されることを特徴とする。
【0011】
別の変形例は、第1及び第2の絶縁領域上に、第2の絶縁領域の場所では酸素と反応させられ、第1の絶縁領域の場所ではさらなるマスクにより酸素に対して保護される金属の膜が形成されることを特徴とする。
【0012】
どちらの変形例も2つの導電材料の形成を容易にする。好適には、酸化の前に注入を行う。このようにして、酸化装置は最小限の遅延で両方の材料のアニールのために用いられることができる。装置内の雰囲気を不活性にし、別の所望の温度サイクルをプログラムすることのみしなくてはならない。このような特徴は容易に組み込むことができる。窒化ケイ素のようなマスクを用いて局所酸化を容易に行うことができる。
【0013】
本発明のこれら及び他の特徴は以下に述べる実施例を図面と合わせて参照して明らかになるであろう。
【0014】
図面は概略図であり寸法通りに描かれておらず、厚さ方向の寸法は明確にするために特に拡大されている。色々な図において、対応する部分には大抵同じ参照番号及び同じハッチングが付されている。
【0015】
図1〜図4は本発明による方法の実施例による装置製造の各段階における本発明による半導体装置の一例の断面を示す。
【0016】
(ほぼ)完成した装置10(図4参照)は、基板11及びそこにNMOSTとして形成される第1のトランジスタ1が形成され、ここではp型シリコンである半導体ボディ12を備える。Nウェル領域33ではPMOSTとして第2のトランジスタ2が形成される。トランジスタ1,2は、それぞれn型及びp型導電性のソース及びドレイン領域1A,1B,2A,2Bと、ここでは二酸化ケイ素を有する絶縁領域1C,2Cと、ゲート領域1D,2Dと、を備える。半導体ボディ12の表面には分離領域25が形成され、二酸化ケイ素(又は例えば金属酸化物の他のゲート誘電体)で埋められた溝の形になっている。
【0017】
NMOST1のゲート領域1Dは、この例では、仕事関数が理想値の約4.2eVに非常に近い約4.1eVであるMo及びTeを含む化合物を有する。PMOST2のゲート領域2Dは、この例では、Mo及びOを含み、MoO、x2であり例えばMoO、の組成である化合物を有し、仕事関数は理想値の約5.2eVに容易に調整することができる。加えて、ゲート領域は共に、仕事関数材料の上にTiN及びポリシリコンの領域を備える。
【0018】
装置10は以下のようにして製造される。開始点(図1参照)は、nウェル33及びSTI(浅溝分離)領域25が形成されたp型基板11である。次に、導電膜21が形成され、その上に金属膜22、ここで好適には多孔質Moが蒸着され5〜20nmの厚さを有する、が形成される。
【0019】
続いて(図2参照)、PMOST2の場所とNMOST1の場所の両方にマスク15が形成される。PMOSTの場所では追加マスク15Aが与えられる。ここでマスク15はTiNを有し、TiN膜の堆積により形成され、マスク15Aは例えばフォトレジスト膜を有する。マスク15は5〜20nmの厚さを有し、マスク15Aは0.5〜2μmの厚さを有する。次に、テルリウムのイオン30がNMOST1の場所の金属膜22に注入される。テルリウムイオンは1−4×1015cm−2の範囲でフラックスと注入され、注入エネルギーは10〜20keVである。一定条件では、NMOST1の場所のみでTeイオン30、又は少なくともその大部分、がMo層22に達する。NMOST1の場所でのゲート誘電体1CへのTeイオンの注入が避けられるように、TiNマスク15の厚さは前述の範囲で調節することができ、このゲート誘電体1Cの下には例えばSiからなる基板が位置する。加えて、マスク15が不要でTe注入後に堆積できるように条件を最適化できる。Mo層22の形成後の早い段階でマスク15が存在するさらなる利点は、例えば保管中などの適度な条件での酸素への制御されていない露出に対してMo層22を保護することである。
【0020】
以下、PMOST2に同様の手順が行われる(図3参照)。ところで未だTiN膜15により覆われている装置10はマスク16により保護されている。このようなマスキング層16の均一な堆積後、PMOST2の場所の部分はフォトリソグラフィ及びエッチングにより除去される。この例で、マスク16は窒化ケイ素を有する。PMOST2の場所のTiN層15も、その上のマスク16と共に除去される。PMOST2の場所のMo層22がO、ここではO、を有するガス状化合物49にT<250℃の加熱下で露出される。Mo層22は局所的にMoO(又は先に示した範囲での組成を持つ化合物)に変換されPMOST2のゲート領域2Dを形成するような条件である。マスク16は酸素不浸透性であるため、NMOST1の場所にTe原子を含む金属層22は影響を受けないままである。
【0021】
この段階で装置10は、例えば温度が700〜1050℃の範囲で窒素雰囲気のスパイクアニールである熱アニール工程に置かれる。このアニールはMoOが形成されている装置に行うことができる。注入をまず行っているおかげで、このような装置はこの段階ですでに好適なアニーリング装置内にある。そのため、この例の方法はかなり効率的である。次に、マスク16がエッチングにより除去される。マスク15の残りは必要なら除去してもよい。しかしその除去は必須ではない。
【0022】
続いてこの例では、例えば窒化チタンのような金属窒化物の導電材料のキャッピング層(図示せず)が装置10上に均一に堆積される。この材料は仕事関数材料と後に堆積されるシリコンとの反応を阻止し、導電材料であるためゲートスタックに存在することも許容される。さらに、穏やかな環境での他のものへの曝露に対して装置を保護する。
【0023】
そしてアモルファス又はポリSiの堆積、フォトリソグラフィ及びエッチングによりゲートスタックが形成されるように通常の方法で製造は続く。ソース及びドレイン領域1A,1B,2A,2Bの浅い部分の形成に、スペーサ44とソース及びドレインの深い注入とが続く。プレメタル誘電体の堆積、そのパターニング、コンタクトメタルの堆積、そのパターニングのようなさらなる工程は図示されていない。
【0024】
本発明はここに述べられた例に限定されず、本発明の範囲内で当業者にとって多くの変形及び変更が可能であることが明らかである。例えば仕事関数の微細な調整をするために、他の素子のトレースを導電材料へ取り入れることができる。Se及びTeのような素子の混合物もその目的のために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による方法の実施例による装置製造の各段階における本発明による半導体装置の一例の断面図である。
【図2】本発明による方法の実施例による装置製造の各段階における本発明による半導体装置の一例の断面図である。
【図3】本発明による方法の実施例による装置製造の各段階における本発明による半導体装置の一例の断面図である。
【図4】本発明による方法の実施例による装置製造の各段階における本発明による半導体装置の一例の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1のソース及びドレイン領域、第1の導電型の第1のチャネル、第1の絶縁領域により前記第1のチャネルから分離され第1の導電材料を含む第1のゲート領域を有する第1の電界効果トランジスタと、第2のソース及びドレイン領域、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のチャネル、第2の絶縁領域により前記第2のチャネルから分離され前記第1の導電材料と異なる第2の導電材料を含む第2のゲート領域を有する第2の電界効果トランジスタと、を有する半導体ボディと、
を備え、
前記第1及び第2の導電材料は金属とさらなる元素との両方を含む化合物を有し、前記第1及び第2の導電材料は共に前記金属としてモリブデンとタングステンとを含む群から選択される金属を含む化合物を有し、前記第2の導電材料は前記さらなる元素として酸素を有し、前記第1の導電材料は前記さらなる元素としてカルコゲナイドを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属としてモリブデンが選択され、前記カルコゲナイドとしてテルリウムが選択されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の導電型はn型を成すことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のゲート領域は第1及び第2の材料の上に、導電性でありシリコンに対して障壁を形成する別の材料の領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記別の材料は金属窒化物を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
基板と、
第1のソース及びドレイン領域、第1の導電型の第1のチャネル、第1の絶縁領域により前記第1のチャネルから分離され第1の導電材料を含む第1のゲート領域を有する第1の電界効果トランジスタと、第2のソース及びドレイン領域、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のチャネル、第2の絶縁領域により前記第2のチャネルから分離され前記第1の導電材料と異なる第2の導電材料を含む第2のゲート領域を有する第2の電界効果トランジスタと、を有する半導体ボディと、
を備える半導体装置の製造方法であって、
前記第1及び第2の導電材料には金属とさらなる元素との両方を含む化合物を有する材料が選択され、前記第1及び第2の導電材料には共に前記金属としてモリブデンとタングステンとを含む群から選択される金属が選択され、前記第2の導電材料は前記さらなる元素として酸素を有し、前記第1の導電材料は前記さらなる元素としてカルコゲナイドを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記金属としてモリブデンが選択され、前記カルコゲナイドとしてテルリウムが選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の絶縁領域上に、前記第1の絶縁領域の場所ではカルコゲナイドのイオンが注入され、前記第2の絶縁領域の場所ではマスクにより注入に対して保護される金属の膜が形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の絶縁領域上に、前記第1の絶縁領域の場所では酸素と反応させられ、前記第2の絶縁領域の場所ではさらなるマスクにより酸素に対して保護される金属の膜が形成されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
酸素化合物及び/又はカルコゲナイド化合物の形成後に装置が熱アニール工程に置かれることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−511149(P2008−511149A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529060(P2007−529060)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052647
【国際公開番号】WO2006/021907
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】