説明

半導体記憶素子の製造方法

【課題】金属ナノ結晶からなる離散的フローティングゲートを、移流集積法により形成する半導体記憶素子の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、シリコン基板1と、シリコン基板1上に形成されたトンネル絶縁膜に対向するように配置された第2の基板21との間に、金属ナノ粒子が分散された粒子分散液22を充填する充填工程と、トンネル絶縁膜の表面に沿った方向に、第2の基板21をシリコン基板1に対して相対的に移動させることにより、トンネル絶縁膜の表面における第2の基板21から露出した領域に形成される粒子分散液22のメニスカス領域23において、粒子分散液22の溶媒を蒸発させることにより、トンネル絶縁膜上に金属ナノ粒子を離散的に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子が離散的に分布したフローティングゲートを有する半導体記憶素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフラッシュメモリ等の不揮発性メモリは、情報を保存するためにフローティングゲートに電荷を保持する。そのため、フローティングゲートに蓄積された電荷を長期間保持できることが、不揮発性メモリとして重要である。
【0003】
図11は、従来のフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。フラッシュメモリ100は、n型のシリコン基板101上にp型のソース電極102およびドレイン電極103を有する。また、n型シリコン基板101、ソース電極102、およびドレイン電極103上には酸化シリコンからなるトンネル酸化膜104が形成されている。トンネル酸化膜104上の、ソース電極102とドレイン電極103との間に当たる領域には、多結晶シリコンからなるフローティングゲート105が形成されており、フローティングゲート105を覆うように酸化シリコンからなる制御酸化膜106が形成されている。制御酸化膜106上には制御ゲート電極107が形成されている。
【0004】
フラッシュメモリ100における情報の記憶は、制御ゲート電極107に電圧を加え、フローティングゲート105に電荷を蓄積することで行われる。フローティングゲート105に電荷が蓄積された状態では、トンネル酸化膜104を介した下のn型のシリコン基板101がソース電極102とドレイン電極103との間で導通するようになる。フローティングゲート105に電荷が蓄積されていない状態では、ソース電極102とドレイン電極103との間が導通しない、または、導通させるためにより高い電圧を加える必要がある。導通させるために加える電圧の差により、記憶された情報「0」と「1」とを区別することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大場竜二、「二重接合を用いた25nmSONOS型メモリ素子」、東芝レビュー、2008、Vol.63、No.2、p.19-23
【非特許文献2】Liu Z, et. al.、「Metal nanocrystal memories. I. Device design and fabrication」、IEEE Transactions on Electron Devices、2002、Vol.49、p.1606-1613
【非特許文献3】Liu Z, et. al.、「Metal nanocrystal memories-part II: electrical characteristics」、IEEE Transactions on Electron Devices、2002、Vol.49、p.1614-1622
【非特許文献4】Shahrjerdi D, et. al.、「Metal nanocrystal memories. I. Device design and fabrication」、IEEE Electron Device Letters、2007、Vol.28、p.793-796
【非特許文献5】アインテスラ社サイト、[online]、平成20年12月24日検索、インターネット<URL:http://www.eintesla.om/products/dip/array.html>
【非特許文献6】Gelest社サイト、「Silanes」、[online]、平成21年7月16日検索、インターネット<URL:http://www.gelest.com/prod_list.asp?pltype=1&classtype=Silanes&currentpage=1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフラッシュメモリ100では、情報の書き込み消去を行う際に薄いトンネル酸化膜104を電流が貫通してフローティングゲート105に電子が出し入れされる。この電流によってトンネル酸化膜104が劣化することが避けられず、絶縁性が劣化してしまうため、書き込み回数に限界があるという問題がある。また、記憶保持の期間もトンネル酸化膜104の劣化に応じて短くなる。また、フローティングゲート105の下のトンネル酸化膜104が劣化して欠陥108が生じ、一部でも導通してしまうと、そこからフローティングゲート105に蓄積された全ての電荷が流出してしまう。そのため、従来のフラッシュメモリ100は、トンネル酸化膜104の劣化に対して弱いという欠点があった。
【0007】
そこで、多結晶シリコン等からなるフローティングゲートの代わりに、シリコンナノ結晶でフローティングゲートを形成することが考えられている(非特許文献1)。図12は、シリコンナノ結晶をフローティングゲートに用いたフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。図12において図11に示す要素と同じ機能を示す要素には同一の符号を付す。ナノ結晶111は、それぞれのナノ結晶111が互いに離間して配置されている。そのため、トンネル酸化膜104の一部が劣化して導通した場合でも、電荷が流出するのは一部のナノ結晶111だけに留まり、他のナノ結晶111は電荷を保持し続けることができる。そのため、ナノ結晶111を用いたフラッシュメモリ100が実現すれば、トンネル酸化膜104の劣化に対して強いフラッシュメモリとなり得る。
【0008】
しかしながら、トンネル酸化膜104上のシリコンナノ結晶は、サイズを均一にして形成することが困難であるという問題がある。フローティングゲートとして機能させるために要求されるシリコンナノ結晶のサイズは約2nm以下であるが、従来の製造法ではシリコンナノ結晶のサイズの分布を±10%の範囲に抑えることは困難である。シリコンナノ結晶は、一桁nmのサイズになると量子効果が発現するため、一桁nmの領域におけるシリコンナノ結晶の僅かなサイズの違いは、個々のシリコンナノ結晶の仕事関数に大きな差をもたらす。シリコンナノ結晶の仕事関数は、電荷を蓄積または放出するために必要な制御ゲート電極に印加する電圧に関係するので、シリコンナノ結晶のサイズが均一でない場合、フラッシュメモリの特性にばらつきが生じる。現在の技術では、フラッシュメモリ素子を製造した後に、素子毎にメモリ特性を評価し選別する必要がある。そのため、シリコンナノ結晶を用いたフラッシュメモリの生産歩留まりは低いものとなる。
【0009】
そこで、シリコンナノ結晶に代えて、金属ナノ結晶をフローティングゲート(電荷保持層)に用いることが提案されている。金属ナノ結晶、特に貴金属ナノ結晶の場合、一桁nmのサイズであってもより大きいバルクサイズであってもその仕事関数はほとんど同じである。そのため、個々の金属ナノ結晶のサイズに差があったとしても、フラッシュメモリのデバイス特性にはほとんど影響しない。そのため、トンネル酸化膜(絶縁層)と制御酸化膜(制御絶縁層)との間に二重接合される、金属ナノ結晶が離散的に配置されたフローティングゲートを製造することができれば、安定して高品質のフラッシュメモリを製造することができると考えられる。また、金属ナノ結晶のポテンシャルはシリコン基板のポテンシャルよりも低いため、蓄積した電子が流出しにくく、金属ナノ結晶のフラッシュメモリは情報を長期間記憶することができる。
【0010】
現状では、金属ナノ結晶を用いたフローティングゲートを、リソグラフィ法を用いて製造する方法が研究されている(非特許文献2〜4)。これによれば通常の半導体製造方法と同様に、トンネル酸化膜上に、離間したナノサイズの凹部をフォトレジストによって設け、スパッタリング等により凹部に金属を堆積することによって離間した金属ナノ結晶の層を得る。
【0011】
しかしながら、スパッタリング等のPVD(物理気相堆積法)またはCVD(化学気相堆積法)によって金属ナノ結晶を生成する工程では、投入する金属材料に対して、有効に使用される金属材料、すなわちデバイス上に金属ナノ結晶として形成される金属材料は、1%程度であり、投入する金属材料の大部分は廃棄物となる。そのため、特に金属ナノ結晶に貴金属を用いる場合はコストが大きくなり、また、環境への負荷も大きい。また、リソグラフィ法を用いる製造方法では工程が多く、装置および施設が大型になりやすい。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属ナノ結晶からなる離散的フローティングゲートを、移流集積法により形成する半導体記憶素子の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体記憶素子の製造方法は、半導体基板上に形成された絶縁層上に、金属粒子が離散的に分布したフローティングゲートを有する半導体記憶素子の製造方法であって、上記の課題を解決するために、上記絶縁層と、上記絶縁層に対向するように配置された対向部材との間に、上記金属粒子が分散された粒子分散液を充填する充填工程と、上記絶縁層の表面に沿った方向に、上記対向部材を上記半導体基板に対して相対的に移動させることにより、上記絶縁層の表面における上記対向部材から露出した領域に形成される上記粒子分散液のメニスカス領域において、上記粒子分散液の溶媒を蒸発させることにより、上記絶縁層上に上記金属粒子を離散的に配置する金属粒子配置工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、粒子分散液は半導体基板上の絶縁層と対向部材との間に充填されており、半導体基板と対向部材との位置を相対的に変化させることにより、絶縁層の表面において対向部材から露出した領域に粒子分散液のメニスカス領域が形成される。ここで、粒子分散液のメニスカス領域とは、絶縁層の表面において対向部材から露出した領域に、粒子分散液の界面張力により形成される粒子分散液の液膜を意味する。粒子分散液の溶媒は主に対向部材から露出するメニスカス領域において蒸発するため、粒子分散液が作業環境の温度および湿度の変化の影響を受けにくく、メニスカス領域の粒子濃度を一定に保ちやすい。また、メニスカス領域が形成される絶縁層上の領域は対向部材によって規定されるため、メニスカス領域が形成される絶縁層上の領域を安定させることができる。よって、粒子分散液中の金属粒子を絶縁層の広い範囲(すなわち実用的な基板サイズ)において均一に、かつ、離散的に配置することができる。
【0015】
また、本方法では、金属粒子配置工程において、リソグラフィ法のように金属を気相成長させるのではなく、金属粒子を分散させた液体のメニスカス領域において溶媒を蒸発させて金属粒子を配置する。そのため、金属材料の利用効率が極めて高い。また、工程が少なく真空処理を必要としないことから、装置および施設が小型である。そのため、半導体記憶素子の製造コストを低減することができる。
【0016】
また、上記金属粒子配置工程は、上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を反映した物理量を測定する物理量測定工程と、測定された上記物理量に基づき、上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を調整する粒子濃度調整工程とを含んでもよい。
【0017】
上記の構成によれば、メニスカス領域における金属粒子の濃度を反映した物理量を測定し、測定された物理量に基づいてメニスカス領域における金属粒子の濃度を調整するので、メニスカス領域における金属粒子の濃度を一定に保つことができる。そのため、より均一な密度、かつ、離散的な分布で金属粒子を配置してフローティングゲートを形成することができる。金属粒子の分布をより均一にできるということは、半導体記憶素子のユニットセルを小さくした場合に各ユニットセルの特性のばらつきを抑制できることになる。そのため、半導体記憶素子のユニットセルを小さくし、半導体記憶素子の集積度を高めることができる。
【0018】
また、上記粒子濃度調整工程では、上記対向部材を上記半導体基板に対して相対的に移動させる速度を調整することにより、上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を調整してもよい。
【0019】
通常、メニスカス領域では粒子分散液の溶媒が蒸発することにより、対向部材から露出していない領域よりも粒子濃度が高くなっている。そのため、対向部材と半導体基板との相対位置を変化させる速度を小さくすると、メニスカス領域における絶縁層上の一定の領域において蒸発する溶媒の量が増加し、濃縮される金属粒子の数が増加するため、メニスカス領域における粒子濃度が増加する。反対に、上記変化させる速度を大きくすると、絶縁層上の一定の領域において蒸発する溶媒の量は減少し、メニスカス領域における粒子濃度は減少する。よって、対向部材と半導体基板との相対位置を変化させる速度を調整することにより、メニスカス領域における粒子濃度を調整することができる。
【0020】
また、上記物理量測定工程では、上記物理量として、上記メニスカス領域を含む領域の静電容量を測定してもよい。
【0021】
メニスカス領域の静電容量は、メニスカス領域に含まれる金属粒子の数に大きく影響を受ける。そのため、メニスカス領域の静電容量は、メニスカス領域の金属粒子の濃度を反映した物理量となっている。なお、メニスカス領域のみの静電容量を求めずとも、メニスカス領域を含む領域の静電容量を測定することで、メニスカス領域の金属粒子の濃度の変化を観測することができる。
【0022】
また、上記充填工程の前に、上記絶縁層上に、上記絶縁層よりも上記金属粒子が付着しやすいバインダー層を形成するバインダー層形成工程と、上記バインダー層を部分的に除去するバインダー層部分除去工程とをさらに含んでもよい。
【0023】
上記の構成によれば、金属粒子はバインダー層のない領域よりもバインダー層のある領域に優先的に配置される。そのため、バインダー層のある領域を選択的に形成することにより、所望の領域に金属粒子を配置することができる。これにより、半導体基板の必要な領域にのみフローティングゲートを形成し、半導体記憶素子の回路を形成することができる。
【0024】
また、上記充填工程の前に、上記絶縁層上に、上記粒子分散液中で上記金属粒子とは反対の極性を有する官能基を有する有機分子を用いてバインダー層を形成するバインダー層形成工程をさらに含んでもよい。
【0025】
上記の構成によれば、粒子分散液の中でバインダー層の官能基と金属粒子とが引き合うため、バインダー層に効率よく金属粒子を配置することができる。
【0026】
また、上記充填工程の前に、上記絶縁層上に、チオール基を有する有機分子を用いてバインダー層を形成するバインダー層形成工程をさらに含んでもよい。
【0027】
チオール基はソフトな塩基として作用するため、粒子分散液中で極性を持ちにくい種類の金属粒子と結合しやすい。そのため、上記の構成によれば、粒子分散液の中でバインダー層のチオール基と金属粒子とが引き合うため、バインダー層に効率よく金属粒子を配置することができる。
【0028】
上記有機分子は、シランカップリング剤であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、絶縁層が酸化シリコンである場合、有機分子と絶縁層とがシランカップリングにより結合し、絶縁層上に単分子のバインダー層を形成することが容易になる。そのため、バインダー層の表面が平坦になり、金属粒子を均一に配置しやすくなる。
【0030】
上記有機分子は、アミノ基またはアンモニウム塩を末端に有するシランカップリング剤であってもよい。
【0031】
上記有機分子は、AHAPSであってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、絶縁層が酸化シリコンである場合、AHAPSと絶縁層とがシランカップリングにより結合し、絶縁層上にAHAPSの単分子のバインダー層を形成することができる。そのため、AHAPS層の表面は平坦になり、AHAPSの末端にあるアミノ基が金属粒子を引きつけるため、金属粒子をバインダー層に効率よく、かつ、均一に配置することができる。
【0033】
また、上記バインダー層形成工程の後かつ上記充填工程の前に、上記バインダー層に紫外線を照射することにより、上記バインダー層を部分的に除去するバインダー層部分除去工程をさらに含んでもよい。
【0034】
上記の構成によれば、バインダー層に紫外線を照射することにより、部分的にバインダー層を除去する。そのため、バインダー層のある領域を選択的に形成することができ、所望の領域に金属粒子を配置することができる。これにより、半導体基板の必要な領域にのみフローティングゲートを形成し、半導体記憶素子の回路を形成することができる。
【0035】
また、上記金属粒子配置工程の後に、上記バインダー層を除去するバインダー層除去工程をさらに含んでもよい。
【0036】
金属粒子を配置した後はバインダー層は不要であり、半導体記憶素子の品質を低下させうる。上記の構成によれば、半導体基板にフローティングゲートを形成した後に、例えばプラズマ処理等により、金属粒子の分布を乱すことなくバインダー層を除去することができる。よって、半導体記憶素子にとって不要な、または、ない方がよいバインダー層を除去することができる。そのため、半導体記憶素子の品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る半導体記憶素子の製造方法は、上記したように、絶縁層と、上記絶縁層に対向するように配置された対向部材との間に、金属粒子が分散された粒子分散液を充填する充填工程と、上記絶縁層の表面に沿った方向に、上記対向部材を半導体基板に対して相対的に移動させることにより、上記絶縁層の表面における上記対向部材から露出した領域に形成される上記粒子分散液のメニスカス領域において、上記粒子分散液の溶媒を蒸発させることにより、上記絶縁層上に上記金属粒子を離散的に配置する金属粒子配置工程とを含むことを特徴としている。
【0038】
よって、粒子分散液中の金属粒子を半導体基板の絶縁層の広い範囲(すなわち実用的なサイズの基板)において均一に、かつ、離散的に配置することができる。また、金属材料の利用効率が極めて高い。また、工程が少なく、装置および施設が小型である。そのため、半導体記憶素子の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態のフラッシュメモリの製造方法によって得られるフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。
【図2】酸化シリコン表面に結合したAHAPS分子を示す模式図である。
【図3】本実施の形態の粒子層形成装置を模式的に示す断面図である。
【図4】上記粒子層形成装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】Auナノ粒子層を上面からSEMで撮影した画像である。
【図6】プラズマ処理後のAuナノ粒子層を上面からSEMで撮影した画像である。
【図7】(a)は、プラズマ処理前のAuナノ粒子層のある領域において、個々のAuナノ粒子に対しての最近接のAuナノ粒子までの距離を測定した結果を示すヒストグラムであり、(b)は、プラズマ処理後のAuナノ粒子層のある領域において、個々のAuナノ粒子に対しての最近接のAuナノ粒子までの距離を測定した結果を示すヒストグラムである。
【図8】(a)は、プラズマ処理前後のシリコン基板表面の炭素元素の量をXPS(X線光電子分光)によって測定した結果を示すグラフであり、(b)は、プラズマ処理前後のシリコン基板表面の窒素元素の量をXPSによって測定した結果を示すグラフである。
【図9】本実施例で得た半導体素子のシリコン基板と制御ゲート電極との間のC−V特性を示すグラフである。
【図10】バイアス電圧の大きさを変化させたときの、フラットバンドシフト量の変化の割合を示すグラフである。
【図11】従来のフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。
【図12】シリコンナノ結晶をフローティングゲートに用いたフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、移流集積法を用いて金属ナノ結晶からなるフローティングゲートを形成する。
【0041】
移流集積法とは、水溶液等の溶媒中に長時間分散する粒子の分散液に、ガラス等の溶媒になじみ易い平坦な基板を浸漬させ、基板上に単粒子膜を作製する方法である。この方法では、基板と粒子分散液との界面における粒子の自律的集積力を利用することにより粒子の高密度集積を実現することができる。これまでに、移流集積法による粒子膜の成膜にはディップコーターが主に使用されてきた(例えば、非特許文献5参照)。しかしながら、従来の移流集積法では、実用サイズの基板上に高精度で粒子膜を成膜することが困難であるという問題が生じる。具体的には、上記方法では、作業環境における温度や湿度の変化等の攪乱により、形成される、同一面内における粒子膜の密度が不均一となり、実用サイズの基板上に均一に粒子膜を成膜することは困難であった。
【0042】
そのため本実施の形態では、独自に改良を加えた移流集積法を用いて、金属ナノ粒子からなるフローティングゲートを形成する。すなわち、金属ナノ粒子を含む粒子分散液を用いて、半導体基板上に形成されたトンネル絶縁膜の上に、金属ナノ粒子が離散的に均一に並んだ金属ナノ粒子層を形成する。
【0043】
図1は、本実施の形態のフラッシュメモリの製造方法によって得られるフラッシュメモリのユニットセルを示す断面図である。フラッシュメモリ(半導体記憶素子)10は、n型のシリコン基板1上にp型のソース電極2およびドレイン電極3を有する。また、シリコン基板1、ソース電極2、およびドレイン電極3上には酸化シリコンからなるトンネル絶縁膜(絶縁層)4が形成されている。トンネル絶縁膜4上の、ソース電極2とドレイン電極3との間に当たる領域には、金属ナノ粒子(金属粒子)が離散的に配置されたフローティングゲート(金属ナノ粒子層)5が形成されており、フローティングゲート5を覆うようにスピンオングラス(SOG:Spin On Glass)からなる制御絶縁膜6が形成されている。制御絶縁膜6上には制御ゲート電極7が形成されている。もちろん、p型のシリコン基板上にn型のソース電極およびドレイン電極を有する構成でも、同様の機能を発揮する。
【0044】
本実施の形態のフラッシュメモリの製造方法は、主として、金属ナノ粒子を含む粒子分散液の製造工程、トンネル絶縁膜の成膜工程、バインダー層の形成工程、金属ナノ粒子層の形成工程、バインダー層の除去工程、制御絶縁膜の成膜工程、および制御ゲート電極の形成工程を含む。以下に各工程について詳細に説明する。
【0045】
<金属ナノ粒子を含む粒子分散液の製造工程>
この工程では、フローティングゲート5を形成する金属ナノ粒子を分散粒子として含む粒子分散液を準備する。個々の金属ナノ粒子がトンネル絶縁膜4上で離散的に配置され、フローティングゲート5を形成するので、粒子分散液に含まれる金属ナノ粒子のサイズは、最終的に得られるフローティングゲート5において要求される条件を満たしていることが好ましい。上記条件は、制御ゲート電極7に所定の電圧を加えた場合の金属ナノ粒子が帯電する電子数、金属ナノ粒子の仕事関数、およびフラッシュメモリのユニットセルのサイズ等から決定される。フローティングゲートにおいて要求される条件と、粒子分散液の製造の容易さから、金属ナノ粒子のサイズは、金属ナノ粒子の仕事関数にサイズによる量子効果が顕著に現れない3nm以上が好ましい。溶液中で金属ナノ粒子を合成する本実施の形態では、CVD法を用いて金属ナノ粒子を気相成長させるリソグラフィ法において作製するのが困難な、例えば50nm以下の小さい金属ナノ粒子をも容易に作製することができる。また、CVD法では形成した金属ナノ粒子が多結晶になってしまうが、溶液中で金属ナノ粒子を合成する本実施の形態では、単結晶の金属ナノ粒子を得ることができる。単結晶の金属ナノ粒子は、多結晶の金属ナノ粒子よりも蓄えた電荷を漏出しにくいため、単結晶の金属ナノ粒子でフローティングゲートを形成した場合、長期にわたって情報を記憶しておくことができる。
【0046】
後の金属ナノ粒子層の形成工程において、電界によって粒子分散液中の一部領域の分散粒子の濃度を調整するために、金属ナノ粒子は粒子分散液中において電荷を帯びる粒子であることが好ましい。
【0047】
金属ナノ粒子をコロイド状に分散させるために、粒子分散液中において金属ナノ粒子の表面は正または負に帯電させる必要がある。また、後の金属ナノ粒子層の形成工程において、高濃度にした場合でも金属ナノ粒子が離散的に分散するために、および、トンネル絶縁膜4上に均一に配置するために、金属ナノ粒子のゼータ電位は正または負に大きいことが望ましい。そのため、金属ナノ粒子のゼータ電位が−35mV以下または+35mV以上となるように、粒子分散液中での金属ナノ粒子表面の改質を行うことが好ましい。例えば金(Au)ナノ粒子の場合、粒子分散液に例えばクエン酸三ナトリウムおよび/またはタンニン酸を加えることにより、Auナノ粒子のゼータ電位の調整を行うことができる。
【0048】
また、金属ナノ粒子のゼータ電位の調整は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはスルホ基等を有するシランカップリング剤、チオール基を末端に有する有機分子、あるいは、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤(またはその塩酸塩や臭素塩)を、金属ナノ粒子の表面に導入すればよい。また、粒子分散液のpHを変化させて金属ナノ粒子のゼータ電位の調整を行ってもよい。
【0049】
金属ナノ粒子としては、金、白金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、イリジウム等の貴金属の他に、ニッケル、コバルト、ビスマス等の一般的な金属を用いることができる。また、複数種類の金属ナノ粒子を混ぜ合わせて使用してもよい。例えばPtナノ粒子とAuナノ粒子とを混合した粒子分散液を用いて、Ptナノ粒子とAuナノ粒子とが分散されたフローティングゲートを形成した場合、Ptナノ粒子とAuナノ粒子との仕事関数が異なるため、各ナノ粒子に電子を蓄積するために必要な制御ゲート電極に加える電圧が異なり、マルチレベルセルのフラッシュメモリを実現することができる。
【0050】
また、サイズの異なる金属ナノ粒子を混ぜ合わせて使用してもよい。
【0051】
また、金属ナノ粒子の形状は球状に限らず、例えば、三角錐、四角錐、立方体、または直方体等、任意の形状であってよい。例えば、金属ナノ粒子の形状が平坦な面を有する形状である場合、該平坦な面がトンネル絶縁膜の上面に配置されれば、金属ナノ粒子がトンネル絶縁膜を介してシリコン基板と近接する領域が広くなるので、金属ナノ粒子へ電荷を注入しやすくなる。
【0052】
粒子分散液の溶媒としては、特には限定されず、溶液中で金属ナノ粒子を帯電させることができればよい。例えば、超純水や、超純水にナトリウムやカルシウム等のイオン種を溶解させた水溶液や、イオン性液体や、水溶液高分子溶液等が挙げられる。
【0053】
上記粒子分散液における粒子濃度は、後の金属ナノ粒子層の形成工程における基板の移動速度(金属ナノ粒子層の形成速度)、作製される金属ナノ粒子層の被覆率によって、適宜変更することができる。
【0054】
<トンネル絶縁膜の成膜工程>
半導体基板としては、通常のフラッシュメモリと同様の半導体基板を用いることができる。以下では一例として、半導体基板としてn型のシリコン基板を用いる場合について説明する。
【0055】
通常のフラッシュメモリと同様に、n型のシリコン基板上に、ドーピング等によりp型のソース電極およびドレイン電極を形成する。その後、熱酸化膜生成装置を用いて、シリコン基板、ソース電極、およびドレイン電極の上に、トンネル絶縁膜となる酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜の代わりに任意の絶縁膜を形成してもよい。また、高誘電率を有する絶縁膜を形成してもよい。これにより、フローティングゲートに蓄積された電荷のシリコン基板に与える影響を強めることができるので、ソース電極とドレイン電極との間の導通を得るために必要になるフローティングゲートに蓄積される電荷が、より少なくなる。
【0056】
<バインダー層の成膜工程>
トンネル絶縁膜上に金属ナノ粒子層を形成しやすくするために、トンネル絶縁膜上にバインダー層を形成する。バインダー層は、トンネル絶縁膜と金属ナノ粒子を結びつける役割を果たし、特に金属ナノ粒子を離散的に均一の密度で配置するために、トンネル絶縁膜上に形成されることが好ましい。
【0057】
金属ナノ粒子としてAuナノ粒子を用いる場合、バインダー層としては、例えば、変性ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルピリジン等のアミノ基を有する高分子薄膜層またはアミン系自己組織化単分子膜の層、並びに、微少量の酸素、窒素、および水蒸気を含み、且つHeやAr等の希ガスを主成分とする大気圧プラズマで活性化したポリスチレン等の炭化水素高分子の層を用いることができる。
【0058】
Auナノ粒子のゼータ電位は粒子分散液中で負であるので、中でも末端にアミノ基を有するシランカップリング剤でありアミン系自己組織化単分子であるAHAPS(N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)分子をバインダー層に用いることで、Auナノ粒子を離散的に均一に高密度に配置することができる。これは、トンネル絶縁膜の酸化シリコンに結合したAHAPS分子の末端にアミノ基があり、粒子分散液中で正に帯電したアミノ基が負に帯電したAuナノ粒子を吸着するためと考えられる。図2は、酸化シリコン表面に結合したAHAPS分子を示す模式図である。また、AHAPSを用いると、シリコン基板の広い範囲に単分子層を形成することができ、広い領域で平らなバインダー層を形成することができる。AHAPSを用いた場合、形成されるバインダー層が単分子層であるため、再現よく同程度のゼータ電位を有するバインダー層を形成することができる。そのため、後の金属ナノ粒子層の形成工程において、再現よく金属ナノ粒子の所望の分布密度で配置することができる。また、バインダー層の表面が平らであることが、後の金属ナノ粒子層の形成工程で金属ナノ粒子を均一に配置するために有利に働く。このように末端にアミノ基を有するシランカップリング剤を用いてバインダー層を形成することで、金属ナノ粒子を離散的に均一に高密度に配置することができる。なお、一部のアミノ基は水溶液中でイオン化してアンモニウムイオン(−NH)になる。
【0059】
また、バインダー層として、APS(3−アミノプロピルシラン)等のアミノ基末端シランカップリング剤、上記シランカップリング剤のハロゲン塩(すなわち、アンモニウム塩を末端に有するシランカップリング剤)、あるいは、P4VP(ポリ4ビニルピリジン)またはポリメント(登録商標)(日本触媒株式会社製)等のアミン系高分子を用いることもできる。例えば、末端にアミノ基を有するシランカップリング剤としては、非特許文献6のサイトに記載の「SIA0587.0」〜「SIA0630.0」までの物質を挙げることができる。ただし、APSをバインダー層に用いた場合、多層の分子層が形成されるため、バインダー層のゼータ電位の再現性の点でAHAPSに劣る。また、P4VPまたはポリメントをバインダー層に用いる場合、スピン塗布法等によって20nm程度の超薄膜を形成することができる。しかしながら、P4VPまたはポリメントをバインダー層に用いる場合、後のバインダー層の除去工程において、金属ナノ粒子の均一な配置を乱さずにバインダー層を除去することが、AHAPSに比べて困難である。そのため、バインダー層としてはAHAPSを用いることがより好ましい。
【0060】
また、粒子分散液中でのゼータ電位が正である金属ナノ粒子の場合、末端に負極性を有するヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するシランカップリング剤を用いてバインダー層を形成することで、金属ナノ粒子を離散的に均一に高密度に配置することができる。例えば、末端にヒドロキシル基を有するシランカップリング剤としては、ヒドロキシエチルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。また、末端にカルボキシル基を有するシランカップリング剤としては、2−カルボキシメチルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。また、粒子分散液中でのゼータ電位が中性領域の金属ナノ粒子の場合、末端にチオール基を有するシランカップリング剤を用いてバインダー層を形成することで、同様に金属ナノ粒子を離散的に均一に高密度に配置することができる。末端にチオール基を有するシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0061】
後の金属ナノ粒子層の形成工程において、金属ナノ粒子は、バインダー層のない領域よりも、バインダー層のある領域に優先的に配置される。そのため、金属ナノ粒子としてAuナノ粒子を用い、バインダー層としてAHAPSを用いる場合、バインダー層を形成する領域を制御することで、バインダー層が形成されている領域のみにAuナノ粒子層を形成することができる。すなわち、図1のフラッシュメモリにおいて、トンネル絶縁膜4上のソース電極2とドレイン電極3との間の領域にのみAuナノ粒子層を形成する場合、当該領域にのみバインダー層を形成すればよい。AHAPSは紫外線を照射することで分子が破壊されるので、一旦トンネル絶縁膜4の上面にAHAPSのバインダー層を形成しておき、マスキング等を用いて選択的に紫外線を照射することにより、所望の領域にのみAHAPSのバインダー層を残すことができる。これにより、所望の領域にのみAuナノ粒子層を形成することができ、デバイス回路の形成を容易に行うことができる。また、希少な貴金属材料を極めて高効率で利用することができる。
【0062】
なお、上記に限らず、金属ナノ粒子層の形成領域の選択は、トンネル絶縁膜4の全面にAHAPSのバインダー層を形成し金属ナノ粒子層を形成した後で、リソグラフィを用いて部分的に金属ナノ粒子層を除去することにより行ってもよい。
【0063】
<金属ナノ粒子層の形成工程>
本実施の形態の金属ナノ粒子層の形成工程では、第1の基板である半導体基板と、第2の基板(対向部材)とを対向させて配置し、半導体基板と第2の基板との隙間に金属ナノ粒子の粒子分散液を充填する。そして、当該半導体基板の位置を、第2の基板に対して半導体基板の面(面に平行な方向)に沿って変化させながら、第2の基板から露出する半導体基板上に形成される粒子分散液のメニスカス領域において粒子分散液の溶媒を蒸発させることにより、半導体基板上に金属ナノ粒子層を形成する。
【0064】
さらに、金属ナノ粒子層の形成工程は、上記メニスカス領域における金属ナノ粒子濃度を測定する粒子濃度測定工程と、粒子濃度測定工程により得られた粒子濃度に基づいて、上記メニスカス領域における粒子濃度を調整する粒子濃度調整工程とを含んでもよい。
【0065】
(粒子層形成装置)
図3は、本実施の形態の粒子層形成装置を模式的に示す断面図である。図4は、上記粒子層形成装置を模式的に示す斜視図である。
【0066】
図3および図4に示すように、本実施の形態の粒子層形成装置20は、第1の基板であるシリコン基板1の相対的な位置を、当該シリコン基板1上に対向して配置した第2の基板21に対して、当該シリコン基板1のトンネル絶縁膜の表面に沿った方向に変化させながら、当該シリコン基板1と第2の基板21との間に充填された金属ナノ粒子の粒子分散液22の、当該シリコン基板1の位置の変化する方向側におけるメニスカス領域23において、溶媒を蒸発させることにより、シリコン基板1上に金属ナノ粒子層を形成させる装置である。第2の基板21は、シリコン基板1との間で粒子分散液22を保持し、シリコン基板1の相対的な位置を変化させることにより第2の基板21からシリコン基板1上の粒子分散液22が露出する領域にメニスカス領域を形成する。図示はしていないが、シリコン基板1上にはトンネル絶縁膜およびバインダー層が形成されている。
【0067】
粒子層形成装置20は、シリコン基板1と第2の基板21とを互いに対向して配置する基板配置部材24と、第2の基板21の位置に対するシリコン基板1の位置を、当該シリコン1の面方向に沿って変化させる基板移動装置25と、上記メニスカス領域23における金属ナノ粒子の粒子濃度を測定する粒子濃度測定装置(物理量測定装置)26と、上記粒子濃度測定装置26により測定された粒子濃度に基づいて、上記メニスカス領域23における粒子濃度を調整する粒子濃度調整装置27とを含む。
【0068】
メニスカス領域23における、上記シリコン基板1と第2の基板21との間の距離は、金属ナノ粒子の直径等によって適宜変更すればよく、例えば200μm以下にすることができる。
【0069】
本実施の形態では、シリコン基板1の位置が変化する方向側におけるシリコン基板1と第2の基板21との間の距離が、当該変化方向と反対側におけるシリコン基板1と第2の基板21との間の距離よりも短くなるように、第2の基板21をシリコン基板1に対して傾斜して配置する。
【0070】
上記第2の基板は、上記シリコン基板に対して平行であっても、傾いていても構わないが、シリコン基板の位置の変化する方向側における上記第2の基板と上記シリコン基板との距離が、当該変化方向と反対側における上記第2の基板と上記シリコン基板との距離よりも短くなるように、上記第2の基板を、上記シリコン基板に対して傾斜して配置することが好ましい。溶媒を蒸発させ金属ナノ粒子層を形成する側のシリコン基板と第2の基板との間隔を狭く、反対側の間隔を広くすることにより、基板間に蓄えられる粒子分散液の量を多くすることができ、かつ、シリコン基板の位置の変化する方向側に形成される、シリコン基板上のメニスカス領域の位置(メニスカス領域の長さ)を、第2の基板の端部に対して安定させることができる。そのため、溶媒の蒸発速度が均一になるため、金属ナノ粒子層を均一の密度で形成することができる。
【0071】
第2の基板を、上記シリコン基板に対して傾斜して配置する場合、シリコン基板の面に対する、第2の基板の面が成す角度は、例えば、0.05以上0.5°以下の範囲内に設定することができる。
【0072】
上記第2の基板の材質としては、特には限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、金属基板、金属酸化物基板、金属窒化物基板、高分子基板、有機結晶基板、マイカ等の平滑な鉱石基板等が挙げられる。
【0073】
また、第2の基板は、平面形状ではなく、シリコン基板の位置の変化する方向側の第2の基板の端部がシリコン基板側に向かって突出している構造であってもよい。すなわち、第2の基板の代わりに、対向部材を用いることができる。対向部材は、シリコン基板のトンネル絶縁膜に対向するように配置され、シリコン基板のトンネル絶縁膜を部分的に覆い、粒子分散液をシリコン基板のトンネル絶縁膜との間に保持し、シリコン基板を覆っている対向部材の端部(シリコン基板のトンネル絶縁膜が対向部材から露出する位置)においてシリコン基板のトンネル絶縁膜との間に微小な隙間を有して配置されている。対向部材は、シリコン基板との間に粒子分散液を充填または補充する部材を備えていてもよい。このような構造でも、シリコン基板のトンネル絶縁膜上のメニスカス領域の位置を、対向部材の端部に対して安定させることができ、金属ナノ粒子層を均一の密度で形成することができる。なお、上記トンネル絶縁膜の表面にバインダー層が形成されていてもよい。
【0074】
(基板配置部材)
上記基板配置部材24は、シリコン基板1と第2の基板21とを互いに対向して配置する構成であれば特には限定されない。例えば、図4に示すように、第2の基板21をクランプ等の固定具により固定し、シリコン基板1を、クランプ等の固定具が備えられた載置面を有する台等の上に固定する構成であってもよい。このような構成の場合には、シリコン基板1を固定した台等を基板移動装置25によって図3および図4に矢印で示す方向に移動させることにより、上記シリコン基板1の第2の基板21に対する位置を、当該シリコン基板1の面方向に沿って変化させることが可能となる。
【0075】
(基板移動装置)
上記基板移動装置25としては、第2の基板21の位置に対してシリコン基板1の位置を変化させることができれば特には限定されない。本実施の形態の基板移動装置25は、ステッピングモータによりシリコン基板1を移動させる構成である。なお、反対に、シリコン基板1を固定して、第2の基板21をステッピングモータ等により移動させる構成であっても構わないし、両方の基板を移動させる構成であっても構わない。
【0076】
(粒子濃度測定装置)
上記粒子濃度測定装置26としては、メニスカス領域23における粒子濃度を測定することができれば特には限定されず、例えば、静電容量計、または光散乱や光反射を利用して粒子濃度を求める構成が挙げられる。
【0077】
例えば、静電容量を測定して粒子濃度を測定する場合、粒子濃度測定装置は、静電容量計と、静電容量計により測定される静電容量に基づいて粒子濃度を計算する粒子濃度算出装置とを備える構成とすることができる。粒子分散液のメニスカス領域の静電容量は、メニスカス領域の粒子濃度を反映しており、粒子分散液のメニスカス領域を含む領域の静電容量を測定することにより、メニスカス領域の粒子濃度を測定することができる。静電容量計を用いた粒子濃度の測定方法について、以下に説明する。
【0078】
(粒子濃度測定方法)
本実施の形態で用いる粒子濃度の測定方法は、粒子分散液と接触させたシリコン基板の位置を当該粒子分散液に対して変化させることにより、当該シリコン基板上に発生する粒子分散液のメニスカス領域において、当該メニスカス領域の粒子濃度を測定する方法である。
【0079】
上記粒子濃度の測定方法では、上記メニスカス領域を含む領域の静電容量を測定して、当該静電容量に基づいて粒子濃度を決定する。
【0080】
上記粒子分散液の静電容量の測定は、例えば、メニスカス領域が面上に形成される基板が導電性を有している場合には、メニスカス領域を介してプローブと基板との間で形成される静電容量を計測することにより行うことができる。具体的には、基板をアースし、上記基板における粒子分散液のメニスカスが発生している領域に対向するように静電容量計のプローブを設置して、当該プローブと上記基板との間の静電容量を測定することにより行うことができる。
【0081】
なお、基板に導電性がない場合では、プローブ内で静電容量が形成されるようなプローブを用いることにより行うことができる。例えば、KLAテンコール社によって独自開発されたプローブ(商品名:「2810」)等により、電界の広がりを積極的に利用することによりプローブと基板との間の静電容量を計測することができる。この場合、プローブと基板との間の距離を1mm以下に設定することにより、基板が導電性を有している場合と同等の感度を得ることができる。
【0082】
静電容量を測定する対象は、上記メニスカスにおける粒子分散液を含む領域であれば、特には限定されず、メニスカス領域(粒子分散液と、当該粒子分散液とプローブとの間の空気層とからなる領域)の静電容量のみを測定してもよいし、当該メニスカス領域と、粒子分散液と、第2の基板と、当該第2の基板とプローブとの間の空気層とからなる領域を合わせた領域の静電容量を測定してもよい。
【0083】
上記プローブの位置は、メニスカス領域のほとんど全てを覆うように配置することが好ましい。このとき、上記プローブの位置が、既に形成された金属ナノ粒子層の領域と重ならないようにすることが好ましい。これら条件を満たせば、2枚の基板を用いて粒子層を形成する本実施の形態の場合において、第2の基板上にプローブの一部が重なっても構わない。また、上述したKLAテンコール社製プローブを用いる場合では、プローブ先端と基板との間の距離が1.5mm以下であれば、プローブの配置位置に限らず粒子濃度の変動を良好に計測することができる。
【0084】
高分解能で粒子濃度変化による静電容量変化の計測を行う観点から、プローブは基板近くに配置することが好ましい。具体的には、比較的誘電率の小さな材料で粒子層を形成する場合では、プローブと基板との間の距離は、200μm以上1.0mm以下の範囲内に設定することが好ましい。また、無機物半導体や金属等の、誘電率が大きい材料で粒子層を形成する場合では、基板からより離れた位置でも検出可能であるため、プローブと基板との間の距離は、200μm以上3.0mm以下の範囲内に設定することが好ましい。上記範囲内とすることにより、プローブの真下において粒子層の形成が阻害されることを抑制でき、且つ良好に静電容量を測定することができる。
【0085】
プローブの直径は小さければ小さいほど、局所的な領域の計測が可能になるが、本実施の形態の2枚の基板を用いて粒子層を形成する場合においては、プローブの直径が小さくなると、プローブと第2の基板のエッジと間に予期しない静電容量が形成されてしまうおそれがある。また、静電容量計によっては、プローブの直径が小さくなるほどプローブと基板との間の距離に制限が出てくる等の問題が生じる。以上のことから、直径10mm程度のプローブを用いることが好ましい。
【0086】
上記の粒子濃度の測定方法では、分散液の溶媒よりも誘電率が高い粒子を用いる場合では、メニスカス領域の粒子濃度が高くなれば測定される静電容量は高くなり、メニスカス領域の粒子濃度が低くなれば、測定される静電容量は低くなる。つまり、上記粒子濃度と静電容量とはリニアな関係にあるため、予め、上記粒子濃度と静電容量との関係式を計算等により求めておけば、静電容量を測定することにより上記粒子濃度を測定することができる。
【0087】
また、分散液の溶媒よりも誘電率が低い粒子を用いる場合でも、上記粒子濃度と静電容量とは反比例の関係にあるため、同様に、予め、上記粒子濃度と静電容量との関係式を計算等により求めておけば、静電容量を測定することにより上記粒子濃度を測定することができる。
【0088】
また、上記の粒子濃度の測定方法では、上記静電容量に加えて、上記基板の撓みの度合いに基づいて粒子濃度を決定することが好ましい。これにより、より高い精度で粒子濃度を測定および調整することができる。
【0089】
基板の撓みの測定は、金属ナノ粒子層を形成する第1の基板に撓みが無い場合には必要ないが、通常、薄い板状物では、撓みが生じている。そして、この撓みに起因して、上記静電容量の測定において、プローブと基板との間の距離が変化するため、測定される粒子濃度に誤差が生じ得る。従って、基板の撓みを測定し、撓みの度合いに基づいて粒子濃度を決定することにより、より高い精度で粒子濃度を測定及び調整することができる。
【0090】
上記撓みの測定は、例えば、第1の基板におけるメニスカスが発生している側の面と反対側の面に対向するように静電容量計のプローブを別途設置して、当該プローブと基板との間の静電容量を測定し、当該静電容量から、第1の基板の撓みを計算することにより行うことができる。
【0091】
本実施の形態の粒子濃度測定装置26は静電容量計を備え、上記静電容量計のプローブは、シリコン基板1上における粒子分散液のメニスカスが発生している領域に対向するように、第2の基板21より上に設置されている。また、シリコン基板1はアースされている。上記静電容量計は、当該メニスカス領域23と、粒子分散液と、第2の基板21と、当該第2の基板21とプローブとの間の空気層とからなる領域を合わせた領域の静電容量を測定する。
【0092】
(粒子濃度調整装置)
本実施の形態の粒子濃度調整装置27は、基板移動装置25によるシリコン基板1の基板移動速度を調整することにより、上記メニスカス領域23における粒子濃度を調整する。メニスカス領域23においては、溶媒が蒸発すると第2の基板21に覆われた領域から新たに粒子分散液がメニスカス領域23に供給される。通常、メニスカス領域では溶媒が蒸発することにより、第2の基板21に覆われた領域よりも粒子濃度が高くなっている。そのため、基板移動速度を小さくすると、メニスカス領域23におけるシリコン基板1の一定の領域において蒸発する溶媒の量が増加し、濃縮される金属ナノ粒子の数が増加し、メニスカス領域23における粒子濃度が増加する。反対に、基板移動速度を大きくすると、メニスカス領域23における粒子濃度は減少する。それゆえ、基板移動速度を調整することにより、メニスカス領域23の粒子濃度を調整することができる。
【0093】
なお、基板移動装置が、第2の基板を移動させる場合、または、シリコン基板および第2の基板の両方を移動させる場合であっても、互いの相対的な基板移動速度を変化させることにより、粒子濃度を調整することができる。
【0094】
また、上記粒子濃度調整装置は、上記シリコン基板と第2の基板との間に電界を印加することにより、上記メニスカス領域における粒子濃度を調整する構成としてもよい。なお、シリコン基板と第2の基板との間に電圧を印加してメニスカス領域の粒子濃度の調整を行う場合、第2の基板はその表面が導電性となっていることが好ましい。この場合、上記第2の基板としては、ITO(indium tin oxide)ガラス、FTO(fluorine-tin-oxide)基板、ZnO(zinc oxides)基板、シリコン基板、金属基板、導電性高分子基板等が挙げられる。
【0095】
ここで、図3に示すように、メニスカス領域23において粒子分散液22と接触する第2の基板21の端部28と、粒子分散液22のメニスカス領域23の先端と接触するシリコン基板1とを結ぶ直線は、シリコン基板1の面に対して垂直となる関係にはならず、第2の基板21の端部28から、シリコン基板1の第2の基板21に覆われていない外側の領域に向かって傾いている。このため、シリコン基板1と第2の基板21との間に電圧を印加した場合、第2の基板21からシリコン基板1へと生じる電気力線の方向は、第2の基板21の外側に延びたメニスカス領域23へ向かう方向となる。よって、上記シリコン基板1から第2の基板21へと電界を印加することにより、上記メニスカス領域23へ粒子を移動させることができる。
【0096】
尚、粒子濃度調整装置としては、上記の構成に限るものではない。粒子濃度調整装置は、上記粒子分散液に対して、濃度の高い粒子分散液や濃度の低い粒子分散液を添加する構成等であってもよい。粒子濃度調整装置27が上記メニスカス領域23における粒子濃度を調整することができれば、本実施形態と略同様の効果が得られる。このような構成としては、例えば、ポンプやシリンジ、チューブヘッド等により、濃度の高い粒子分散液や濃度の低い粒子分散液を添加する構成が挙げられる。
【0097】
ただし、調整による粒子濃度の変化は、基板移動速度の調整によって行う方法が最も安定しており、粒子濃度を一定に保つことが容易である。本実施の形態の粒子濃度調整装置27は、基板移動速度の調整のみによって粒子濃度を調整する。粒子濃度調整装置27は、粒子濃度測定装置26が測定する粒子濃度の値が所定の範囲内に保たれるように、基板移動速度を調整する。例えば、粒子濃度測定装置26は、数十ミリ秒毎に粒子濃度を測定する。粒子濃度調整装置27は、粒子濃度測定装置26によって測定された粒子濃度が所定の範囲から外れていれば、粒子濃度に基づき基板移動速度を調整する。このように制御することで、粒子濃度は数百ミリ秒で所定の範囲内に戻る。メニスカス領域23の粒子濃度を一定に保つことで、金属ナノ粒子が均一な密度に分布した金属ナノ粒子層を得ることができる。
【0098】
実際には静電容量計が測定する静電容量は第2の基板21の静電容量等も含んでいるため、メニスカス領域23の粒子濃度を算出するためには、あらかじめ第2の基板21の静電容量等を個別に測定しておき、第2の基板21の静電容量等の影響を引いておけばよい。また、所望の分布密度の金属ナノ粒子層を得るための粒子濃度の値(または範囲)は、実験的にある粒子濃度およびある基板移動速度で金属ナノ粒子層を形成し、形成された金属ナノ粒子層における金属ナノ粒子の分布密度を測定し、下記の関係式を求めることにより得ることができる。
【0099】
c=k×ψ/(v(1−ψ))
式中、cは分布密度、kは定数、ψは分散液中の粒子濃度(体積濃度)、vはシリコン基板の移動速度(μm/s)である。上記関係式からkを求めることにより、所望の分布密度の金属ナノ粒子層を得るための粒子濃度の値(または範囲)を求めることができる。
【0100】
ただし、粒子濃度を一定に(所定の範囲内に)保つ制御を行う場合、実際の粒子濃度を算出する必要はなく、静電容量計が測定する静電容量の値を所定の範囲内に保つよう基板移動速度を調整すればよい。静電容量の上記所定の範囲は、金属ナノ粒子層における目標とする金属ナノ粒子の分布密度、金属ナノ粒子の種類、粒子分散液の溶媒および添加物、雰囲気の温度および湿度、シリコン基板移動方向側のシリコン基板と第2の基板との間隔、ならびに第2の基板のサイズおよび種類等によって変化しうる。そのため、所望の密度の金属ナノ粒子層を得られる静電容量の値(または範囲)を実験から求めておき、粒子濃度調整装置27が、粒子濃度測定装置26で測定される静電容量を所定の範囲内に調整するよう、粒子濃度測定装置26で測定される静電容量と静電容量の所定の範囲との差に応じて、基板移動速度を調整してもよい。
【0101】
<バインダー層の除去工程>
金属ナノ粒子層を形成した後のバインダー層は、半導体素子にとっては不純物となり得る。フローティングゲート5に電子を蓄積する際にバインダー層が電子をトラップしてしまったりする。バインダー層がトラップした電子は比較的容易にトンネル絶縁膜4を越えてシリコン基板1に漏出するため、時間経過によってソース電極2とドレイン電極3の間の電導率が変化するということが起こりうる。
【0102】
そこで、本実施の形態では、金属ナノ粒子層を形成した後に、バインダー層を除去する。例えば、有機分子からなるバインダー層は、大気圧Heプラズマによって分解し除去することができる。AHAPSをバインダー層として用いる場合、大気圧Heプラズマを用いて除去処理を行うことで、トンネル絶縁膜4上のバインダー層上に離散的に配置されていた金属ナノ粒子は、バインダー層が除去されると、離散的な配置を保ったままトンネル絶縁膜4上に移される。
【0103】
なお、バインダー層の除去は、オゾン処理等、その材質に応じた他の化学的処理または物理的処理によって行ってもよい。また、必ずしもバインダー層を除去しなくてもよい。
【0104】
<制御絶縁膜の成膜工程>
制御絶縁膜の成膜工程では、フローティングゲート5上に、制御絶縁膜6を形成する。制御絶縁膜6は、従来の半導体製造工程のように、PVDまたはCVD等を用いて形成することができる。制御絶縁膜6と、トンネル絶縁膜4とは同じ材質であってもよいし、材質は特に限定されない。本実施の形態では、フローティングゲート5が形成されたシリコン基板1上に、スピンオングラスを用いて酸化シリコンの制御絶縁膜6を形成する。
【0105】
<制御ゲート電極の形成工程>
制御ゲート電極の形成工程では、制御絶縁膜6上の、ソース電極2とドレイン電極3との間の領域に、制御ゲート電極7を形成する。制御ゲート電極7は、従来の半導体製造工程のように、PVDまたはCVD等を用いて多結晶シリコン等で形成することができる。また、真空蒸着、スパッタリング等により金属で制御ゲート電極7を形成してもよい。
【0106】
その後、従来の半導体製造工程のように、制御ゲート電極7およびフラッシュメモリ10を保護するために、制御絶縁膜6および制御ゲート電極7を覆うように樹脂等の絶縁性材料で保護絶縁層8を形成する。
【0107】
本実施の形態のフラッシュメモリの製造方法によると、金属ナノ粒子層の形成工程においてリソグラフィ装置を用いずに金属ナノ粒子層、すなわちフローティングゲートを形成することができる。そのため、本実施の形態の移流集積法によれば、複雑な工程を必要とするリソグラフィに比べて、少ない工程でフローティングゲートを形成することができる。金属ナノ粒子層の形成工程で用いる粒子層形成装置20は、リソグラフィ装置に対して極めて小型で安価である。また、粒子層形成装置20が小型であるため、従来のように大きな空間のクリーンルームを必要としない。そのため、設備のコストが低く抑えられる。また、粒子分散液の溶媒に水を用いる場合、主に水を蒸発させることによりフローティングゲートを形成するので環境への負荷が小さい。
【実施例1】
【0108】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では、Auナノ粒子を分散させた粒子分散液を用いた、離散的なAuナノ粒子層からなるフローティングゲートを有する半導体素子の製造方法について説明する。
【0109】
<Auナノ粒子を含む粒子分散液の製造>
本実施例ではまず、Auナノ粒子の合成から行う。超純水0.5mlに塩化金酸三水和物(アルドリッチ社製)5.0mgを加えて1質量/体積%の濃度の塩化金酸水溶液を調製したものに、さらに超純水を加えて合計40mlの塩化金酸水溶液を調製した。また、超純水2mlにクエン酸三ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)20.0mgを加えて1質量/体積%の濃度のクエン酸三ナトリウム水溶液を調製したものに、1質量/体積%のタンニン酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)25μlを加え、さらに超純水を加えて合計10mlのクエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液を調製した。
【0110】
上記で得られた塩化金酸水溶液を石英ガラス製の三つ口フラスコに移し、フラスコに環流冷却器を取り付けた。上記で得られたクエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液を容量30mlのバイアル瓶に入れ、ホルダーによって固定した。上記の塩化金酸水溶液および上記のクエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液のそれぞれを60℃に設定されたオイルバス中に設置し、加熱をしながらそれぞれの溶液の攪拌を行った。この際、ホットマグネットスターラ(IKA社製RCTベーシック&ETS−D6)を用いて加熱攪拌操作を行った。攪拌速度は共に250rpmに設定した。オイルバスの温度が60℃に安定した時点で、上記の塩化金酸水溶液にクエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液を素早く加えた。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、上記の塩化金酸−クエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液を10分間、加熱および攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら室温になるまで水冷した。
【0111】
水冷後、超純水を用いてAuナノ粒子の洗浄と濃度調整を行った。具体的には、上記の塩化金酸−クエン酸三ナトリウム−タンニン酸混合水溶液に超純水を加えて希釈したものに対して7000rpmで20分間、遠心分離操作を行ってAuナノ粒子を沈殿させた後、その上澄み液をマイクロピペットを用いて除去した。上記の希釈、遠心分離、およびデカンテーションの操作を繰り返し、Auナノ粒子の洗浄を行った。沈殿物からAuナノ粒子を電子天秤を用いて測り取り、Auナノ粒子に超純水を加えて約5質量%のAuナノ粒子混合溶液を調製した。このAuナノ粒子混合溶液を超音波で60分間、分散させることにより、Auナノ粒子分散液を得た。
【0112】
得られたAuナノ粒子分散液のAuナノ粒子のゼータ電位を測定した。測定にはELS−8000(大塚電子株式会社製)を用い、セルの周囲に25℃に設定した水を循環させてセルの温度を一定に保った。なお、測定前に超純水をセル内に流し、十分にセルの洗浄を行った。測定には上記Auナノ粒子分散液を0.1質量%程度に薄めて用いた。Auナノ粒子のゼータ電位は−40mVであった。また、得られたAuナノ粒子は球状で、直径は約12nmであった。
【0113】
なお、上記のAuナノ粒子の合成において、タンニン酸の濃度を高くすると、得られるAuナノ粒子の粒子径が小さくなり、タンニン酸の濃度を低くすると、得られるAuナノ粒子の粒子径が大きくなる。この方法で、5nm以上30nm以下の粒子径のAuナノ粒子を得ることができる。
【0114】
<トンネル絶縁膜の成膜>
シリコン基板には6インチのn型シリコン基板を用いた。シリコン基板の上面は001面である。上記シリコン基板を、ウルトラクリーンルーム内のウェットベンチにてUCT洗浄を行い、シリコン基板上の有機物等の異物を除去した。その後、フッ酸洗浄を行いシリコン基板上の自然酸化膜を除去した。
【0115】
その後、ウルトラクリーンルーム内の熱酸化膜生成装置を用いて、シリコン基板上にトンネル絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成した。この際、シリコン基板を、酸素濃度は95%以上の雰囲気下において、50℃/秒の割合で800℃まで昇温し、800℃で4秒間定温加熱した後、5℃/秒の割合で800℃から室温まで降温し、2.5nm厚さのシリコン酸化膜を生成した。なお、離散的なAuナノ粒子からなるフローティングゲートは、トンネル絶縁膜の劣化に対して強いため、トンネル絶縁膜をより薄くすることができる。そのため、トンネル絶縁膜の厚さを、所定の電圧下でシリコン酸化膜においてトンネル効果が発生する約2.6nm以下にすることができる。これにより、トンネル効果によりフローティングゲートへ電子を注入することができ、発熱を抑えることができる。
【0116】
<バインダー層の形成>
トンネル絶縁膜を形成したシリコン基板を30mm×60mmのサイズに裁断した。このシリコン基板をUV−O洗浄装置(株式会社テクノビジョン製)を用いて30分間処理することにより、シリコン基板上の有機物を除去した。このシリコン基板と、AHAPS(N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)分子(Gelest社製)0.1mlおよびトルエン(和光純薬工業株式会社製)0.7mlの混合溶液を、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)製のコンテナ内に封入した。なお、シリコン基板はコンテナの上面に設置した。このコンテナを卓上電気炉(日陶科学株式会社製)を用いて100℃で60分間、加熱した。
【0117】
その後、取り出したシリコン基板を超音波洗浄することによって、シリコン酸化膜上にAHAPSの単分子層が形成されたシリコン基板を得た。超音波洗浄の際、トルエン、アセトン、エタノール、超純水をこの順序で用い、それぞれで2分半ずつ超音波洗浄を行った。
【0118】
得られたシリコン基板上のAHAPS層の表面のゼータ電位を測定した。測定にはELS−8000とモニター粒子(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。モニター粒子は0.1質量%程度の濃度に薄めて用いた。セルの周囲に25℃に設定した水を循環させてセルの温度を一定に保った。なお、測定前に超純水をセル内に流し、十分にセルの洗浄を行った。AHAPS層の表面のゼータ電位は+25mVであった。
【0119】
<金属ナノ粒子層の形成>
AHAPS層上にAuナノ粒子層を以下の手順で形成した。Auナノ粒子層の形成には、図3に示すものと同様の構成の水平駆動型ナノコーターを用いた。この水平駆動型ナノコーターは、上下に対向させた2枚の基板間に粒子分散液を注入し、ステージ上に固定された下側の基板のみをステッピングモータを用いてステージと共に水平方向に移動させることにより、下側の基板の上面にナノ粒子層を形成することができる。
【0120】
下側の基板としてシリコン基板をAHAPS層を上にしてステージ上に配置して吸引チャックで固定し、上側の基板として30mm×100mmの窒化シリコン基板を配置した。なお、下側の基板の移動方向における下側の基板および上側の基板のサイズは、それぞれ60mm、30mmである。下側のシリコン基板を固定するステージ上面の水平度は、電気マイクロメータと傾斜ステージとを用いて±3μmの精度内に荒く調節した後、静電容量型変位計を用いて下側の基板を60mm水平移動させたときの水平度が600nm以下になるまで調節した。上下の基板間の距離は、Auナノ粒子層形成側(下側の基板の移動方向側)の端部側が50μm、反対側が100μmとなるように、シックネスゲージとZ軸ステージ(シグマ光機株式会社製)とを用いて調節した。上側の基板の傾斜度はマイクロメータヘッド(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
【0121】
下側のシリコン基板上に、Auナノ粒子を含む粒子分散液の製造工程で得た5質量%のAuナノ粒子分散液を50μl滴下した。その後、上側の基板を上記所定の位置に固定して、Auナノ粒子分散液を上下の基板間に封入した。下側の基板をステッピングモータにより1.0mm/秒の速度で水平に移動させることにより、離散的に配置したAuナノ粒子層を形成した。
【0122】
なお、実施の形態で説明したように、静電容量計のプローブをAuナノ粒子分散液のメニスカス領域の上に重なるように上側の基板の端部の上に配置し、測定した静電容量の値が所定の範囲内に維持されるよう、ステッピングモータによる下側の基板の移動速度を調整した。静電容量の測定は0.005秒毎に行い、その度に測定した静電容量に基づき下側の基板の移動速度を調整した。このように下側の基板の移動速度を調整することで、静電容量が所定の範囲から外れた場合でも、略0.1秒以内に静電容量を所定の範囲に戻すことができた。すなわち、基板移動速度の調整によってメニスカス領域のAuナノ粒子濃度を一定に維持することができる。これにより、離散的に、高密度に、かつ、均一にAuナノ粒子をAHAPS層上に配置することができる。なお、この金属ナノ粒子層の形成工程は室温で行った。
【0123】
図5は、上記で得たAuナノ粒子層を上面からSEMで撮影した画像である。白い点として写っているのが個々のAuナノ粒子である。個々のAuナノ粒子は互いに離間して、均一に配置されていることが分かる。このようなAuナノ粒子の離散的な配列が、シリコン基板の全面にわたって形成された。シリコン基板の複数の領域においてAuナノ粒子の密度を確認したところ、1μmのセルにおいて該密度は略一定であり、Auナノ粒子の密度は約700個/μmであった。
【0124】
なお、粒子径が10nmのAuナノ粒子を用いて別途金属ナノ粒子層の形成を行った場合、得られたAuナノ粒子層におけるAuナノ粒子の密度は約1000個/μmであった。
【0125】
<バインダー層の除去>
Auナノ粒子層を形成したシリコン基板のAHAPS層を、大気圧プラズマ処理装置を用いてHeプラズマにより除去した。上記大気圧プラズマ処理装置は、13.56MHzの高周波電力を供給し、大気圧雰囲気中に空間に局在する高周波プラズマを発生させるものである。電極として外径3mmの銅製パイプを内径5mmのアルミナ管で覆ったものを用いた。
【0126】
シリコン基板の表面のプラズマ処理は、以下の手順により行った。シリコン基板を試料台に設置し、真空チャンバーを密閉した。真空チャンバー内をロータリーポンプにより2.0×10−1torrまで減圧した後、760torrになるまでヘリウムガスを導入した。高周波電力の供給開始と同時にシリコン基板を設置した走査ステージを稼働させ、シリコン基板の上面の全面にプラズマ処理を行った。処理が完了した後、すぐに高周波電力の供給を停止し、真空チャンバーを開放してシリコン基板を取り出した。投入する電力は15Wに設定し、電極とシリコン基板との間の距離は2.5mmに調整した。シリコン基板上の各点におけるプラズマの滞在時間は15秒とした。
【0127】
図6は、プラズマ処理後のAuナノ粒子層を上面からSEMで撮影した画像である。図5に示す画像と図6に示す画像は異なる領域のものであるが、図5と同様に、個々のAuナノ粒子は互いに離間して、均一に配置されていることが分かる。すなわち、プラズマ処理の前後においてAuナノ粒子の配置はほとんど変わらず、個々のAuナノ粒子は離間した状態を維持している。
【0128】
図7(a)は、プラズマ処理前のAuナノ粒子層のある領域において、個々のAuナノ粒子に対しての最近接のAuナノ粒子までの距離を測定した結果を示すヒストグラムである。横軸は最近接のAuナノ粒子の中心間距離(nm)を、縦軸は該当するAuナノ粒子の割合(頻度:%)を示す。例えば、ヒストグラムにおいて中心間距離40nmのときの頻度の値は、中心間距離37.5nm以上42.5nm未満の範囲のAuナノ粒子の割合を示す。プラズマ処理前の最近接のAuナノ粒子の平均中心間距離は46.8nmであり、その標準偏差は10.2nmであった。なお、個々のAuナノ粒子の粒子径は約12nmである。
【0129】
図7(b)は、プラズマ処理後のAuナノ粒子層のある領域において、個々のAuナノ粒子に対しての最近接のAuナノ粒子までの距離を測定した結果を示すヒストグラムである。横軸は最近接のAuナノ粒子の中心間距離(nm)を、縦軸は該当するAuナノ粒子の割合(頻度:%)を示す。例えば、ヒストグラムにおいて中心間距離40nmのときの頻度の値は、中心間距離37.5nm以上42.5nm未満の範囲のAuナノ粒子の割合を示す。なお、図7(a)および図7(b)に関し、測定を行ったAuナノ粒子層の領域は同一ではない。プラズマ処理後の最近接のAuナノ粒子の平均中心間距離は44.9nmであり、その標準偏差は9.7nmであった。これらの結果から分かるように、プラズマ処理前後において、Auナノ粒子の分布はほとんど変化しておらず、個々のAuナノ粒子は離間した状態を維持している。
【0130】
図8(a)は、プラズマ処理前後のシリコン基板表面の炭素元素の量をXPS(X線光電子分光)によって測定した結果を示すグラフである。横軸は検出した光電子の結合エネルギー、縦軸は単位時間当たりに検出した光電子の数を示す。表面上の各点におけるプラズマ処理の処理時間0秒、5秒、10秒、15秒のそれぞれについて測定した。処理時間0秒の測定結果に見られる結合エネルギー286eV付近のピークが炭素元素の存在を示すものである。これにより、AHAPSが含む炭素の有無が分かる。プラズマ処理の時間を長くすることで、炭素を含むAHAPSが分解・除去され、シリコン基板表面の炭素元素が減少することが分かる。プラズマ処理時間を15秒にすることにより、ほとんどの炭素、すなわちAHAPSが除去できることが分かった。
【0131】
図8(b)は、プラズマ処理前後のシリコン基板表面の窒素元素の量をXPSによって測定した結果を示すグラフである。横軸は検出した光電子の結合エネルギー、縦軸は単位時間当たりに検出した光電子の数を示す。表面上の各点におけるプラズマ処理の処理時間0秒、15秒のそれぞれについて測定した。処理時間0秒の測定結果に見られる結合エネルギー400eV付近のピークが窒素元素の存在を示すものである。これにより、AHAPSが含むアミノ基に含まれる窒素の有無が分かる。プラズマ処理を15秒間行ったシリコン基板上では、窒素元素の存在は認められず、この測定結果からも、プラズマ処理によってAHAPSを除去できることが分かった。
【0132】
<制御絶縁膜の成膜>
シリコン基板上のAuナノ粒子層の上に、以下の手順によりSOGからなる制御絶縁膜を形成した。プラズマ処理を行ってAHAPS層を除去したシリコン基板を30mm×30mmに裁断した。OCD T−12 800(登録商標)(東京応化工業株式会社製)に酢酸エチルを体積比で同量加えたものを、シリコン基板上に150μl滴下し、シリコン基板を7000rpm、20秒間回転させスピンコートした。SOGに含まれる水酸基は反応性が高いので、その後、シリコン基板にアニールを行って水酸基を脱水して取り除いた。アニールにおいて、シリコン基板を卓上電気炉を用いて以下の条件で加熱した。室温から80℃まで5分間で昇温させ、80℃で1分間加熱し、150℃まで5分間で昇温させ、150℃で1分間加熱し、200℃まで5分間で昇温させ、200℃で1分間加熱し、450℃まで15分間で昇温し、450℃で30分間加熱した。形成した制御絶縁膜の厚さは、断面SEMを用いて観察したところ、120nmであった。
【0133】
<制御ゲート電極の形成>
制御絶縁膜を形成したシリコン基板上に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製)を用いて、制御ゲート電極を形成した。シリコン基板上に、穴を有するマスクを配置し、真空チャンバー内の真空度が4×10−4Paになった時点で金の蒸着を開始した。この際、直径0.7mm、長さ33mmの金ワイヤーを、シリコン基板から10cm離して加熱した。得られた制御ゲート電極の厚さは100nmであった。
【0134】
<特性測定結果>
上記の各工程を経て得た半導体素子の、静電容量−電圧(C−V)特性を測定した。図9は、本実施例で得た半導体素子のシリコン基板と制御ゲート電極との間のC−V特性を示すグラフである。横軸は半導体素子に加えるバイアス電圧(V)を示し、縦軸はシリコン基板と制御ゲート電極との間の静電容量を示す。バイアス電圧は−5Vから+5Vまでの間を掃引した。図9に示すように、C−V特性にヒステリシスが観測され、Auナノ粒子層からなるフローティングゲートに電荷が注入/放出されている様子が観測できた。よって、本実施例で製作した半導体素子が、フラッシュメモリとして機能することが分かった。
【0135】
なお、制御絶縁膜をより薄くすること、または、より絶縁性の高い制御絶縁膜を用いることにより、上記半導体素子のC−V特性を改良することができると考えられる。
【0136】
図10は、バイアス電圧の大きさを変化させたときの、フラットバンドシフト量の変化を示すグラフである。横軸は半導体素子に加えるバイアス電圧(V)を示し、縦軸はバイアス電圧に対するフラットバンドシフト量ΔVFB(V)を示す。バイアス電圧に対するフラットバンドシフト量ΔVFBは、バイアス電圧の増加に対応してリニアに増加しており、この範囲のバイアス電圧(3V以上15V以下)においてトンネル絶縁膜の絶縁破壊が生じてないことを示している。より正確には、局所的に絶縁破壊が生じていたとしても、全体的な半導体素子の特性に影響を与えていないことを示している。
【0137】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 シリコン基板(半導体基板)
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 トンネル絶縁膜(絶縁層)
5 金属ナノ粒子(金属粒子)
6 制御絶縁膜
7 制御ゲート電極
8 保護絶縁層
10 フラッシュメモリ(半導体記憶素子)
20 粒子層形成装置
21 第2の基板(対向部材)
22 粒子分散液
23 メニスカス領域
24 基板配置部材
25 基板移動装置
26 粒子濃度測定装置(物理量測定装置)
27 粒子濃度調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁層上に、金属粒子が離散的に分布したフローティングゲートを有する半導体記憶素子の製造方法であって、
上記絶縁層と、上記絶縁層に対向するように配置された対向部材との間に、上記金属粒子が分散された粒子分散液を充填する充填工程と、
上記絶縁層の表面に沿った方向に、上記対向部材を上記半導体基板に対して相対的に移動させることにより、上記絶縁層の表面における上記対向部材から露出した領域に形成される上記粒子分散液のメニスカス領域において、上記粒子分散液の溶媒を蒸発させることにより、上記絶縁層上に上記金属粒子を離散的に配置する金属粒子配置工程とを含むことを特徴とする半導体記憶素子の製造方法。
【請求項2】
上記金属粒子配置工程は、
上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を反映した物理量を測定する物理量測定工程と、
測定された上記物理量に基づき、上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を調整する粒子濃度調整工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項3】
上記粒子濃度調整工程では、上記対向部材を上記半導体基板に対して相対的に移動させる速度を調整することにより、上記メニスカス領域における上記金属粒子の濃度を調整することを特徴とする請求項2に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項4】
上記物理量測定工程では、上記物理量として、上記メニスカス領域を含む領域の静電容量を測定することを特徴とする請求項2または3に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項5】
上記充填工程の前に、
上記絶縁層上に、上記絶縁層よりも上記金属粒子が付着しやすいバインダー層を形成するバインダー層形成工程と、
上記バインダー層を部分的に除去するバインダー層部分除去工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項6】
上記充填工程の前に、
上記絶縁層上に、上記粒子分散液中で上記金属粒子とは反対の極性を有する官能基を有する有機分子を用いてバインダー層を形成するバインダー層形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項7】
上記充填工程の前に、
上記絶縁層上に、チオール基を有する有機分子を用いてバインダー層を形成するバインダー層形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項8】
上記有機分子は、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項9】
上記有機分子は、アミノ基またはアンモニウム塩を末端に有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項6に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項10】
上記有機分子は、AHAPS(N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)であることを特徴とする請求項6に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項11】
上記バインダー層形成工程の後かつ上記充填工程の前に、
上記バインダー層に紫外線を照射することにより、上記バインダー層を部分的に除去するバインダー層部分除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の半導体記憶素子の製造方法。
【請求項12】
上記金属粒子配置工程の後に、
上記バインダー層を除去するバインダー層除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項5から11のいずれか一項に記載の半導体記憶素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−35073(P2011−35073A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178350(P2009−178350)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】