説明

基板処理装置

【課題】処理カップの開口部に薬液を良好に進入させることができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】第1薬液の供給中において、CPU61は、回転数センサ16から出力された検出値を監視している(ステップS7)。そして、回転センサ16から出力された検出値が回転数範囲外となると(ステップS7でNO)、CPU61は、第1薬液表面側バルブ23を閉じるとともに、その後の開成を禁止し(ステップS9)、その第1薬液表面側バルブ23の開成が禁止された旨の警報を出力した後(ステップS10)、このインターロック処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液を用いた基板処理のための基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程には、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に薬液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この種の基板処理装置の中には、基板の処理に用いられる複数種の薬液の消費量をそれぞれ低減させるために、複数の薬液を個別に回収して再使用するように構成されたものがある。
【0003】
複数種の薬液を個別回収可能な構成の基板処理装置は、たとえば、複数本のチャックピンで基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックを収容した有底円筒形状のカップと、そのカップに対して昇降可能に設けられたスプラッシュガードとを備えている。
カップの底部には、スピンチャックの周囲を取り囲むように、基板の処理に用いられた後の薬液を廃液するための廃液溝が形成されており、さらに、この廃液溝を取り囲むように、たとえば、基板の処理のために用いられた後の薬液を回収するための第1および第2回収溝が2重に形成されている。廃液溝には、図外の廃液処理設備へと薬液を導くための廃液ラインが接続されており、第1および第2回収溝には、図外の回収処理設備へと薬液を導くための回収路がそれぞれに接続されている。
【0004】
スプラッシュガードは、基板から飛散する第1薬液を受け入れるための第1開口部と、基板から飛散する第2薬液を受け入れるための第2開口部と、基板から飛散する第3薬液を受け入れるための第3開口部とを、高さ位置を互いに異ならせて備えている。
そして、第1開口部および第2開口部に飛入する第1薬液および第2薬液は、それぞれカップ底部の第1回収溝および第2回収溝へ導かれる。第3開口部に飛入する第3薬液は、カップ底部の廃液溝へ導かれる。
【0005】
スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に第1薬液を供給することにより、基板の表面に第1薬液による処理を施すことができる。基板の表面に供給された第1薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の周縁から側方へ飛散する。このとき、第1開口部を基板の端面に対向させることにより、基板の周縁から飛散する第1薬液を、第1開口部へ飛入させて、第1回収溝に回収することができる。また、基板の表面に第2薬液を供給するときに、第2開口部を基板の端面に対向させることにより、基板から飛散する第2薬液を回収することができる。さらに、基板の表面に第3薬液を供給するときに、第3開口部を基板の端面に対向させることにより、基板の周縁から飛散する第3薬液を、廃液溝を通して廃液することができる。
【0006】
スピンチャックによる基板の回転は、レシピに定められた回転数に基づいて制御される。基板から飛散する第1薬液、第2薬液および第3薬液の飛散方向は、基板の回転数および各薬液の粘度に依存する。したがって、各薬液が各開口部に上手く飛入するように、基板への各薬液の供給時における基板の回転数およびスプラッシュガードの位置が決められている。
【特許文献1】特開2006−66815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、何らかの異常により、基板がレシピに定められた通りの回転数で回転されないことがある。
基板の回転数が、レシピに定められた回転数から大きく外れている場合、予定していた方向と大きく異なる方向に薬液が飛散する。この場合、第1薬液が第2開口部に進入して、第2開口部において第1薬液と第2薬液との混触が生じたり、第2薬液が第1開口部に進入して、第1開口部において第1薬液と第2薬液との混触が生じたりするおそれがある。第1薬液と第2薬液との組合せが、王水と硫酸とのように混触に危険を伴うような組合せである場合、これらの薬液が混触すると、激しい発熱反応による処理カップの破損や、反応生成物として塩素ガスの発生を招くおそれがある。また、このような事態は、入力ミスなどが原因で、基板の適正な回転数がレシピに定められていない場合にも生じ得る。
【0008】
そこで、この発明の目的は、処理カップの開口部に薬液を良好に進入させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持しつつ回転させるための基板回転手段(3)と、前記基板回転手段によって回転される基板に薬液を供給する薬液供給手段(18,19,23,29,35)と、前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する薬液を進入させるための開口部(58,59,60)を有する処理カップ(38,39)と、前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数の範囲が記憶された回転数範囲記憶手段(62)と、前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を検出する回転数検出手段(16)と、前記薬液供給手段による薬液の供給時に、前記回転数検出手段により検出される基板の回転数を監視し、その回転数が前記回転数範囲記憶手段に記憶されている回転数範囲外である場合、前記薬液供給手段による薬液の供給を禁止する供給禁止手段(61)とを含むことを特徴とする、基板処理装置である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、回転数検出手段によって検出される基板の回転数が回転数範囲記憶手段に記憶されている回転数範囲外であると、薬液の供給が禁止される。このため、基板の適正な回転数範囲を回転数範囲記憶手段に記憶させておけば、基板から飛散する薬液を処理カップの開口部だけに進入させることができ、薬液が開口部以外に向けて飛散することを防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、基板(W)を保持しつつ回転させるための基板回転手段(3)と、前記基板回転手段によって回転される基板に薬液を供給する薬液供給手段(18,19,23,29,35)と、前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する薬液を進入させるための開口部(58,59,60)を有する処理カップ(38,39)と、前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数範囲が記憶された回転数範囲記憶手段(62)と、前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数を定めたレシピを入力するレシピ入力手段(64)と、前記レシピ入力手段から入力されたレシピを記憶するためのレシピ記憶手段(62)と、前記レシピ入力手段から入力されたレシピを参照し、そのレシピで定められている回転数が前記回転数範囲記憶手段に記憶されている回転数範囲外である場合、前記レシピ入力手段から入力されたレシピの前記レシピ記憶手段への記憶を禁止するレシピ記憶禁止手段(61)とを含むことを特徴とする、基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、レシピに定められている回転数が回転数記憶手段に記憶されている回転数範囲外であるときには、そのレシピのレシピ記憶手段への記憶が禁止される。このため、基板の適正な回転数範囲を回転数範囲記憶手段に記憶させておけば、基板の回転数が適正に定められたレシピに基づいて基板を回転させることができる。これにより、基板から飛散する薬液を処理カップの開口部だけに進入させることができ、薬液が開口部以外に向けて飛散することを防止することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記薬液供給手段は、前記基板回転手段によって回転される基板に第1薬液を供給する第1薬液供給手段(18,23)と、前記基板回転手段によって回転される基板に前記第1薬液とは異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段(19,24)とを含み、前記回転数範囲記憶手段には、前記第1薬液供給手段による第1薬液の供給時における基板の第1回転数範囲、および、前記第2薬液供給手段による第2薬液の供給時における基板の第2回転数範囲が記憶されていることを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、第1薬液供給時の基板の第1回転数範囲と第1薬液供給時の基板の第2回転数範囲とが回転数記憶手段に個別に記憶されている。これにより、第1薬液および第2薬液の各粘性に応じた適正な第1回転数範囲および第2回転数範囲を回転数記憶手段に記憶させておくことができる。
請求項4記載の発明は、前記処理カップの開口部は、前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第1薬液を進入させるための第1開口部(58)と、前記回転軸線と平行な方向に前記第1開口部と異なる位置において前記回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第2薬液を進入させるための第2開口部(59)とを含み、前記第1回転数範囲は、前記基板回転手段によって回転される基板から飛散する第1薬液を前記第1開口部に進入させることができる回転数範囲であり、前記第2回転数範囲は、前記基板回転手段によって回転される基板から飛散する第2薬液を前記第2開口部に進入させることができる回転数範囲であることを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、基板から飛散する第1薬液を第1開口部に進入させることができ、また、基板から飛散する第2薬液を第2開口部に進入させることができる。これにより、処理カップにおける第1薬液と第2薬液との混触の発生を防止することができる。
請求項5記載の発明は、前記基板回転手段によって回転される基板に第3薬液を供給する第3薬液供給手段(35)を、さらに備え、前記基板回転手段は、基板をほぼ水平な姿勢に保持して、鉛直軸線まわりに回転させるものであり、前記回転数範囲記憶手段には、前記第3薬液供給手段による第3薬液の供給時における基板の第3回転数範囲が記憶され、前記第3回転数範囲は、前記第3薬液供給手段からの第3薬液を基板の上面に液盛りすることができる回転数範囲であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置である。
【0016】
この構成によれば、基板の上面に第3薬液を良好に液盛りさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
基板処理装置1は、第1薬液、第2薬液、第3薬液およびDIW(deionized water)を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)から汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。この基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面(上面)に第1薬液を供給するための第1薬液ノズル4と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第2薬液を供給するための第2薬液ノズル5と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第3薬液を供給して、ウエハWの表面に液盛りするための第3薬液ノズル6と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面にDIWを供給するためのDIWノズル7とを備えている。
【0018】
たとえば、第1薬液、第2薬液および第3薬液の組合せとしては、王水、アンモニア過酸化水素水および硫酸の組合せや、ポリマ除去液として用いられるフッ化アンモン系液、ふっ酸およびバッファードふっ酸の組合せを例示することができる。
スピンチャック3は、ほぼ鉛直に延びるスピン軸8と、スピン軸8の上端にほぼ水平な姿勢で取り付けられたスピンベース9と、スピンベース9の周縁部に配置された複数の挟持部材10とを備えている。複数の挟持部材10は、スピン軸8の中心軸線を中心とする円周上にほぼ等角度間隔で配置されている。各挟持部材10をウエハWの端面に当接させて、複数の挟持部材10でウエハWを挟持することにより、ウエハWがほぼ水平な姿勢で保持され、ウエハWの中心がスピン軸8の中心軸線上に配置される。
【0019】
スピン軸8には、モータ(図示せず)を含むチャック回転機構11から回転力が入力される。この回転力の入力により、スピン軸8が回転し、挟持部材10に挟持されたウエハWがスピンベース9とともにスピン軸8の中心軸線まわりに回転する。このスピン軸8に関連して回転数センサ16が設けられていて、この回転数センサ16によって、スピン軸8の回転数、すなわちウエハWの回転数が検出されるようになっている。
【0020】
スピン軸8には、裏面処理液供給管12が相対回転可能に挿通されている。裏面処理液供給管12の上端は、スピン軸8の上端に設けられた裏面ノズル13に接続されている。また、裏面処理液供給管12には、第1薬液供給ライン(図示せず)から第1薬液が供給される第1薬液裏面側供給管14と、第2薬液供給ライン(図示せず)から第2薬液が供給される第2薬液裏面側供給管15と、DIW供給ライン(図示せず)からDIWが供給されるDIW裏面側供給管17とが接続されている。
【0021】
第1薬液裏面側供給管14には、第1薬液裏面側バルブ18が介装されている。第2薬液裏面側供給管15には、第2薬液裏面側バルブ19が介装されている。DIW裏面側供給管17には、DIW裏面側バルブ21が介装されている。
第2薬液裏面側バルブ19およびDIW裏面側バルブ21が閉じられた状態で、第1薬液裏面側バルブ18が開かれると、第1薬液裏面側供給管14から裏面処理液供給管12に第1薬液が供給される。裏面処理液供給管12に供給された第1薬液は、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13から第1薬液を吐出させることにより、ウエハWの裏面(下面)に第1薬液を供給することができる。
【0022】
第1薬液裏面側バルブ18およびDIW裏面側バルブ21が閉じられた状態で、第2薬液裏面側バルブ19が開かれると、第2薬液裏面側供給管15から裏面処理液供給管12に第2薬液が供給される。裏面処理液供給管12に供給された第2薬液は、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13から第2薬液を吐出させることにより、ウエハWの裏面に第2薬液を供給することができる。
【0023】
第1薬液裏面側バルブ18および第2薬液裏面側バルブ19が閉じられた状態で、DIW裏面側バルブ21が開かれると、DIW裏面側供給管17から裏面処理液供給管12にDIWが供給される。裏面処理液供給管12に供給されたDIWは、裏面処理液供給管12を通して裏面ノズル13に供給され、裏面ノズル13から上方に向けて吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、裏面ノズル13からDIWを吐出させることにより、ウエハWの裏面にDIWを供給することができる。
【0024】
このように、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19およびDIW裏面側バルブ21を選択的に開くことにより、裏面ノズル13から第1薬液、第2薬液およびDIWを選択的に吐出させることができる。
なお、ウエハWの裏面を洗浄する必要がない場合には、裏面処理液供給管12、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19およびDIW裏面側バルブ21が省略される。この場合、スピンチャック3としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0025】
第1薬液ノズル4には、第1薬液供給ライン(図示せず)から第1薬液が供給される第1薬液表面側供給管22が接続されている。この第1薬液表面側供給管22には、第1薬液表面側バルブ23が介装されている。第1薬液表面側バルブ23が開かれると、第1薬液表面側供給管22から第1薬液ノズル4に第1薬液が供給され、第1薬液ノズル4から第1薬液が吐出される。
【0026】
第1薬液ノズル4は、スピンチャック3の上方でほぼ水平に延びるノズルアーム24の先端部に取り付けられている。ノズルアーム24の基端部は、カップ38(後述する)の側方においてほぼ鉛直に延びるアーム支持軸25の上端部に支持されている。アーム支持軸25には、モータ(図示せず)を含むノズル駆動機構26が結合されている。ノズル駆動機構26からアーム支持軸25に回転力を入力して、アーム支持軸25を回動させることにより、スピンチャック3の上方でノズルアーム24を揺動させることができる。
【0027】
スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第1薬液ノズル4が配置された状態で、第1薬液ノズル4から第1薬液を吐出させることにより、ウエハWの表面に第1薬液を供給することができる。そして、この第1薬液ノズル4からウエハWの表面への第1薬液の供給時に、ノズルアーム24を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第1薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0028】
第2薬液ノズル5は、第2薬液を液滴の噴流の形態でウエハWの表面に供給することができる、いわゆる二流体ノズルである。この第2薬液ノズル5には、第2薬液供給ライン(図示せず)から第2薬液が供給される第2薬液表面側供給管27と、窒素ガス供給ライン(図示せず)からの高圧の窒素ガスが供給される窒素ガス供給管28とが接続されている。
【0029】
第2薬液表面側供給管27には、第2薬液表面側バルブ29が介装されている。また、窒素ガス供給管28には、窒素ガスバルブ30が介装されている。第2薬液表面側バルブ29および窒素ガスバルブ30が開かれると、第2薬液表面側供給管27からの第2薬液および窒素ガス供給管28からの窒素ガスが第2薬液ノズル5に供給される。第2薬液ノズル5に供給される第2薬液および窒素ガスは、第2薬液ノズル5内または第2薬液ノズル5外の吐出口近傍で混合される。これにより、第2薬液の微細な液滴の噴流が形成される。
【0030】
第2薬液ノズル5は、スピンチャック3の上方でほぼ水平に延びる第2薬液ノズル用アーム31の先端部に取り付けられている。第2薬液ノズル用アーム31の基端部は、カップ38(後述する)の側方においてほぼ鉛直に延びる第2薬液ノズル用アーム支持軸32の上端部に支持されている。第2薬液ノズル用アーム支持軸32には、モータ(図示せず)を含む第2薬液ノズル用駆動機構33が結合されている。第2薬液ノズル用駆動機構33から第2薬液ノズル用アーム支持軸32に回転力を入力して、第2薬液ノズル用アーム支持軸32を回動させることにより、スピンチャック3の上方で第2薬液ノズル用アーム31を揺動させることができる。
【0031】
スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第2薬液ノズル5が配置された状態で、第2薬液ノズル5から第2薬液の液滴の噴流を吐出させることにより、ウエハWの表面に第2薬液を供給することができる。そして、この第2薬液ノズル5からウエハWの表面への第2薬液の液滴の噴流の供給時に、第2薬液ノズル用アーム31を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第2薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0032】
第3薬液ノズル6には、第3薬液供給ライン(図示せず)から第3薬液が供給される第3薬液供給管34が接続されている。この第3薬液供給管34には、第3薬液バルブ35が介装されている。第3薬液バルブ35が開かれると、第3薬液供給管34から第3薬液ノズル6に第3薬液が供給され、第3薬液ノズル6から第3薬液が吐出される。第3薬液ノズル6は、ノズルアーム24の先端部に取り付けられている。
【0033】
スピンチャック3にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第3薬液ノズル6が配置された状態で、第3薬液ノズル6から第3薬液を吐出させることにより、ウエハWの表面に第3薬液を供給して、ウエハWの表面に液盛りすることができる。そして、この第3薬液ノズル6からウエハWの表面への第3薬液の供給時に、ノズルアーム24を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における第3薬液の着液位置(供給位置)を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0034】
DIWノズル7は、スピンチャック3の上方に、スピンチャック3に対して固定的に配置されている。
DIWノズル7には、DIW供給ライン(図示せず)からDIWが供給されるDIW表面側供給管36が接続されている。このDIW表面側供給管36には、DIW表面側バルブ37が介装されている。DIW表面側バルブ37が開かれると、DIW表面側供給管36からDIWノズル7にDIWが供給され、DIWノズル7からDIWが吐出される。スピンチャック3にウエハWが保持された状態で、DIWノズル7からDIWを吐出させることにより、ウエハWの表面にDIWを供給することができる。
【0035】
また、スピンチャック3は、有底円筒容器状のカップ38内に収容されている。このカップ38の上方には、カップ38に対して昇降可能なスプラッシュガード39が設けられている。これらカップ38およびスプラッシュガード39によって、処理カップが構成されている。
カップ38の底部には、第3薬液およびDIWを廃液するための廃液溝40が、ウエハWの回転軸線(スピン軸8の中心軸線)を中心とする円環状に形成されている。また、カップ38の底部には、廃液溝40を取り囲むように、第1薬液を回収するための第1回収溝41および第2薬液を回収するための第2回収溝42が2重円環状に形成されている。廃液溝40の外側に第2回収溝42が形成され、第2回収溝42の外側に第1回収溝41が形成されている。廃液溝40、第1回収溝41および第2回収溝42には、それぞれ廃液ライン43、第1回収ライン44および第2回収ライン45が接続されている。
【0036】
スプラッシュガード39は、互いに大きさが異なる3つの傘状部材46,47,48を重ねて構成されている。スプラッシュガード39には、たとえば、サーボモータやボールねじ機構などを含むガード昇降機構49が結合されている。このガード昇降機構49によって、スプラッシュガード39をカップ38に対して昇降(上下動)させることができる。
【0037】
各傘状部材46〜48は、ウエハWの回転軸線に対してほぼ回転対称な形状を有している。
傘状部材46は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部51と、円筒部51の上端から延びてウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部52と、円筒部51の途中部からウエハWの回転軸線に近づくほど低くなるように傾斜する廃液案内部50とを備えている。廃液案内部50の下端は、廃液溝40上に位置している。円筒部51の下端は、第2回収溝42上に位置している。また、廃液案内部50および円筒部51は、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0038】
傘状部材47は、傘状部材46を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部53,54と、これら円筒部53,54の上端を連結し、ウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部55とを一体的に備えている。内側(中心側)の円筒部53の下端は、第2回収溝42上に位置し、外側の円筒部54の下端は、第1回収溝41上に位置している。また、円筒部53,54は、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0039】
傘状部材48は、傘状部材47を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部56と、この円筒部56の上端からウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部57とを備えている。円筒部56は、第2回収溝42上に位置しており、スプラッシュガード39が最下方の退避位置に下降したときに、その下端がカップ38の底面に接触しないような長さを有している。
【0040】
傾斜部52,55,57の上端縁は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒面上において、そのウエハWの回転軸線に沿う方向(鉛直方向)に間隔を空けて位置している。これにより、傾斜部55の上端縁と傾斜部57の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第1薬液を進入させるための円環状の第1開口部58が形成されている。また、傾斜部52の上端縁と傾斜部55の上端縁との間には、ウエハWから飛散する第1薬液を進入させるための円環状の第2開口部59が形成されている。さらに、傾斜部52の上端縁と廃液案内部50の下端縁との間には、ウエハWから飛散する第3薬液およびDIWを進入させるための円環状の第3開口部60が形成されている。
【0041】
第1開口部58に進入した第1薬液は、傘状部材47の円筒部54と傘状部材48の円筒部56との間を通して、第1回収溝41に集められる。第1回収溝41に集められた第1薬液は、第1回収ライン44を通して、第1薬液回収処理設備(図示せず)に回収される。
第2開口部59に進入した第2薬液は、傘状部材46の円筒部51と傘状部材47の円筒部53との間を通して、第2回収溝42に集められる。第2回収溝42に集められた第2薬液は、第2回収ライン45を通して、第2薬液回収処理設備(図示せず)に回収される。
【0042】
また、第3開口部60に進入した第3薬液およびDIWは、傘状部材46の傾斜部52、円筒部51および廃液案内部50の内側の面を伝って、廃液溝40に導かれる。廃液溝40に導かれた第3薬液およびDIWは、廃液ライン43を通して、廃液される。
なお、この実施形態では、ウエハWの処理に使用された第3薬液が廃液される場合の構成を取り上げているが、第3薬液を回収する場合には、第1回収溝41を取り囲むように第3回収溝を設けるとともに、傘状部材48に第3回収溝上に位置する円筒部を追加して設け、また、第3回収溝上に位置する円筒部と、円筒部の上端からウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部とを一体的に備える傘状部材を、その傘状部材48を取り囲むように設ければよい。
【0043】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、CPU61およびメモリ62を含む構成のコンピュータ63を備えている。このコンピュータ63には、制御対象として、第1薬液裏面側バルブ18、第2薬液裏面側バルブ19、DIW裏面側バルブ21、第1薬液表面側バルブ23、第2薬液表面側バルブ29、窒素ガスバルブ30、第3薬液バルブ35、DIW表面側バルブ37、チャック回転機構11、ノズル駆動機構26、第2薬液ノズル用駆動機構33およびガード昇降機構49が接続されている。また、コンピュータ63には、回転数センサ16から出力される検出値が入力されるようになっている。
【0044】
さらに、コンピュータ63には、ウエハWの洗浄処理における各処理工程の実行内容を規定するレシピを入力するためのレシピ入力キー64と、計時のためのタイマ65とが接続されている。メモリ62には、次に述べる処理工程において、第1薬液、第2薬液および第3薬液がウエハWに供給されることが許容される回転数範囲が格納された回転数範囲テーブルが記憶されている。
【0045】
レシピ入力キー64は、ユーザが操作可能な位置に配置されている。ユーザは、レシピ入力キー64を操作して、各処理工程におけるウエハWの回転数などの実行内容を入力することにより、レシピを作成することができる。レシピ入力キー64の操作により作成されたレシピは、コンピュータ63のメモリ62に保存される。
CPU61は、メモリ62に保持されたレシピに従って各処理工程が実行されるように、回転数範囲テーブルを参照しつつ、制御対象の各部の動作を制御する。
【0046】
基板処理装置1の処理工程には、次の(1)〜(7)の処理工程が含まれる。これらの処理工程をレシピで規定された順序で実行することによって、ウエハWの洗浄処理が実施される。
(1)第1薬液表面処理工程
第1薬液表面処理工程は、第1薬液ノズル4からウエハWの表面に第1薬液を供給して、ウエハWの表面を第1薬液により処理する工程である。この第1薬液表面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第1開口部58が対向する第1開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、1500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第1薬液ノズル4から第1薬液が供給される。また、この第1薬液の供給時には、ノズルアーム24が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第1薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第1薬液がむらなく供給される。ウエハWの表面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第1開口部58が対向しているので、ウエハWから飛散する第1薬液は、第1開口部58に進入して、第1回収溝41へと導かれる。
【0047】
(2)第2薬液表面処理工程
第2薬液表面処理工程は、第2薬液ノズル5からウエハWの表面(上面)に第2薬液を供給して、ウエハWの表面を第2薬液により処理する工程である。この第2薬液表面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第2開口部59が対向する第2開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、800rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第2薬液ノズル5から第2薬液の液滴の噴流が供給される。また、この第2薬液の供給時には、第2薬液ノズル用アーム31が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第2薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第2薬液がむらなく供給される。ウエハWの表面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第2開口部59が対向しているので、ウエハWから飛散する第2薬液は、第2開口部59に進入して、第2回収溝42へと導かれる。
【0048】
(3)第3薬液処理工程
第3薬液処理工程は、スピンチャック3によって水平に保持されたウエハWの表面(上面)に第3薬液ノズル6から第3薬液を供給してウエハWの表面に液盛りし、そのウエハWの表面で第3薬液の液膜を保持しつつ処理を進める工程である。この第3薬液処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第3開口部60が対向する第3開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の低回転数(たとえば、20rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面に第3薬液ノズル6から第3薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された第3薬液は、ウエハWの表面の全域に拡がり、ウエハWの表面上に第3薬液の液膜が形成される。また、この第3薬液の供給時には、ノズルアーム24が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における第3薬液の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。この結果、ウエハWの表面の全域に第3薬液がむらなく供給される。その結果、第3薬液の消費量を抑えつつウエハWの表面に第3薬液による処理を施すことができる。
【0049】
(4)表面リンス工程
表面リンス工程は、DIWノズル7からウエハWの表面にDIWを供給して、ウエハWの表面をDIWで水洗する工程である。この表面リンス工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第3開口部60が対向する第3開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、1500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの表面の中央部にDIWノズル7からDIWが供給される。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にDIWがむらなく供給される。ウエハWの表面の周縁に達したDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に傘状部材46の傾斜部51が対向しているので、ウエハWから飛散するDIWは、ウエハWから飛散する第3薬液は、第3開口部60へ進入して、廃液溝40へと導かれる。
【0050】
(5)第1薬液裏面処理工程
第1薬液裏面処理工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面に第1薬液を供給して、ウエハWの裏面を第1薬液により処理する工程である。この第1薬液裏面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第1開口部58が対向する第1開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、1500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13から第1薬液が供給される。ウエハWの裏面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域に第1薬液がむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達した第1薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第1開口部58が対向しているので、ウエハWから飛散する第1薬液は、第1開口部58に進入して、第1回収溝41へと導かれる。
【0051】
(6)第2薬液裏面処理工程
第2薬液裏面処理工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面に第2薬液を供給して、ウエハWの裏面を第2薬液により処理する工程である。この第2薬液裏面処理工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第2開口部59が対向する第2開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、800rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13から第2薬液が供給される。ウエハWの裏面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域に第2薬液がむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達した第2薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第2開口部59が対向しているので、ウエハWから飛散する第2薬液は、第2開口部59に進入して、第2開口部59に進入して、第2回収溝42へと導かれる。
【0052】
(7)裏面リンス工程
裏面リンス工程は、裏面ノズル13からウエハWの裏面にDIWを供給して、ウエハWの裏面をDIWで水洗する工程である。この裏面リンス工程では、スピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に第3開口部60が対向する第3開口部対向位置に、スプラッシュガード39が位置している。そして、スピンチャック3によりウエハWが所定の回転数(たとえば、1500rpm)で回転されつつ、そのウエハWの裏面の中央部に裏面ノズル13からDIWが供給される。ウエハWの裏面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの中央部から周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの裏面の全域にDIWがむらなく供給される。ウエハWの裏面の周縁に達したDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。このとき、ウエハWの端面に第3開口部60が対向しているので、ウエハWから飛散するDIWは、第3開口部60に進入して、廃液溝40へと導かれる。
【0053】
図3は、回転数範囲テーブルの一例を示す図である。
前述の各処理工程では、各処理工程の処理内容や、処理に用いられる処理液(第1薬液、第2薬液、第3薬液およびDIW)の粘性を考慮して、対応する開口部(第1開口部58、第2開口部59および第3開口部60)に各処理液を上手く進入させることができるように、スプラッシュガード39の高さ位置と、各処理ウエハWの回転数範囲とが定められている。そして、メモリ62には、ウエハWの適正な回転数範囲が、ウエハWの端面に対向する開口部(第1開口部58、第2開口部59および第3開口部60)と対応付けられて、メモリ62の回転数範囲テーブルに格納されている。
【0054】
図3に示すように、第1薬液表面処理工程および第1薬液裏面処理工程では、回転数範囲テーブルに格納された回転数範囲は1000〜2000rpmである。この回転数範囲内の回転数でウエハWを回転させると、ウエハWから飛散する第1薬液を第1開口部58に進入させることができる。第2薬液表面処理工程および第2薬液裏面処理工程では、回転数範囲テーブルに格納された回転数範囲は500〜1000rpmである。この回転数範囲内の回転数でウエハWを回転させると、ウエハWから飛散する第2薬液を第2開口部59に進入させることができる。第3薬液処理工程では、回転数範囲テーブルに格納された回転数範囲は15〜50rpmである。この回転数範囲内の回転数でウエハWを回転させると、ウエハWの表面(上面)に第3薬液を良好に液盛りさせることができるとともに、ウエハWの表面からこぼれる第3薬液を第3開口部60に良好に進入させることができる。
【0055】
しかしながら、何らかの異常によって、ウエハWがレシピに定められた回転数と大きく異なる回転数で回転されると、ウエハWから飛散する薬液の方向(薬液の飛散方向)が変化する。たとえば、ウエハWへの第1薬液の供給時に、ウエハWの回転数が1000rpm未満に低下すると、第1薬液に作用する遠心力が小さくなるために、ウエハWからの第1薬液の飛散方向が斜め下側に変化する。その結果、ウエハWから飛散する第1薬液が第2開口部59に進入するおそれがある。
【0056】
たとえば、第1薬液が王水であり、第2薬液がアンモニア過酸化水素水(SC1:NH4OH+H22+H2O)である場合、第1薬液が第2開口部59に進入すると、第2開口部59内で第1薬液と第2薬液とが混触し、激しい発熱反応により突沸を生じたり、反応生成物として塩素ガスが発生したりする。
そこで、この基板処理装置1では、ウエハWがレシピに定められた回転数と大きく異なる回転数で回転された状態で、ウエハWに第1薬液、第2薬液および第3薬液が供給されるのを防止するために、以下のインターロック処理が実行される。
【0057】
図4は、各処理工程の実施に関連して実行されるインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
このインターロック処理は、メモリ62に保持されたレシピに従って一連の洗浄処理が行われる過程において、第1薬液表面処理、第1薬液裏面処理、第2薬液表面処理、第2薬液裏面処理および第3薬液処理の処理工程の実施に関連してそれぞれ実行される。
【0058】
以下、第1薬液表面処理が実行される場合を例にとって、インターロック処理を説明する。
処理工程が開始されると(ステップS1でYES)、CPU61は、チャック回転駆動機構11を制御して、スピンチャック3の回転数をレシピによって定められた回転数(たとえば1200rpm)に上昇/下降させる(ステップS2)。これにより、ウエハWがレシピで定められた回転数で回転される。また、CPU61は、ガード昇降機構49を制御して、スプラッシュガード39が第1開口部対向位置に位置するように上昇/下降させる(ステップS3)。
【0059】
ウエハWの回転数がレシピで定められた回転数に達し、スプラッシュガード39が第1開口部対向位置に位置すると(ステップS4)、CPU61は、回転数センサ16から出力された検出値を取得する(ステップS5)。次いで、CPU61は、回転数範囲テーブルを参照し(ステップS6)、回転数センサ16から出力された検出値が、回転数範囲テーブルに格納された回転数範囲、すなわち、1000〜2000rpmの範囲内か否かが調べられる(ステップS7)。
【0060】
回転数センサ16から出力された検出値が、その回転数範囲外であると(ステップS7でNO)、CPU61は、ウエハWへの第1薬液の供給ができないと判断して、第1薬液表面側バルブ23の開成を禁止し(ステップS9)、その第1薬液表面側バルブ23の開成が禁止された旨の警報を出力した後(ステップS10)、このインターロック処理を終了する。
【0061】
一方、回転数センサ16から出力された検出値が、その回転数範囲内であれば(ステップS7でYES)、CPU61は、ウエハWへの第1薬液の供給が可能と判断して、第1薬液表面側バルブ23を開成し(ステップS8)、ウエハWの表面に第1薬液を供給させる。また、CPU61は、ノズル駆動機構26を駆動して、ノズルアーム24を所定の角度範囲内で揺動させる。これにより、ウエハWの表面が第1薬液によって処理される。
【0062】
第1薬液の供給中において、CPU61は、回転数センサ16から出力された検出値を監視している(ステップS7)。そして、回転センサ16から出力された検出値が回転数範囲外となると(ステップS7でNO)、CPU61は、第1薬液表面側バルブ23を閉じるとともに、その後の開成を禁止し(ステップS9)、その第1薬液表面側バルブ23の開成が禁止された旨の警報を出力した後(ステップS10)、このインターロック処理を終了する。
【0063】
第1薬液の供給中に回転センサ16からの出力された検出値が回転数範囲外とならずに処理工程時間が経過すると(ステップS11でYES)、CPU61は、第1薬液表面側バルブ23を閉じて、このインターロック処理を終了する。
以上のように、回転数センサ16によって検出されるウエハWの回転数が回転数範囲テーブルに格納されている回転数範囲外であると、第1薬液表面側バルブ23の開成が禁止される。ウエハWの適正な回転数範囲が回転数範囲テーブルに格納されているので、ウエハWから飛散する第1薬液を第1開口部58だけに進入させることができる。
【0064】
なお、第1薬液表面処理は、前述した第1薬液裏面処理と同時に実行することができる。この場合、インターロック処理において、ウエハWの回転数が回転数範囲外であることが検出されると、第1薬液表面側バルブ23だけでなく、第1薬液裏面側バルブ18についてもその開成が禁止される。
また、第2薬液表面処理の実施に関連して実行されるインターロック処理では、ウエハWの回転数が回転数範囲外であることが検出されると、第2薬液表面側バルブ19の開成が禁止される。第2薬液裏面処理の実施に関連して実行されるインターロック処理では、ウエハWの回転数が回転数範囲外であることが検出されると、第2薬液裏面側バルブ24の開成が禁止される。さらに、第3薬液表面処理の実施に関連して実行されるインターロック処理では、ウエハWの回転数が回転数範囲外であることが検出されると、第3薬液バルブ35の開成が禁止される。
【0065】
この基板処理装置1によれば、ウエハWから飛散する第1薬液を第1開口部58に良好に進入させることができ、ウエハWから飛散する第2薬液を第2開口部59に良好に進入させることができる。また、ウエハWからこぼれる第3薬液を第3開口部60に進入させることができる。これにより、スプラッシュガード39やカップ38における第1薬液、第2薬液および第3薬液の混触の発生を確実に防止することができる。
【0066】
また、従来の基板処理装置では、洗浄処理の全期間を通じて最低回転数が定められていて、それ以下の回転数での処理が禁止されている。ウエハWの表面(上面)に第3薬液を液盛りさせる工程を含む場合には、その最低回転数がたとえば15rpmに定められているが、第1薬液を用いた処理や第2薬液を用いた処理では、回転数が15rpmを超えていれば、ウエハWに第1薬液を供給することができる。しかし、前述したように、第1薬液の供給時にウエハWが1000rpm未満で回転すると、ウエハWから飛散する第1薬液が第2開口部59に混入し、第1薬液と第2薬液との混触が生じるおそれがある。
【0067】
この基板処理装置1によれば、各薬液に対応して回転数範囲が設けられている。これにより、ウエハWの表面に第3薬液の液盛りによる処理を良好に施すことができるとともに、スプラッシュガード39やカップ38における第1薬液、第2薬液および第3薬液の混触の発生を確実に防止することができる。
図5は、レシピ可否判断処理の流れを示すフローチャートである。
【0068】
前述の説明においては、レシピ入力キー64の操作により作成されたレシピは、コンピュータ63のメモリ62に記憶され、このメモリ62に保持されたレシピに従って一連の洗浄処理が行われる過程において、各処理工程の実施に関連してインターロック処理が実行されるとした。しかしながら、レシピ入力キー64の操作によるレシピの作成後に、図7に示すレシピ可否判断処理が実行されて、その作成されたレシピにより定められる指示回転数が、回転数範囲外の回転数を規定していないか否かが調べられ、そのような処理工程順を規定していない場合にのみ、レシピがメモリ62に記憶されて保存されるようにしてもよい。
【0069】
レシピ可否判断処理では、まず、CPU61は、レシピ入力キー64から入力されたレシピを読み込み、レシピに規定される各処理工程におけるスピンチャック3の指示回転数をチェックする(ステップS21)。次いで、CPU61は、回転数範囲テーブルを参照し(ステップS22)、すべての処理工程について、指示回転数が回転数範囲テーブルに格納された回転数範囲内であるかどうかを判断する(ステップS23)。少なくとも1つの処理工程において、指示回転数が回転数範囲外である場合には(ステップS23でYES)、CPU61は、レシピ入力キー64から入力されたレシピを廃棄する(ステップS24)。
【0070】
一方、すべての処理工程について、指示回転数が回転数範囲テーブルの回転数範囲新規開バルブの開成が禁止されなかった場合には(ステップS23でYES)、CPU61は、レシピ入力キー64から入力されたレシピを、すべての処理工程において回転数範囲外の回転数を規定していないものであると判断して、メモリ62に記憶させて保存する(ステップS25)。
【0071】
このレシピ可否判断処理が行われることにより、回転数範囲外の回転数を規定したレシピのメモリ62への保存が防止される。
この実施形態では、レシピに定められている回転数が回転数記憶テーブルに格納されている回転数範囲外であるときには、そのレシピのメモリ62への記憶が禁止される。このため、回転数記憶テーブルにウエハWの適正な回転数範囲が記憶されているので、ウエハWの回転数が適正に定められたレシピに基づいてウエハWを回転させることができる。これにより、スプラッシュガード39やカップ38における第1薬液、第2薬液および第3薬液の混触の発生を確実に防止することができる。
【0072】
さらに、第1薬液、第2薬液および第3薬液の3種の薬液を使用可能な構成を取り上げたが、第1薬液および第2薬液の2種の薬液を使用可能な構成の基板処理装置に本発明を適用することもできる。
また、回転数センサ16によってスピン軸8の回転数を計測することにより、スピンチャック3(ウエハW)の回転数を検出するものとして説明したが、チャック回転駆動機構11がステッピングモータを含むときには、そのステッピングモータのステップ数に基づいて、スピンチャック3の回転数が検出されていてもよい。
【0073】
また、第3薬液ノズル6を、所定の角度範囲内で揺動されるノズルアーム24の先端に配置する構成としたが、第3薬液ノズル6はスキャンノズルでなく固定ノズルであってもよい。さらに、第3薬液ノズル6は、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第3薬液を供給して、ウエハWの表面に液盛りするためのものであるとして説明したが、ウエハWを高速で回転させつつウエハの表面に第3薬液ノズル6から第3薬液を供給させる構成であってもよい。
【0074】
さらに、第2薬液が液滴の噴流の状態でウエハWに供給される構成を取り上げたが、第2薬液ノズル5がストレートノズルとされて、第1薬液が連続流の状態でウエハWに供給されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】回転数範囲テーブルの一例を示す図である。
【図4】各処理工程の実施に関連して実行されるインターロック処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】レシピ可否判断処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
16 回転数センサ
18 第1薬液裏面側バルブ
19 第2薬液裏面側バルブ
23 第1薬液表面側バルブ
29 第2薬液表面側バルブ
35 第3薬液バルブ
38 カップ
39 スプラッシュガード
61 CPU
62 メモリ
63 コンピュータ
64 レシピ入力キー
65 タイマ
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しつつ回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する薬液を進入させるための開口部を有する処理カップと、
前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数の範囲が記憶された回転数範囲記憶手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記薬液供給手段による薬液の供給時に、前記回転数検出手段により検出される基板の回転数を監視し、その回転数が前記回転数範囲記憶手段に記憶されている回転数範囲外である場合、前記薬液供給手段による薬液の供給を禁止する供給禁止手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
基板を保持しつつ回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する薬液を進入させるための開口部を有する処理カップと、
前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数範囲が記憶された回転数範囲記憶手段と、
前記薬液供給手段による薬液の供給時における基板の回転数を定めたレシピを入力するレシピ入力手段と、
前記レシピ入力手段から入力されたレシピを記憶するためのレシピ記憶手段と、
前記レシピ入力手段から入力されたレシピを参照し、そのレシピで定められている回転数が前記回転数範囲記憶手段に記憶されている回転数範囲外である場合、前記レシピ入力手段から入力されたレシピの前記レシピ記憶手段への記憶を禁止するレシピ記憶禁止手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項3】
前記薬液供給手段は、前記基板回転手段によって回転される基板に第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、前記基板回転手段によって回転される基板に前記第1薬液とは異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段とを含み、
前記回転数範囲記憶手段には、前記第1薬液供給手段による第1薬液の供給時における基板の第1回転数範囲、および、前記第2薬液供給手段による第2薬液の供給時における基板の第2回転数範囲が記憶されていることを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理カップの開口部は、前記基板回転手段による基板の回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第1薬液を進入させるための第1開口部と、前記回転軸線と平行な方向に前記第1開口部と異なる位置において前記回転軸線を取り囲むように形成され、基板から飛散する第2薬液を進入させるための第2開口部とを含み、
前記第1回転数範囲は、前記基板回転手段によって回転される基板から飛散する第1薬液を前記第1開口部に進入させることができる回転数範囲であり、
前記第2回転数範囲は、前記基板回転手段によって回転される基板から飛散する第2薬液を前記第2開口部に進入させることができる回転数範囲であることを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板回転手段によって回転される基板に第3薬液を供給する第3薬液供給手段を、さらに備え、
前記基板回転手段は、基板をほぼ水平な姿勢に保持して、鉛直軸線まわりに回転させるものであり、
前記回転数範囲記憶手段には、前記第3薬液供給手段による第3薬液の供給時における基板の第3回転数範囲が記憶され、
前記回転数範囲記憶手段に記憶される前記第3回転数範囲は、前記第3薬液供給手段からの第3薬液を基板の上面に液盛りすることができる回転数範囲であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−252007(P2008−252007A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94460(P2007−94460)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】