説明

基板処理装置

【課題】 SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を、SiC部材の破損を抑制しつつ、短時間かつ低コストで除去する。
【解決手段】 炭化珪素からなる部材が内部に露出した反応容器と、反応容器内を加熱する加熱部と、反応容器内に非酸化性ガスを供給するガス供給部と、反応容器内を排気する排気部と、反応容器内に非酸化性ガスを供給しつつ反応容器内を排気すると共に、反応容器内を処理温度に加熱して所定時間保持するように、ガス供給部、排気部、及び加熱部を制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を熱処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の半導体装置の製造工程の一工程として、例えば1000℃以上の温度に加熱した基板に酸素(O)、窒素(N)、水素(H)、アルゴン(Ar)ガス等の処理ガスを供給して、酸化、窒化、還元、拡散等の所定の熱処理(アニール処理)を行う基板処理工程が実施されることがある。係る工程は、基板を収容する反応容器と、反応容器内で基板を保持する基板保持具と、反応容器内を加熱する加熱部と、反応容器内に処理ガスを供給するガス供給部と、反応容器内を排気する排気部と、を備えた基板処理装置により実施される。耐熱性の観点から、反応容器の内壁や基板保持具を炭化珪素(SiC)により構成する場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−265265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SiCからなる部材(以下、SiC部材と呼ぶ)は、純度を上げることが困難であり、最表面から例えば深さ2μm程度の表面近傍に金属元素が残留し易い特性を有している。そのため、SiC部材が内部に露出した反応容器を用いて上述の熱処理を行うと、SiC部材に含まれる金属元素がその表面から離脱し、処理対象の基板の表面に吸着し、拡散により基板中に取り込まれて金属汚染を生じさせ、半導体装置の特性を劣化させてしまう場合がある。
【0005】
SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を取り除く方法として、SiC部材表面へのSiO膜の形成及び除去を繰り返し行うことがある。具体的には、基板処理装置内(反応容器内)で100%の酸素(O)ガス雰囲気中にて加熱(アニール)し、SiC部材の表面にSiO膜を形成する。SiO膜中には、SiC部材の表面近傍から拡散した金属元素が取り込まれる。そして、熱処理後のSiC部材を基板処理装置から取り出し、SiC部材の表面にフッ化水素(HF)水溶液を供給してSiO膜を除去する。そして、SiC部材を基板処理装置に再度取り付けて基板に対する熱処理を試行し、基板に金属汚染が生じるか否かを確認する。そして、金属汚染の低減が確認できるまで、上述の工程を繰り返し実施する。しかしながら、係る方法では、SiC部材の取り付け、取り外し作業を人手によって繰り返し行う必要があり、多くの作業時間を要するほか、SiC部材等の破損や汚染等を招いてしまう恐れがある。また、HF水溶液によるSiO膜の除去作業も必要となり、作業時間の増大を招いてしまう恐れがある。
【0006】
SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を取り除く他の方法として、ダミーの基板に対する熱処理を繰り返し行うこともある。基板に対する熱処理を行うと、SiC部材から金属元素が離脱して基板中に取り込まれることから、金属汚染が低減できたことが確認できるまで、ダミーの基板を用いた熱処理を繰り返し行うのである。しかしながら、拡散によりダミー基板中に取り込まれる金属元素は微量であるため、SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を充分に取り除くには長い作業時間を要すると共に、ダミーの基板を浪費することでコストの増大を招いてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を、SiC部材の破損を抑制しつつ、短時間かつ低コストで除去することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、炭化珪素からなる部材が内部に露出した反応容器と、前記反応容器内を加熱する加熱部と、前記反応容器内に非酸化性ガスを供給するガス供給部と、前記反応容器内を排気する排気部と、前記反応容器内に非酸化性ガスを供給しつつ前記反応容器内を排気すると共に、前記反応容器内を処理温度に加熱して所定時間保持するように、前記ガス供給部、前記排気部、及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、SiC部材の表面近傍に残留している金属元素を、SiC部材の破損を抑制しつつ、短時間かつ低コストで除去することが可能な基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の縦型処理炉の縦断面である。
【図3】(a)は、維持時間を1時間として金属元素除去工程を実施した場合のウエハ表面のSPV測定結果を、(b)は、維持時間を20時間として金属元素除去工程を実施した場合のウエハ表面のSPV測定結果をそれぞれ例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の一実施形態>
以下に本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
図1に、本実施形態に係る基板処理装置としての熱処理装置10の一例を示す。この熱処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置として構成されている。熱処理装置10は、内部に反応炉40などの主要部が設けられる筺体12を備えている。筺体12の正面側には、ポッドステージ14が設けられている。ポッドステージ14上には、基板搬送容器としてのポッド16が搬送されて載置される。ポッド16内には、例えば25枚の処理対象の基板としてのウエハ54(図2参照)が収納されるように構成されている。ポッド16は、図示しない蓋が閉じられた状態でポッドステージ14上に載置されるよう構成されている。
【0013】
筺体12内の正面側(図1の右側)であって、ポッドステージ14に対向する位置には、ポッド搬送装置18が配置されている。ポッド搬送装置18の近傍には、ポッド棚20、ポッドオープナ22、及び基板枚数検知器24がそれぞれ設けられている。ポッド棚20はポッドオープナ22の上方に設けられ、基板枚数検知器24はポッドオープナ22に隣接して設けられている。ポッド搬送装置18は、ポッドステージ14とポッド棚20とポッドオープナ22との間でポッド16を搬送するように構成されている。ポッドオープナ22は、ポッド16の蓋を開けるように構成されている。基板枚数検知器24は、蓋が開けられたポッド16内のウエハ54の枚数を検知するように構成されている。
【0014】
筺体12内には、基板移載機26、ノッチアライナ28、及び基板支持具としてのボート30がそれぞれ設けられている。基板移載機26は、例えば5枚のウエハ54を取り出すことができるアーム(ツイーザ)32を有している。アーム32を動かすことにより、ポッドオープナ22の位置に載置されたポッド16、ノッチアライナ28及びボート30
間でウエハ54を搬送するように構成されている。ノッチアライナ28は、ウエハ54に予め形成されているノッチまたはオリフラを検出して、ウエハ54のノッチまたはオリフラを一定の位置に揃えるように構成されている。
【0015】
筺体12内の背面側上部には、反応炉40が配置されている。反応炉40内には、後述するように、複数枚のウエハ54を装填したボート30が、下方から搬入されるように構成されている。
【0016】
図2に、反応炉40の一例を示す。反応炉40は、炭化珪素(SiC)からなる反応管42を備えている。反応管42は、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状に形成されている。開放された反応管42の下端部は、フランジ状に形成されている。反応管42の下方には、反応管42を支持する石英(SiO)からなる円筒状のアダプタ44が設けられている。アダプタ44の上端部及び下端部は、それぞれ開放されてフランジ状に形成されている。アダプタ44の上端部に形成されたフランジの上面と、反応管42の下端部に形成されたフランジの下面とは、気密に当接するように構成されている。主に、反応管42とアダプタ44とにより本実施形態に係る反応容器43が構成されている。反応容器43内は、ウエハ54を収容して処理する反応室として構成されている。反応容器43の下部は、反応室内へのボート30の搬入が可能なように開放され、炉口部を構成している。蓋体としての炉口シールキャップ48が、Oリングを介して反応容器43の開放部分(アダプタ44の下端部に形成されたフランジの下面)に下方から当接されることで、反応容器43内が気密に封止されるように構成されている。
【0017】
炉口シールキャップ48は、基板保持具としてのボート30を下方から支持し、図示しないボートエレベータによってボート30と共に昇降可能なように構成されている。ボート30は、SiCからなり、多数枚、例えば25〜100枚のウエハ54を略水平状態で隙間をもって多段に保持するように構成されている。炉口シールキャップ48とボート30との間には、石英(SiO)からなる第1の断熱部材52と、この第1の断熱部材52の上部に配置された炭化珪素(SiC)からなる第2の断熱部材50と、が積層されるようにそれぞれ複数枚設けられている。
【0018】
反応容器43のうち、アダプタ44を除いた反応管42の周囲には、加熱部としてのヒータ46が円筒状に配置されている。ヒータ46は、反応容器43内を例えば1200℃以上の温度に加熱することが可能なように構成されている。反応管42内には、図示しない温度センサが設けられている。ヒータ46及び温度センサは、後述するコントローラ70にそれぞれ接続されている。コントローラ70は、温度センサが検出した温度に基づいてヒータ46の温度を制御し、反応容器43内の温度が所定のタイミングで所定の温度になるよう制御する。
【0019】
1200℃以上の高温での処理を可能とするため、反応管42は上述したようにSiCにより形成されている。ここで、石英からなるアダプタ44を設けずに、SiCからなる反応管42を炉口部まで延ばし、反応管42の下端部を、Oリングを介して炉口シールキャップ48で封止する構造とすると、反応管42を介して伝達された熱により、Oリングが高温となって溶けてしまう恐れがある。また、Oリングを溶かさないよう反応管42の下端部を冷却するようにすると、温度差による熱膨張差により反応管42が破損してしまう恐れがある。そこで、本実施形態では、反応容器43のうちヒータ46による加熱領域をSiCからなる反応管42で構成し、ヒータ46による加熱領域から外れた部分を石英(SiO)からなるアダプタ44で構成するようにしている。これにより、反応管42からの炉口部に対する熱の伝達が和らぎ、Oリングの劣化や反応管42の破損等を抑制できる。
【0020】
また、上述したように、反応管42とアダプタ44との間は、Oリングを介することなく、反応管42をアダプタ44に載せることで気密性を確保するように構成されている。SiCからなる反応管42は、ヒータ46の加熱領域に配置されているため、温度差が発生せずに等方的に熱膨張する。従って、反応管42の下端部のフランジ部分、及びアダプタ44の上端部のフランジ部分の平面精度をそれぞれ確保しておけば、昇温加熱された際にも隙間を生じさせることなく気密性を維持することができる。
【0021】
アダプタ44の側壁には、ガス供給口56がアダプタ44と一体に設けられている。ガス供給口56の上流端には、ガス導入管60が接続されている。ガス導入管60の上流側には、処理ガス供給管71の下流端及び非酸化性ガス供給管72の下流端がそれぞれ接続されている。処理ガス供給管71には、上流側から順に、窒素(N)、アルゴン(Ar)、水素(H)、酸素(O)等の処理ガスを供給する処理ガス供給源71a、マスフローコントローラ71b、バルブ71cが設けられている。非酸化性ガス供給管72には、上流側から順に、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N)ガス等の非酸化性ガスを供給する非酸化性ガス供給源72a、マスフローコントローラ72b、バルブ72cが設けられている。
【0022】
アダプタ44の内壁は、反応管42の内壁よりも内側に突出している。アダプタ44の側壁部(肉厚部)には、ガス供給口56と連通し、垂直方向に向かうガス導入経路64が設けられている。ガス導入経路64の下流端(上部)には、ノズル取り付け孔が上方に開口するように設けられている。ノズル取り付け孔は、反応管42内部におけるアダプタ44の上端部に形成されたフランジ上面に開口し、ガス供給口56とガス導入経路64とを連通している。ノズル取り付け孔には、SiCからなるノズル66が挿入されて固定されている。ノズル66は、反応管42の内壁に沿って基板配列領域の上端よりも上方、すなわちボート30の上端よりも上方まで延びるように構成される。ノズル66の下流端(上部)には、ガス噴出口が形成されている。このように、アダプタ44の内側に突出した部分の上面にノズル66が接続され、アダプタ44の上面によりノズル66が支持されることで、ノズル接続部が熱で変形しにくくなり、破損しにくくなる。また、ノズル66の取り外しや取り付けが容易になる。
【0023】
バルブ71c,72cを開けることで、処理ガス供給管71、非酸化性ガス供給管72を介してガス導入管60内に流れた処理ガス、非酸化性ガスは、マスフローコントローラ71b,72bにより流量制御されつつガス供給口56に導入され、アダプタ44の側壁部に設けられたガス導入経路64、ノズル66を介して反応管42内に供給される。主に、処理ガス供給管71、非酸化性ガス供給管72、マスフローコントローラ71b,72b、バルブ71c,72c、ガス導入管60、ガス供給口56、ガス導入経路64、ノズル66により、本実施形態に係るガス供給部が構成される。なお、マスフローコントローラ71b,72b、バルブ71c,72cは、後述するコントローラ70にそれぞれ接続されている。コントローラ70は、所定のタイミングで所定の流量の処理ガス或いは非酸化性ガスを反応容器43内に供給するよう制御する。
【0024】
(排気部)
アダプタ44の他の側壁には、ガス排気口59がアダプタ44と一体に設けられている。ガス排気口59の下流端には、排気管62の上流端が接続されている。排気管62には、上流側から順に、図示しない圧力センサ、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ62b、排気装置としての真空ポンプ62aが設けられている。主に、ガス排気口59、排気管62、圧力センサ、APCバルブ62b、真空ポンプ62aにより、反応容器43内を排気する排気部が構成されている。なお、圧力センサ、APCバルブ62b、真空ポンプ62aは、後述するコントローラ70にそれぞれ接続されている。コントローラ70は、真空ポンプ62aを作動させつつ、
圧力センサが検出した圧力に基づいてAPCバルブ62bの開度を制御し、反応容器43内の圧力が所定のタイミングで所定の圧力になるよう制御する。
【0025】
(コントローラ)
熱処理装置10は、制御部としてのコントローラ70を備えている。コントローラ70は、ポッド搬送装置18、ポッドオープナ22、基板枚数検知器24、基板移載機26、ボートエレベータ(図示せず)、温度センサ(図示せず)、ヒータ46、マスフローコントローラ71b,72b、バルブ71c,72c、圧力センサ(図示せず)、APCバルブ62b、真空ポンプ62aにそれぞれ接続され、これらの動作を制御するように構成されている。
【0026】
(2)ウエハの熱処理工程
次に上述の熱処理装置10によって実施されるウエハ54の熱処理工程について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ70により制御される。
【0027】
(ウエハ搬入)
まず、複数枚のウエハ54を収容したポッド16をポッドステージ14上に載置する。ポッド搬送装置18により、ポッド16をポッドステージ14上からポッド棚20上へ搬送して載置する。ポッド搬送装置18により、ポッド棚20上に載置されたポッド16をポッドオープナ22上に搬送して載置する。ポッドオープナ22によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器24によりポッド16に収容されているウエハ54の枚数を検知する。
【0028】
そして、基板移載機26により、ポッドオープナ22上に載置されたポッド16からウエハ54を取り出し、ノッチアライナ28上に移載する。ノッチアライナ28は、ウエハ54を回転させながらノッチを検出し、検出した情報に基づいて複数枚のウエハ54のノッチを同じ位置に整列させる。そして、基板移載機26により、ノッチアライナ28からボート30にウエハ54を装填(ウエハチャージ)する。
【0029】
その後、上述の工程を繰り返し、1バッチ分(例えば200枚)のウエハ54をボート30に装填する。
【0030】
そして、例えば600℃程度の温度に予め加熱された反応炉40(反応容器43)内に、複数枚のウエハ54を装填したボート30を下方から搬入(ボートロード)する。ボート30の搬入が完了すると、炉口シールキャップ48により反応容器43内が気密に封止される。
【0031】
(温度及び圧力調整)
そして、温度センサが検出した温度に基づいてヒータ46の温度を制御し、反応容器43内の温度が所定の熱処理温度(例えば1200℃以上の温度)になるように制御する。また、真空ポンプ63cを作動させ、圧力センサが検出した圧力に基づいてAPCバルブ62bの開度を制御し、反応容器43内の圧力が所定の熱処理圧力となるよう制御する。
【0032】
(ガス供給工程)
そして、バルブ71cを開き、マスフローコントローラ71bにより流量調整された処理ガスを、処理ガス供給管71、ガス導入管60、ガス供給口56、ガス導入経路64、ノズル66を介して反応容器43内に供給する。反応容器43内に供給された処理ガスは、ウエハ54の表面に供給された後、ガス排気口59を介して排気管62から排気される。熱処理温度に加熱されたウエハ54の表面に処理ガス(酸素(O)、窒素(N)、
水素(H)、アルゴン(Ar)ガス等)が供給されることで、処理ガスの種類に応じた所定の熱処理(酸化、窒化、還元、拡散等)が行われる。
【0033】
(降温、大気圧復帰工程)
反応容器43内への処理ガスの供給及び反応容器43内の排気を所定時間継続し、ウエハ54の熱処理が終了したら、バルブ71cを閉じ、反応容器43内への処理ガスの供給を停止する。また、温度センサが検出した温度に基づいてヒータ46の温度を制御し、反応容器43内の温度を600℃程度の温度に降温させる。そして、圧力センサが検出した圧力に基づいてAPCバルブ62bの開度を制御し、反応容器43内の圧力を大気圧とする。
【0034】
(ウエハ搬出)
そして、熱処理後のウエハ54を支持したボート30を降下させ、反応容器43内から搬出(ボートアンロード)する。そして、ボート30に支持されている全てのウエハ54が所定温度に冷却されるまで、ボート30を所定位置で待機させる。ウエハ54が所定温度まで冷却されたら、基板移載機26により、ウエハ54をボート30から取り出し(ウエハディスチャージ)、ポッドオープナ22上に載置されている空のポッド16内に搬送して収容する。次に、ポッド搬送装置18により、ウエハ54が収容されたポッド16を、ポッド棚20上またはポッドステージ14上に搬送して、熱処理工程を終了する。
【0035】
(3)SiC部材から金属元素を除去する工程
上述したように、本実施形態に係る熱処理装置10では、耐熱性を確保するため、反応管42、ボート30、第2の断熱部材50、ノズル66等を炭化珪素(SiC)によりなるSiC部材として構成している。しかしながら、SiC部材は純度を上げることが困難であり、表面近傍に金属元素が残留し易い特性を有している。従って、SiC部材が内部に露出した反応容器43を用いて上述の熱処理工程を行うと、SiC部材に含まれる金属元素がその表面から離脱し、処理対象のウエハ54の表面に吸着し、拡散によりウエハ54中に取り込まれ、ウエハ54に金属汚染を生じさせて半導体装置の特性を劣化させてしまう場合がある。
【0036】
そのため、本実施形態では、上述の熱処理工程を行う前に、SiC部材から金属元素を除去する工程(以下、単に金属元素除去工程とも呼ぶ)を実施する。以下に、係る工程について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ70により制御される。
【0037】
(ボート搬入)
まず、反応炉40(反応容器43)内に、ウエハ54を装填していない空のボート30を下方から搬入(ボートロード)する。空のボート30の搬入が完了すると、炉口シールキャップ48により反応容器43内が密閉される。なお、ボート30は空の場合に限らず、ダミーのウエハ等を保持していてもよい。
【0038】
(ガス供給工程)
そして、バルブ72cを開き、マスフローコントローラ72bにより流量調整された非酸化性ガスを、非酸化性ガス供給管72、ガス導入管60、ガス供給口56、ガス導入経路64、ノズル66を介して反応容器43内に供給する。反応容器43内に供給された非酸化性ガスは、ガス排気口59を介して排気管62から排気される。真空ポンプ63cを作動させつつ、圧力センサが検出した圧力に基づいてAPCバルブ62bの開度を制御し、反応容器43内の圧力が所定の処理圧力となるよう制御する。
【0039】
(昇温及び維持工程)
そして、反応容器43内への非酸化性ガスの供給及び反応容器43内の排気を継続しつつ、温度センサが検出した温度に基づいてヒータ46の温度を制御し、反応容器43内の温度が所定の処理温度(例えば1000℃以上、好ましくは1200℃程度)になるように制御する(昇温工程)。そして、昇温が完了したら、この処理温度に応じた時間だけ反応容器43内の加熱状態を維持する(維持工程)。これにより、反応管42、ボート30、第2の断熱部材50、ノズル66等のSiC部材の表面から金属元素が離脱(外部拡散)する。SiC部材から離脱した金属元素は、非酸化性ガスと共にガス排気口59を介して排気管62から排出される。
【0040】
なお、維持時間は、一般的な拡散方程式等を応用することで算出できるが、例えば反応容器43内を1200℃程度に加熱する場合には、20時間程度とすればよい。処理温度に応じた時間だけ反応容器43内の加熱状態を維持することで、SiC部材から金属元素を確実に除去することが可能となる。
【0041】
(降温、大気圧復帰工程)
SiC部材からの金属元素が充分に離脱されたら、温度センサが検出した温度に基づいてヒータ46の温度を制御し、反応容器43内の温度を例えば600℃程度の温度に降温させる。そして、バルブ72cを閉じ、反応容器43内への処理ガスの供給を停止する。そして、圧力センサが検出した圧力に基づいてAPCバルブ62bの開度を制御し、反応容器43内の圧力が大気圧となるよう制御する。
【0042】
(ボート搬出)
そして、処理後のボート30を降下させ、反応容器43内から搬出(ボートアンロード)する。そして、ボート30が所定温度に冷却されるまで、ボート30を所定位置で待機させ、本実施形態にかかる金属元素除去工程を終了する。その後は、上述したウエハ54の熱処理工程を実施することができる。
【0043】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0044】
(a)本実施形態によれば、金属元素除去工程を行うことで、反応管42、ボート30、第2の断熱部材50、ノズル66等のSiC部材の表面から、金属元素を離脱(外部拡散)させ、反応容器43外へ排出させることができる。金属元素除去工程の後にウエハ54の熱処理工程を実施することで、ウエハ54の金属汚染を抑制でき、半導体装置の特性の劣化を防ぐことが出来る。
【0045】
なお、本実施形態によれば、処理温度に応じた時間だけ反応容器43内の加熱状態を維持することで、SiC部材から金属元素を確実に除去することが可能である。図3の(a)は、処理温度を1200℃、維持時間を1時間として金属元素除去工程を実施した後、熱処理工程を施したウエハ54表面のSPV測定結果を例示する図である。また、図3の(b)は、処理温度を1200℃、維持時間を20時間として金属元素除去工程を実施した後、熱処理工程を施したウエハ54表面のSPV(Surface Photo Voltage)測定結果を例示する図である。
【0046】
図3の(a)に示すように、加熱状態の維持時間を1時間とした場合には、熱処理工程を施したウエハ54の表面に金属元素濃度の高い領域が存在していることが分かる。すなわち、維持時間が短い場合には、SiC部材からの金属元素の除去が不充分となり、ウエハ54に金属汚染が発生してしまっていることが分かる。なお、ウエハ54の中心付近の2箇所の汚染は、ボート30等のSiC部材とウエハ54とが直接接触したことにより生じたものであると考えられる。また、ウエハ54の周辺を囲う汚染域は、ウエハ54を囲
うように設けられた反応管42から離脱した金属元素がウエハ54に吸着したことにより生じたものであると考えられる。
【0047】
これに対し、図3の(b)に示すように、加熱状態の維持時間を20時間とした場合には、熱処理工程を施したウエハ54の表面に金属元素濃度の高い領域が存在しないことが分かる。このように、処理温度に応じた時間(この場合には20時間)だけ反応容器43内の加熱状態を維持することで、SiC部材から金属元素を確実に除去でき、ウエハ54の金属汚染を確実に抑制できることが分かる。なお、ウエハ54の中心領域に点在する特に色の薄い領域は、金属元素の濃度がSPVの検出下限以下であることを示している。
【0048】
(b)本実施形態によれば、反応管42、ボート30、第2の断熱部材50、ノズル66等のSiC部材の取り外しや取り付け作業を繰り返し行う必要がない。また、HF水溶液を用いたSiO膜の除去作業を繰り返し行う必要もない。そのため、金属元素の除去作業に要する時間を大幅に短縮でき、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0049】
(c)本実施形態によれば、人手を介したSiC部材の取り付けや取り外し作業を繰り返し行う必要がない。そのため、部材の破損や汚染等の発生を抑制できる。
【0050】
(d)本実施形態によれば、ダミーの基板を用いた熱処理を繰り返し行う必要がない。そのため、金属元素の除去に関するコストを低減できる。
【0051】
(e)本実施形態によれば、金属元素除去工程及びウエハ54の熱処理工程を、コントローラ70により連続的かつ自動的に行うことが可能となる。
【0052】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0053】
例えば、上述の実施形態では維持工程を連続して行うこととしたが、維持工程は複数の工程に分割してもよい。すなわち、ボート30の搬入、反応容器43内の昇温、加熱状態の維持、降温、ボート30の搬出を繰り返し、その合計の維持時間が上述の時間となるようにしてもよい。例えば、20時間程度の加熱状態の維持が必要な場合には、10時間の維持を2回実施してもよく、5時間の維持を4回実施してもよい。なお、維持工程を分割する際には、それぞれの維持工程で処理温度を変更させてもよい。
【0054】
また、例えば、上記実施の形態の説明においては、一度に複数枚の基板を熱処理するバッチ式の熱処理装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、枚葉式のものであってもよい。
【0055】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0056】
本発明の一態様によれば、
炭化珪素からなる部材が内部に露出した反応容器と、
前記反応容器内を加熱する加熱部と、
前記反応容器内に非酸化性ガスを供給するガス供給部と、
前記反応容器内を排気する排気部と、
前記反応容器内に非酸化性ガスを供給しつつ前記反応容器内を排気すると共に、前記反応容器内を処理温度に加熱して所定時間保持するように、前記ガス供給部、前記排気部、及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0057】
好ましくは、
前記反応容器内で前記基板を保持する基板保持具を備え、
前記基板保持具は炭化珪素からなる部材を備える。
【0058】
また好ましくは、
前記ガス供給部は前記反応容器内にガスを供給するガス供給ノズルを備え、
前記ガス供給ノズルは炭化珪素からなる。
【0059】
また好ましくは、
非酸化性ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスのいずれかのガスを含む。
【0060】
また好ましくは、
前記処理温度は1000℃以上である。
【0061】
本発明の他の態様によれば、
炭化珪素からなる部材が内部に設けられた反応容器内にガス供給部により非酸化性ガスを供給しつつ、前記反応容器内を排気部により排気すると共に、前記反応容器内を加熱部により処理温度に加熱して所定時間保持する半導体装置の製造方法が提供される。
【0062】
本発明の更に他の態様によれば、
炭化珪素からなる部材が内部に設けられた反応容器内にガス供給部により非酸化性ガスを供給しつつ、前記反応容器内を排気部により排気すると共に、前記反応容器内を加熱部により処理温度に加熱して所定時間保持する基板の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0063】
10 熱処理装置(基板処理装置)
30 ボート(基板保持具)
43 反応容器
46 ヒータ(加熱部)
54 ウエハ(基板)
70 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる部材が内部に露出した反応容器と、
前記反応容器内を加熱する加熱部と、
前記反応容器内に非酸化性ガスを供給するガス供給部と、
前記反応容器内を排気する排気部と、
前記反応容器内に非酸化性ガスを供給しつつ前記反応容器内を排気すると共に、前記反応容器内を処理温度に加熱して所定時間保持するように、前記ガス供給部、前記排気部、及び前記加熱部を制御する制御部と、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−199134(P2011−199134A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66211(P2010−66211)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】