説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板面内により均一に処理を施すと共にスループットの向上を図る。
【解決手段】基板処理装置1は、基板2を水平搬送しながらその上面に現像液の液層Xを形成するための液ノズル16と、基板2上に形成された液層Xを除去するための除去手段とを備える。この除去手段は、基板2を横断するように設けられて該基板2の上面に向かってエアを吐出するエアナイフ18と、該エアナイフ18によるエア吐出位置よりも基板2の後端側に隣接する位置に配置され、前記エアの吐出時に生じる液層Xの波打ちを抑える波消し部材20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、半導体基板等の基板に各種処理液を供給して処理を施す基板処理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LCD等の矩形の基板の上面(主面)に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置として、例えば特許文献1に開示されるような装置が提案されている。
【0003】
この文献1に開示される装置は、基板を水平姿勢で搬送しながら基板表面に現像液を供給してその表面張力で液層を形成し、その状態で所定時間だけ現像処理を施す所謂パドル現像処理を行う。そして、基板を幅方向に傾けて(搬送方向と直交する方向に傾けて)現像液を基板に沿って流下させた後、当該基板を傾斜姿勢のまま搬送しながら洗浄液を基板表面に供給して洗浄処理を施す構成となっている。パドル現像処理を行う特許文献1の装置は、シャワー状に現像液を供給するものに比べて少量の現像液で基板全体に斑なく現像処理を施すことが可能であり、従って、ランニングコストを抑えて経済的に現像処理を行うことができるという特徴がある。
【特許文献1】特開平11−87210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の装置では次のような問題がある。すなわち、液層形成時には、基板に対してその搬送方向先端側から順に現像液を供給するものの、現像処理後は、基板をその幅方向に傾斜させて現像液を流下させるため、基板面内の処理時間に自ずと差が生じる。具体的には、搬送方向における基板の後端側ほど、また、傾斜姿勢の上位側となる部位ほど処理時間が短くなる傾向がある。基板のサイズが小さい場合、基板面内における処理時間の時間差(最長処理時間の部位と最短処理時間の部位との処理時間の時間差)は短く、品質への影響は殆どなく無視することができた。しかし、近年、基板が大型化すると共に、要求される処理精度も高まる傾向にあり、基板面内の処理時間の時間差が品質を確保する上で無視できなくなっている。また、近年では、スループットの向上がより重要視されており、現像処理後、基板搬送を停止させて姿勢変換を行う必要がある従来装置では、このような要請に対応することが難しい。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、所謂パドル処理によって基板に所定処理を施す基板処理装置において、基板面内に、より均一に処理を施すと共に、スループットの向上を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
出願人は、上記課題が基板の姿勢を変換することに因るものである点に鑑み、液層の形成から除去までの一連の処理を水平姿勢のままで行うべく、基板を水平搬送しながら基板に対してその先端側から順に流体を供給し(吹き付け)、これによって液層を除去することを検討した。ところが、基板に流体を吹き付けると、その影響で液層が乱れて処理液が基板上から流下する等、パドル処理の安定性が損なわれるという課題が生じた。そこで、出願人は、さらに検討し、以下のような基板処理装置を発明した。
【0007】
すなわち、本発明に係る基板処理装置は、水平に支持された基板に対して相対的に移動可能に設けられ、前記移動に伴い、前記基板の上面に形成されている処理液の液層を基板の一端側から他端側に向かって除去する除去手段を備え、この除去手段は、前記液層の除去を行うべく流量調整された除層用流体を、前記相対移動方向と交差する方向において基板全幅に亘って基板上面に吐出する流体供給部と、前記基板における前記除層用流体の供給位置よりも前記他端側に隣接した位置で基板上面側から前記液層に対応する距離だけ離間して対向配置され、前記除層用流体の吐出時に生じる前記液層の波打ちを抑える波消し部と、を備えているものである。
【0008】
この装置では、水平に支持され、かつ液層が形成された基板に対して除去手段が相対的に移動し、この移動中に、流体供給部から基板に除層用流体が吐出されることによって基板の一端側から他端側に向かって順次液層が除去される。その際、前記除層用流体の吐出時に生じる前記液層の波打ちが、該除層用流体の吐出位置よりも前記他端側に隣接した位置で前記波消し部により抑えられることにより、基板上に残っている液層の安定性が良好に保たれることとなる。従って、パドル処理の安定性を損なうことなく、水平姿勢のままで良好に基板上の液層を除去することが可能となる。
【0009】
そして、本発明に係る基板処理方法は、この基板処理装置を用いた基板処理方法であって、水平に支持された基板の上面に対してその一端側から他端側に向かって処理液を供給することにより基板上面に当該処理液の液層を形成する液層形成工程と、前記基板処理装置を用い、前記液層が形成された前記基板に対して相対的に前記除去手段を移動させながら前記基板の上面に対して前記除層用流体を吐出させることにより当該基板の前記一端側から前記他端側に向かって前記液層を除去する液層除去工程と、を含むものである。
【0010】
この方法によれば、液層の形成、及び当該液層の除去の何れの処理も基板を水平に支持した状態で行い、また、何れの処理も基板の同じ側(上記一端側)から順に行うので、パドル処理を行いながらも、基板面内における処理液による処理時間を均一化することができ、また、基板の姿勢変換が不要となる分、スループットを向上させることが可能となる。
【0011】
なお、上記の基板処理装置の具体的な構成として、前記波消し部は、前記基板の上面に対向する対向面を有し、この対向面と前記基板上面との間に前記処理液のメニスカスを形成するように構成されている。
【0012】
この構成によると、波消し部の対向面と基板上面とによって液層の上下動が規制されることにより、液層の波打ちが効果的に防止される。
【0013】
また、波消し部に処理液が付着すると、その乾燥物が次回の基板の液層に混入する等の不都合を招くことが考えられるので、上記装置においては、波消し部に対して洗浄液を吹き付けることにより、当該波消し部を洗浄する洗浄手段が設けられる。
【0014】
この構成によれば、波消し部に付着した処理液を除去し、あるいは該処理液の乾燥を防止することが可能となるため、上記のような不都合を解消することができる。
【0015】
なお、上記装置においては、水平に支持された基板に対して相対的に移動可能に設けられ、前記移動に伴い、前記一端側から基板上面に処理液を供給することにより前記液層を形成する第1処理液供給手段を備えるものでもよい。
【0016】
この構成によれば、基板を水平姿勢に保ったままで、上記液層の形成から該液層の除去までの工程を共通の装置で行うことが可能となる。
【0017】
また、上記装置は、前記除去手段と一体的に前記基板に対して相対移動し、前記移動に伴い、前記基板のうち前記除層用流体が供給された領域に対して前記液層とは別の処理液を供給する第2処理液供給手段を有するものであってもよい。
【0018】
この構成によれば、基板に対する除去手段の相対移動に伴い、基板のうち前記除層用流体が供給された領域(液層が除去された領域)に対して直ちに別の処理液を供給することが可能となる。そのため、例えば第2処理液供給手段により次工程の処理液を供給するようにすれば、液層が除去された領域における基板の乾燥等を防止しつつ速やかに次工程の処理に移行することが可能となる。
【0019】
また、上記装置において、前記除去手段は、前記流体供給部、及び前記基板における前記除層用流体の吐出位置を被うカバー部材を備えているのが好適である。
【0020】
この構成によれば、除層用流体の供給に伴うミスト(ミスト状の処理液)の飛散を有効に防止することができる。この場合、第2処理液供給手段を有するものでは、前記カバー部材は、前記第2処理液供給手段、及び前記基板のうち当該第2処理液供給手段による処理液の供給位置を被うように設けられているものでもよい。この構成によれば、第2の処理液供給手段による処理液の供給に伴うミストの飛散についてもこれを有効に防止することができる。
【0021】
なお、上記カバー部材を有する場合には、さらに該カバー部材の内部雰囲気を排気する排気手段を有するものであるのが好適である。
【0022】
この構成によれば、カバー部材の内部にミストが充満するのを防止することができる。従って、カバー部材の内面にミストが付着、乾燥してこれが基板に付着するといった不都合を回避できる。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明を適用すれば、液層の形成、及び液層の除去の何れの処理についても、基板を水平に支持した状態で行うことが可能となる。そのため、所謂パドル処理を行いながらも、従来に比して基板面内の処理時間を均一化することができ、また、スループットを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る基板処理装置を断面図で概略的に示している。この基板処理装置1は、基板2を図中の矢印方向に水平姿勢で搬送しながら、当該基板2に所定のプロセス処理を施すための装置であり、現像処理室10A及び洗浄処理室10Bを含んでいる。
【0026】
各処理室10A,10Bには、複数の搬送ローラ14が所定の間隔で並設されており、これら搬送ローラ14によって構成される搬送路に沿って基板2が水平姿勢で搬送される。なお、図中符号12は、現像処理室10Aとその上流側の処理室等との仕切壁11A,及び現像処理室10Aと洗浄処理室10Bとの仕切壁11Bにそれぞれ形成される開口部であり、これらの開口部12を基板2が通ることで隣接処理室への基板搬送が可能となっている。
【0027】
前記現像処理室10Aの内部には、その上流側(基板搬送方向における上流側)端部に、基板2に対して現像液(処理液)を供給するための液ノズル16(第1液ノズル16という;本発明に係る第1処理液供給手段に相当する)が設けられている。この第1液ノズル16は、前記搬送路の幅方向(基板搬送方向と直交する方向;同図では紙面に直交する方向)に細長で、かつ、長手方向に連続的に延びる細長の吐出口をもつ所謂スリットノズルからなり、前記開口部12の上方位置に、吐出口を下流側(基板搬送方向における下流側)に向かって斜め下向きにした状態で配置されている。第1液ノズル16は、第1液供給管32を介して現像液の貯溜タンク30に接続されており、第1液供給管32に介設されるポンプ34の駆動及び図外の開閉バルブの制御により、前記貯溜タンク30からの現像液の供給を受けて基板2上に現像液を供給可能となっている。
【0028】
一方、現像処理室10Aと洗浄処理室10Bとの仕切壁11Bの部分には、第1液ノズル16により基板2上に供給された現像液(後記液層X)を除去するための除去手段が設けられている。この除去手段は、エアナイフ18、波消し部材20、波消し洗浄ノズル22、基板洗浄ノズル24及びカバー部材26等により構成されている。
【0029】
エアナイフ18(本発明に係る流体供給部に相当する)は、仕切壁11Bのちょうど開口部12の部分であって前記搬送路の上方位置に配置されている。エアナイフ18は、前記搬送路の幅方向に細長で、かつ長手方向に連続的に延びる細長の吐出口をもつスリットノズルからなり、吐出口を真下、若しくは若干上流側に向けた状態で配置されている。このエアナイフ18は、エア供給管28を介してエア供給源29に接続されており、図外の開閉バルブ等の操作により、前記エア供給源29から所定流量のエア、具体的には清浄度及び温湿度が所定レベルに調整された所謂CDA(Clean Dry Air;本発明に係る徐層用流体に相当する)の供給を受けて基板2上に該エアを吐出可能となっている。すなわち、エアナイフ18から基板2上にエアを吐出することにより、そのエア圧により基板2上の現像液(後記液層X)を除去するようになっている。なお、前記搬送路において、前記エアナイフ18によるエア吐出位置には、搬送ローラ14として、基板2の全幅に亘って該基板2を支持可能な搬送ローラ14が配置されており、これによって前記エア圧による基板2の撓み変形が防止されるようになっている。
【0030】
前記波消し部材20(本発明の波消し部に相当する)は、上記エア吐出に伴う現像液(液層X)の波打ちを防止するための部材である。波消し部材20は、搬送路の上方位置であって前記エアナイフ18の上流側に隣接する位置に、搬送路の幅方向に亘って設けられている。
【0031】
この波消し部材20は、図2に示すように、搬送基板2に対向し、かつ該基板2の上面と略平行な対向面21を有する断面L型の形状を有している。波消し部材20は、前記対向面21と搬送基板2との隙間Sが、該基板2の上面に形成される現像液の液層(液溜り)Xの厚みtと同等、好ましくは該厚みtよりも若干広くなるように設けられている。これによって基板2と対向面21との間にメニスカス(すなわち現像液の液体架橋)を形成可能となっている。当実施形態では、基板2上に形成される液層Xの厚みtは略3〜4mmであり、上記隙間Sが該厚みt+1mm程度となるように波消し部材20が設けられている。また、基板搬送方向における前記対向面21の長さ寸法Wは、同方向における基板2の全長よりも短く、実施形態では、基板2の全長が1600mm程度に対して対向面21の長さ寸法Wが10mm程度に設定されている。
【0032】
波消し洗浄ノズル22(本発明に係る洗浄手段に相当する)は、洗浄液として、前記現像液を波消し部材20の主に対向面21に吹き付けるものである。この波消し洗浄ノズル22は、搬送路の幅方向に細長で、かつ、長手方向に所定間隔で吐出口が並んだ所謂シャワーノズルからなり、前記搬送路の下方位置であって仕切壁11Bの近傍に、吐出口を波消し部材20(対向面21)向けた状態で配置されている。この波消し洗浄ノズル22は、第2液供給管36を介して前記貯溜タンク30に接続されており、第2液供給管36に介設されるポンプ38の駆動及び図外の開閉バルブの制御により、前記貯溜タンク30からの現像液の供給を受けて波消し部材20に現像液を供給可能となっている。
【0033】
基板洗浄ノズル24は、現像処理室10Aの処理に先立って液層Xが除去された基板上にリンス液(当実施形態では純水)を供給するものである。この基板洗浄ノズル24(第2液ノズル24という;本発明に係る第2処理液供給手段に相当する)は、搬送路の上方位置であって、エアナイフ18の直ぐ下流側に隣接する位置に配置されており、実際には前記仕切壁11Bよりも洗浄処理室10B側に配置されている。第2液ノズル24も、前記第1液ノズル16と同様に、搬送路の幅方向に細長のスリットノズルからなり、吐出口を若干下流側に向けた状態で配置されている。この第2液ノズル24は、純水供給管25を介して図外の純水供給源に接続されており、該供給源からの純水の供給を受けて基板2上に純水を供給可能となっている。すなわち、基板2上に純水を吐出することにより現像処理室10Aで処理された基板2を水洗するようになっている。
【0034】
カバー部材26は、搬送路の幅方向全域に亘って前記エアナイフ18、波消し部材20、第2液ノズル24及びエア等の吐出位置をその上方から一体に被うものである。このカバー部材26は、前記仕切壁11Bに連続して、かつ前記基板2との間に所定の空間を形成するように断面ドーム型に形成されている。図示を省略するが、このカバー部材26又は処理室10A,10Bの内側面には、吸引ポンプ等に連通する吸引口が形成されており、カバー部材26の内部雰囲気がこの吸引口を介して吸引、排気可能となっている。この実施形態では、この吸引ポンプ等や吸引口が本発明に係る排気手段に相当する。
【0035】
なお、現像処理室10Aには、その内底部に漏斗状の回収パンが設けられており、使用済みの現像液がこの回収パンにより収集されながら回収管31を通じて前記貯溜タンク30に戻されるようになっている。つまり、この現像処理室10Aでは、貯溜タンク30と前記第1液ノズル16及び波消し洗浄ノズル22との間で現像液を循環させながら基板2の処理に使用するように現像液の給排系統が構成されている。
【0036】
前記洗浄処理室10Bについては、詳細に図示していないが、その処理室内には、例えば基板2の搬送路の上方位置であって、該搬送路に沿ってシャワーノズルからなる基板洗浄ノズルが配備されている。これによって搬送ローラ14により水平姿勢では搬送される基板2の上面に対して、洗浄液(当実施形態では純水)が供給可能となっている。
【0037】
なお、基板処理装置1にはコンピュータを構成要素とする図外のコントローラが設けられており、搬送ローラ14やポンプ34,38等の駆動、及び各種バルブの開閉等がこのコントローラ40により統括的に制御されるようになっている。例えばこの装置1は、現像処理室10Aにおける上流側の仕切壁11Aの開口部12よりもやや上流側の位置と、前記カバー部材26の近傍とに基板2の検知センサ40a,40bを備えており、これらセンサ40a,40bによる基板2の検知に基づき、前記コントローラが開閉バルブ等を制御するように構成されている。
【0038】
次に、この基板処理装置1による基板2の処理についてその作用効果と共に説明する。
【0039】
この基板処理装置1では、検知センサ40a,40bにより基板2が検知されるまでは各バルブが閉止される。従って、各ノズルへの現像液や洗浄液の供給は停止されている。
【0040】
搬送ローラ14の駆動により基板2が搬送されて、その先端が検知センサ40aにより検出されると、貯溜タンク30から前記第1液ノズル16への現像液の供給が開始される。そして、基板2が開口部12を通じて現像処理室10A内に搬入されて来ると、当該搬入に伴い基板2の上面に対してその先端(基板2の進行方向先端)から順に現像液が供給される。これによって、基板2の上面に所定厚みtを有する現像液の液層Xが形成されると共に、該液層Xが形成され状態で基板2が低速搬送されることにより、基板2に現像処理が施される。つまり、所謂パドル現像処理が実施される。
【0041】
さらに基板2が搬送され、その先端が検知センサ40bにより検出されると、エアナイフ18へのエアの供給、及び第2液ノズル24への純水の供給が開始され、さらにカバー部材26内の排気が開始される。そして、基板2の先端が波消し部材20の下方位置を通過すると、エアナイフ18から基板2にエアが吐出され、このエア圧により基板上の液層Xがその先端側から除去されると共に、当該除去箇所に対して第2液ノズル24から純水が吐出される。これによって基板2の先端側から順に、現像処理が終結すると共に、基板2の洗浄(置換水洗)処理が開始されることとなる。
【0042】
なお、基板2にエアが吐出されると、波消し部材20よりも先端側で液層Xに波打ちが生じ、これにより波消し部材20の対向面21に液層Xが接触して該対向面21と基板2との間にメニスカスが形成される。このようにメニスカスが形成される結果、前記対向面21と基板2とにより液層Xの上下動が規制され、基端後端側への波動(液層Xの波打ち)の伝達が抑制されることとなる。従って、波動が液層全体に伝わって液層X全体が波打つといった事態が未然に防止され、残りの液層Xの安定性が保たれる。
【0043】
また、基板2に対してエアや純水が吹き付けられると、現像液や純水のミストが発生するが、上記のようにエアや純水の吹き付け位置がカバー部材26に被われ、さらにこのカバー部材26内の雰囲気が吸引排気されている結果、当該ミストが広く基板2上に飛散することが防止されることとなる。
【0044】
こうして基板2が搬送されて、基板2の後端が順次検知センサ40a,40bに検知されると、当該検知に基づくタイマーの計時によって基板2が第1液ノズル16による現像液の吐出位置、エアナイフ18によるエアの吐出位置、及び第2液ノズル24による純水の吐出位置をそれぞれ通過したことが検出され、これに伴い、順次、第1液ノズル16への現像液の供給、エアナイフ18へのエアの供給、及び第2液ノズル24への純水の供給が停止される。これによって現像処理室10Aにおける当該基板2に対する一連の現像処理が終了することとなる。
【0045】
なお、処理終了後は、前記波止め洗浄ノズル22から波止め部材20に対して定期的に現像液が吹き付けられ、これによって波止め部材20の洗浄が行われると共に、波止め部材20に付着した現像液の乾燥が抑制される。
【0046】
以上のように、この基板処理装置1では、基板2を水平搬送しながら該基板2にパドル現像処理を施すものであるが、液層Xの形成(処理)のみならず、液層Xの除去(処理)についても基板2を水平搬送しながら実施し、また、何れの処理も同方向に基板2を搬送しながらその先端側から順に処理を施すようになっている。そのため、パドル現像処理を行う従来のこの種の装置、すなわち水平姿勢で液層形成を行い、その後、基板の姿勢を傾斜姿勢に変換して液層を除去する装置のように基板面内において処理時間に差が生じることがなく、また、基板の姿勢変換が不要な分、トータル処理な時間も短縮することが可能となる。従って、この基板処理装置1によれば、現像液の使用量を抑えて経済的に現像処理を行うことができる、というパドル現像処理の利益を享受する一方で、基板面内の現像処理の均一性を高めると共に、スループットを向上させることができるという効果がある。
【0047】
特に、この基板処理装置1では、エア圧により基板上の液層Xを除去するが、上記の通り、基板2の搬送路上方に波消し部材20を備え、これにより液層Xに生じる波動の伝達を抑えて液層全体が波打つのを防止するので、液層Xの安定性を良好に保つことができる。従って、液層Xの安定性が損なわれて現像液が基板上から流下し、その結果、現像処理の品質に影響を与えるといった事態の発生を未然に防止することができ、この点でも基板面内の現像処理の均一性を高めることができるという利点がある。
【0048】
しかも、この基板処理装置1では、基板2の非処理中、定期的に波消し洗浄ノズル22から現像液を波消し部材20に吹き付け、対向面21に付着した現像液の乾燥物(異物)を除去し、あるいは現像液が乾燥するのを防止するように構成されているので、液層X内に異物が混入するといった不都合を未然に防止することができる。すなわち、メニスカスの形成に伴い波消し部材20に付着した現像液が乾燥すると、この乾燥物(異物)が次回の基板2の液層Xに混入して基板2に付着することが考えられるが、この装置1では、上記のように定期的に現像液を波消し部材20に吹き付けるため、前記乾燥物を除去し、また、波消し部材20に付着した現像液の乾燥を防ぐことができる。従って、波消し部材20を設けて液層Xの安定性を確保する一方で、これによる上記弊害、つまり乾燥物が液層Xに混入するという事態を未然に防止することができる。
【0049】
さらに、この基板処理装置1では、エアナイフ18の下流側に隣接する位置に第2液ノズル24を備え、液層Xの除去後、直ちに基板2上に純水を供給する構成となっている。従って、液層Xの除去後は、直ちに純水の液膜を基板上に形成して乾燥を防止しつつ速やかに洗浄処理(置換水洗)を基板2に施すことができる。特に、第2液ノズル24としてスリットノズルを適用することで基板2の全幅に亘って純水を供給するので、基板2の処理をその全幅に亘って同時に現像処理から洗浄処理に切り替えることができ、これによって基板面内の処理の均一性が高められる。
【0050】
その上、この基板処理装置1では、上記のようにエアナイフ18や第2液ノズル24がカバー部材26により被われ、該カバー部材26内の雰囲気が吸引排気されることにより、ミスト(現像液や純水)の基板上への飛散が防止される構成となっている。従って、液層Xが除去された部分に現像液のミストが再付着し、あるいは液層Xに純水のミストが付着して現像液を希釈するといった事態の発生を未然に防止することができるという利点もある。
【0051】
ところで、以上説明した基板処理装置1は、本発明に係る基板処理装置の好ましい実施の形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
例えば、波消し部材20として、図3に示すように角部(特に上流側)に丸味を持たせ、若しくは角部に面取り加工を施したものを適用し、これによって液層Xの安定を保ちつつ波消し部材20(対向面21)の下方位置にスムーズに基板2を搬送し得るようにしてもよい。また、図4に示すように、波消し部材20を断面逆T字型に形成することにより、波消し部材20の剛性を高めるようにしてもよい。この波消し部材20によれば、撓みによる対向面21の変形を防止する上で有効となる。また、図5に示すように、基板2との対向面21a〜21cを各々有する単位部材20a〜20cを基板搬送方向に所定間隔を隔てて並設することにより対向面21が不連続となる波消し部材20を適用してもよい。要するに、波消し部材20は、エアの吐出時に液層Xに生じる波動の伝達を抑えて液層全体が波打つのを防止することができれば、その具体的な形状は、上記実施形態等の形状に限定されるものではない。
【0053】
また、上記実施形態では、液層Xの除去手段(エアナイフ18、波消し部材20等)を固定的に配置し、基板側を移動させることにより、前記除去手段に対して相対的に基板2を移動させつつ液層Xを除去する構成となっているが、勿論、逆の構成でもよい。つまり、図6に示すように、基板2を停止させ、これに対して除去手段を移動させながら液層Xの除去等を行うように構成してもよい。この場合には、基板2を搬送しながら液層Xを形成し、その後、基板2を停止させた状態で、仕切壁11B近傍のホームポジションから除去手段を上流側に移動させながら液層Xを除去するようにすればよい。その場合、波消し洗浄ノズル22はホームポジションに配置しておき、該ポジションにリセットされた時に波消し部材20に対して現像液を吹き付けるように構成すればよい。なお、このように基板2及び除去手段の何れか一方だけを移動させる以外に、基板2及び除去手段の双方を移動させながら、液層Xの除去等を行うように構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、エアナイフ18は、その吐出口が搬送路の幅方向に延びるように設けられているが、基板2の全幅に亘って現像液を吐出できれば、エアナイフ18は、その吐出口が幅方向と交差する方向に延びるものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、現像液を循環使用するため、波止め部材20の洗浄液として現像液を用いているが、現像液を循環使用しない場合等には、波止め部材20の洗浄液として現像液以外のものを適用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、液層Xにエア(CDA)を吹き付けることによって基板2から液層Xを除去しているが、勿論、これ以外の流体を適用することも可能である。例えばN(窒素)等の不活性ガスも適用可能である。また、現像液や、若しくは現像液とエア(CDA)との混合流体等を適用することも可能である。
【0057】
なお、上記の実施形態では、基板2に現像処理を施す基板処理装置1について本発明を適用した例について説明したが、本発明は、パドル処理を行うものであれば、勿論、現像処理以外の処理、例えばエッチング処理等を基板に施す基板処理装置についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】基板処理装置の要部を示す図1の拡大図である。
【図3】波消し部材の他の例を示す断面略図である。
【図4】波消し部材の他の例を示す断面略図である。
【図5】波消し部材の他の例を示す断面略図である。
【図6】本発明に係る基板処理装置の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 基板処理装置
2 基板
10A 現像処理室
10B 洗浄処理室
14 搬送ローラ
16 液ノズル(第1液ノズル)
18 エアナイフ
20 波消し部材
21 対向面
22 波消し洗浄ノズル
24 液ノズル(第2液ノズル)
26 カバー部材
X 液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に支持された基板に対して相対的に移動可能に設けられ、前記移動に伴い、前記基板の上面に形成されている処理液の液層を基板の一端側から他端側に向かって除去する除去手段を備え、
この除去手段は、前記液層の除去を行うべく流量調整された除層用流体を、前記相対移動方向と交差する方向において基板全幅に亘って基板上面に吐出する流体供給部と、前記基板における前記除層用流体の供給位置よりも前記他端側に隣接した位置で基板上面側から前記液層に対応する距離だけ離間して対向配置され、前記除層用流体の吐出時に生じる前記液層の波打ちを抑える波消し部と、を備えている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記波消し部は、前記基板の上面に対向する対向面を有し、この対向面と前記基板上面との間に前記処理液のメニスカスを形成するように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板処理装置において、
前記波消し部に対して洗浄液を吹き付けることにより、当該波消し部を洗浄する洗浄手段を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板処理装置において、
水平に支持された基板に対して相対的に移動可能に設けられ、前記移動に伴い、前記一端側から基板上面に前記処理液を供給することにより前記液層を形成する第1処理液供給手段を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記除去手段と一体的に前記基板に対して相対移動し、前記移動に伴い、前記基板のうち前記除層用流体が供給された領域に対して前記液層とは別の処理液を供給する第2処理液供給手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記除去手段は、前記流体供給部、及び前記基板における前記除層用流体の吐出位置を被うカバー部材を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置において、
前記第2処理液供給手段を有するものであり、前記カバー部材は、前記第2処理液供給手段、及び前記基板のうち当該第2処理液供給手段による処理液の供給位置を被うように設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の基板処理装置において、
前記カバー部材の内部雰囲気を排気する排気手段を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記請求項1に記載の基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
水平に支持された基板の上面に対してその一端側から他端側に向かって処理液を供給することにより基板上面に当該処理液の液層を形成する液層形成工程と、
前記基板処理装置を用い、前記液層が形成された前記基板に対して相対的に前記除去手段を移動させながら前記基板の上面に対して前記除層用流体を吐出させることにより当該基板の前記一端側から前記他端側に向かって前記液層を除去する液層除去工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−178672(P2009−178672A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20735(P2008−20735)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】