圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】 キャビティ内の気密を確実に維持すると共に、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保すること。
【解決手段】 ベース基板2と、キャビティ用の凹部3aが形成され、凹部をベース基板に対向させた状態でベース基板に接合されたリッド基板3と、両基板間に形成されたキャビティ内で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片4と、ベース基板の下面に形成された一対の外部電極38、39と、ベース基板を貫通するように形成され、一対の外部電極にそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極32、33と、ベース基板の上面に形成され、圧電振動片に一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極36、37と、を備え、貫通電極が、貫通孔30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aと、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体32b、33bと、で形成される圧電振動子1を提供する。
【解決手段】 ベース基板2と、キャビティ用の凹部3aが形成され、凹部をベース基板に対向させた状態でベース基板に接合されたリッド基板3と、両基板間に形成されたキャビティ内で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片4と、ベース基板の下面に形成された一対の外部電極38、39と、ベース基板を貫通するように形成され、一対の外部電極にそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極32、33と、ベース基板の上面に形成され、圧電振動片に一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極36、37と、を備え、貫通電極が、貫通孔30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aと、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体32b、33bと、で形成される圧電振動子1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合された2枚の基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された表面実装型(SMD)の圧電振動子、該圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、一般的に圧電振動片が形成された圧電基板を、ベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。この場合、圧電振動子は、ベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収納されている。また、近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることで2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収納されている。この2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができる等の点において優れており、好適に使用されている。このような2層構造タイプの圧電振動子の1つとして、ベース基板を貫通するように形成された導電部材を利用して、圧電振動片とベース基板に形成された外部電極とを導通させた圧電振動子が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
この圧電振動子200は、図21及び図22に示すように、接合膜207を介して互いに陽極接合されたベース基板201及びリッド基板202と、両基板201、202の間に形成されたキャビティC内に封止された圧電振動片203と、を備えている。圧電振動片203は、例えば音叉型の振動片であって、キャビティC内においてベース基板201の上面に導電性接着剤Eを介してマウントされている。
ベース基板201及びリッド基板202は、例えばセラミックやガラス等からなる絶縁基板である。両基板201、202のうちベース基板201には、該基板201を貫通するスルーホール204が形成されている。そして、このスルーホール204内には、該スルーホール204を塞ぐように導電部材205が埋め込まれている。この導電部材205は、ベース基板201の下面に形成された外部電極206に電気的に接続されていると共に、キャビティC内にマウントされている圧電振動片203に電気的に接続されている。
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【特許文献2】特開2006−279872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した2層構造タイプの圧電振動子において、導電部材205は、スルーホール204を塞いでキャビティC内の気密を維持すると共に、圧電振動片203と外部電極206とを導通させるという2つの大きな役割を担っている。特に、スルーホール204との密着が不十分であると、キャビティC内の気密が損なわれてしまう恐れがあり、また、導電性接着剤E或いは外部電極206との接触が不十分であると、圧電振動片203の作動不良を招いてしまう。従って、このような不具合をなくす為にも、スルーホール204の内面に強固に密着した状態で該スルーホール204を完全に塞ぎ、しかも、表面に凹み等がない状態で導電部材205を形成する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には、導電部材205を導電ペースト(AgペーストやAu−Snペースト等)にて形成する点は記載されているものの、実際にどのように形成するか等の具体的な製造方法については何ら記載されていない。
一般的に導電ペーストを使用する場合には、焼成して硬化させる必要がある。つまり、スルーホール204内に導電ペーストを埋め込んだ後、焼成を行って硬化させる必要がある。ところが、焼成を行うと、導電ペーストに含まれる有機物が蒸発により消失してしまうので、通常、焼成後の体積が焼成前に比べて減少してしまう(例えば、導電ペーストとしてAgペーストを用いた場合には、体積が略20%程度減少してしまう)。そのため、導電ペーストを利用して導電部材205を形成したとしても、表面に凹みが発生してしまったり、酷い場合には貫通孔が中心に開いてしまったりする恐れがある。
その結果、キャビティC内の気密が損なわれたり、圧電振動片203と外部電極206との導通性が損なわれたりする可能性があった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、キャビティ内の気密を確実に維持すると共に、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保した高品質な2層構造式表面実装型の圧電振動子を提供することである。また、該圧電振動子を、一度に効率良く製造する圧電振動子の製造方法、圧電振動子を有する発振器、電子機器、電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動子は、ベース基板と、キャビティ用の凹部が形成され、該凹部を前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合されたリッド基板と、前記凹部を利用して前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納された状態で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片と、前記ベース基板の下面に形成された一対の外部電極と、前記ベース基板を貫通するように形成され、前記キャビティ内の気密を維持すると共に、前記一対の外部電極に対してそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極と、前記ベース基板の上面に形成され、接合された前記圧電振動片に対して前記一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極と、を備え、前記貫通電極が、前記ベース基板を貫通する貫通孔の内面に成膜された電極膜と、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体と、で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを利用して一度に複数製造する方法であって、前記リッド基板用ウエハに、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、前記ベース基板用ウエハの上面に、前記一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程と、複数の前記圧電振動片を、前記引き回し電極を介して前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせて、前記凹部と両ウエハとで囲まれる前記キャビティ内に圧電振動片を収納する重ね合わせ工程と、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合し、前記圧電振動片を前記キャビティ内に封止する接合工程と、前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、接合された前記両ウエハを切断して、複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、前記貫通電極形成工程が、前記ベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、該電極膜が成膜された貫通孔内に、該貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程と、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱して溶融させ、電極膜が成膜された貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着させる加熱工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、まずリッド基板用ウエハに、キャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程を行う。これら凹部は、後に両ウエハを重ね合わせた際に、キャビティとなる凹部である。
また、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、ベース基板用ウエハに、一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程を行う。この際、後に両ウエハを重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハに形成した凹部内に収まるように一対の貫通電極を複数形成する。
【0011】
この貫通電極形成工程について、詳細に説明すると、まずベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程を行う。続いて、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程を行う。続いて、電極膜が成膜された貫通孔に、ガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程を行う。この際、ガラス体の塊として、貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を用いる。
続いて、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱する加熱工程を行う。この加熱工程を行うことで、まず貫通孔に埋め込まれたガラス体の塊が溶融する。この際、埋め込まれたガラス体の塊の体積が貫通孔の容積と略等しいので、溶融した状態のガラス体は、貫通孔内に隙間なく行き渡って貫通孔を塞ぐ。これにより、ガラス体は、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に強固に固着した状態になる。この結果、電極膜とガラス体とにより貫通電極が形成される。
【0012】
特に、貫通電極を形成するにあたって、従来のものとは異なり、ペーストを使用せずに、電極膜とガラス体とで貫通電極を形成している。仮にペーストを使用した場合には、ペーストを焼成する必要がある。通常、ペーストは、焼成時に内部に含まれる有機物が蒸発してしまうので、焼成後の体積が焼成前に比べて顕著に減少してしまう。そのため、仮にペーストだけを貫通孔内に埋め込んで焼成した場合には、焼成後にペーストの表面に大きな凹みが生じてしまう。
しかしながら、上述したように、ペーストを使用せずに、電極膜とガラス体とを利用しており、両者の表面に大きな凹みが現れる恐れがない。なお、ガラス体は、加熱工程の際に若干体積が減少する可能性があるが、ペーストを焼成する場合とは違い、目立つ凹みとなって現れるほど顕著なものではなく、無視できる範囲である。
従って、ベース基板用ウエハの表面と、ガラス体の表面とは、ほぼ面一な状態となる。つまり、ベース基板用ウエハの表面と貫通電極の表面とを、ほぼ面一な状態とすることができる。
【0013】
次に、ベース基板用ウエハの上面に導電性材料をパターニングして、各一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程を行う。この際、後に両ウエハを重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハに形成した凹部内に収まるように引き回し電極を形成する。
特に、電極膜及びガラス体からなる貫通電極は、上述したように、ベース基板用ウエハの上面に対してほぼ面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハの上面にパターニングされた引き回し電極は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極に対して密着した状態で接する。これにより、引き回し電極と貫通電極との導通性を確実なものにすることができる。
【0014】
次に、複数の圧電振動片を、それぞれ引き回し電極を介してベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程を行う。これにより、接合された各圧電振動片は、引き回し電極を介して一対の貫通電極に対して導通した状態となる。マウント終了後、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを重ね合わせる重ね合わせ工程を行う。これにより、接合された複数の圧電振動片は、凹部と両ウエハとで囲まれるキャビティ内に収納された状態となる。
次に、重ね合わせた両ウエハを接合する接合工程を行う。これにより、両ウエハが強固に密着するので、圧電振動片をキャビティ内に封止することができる。この際、ベース基板用ウエハに形成された貫通孔は、貫通電極によって塞がれているので、キャビティ内の気密が貫通孔を通じて損なわれることがない。特に、貫通電極を構成するガラス体は、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に強固に密着しているので、キャビティ内の気密を確実に維持することができる。
【0015】
次に、ベース基板用ウエハの下面に導電性材料をパターニングして、各一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程を行う。この場合も引き回し電極の形成時と同様に、ベース基板用ウエハの下面に対して貫通電極がほぼ面一な状態となっているので、パターニングされた外部電極は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極と貫通電極との導通性を確実なものにすることができる。この工程により、外部電極を利用して、キャビティ内に封止された圧電振動片を作動させることができる。
最後に、接合されたベース基板用ウエハ及びリッド基板用ウエハを切断して、複数の圧電振動子に小片化する切断工程を行う。
【0016】
その結果、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された2層構造式表面実装型の圧電振動子を一度に複数製造することができる。
特に、ベース基板に対してほぼ面一な状態で貫通電極を形成できるので、該貫通電極を、引き回し電極及び外部電極に対して確実に密着させることができる。その結果、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保することができ、作動性能の信頼性を向上して、高品質化を図ることができる。しかも、貫通孔の内面に成膜された電極膜を利用して貫通電極を構成しているので、非常に安定した導通性を得ることができる。
また、キャビティ内の気密に関しても確実に維持することができるので、この点においても高品質化を図ることができる。
加えて、電極膜及びガラス体を利用した簡単な方法で貫通電極を形成できるので、工程の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記貫通孔が、前記ベース基板の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記貫通孔形成工程の際に、前記貫通孔を、前記ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、貫通孔形成工程の際に、貫通孔を、ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成する。従って、上面側から埋め込まれたガラス体の塊は、下面側から抜け落ちることがない。よって、ガラス体セット工程から加熱工程まで、ガラス体の塊が抜け落ちて紛失することがない。その結果、余分な作業時間を要することがなく、更なる工程の簡素化を図ることができる。加えて、ガラス体の塊は、下面側から抜け落ちずに貫通孔内に保持されていることになる。つまり、単に上面側から貫通孔に埋め込むだけで、貫通孔内に保持することができる。よって、この点においても、更なる工程の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記ガラス体が、熱膨張係数が前記ベース基板と略等しいことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記ガラス体として、熱膨張係数が前記ベース基板用ウエハと略等しいガラス体を用いることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、ガラス体の熱膨張係数が、ベース基板用ウエハの該係数と略等しい。即ち、加熱工程の際に、ガラス体とベース基板用ウエハとの膨張量が略等しくなる。これにより、ベース基板用ウエハにクラックなどが発生することを防止でき、圧電振動子の更なる高品質化を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記ベース基板及び前記リッド基板が、前記凹部の周囲を囲むように両基板の間に形成された接合膜を介して陽極接合されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記マウント工程前に、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせたときに、前記凹部の周囲を囲む接合膜をベース基板用ウエハの上面に形成する接合膜形成工程を備え、前記接合工程の際、前記接合膜を介して前記両ウエハを陽極接合することを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、接合膜を介してベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを陽極接合できるので、両ウエハをより強固に接合してキャビティ内の気密性を高めることができる。従って、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができ、さらなる高品質化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記圧電振動片は、導電性のバンプによりバンプ接合されていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記マウント工程の際、導電性のバンプを利用して前記圧電振動片をバンプ接合することを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、圧電振動片をバンプ接合するので、バンプの厚み分だけ圧電振動片をベース基板の上面から浮かすことができる。そのため、圧電振動片の振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、圧電振動子の作動性能の信頼性をさらに向上することができる。
【0029】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記ガラス体セット工程の際、予め仮焼成されたガラス体の塊を用いることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、ガラス体が予め仮焼成されているので、その後に加熱を行った際に体積減少等が生じ難い。そのため、より高品質な貫通電極を形成することができ、キャビティ内の気密をより確実にすることができる。その結果、圧電振動子の更なる高品質化を図ることができる。
【0031】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、キャビティ内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子を備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密を確実に維持することができると共に、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保した高品質な2層構造式表面実装型の圧電振動子とすることができる。
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法によれば、上述した圧電振動子を一度に効率良く製造することができ、低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動子を備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1から図17を参照して説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図4に示すように、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動子1である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0035】
圧電振動片4は、図5から図7に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、該一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、該振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0036】
第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図7に示すように、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0037】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、図5及び図6に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極15、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0038】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0039】
このように構成された圧電振動片4は、図3から図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた引き回し電極36、37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極16、17がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されると共に、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0040】
上記リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1、図3及び図4に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部3aである。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で該ベース基板2に対して陽極接合されている。
【0041】
上記ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1から図4に示すように、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)30、31が形成されている。この際、一対のスルーホール30、31は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態のスルーホール30、31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に一方のスルーホール30が位置し、振動腕部10、11の先端側に他方のスルーホール31が位置するように形成されている。
また、一対のスルーホール30、31は、図3に示すように、ベース基板2の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されている。より詳しくは、ベース基板2の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状になるように形成されている。
【0042】
そして、これら一対のスルーホール30、31には、該スルーホール30、31を埋めるように形成された一対の貫通電極32、33が形成されている。これら貫通電極32、33は、スルーホール30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aと、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に固着されたガラス体32b、33bと、で形成されている。更に、これら貫通電極32、33は、スルーホール30、31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持していると共に、後述する外部電極38、39と引き回し電極36、37とを導通させる役割を担っている。
なお、貫通電極32、33は、電極膜32a、33aを通して、電気導通性が確保されている。
【0043】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、図1から図4に示すように、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜35と、一対の引き回し電極36、37とがパターニングされている。このうち接合膜35は、リッド基板3に形成された凹部3aの周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0044】
また、一対の引き回し電極36、37は、一対の貫通電極32、33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10、11に沿って該振動腕部10、11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
そして、これら一対の引き回し電極36、37上にそれぞれバンプBが形成されており、該バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0045】
また、ベース基板2の下面には、図1、図3及び図4に示すように、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38、39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0046】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38、39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0047】
次に、上述した圧電振動子1を、図8に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。
【0048】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図5から図7に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングすると共に、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0049】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0050】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、図9に示すように、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0051】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32、33を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S30A)。ここで、この貫通電極形成工程について、詳細に説明する。
【0052】
まず、図10に示すように、ベース基板用ウエハ40に該ウエハ40を貫通する一対のスルーホール30、31を複数形成する貫通孔形成工程(S32)を行う。なお、図10に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。この工程を行う際、ベース基板用ウエハ40の上面側から、例えばプレス加工等により行う。これにより、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状のスルーホール30、31を形成することができる。また、後に両ウエハ40、50を重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3a内に収まるように一対のスルーホール30、31を複数形成する。しかも、一方のスルーホール30が圧電振動片4の基部12側に位置し、他方のスルーホール31が振動腕部10、11の先端側に位置するように形成する。
【0053】
続いて、図12に示すように、これら複数のスルーホール30、31の内面に電極膜32a、33aを成膜する電極膜成膜工程(S33)を行う。具体的には、電極膜32a、33aを、例えばクロムと銅とが積層するようにスパッタリングすることによって成膜する。続いて、図13に示すように、電極膜32a、33aが成膜されたスルーホール30、31に、球状のガラスボール(ガラス体の塊)Gを埋め込むガラス体セット工程(S34)を行う。この際、ガラスボールGとして、スルーホール30、31の容積と略等しい体積のガラスボールGを用いる。更に、ガラスボールGとして、予め仮焼成されたガラスボールを用いる。
【0054】
続いて、埋め込んだガラスボールGを所定の温度で加熱する加熱工程(S35)を行う。この加熱工程を行うことで、まずスルーホール30、31に埋め込まれたガラスボールGが溶融する。この際、埋め込まれたガラスボールGの体積がスルーホール30、31の容積と略等しいので、溶融した状態のガラス体は、スルーホール30、31内に隙間なく行き渡ってスルーホール30、31を塞ぐ。これにより、ガラス体32b、33bは、図14に示すように、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に強固に固着した状態になる。この結果、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとにより貫通電極32、33が形成される。
【0055】
特に、貫通電極32、33を形成するにあたって、従来のものとは異なり、ペーストを使用せずに、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとで貫通電極32、33を形成している。仮にペーストを使用した場合には、ペーストを焼成する必要がある。通常、ペーストは、焼成時に内部に含まれる有機物が蒸発してしまうので、焼成後の体積が焼成前に比べて顕著に減少してしまう。そのため、仮にペーストだけをスルーホール30、31内に埋め込んで焼成した場合には、焼成後にペーストの表面に大きな凹みが生じてしまう。
しかしながら、上述したように、ペーストを使用せずに、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとを利用しており、両者の表面に大きな凹みが現れる恐れがない。なお、ガラス体32b、33bは、加熱工程の際に若干体積が減少するが、ペーストを焼成する場合とは違い、目立つ凹みとなって現れるほど顕著なものではなく、無視できる範囲である。
従って、ベース基板用ウエハ40の表面と、ガラス体32b、33bの表面とは、ほぼ面一な状態となる。つまり、ベース基板用ウエハ40の表面と貫通電極32、33の表面とを、ほぼ面一な状態とすることができる。
【0056】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、図15及び図16に示すように、接合膜35を形成する接合膜形成工程を行う(S36)と共に、各一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36、37を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S37)。なお、図15及び図16に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
特に、電極膜32a、33a及びガラス体32b、33bからなる貫通電極32、33は、上述したように、表面に凹みがなく、ベース基板用ウエハ40の上面に対してほぼ面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハ40の上面にパターニングされた引き回し電極36、37は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極32、33に対して密着した状態で接する。これにより、一方の引き回し電極36と一方の貫通電極32との導通性、並びに、他方の引き回し電極37と他方の貫通電極33との導通性を確実なものにすることができる。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0057】
ところで、図8では、接合膜形成工程(S36)の後に、引き回し電極形成工程(S37)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S37)の後に、接合膜形成工程(S36)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0058】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極36、37を介してベース基板用ウエハ40の上面に接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極36、37上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプBに機械的に支持されると共に、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極15は、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ導通した状態となる。
特に、圧電振動片4は、バンプ接合されるので、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。
【0059】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40、50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜35とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜35とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図17に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図17においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜35の図示を省略している。また、図17に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
ところで、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール30、31は、貫通電極32、33によって完全に塞がれているので、キャビティC内の気密がスルーホール30、31を通じて損なわれることがない。特に、貫通電極32、33を構成するガラス体32b、33bは、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に強固に密着しているので、キャビティC内の気密を確実に維持することができる。
【0061】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38、39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極38、39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
特に、この工程を行う場合も引き回し電極36、37の形成時と同様に、ベース基板用ウエハ40の下面に対して貫通電極32、33がほぼ面一な状態となっているので、パターニングされた外部電極38、39は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極32、33に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極38、39と貫通電極32、33との導通性を確実なものにすることができる。
【0062】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S80)。具体的に説明すると、ベース基板用ウエハ40の下面に形成された一対の外部電極38、39に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらリッド基板用ウエハ50を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10、11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0063】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を図17に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S90)。その結果、互いに接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
なお、切断工程(S90)を行って個々の圧電振動子1に小片化した後に、微調工程(S80)を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程(S80)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので好ましい。
【0064】
その後、内部の電気特性検査を行う(S100)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0065】
特に、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2に対してほぼ面一な状態で貫通電極32、33を形成できるので、該貫通電極32、33を、引き回し電極36、37及び外部電極38、39に対して確実に密着させることができる。その結果、圧電振動片4と外部電極38、39との安定した導通性を確保することができ、作動性能の信頼性を向上して高性能化を図ることができる。しかも、スルーホール30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aを利用して貫通電極32、33を構成しているので、非常に安定した導通性を得ることができる。
【0066】
また、キャビティC内の気密に関しても確実に維持することができるので、この点においても高品質化を図ることができる。特に、本実施形態で用いたガラスボールGは、予め仮焼成されているので、その後に加熱を行った際に体積減少等が生じ難い。そのため、より高品質な貫通電極32、33を形成することができ、キャビティC内の気密をより確実にすることができる。その結果、圧電振動子1の更なる高品質化を図ることができる。
【0067】
加えて、電極膜32a、33a及びガラス体32b、33bを利用した簡単な方法で貫通電極32、33を形成できるので、工程の簡素化を図ることができる。特に、本実施形態では、貫通孔形成工程の際に、スルーホール30、31を、ベース基板用ウエハ40の下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成している。従って、上面側から埋め込まれたガラスボールGは、下面側から抜け落ちることがない。よって、ガラス体セット工程から加熱工程まで、ガラスボールGが抜け落ちて紛失することがない。その結果、余分な作業時間を要することがなく、更なる工程の簡素化を図ることができる。加えて、ガラスボールGは、下面側から抜け落ちずにスルーホール30、31内に保持されていることになる。つまり、単に上面側からスルーホール30、31に埋め込むだけで、スルーホール30、31内に保持することができる。よって、この点においても、更なる工程の簡素化を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態の製造方法によれば、上記圧電振動子1を一度に複数製造することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0069】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図18を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図18に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0070】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0072】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図19を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0073】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図19に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0074】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0075】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0076】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0077】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0078】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0079】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0080】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0081】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図20を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図20に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0082】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0083】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0084】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0085】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0086】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10、11の両面に溝部18が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部18がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部18を形成することで、一対の励振電極15に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極15間における電界効率を上げることができるので、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部18を形成する方が好ましい。
また、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片4を例に挙げて説明したが、音叉型に限られるものではない。例えば、厚み滑り振動片としても構わない。
【0088】
また、上記実施形態では、ベース基板2とリッド基板3とを接合膜35を介して陽極接合したが、陽極接合に限定されるものではない。但し、陽極接合することで、両基板2、3を強固に接合できるので好ましい。
また、上記実施形態では、圧電振動片4をバンプ接合したが、バンプ接合に限定されるものではない。例えば、導電性接着剤により圧電振動片4を接合しても構わない。但し、バンプ接合することで、圧電振動片4をベース基板2の上面から浮かすことができ、振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、バンプ接合することが好ましい。
【0089】
また、上記実施形態では、スルーホール30、31を、プレス加工により、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状になるように形成した場合を例に挙げたが、スルーホール30、31がベース基板2を貫通していれば、これに限られるものではない。例えば、サンドブラスト法等を用いて、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって漸次径が縮径するスルーホールを形成しても構わないし、ベース基板用ウエハ40を真っ直ぐに貫通するスルーホールを形成しても構わない。
【0090】
また、上記実施形態において、ガラス体32b、33b(ガラスボールG)は、熱膨張係数がベース基板2(ベース基板用ウエハ40)と略等しいものを用いることが好ましい。
この場合には、加熱工程の際に、ガラスボールGとベース基板用ウエハ40との膨張量が略等しくなる。従って、熱膨張係数の違いによって、ベース基板用ウエハ40に過度に圧力を作用させてクラック等を発生させたり、ガラス体32b、33bとスルーホール30、31との間に隙間が空いてしまったりすることがない。このため、より高品質な貫通電極32、33を形成することができ、その結果、圧電振動子1の更なる高品質化を図ることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、ガラスボールGとして、予め仮焼成されたガラスボールを用いた場合を例に挙げたが、これに限らない。但し、予め仮焼成されたガラスボールを用いることで、加熱工程の際に、体積減少等が生じ難く、より高品質な貫通電極32、33を形成することができる。よって、予め仮焼成されたガラスボールを用いることが好ましい。
【0092】
また、上記実施形態では、電極膜32a、33aをクロムと銅とが積層するようにスパッタリングすることによって成膜した場合を例に挙げたが、これに限らない。例えば、スパッタリングによって、単層の電極膜を成膜しても構わない。また、スルーホール30、31の内面に導電ペーストをスプレーコート等によって薄膜塗布して、塗布された導電ペーストを焼成することで電極膜を形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。なお、導電ペーストを利用したとしても、導電ペーストの塗布量は極少量なので、焼成を行った場合に有機物の消失による体積減少はわずかである。よって、電極膜が導電ペーストの焼成によって形成されたとしても、ベース基板ウエハ40の表面における電極膜の凹みは極めて小さく、貫通電極32、33を確実に機能させることができる。
【0093】
また、上記実施形態では、ガラス体セット工程の際、球状のガラスボールGを埋め込んだ場合を例に挙げたが、埋め込むガラス体の塊の形状は、球状に限られず、柱状や錐状でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図とである。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視B−B図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図10】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハに複数のスルーホールを形成した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態をベース基板用ウエハの断面から見た図である。
【図12】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図11に示す状態の後、スルーホールの内面に電極膜を成膜させた状態を示す図である。
【図13】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図12に示す状態の後、スルーホール内にガラスボールを埋め込んだ状態を示す図である。
【図14】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図13に示す状態の後、貫通孔の内面にガラス体が固着した状態を示す図である。
【図15】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図14に示す状態の後、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図16】図15に示す状態のベース基板用ウエハの全体図である。
【図17】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図18】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図19】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図20】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図21】従来の圧電振動子の内部構造図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図22】図21に示す圧電振動子の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
B…バンプ
C…キャビティ
G…ガラスボール(ガラス体の塊)
1…圧電振動子
2…ベース基板
3…リッド基板
3a…キャビティ用の凹部
4…圧電振動片
30、31…スルーホール(貫通孔)
32、33…貫通電極
32a、33a…電極膜
32b、33b…ガラス体
35…接合膜
36、37…引き回し電極
38、39…外部電極
40…ベース基板用ウエハ
50…リッド基板用ウエハ
100…発振器
101…発振器の集積回路
110…携帯情報機器(電子機器)
113…電子機器の計時部
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合された2枚の基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された表面実装型(SMD)の圧電振動子、該圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、一般的に圧電振動片が形成された圧電基板を、ベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。この場合、圧電振動子は、ベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収納されている。また、近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることで2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収納されている。この2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができる等の点において優れており、好適に使用されている。このような2層構造タイプの圧電振動子の1つとして、ベース基板を貫通するように形成された導電部材を利用して、圧電振動片とベース基板に形成された外部電極とを導通させた圧電振動子が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
この圧電振動子200は、図21及び図22に示すように、接合膜207を介して互いに陽極接合されたベース基板201及びリッド基板202と、両基板201、202の間に形成されたキャビティC内に封止された圧電振動片203と、を備えている。圧電振動片203は、例えば音叉型の振動片であって、キャビティC内においてベース基板201の上面に導電性接着剤Eを介してマウントされている。
ベース基板201及びリッド基板202は、例えばセラミックやガラス等からなる絶縁基板である。両基板201、202のうちベース基板201には、該基板201を貫通するスルーホール204が形成されている。そして、このスルーホール204内には、該スルーホール204を塞ぐように導電部材205が埋め込まれている。この導電部材205は、ベース基板201の下面に形成された外部電極206に電気的に接続されていると共に、キャビティC内にマウントされている圧電振動片203に電気的に接続されている。
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【特許文献2】特開2006−279872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した2層構造タイプの圧電振動子において、導電部材205は、スルーホール204を塞いでキャビティC内の気密を維持すると共に、圧電振動片203と外部電極206とを導通させるという2つの大きな役割を担っている。特に、スルーホール204との密着が不十分であると、キャビティC内の気密が損なわれてしまう恐れがあり、また、導電性接着剤E或いは外部電極206との接触が不十分であると、圧電振動片203の作動不良を招いてしまう。従って、このような不具合をなくす為にも、スルーホール204の内面に強固に密着した状態で該スルーホール204を完全に塞ぎ、しかも、表面に凹み等がない状態で導電部材205を形成する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2には、導電部材205を導電ペースト(AgペーストやAu−Snペースト等)にて形成する点は記載されているものの、実際にどのように形成するか等の具体的な製造方法については何ら記載されていない。
一般的に導電ペーストを使用する場合には、焼成して硬化させる必要がある。つまり、スルーホール204内に導電ペーストを埋め込んだ後、焼成を行って硬化させる必要がある。ところが、焼成を行うと、導電ペーストに含まれる有機物が蒸発により消失してしまうので、通常、焼成後の体積が焼成前に比べて減少してしまう(例えば、導電ペーストとしてAgペーストを用いた場合には、体積が略20%程度減少してしまう)。そのため、導電ペーストを利用して導電部材205を形成したとしても、表面に凹みが発生してしまったり、酷い場合には貫通孔が中心に開いてしまったりする恐れがある。
その結果、キャビティC内の気密が損なわれたり、圧電振動片203と外部電極206との導通性が損なわれたりする可能性があった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、キャビティ内の気密を確実に維持すると共に、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保した高品質な2層構造式表面実装型の圧電振動子を提供することである。また、該圧電振動子を、一度に効率良く製造する圧電振動子の製造方法、圧電振動子を有する発振器、電子機器、電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動子は、ベース基板と、キャビティ用の凹部が形成され、該凹部を前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合されたリッド基板と、前記凹部を利用して前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納された状態で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片と、前記ベース基板の下面に形成された一対の外部電極と、前記ベース基板を貫通するように形成され、前記キャビティ内の気密を維持すると共に、前記一対の外部電極に対してそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極と、前記ベース基板の上面に形成され、接合された前記圧電振動片に対して前記一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極と、を備え、前記貫通電極が、前記ベース基板を貫通する貫通孔の内面に成膜された電極膜と、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体と、で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを利用して一度に複数製造する方法であって、前記リッド基板用ウエハに、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、前記ベース基板用ウエハの上面に、前記一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程と、複数の前記圧電振動片を、前記引き回し電極を介して前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせて、前記凹部と両ウエハとで囲まれる前記キャビティ内に圧電振動片を収納する重ね合わせ工程と、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合し、前記圧電振動片を前記キャビティ内に封止する接合工程と、前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、接合された前記両ウエハを切断して、複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、前記貫通電極形成工程が、前記ベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、該電極膜が成膜された貫通孔内に、該貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程と、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱して溶融させ、電極膜が成膜された貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着させる加熱工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、まずリッド基板用ウエハに、キャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程を行う。これら凹部は、後に両ウエハを重ね合わせた際に、キャビティとなる凹部である。
また、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、ベース基板用ウエハに、一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程を行う。この際、後に両ウエハを重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハに形成した凹部内に収まるように一対の貫通電極を複数形成する。
【0011】
この貫通電極形成工程について、詳細に説明すると、まずベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程を行う。続いて、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程を行う。続いて、電極膜が成膜された貫通孔に、ガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程を行う。この際、ガラス体の塊として、貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を用いる。
続いて、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱する加熱工程を行う。この加熱工程を行うことで、まず貫通孔に埋め込まれたガラス体の塊が溶融する。この際、埋め込まれたガラス体の塊の体積が貫通孔の容積と略等しいので、溶融した状態のガラス体は、貫通孔内に隙間なく行き渡って貫通孔を塞ぐ。これにより、ガラス体は、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に強固に固着した状態になる。この結果、電極膜とガラス体とにより貫通電極が形成される。
【0012】
特に、貫通電極を形成するにあたって、従来のものとは異なり、ペーストを使用せずに、電極膜とガラス体とで貫通電極を形成している。仮にペーストを使用した場合には、ペーストを焼成する必要がある。通常、ペーストは、焼成時に内部に含まれる有機物が蒸発してしまうので、焼成後の体積が焼成前に比べて顕著に減少してしまう。そのため、仮にペーストだけを貫通孔内に埋め込んで焼成した場合には、焼成後にペーストの表面に大きな凹みが生じてしまう。
しかしながら、上述したように、ペーストを使用せずに、電極膜とガラス体とを利用しており、両者の表面に大きな凹みが現れる恐れがない。なお、ガラス体は、加熱工程の際に若干体積が減少する可能性があるが、ペーストを焼成する場合とは違い、目立つ凹みとなって現れるほど顕著なものではなく、無視できる範囲である。
従って、ベース基板用ウエハの表面と、ガラス体の表面とは、ほぼ面一な状態となる。つまり、ベース基板用ウエハの表面と貫通電極の表面とを、ほぼ面一な状態とすることができる。
【0013】
次に、ベース基板用ウエハの上面に導電性材料をパターニングして、各一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程を行う。この際、後に両ウエハを重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハに形成した凹部内に収まるように引き回し電極を形成する。
特に、電極膜及びガラス体からなる貫通電極は、上述したように、ベース基板用ウエハの上面に対してほぼ面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハの上面にパターニングされた引き回し電極は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極に対して密着した状態で接する。これにより、引き回し電極と貫通電極との導通性を確実なものにすることができる。
【0014】
次に、複数の圧電振動片を、それぞれ引き回し電極を介してベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程を行う。これにより、接合された各圧電振動片は、引き回し電極を介して一対の貫通電極に対して導通した状態となる。マウント終了後、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを重ね合わせる重ね合わせ工程を行う。これにより、接合された複数の圧電振動片は、凹部と両ウエハとで囲まれるキャビティ内に収納された状態となる。
次に、重ね合わせた両ウエハを接合する接合工程を行う。これにより、両ウエハが強固に密着するので、圧電振動片をキャビティ内に封止することができる。この際、ベース基板用ウエハに形成された貫通孔は、貫通電極によって塞がれているので、キャビティ内の気密が貫通孔を通じて損なわれることがない。特に、貫通電極を構成するガラス体は、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に強固に密着しているので、キャビティ内の気密を確実に維持することができる。
【0015】
次に、ベース基板用ウエハの下面に導電性材料をパターニングして、各一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程を行う。この場合も引き回し電極の形成時と同様に、ベース基板用ウエハの下面に対して貫通電極がほぼ面一な状態となっているので、パターニングされた外部電極は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極と貫通電極との導通性を確実なものにすることができる。この工程により、外部電極を利用して、キャビティ内に封止された圧電振動片を作動させることができる。
最後に、接合されたベース基板用ウエハ及びリッド基板用ウエハを切断して、複数の圧電振動子に小片化する切断工程を行う。
【0016】
その結果、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された2層構造式表面実装型の圧電振動子を一度に複数製造することができる。
特に、ベース基板に対してほぼ面一な状態で貫通電極を形成できるので、該貫通電極を、引き回し電極及び外部電極に対して確実に密着させることができる。その結果、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保することができ、作動性能の信頼性を向上して、高品質化を図ることができる。しかも、貫通孔の内面に成膜された電極膜を利用して貫通電極を構成しているので、非常に安定した導通性を得ることができる。
また、キャビティ内の気密に関しても確実に維持することができるので、この点においても高品質化を図ることができる。
加えて、電極膜及びガラス体を利用した簡単な方法で貫通電極を形成できるので、工程の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記貫通孔が、前記ベース基板の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記貫通孔形成工程の際に、前記貫通孔を、前記ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、貫通孔形成工程の際に、貫通孔を、ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成する。従って、上面側から埋め込まれたガラス体の塊は、下面側から抜け落ちることがない。よって、ガラス体セット工程から加熱工程まで、ガラス体の塊が抜け落ちて紛失することがない。その結果、余分な作業時間を要することがなく、更なる工程の簡素化を図ることができる。加えて、ガラス体の塊は、下面側から抜け落ちずに貫通孔内に保持されていることになる。つまり、単に上面側から貫通孔に埋め込むだけで、貫通孔内に保持することができる。よって、この点においても、更なる工程の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記ガラス体が、熱膨張係数が前記ベース基板と略等しいことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記ガラス体として、熱膨張係数が前記ベース基板用ウエハと略等しいガラス体を用いることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、ガラス体の熱膨張係数が、ベース基板用ウエハの該係数と略等しい。即ち、加熱工程の際に、ガラス体とベース基板用ウエハとの膨張量が略等しくなる。これにより、ベース基板用ウエハにクラックなどが発生することを防止でき、圧電振動子の更なる高品質化を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記ベース基板及び前記リッド基板が、前記凹部の周囲を囲むように両基板の間に形成された接合膜を介して陽極接合されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記マウント工程前に、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせたときに、前記凹部の周囲を囲む接合膜をベース基板用ウエハの上面に形成する接合膜形成工程を備え、前記接合工程の際、前記接合膜を介して前記両ウエハを陽極接合することを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、接合膜を介してベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを陽極接合できるので、両ウエハをより強固に接合してキャビティ内の気密性を高めることができる。従って、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができ、さらなる高品質化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記圧電振動片は、導電性のバンプによりバンプ接合されていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記マウント工程の際、導電性のバンプを利用して前記圧電振動片をバンプ接合することを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る圧電振動子及び圧電振動子の製造方法においては、圧電振動片をバンプ接合するので、バンプの厚み分だけ圧電振動片をベース基板の上面から浮かすことができる。そのため、圧電振動片の振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、圧電振動子の作動性能の信頼性をさらに向上することができる。
【0029】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記ガラス体セット工程の際、予め仮焼成されたガラス体の塊を用いることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、ガラス体が予め仮焼成されているので、その後に加熱を行った際に体積減少等が生じ難い。そのため、より高品質な貫通電極を形成することができ、キャビティ内の気密をより確実にすることができる。その結果、圧電振動子の更なる高品質化を図ることができる。
【0031】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、キャビティ内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子を備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密を確実に維持することができると共に、圧電振動片と外部電極との安定した導通性を確保した高品質な2層構造式表面実装型の圧電振動子とすることができる。
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法によれば、上述した圧電振動子を一度に効率良く製造することができ、低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動子を備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1から図17を参照して説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図4に示すように、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動子1である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0035】
圧電振動片4は、図5から図7に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、該一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、該振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0036】
第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図7に示すように、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0037】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、図5及び図6に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極15、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0038】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0039】
このように構成された圧電振動片4は、図3から図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた引き回し電極36、37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極16、17がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されると共に、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0040】
上記リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1、図3及び図4に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部3aである。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で該ベース基板2に対して陽極接合されている。
【0041】
上記ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1から図4に示すように、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)30、31が形成されている。この際、一対のスルーホール30、31は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態のスルーホール30、31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に一方のスルーホール30が位置し、振動腕部10、11の先端側に他方のスルーホール31が位置するように形成されている。
また、一対のスルーホール30、31は、図3に示すように、ベース基板2の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されている。より詳しくは、ベース基板2の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状になるように形成されている。
【0042】
そして、これら一対のスルーホール30、31には、該スルーホール30、31を埋めるように形成された一対の貫通電極32、33が形成されている。これら貫通電極32、33は、スルーホール30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aと、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に固着されたガラス体32b、33bと、で形成されている。更に、これら貫通電極32、33は、スルーホール30、31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持していると共に、後述する外部電極38、39と引き回し電極36、37とを導通させる役割を担っている。
なお、貫通電極32、33は、電極膜32a、33aを通して、電気導通性が確保されている。
【0043】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、図1から図4に示すように、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜35と、一対の引き回し電極36、37とがパターニングされている。このうち接合膜35は、リッド基板3に形成された凹部3aの周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0044】
また、一対の引き回し電極36、37は、一対の貫通電極32、33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10、11に沿って該振動腕部10、11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
そして、これら一対の引き回し電極36、37上にそれぞれバンプBが形成されており、該バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0045】
また、ベース基板2の下面には、図1、図3及び図4に示すように、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38、39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0046】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38、39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0047】
次に、上述した圧電振動子1を、図8に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。
【0048】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図5から図7に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングすると共に、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0049】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0050】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、図9に示すように、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0051】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32、33を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S30A)。ここで、この貫通電極形成工程について、詳細に説明する。
【0052】
まず、図10に示すように、ベース基板用ウエハ40に該ウエハ40を貫通する一対のスルーホール30、31を複数形成する貫通孔形成工程(S32)を行う。なお、図10に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。この工程を行う際、ベース基板用ウエハ40の上面側から、例えばプレス加工等により行う。これにより、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状のスルーホール30、31を形成することができる。また、後に両ウエハ40、50を重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3a内に収まるように一対のスルーホール30、31を複数形成する。しかも、一方のスルーホール30が圧電振動片4の基部12側に位置し、他方のスルーホール31が振動腕部10、11の先端側に位置するように形成する。
【0053】
続いて、図12に示すように、これら複数のスルーホール30、31の内面に電極膜32a、33aを成膜する電極膜成膜工程(S33)を行う。具体的には、電極膜32a、33aを、例えばクロムと銅とが積層するようにスパッタリングすることによって成膜する。続いて、図13に示すように、電極膜32a、33aが成膜されたスルーホール30、31に、球状のガラスボール(ガラス体の塊)Gを埋め込むガラス体セット工程(S34)を行う。この際、ガラスボールGとして、スルーホール30、31の容積と略等しい体積のガラスボールGを用いる。更に、ガラスボールGとして、予め仮焼成されたガラスボールを用いる。
【0054】
続いて、埋め込んだガラスボールGを所定の温度で加熱する加熱工程(S35)を行う。この加熱工程を行うことで、まずスルーホール30、31に埋め込まれたガラスボールGが溶融する。この際、埋め込まれたガラスボールGの体積がスルーホール30、31の容積と略等しいので、溶融した状態のガラス体は、スルーホール30、31内に隙間なく行き渡ってスルーホール30、31を塞ぐ。これにより、ガラス体32b、33bは、図14に示すように、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に強固に固着した状態になる。この結果、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとにより貫通電極32、33が形成される。
【0055】
特に、貫通電極32、33を形成するにあたって、従来のものとは異なり、ペーストを使用せずに、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとで貫通電極32、33を形成している。仮にペーストを使用した場合には、ペーストを焼成する必要がある。通常、ペーストは、焼成時に内部に含まれる有機物が蒸発してしまうので、焼成後の体積が焼成前に比べて顕著に減少してしまう。そのため、仮にペーストだけをスルーホール30、31内に埋め込んで焼成した場合には、焼成後にペーストの表面に大きな凹みが生じてしまう。
しかしながら、上述したように、ペーストを使用せずに、電極膜32a、33aとガラス体32b、33bとを利用しており、両者の表面に大きな凹みが現れる恐れがない。なお、ガラス体32b、33bは、加熱工程の際に若干体積が減少するが、ペーストを焼成する場合とは違い、目立つ凹みとなって現れるほど顕著なものではなく、無視できる範囲である。
従って、ベース基板用ウエハ40の表面と、ガラス体32b、33bの表面とは、ほぼ面一な状態となる。つまり、ベース基板用ウエハ40の表面と貫通電極32、33の表面とを、ほぼ面一な状態とすることができる。
【0056】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、図15及び図16に示すように、接合膜35を形成する接合膜形成工程を行う(S36)と共に、各一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36、37を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S37)。なお、図15及び図16に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
特に、電極膜32a、33a及びガラス体32b、33bからなる貫通電極32、33は、上述したように、表面に凹みがなく、ベース基板用ウエハ40の上面に対してほぼ面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハ40の上面にパターニングされた引き回し電極36、37は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極32、33に対して密着した状態で接する。これにより、一方の引き回し電極36と一方の貫通電極32との導通性、並びに、他方の引き回し電極37と他方の貫通電極33との導通性を確実なものにすることができる。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0057】
ところで、図8では、接合膜形成工程(S36)の後に、引き回し電極形成工程(S37)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S37)の後に、接合膜形成工程(S36)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0058】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極36、37を介してベース基板用ウエハ40の上面に接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極36、37上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプBに機械的に支持されると共に、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極15は、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ導通した状態となる。
特に、圧電振動片4は、バンプ接合されるので、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。
【0059】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40、50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜35とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜35とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図17に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図17においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜35の図示を省略している。また、図17に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
ところで、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール30、31は、貫通電極32、33によって完全に塞がれているので、キャビティC内の気密がスルーホール30、31を通じて損なわれることがない。特に、貫通電極32、33を構成するガラス体32b、33bは、スルーホール30、31を塞ぐように、電極膜32a、33aを間に挟んでスルーホール30、31の内面に強固に密着しているので、キャビティC内の気密を確実に維持することができる。
【0061】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38、39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極38、39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
特に、この工程を行う場合も引き回し電極36、37の形成時と同様に、ベース基板用ウエハ40の下面に対して貫通電極32、33がほぼ面一な状態となっているので、パターニングされた外部電極38、39は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極32、33に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極38、39と貫通電極32、33との導通性を確実なものにすることができる。
【0062】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S80)。具体的に説明すると、ベース基板用ウエハ40の下面に形成された一対の外部電極38、39に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらリッド基板用ウエハ50を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10、11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0063】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を図17に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S90)。その結果、互いに接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
なお、切断工程(S90)を行って個々の圧電振動子1に小片化した後に、微調工程(S80)を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程(S80)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので好ましい。
【0064】
その後、内部の電気特性検査を行う(S100)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0065】
特に、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2に対してほぼ面一な状態で貫通電極32、33を形成できるので、該貫通電極32、33を、引き回し電極36、37及び外部電極38、39に対して確実に密着させることができる。その結果、圧電振動片4と外部電極38、39との安定した導通性を確保することができ、作動性能の信頼性を向上して高性能化を図ることができる。しかも、スルーホール30、31の内面に成膜された電極膜32a、33aを利用して貫通電極32、33を構成しているので、非常に安定した導通性を得ることができる。
【0066】
また、キャビティC内の気密に関しても確実に維持することができるので、この点においても高品質化を図ることができる。特に、本実施形態で用いたガラスボールGは、予め仮焼成されているので、その後に加熱を行った際に体積減少等が生じ難い。そのため、より高品質な貫通電極32、33を形成することができ、キャビティC内の気密をより確実にすることができる。その結果、圧電振動子1の更なる高品質化を図ることができる。
【0067】
加えて、電極膜32a、33a及びガラス体32b、33bを利用した簡単な方法で貫通電極32、33を形成できるので、工程の簡素化を図ることができる。特に、本実施形態では、貫通孔形成工程の際に、スルーホール30、31を、ベース基板用ウエハ40の下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成している。従って、上面側から埋め込まれたガラスボールGは、下面側から抜け落ちることがない。よって、ガラス体セット工程から加熱工程まで、ガラスボールGが抜け落ちて紛失することがない。その結果、余分な作業時間を要することがなく、更なる工程の簡素化を図ることができる。加えて、ガラスボールGは、下面側から抜け落ちずにスルーホール30、31内に保持されていることになる。つまり、単に上面側からスルーホール30、31に埋め込むだけで、スルーホール30、31内に保持することができる。よって、この点においても、更なる工程の簡素化を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態の製造方法によれば、上記圧電振動子1を一度に複数製造することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0069】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図18を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図18に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0070】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0072】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図19を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0073】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図19に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0074】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0075】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0076】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0077】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0078】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0079】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0080】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0081】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図20を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図20に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0082】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0083】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0084】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0085】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確実で、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0086】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10、11の両面に溝部18が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部18がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部18を形成することで、一対の励振電極15に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極15間における電界効率を上げることができるので、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部18を形成する方が好ましい。
また、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片4を例に挙げて説明したが、音叉型に限られるものではない。例えば、厚み滑り振動片としても構わない。
【0088】
また、上記実施形態では、ベース基板2とリッド基板3とを接合膜35を介して陽極接合したが、陽極接合に限定されるものではない。但し、陽極接合することで、両基板2、3を強固に接合できるので好ましい。
また、上記実施形態では、圧電振動片4をバンプ接合したが、バンプ接合に限定されるものではない。例えば、導電性接着剤により圧電振動片4を接合しても構わない。但し、バンプ接合することで、圧電振動片4をベース基板2の上面から浮かすことができ、振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、バンプ接合することが好ましい。
【0089】
また、上記実施形態では、スルーホール30、31を、プレス加工により、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって径が2段階に分かれて漸次縮径し、断面が段付きのテーパ状になるように形成した場合を例に挙げたが、スルーホール30、31がベース基板2を貫通していれば、これに限られるものではない。例えば、サンドブラスト法等を用いて、ベース基板用ウエハ40の下面に向かって漸次径が縮径するスルーホールを形成しても構わないし、ベース基板用ウエハ40を真っ直ぐに貫通するスルーホールを形成しても構わない。
【0090】
また、上記実施形態において、ガラス体32b、33b(ガラスボールG)は、熱膨張係数がベース基板2(ベース基板用ウエハ40)と略等しいものを用いることが好ましい。
この場合には、加熱工程の際に、ガラスボールGとベース基板用ウエハ40との膨張量が略等しくなる。従って、熱膨張係数の違いによって、ベース基板用ウエハ40に過度に圧力を作用させてクラック等を発生させたり、ガラス体32b、33bとスルーホール30、31との間に隙間が空いてしまったりすることがない。このため、より高品質な貫通電極32、33を形成することができ、その結果、圧電振動子1の更なる高品質化を図ることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、ガラスボールGとして、予め仮焼成されたガラスボールを用いた場合を例に挙げたが、これに限らない。但し、予め仮焼成されたガラスボールを用いることで、加熱工程の際に、体積減少等が生じ難く、より高品質な貫通電極32、33を形成することができる。よって、予め仮焼成されたガラスボールを用いることが好ましい。
【0092】
また、上記実施形態では、電極膜32a、33aをクロムと銅とが積層するようにスパッタリングすることによって成膜した場合を例に挙げたが、これに限らない。例えば、スパッタリングによって、単層の電極膜を成膜しても構わない。また、スルーホール30、31の内面に導電ペーストをスプレーコート等によって薄膜塗布して、塗布された導電ペーストを焼成することで電極膜を形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。なお、導電ペーストを利用したとしても、導電ペーストの塗布量は極少量なので、焼成を行った場合に有機物の消失による体積減少はわずかである。よって、電極膜が導電ペーストの焼成によって形成されたとしても、ベース基板ウエハ40の表面における電極膜の凹みは極めて小さく、貫通電極32、33を確実に機能させることができる。
【0093】
また、上記実施形態では、ガラス体セット工程の際、球状のガラスボールGを埋め込んだ場合を例に挙げたが、埋め込むガラス体の塊の形状は、球状に限られず、柱状や錐状でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図とである。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視B−B図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図10】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハに複数のスルーホールを形成した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態をベース基板用ウエハの断面から見た図である。
【図12】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図11に示す状態の後、スルーホールの内面に電極膜を成膜させた状態を示す図である。
【図13】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図12に示す状態の後、スルーホール内にガラスボールを埋め込んだ状態を示す図である。
【図14】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図13に示す状態の後、貫通孔の内面にガラス体が固着した状態を示す図である。
【図15】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、図14に示す状態の後、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図16】図15に示す状態のベース基板用ウエハの全体図である。
【図17】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図18】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図19】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図20】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図21】従来の圧電振動子の内部構造図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図22】図21に示す圧電振動子の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
B…バンプ
C…キャビティ
G…ガラスボール(ガラス体の塊)
1…圧電振動子
2…ベース基板
3…リッド基板
3a…キャビティ用の凹部
4…圧電振動片
30、31…スルーホール(貫通孔)
32、33…貫通電極
32a、33a…電極膜
32b、33b…ガラス体
35…接合膜
36、37…引き回し電極
38、39…外部電極
40…ベース基板用ウエハ
50…リッド基板用ウエハ
100…発振器
101…発振器の集積回路
110…携帯情報機器(電子機器)
113…電子機器の計時部
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
キャビティ用の凹部が形成され、該凹部を前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合されたリッド基板と、
前記凹部を利用して前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納された状態で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片と、
前記ベース基板の下面に形成された一対の外部電極と、
前記ベース基板を貫通するように形成され、前記キャビティ内の気密を維持すると共に、前記一対の外部電極に対してそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極と、
前記ベース基板の上面に形成され、接合された前記圧電振動片に対して前記一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極と、を備え、
前記貫通電極は、前記ベース基板を貫通する貫通孔の内面に成膜された電極膜と、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体と、で形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動子において、
前記貫通孔は、前記ベース基板の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電振動子において、
前記ガラス体は、熱膨張係数が前記ベース基板と略等しいことを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動子において、
前記ベース基板及び前記リッド基板は、前記凹部の周囲を囲むように両基板の間に形成された接合膜を介して陽極接合されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片は、導電性のバンプによりバンプ接合されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを利用して一度に複数製造する方法であって、
前記リッド基板用ウエハに、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、
前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、
前記ベース基板用ウエハの上面に、前記一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を、前記引き回し電極を介して前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、
前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせて、前記凹部と両ウエハとで囲まれる前記キャビティ内に圧電振動片を収納する重ね合わせ工程と、
前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合し、前記圧電振動片を前記キャビティ内に封止する接合工程と、
前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、
接合された前記両ウエハを切断して、複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、
前記貫通電極形成工程は、前記ベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、該電極膜が成膜された貫通孔内に、該貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程と、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱して溶融させ、電極膜が成膜された貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着させる加熱工程と、を備えていることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記貫通孔形成工程の際に、前記貫通孔を、前記ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記ガラス体として、熱膨張係数が前記ベース基板用ウエハと略等しいガラス体を用いることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記マウント工程前に、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせたときに、前記凹部の周囲を囲む接合膜をベース基板用ウエハの上面に形成する接合膜形成工程を備え、
前記接合工程の際、前記接合膜を介して前記両ウエハを陽極接合することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記マウント工程の際、導電性のバンプを利用して前記圧電振動片をバンプ接合することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記ガラス体セット工程の際、予め仮焼成されたガラス体の塊を用いることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
ベース基板と、
キャビティ用の凹部が形成され、該凹部を前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合されたリッド基板と、
前記凹部を利用して前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納された状態で、ベース基板の上面に接合された圧電振動片と、
前記ベース基板の下面に形成された一対の外部電極と、
前記ベース基板を貫通するように形成され、前記キャビティ内の気密を維持すると共に、前記一対の外部電極に対してそれぞれ電気的に接続された一対の貫通電極と、
前記ベース基板の上面に形成され、接合された前記圧電振動片に対して前記一対の貫通電極をそれぞれ電気的に接続させる引き回し電極と、を備え、
前記貫通電極は、前記ベース基板を貫通する貫通孔の内面に成膜された電極膜と、貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着されたガラス体と、で形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動子において、
前記貫通孔は、前記ベース基板の下面側に開いた開口が、上面側に開いた開口よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電振動子において、
前記ガラス体は、熱膨張係数が前記ベース基板と略等しいことを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動子において、
前記ベース基板及び前記リッド基板は、前記凹部の周囲を囲むように両基板の間に形成された接合膜を介して陽極接合されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片は、導電性のバンプによりバンプ接合されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを利用して一度に複数製造する方法であって、
前記リッド基板用ウエハに、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、
前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、
前記ベース基板用ウエハの上面に、前記一対の貫通電極に対してそれぞれ電気的に接続された引き回し電極を複数形成する引き回し電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を、前記引き回し電極を介して前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、
前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせて、前記凹部と両ウエハとで囲まれる前記キャビティ内に圧電振動片を収納する重ね合わせ工程と、
前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合し、前記圧電振動片を前記キャビティ内に封止する接合工程と、
前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、
接合された前記両ウエハを切断して、複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、
前記貫通電極形成工程は、前記ベース基板用ウエハに該ウエハを貫通する一対の貫通孔を複数形成する貫通孔形成工程と、これら複数の貫通孔の内面に電極膜を成膜する電極膜成膜工程と、該電極膜が成膜された貫通孔内に、該貫通孔の容積と略等しい体積のガラス体の塊を埋め込むガラス体セット工程と、埋め込んだガラス体の塊を所定の温度で加熱して溶融させ、電極膜が成膜された貫通孔を塞ぐように、電極膜を間に挟んで貫通孔の内面に固着させる加熱工程と、を備えていることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記貫通孔形成工程の際に、前記貫通孔を、前記ベース基板用ウエハの下面側に開く開口が、上面側に開く開口よりも小さくなるように形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記ガラス体として、熱膨張係数が前記ベース基板用ウエハと略等しいガラス体を用いることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記マウント工程前に、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを重ね合わせたときに、前記凹部の周囲を囲む接合膜をベース基板用ウエハの上面に形成する接合膜形成工程を備え、
前記接合工程の際、前記接合膜を介して前記両ウエハを陽極接合することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記マウント工程の際、導電性のバンプを利用して前記圧電振動片をバンプ接合することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記ガラス体セット工程の際、予め仮焼成されたガラス体の塊を用いることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
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【図16】
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【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−194788(P2009−194788A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35509(P2008−35509)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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