説明

基板処理装置

【課題】処理カップ内における気液分離効率を低下させることなく、処理カップからの薬液のミストの漏出を防止または抑制することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理カップ25の上段には、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bと第3構成部材23の上端部23bとの間に、ウエハWの端面に対向し、第1薬液を捕獲する第1薬液捕獲口としての第3開口57が形成される。処理カップ25内の下段には、傾斜部41の先端部と第4構成部材24の傾斜部46の先端部との間に、第1雰囲気捕獲口58が形成される。第3開口57と第1雰囲気捕獲口58との上下方向における中間位置(中段)に、処理カップ25内に下降気流を発生するための羽根部材61が配置されている。羽根部材61は、スピンチャック3のスピンベース8に、一体回転可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板の表面に対して処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程には、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この種の基板処理装置の中には、処理液の消費量の低減を図るために、基板の処理に用いた後の処理液を回収して、その回収した処理液を以降の処理に再利用するように構成されたものがある。
【0003】
複数種の処理液を個別回収可能な構成の基板処理装置は、たとえば、下記特許文献1に開示されている。この基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックを収容する処理カップとを備えている。処理カップは、それぞれ独立して昇降可能な3つの構成部材(第1〜第3構成部材)を備えている。
【0004】
第1構成部材は、スピンチャックの周囲を取り囲む平面視円環状の底部と、この底部から立ち上がる第1案内部とを一体的に備えている。第1案内部は、中心側(基板の回転軸線に近づく方向)に向かって斜め上方に延びている。底部には、基板の処理に用いられた後の処理液などを廃液するための廃液溝が第1案内部の内方に形成されており、さらに、この廃液溝を取り囲むように、基板の処理のために用いられた後の処理液を回収するための内側回収溝が第1案内部の外方に形成されている。廃液溝には、廃液処理設備へと処理液を導くための廃液ドレンが接続されており、内側回収溝には、回収処理設備へと処理液を導くための回収ドレンが接続されている。
【0005】
第2構成部材は、スピンチャックの周囲を取り囲む平面視円環状の底部と、この底部から立ち上がり、第1案内部の外側に位置する第2案内部とを一体的に備えている。第2案内部は、内側回収溝上に位置した円筒状の下端部と、その下端部の上端から中心側(基板の回転軸線に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる上端部とを有している。底部には、第2案内部よりも外側において、基板の処理のために用いられた後の処理液を回収するための外側回収溝が、内側回収溝を取り囲むように形成されている。外側回収溝には、回収処理設備へと処理液を導くための回収ドレンが接続されている。第2案内部は、第1構成部材の第1案内部と上下方向に重なるように設けられ、第1構成部材と第2構成部材とが最も近接した状態で、第1案内部に対してごく微小な隙間を保って近接するように形成されている。
【0006】
第3構成部材は、第2案内部の外側に位置する第3案内部を備えている。第3案内部は、外側回収溝上に位置した下端部と、その下端部の上端から中心側(基板の回転軸線に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる上端部とを有している。第3案内部は、第2構成部材の第2案内部と上下方向に重なるように設けられ、第2構成部材と第3構成部材とが最も近接した状態で、第2案内部に対してごく微小な隙間を保って近接するように形成されている。
【0007】
第1構成部材には、たとえば、ボールねじ機構などを含む第1昇降駆動機構が結合されている。第2構成部材には、たとえば、ボールねじ機構などを含む第2昇降駆動機構が結合されている。第3構成部材には、たとえば、ボールねじ機構などを含む第3昇降駆動機構が結合されている。第1〜第3昇降駆動機構によって、3つの構成部材を個別に昇降させることができるようになっている。
【0008】
このような構成の基板処理装置では、第1〜第3案内部の各上端部を基板よりも上方に位置させ、第1案内部によって処理液を受ける状態にすることができる。また、第1案内部の上端を基板よりも下方に位置させるとともに、第2および第3案内部の各上端部を基板よりも上方に位置させることにより、第2案内部によって処理液を受ける状態(第1回収状態)とすることができる。この第1回収状態では、第1案内部の上端部と第2案内部の上端部との間に、基板の端面に対向する第1回収口が形成される。第1回収口から進入した処理液は、第2案内部材の案内によって第1回収溝に回収される。さらにまた、第1および第2案内部の各上端部を基板よりも下方に位置させるとともに、第3案内部の上端部を基板よりも上方に位置させ、この第3案内部によって基板からの処理液を受ける状態(第2回収状態)とすることができる。この第2回収状態では、第2案内部の上端部と第3案内部の上端部との間に、基板の端面に対向する第2回収口が形成される。第2回収口から進入した処理液は、第3案内部材の案内によって第2回収溝に回収される。
【0009】
スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面に第1薬液を供給することにより、基板の表面に第1薬液による処理を施すことができる。基板の表面に供給された第1薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の周縁から側方へ飛散する。このとき、第1回収口を基板の端面に対向させておけば、基板の周縁から飛散する第1薬液を回収することができる。また同様に、基板の表面に第2薬液を供給するときに、第2回収口を基板の端面に対向させておけば、基板から飛散する第2薬液を回収することができる。こうして、第1および第2薬液を分離して回収することができる。
【0010】
また、スピンチャックによって基板を回転させつつ、基板の表面にリンス液(処理液)を供給することにより、基板の表面をリンス液で洗い流すリンス処理を行うことができる。このとき、第1案内部を基板の端面に対向させておけば、その基板の表面を洗い流したリンス液を、廃液溝に集めることができ、廃液溝から廃液ドレンを通して廃棄することができる。これにより、回収される第1および第2薬液に対して使用済みリンス液が混入することを防止できる。
【0011】
リンス処理の後には、スピンチャックを高速回転させることによって、基板表面の液成分を遠心力によって基板外に排除するためのスピンドライ処理が行われる。
基板およびスピンチャックの回転によって、スピンチャック周辺の気流が乱れ、処理カップ内に上昇気流が生じるおそれがある。薬液処理時に、その上昇気流によって薬液のミストが舞い上がり、この薬液のミストが処理カップ外に漏れ出ると、処理室の内壁や処理室内の部材が薬液ミストによって汚染される。これが処理室内で乾燥すると、パーティクルとなって雰囲気中に浮遊し、以後に処理される基板を汚染するおそれがある。そこで、処理室の天面にFFU(ファンフィルタユニット)を設けるとともに、廃液溝の底面に排気口を形成して、FFUから基板に向けてクリーンエアの下降気流を供給しつつ、排気口から排気を行うことにより、基板の周囲に排気口へと向かう下降気流を形成し、薬液ミストの舞い上がりを防止する構成が採用される。
【特許文献1】特開2006−286834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
薬液処理時のみならず、リンス処理時およびスピンドライ処理時においても、処理液雰囲気が処理カップ外に流出すれば、程度の多少はあるとしても、同様の問題が生じる。
そこで、基板を最も高速で回転させるスピンドライ処理中に、処理液ミストが処理カップ外に漏れ出さないように、処理カップ底部の排気口からの排気には、大きな排気能力が必要とされる。
【0013】
ところが、この場合、スピンチャックによる基板の回転がそれほど高くない薬液処理時には、スピンチャック等の回転によって引き起こされる上昇気流が小さいので、処理カップ内に強い下降気流が形成されることになる。したがって、第1回収口または第2回収口で回収すべき薬液(とくに薬液のミスト)が、処理カップ内の下降気流に乗って、高い比率で廃液溝に導かれるようになる。そのため、気液分離効率が悪く、薬液の回収効率が悪くなる。
【0014】
そればかりでなく、排気口へと薬液が入り込むことによって、排気経路が薬液で汚染されるという問題もある。しかも、異なる種類の薬液が共通の排気経路に導かれることにより、排気経路内壁における薬液の結晶化が無視できなくなり、排気経路のメンテナンスが必要になる。ところが、排気経路は、処理カップ底部に配置されることから、排気経路内壁を洗浄するためのメンテナンスは、必ずしも容易ではない。
【0015】
そこで、この発明の目的は、処理カップ内における気液分離効率を低下させることなく、処理カップからの薬液のミストの漏出を防止または抑制することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持しつつ回転させるための基板回転手段(3)と、前記基板回転手段により回転される基板に対して、薬液を供給する薬液供給手段(4,5)と、前記基板回転手段の周囲を取り囲み、当該基板回転手段を収容する処理カップ(25)と、前記処理カップの上段に形成されて、前記基板回転手段により回転される基板から側方に向けて飛散する薬液を捕獲する薬液捕獲部(56,57)と、前記処理カップ内の中段に配置されて、前記処理カップ内に下降気流を生じさせる下降気流発生手段(61,71)と、前記処理カップ内の下段に形成されて、前記処理カップ内の雰囲気を捕獲するための雰囲気捕獲部(58,59)とを含む、基板処理装置(1,70)である。
【0017】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理カップ内の中段に設けられた下降気流発生手段によって、処理カップ内に下降気流が形成される。これにより、処理カップ内の底部からの排気を過度に強く行わなくても、処理カップ内での上昇気流の発生を抑制することができる。これにより、薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ外に漏れ出ることを防止または抑制することができる。すなわち、処理カップ内の底部における強力な排気によって処理カップ内全域に強い下降気流を形成する必要がないので、処理カップの上段に形成された薬液捕獲部に高効率で薬液を捕獲することができ、処理カップ内の下段に形成された雰囲気捕獲部に導かれる薬液の量を低減できる。そして、処理カップ内の中段に設けられた下降気流発生手段によって、上昇気流の発生を抑制できるとともに、処理カップ内の下段に設けられた雰囲気捕獲部へとカップ内雰囲気を送り込むことができる。こうして、良好な気液分離効率を実現でき、薬液の回収効率が高まり、かつ、薬液による雰囲気捕獲部の汚染を最小限に抑制できる。
【0018】
前記下降気流発生手段によって形成される下降気流は、基板回転手段による基板の回転に伴って生じる処理カップ内の上昇気流をキャンセルするのに必要充分な強さの気流であることが好ましい。
また、上下に設けられる薬液捕獲部と雰囲気捕獲部との間に、下降気流発生手段が配置される。これにより、スペースの限られた処理カップ内に、下降気流発生手段を効率的に配置することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、前記薬液供給手段が、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液を供給する第1薬液供給手段(4)と、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液と種類の異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段(5)とを含み、前記薬液捕獲部が、前記第1薬液を捕獲するための第1薬液捕獲口(57)と、前記第2薬液を捕獲するための第2薬液捕獲口(56)とを含み、前記雰囲気捕獲部が、前記第1薬液を含む雰囲気を捕獲するための第1雰囲気捕獲口(58)と、前記第2薬液を含む雰囲気を捕獲するための第2雰囲気捕獲口(59)とを含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0020】
この構成によれば、第1薬液および第2薬液が互いに異なる薬液捕獲口に捕獲されるのに加え、第1薬液のミストを含む雰囲気と、第2薬液のミストを含む雰囲気とが、互いに異なる雰囲気捕獲口に捕獲される。
処理カップ内の雰囲気を、第1薬液を用いた処理時と第2薬液を用いた処理時とで、共通の雰囲気捕獲部で捕獲すると、第1薬液のミストと第2薬液のミストとが混触する。この混触による化学反応により結晶が析出すると、雰囲気捕獲部およびこれに接続される配管などに、析出した結晶が付着するおそれがある。
【0021】
これに対し、第1薬液を含む雰囲気と、第2薬液を含む雰囲気とを互いに異なる雰囲気捕獲口に捕獲する構成では、第1薬液のミストと第2薬液のミストとの混触を防止することができる。これにより、各雰囲気捕獲部や各雰囲気捕獲口に接続される配管などに結晶が付着することを抑制できるから、メンテナンスの手間を軽減できる。
請求項3記載の発明は、前記第1雰囲気捕獲口および前記第2雰囲気捕獲口をそれぞれ開閉するための雰囲気捕獲口開閉手段(54)と、前記第1薬液供給手段から前記基板回転手段により回転される基板に対して第1薬液が供給されるときには、前記雰囲気捕獲口開閉手段を制御して、前記第1雰囲気捕獲口を開かせ、かつ、前記第2雰囲気捕獲口を閉じさせ、前記第2薬液供給手段から前記基板回転手段により回転される基板に対して第2薬液が供給されるときには、前記雰囲気捕獲口開閉手段を制御して、前記第2雰囲気捕獲口を開かせ、かつ、前記第1雰囲気捕獲口を閉じさせる制御手段(60,74)とをさらに含む、請求項2記載の基板処理装置である。
【0022】
この構成によれば、第1雰囲気捕獲口を開き、かつ第2雰囲気捕獲口を閉じた状態で、基板回転手段に保持された基板に第1薬液が供給される。基板回転手段の周辺の第1薬液のミストを含む雰囲気は、下降気流発生手段により生成される下降気流によって、第1雰囲気捕獲口に導かれる。このとき、第1薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第2雰囲気捕獲口に導かれることはない。
【0023】
また、第1雰囲気捕獲口を閉じ、かつ第2雰囲気捕獲口を開いた状態で、基板回転手段に保持された基板に第2薬液が供給される。処理カップ内の第2薬液のミストを含む雰囲気は、下降気流発生手段により生成される下降気流によって、第2雰囲気捕獲口に導かれる。このとき、第2薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第1雰囲気捕獲口に導かれることはない。
【0024】
これにより、第1薬液のミストと第2薬液のミストとの混触を確実に防止することができる。
請求項4記載の発明は、前記下降気流発生手段が、前記基板回転手段の回転軸線(C)まわりに回転可能に設けられて、当該回転軸線まわりの回転により下降気流を生じさせる羽根部材(61,71)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0025】
この構成によれば、羽根部材が基板回転手段による回転軸線まわりに回転されることにより、処理カップ内に下降気流が形成される。これにより、比較的簡単な構成で、処理カップ内に下降気流を形成することができる。
請求項5記載に記載のように、前記羽根部材を、前記基板回転手段による基板の回転に同期して回転させる同期回転手段(7)をさらに含むことが好ましい。
【0026】
この構成によれば、羽根部材が、基板回転手段による基板の回転に同期して回転する。基板回転手段による基板の回転に伴って処理カップ内に生じる上昇気流は、基板の回転速度が大きいほど強くなる。一方、羽根部材の回転に伴って処理カップ内に形成される下降気流は、この羽根部材と同期して回転する基板の回転速度が大きいほど強くなる。したがって、羽根部材が基板回転手段による基板の回転と同期して回転する構成によって、基板の回転速度に応じて強さの調整された下降気流を形成することができる。そのため、薬液処理時において、カップ内部の上昇気流を抑制でき、かつ、基板から外方に飛散する処理液を雰囲気捕獲部へと強く誘導することのない適度な強さの下降気流をカップ内に形成することができる。
【0027】
羽根部材は、当該羽根部材の回転により形成される下降気流が、その羽根部材と同じ回転速度で基板を回転させることにより生じる上昇気流をキャンセルするのに必要充分な強さとなるように設計することが好ましい。たとえば、このような強さの下降気流が形成されるように、羽根部材に備えられる回転羽根(63)の形状、サイズ、角度および枚数等を適宜選択すればよい。これにより、基板回転手段による基板の回転速度に拘わらず、羽根部材の回転により形成される下降気流で、基板の回転による上昇気流の発生を抑制することができる。そして、処理カップ内に適度な強さの安定した下降気流を形成することができる。
【0028】
基板回転手段が基板と同期回転する回転部材(8)を有するものである場合、羽根部材は、当該回転部材と一体回転可能に設けられてもよい。このとき、羽根部材を回転部材と一体的に設ければ、スペースの限られた処理カップ内に、羽根部材を効率的に配置することができる。
また、請求項6記載に記載のように、前記羽根部材を、前記基板回転手段による基板の回転に非同期状態で回転させる非同期回転手段(73)をさらに含んでもよい。この場合、羽根部材を、基板回転手段による基板の回転停止より遅いタイミングで回転停止させてもよい。これにより、基板の回転停止後も処理カップ内に引き続き下降気流が形成された状態を維持できるから、処理カップ内から、薬液のミストをより確実に排除することができる。これにより、処理後の清浄な基板が基板の周辺の雰囲気により汚染されることを、より効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を概念的に示す断面図である。
基板処理装置1は、クリームルーム内に設置され、第1薬液、第2薬液およびDIW(脱イオン化された水)を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)から汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。この基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線CまわりにウエハWを回転させる基板回転手段としてのスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面(上面)に第1薬液を供給するための第1薬液供給手段としての第1薬液ノズル4と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に第2薬液を供給するための第2薬液供給手段としての第2薬液ノズル5と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面にDIWを供給するためのDIWノズル6と、スピンチャック3を収容する処理カップ25とを備えている。
【0030】
処理室2の天面には、処理室2内にクリーンエアの下降気流を供給するための図示しないFFU(ファンフィルタユニット)が設けられている。このFFUは、ファンおよびフィルタを上下に積層し、ファンによって取り入れられるクリーンルーム内の清浄空気をフィルタによってさらに清浄化して処理室2内に供給する構成になっている。
スピンチャック3は、モータ(同期回転手段)7と、このモータ7の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース8と、スピンベース8の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材9とを備えている。これにより、スピンチャック3は、複数個の挟持部材9によってウエハWを挟持した状態で、モータ7の回転駆動力によってスピンベース8を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース8とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。スピンベース8は、正逆双方に向けて回転可能であるが、後述する第1薬液処理、第2薬液処理、リンス処理およびスピンドライ処理において、所定の処理時回転方向(図3(a)〜図3(d)において矢印で示す方向)に回転される。モータ7の周囲は、筒状のカバー部材13によって包囲されている。このスピンベース8に、羽根部材61が一体回転可能に設けられている。
【0031】
羽根部材61は、複数枚の回転羽根63と、この複数枚の回転羽根63を連結する連結部材62とを備えている。連結部材62は、スピンベース8の周縁部から下方に向けて延びて、回転軸線Cを中心とする円筒状に形成されており、スピンチャック3のカバー部材13の上方外周部を包囲している。この羽根部材61は、処理カップ25の上段に形成される後述する第3開口57および第2開口56(図3(c)および図3(d)参照)と、処理カップ25内の下段に形成される第1雰囲気捕獲口58および第2雰囲気捕獲口59との上下方向における中間位置(中段)に配置されている。羽根部材61をスピンチャック3を包囲する環状の領域に配置することで、スペースの限られた処理カップ25内に羽根部材61を効率的に配置することができる。
【0032】
各回転羽根63は、連結部材62の外周面から、ウエハWの回転半径方向の外方に向けて突出するように形成されており、スピンチャック3の所定の処理時回転方向下流側に向かうに従って上方に向かう傾斜姿勢を有している。複数の回転羽根63は、同一の諸元(形状およびサイズ)で等角度間隔に設けられている。そのため、羽根部材61が、所定の処理時回転方向と同方向に回転されると、羽根部材61の上方の雰囲気が下方に送られて、処理カップ25内に下降気流が形成されるようになる。各回転羽根63の形状、サイズ、角度および枚数は、その羽根部材61の回転により形成される下降気流が、その羽根部材61と同じ回転速度でのウエハWの回転により生じる上昇気流をキャンセルするのに必要充分な程度の強さ(ただし、下降気流を形成できる強さ)になるように設定されている。
【0033】
なお、スピンチャック3としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
第1薬液ノズル4は、たとえば連続流の状態で薬液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、スピンチャック3の上方でほぼ水平に延びるアーム10の先端に取り付けられている。このアーム10の基端部は、処理カップ25の側方においてほぼ鉛直に延びたアーム支持軸11の上端部に支持されている。アーム支持軸11には、アーム揺動駆動機構12が結合されており、このアーム揺動駆動機構12の駆動力によって、アーム支持軸11を回動させて、スピンチャック3の上方でアーム10を揺動させることができるようになっている。
【0034】
第1薬液ノズル4には、第1薬液供給源からの第1薬液が供給される第1薬液供給管14が接続されている。第1薬液供給管14の途中部には、第1薬液ノズル4からの第1薬液の吐出/吐出停止を切り換えるための第1薬液バルブ15が介装されている。
第2薬液ノズル5は、たとえば連続流の状態で薬液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、アーム10の先端部に取り付けられている。第2薬液ノズル5には、第2薬液供給源からの第2薬液が供給される第2薬液供給管16が接続されている。第2薬液供給管16の途中部には、第2薬液ノズル5からの第2薬液の吐出/吐出停止を切り換えるための第2薬液バルブ17が介装されている。
【0035】
DIWノズル6は、たとえば、連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心付近に向けて固定的に配置されている。このDIWノズル6には、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管18が接続されている。DIW供給管18の途中部には、DIWノズル6からのDIWの吐出/吐出停止を切り換えるためのDIWバルブ19が介装されている。
【0036】
処理カップ25は、スピンチャック3を収容する有底円筒容器状の下カップ20と、下カップ20に対して、それぞれ独立に昇降可能に設けられた第1〜第4構成部材21,22,23,24とを備えている。
下カップ20の底部には、第1薬液のミストを含む雰囲気および第2薬液のミストを含む雰囲気をそれぞれ排気するための第1排気溝27および第2排気溝26が、ウエハWの回転軸線Cを中心とする2重の円環状に形成されている。最内方に第2排気溝26が形成され、第2排気溝26の外側に第1排気溝27が形成されている。
【0037】
また、下カップ20の底部には、第2排気溝26を取り囲むように、DIWを廃液するための廃液溝28が、ウエハWの回転軸線Cを中心とする円環状に形成されている。
さらに、下カップ20の底部には、廃液溝28を取り囲むように、ウエハWの処理のために用いられた後の第1薬液および第2をそれぞれ回収するための円環状の第1回収溝30および第2回収溝29が同軸的に形成されている。廃液溝28の外側に第2回収溝29が形成され、第2回収溝29の外側に第1回収溝30が形成されている。
【0038】
第1排気溝27、第2排気溝26、廃液溝28、第1回収溝30および第2回収溝29には、それぞれ第1排気配管32、第2排気配管31、廃液配管33、第1回収配管35および第2回収配管34が接続されている。第1排気配管32は、第1排気溝27内を強制的に排気するための図示しない排気処理設備(たとえば、当該基板処理装置が設置される工場の排気処理設備)あるいは排気ポンプ(たとえば当該基板処理装置内に組み込まれた真空ポンプ)に接続されている。第1排気溝27に集められた雰囲気は、第1排気配管32を通して排気処理設備あるいは排気ポンプに導かれる。第1排気配管32の途中部には、第1薬液のミストを含む雰囲気を、第1薬液と雰囲気とに分離するための第1気液分離器47が介装されている。第1気液分離器47で雰囲気から分離された第1薬液は、分岐廃液路49を介して、図外の廃液処理設備へと導かれるようになっている。
【0039】
第2排気配管31は、第2排気溝26内を強制的に排気するための図示しない排気処理設備あるいは排気ポンプに接続されている。第2排気溝26に集められた雰囲気は、第2排気配管31を通して排気処理設備あるいは排気ポンプに導かれる。第2排気配管31の途中部には、第2薬液のミストを含む雰囲気を、第2薬液と雰囲気とに分離するための第2気液分離器48が介装されている。第2気液分離器48で雰囲気から分離された第2薬液は、分岐廃液路50を介して、図外の廃液処理設備へと導かれるようになっている。このように、第1薬液のミストを含む雰囲気と、第2薬液のミストを含む雰囲気とが互いに異なる排気溝26,27に導かれるので、第1薬液のミストと第2薬液のミストとが混触しない。
【0040】
廃液配管33は、図外の廃液処理設備に接続されている。ウエハWに対する処理に用いられたDIW(第1薬液および第2薬液を含むDIW)は、廃液配管33を通して図外の廃液処理設備へと導かれる。
第1回収配管35は、図外の第1薬液回収処理槽に接続されている。ウエハWに対する処理に用いられた第1薬液は、第1回収配管35を通して図外の第1薬液回収処理槽へと導かれる。
【0041】
第2回収配管34は、図外の第2薬液回収処理槽に接続されている。ウエハWに対する処理に用いられた第2薬液は、第2回収配管34を通して図外の第2薬液回収処理槽へと導かれる。
第1構成部材21は、スピンチャック3の周囲を取り囲み、スピンチャック3によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。この第1構成部材21は、第1案内部36と、この第1案内部36に連結された円筒状の第1薬液分離壁37とを一体的に備えている。
【0042】
第1案内部36は、回転軸線Cを中心とする円筒状をなす下端部36aと、この下端部36aの上端から中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に向かって斜め上方に延びる上端部36bとを有している。下端部36aは、廃液溝28上に位置し、第1構成部材21が下カップ20に対して最も近接した状態で廃液溝28に収容される。
第2構成部材22は、スピンチャック3の周囲を取り囲み、スピンチャック3によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。この第2構成部材22は、第2案内部38と、この第2案内部38に連結された円筒状の第2薬液分離壁39とを一体的に備えている。
【0043】
第2案内部38は、第1構成部材21の第1案内部36の外側において、第1案内部36の下端部36aと同軸円筒状をなす下端部38aと、この下端部38aの上端から中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に向かって斜め上方に延びる上端部38bと、上端部38bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部38cとを有している。下端部38aは、第2回収溝29上に位置し、第1構成部材21と第2構成部材22とが最も近接した状態で第2回収溝29に収容される。一方、上端部38bは、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと上下方向に重なるように設けられ、第1構成部材21と第2構成部材22とが最も近接した状態で、第1案内部36の上端部36bに対してごく微小な隙間を保って近接する。また、上端部38bの先端には、折返し部38cがその先端部を下方に折り返すことにより形成されており、第1構成部材21と第2構成部材22とが最も近接した状態で、その折返し部38cが第1案内部36の上端部36bと水平方向において重なるようになっている。
【0044】
また、第2案内部38の第2薬液分離壁39は、その上端部38bの外周縁部に連結されて円筒状をなしている。そして、第2薬液分離壁39は、第1回収溝30上に位置し、第1構成部材21と第2構成部材22とが最も近接した状態で第1回収溝30に収容される。
第3構成部材23は、第2構成部材22の第2案内部38の外側において、スピンチャック3の周囲を取り囲み、スピンチャック3によるウエハWの回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有し、第3案内部としての働きを有する。この第3構成部材23は、第2案内部38の下端部38aと同軸円筒状をなす下端部23aと、下端部23aの上端から中心側(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に向かって斜め上方に延びる上端部23bと、上端部23bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部23cとを有している。
【0045】
下端部23aは、第1回収溝30上に位置し、第1構成部材21と第3構成部材23とが最も近接した状態で当該第1回収溝30に収容される。
上端部23bは、第2構成部材22の第2案内部38の上端部23bと上下方向に重なるように設けられ、第2構成部材22と第3構成部材23とが最も近接した状態で、第2案内部38の上端部23bに対してごく微小な隙間を保って近接するように形成されている。
【0046】
折返し部23cは、第2構成部材22と第3構成部材23とが最も近接した状態で、第2案内部38の上端部38bと水平方向において重なるように形成されている。
廃液溝28と第1排気溝27とは、下カップ20の底部から鉛直方向に向けて立ち上がる中壁40により区画されている。中壁40は、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする円筒状に形成されている。中壁40の上端からは、中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に向けて傾斜部41が延びている。傾斜部41の先端には、折返し部41cがその先端部を下方に折り返すことにより形成されている。
【0047】
第2排気溝26は、下カップ20の底部から鉛直方向に向けて立ち上がる内壁42によって、その内側側面が構成されている。内壁42は、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする円筒状に形成されている。内壁42の上端からは、中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に向けて傾斜部43が延びている。傾斜部43の先端には、折返し部43cがその先端部を上方に折り返すことにより形成されている。
【0048】
第4構成部材24は、中壁40と内壁42との間に設けられて、ウエハWの回転軸線Cを中心軸線とする同軸円筒状の下端部44,45と、外側の下端部44の上端から中心側斜め上方(ウエハWの回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部46とを備えている。外側の下端部44の下端は第1排気溝27上に位置し、内側(中心側)の下端部45の下端は第2排気溝26上に位置している。
【0049】
第4構成部材24が最も下方まで下げられた状態、すなわち、第4構成部材24と傾斜部43とが最も近接した状態(図1に示す状態)では、傾斜部41の先端部と第4構成部材24の傾斜部46の先端部との間に、第1雰囲気捕獲口58が形成される。そして、第4構成部材24の傾斜部46の先端部が傾斜部43の折返し部43cと重なるようになっている。この状態では、処理カップ25内を流下してきた雰囲気は、第1排気溝27に進入し、第2排気溝26に進入することがない。
【0050】
第4構成部材24が最も上方まで上げられた状態、すなわち、第4構成部材24と傾斜部41とが最も近接した状態(図3(c)および図3(d)に示す状態)では、第4構成部材24の傾斜部46の先端部と傾斜部43の先端部との間に、第2雰囲気捕獲口59(図3(c)および図3(d)参照)が形成される。そして、第4構成部材24の傾斜部46の先端部が傾斜部41の折返し部41cと重なるようになっている。この状態では、処理カップ25内を流下してきた雰囲気は、第2排気溝26に進入し、第1排気溝27に進入することがない。したがって、第1雰囲気捕獲口58が開いているときは、第2雰囲気捕獲口59は閉じており、第2雰囲気捕獲口59が開いているときは、第1雰囲気捕獲口58は閉じている。すなわち、処理カップ25内の下段に第1雰囲気捕獲口58および第2雰囲気捕獲口59が設けられている。
【0051】
また、第1構成部材21を昇降させるための第1昇降駆動機構51と、第2構成部材22を昇降させるための第2昇降駆動機構52と、第3構成部材23を昇降させるための第3昇降駆動機構53と、第4構成部材24を昇降させるための第4昇降駆動機構(雰囲気捕獲口開閉手段)54とが備えられている。各昇降駆動機構51,52,53,54は、たとえば、ボールねじ機構などを含む構成である。
【0052】
処理カップ25の内部の雰囲気は、雰囲気捕獲口58,59および排気ライン31,32を介して排気される。これにより、処理室2内のクリーンエアが処理カップ25の上部開口(より具体的には、スピンベース8と第3構成部材23の折返し部23cとで挟まれる狭空間)から取り入れられ、処理カップ25内に下降気流を形成する。一方、スピンチャック3(スピンベース8)が所定の処理時回転方向に回転されると、これに同期して羽根部材61も所定の処理時回転方向に回転される。これにより、スピンチャック3およびウエハWの回転によって形成される上昇気流を羽根部材61が形成する下降気流でキャンセルすることができる。したがって、スピンチャック3の回転によらずに、処理カップ25内に安定した下降気流を形成できる。
【0053】
羽根部材61の回転に伴って処理カップ25内に形成される下降気流は、羽根部材61の回転速度が大きいほど強くなる。一方、ウエハWの回転に伴って処理カップ25内に生じる上昇気流の強さは、ウエハWの回転速度が大きいほど強くなる。したがって、スピンチャック3と羽根部材61とが同期して回転する本実施形態の構成によれば、スピンチャック3によるウエハWの回転速度に拘わらず、羽根部材61の回転により形成される下降気流で、ウエハWの回転による上昇気流の発生を抑制することができ、処理カップ25内の下降気流を安定化できる。
【0054】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置60を備えている。この制御装置60には、制御対象として、モータ7、アーム揺動駆動機構12、第1昇降駆動機構51、第2昇降駆動機構52、第3昇降駆動機構53、第4昇降駆動機構54、第1薬液バルブ15、第2薬液バルブ17およびDIWバルブ19などが接続されている。
【0055】
図3(a)〜図3(d)は、基板処理装置1によるウエハWの処理の流れを説明するための図である。図4は、制御装置60による制御内容を説明するためのタイムチャートであり、スピンチャック3の回転/スピンドライ回転/停止(図4(a))、第1薬液バルブ15の開閉(図4(b))、第2薬液バルブ17の開閉(図4(c))、DIWバルブ19の開閉(図4(d))、第1昇降駆動機構51による第1構成部材21の昇降(図4(e))、第2昇降駆動機構52による第2構成部材22の昇降(図4(f))、第3昇降駆動機構53による第3構成部材23の昇降(図4(g))、第4昇降駆動機構54による第4構成部材24の昇降(図4(h))が示されている。
【0056】
ウエハWに対する処理が行われている間、常に、図示しないFFU(ファンフィルタユニット)から処理室2内にクリーンエアの下降気流が供給されるとともに、図外の排気処理設備によって、第1排気溝27および第2排気溝26内が強制的に排気されている。
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって基板処理装置1内に搬入されて、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック3に保持される。なお、このウエハWの搬入時においては、その搬入の妨げにならないように、第1構成部材21、第2構成部材22および第3構成部材23が最も下方まで下げられることにより、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36b、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bおよび第3構成部材23の上端部23bがいずれも、スピンチャック3によるウエハWの保持位置よりも下方に位置している。また、第4構成部材24が最も下方まで下げられていることにより、第1雰囲気捕獲口58が開き、第2雰囲気捕獲口59が閉じている。
【0057】
ウエハWがスピンチャック3に保持されると、制御装置60は、モータ7を制御して、スピンチャック3によるウエハWの回転(スピンベース8の回転)を開始させて、ウエハWの回転速度を所定の液処理回転速度(たとえば1500rpm)まで上昇させる。また、制御装置60は、第3昇降駆動機構53を制御して、第3構成部材23を、その上端部23bがスピンチャック3に保持されたウエハWの上方に位置するように上昇させる。これにより、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bと第3構成部材23の上端部23bとの間に、ウエハWの端面に対向し、第1薬液を捕獲する第1薬液捕獲口としての第3開口57(図3(a)参照)が形成される。すなわち、処理カップ25の上段に第3開口57が設けられている。
【0058】
さらに、制御装置60は、アーム揺動駆動機構12を制御してアーム10を揺動し、第1薬液ノズル4および第2薬液ノズル5を、処理カップ25の側方の退避位置からウエハWの上方位置へと移動させる。
ウエハWの回転速度が液処理回転速度に達すると、制御装置60は、第1薬液バルブ15を開いて、第1薬液ノズル4からウエハWの表面の回転中心に向けて第1薬液を供給する。ウエハWの表面に供給された第1薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に第1薬液を用いた第1薬液処理が施される(図3(a)参照)。第1薬液としてSC1(アンモニア過酸化水素水混合液)が用いられる場合には、処理によってウエハWの表面に付着しているパーティクルが除去される。ウエハWの周縁に向かって流れる第1薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第3開口57に飛入する。そして、第2構成部材22の外壁または第3構成部材23の内壁を伝って第1回収溝30に集められ、第1回収配管35へと送られ、図外の第1薬液回収処理設備へ導かれる。このとき、第1構成部材21および第2構成部材22が第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bとの間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、第2案内部38の折返し部38cが第1案内部36の上端部36bと水平方向において重なることにより、第1案内部36と第2案内部38との間への第1薬液の進入が防止される。
【0059】
この第1薬液処理の期間中、第1薬液ノズル4からウエハWに対して第1薬液が連続的に供給されるので、スピンチャック3の周辺には、第1薬液のミストを含む雰囲気が充満している。
スピンチャック3によるウエハWの回転に同期して、羽根部材61もスピンチャック3による回転軸線Cまわりに回転される。羽根部材61が、羽根部材61の回転により形成される下降気流が、その羽根部材61と同じ回転速度でのウエハWの回転により生じる上昇気流をキャンセルできるような形状、サイズ、角度および枚数に設定されているので、処理カップ25内(とくに、スピンベース8と第2構成部材22の第2案内部38の折返し部38cとで挟まれる狭空間)に、処理カップ25内の上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、第1薬液処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第1薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外にほとんど漏出しない。
【0060】
第1薬液のミストを含む雰囲気は、羽根部材61により形成される下降気流によって、開いている第1雰囲気捕獲口58に導かれる。このとき、第1薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第2雰囲気捕獲口59に導かれることはない。そして、第1雰囲気捕獲口58に導かれた第1薬液のミストを含む雰囲気は、第1排気溝27に集められた後第1排気配管32へと送られ、第1気液分離器47へ導かれる。
【0061】
ウエハWへの第1薬液の供給が所定時間にわたって行われると、制御装置60は、第1薬液バルブ15を閉じて、第1薬液ノズル4からの第1薬液の供給を停止する。また、制御装置60は、第1昇降駆動機構51および第2昇降駆動機構52を制御して、第1構成部材21および第2構成部材22を、第1案内部36の上端部36bおよび第2案内部38の上端部38bがスピンチャック3に保持されたウエハWの上方に位置するように上昇させる。これにより、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36b、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bおよび第3構成部材23の上端部23bが、スピンチャック3に保持されたウエハWよりも上方に配置されて、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと傾斜部43の上端部との間に、ウエハWの端面に対向する第1開口55(図3(b)参照)が形成される。
【0062】
このとき、制御装置60は、第1昇降駆動機構51および第2昇降駆動機構52を制御して、第1構成部材21および第2構成部材22を、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bとの間にごく微小な隙間を保った状態(第1構成部材21と第2構成部材22との相対的な位置関係を保った状態)で、同期をとりつつ上昇させる。これにより、ウエハWの回転が継続されていても、ウエハWから飛散する第1薬液が第1案内部36と第2案内部38との間に進入することを防止することができる。
【0063】
第1薬液の供給の停止後、制御装置60は、DIWバルブ19を開いて、DIWノズル6の吐出口から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けてDIWを吐出させる。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している第1薬液がDIWによって洗い流される(図3(b)参照)。ウエハWの周縁に向けて流れるDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散するDIW(ウエハWから洗い流された第1薬液を含む)は、ウエハWの端面に対向している第1開口55に捕獲され、第1構成部材21の内壁を伝って廃液溝28に集められ、その廃液溝28から廃液配管33を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0064】
このとき、第1構成部材21、第2構成部材22および第3構成部材23が各上端部間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、第3構成部材23の折返し部23cが第2案内部38の上端部38bと水平方向において重なり、第2案内部38の折返し部38cが第1案内部36の上端部36bと水平方向において重なることによって、第1案内部36と第2案内部38との間および第2案内部38と第3構成部材23との間へのDIWの進入が防止される。
【0065】
また、スピンチャック3によるウエハWの回転に同期して、羽根部材61もスピンチャック3による回転軸線Cまわりに回転される。これにより、処理カップ25内(とくに、スピンチャック3に保持されたウエハWの側方の空間)に、処理カップ25内の上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、スピンドライ処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第1薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外にほとんど漏出しない。
【0066】
リンス処理中において、第1薬液のミストを含む雰囲気は、羽根部材61により形成される下降気流によって、開いている第1雰囲気捕獲口58に導かれる。このとき、第1薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第2雰囲気捕獲口59に導かれることはない。そして、第1雰囲気捕獲口58に導かれた第1薬液のミストを含む雰囲気は、第1排気溝27に集められた後第1排気配管32へと送られ、第1気液分離器47へ導かれる。
【0067】
ウエハWへのDIWの供給が所定時間にわたって行われると、制御装置60は、DIWバルブ19を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する。また、制御装置60は、第1昇降駆動機構51を制御して、第1構成部材21を最も下方まで下げさせる。これにより、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bが、ウエハWよりも下方に配置される。そして、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bとの間に、ウエハWの端面に対向し、第2薬液を捕獲する2薬液捕獲口としての第2開口56(図3(c)参照)が形成される。すなわち、処理カップ25の上段に第2開口56が設けられている。さらに、制御装置60は、第4昇降駆動機構54を制御して、第4構成部材24を最も上方まで上げさせる。これにより、第1雰囲気捕獲口58が閉じて第2雰囲気捕獲口59が開いた状態になる。
【0068】
DIWの供給の停止後、制御装置60は、第2薬液バルブ17を開いて、第2薬液ノズル5からウエハWの表面の回転中心に向けて第2薬液を供給する。ウエハWの表面に供給された第2薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に第2薬液を用いた第2薬液処理が施される(図3(c)参照)。第2薬液としてフッ酸が用いられる場合には、この第2薬液処理によりウエハWの表面に形成された酸化膜が除去される。ウエハWの周縁に向かって流れる第2薬液は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第2開口56に飛入する。そして、第1構成部材21の外壁または第2構成部材22の内壁を伝って第2回収溝29に集められ、第2回収配管34へと送られ、図外の第2薬液回収処理設備へ導かれる。このとき、第2構成部材22および第3構成部材23が第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bと第3構成部材23の上端部23bとの間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、第3構成部材23の折返し部23cが第2案内部38の上端部38bと水平方向において重なることにより、第2案内部38と第3構成部材23との間への第2薬液の進入が防止される。
【0069】
第2薬液処理の期間中、第2薬液ノズル5からウエハWに対して第2薬液が連続的に供給されるので、スピンチャック3の周辺には、第2薬液のミストを含む雰囲気が充満している。
スピンチャック3によるウエハWの回転に同期して、羽根部材61もスピンチャック3による回転軸線Cまわりに回転される。これにより、処理カップ25内(とくに、スピンベース8と第1構成部材21の第1案内部36の折返し部36cとで挟まれる狭空間)に、処理カップ25内の上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、第2薬液処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第2薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外にほとんど漏出しない。
【0070】
第2薬液のミストを含む雰囲気は、羽根部材61により形成される下降気流によって、開いている第2雰囲気捕獲口59に導かれる。このとき、第2薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第1雰囲気捕獲口58に導かれることはない。そして、第2雰囲気捕獲口59に導かれた第2薬液のミストを含む雰囲気は、第2排気溝26に集められた後第2排気配管31へと送られ、第2気液分離器48へ導かれる。
【0071】
ウエハWへの第2薬液の供給が所定時間にわたって行われると、制御装置60は、第2薬液バルブ17を閉じて、第2薬液ノズル5からの第2薬液の供給を停止する。また、制御装置60は、第1昇降駆動機構51を制御して、第1構成部材21を、第1案内部36の上端部36bが、スピンチャック3に保持されたウエハWよりも上方に配置されるように上昇させる。これにより、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36b、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bおよび第3構成部材23の上端部23bが、スピンチャック3に保持されたウエハWよりも上方に配置される。そして、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36bと傾斜部43の上端部との間に、ウエハWの端面に対向する第1開口55(図3(b)参照)が形成される。
【0072】
このとき、第2構成部材22および第3構成部材23は、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bと第3構成部材23の上端部23bとの間にごく微小な隙間を保った状態(第2構成部材22と第3構成部材23との相対的な位置関係を保った状態)で、同期をとって上昇される。これにより、ウエハWの回転が継続されていても、ウエハWから飛散する第2薬液が第2案内部38と第3構成部材23との間に進入することを防止することができる。
【0073】
第2薬液の供給の停止後、制御装置60は、DIWバルブ19を開いて、DIWノズル6の吐出口から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けてDIWを吐出させる。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している第2薬液がDIWによって洗い流される。ウエハWの周縁に向けて流れるDIWは、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散するDIW(ウエハWから洗い流された第2薬液を含む)は、ウエハWの端面に対向している第2開口56に捕獲され、第1構成部材21の内壁を伝って廃液溝28に集められ、その廃液溝28から廃液配管33を通して図外の廃液処理設備へ導かれる。
【0074】
このとき、第1構成部材21、第2構成部材22および第3構成部材23が各上端部間にごく微小な隙間を保った状態で近接し、さらに、第3構成部材23の折返し部23cが第2案内部38の上端部38bと水平方向において重なり、第2案内部38の折返し部38cが第1案内部36の上端部36bと水平方向において重なることによって、第1案内部36と第2案内部38との間および第2案内部38と第3構成部材23との間へのDIWの進入が防止される。
【0075】
また、スピンチャック3によるウエハWの回転に同期して、羽根部材61もスピンチャック3による回転軸線Cまわりに回転される。これにより、処理カップ25内(とくにとくに、スピンチャック3に保持されたウエハWの側方の空間)に、処理カップ25内の上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、スピンドライ処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第2薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外にほとんど漏出しない。
【0076】
リンス処理中において、第2薬液のミストを含む雰囲気は、羽根部材61により形成される下降気流によって、開いている第2雰囲気捕獲口59に導かれる。このとき、第2薬液のミストを含む雰囲気が、閉じている第1雰囲気捕獲口58に導かれることはない。そして、第2雰囲気捕獲口59に導かれた第2薬液のミストを含む雰囲気は、第2排気溝26に集められた後第2排気配管31へと送られ、第2気液分離器48へ導かれる。
【0077】
ウエハWへのDIWの供給が所定時間にわたって行われると、制御装置60は、DIWバルブ19を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する。また、制御装置60は、第2昇降駆動機構52および第3昇降駆動機構53を制御して、第2構成部材22および第3構成部材23を、最も下方まで下げさせる。これにより、第1構成部材21の第1案内部36の上端部36b、第2構成部材22の第2案内部38の上端部38bおよび第3構成部材23の上端部23bがいずれも、スピンチャック3によるウエハWの保持位置よりも下方に位置している。
【0078】
また、制御装置60は、モータ7を制御して、ウエハWの回転速度をスピンドライ回転速度(たとえば3000rpm)に上げる。これにより、リンス処理後のウエハWの表面に付着しているDIWを遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライ処理が実施される(図3(d)参照)。このスピンドライ処理時には、ウエハWの周縁から飛散するDIWは、第3構成部材23の外壁に付着する。
【0079】
スピンチャック3によりウエハWがスピンドライ速度で回転されると、これに伴って、羽根部材61もスピンドライ速度で回転される。羽根部材61が、羽根部材61の回転により形成される下降気流が、その羽根部材61と同じ回転速度でのウエハWの回転により生じる上昇気流をキャンセルできるような形状、サイズ、角度および枚数に設けられているので、処理カップ25内(とくに、スピンベース8と第3構成部材23の折返し部23cとで挟まれる狭空間)に、処理カップ25内の上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、スピンドライ処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第2薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外にほとんど漏出しない。
【0080】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ時間にわたって行われると、制御装置60は、モータ7を駆動して、スピンチャック3の回転を停止する。また、制御装置60は、アーム揺動駆動機構12を制御してアーム10を揺動し、第1薬液ノズル4および第2薬液ノズル5を、ウエハWの上方位置から処理カップ25の側方の退避位置へと移動させる。その後、図示しない搬送ロボットによってウエハWが搬出される。
【0081】
以上のように、この実施形態によれば、羽根部材61がスピンチャック3による回転軸線Cまわりに回転されることにより、スピンチャック3等の回転に起因する乱気流(とくに上昇気流)の発生を抑制し、処理カップ25内に安定した下降気流を形成することができる。これにより、第1薬液のミストまたは第2のミストを含む雰囲気が処理カップ25外に漏出することを防止することができる。
【0082】
また、羽根部材61が設けられているので、排気ライン31,32を介して強い排気を行わなくとも、処理カップ25内に安定した下降気流が形成されるようになる。したがって、過度な排気用力を要することなく、処理カップ25内の下降気流を安定化できる。そして、過度な排気に起因する強い下降気流が処理カップ25内に形成されることがないので、薬液処理時において、雰囲気捕獲口58,59に薬液が大量に導かれることがない。したがって、処理カップ25内における気液分離効率が低下しない。
【0083】
さらに、羽根部材61が、スピンチャック3によるウエハWの回転に同期して回転する。スピンチャック3によるウエハWの回転に伴って処理カップ25内に生じる上昇気流は、ウエハWの回転速度が大きいほど強い。一方、羽根部材61の回転に伴って処理カップ25内に形成される下降気流は、この羽根部材61と同期して回転するウエハWの回転速度が大きいほど強くなる。そして、羽根部材61が、羽根部材61の回転により形成される下降気流が、その羽根部材61と同じ回転速度でのスピンチャック3等の回転により生じる上昇気流をキャンセルできるような形状、サイズ、角度および枚数に設計されているので、スピンチャック3によるウエハWの回転速度に拘わらず(ウエハWの回転速度が液処理回転速度であるかスピンドライ回転速度であるかに拘わらず)、羽根部材61の回転により形成される下降気流で、ウエハWの回転による上昇気流の発生を抑制することができる。これにより、第1薬液処理、第2薬液処理、リンス処理およびスピンドライ処理の各処理における全期間を通じて、処理カップ25内に適切な強さの安定した下降気流が形成される。これにより、高い気液分離効率を実現できる。
【0084】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することも可能である。
図5は、本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る基板処理装置70の構成を概念的に示す断面図である。図6は、基板処理装置70の電気的構成を示すブロック図である。
【0085】
この第2の実施形態において、図1〜図4に示す実施形態(第1の実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1の実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この第2の実施形態に係る基板処理装置70が、第1の実施形態に係る基板処理装置1と大きく相違しているのは、羽根部材71がスピンチャック3(スピンベース8)と一体回転可能に設けられておらず、スピンチャック3(スピンベース8)と独立して回転可能に設けられている点である。羽根部材71は、複数枚の回転羽根63を連結する連結部材72を備えている。連結部材72は、スピンチャック3のカバー部材13の外周部を包囲する円筒状に形成されている。羽根部材71が、所定の処理時回転方向と同方向に回転されると、処理カップ25内に下降気流が形成されるようになる。この羽根部材71には、羽根部材71を回転軸線Cまわりに回転させるための羽根部材駆動機構(非同期回転手段)73が結合されている。この羽根部材駆動機構73は、モータなどを含む構成である。
【0086】
基板処理装置70は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置74を備えている。この制御装置74には、制御対象として、モータ7、アーム揺動駆動機構12、第1昇降駆動機構51、第2昇降駆動機構52、第3昇降駆動機構53、第4昇降駆動機構54、羽根部材駆動機構73、第1薬液バルブ15、第2薬液バルブ17およびDIWバルブ19などが接続されている。
【0087】
図7は、制御装置74による制御内容を説明するためのタイムチャートであり、モータ7の回転/高速回転/スピンドライ回転/停止(図7(a))、羽根部材駆動機構73の回転/高速回転/スピンドライ回転/停止(図7(a))、第1薬液バルブ15の開閉(図7(c))、第2薬液バルブ17の開閉(図7(d))、DIWバルブ19の開閉(図7(e))、第1昇降駆動機構51による第1構成部材21の昇降(図7(f))、第2昇降駆動機構52による第2構成部材22の昇降(図7(g))、第3昇降駆動機構53による第3構成部材23の昇降(図7(h))、第4昇降駆動機構54による第4構成部材24の昇降(図7(i))が示されている。
【0088】
第2の実施形態のウエハW処理では、第1の実施形態のウエハW処理と異なり、第2薬液処理時において、制御装置74はモータ7を駆動して、ウエハW(スピンチャック3)を、所定の液処理回転速度(第1薬液処理時およびリンス処理時における回転速度。たとえば1500rpm)よりも高い回転速度(たとえば、2000rpm)で回転させる。第2薬液として例示されているフッ酸はその接触角が比較的小さく、ウエハWの種類によっては、ウエハWの表面への濡れ性が悪くなって、表面の全域に十分に行き渡らないことがある。しかしながら、この第2の実施形態のウエハW処理では、第2薬液(フッ酸)供給時におけるウエハWの回転速度が所定の液処理回転速度よりも上昇されているので、第2薬液(フッ酸)は大きな遠心力を受けて、ウエハWの表面全域に拡がるようになる。これにより、ウエハWの表面全域に第2薬液(フッ酸)を行き渡らせることができる。
【0089】
このとき、制御装置74は、羽根部材駆動機構73を駆動して、羽根部材71をウエハWの回転速度と同じ回転速度(たとえば、2000rpm)で回転させる。これにより、処理カップ25内に上昇気流をキャンセルできる強さの下降気流が形成される。これにより、第2薬液処理時に、処理カップ25内で上昇気流がほとんど発生せず、第2薬液のミストを含む雰囲気が処理カップ25外に漏れ出ることを防止または抑制することができる。
【0090】
また、スピンドライ処理の終了後、制御装置74は、モータ7を制御してウエハW(スピンチャック3)の回転を停止させる。また、制御装置74は、羽根部材駆動機構73を制御して、羽根部材71をウエハWの回転停止より遅いタイミングで回転停止させる。これにより、第2薬液のミストを含む雰囲気を、スピンチャック3の周囲からより確実に排除することができる。これにより、第2薬液処理後の清浄なウエハWが、周辺の雰囲気により汚染されることを、より効果的に防止することができる。
【0091】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
第1の実施形態では、羽根部材61をスピンベース8に一体回転させるものとして説明したが、羽根部材61とスピンベース8との間にワンウェイクラッチを介装してもよい。この場合、ワンウェイクラッチは、スピンベース8が処理時回転方向に回転するときは羽根部材61がスピンベース8に同期して回転し、スピンベース8が反対方向に回転するときは羽根部材61がスピンベース8に対して空転させるよう配置される。この構成により、スピンドライ処理の終了後、制御装置60が、モータ7を制御してウエハW(スピンチャック3)の回転を停止させると、羽根部材61はその後空転し、ウエハWの回転停止よりも遅れて停止するようになる。これにより、第2薬液のミストを含む雰囲気を、スピンチャック3の周囲からより確実に排除し、第2薬液処理後の清浄なウエハWが、周辺の雰囲気により汚染されることを、より効果的に防止することができる。
【0092】
また、第2の実施形態では、第2薬液処理中にウエハWおよび羽根部材71を、第1薬液処理時およびリンス処理時における回転速度よりも高い回転速度で回転させる例を示したが、この構成を、第1の実施形態に適用してもよい。
また、前述の各実施形態では、羽根部材61,71の回転により、ウエハWの側方に下降気流を発生させる構成について説明した。しかしながら、スピンベース8の下方空間をエジェクター(アスピレータやコンバム(商標)含む)などの吸引手段を用いて吸引させることによってウエハWの側方に下降気流を発生させてもよい。
【0093】
また、前述の各実施形態では、第1〜第3構成部材21,22,23を下カップ20に対して独立して昇降させる構成の処理カップ25を例にとって説明したが、処理カップを、第1〜第3構成部材21,22,23を下カップ20に対して一体的に昇降させる構成にしてもよい。
また、前述の各実施形態では、第1薬液および第2薬液の組み合わせとしてSC1とフッ酸との組み合わせを例示したが、その他の酸性の薬液とアルカリ性の薬液とを組み合わせるものであってもよい。酸性の薬液の例として、たとえばSC2(塩酸過酸化水素水混合液)、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)が挙げられる。また、アルカリ性の薬液の例として、アンモニア水が挙げられる。
【0094】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す基板処理装置によるウエハの処理の流れを説明するための図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の制御装置による制御内容を説明するためのタイムチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図6】図5に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】図5に示す基板処理装置の制御装置による制御内容を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1,70 基板処理装置
2 処理室
3 スピンチャック(基板回転手段)
4 第1薬液ノズル(第1薬液供給手段)
5 第2薬液ノズル(第2薬液供給手段)
7 モータ(同期回転手段)
25 処理カップ
54 第4昇降駆動機構(雰囲気捕獲口開閉手段)
56 第2開口(第2薬液捕獲口)
57 第3開口(第1薬液捕獲口)
58 第1雰囲気捕獲口
59 第2雰囲気捕獲口
60,74 制御装置
73 羽根部材駆動機構(非同期回転手段)
C 回転軸線
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しつつ回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段により回転される基板に対して、薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板回転手段の周囲を取り囲み、当該基板回転手段を収容する処理カップと、
前記処理カップの上段に形成されて、前記基板回転手段により回転される基板から側方に向けて飛散する薬液を捕獲する薬液捕獲部と、
前記処理カップ内の中段に配置されて、前記処理カップ内に下降気流を生じさせる下降気流発生手段と、
前記処理カップ内の下段に形成されて、前記処理カップ内の雰囲気を捕獲するための雰囲気捕獲部とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記薬液供給手段が、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、前記基板回転手段によって回転される基板に対して、第1薬液と種類の異なる第2薬液を供給する第2薬液供給手段とを含み、
前記薬液捕獲部が、前記第1薬液を捕獲するための第1薬液捕獲口と、前記第2薬液を捕獲するための第2薬液捕獲口とを含み、
前記雰囲気捕獲部が、前記第1薬液を含む雰囲気を捕獲するための第1雰囲気捕獲口と、前記第2薬液を含む雰囲気を捕獲するための第2雰囲気捕獲口とを含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1雰囲気捕獲口および前記第2雰囲気捕獲口をそれぞれ開閉するための雰囲気捕獲口開閉手段と、
前記第1薬液供給手段から前記基板回転手段により回転される基板に対して第1薬液が供給されるときには、前記雰囲気捕獲口開閉手段を制御して、前記第1雰囲気捕獲口を開かせ、かつ、前記第2雰囲気捕獲口を閉じさせ、前記第2薬液供給手段から前記基板回転手段により回転される基板に対して第2薬液が供給されるときには、前記雰囲気捕獲口開閉手段を制御して、前記第2雰囲気捕獲口を開かせ、かつ、前記第1雰囲気捕獲口を閉じさせる制御手段とをさらに含む、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記下降気流発生手段が、前記基板回転手段の回転軸線まわりに回転可能に設けられて、当該回転軸線まわりの回転により下降気流を生じさせる羽根部材を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記羽根部材を、前記基板回転手段による基板の回転に同期して回転させる同期回転手段をさらに含む、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記羽根部材を、前記基板回転手段による基板の回転に非同期状態で回転させる非同期回転手段をさらに含む、請求項4または5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−231710(P2009−231710A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77798(P2008−77798)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】