説明

基板の配線方法及び半導体製造装置

【課題】基板上に形成された配線用パターンの底部までCu埋め込みが可能な基板の配線方法を提供する。
【解決手段】真空状態に保持された処理容器100内にて配線用パターンが形成された基板を配線する方法であって、ウエハ上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前工程後、クラスタ化された金属ガス(金属ガスクラスタCg)を用いて配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含むことを特徴とする基板の配線方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の配線用パターンが形成された基板の配線方法及び該基板の配線方法を利用して半導体を製造する半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化及び高性能化に伴ってミクロンオーダの多くの微細加工技術が提案されている。特に、最近はLSIの高速化を達成するために、配線材料を従来のアルミ(Al)合金から低抵抗の銅(Cu)或いはCu合金(以下、まとめてCuと称する。)に代える動きが進んでいる。
【0003】
半導体製造の配線工程では、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法等を用いて配線用パターンを形成する。配線用パターンが形成された絶縁膜上には、主にPVD(Physical Vapor Deposition)によって、バリアメタル層、Cuシード層が成膜される。その後、電解めっき法でhaisenyouパターンにCuを埋め込み、溝内に埋め込まれた部分以外のCu膜を化学機械研磨により除去して配線層を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記配線形成方法はダマシン法といわれている。多層Cu配線を形成する場合は、特に、デュアルダマシン構造と呼ばれる配線形成方法も用いられる。かかる方法では、下層配線上に絶縁膜を堆積し、所定のビアホール(孔)及び上層配線用のトレンチを形成した後、ビアホールとトレンチに配線材料となるCuを同時に埋め込み、さらに、上層の不要なCuを化学機械研磨により除去し平坦化することにより配線層を形成する。
【0005】
層間絶縁膜には、比誘電率の低いlow−k膜(低誘電率材料膜)が用いられることがある。これによれば、シリコン酸化膜より低誘電率のlow−k膜を用いることにより、配線間の寄生容量を低減することができる。Cu配線を形成する際には、Cuがlow−k膜中へと拡散することを防止するためにバリアメタル膜がCuとlow−k膜との間に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−317702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ビアホールやトレンチ内に電解めっき法でCuを埋め込むには、カソード極となるシード膜が必要となるが、高集積化に伴ってビアホール径やトレンチ幅が狭くなると、それに伴い特に溝の底部近辺においてCuシード膜が形成されない領域が生じる。この結果、その領域ではCuがめっきされず、埋め込み不良の原因となっていた。
【0008】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、基板上に形成された配線用パターンの底部までCu埋め込みが可能な、新規かつ改良された基板の配線方法及び半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、真空状態に保持された処理容器内にて、配線用パターンが形成された基板を配線する方法であって、基板上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前工程後、クラスタ化された金属ガスを用いて前記配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含むことを特徴とする基板の配線方法が提供される。
【0010】
かかる構成によれば、基板上の所定の配線用パターンを洗浄後、クラスタ化された金属ガスのビームを前記配線用パターンに向けて放出することにより、前記配線用パターン内に金属ナノ粒子が埋め込まれる。クラスタ化された金属ガスは直進性及び指向性が高い。よって、指向性の高い金属クラスタガスにより、高集積化に伴ってビアホール径やトレンチ幅が狭くなっても、細く深い配線用パターンの底部にまで金属ナノ粒子を埋め込むことができる。この状態で、埋め込まれた金属ナノ粒子からナノチューブやナノワイヤ等のナノ構造体を成長させたり、配線用パターン内部を金属にて充填させたりすることにより、基板の配線を形成することができる。
【0011】
また、前記Cu埋め込み方法によれば、めっき法ではないのでCuシード層を形成する必要がない。これにより、埋め込み不良のない配線を形成することができる。
【0012】
また、クラスタ化された金属ガスは、数百万〜数千万個の分子の集合体である。よって、クラスタ化された金属ガス分子は、寄り固まって形成された塊のため、分子がそれぞれ一つずつ持っている運動エネルギーよりも高い運動エネルギーを持っている。一方、クラスタ化された金属ガス分子は、配線パターンの内壁に衝突した瞬間に各分子がバラバラになって広がりながら飛び散るため、衝突と同時に一つ一つの分子の運動エネルギーは分散し、配線パターン層に大きなダメージを与えない。
【0013】
よって、高い運動エネルギーにより金属ガス中の金属ナノ粒子を配線パターン内にしっかりと埋め込むことができると同時に、衝突により分子がバラバラになることにより配線パターン層への衝突によるダメージを低く抑えることができる。特に、配線パターン層がLow−k膜の場合には、ダメージにより比誘電率が高くなったり、配線用パターン幅CDが大きくなったりするが、クラスタ化された金属ガスによれば埋め込み時のダメージを低減し、Low−k膜の劣化を防ぐことができる。
【0014】
前記埋め込み工程は、金属ソースを、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルから前記処理容器内に放出することによりクラスタ化してもよい。
【0015】
前記埋め込み工程は、前記配線用パターンの表面に前記金属ナノ粒子を埋め込むことにより、金属のバリア材を形成する工程と、前記バリア材が形成された前記配線用パターンの内部に配線となる金属を埋め込む工程とを含んでもよい。
【0016】
前記ガスノズルと前記基板との距離dは、式1にて定義される前記ガスノズルの出口から衝撃波が発生する位置までの距離Xmより長く設定され、前記バリア材を形成する工程は、前記発生した衝撃波を用いて前記金属ナノ粒子を基板に衝突させてもよい。
【数1】

ただし、Dはガスノズルの出口の内径、Pはガスノズルの内部圧力、Pは処理容器の内部圧力である。
【0017】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.4MPa以上であり、前記処理容器の内部圧力Pは、1.5Pa以下であってもよい。
【0018】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.9MPa以下であってもよい。
【0019】
前記基板の配線方法は、半導体チップ内の配線工程、又は半導体チップ間の配線工程に用いられてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、真空状態に保持された処理容器内にて、配線用パターンが形成された基板を配線する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、基板上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前記前工程後、前記ガスノズルから金属ソースを前記処理容器内に放出することによりクラスタ化された金属ガスを生成し、該クラスタ化された金属ガスを用いて前記配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含む工程を実行することを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、基板上に形成された配線用パターンの底部までCuを埋め込むことにより、埋め込み不良のない配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラスタ装置の概略構成を示した縦断面図である。
【図2】図2(a)は一分子が衝突する際の基板へのダメージを説明するための図であり、図2(b)はクラスタ化された分子が衝突する際の基板へのダメージを説明するための図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は同実施形態に係る基板の配線方法を示した図である。
【図4】同実施形態の変形例に係るノズル出口から衝撃波までの距離を示した図である。
【図5】同実施形態に係るナノチューブ製造装置の概略構成を示した縦断面図である。
【図6】本実施形態に係るウエハの配線方法をスルーホールの配線に応用する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
[クラスタ装置の構成]
まず、本発明の一実施形態に係るクラスタ装置の概略構成について、図1を参照しながら説明する。クラスタ装置10は、ウエハWを収容し内部を密閉することができる真空の処理容器100を有している。処理容器100は、遮断器120により仕切られ、ガス供給室100a、処理室100bの2つに分かれている。ガス供給室100a、処理室100bの底部には、各室内を排気する排気口105a、105bがそれぞれ形成され、各室内の雰囲気を真空引きする排気ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0025】
ガス供給室100aの側壁には、ガスノズル110が設けられている。ガスノズル110は、ターゲットに向けて開口するように位置づけられていて、これによりガスノズル110から放出されるガスは指向性を有するようになっている。金属ソース115は金属ガスを生成する。生成された金属ガスは、ガスノズル110の出口110aからガス供給室100aに放出される。金属ソース115から金属ガスを生成する方法としては、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)用のプリカーサを用いることや、アーク放電により金属ソース115を溶解して気化させる方法が挙げられる。
【0026】
ガスノズル110から放出された金属ガスはクラスタ化される。このメカニズムについて説明する。ガスノズル110の内部圧力Pは、0.4MPa以上0.9MPa以下になるように真空引きされている。一方、処理容器100の内部圧力Pは、1.5Pa以下に保持されるように真空引きされている。金属ガスgは、内部圧力Pが処理容器100の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズル110から処理容器100内に放出される。
【0027】
このように、高圧のガスノズル110から低圧の処理容器100内に、反応性の高い金属ガスgを放出すると、圧力差によって金属ガスgの温度が急速に冷え、金属ガス分子が寄り固まって形成される。このようにしてガスノズル110から処理容器100内に放出された金属ガスgは、クラスタ化される。クラスタ化された金属ガス(以下、金属ガスクラスタCgとも称する)は、数百万〜数千万個の分子が比較的弱く結びついた集合体である。
【0028】
前述のように、金属ガスクラスタCgは指向性を有しているが、中にはまっすぐに飛ばないものがある。これがウエハWまで飛来してウエハWに衝突すると、期待していない方向にもエッチング処理が進んでしまう。そこで、ガスノズル110とウエハWとの間に遮断器120を設け、まっすぐに飛ばない金属ガスクラスタCgがウエハWに衝突しないようにしている。遮断器120には穴120aが設けられていて、金属ガスクラスタCgは、その穴120aから処理室100bに入る。
【0029】
処理室100bの内部には、ウエハWを保持する保持部材155が設けられている。保持部材155は、金属ガスクラスタCgがウエハWに形成されたウエハWの表面に垂直に衝突するようにウエハWを保持する。保持部材155には、保持部材155を移動させる図示しない移動部材が設けられている。移動部材の移動により、金属ガスクラスタCgはウエハWの表面に対して垂直な方向から、ウエハWの表面全面に均一に供給される。
【0030】
かかる構成によれば、エッチング形状を良好にすることができる。形状を良好にできるのは、エッチング反応が、金属ガスクラスタCgの衝突で熱エネルギーを生じた部分でのみ進行するためである。金属ガスクラスタCgは、熱エネルギーのない部分ではエッチング反応を進行させない。図1のウエハW上にはマスクMの下に所定の層F及び層Fに形成されたホールHが描かれているが、指向性を有する金属ガスクラスタCgは、深く掘り進んだホールHの側壁Haに衝突しないため、ホールHの側壁Haで熱エネルギーが発生しない。このため、ホールHの側壁Haは基本的にエッチングされない。一方、掘り進んだホールHの底部Hbには金属ガスクラスタCgが衝突してエッチングが進行する。このようにして、本実施形態によれば、細く深い、良好な形状のホールを形成することができる。
【0031】
また、かかる構成によれば、ウエハWへの電気的なダメージを与えないプロセスを実現できる。既存のプロセスでは、反応性ガスをプラズマによってイオン化していた。イオン化したガスは電気的エネルギーを持つため、ウエハWに電気的なダメージを与えるおそれがあった。しかし、本実施形態にかかるクラスタ装置10によれば、金属ガスクラスタCgをイオン化しない。このため、エッチングの際、ウエハWに電気的なダメージを与えずにプロセスを進行することができる。
【0032】
また、かかる構成によれば、このように金属ガスクラスタCgをイオン化しないため、装置にプラズマ源を必要としない。これにより、装置がシンプルになるためメンテナンスしやすく、製造コストを低減することができ、量産に向いた構造とすることができる。
【0033】
[クラスタ化された分子の衝突]
次に、クラスタ化された金属ガスの衝突状態について、図1を参照しながら説明する。前述したように、図1に示した金属ガスは、ガスノズル110から処理容器100の内部に放出され、クラスタ化される。クラスタ化された金属ガス(金属ガスクラスタCg)は、数百万〜数千万個の分子の集合体である。このように、クラスタ化された金属ガス分子は、寄り固まって形成された塊のため、分子がそれぞれ一つずつ持っている運動エネルギーよりも高い運動エネルギーを持っている。
【0034】
一方、金属ガスクラスタCgの分子は、ウエハWに衝突した瞬間に各分子がバラバラになって広がりながら飛び散るため、衝突と同時に一つ一つの分子の運動エネルギーは分散し、配線パターン層に大きなダメージを与えない。
【0035】
よって、衝突により金属ガス中の金属ナノ粒子を配線パターン内にしっかりと埋め込むことができると同時に配線パターン層への衝突によるダメージを低く抑えることができる。特に、配線パターン層がLow−k膜の場合には、ダメージにより比誘電率が高くなったり、配線用パターン幅CDが大きくなったりするが、金属ガスクラスタCgによれば埋め込み時のダメージを低減し、Low−k膜の劣化を防ぐことができる。
【0036】
図2(a)は一分子が衝突する際のウエハWへのダメージを示し、図2(b)はクラスタ化された分子が衝突する際のウエハWへのダメージを示す。図2(a)に示したように、プラズマ源135では、反応性イオンを含むプラズマが生成される。反応性イオンはクラスタ化されていないため、分子の集合体ではないので一分子の衝突時のエネルギーは低いが、ウエハWの深部まで衝突のダメージが及んでいることがわかる。一方、図2(b)に示したように、ガスノズル110からはプラズマ化されていないガスを放出し、クラスタCgを生成する。生成されたクラスタCgは、ウエハWの衝突のエネルギーは高いが、ウエハWの膜に衝突した瞬間に各分子がバラバラになって飛び散るため、ウエハWに対するダメージが少ないことがわかる。これにより、特にLow−k膜の場合には、衝突によるダメージを低減できることがわかる。
【0037】
[配線方法]
次に、本実施形態に係る配線方法について、図3(a)〜図3(c)を参照しながら説明する。図3(a)は、配線用パターンの洗浄工程を示す。
【0038】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、フォトリソグラフィー技術を利用したダマシン法やデュアルダマシン法を用いて、ウエハWに多層配線回路を形成する。図3(a)では、デュアルダマシン法を用いて上層の層間絶縁膜であるLow−k膜24に配線溝としてのビアホール24a及びトレンチ24bが形成されている。Low−k膜24の下には、下層の層間絶縁膜であるLow−k膜20、バリアメタル層21、Cu配線層22、ストッパー膜23が形成されている。
【0039】
(前工程)
図3(a)では、CUの埋め込みの前工程として、ビアホール24a及びトレンチ24bを所望のクリーニングガスにより洗浄する。クリーニングガスとしては、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせ又はこれらの組合せを使用することができる。このように反応性の高いNHOH等の洗浄薬液(NH4OH・・・)等を気相状にして配線用パターンを洗浄する。
【0040】
このクリーニング処理は、プラズマを用いても用いなくてもよい。プラズマを用いない場合の一例としては、図1,2に示したガスノズル110からクリーニングガスを放出し、ガスをクラスタ化させて使用することが考えられる。クラスタ化されたガスは直進性及び指向性を有するため、トレンチ24b及びビア24aの内壁だけでなくビア底Bまでガスが侵入し、内部をより均一に洗浄することができる。
【0041】
(埋め込み工程:バリア材形成)
前工程後、クラスタ化された金属ガス(金属ガスクラスタCg)を用いて配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程が実行される。
【0042】
埋め込み工程では、まず、図3(b)に示したように、配線用パターンの内壁にバリア材32が形成される。この工程では、金属ナノ粒子の埋め込みによるバリア材32の形成とともに衝撃波を用いてバリア材32が緻密化される。
【0043】
図4は、ガスノズル110の出口110aから衝撃波MDまでの距離を示した図である。ISSN0452−2982航空宇宙技術研究所資料(TM−741)“LIF法による自由噴流の可視化と構造解析”(津田尚一 1997年7月航空宇宙研究所)によれば、ガスノズル110の出口110aから衝撃波MD(Mach Disc)が現れる位置までの距離X、ガスノズル110の喉部である出口の内径D、ガスノズルの内部圧力Ps、ガスが導入される処理容器100の内部圧力Pには下記式1の関係がある。
【数1】

【0044】
このとき、ガスノズル110の出口110aからウエハWまでの距離dは、式1にて定義されるガスノズル110の出口110aからのガス流により衝撃波MDが発生する位置までの距離Xmより長く設定されることが好ましい。これによれば、ビア底Bまで均一に形成されたバリア材32を、衝撃波を用いて緻密化することができる。
【0045】
特に、本実施形態では、層間絶縁膜に、比誘電率の低いlow−k膜20,24が用いられている。比誘電率kが約4.2のシリコン酸化膜(SiO膜)に対して、比誘電率kが2.6以下のlow−k膜を用いれば、配線間の寄生容量を低減できる。一方、ダマシン法によりCu配線を形成する際には、Cuがlow−k膜中へと拡散することを防止する必要がある。このため、Cu配線層とlow−k膜との間にバリア材32を形成する。また、本実施形態のようにバリア材32を、衝撃波を用いて緻密化すると、low−k膜中へCuの拡散を確実に抑えることができ、好ましい。
【0046】
(埋め込み工程:Cu埋め込み)
次に、図3(c)に示したように、バリア材32が形成された配線用パターンの内部にCuを埋め込む工程が実行される。埋め込まれたCuは、配線層35となる。配線用パターン内にCuを埋め込む方法としては、例えば、電解めっき法により配線用パターンにCuを埋め込み、溝内に埋め込まれた部分以外のCu膜を化学機械研磨により除去して配線層35を形成してもよい。また、バリア材32を形成する金属ナノ粒子からナノ構造体を成長させることにより配線層35を形成してもよい。以下、金属ナノ粒子からナノ構造体を成長させるナノチューブ製造装置について簡単に説明する。
【0047】
[ナノチューブ製造装置]
金属ナノ粒子のバリア材32が形成されたウエハWは、真空状態を維持したまま、図1に示したクラスタ装置10から、ナノチューブ製造装置内に搬送される。ナノチューブ製造装置は、搬入されたウエハW上の金属ナノ粒子を成長させてナノチューブを製造する。
【0048】
図5は、本実施形態に係るナノチューブ製造装置としてのRLSA(Radial Line Slot Antenna)プラズマCVD装置である。なお、ナノチューブ製造装置300は、RLSAプラズマCVD装置に限られず、容量結合型(平行平板型)プラズマ処理装置、誘導結合型(ICP:Inductive Coupling Plasma)プラズマ処理装置、電子サイクロトロン方式(ECR:Electron Cyclotron Resonance)のプラズマ処理装置など種々のプラズマ処理装置を使用することができる。
【0049】
前述したように、金属ナノ粒子Maが成膜されたウエハWは、真空状態を維持したまま、図示しない真空搬送機構を通ってRLSAプラズマCVD装置(ナノチューブ製造装置300)内の載置台315まで搬送される。RLSAプラズマCVD装置では、搬入されたウエハW上の金属ナノ粒子を成長させてナノチューブを製造する。
【0050】
RLSAプラズマCVD装置は、天井面が開口された円筒状の反応容器302を有している。天井面の開口には、シャワープレート305が嵌め込まれている。反応容器302とシャワープレート305とは、反応容器302の内壁の段差部とシャワープレート305の下面外周部との間に配設されたOリング310により密閉され、これにより、プラズマ処理を施す処理室Uが形成される。たとえば、反応容器302はアルミニウム等の金属からなり、シャワープレート305はアルミニウム等の金属または誘電体からなり、電気的に接地されている。
【0051】
反応容器302の底部には、ウエハWを載置するサセプタ(載置台)315が絶縁体320を介して設置されている。サセプタ315には、整合器325aを介して高周波電源325bが接続されていて、高周波電源325bから出力された高周波電力により反応容器302の内部に所定のバイアス電圧を印加するようになっている。また、サセプタ315の内部には冷却ジャケット335が設けられ、ウエハWを冷却するために冷却水を供給する。
【0052】
シャワープレート305は、その上部にてカバープレート340により覆われている。カバープレート340の上面には、ラジアルラインスロットアンテナ345が設けられている。ラジアルラインスロットアンテナ345は、多数の図示しないスロットが形成されたディスク上のスロット板345aと、スロット板345を保持するディスク上のアンテナ本体345bと、スロット板345aとアンテナ本体345bとの間に設けられ、アルミナなどの誘電体から形成される遅相板345cと、から構成されている。ラジアルラインスロットアンテナ345には、同軸導波管350を介してマイクロ波発生器355が設置されている。
【0053】
反応容器302には、真空ポンプ(図示せず)が取り付けられていて、ガス排出管360を介して反応容器302内のガスを排出することにより、反応容器302内の圧力を10-4〜10-1Paに保持する。また、載置台315に配設されている図示しない電気加熱部材及び冷却ジャケット335を用いて、ウエハWの板温度を500〜850℃程度に保持する。
【0054】
ガス供給源365は、バルブVの開閉およびマスフローコントローラMFCの開度をそれぞれ制御することにより、所望の濃度のガスを反応容器302の内部に供給するようになっている。
【0055】
この状態で、導波管350を介してマイクロ波を反応容器302内に導入する。また、ガス供給源365からナノチューブ生成用のガスを反応容器302内に導入する。供給されたガスは、マイクロ波のエネルギーにより分解され、プラズマとなる。生成されたプラズマは、ウエハWに衝突し、ウエハW表面で反応する。これにより、埋め込まれたウエハW上の金属ナノ粒子をシードとしてナノチューブを成長させることができる。
【0056】
なお、金属ナノ粒子の成長物は、チューブ状であってもワイヤ状であってもよい。これにより、ウエハW上の金属ナノ粒子を種として、ナノチューブ又はナノワイヤを成長させることができる。
【0057】
このようにして、本実施形態に係るナノチューブ製造装置300により、ナノチューブ等のナノ構造体が成長する。ナノ構造体としては、フラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ等が主として挙げられる。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態に係る配線方法によれば、指向性の高い金属クラスタを用いて配線用パターンの底部までCuを埋め込むことにより、埋め込み不良のない配線を形成することができる。
【0059】
特に、埋め込んだ金属ナノ粒子をシードとしてナノ構造体を成長させることにより配線層35を形成する場合には、金属ナノ粒子の粒径とナノ構造体の太さとは同じになるため、金属ナノ粒子の粒径によって配線の太さを制御することができる。
【0060】
(応用例)
本実施形態に係る基板の配線方法は、以上のように半導体チップ内の配線工程に用いることができるだけでなく、半導体チップ間の配線工程にも用いることができる。近年、半導体チップの内部を貫通するスルーホール(TSV:Through−Silicon Via)の電極を用いて、上下の半導体チップ間を電気的に接続する立体配線技術が提案されている。図6では、上部半導体チップ400の内部にスルーホール(TSV)405が形成されている。このスルーホール405に配線を通し、スルーホール405及びバンプ505を介して上部半導体チップ400のパッド電極410と下部半導体チップ500のパッド電極510とを導通する。
【0061】
ここでは、上記TSVを用いた配線を、本実施形態に係る基板の配線方法により形成する。この3D配線によれば、径が30μm〜50μmのTSVに対して金属ナノ粒子の粒径の太さのナノ構造体を配線することができる。また、パッケージ内配線の抵抗を低減し、複数の半導体チップを積層して一つのパッケージに収めることができるため、小型化、システムとしての処理の高速化、消費電力の低下を図ることができる。
【0062】
上記実施形態に係る基板の配線方法において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、基板の配線方法の実施形態を、基板を配線する半導体製造装置の実施形態とすることができる。
【0063】
これにより、真空状態に保持された処理容器内にて、配線用パターンが形成された基板を配線する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、基板上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前記前工程後、前記ガスノズルから金属ソースを前記処理容器内に放出することによりクラスタ化された金属ガスを生成し、該クラスタ化された金属ガスを用いて前記配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含む工程を実行することを特徴とする半導体製造装置の実施形態が実現可能となる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上記実施形態に係る基板の配線方法は、デュアルダマシン構造の配線工程でのCUの埋め込み及びTSVを用いた3次元配線に用いたが、これに限定されず、基板上へのいずれの配線にも適用できる。
【0066】
また、本発明に係る配線用パターンは、溝やホール(孔)に限られず、いずれの形状であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態に係る基板の配線方法ではCuにより配線層を形成したが、これに限られず、別の金属により配線層を形成することもできる。
【0068】
本発明に係る基板は、半導体ウエハWであってもよく、FPD(Flat Panel Display)であってもよい。
【0069】
本発明に係るクラスタ装置は、イオン化器及び加速器を内蔵していてもよい。この場合、クラスタ化された金属ガスは、ガスノズルから供給され、イオン化器によりイオン化された後、加速器により加速され、保持部材155に保持されたウエハWの表面に対して垂直に供給される。この機構は、GCIB(Gas Cluster Ion Beam)と呼ばれている。
【符号の説明】
【0070】
10 クラスタ装置
20、24 Low−k膜
21 バリアメタル
22 Cu配線層
24a ビアホール
24b トレンチ
32 バリア材
35 配線層
100 処理容器
100a ガス供給室
100b 処理室
110 ガスノズル
110a ガスノズルの出口
120 遮断器
155 保持部材
300 ナノチューブ製造装置
400 上部半導体チップ
405 スルーホール
500 下部半導体チップ
505 バンプ
B ビア底
Cg 金属ガスクラスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態に保持された処理容器内にて、配線用パターンが形成された基板を配線する方法であって、
基板上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、
前工程後、クラスタ化された金属ガスを用いて前記配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含むことを特徴とする基板の配線方法。
【請求項2】
前記埋め込み工程は、金属ソースを、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルから前記処理容器内に放出することによりクラスタ化することを特徴とする請求項1に記載の基板の配線方法。
【請求項3】
前記埋め込み工程は、前記配線用パターンの表面に前記金属ナノ粒子を埋め込むことにより、金属のバリア材を形成する工程と、
前記バリア材が形成された前記配線用パターンの内部に配線となる金属を埋め込む工程とを含む請求項1又は2に記載の基板の配線方法。
【請求項4】
前記ガスノズルと前記基板との距離dは、式1にて定義される前記ガスノズルの出口から衝撃波が発生する位置までの距離Xmより長く設定され、
前記バリア材を形成する工程は、前記発生した衝撃波を用いて前記金属ナノ粒子を基板に衝突させることを特徴とする請求項3に記載の基板の配線方法。
【数1】

ただし、Dはガスノズルの出口の内径、Pはガスノズルの内部圧力、Pは処理容器の内部圧力である。
【請求項5】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.4MPa以上であり、
前記処理容器の内部圧力Pは、1.5Pa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板の配線方法。
【請求項6】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.9MPa以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板の配線方法。
【請求項7】
前記基板の配線方法は、半導体チップ内の配線工程、又は半導体チップ間の配線工程に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板の配線方法。
【請求項8】
真空状態に保持された処理容器内にて、配線用パターンが形成された基板を配線する半導体製造装置であって、
前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、
基板上の配線用パターンを所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前記前工程後、前記ガスノズルから金属ソースを前記処理容器内に放出することによりクラスタ化された金属ガスを生成し、該クラスタ化された金属ガスを用いて前記配線用パターン内に金属ナノ粒子を埋め込む埋め込み工程と、を含む工程を実行することを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187704(P2011−187704A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51736(P2010−51736)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】