説明

半導体記憶装置

【課題】チャネル領域にソース領域及びドレイン領域を形成せずに、信頼性が高い動作が可能な半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、半導体記憶装置は、第1の方向に延びる同一導電形のチャネル領域と、チャネル領域上に設けられた第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた複数の浮遊ゲートと、浮遊ゲートの上に設けられた第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜の上に設けられた制御ゲートとを備えている。複数の浮遊ゲートは第1の方向及びこれに交差する第2の方向に分断されている。制御ゲートは第1の方向に対して交差する第2の方向に延びている。浮遊ゲートのフリンジ電界によって、第1の方向で隣り合う浮遊ゲート間の下のチャネル領域の表面に反転層が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板表面に、その表面の導電形とは逆導電形のソース領域及びドレイン領域が形成された不揮発性半導体記憶装置において、微細化が進むと、不純物量のばらつきに対して閾値が敏感に変動しやすくなる。また、制御ゲート加工後に、イオン注入法により制御ゲート間ギャップに不純物を注入することでソース領域及びドレイン領域を形成する方法では、微細化が進むと、狭い制御ゲート間ギャップに不純物を注入することになる。これは、ソース領域及びドレイン領域における不純物プロファイルの制御性の悪化をまねき、閾値がばらつく原因となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−173822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャネル領域にソース領域及びドレイン領域を形成せずに、信頼性が高い動作が可能な半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体記憶装置は、第1の方向に延びる同一導電形のチャネル領域と、前記チャネル領域上に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に設けられた複数の浮遊ゲートと、前記浮遊ゲートの上に設けられた第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上に設けられた制御ゲートと、を備えている。
前記複数の浮遊ゲートは、前記第1の方向及び前記第1の方向に対して交差する第2の方向に分断されている。
前記制御ゲートは、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びている。
前記浮遊ゲートのフリンジ電界によって、前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間の下の前記チャネル領域の表面に反転層が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態の半導体記憶装置における主な要素の平面レイアウトを例示する模式平面図。
【図2】図1におけるA−A’断面に対応する模式断面図。
【図3】図1におけるB−B’断面に対応する模式断面図。
【図4】図2の断面における要部の拡大図。
【図5】図4(b)の断面構造部に対応する部分の他の具体例を示す模式断面図。
【図6】図4(b)の断面構造部に対応する部分のさらに他の具体例を示す模式断面図。
【図7】図4(a)の断面構造部に対応する部分の他の具体例を示す模式断面図。
【図8】図3の断面構造部に対応する部分の他の具体例を示す模式断面図。
【図9】図2の断面に対応する部分の他の具体例を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。また、以下の実施形態では、半導体としてシリコンを例示するが、他の半導体を用いてもよい。
【0008】
図1は、実施形態の半導体記憶装置における主な要素の平面レイアウトを例示する模式平面図である。
図2は、図1におけるA−A’断面に対応する模式断面図である。
図3は、図1におけるB−B’断面に対応する模式断面図である。
【0009】
図2は、半導体基板11の表面付近の断面を表す。半導体基板11の表面、もしくは半導体基板11の表面に形成されたp形ウェル層の表面には、p形のチャネル領域12が形成されている。チャネル領域12は、第1の方向Xに延びている。また、図1に示すように、複数のチャネル領域12が、第1の方向Xに対して交差(例えば直交)する第2の方向Yに並んで形成されている。なお、図3には2つのチャネル領域12しか示されないが、第2の方向Yに複数のチャネル領域12が並んでいる。
【0010】
図3に示すように、第2の方向Yで隣り合うチャネル領域12どうしは、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)構造によって分離されている。すなわち、第2の方向Yで隣り合うチャネル領域12間にはトレンチが形成され、そのトレンチ内に例えばシリコン酸化物等の絶縁体35が埋め込まれている。
【0011】
チャネル領域12上には、第1の絶縁膜としてトンネル絶縁膜13aが設けられている。トンネル絶縁膜13aは、例えばシリコン酸化膜である。トンネル絶縁膜13aは、図2に示すように第1の方向Xに延びている。また、図3に示すように、トンネル絶縁膜13aは第2の方向Yに複数に分断されている。
【0012】
トンネル絶縁膜13a上には、複数の浮遊ゲートFGが設けられている。浮遊ゲートFGは、導電性を付与する不純物として例えばリンが添加された多結晶シリコン膜である。あるいは、浮遊ゲートFGとして、リンに加えさらにカーボンが添加されたシリコン、タングステン、窒化チタン、窒化タンタルなどを用いてもよい。
【0013】
図2に示すように、複数の浮遊ゲートFGが第1の方向Xに分断されている。また、図3に示すように、複数の浮遊ゲートFGは、第2の方向Yにも分断されている。
【0014】
浮遊ゲートFGの上には、第2の絶縁膜として層間絶縁膜21が設けられている。層間絶縁膜21は、トンネル絶縁膜13aよりも比誘電率の高い材料からなる。層間絶縁膜21として、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、ランタンアルミネート、ランタンシリケート、ランタンアルミシリケート、酸化アルミニウム、ハフニウムアルミネート、ハフニウムシリケート、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ストロンチウム、窒化シリコン、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ビスマスの少なくともいずれか1つを用いることができる。または、それら複数の混合物または複合膜、それらのうち酸化シリコン以外のものと酸化シリコンとの複合膜なども、層間絶縁膜21として用いることができる。
【0015】
層間絶縁膜21は、図2に示すように、第1の方向Xに複数に分断されている。また、層間絶縁膜21は、図3に示すように、第2の方向Yに延びている。
【0016】
層間絶縁膜21上には、制御ゲートCGが設けられている。制御ゲートCGは、浮遊ゲートFGと同じ材料を用いることができる。図2に示すように、制御ゲートCGは、第1の方向Xに複数に分断されている。また、図1及び図3に示すように、制御ゲートCGは、第2の方向Yに延びている。
【0017】
図3に示すように、第2の方向Yで隣り合う浮遊ゲートFG間およびトンネル絶縁膜13a間には、絶縁体35が設けられている。また、図2に示すように、第1の方向Xで隣り合う浮遊ゲートFG間および層間絶縁膜21間にも、誘電体50が設けられている。
【0018】
浮遊ゲートFGは、制御ゲートCGと活性領域12との交差部に位置する。すなわち、半導体基板11上に、複数のメモリセルMC(以下、単にセルとも言う。)がマトリクス状にレイアウトされている。1つのセルMCは、そのまわりを絶縁体で囲まれた1つの浮遊ゲートFGを含む。
【0019】
浮遊ゲートFGは、絶縁体で覆われ、電気的にどこにも接続されていない。そのため、電源を切っても、浮遊ゲートFG内に蓄積された電子は浮遊ゲートFGから漏れ出さず、また新たに入ることもない。すなわち、本実施形態の半導体記憶装置は、電源を供給することなくデータを保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。
【0020】
複数のセルMCは、第1の方向Xに直列接続され、セル列を構成する。さらに、セル列の第1の方向Xの両端には、選択ゲートトランジスタが接続されている。セル列及び選択ゲートトランジスタは、図2に示すソース線SLとビット線BLとの間に直列接続され、メモリストリングを構成する。なお、図1においては、ソース線SL及びビット線BLの図示は省略している。
【0021】
図2に示すように、ソース線SLは、ソース線コンタクトCSL及びn形半導体領域14aを介して、チャネル領域12に接続されている。n形半導体領域14aは、セル列の一方の端のチャネル領域12の表面に形成されている。ソース線コンタクトCSLは、n形半導体領域14a上に設けられ、n形半導体領域14aと電気的に接続している。
【0022】
セル列とn形半導体領域14aとの間に、ソース側選択トランジスタが設けられている。ソース側選択トランジスタは、ソース側選択ゲートSGSを有する。ソース側選択ゲートSGSは、セル列の第1の方向Xにおける外側で、ゲート絶縁膜13bを介してチャネル領域12上に設けられている。
【0023】
ソース側選択ゲートSGSはセル列の最も端の浮遊ゲートFG及び制御ゲートCGに対して離間し、セル列とソース側選択ゲートSGSとの間には誘電体60が設けられている。誘電体60の第1の方向Xの幅は、セルMC間の誘電体50の第1の方向Xの幅よりも大きい。あるいは、セル列とソース側選択ゲートSGS間の誘電体60の第1の方向Xの幅と、セルMC間の誘電体50の第1の方向Xの幅とは同じであってもよい。
【0024】
ソース側選択ゲートSGSは、第1の部分31と第2の部分32とを有する。第1の部分31は、セルMCの浮遊ゲートFGと同じ工程及び同じ材料で形成され、ゲート絶縁膜13b上に設けられている。第2の部分32は、セルMCの制御ゲートCGと同じ工程及び同じ材料で形成される。第1の部分31と第2の部分32との間には、セルMCの層間絶縁膜21と同じ工程及び同じ材料で形成された層間絶縁膜21が設けられている。ただし、第1の部分31と第2の部分32とは、層間絶縁膜21の一部を貫通するコンタクト部33を介して接続されている。
【0025】
形半導体領域14aを第1の方向Xに挟んで一対のソース側選択ゲートSGSが設けられ、それぞれのソース側選択ゲートSGSは、それぞれ異なるセル列をソース線SLと接続可能にする。すなわち、複数のメモリストリング間でソース線SLを共有している。
【0026】
ビット線BLは、ビット線コンタクトCBL及びn形半導体領域14bを介して、チャネル領域12に接続されている。n形半導体領域14bは、セル列の他方の端のチャネル領域12の表面に形成されている。ビット線コンタクトCBLは、n形半導体領域14b上に設けられ、n形半導体領域14bと電気的に接続している。
【0027】
セル列とn形半導体領域14bとの間に、ドレイン側選択トランジスタが設けられている。ドレイン側選択トランジスタは、ドレイン側選択ゲートSGDを有する。ドレイン側選択ゲートSGDは、セル列の第1の方向Xにおける外側で、ゲート絶縁膜13cを介してチャネル領域12上に設けられている。
【0028】
ドレイン側選択ゲートSGDはセル列の最も端の浮遊ゲートFG及び制御ゲートCGに対して離間し、セル列とドレイン側選択ゲートSGDとの間には誘電体60が設けられている。誘電体60の第1の方向Xの幅は、セルMC間の誘電体50の第1の方向Xの幅よりも大きい。あるいは、セル列とドレイン側選択ゲートSGD間の誘電体60の第1の方向Xの幅と、セルMC間の誘電体50の第1の方向Xの幅とは同じであってもよい。
【0029】
ドレイン側選択ゲートSGDは、第1の部分41と第2の部分42とを有する。第1の部分41は、セルMCの浮遊ゲートFGと同じ工程及び同じ材料で形成され、ゲート絶縁膜13c上に設けられている。第2の部分42は、セルMCの制御ゲートCGと同じ工程及び同じ材料で形成される。第1の部分41と第2の部分42との間には、セルMCの層間絶縁膜21と同じ工程及び同じ材料で形成された層間絶縁膜21が設けられている。ただし、第1の部分41と第2の部分42とは、層間絶縁膜21の一部を貫通するコンタクト部43を介して接続されている。
【0030】
形半導体領域14bを第1の方向Xに挟んで一対のドレイン側選択ゲートSGDが設けられ、それぞれのドレイン側選択ゲートSGDは、それぞれ異なるセル列をビット線BLと接続可能にする。すなわち、複数のメモリストリング間でビット線BLを共有している。
【0031】
図1に示すように、ソース側選択ゲートSGS、ドレイン側選択ゲートSGD、およびソース線コンタクトCSLは、第2の方向Yに延びている。ソース線SLは、第2の方向Yに並ぶ複数のチャネル領域12を横切ってレイアウトされ、複数のチャネル領域12が共通のソース線SLに接続可能である。ビット線BLは、図2に示すように、第1の方向Xに延びている。第2の方向Yに並ぶ複数のチャネル領域12の本数に対応して、複数本のビット線BLが設けられている。
【0032】
制御ゲートCG上、ソース側選択ゲートSGS上およびドレイン側選択ゲートSGD上には、層間絶縁膜70が設けられ、その層間絶縁膜70上にビット線BLが設けられている。ソース線SLは、層間絶縁膜70に覆われ、ビット線BL及びソース側選択ゲートSGSに対して絶縁されている。
【0033】
セル列の下、ソース側選択ゲートSGSの下、セル列とソース側選択ゲートSGSとの間の部分の下、ドレイン側選択ゲートSGDの下、およびセル列とドレイン側選択ゲートSGDとの間の部分の下に、p形のチャネル領域12が連続して形成されている。すなわち、両端にn形半導体領域14a、14bを有する1つのメモリストリングにおいて、それらn形半導体領域14a、14b間のチャネル領域12は同一導電形(p形)である。そのチャネル領域12は、ソース線SLとビット線BLとの間に電流を流す経路として機能する。
【0034】
制御ゲートCGに所望の電位(正電位)が与えられると、層間絶縁膜21を介して制御ゲートCGと容量結合している浮遊ゲートFGにも電位が与えられる。この浮遊ゲートFGの電位により、チャネル領域12において、トンネル絶縁膜13aを介して浮遊ゲートFGの下に存在する領域に反転層(n形チャネル)が形成される。
【0035】
また、本実施形態では、図4(a)に示すように、浮遊ゲートFGのフリンジ電界によって、第1の方向Xで隣り合う浮遊ゲートFG間の下のチャネル領域12aの表面にも反転層(n形チャネル)が形成される。浮遊ゲートFGのフリンジ電界による電気力線を、図4(a)において模式的に矢印で表す。
【0036】
これにより、浮遊ゲートFGの直下に生じた反転層と、第1の方向Xで隣り合う浮遊ゲートFG間の下の領域12aに生じた反転層とを、第1の方向Xにつなげることが可能となる。すなわち、本実施形態では、チャネル領域12の延びる第1の方向Xで隣り合う浮遊ゲートFG間の下の領域12aに、チャネル領域12とは逆導電形(n形)の不純物拡散領域(ソース領域及びドレイン領域)を形成しなくても、十分なオン電流を得て正常動作が可能である。
【0037】
本実施形態では、浮遊ゲートFG間の下のチャネル領域12aにソース領域及びドレイン領域が形成されないため、それら領域の不純物量のばらつきを原因とする閾値のばらつきを回避できる。
【0038】
また、上記ソース領域及びドレイン領域は、一般に、制御ゲートCGの加工後、イオン注入法により形成される。特にセルMCの微細化が進むと、そのイオン注入時に、狭いセルMC間ギャップに不純物が注入されることになり、ラインアンドスペースのばらつきと相まって不純物プロファイル制御が困難になる。しかし、本実施形態では、セルMC間にイオン注入をしなくてよいので、不純物プロファイルのばらつきを原因とする閾値のばらつきを回避することができる。
【0039】
図4(b)は、セル列とソース側選択ゲートSGSとの間の部分、もしくはセル列とドレイン側選択ゲートSGDとの間の部分の断面を表す。なお、図4(b)においては、ソース側選択ゲートSGSとドレイン側選択ゲートSGDとを区別せず、単に選択ゲートSGと表している。すなわち、選択ゲートSGは、ソース側選択ゲートSGSまたはドレイン側選択ゲートSGDに対応する。
【0040】
チャネル領域12において、セル列と選択ゲートSGとの間の下の領域12bにもn形不純物の拡散領域が形成されていない。すなわち、セル列と選択ゲートSGとの間の下の領域12bもp形である。
【0041】
そして、セル列における最も選択ゲートSG側の端にある浮遊ゲートFGのフリンジ電界、および選択ゲートSGのフリンジ電界によって、セル列と選択ゲートSG間の下の領域12bにも反転層(n形チャネル)が形成される。それらフリンジ電界による電気力線を、図4(b)において模式的に矢印で表す。
【0042】
これにより、浮遊ゲートFGの下に生じた反転層、隣り合う浮遊ゲートFG間の下の領域12aに生じた反転層、選択ゲートSGの下に生じた反転層、およびセル列と選択ゲートSG間の下の領域12bに生じた反転層とをつなげることが可能となる。
【0043】
すなわち、セル列と選択ゲートSG間の下の領域12bに、チャネル領域12とは逆導電形(n形)の不純物拡散領域を形成しなくても、セル列のチャネルを、ソース線SL及びビット線BLに電気的に接続することができる。
【0044】
本実施形態では、前述したように、セル列のチャネル領域12に不純物拡散領域を形成するためのイオン注入が不要になる。さらに、セル列と選択ゲートSG間の下の領域12bにもイオン注入が不要になる。この結果、工程数を削減でき、コストを低減できる。
【0045】
なお、プロセス上、セルMC間の第1の方向Xのピッチよりも、セルMCと選択ゲートSGとの間の距離が広くなる傾向がある。したがって、セルMC間に比べて第1の方向Xの幅が広くなる上記領域12bにおいては、フリンジ電界により誘起される電子密度が不十分になりやすく、これはオン電流低下の原因となり得る。
【0046】
したがって、セル列の最も端の浮遊ゲートFGと選択ゲートSGとの間には、セルMC間に設けられた誘電体50よりも比誘電率が高い誘電体60を設けることが望ましい。誘電体50、60として、1種類の膜に限らず、複数種の膜の複合膜を用いることがある。その場合、誘電体60の平均の比誘電率が、誘電体50の平均の比誘電率よりも高くなるようにする。
【0047】
比誘電率が高い誘電体60を用いることで、セル列の端の浮遊ゲートFGと領域12b間の容量、および選択ゲートSGと領域12b間の容量を増大させることができる。これにより、セルMC間に比べて広い領域12bにも、フリンジ電界によって十分な密度の電子を誘起することができる。
【0048】
例えば、図5(b)に示すように、セルMC間には空隙80が形成されている。空隙80には、例えば窒素等の不活性気体が含まれる。セルMCと選択ゲートSG間の誘電体55a、55bは、空隙80に含まれる気体よりも比誘電率が高いシリコン酸化物を含む。
【0049】
浮遊ゲートFG、制御ゲートCGおよび選択ゲートSGの加工後、図5(a)に示すように、例えばCVD(chemical vapor deposition)法で、浮遊ゲートFG、制御ゲートCG及び選択ゲートSGの露出部にシリコン酸化膜55aを形成する。このときの成膜条件(時間、ガス種、ガス流量、チャンバー内圧力など)を制御することで、セルMC間に空隙80を生じさせることができる。
【0050】
その後、再び、例えばCVD法によって、シリコン酸化膜55bを堆積させる。これにより、図5(b)に示すように、セルMCと選択ゲートSG間は、シリコン酸化膜55a、55bで埋まる。
【0051】
セル列における隣り合う浮遊ゲートFG間には、シリコン酸化膜よりも比誘電率が低い空隙80が存在する。このため、隣り合う浮遊ゲートFG間の容量結合による閾値変動などのセル間干渉を抑制できる。
【0052】
セルMC間の誘電体の平均の誘電率よりも、セルMCと選択ゲートSG間の誘電体の平均の誘電率が相対的に高ければよい。
【0053】
例えば、図6(b)に示すように、セルMC間の誘電体55はシリコン酸化物を含み、セルMCと選択ゲートSG間の誘電体56はシリコン酸化物よりも比誘電率が高いシリコン窒化物を含む構造であってもよい。
【0054】
浮遊ゲートFG、制御ゲートCGおよび選択ゲートSGの加工後、図6(a)に示すように、例えばCVD法で、浮遊ゲートFG、制御ゲートCG及び選択ゲートSGの露出部にシリコン酸化膜55を形成する。このとき、セルMC間はシリコン酸化膜55で埋める。セルMC間に比べて間隔が広い、セルMCと選ゲートSG間はシリコン酸化膜55で埋まらないようにする。
【0055】
その後、例えばCVD法によって、シリコン窒化膜56を堆積させる。これにより、図6(b)に示すように、セルMCと選択ゲートSG間におけるシリコン酸化膜55の内側をシリコン窒化膜56で埋める。
【0056】
再び図1を参照すると、浮遊ゲートFGとチャネル領域12との間のトンネル絶縁膜13a、ソース側選択ゲートSGSとチャネル領域12との間のゲート絶縁膜13b、およびドレイン側選択ゲートSGDとチャネル領域12との間のゲート絶縁膜13cは、同工程で同材料で形成され、厚さも同じである。
【0057】
また、制御ゲートCGと浮遊ゲートFGとは層間絶縁膜21によって容量結合している。これに対して、ソース側選択ゲートSGSでは、セルMCの浮遊ゲートFGに対応する第1の部分31と、制御ゲートCGに対応する第2の部分32とが直接接続されている。同様に、ドレイン側選択ゲートSGDにおいても第1の部分41と第2の部分42とが直接接続されている。
【0058】
したがって、セルMCの閾値と、選択トランジスタの閾値とを適切に調整するため、浮遊ゲートFGの下のチャネル領域12のp形不純物濃度と、選択ゲートの下のチャネル領域12のp形不純物濃度とが異なる。
【0059】
すなわち、ソース側選択ゲートSGSの下のチャネル領域(図2において破線で表す)12cのp形不純物濃度は、セルMCのチャネル領域12のp形不純物濃度と異なる。同様に、ドレイン側選択ゲートSGDの下のチャネル領域(図2において破線で表す)12dのp形不純物濃度は、セルMCのチャネル領域12のp形不純物濃度と異なる。
【0060】
選択ゲートの下のチャネル領域12c、12dのp形不純物濃度が相対的に高くなる場合、その高不純物濃度のチャネル領域12c、12dは選択ゲートの直下に制限され、セル列と選択ゲートとの間のチャネル領域にまで延びていないことが望ましい。セル列と選択ゲートとの間のチャネル領域に高不純物濃度のp形領域が存在しないことで、前述したフリンジ電界によって、十分な密度の電子誘起が可能となる。
【0061】
本実施形態のセルMCは、制御ゲートCGと浮遊ゲートFGとを層間絶縁膜21を介して積層させたスタックゲート(二重ゲート)構造を有する。このように二重にゲートが積層された構造のセルにおいては、制御ゲートCGよりもチャネル領域12に近い浮遊ゲートFGのフリンジ電界を利用することが有効である。
【0062】
以下、図7(a)、(b)を参照して、浮遊ゲートFGのフリンジ電界の利用効果をより高める構造の一例について説明する。
【0063】
例えば、スタックゲート加工時の異方性エッチング(例えば、RIE(Reactive Ion Etching))の条件制御、あるいはスタックゲート間のトレンチのアスペクト比(幅に対する深さの比)の設計を適切にすることで、図7(a)に示すように、上部から下部(底部)にかけて漸次幅が小さくなるトレンチが、第1の方向Xで隣り合うスタックゲート間に形成される。
【0064】
この結果、そのトレンチに隣接する浮遊ゲートFG及び制御ゲートCGを含むスタックゲートは、トレンチとは逆に、上部から下部(底部)にかけて漸次幅が大きくなる。すなわち、そのスタックゲートの断面は台形状になる。
【0065】
したがって、浮遊ゲートFGの第1の方向Xの最大幅は、制御ゲートCGの第1の方向Xの最大幅よりも大きく、また、浮遊ゲートFGにおけるチャネル領域12側の下部の第1の方向Xの幅は、制御ゲートCG側の上部の第1の方向Xの幅よりも大きい。スタックゲートにおいて、チャネル領域12により近い部分のゲート幅が大きくなることで、セルMC間の下のチャネル領域12に対する浮遊ゲートFGのフリンジ電界の影響を高めることができる。
【0066】
また、図7(b)に示すように、第1の方向Xで隣り合う浮遊ゲートFG間の誘電体の平均の比誘電率を、第1の方向Xで隣り合う制御ゲートCG間の誘電体の平均の比誘電率よりも高くすることによっても、セルMC間の下のチャネル領域12に対する浮遊ゲートFGのフリンジ電界の影響を高めることができる。
【0067】
図7(b)において、例えば、浮遊ゲートFG間にはシリコン酸化膜50が設けられ、制御ゲートCG間には、シリコン酸化膜よりも比誘電率が低い例えば窒素等の不活性気体を含む空隙81が設けられている。これにより、浮遊ゲートFGと、セルMC間の下のチャネル領域12との結合容量を増大させて、浮遊ゲートFGのフリンジ電界を効果的にセルMC間の下のチャネル領域12に作用させることができる。
さらに、選択ゲートSGにおける層間絶縁膜21よりも上の部分と、セル列との間にも空隙81を形成してもよい。この場合も、よりチャネル領域12に近い、選択ゲートSGにおける層間絶縁膜21よりも下の部分のフリンジ電界を効果的に利用することが可能になる。
【0068】
また、浮遊ゲートFGとしてシリコン膜を用いた場合、例えばカーボンを添加させると、浮遊ゲートFGの空乏化を抑制できる可能性がある。これにより、浮遊ゲートFGとチャネル領域12間の実効絶縁膜厚さの増大を抑制できる。この結果、浮遊ゲートFGの下端が実質的にチャネル領域12に近づき、浮遊ゲートFGのフリンジ電界を効果的にセルMC間の下のチャネル領域12に作用させることができる。
チャネル領域12に対する浮遊ゲートFGのフリンジ電界の影響を強くするためには、浮遊ゲートFGにおいてトンネル絶縁膜13側の下部での空乏化を抑えることが有効である。したがって、カーボンは、浮遊ゲートFGにおけるトンネル絶縁膜13側の下部に添加することが好ましい。例えば、シリコンを用いた浮遊ゲートFGの構造として、トンネル絶縁膜13に接する部分に設けられたカーボンを含む第1の層と、その第1の層上に設けられたカーボンを含まない第2の層との積層構造を採用することができる。
【0069】
あるいは、浮遊ゲートFGとして金属膜を用いた場合も、浮遊ゲートFGの空乏化を抑制することができ、浮遊ゲートFGのフリンジ電界を効果的にセルMC間の下のチャネル領域12に作用させることができる。
【0070】
図8は、セルMCの構造の他の具体例を表す。図8は、図3の断面構造部に対応し、すなわち、図1におけるB−B’断面に対応する。
【0071】
この構造においても、浮遊ゲートFGと制御ゲートCGとの間に設けられた層間絶縁膜91は、第1の方向Xでは複数に分断され、第2の方向Yにはつながっている。さらに、浮遊ゲートFGにおいて、第2の方向Yで隣り合う他の浮遊ゲートFGに対向する側面の一部にも、層間絶縁膜91が設けられている。
【0072】
層間絶縁膜91を、浮遊ゲートFG上にだけでなく、側面にも設けることで、層間絶縁膜91を介した浮遊ゲートFGと制御ゲートCG間の容量を大きくできる。この結果、書き込み電圧の低電圧化を図れる。
【0073】
また、浮遊ゲートFGと制御ゲートCGとの結合容量を増大させることで、制御ゲートCGに与える電位をそれほど高めなくても、浮遊ゲートFGのフリンジ電界によってセルMC間の下のチャネル領域12に十分な密度の電子を誘起することが可能になる。
また、本実施形態では、図3に示す構造に比べて、浮遊ゲートFGの高さ方向のサイズが増大する。その分、チャネル領域12に対する浮遊ゲートFGのフリンジ電界の影響力が高まる。
【0074】
また、第2の方向Yで隣り合う浮遊ゲートFG間に、制御ゲートCGの一部が、層間絶縁膜91を介在させて設けられている。その制御ゲートCGのシールド効果によって、隣り合う浮遊ゲートFG間の容量結合によるセル間干渉を抑制できる。
【0075】
図9に示すように、セル列とソース側選択ゲートSGSとの間の下の領域に、n形不純物の拡散領域25が形成されていてもよい。同様に、セル列とドレイン側選択ゲートSGDとの間の下の領域に、n形不純物の拡散領域26が形成されていてもよい。
前述した実施形態において、p形として説明した領域がn形であり、且つn形として説明した領域がp形であってもよい。すなわち、第1の方向Xにn形のチャネル領域が延びている構造であってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
11…半導体基板、12…チャネル領域、13a…トンネル絶縁膜、13b,13c…ゲート絶縁膜、21,91…層間絶縁膜、55a,55b…シリコン酸化膜、56…シリコン窒化膜、80…空隙、CG…制御ゲート、FG…浮遊ゲート、SGS…ソース側選択トランジスタ、SGD…ドレイン側選択トランジスタ、SL…ソース線、BL…ビット線、MC…メモリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる同一導電形のチャネル領域と、
前記チャネル領域上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の方向及び前記第1の方向に対して交差する第2の方向に分断された複数の浮遊ゲートと、
前記浮遊ゲートの上に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられ、前記第2の方向に延びる制御ゲートと、
を備え、
前記浮遊ゲートのフリンジ電界によって、前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間の下の前記チャネル領域の表面に反転層が形成されることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
第1の方向に延びる同一導電形のチャネル領域と、
前記チャネル領域上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の方向及び前記第1の方向に対して交差する第2の方向に分断された複数の浮遊ゲートと、
前記浮遊ゲートの上面及び前記第2の方向の側面に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上及び前記第2の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間に設けられ、前記第2の方向に延びる制御ゲートと、
を備えたことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
前記浮遊ゲートのフリンジ電界によって、前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間の下の前記チャネル領域の表面に反転層が形成されることを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記浮遊ゲートの前記第1の方向の最大幅は、前記制御ゲートの前記第1の方向の最大幅よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記浮遊ゲートにおける前記チャネル領域側の下部の前記第1の方向の幅は、前記制御ゲート側の上部の前記第1の方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間に設けられた第1の誘電体と、前記第1の方向で隣り合う前記制御ゲート間に設けられた第2の誘電体と、をさらに備え、
前記第1の誘電体の平均の比誘電率は、前記第2の誘電体の平均の比誘電率よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1の方向に配列された前記複数の浮遊ゲートを含むセル列の端で、前記チャネル領域上に設けられた第3の絶縁膜と、
前記浮遊ゲート及び前記制御ゲートに対して離間して前記第3の絶縁膜上に設けられ、前記第2の方向に延びる選択ゲートと、をさらに備え、
前記セル列の下、前記選択ゲートの下、および前記セル列と前記選択ゲートとの間の部分の下に、同一導電形の前記チャネル領域が連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記選択ゲートの下の前記チャネル領域の不純物濃度は、前記セル列の下の前記チャネル領域の不純物濃度と異なることを特徴とする請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記セル列における前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間に設けられた第3の誘電体と、
前記セル列の最も端の浮遊ゲートと、前記選択ゲートとの間に設けられた第4の誘電体と、をさらに備え、
前記第4の誘電体の平均の比誘電率は、前記第3の誘電体の平均の比誘電率よりも高いことを特徴とする請求項7または8に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第1の方向で隣り合う前記浮遊ゲート間に空隙が設けられ、前記第4の誘電体はシリコン酸化物を含むことを特徴とする請求項9記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記第3の誘電体はシリコン酸化物を含み、前記第4の誘電体はシリコン窒化物を含むことを特徴とする請求項9記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記浮遊ゲートにおける少なくとも前記第1の絶縁膜側にカーボンが添加されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記浮遊ゲートは、金属膜であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119598(P2012−119598A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270004(P2010−270004)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】