説明

外観検査装置及び外観検査方法

【課題】検査ウインドウを自動的に精度よく設定する。
【解決手段】外観検査装置10は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する。外観検査装置10は、被検査体12にパターンを投射する投射ユニット26と、パターンが投射された被検査体12のパターン画像に基づいて被検査体12の表面の高さ情報を生成する高さ測定部32と、高さ情報を用いて特定される被検査体画像上での部品の配置に基づいて被検査体画像に検査ウインドウを設定する検査データ処理部34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外観検査用画像と高さ測定用画像を用いてハンダの塗布状態の良否を判定する外観検査装置が記載されている。この装置は、クリームハンダの塗布エリアの面積と高さからクリームハンダの体積を求め、適正な塗布量であるかどうかを検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば多数の部品が高密度に実装されているプリント基板等の被検査体を検査する場合には、多数の部品及びこれらと基板との膨大な接続箇所をそれぞれ検査区域として事前に設定する必要がある。個々の検査区域は一般に検査ウインドウとも呼ばれる。作業負担を軽減するためには検査ウインドウの設定の自動化を推進することが好ましい。しかし、検査用に撮像した画像を直接処理することによって設定を完全に自動化することは容易ではない。その1つの理由は、実装部品の外観が必ずしも検査を考慮して設計されているわけではないからである。そのため、部品によっては画像上でその周囲の基板表面の色または明るさに似ており、接続箇所を正確に判別することが容易でない場合もある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、検査ウインドウを検査画像に自動的に精度よく設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を撮像して得られる被検査体画像を使用して前記被検査体を検査する外観検査装置である。この装置は、前記被検査体にパターンを投射する投射ユニットと、前記パターンが投射された前記被検査体のパターン画像に基づいて前記被検査体の表面の高さ情報を生成する高さ測定部と、前記高さ情報を用いて特定される前記被検査体画像上での前記部品の配置に基づいて前記被検査体画像に検査ウインドウを設定する検査データ処理部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、外観検査方法である。この方法は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の画像を取得し、前記被検査体の表面の高さを被検査体画像の各画素に対応づけて前記被検査体の高さ分布を作成し、前記高さ分布に基づいて前記被検査体画像上で前記部品の配置を特定することを含む。
【0008】
なお、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査ウインドウを自動的に精度よく設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る被検査体画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る高さマップの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る検査ウインドウ設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る部品背面特定処理を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るリード背面判定処理を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るリード配置判定処理を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る検査ウインドウを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置10を模式的に示す図である。外観検査装置10は、被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する。被検査体12は例えば、多数の電子部品が実装されている電子回路基板である。外観検査装置10は、電子部品の実装状態の良否を被検査体画像に基づいて判定する。この検査は通常、各部品に対し複数の検査項目について行われる。検査項目とはすなわち良否判定を要する項目である。検査項目には例えば、部品そのものの欠品や位置ずれ、極性反転などの部品配置についての検査項目と、ハンダ付け状態や部品のリードピンの浮きなどの部品と基板との接続部についての検査項目とが含まれる。
【0012】
外観検査装置10は、被検査体12を保持するための検査テーブル14と、被検査体を照明し撮像する撮像ユニット16と、検査テーブル14に対し撮像ユニット16を移動させるXYステージ18と、撮像ユニット及びXYステージを制御するための制御ユニット20と、を含んで構成される。なお説明の便宜上、図1に示すように、検査テーブル14の被検査体配置面をXY平面とし、その配置面に垂直な方向(すなわち撮像ユニット16による撮像方向)をZ方向とする。
【0013】
撮像ユニット16は、XYステージ18の移動テーブル(図示せず)に取り付けられており、XYステージ18によりX方向及びY方向のそれぞれに移動可能である。XYステージ18は例えばいわゆるH型のXYステージである。よってXYステージ18は、Y方向に延びるY方向ガイドに沿って移動テーブルをY方向に移動させるYリニアモータと、Y方向ガイドをその両端で支持しかつ移動テーブルとY方向ガイドとをX方向に移動可能に構成されている2本のX方向ガイドとXリニアモータと、を備える。なおXYステージ18は、撮像ユニット16をZ方向に移動させるZ移動機構をさらに備えてもよいし、撮像ユニット16を回転させる回転機構をさらに備えてもよい。外観検査装置10は、検査テーブル14を移動可能とするXYステージをさらに備えてもよく、この場合、撮像ユニット16を移動させるXYステージ18は省略されてもよい。
【0014】
撮像ユニット16は、カメラユニット22と、照明ユニット24と、投射ユニット26と、を含んで構成される。一実施例においては、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は一体の撮像ユニット16として構成されていてもよい。この一体の撮像ユニット16において、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26の相対位置は固定されていてもよいし、各ユニットが相対移動可能に構成されていてもよい。また、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は別体とされ、別々に移動可能に構成されていてもよい。
【0015】
カメラユニット22は、対象物の2次元画像を生成する撮像素子と、その撮像素子に画像を結像させるための光学系(例えばレンズ)とを含む。カメラユニット22は例えばCCDカメラである。カメラユニット22の最大視野は、検査テーブル14の被検査体載置区域よりも小さくてもよい。この場合、カメラユニット22は、複数の部分画像に分割して被検査体12の全体を撮像する。制御ユニット20は、カメラユニット22が部分画像を撮像するたびに次の撮像位置へとカメラユニット22が移動されるようXYステージ18を制御する。制御ユニット20は、部分画像を合成して被検査体12の全体画像を生成する。
【0016】
なお、カメラユニット22は、2次元の撮像素子に代えて、1次元画像を生成する撮像素子を備えてもよい。この場合、カメラユニット22により被検査体12を走査することにより、被検査体12の全体画像を取得することができる。
【0017】
照明ユニット24は、カメラユニット22による撮像のための照明光を被検査体12の表面に投光するよう構成されている。照明ユニット24は、カメラユニット22の撮像素子により検出可能である波長域から選択された波長または波長域の光を発する1つまたは複数の光源を備える。照明光は可視光には限られず、紫外光やX線等を用いてもよい。光源が複数設けられている場合には、各光源は異なる波長の光(例えば、赤色、青色、及び緑色)を異なる投光角度で被検査体12の表面に投光するよう構成される。
【0018】
一実施例においては、照明ユニット24は、被検査体12の検査面(すなわち撮像ユニット16に対向する面)に垂直に照明光を投射する落射照明源24aと、被検査体12の検査面に対し斜め方向から照明光を投射する側方照明源24bと、を備えてもよい。落射照明源24a及び側方照明源24bはそれぞれリング照明源であってもよい。すなわち、落射照明源24aは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し実質的に垂直に照明光を投射するようカメラユニット22の近傍に配置されている。側方照明源24bは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し斜めに照明光を投射するよう落射照明源24aよりも外側に配置されている。
【0019】
図1に示されるように、落射照明源24aは1つのリング照明源を含み、側方照明源24bは複数(図においては2つ)のリング照明源を含んでもよい。例えば、落射照明源24aは青色照明源であり、側方照明源24bは緑色照明源及び赤色照明源であってもよい。なお、これとは異なり、落射照明源24aが複数の照明源を含み、側方照明源24bが1つの照明源を含んでもよい。あるいは、落射照明源24a及び側方照明源24bのそれぞれが赤色照明源、青色照明源、及び緑色照明源を含んでもよい。
【0020】
投射ユニット26は、被検査体12の検査面にパターンを投射する。パターンが投射された被検査体12は、カメラユニット22により撮像される。外観検査装置10は、撮像された被検査体12のパターン画像に基づいて被検査体の検査面の高さマップを作成する。制御ユニット20は、投射パターンに対するパターン画像の局所的な不一致を検出し、その局所的な不一致に基づいてその部位の高さを求める。つまり、投射パターンに対する撮像パターンの変化が、検査面上の高さ変化に対応する。
【0021】
投射パターンは、明線と暗線とが交互に周期的に繰り返される1次元の縞パターンであることが好ましい。投射ユニット26は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から縞パターンを投影するよう配置されている。被検査体の検査面における高さの非連続は、縞パターン画像においてパターンのずれとして表れる。よって、パターンのずれ量から高さ差を求めることができる。一実施例においては、サインカーブに従って明るさが変化する縞パターンを用いるPMP(Phase Measurement Profilometry)法により制御ユニット20は高さマップを作成する。PMP法においては縞パターンのずれ量がサインカーブの位相差に相当する。
【0022】
投射ユニット26は、パターン形成装置と、パターン形成装置を照明するための光源と、パターンを被検査体12の検査面に投影するための光学系と、を含んで構成される。パターン形成装置は例えば、液晶ディスプレイ等のように所望のパターンを動的に生成しうる可変パターニング装置であってもよいし、ガラスプレート等の基板上にパターンが固定的に形成されている固定パターニング装置であってもよい。パターン形成装置が固定パターニング装置である場合には、固定パターニング装置を移動させる移動機構を設けるか、あるいはパターン投影用の光学系に調整機構を設けることにより、パターンの投影位置を可変とすることが好ましい。
【0023】
投射ユニット26は、カメラユニット22の周囲に複数設けられていてもよい。複数の投射ユニット26は、それぞれ異なる投射方向から被検査体12にパターンを投影するよう配置されている。このようにすれば、検査面における高さ差によって影となりパターンが投影されない領域を小さくすることができる。
【0024】
一実施例においては3つの投射ユニット26がカメラユニット22の周囲に設けられてもよい。例えば、図示されるように第1投射ユニット26aに対向して第2投射ユニット26bが配置され、第1投射ユニット26aと第2投射ユニット26bとの中間にカメラユニット22が配置される。第3投影ユニット(図示せず)は、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面(図1の紙面)の面外に配置される。例えば第3投影ユニットは、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面に垂直でカメラユニット22の光軸を含む面に沿って配置される。各投射ユニットはカメラユニット22から等距離に配置される。図示される実施例においては落射照明源24aと側方照明源24bとの間に投射ユニット26が設けられているが、投射ユニット26の配置はこれに限られず、例えば側方照明源24bの外側に投射ユニット26が設けられてもよい。
【0025】
図1においては参考のため、落射照明源24aから投射され被検査体12の検査面で反射してカメラユニット22に投影される光束を破線の矢印で示している。また、側方照明源24b及び投射ユニット26からの投射も同様に破線の矢印で示している。
【0026】
制御ユニット20は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0027】
図1には、制御ユニット20の構成の一例が示されている。制御ユニット20は、検査制御部28とメモリ30とを含んで構成される。検査制御部28は、高さ測定部32と検査データ処理部34と検査部36とを含んで構成される。また、外観検査装置10は、ユーザまたは他の装置からの入力を受け付けるための入力部38と、検査に関連する情報を出力するための出力部40とを備えており、入力部38及び出力部40はそれぞれ制御ユニット20に接続されている。入力部38は例えば、ユーザからの入力を受け付けるためのマウスやキーボード等の入力手段や、他の装置との通信をするための通信手段を含む。出力部40は、ディスプレイやプリンタ等の公知の出力手段を含む。
【0028】
検査制御部28は、入力部38からの入力及びメモリ30に記憶されている検査関連情報に基づいて、検査のための各種制御処理を実行するよう構成されている。検査関連情報には、被検査体12の2次元画像、被検査体12の高さマップ、及び基板検査データが含まれる。検査に先立って、検査データ処理部34は、すべての検査項目に合格することが保証されている被検査体12の2次元画像及び高さマップを使用して基板検査データを作成する。検査部36は、作成済みの基板検査データと、検査されるべき被検査体12の2次元画像及び高さマップとに基づいて検査を実行する。
【0029】
基板検査データは基板の品種ごとに作成される検査データである。基板検査データはいわば、その基板に実装された部品ごとの検査データの集合体である。各部品の検査データは、その部品に必要な検査項目、各検査項目についての画像上の検査区域である検査ウインドウ、及び各検査項目について良否判定の基準となる検査基準を含む。検査ウインドウは各検査項目について1つまたは複数設定される。例えば部品のハンダ付けの良否を判定する検査項目においては通常、その部品のハンダ付け領域の数と同数の検査ウィンドウがハンダ付け領域の配置に対応する配置で設定される。また、被検査体画像に所定の画像処理をした画像を使用する検査項目については、その画像処理の内容も検査データに含まれる。
【0030】
検査データ処理部34は、基板検査データ作成処理として、その基板に合わせて検査データの各項目を設定する。例えば検査データ処理部34は、その基板の部品レイアウトに適合するように各検査ウインドウの位置及び大きさを各検査項目について自動的に設定する。検査データ処理部34は、検査データのうち一部の項目についてユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、検査データ処理部34は、ユーザによる検査基準のチューニングを受け入れるようにしてもよい。検査基準は高さ情報を用いて設定されてもよい。
【0031】
検査制御部28は、基板検査データ作成の前処理として被検査体12の撮像処理を実行する。この被検査体12はすべての検査項目に合格しているものが用いられる。撮像処理は上述のように、照明ユニット24により被検査体12を照明しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12の部分画像を順次撮影することにより行われる。被検査体12の全体がカバーされるように複数の部分画像が撮影される。検査制御部28は、これら複数の部分画像を合成し、被検査体12の検査面全体を含む基板全面画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30に基板全面画像を記憶する。
【0032】
また、検査制御部28は、高さマップ作成のための前処理として、投射ユニット26により被検査体12にパターンを投射しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12のパターン画像を分割して順次撮影する。投射されるパターンは好ましくは、PMP法に基づきサインカーブに従って明るさが変化する縞パターンである。検査制御部28は、撮影した分割画像を合成し、被検査体12の検査面全体のパターン画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30にパターン画像を記憶する。なお、全体ではなく検査面の一部についてパターン画像を生成するようにしてもよい。
【0033】
高さ測定部32は、撮像パターン画像上のパターンに基づいて被検査体12の検査面全体の高さマップを作成する。高さ測定部32はまず、撮像パターン画像と基準パターン画像との局所的な位相差を画像全体について求めることにより、被検査体12の検査面の位相差マップを求める。基準パターン画像とは、投射ユニット26により投射されたパターン画像(つまり投射ユニット26に内蔵されているパターン形成装置が生成した画像)である。高さ測定部32は、高さ測定の基準となる基準面と位相差マップとに基づいて被検査体12の高さマップを作成する。基準面は例えば、検査される電子回路基板の基板表面である。基準面は必ずしも平面ではなくてもよく、基板の反り等の変形が反映された曲面であってもよい。
【0034】
なお、高さ測定部32は、具体的には、撮像パターン画像の各画素と、当該画素に対応する基準パターン画像の画素とで縞パターンの位相差を求める。高さ測定部32は、位相差を高さに換算する。高さへの換算は、当該画素近傍における局所的な縞幅を用いて行われる。撮像パターン画像上の縞幅が場所により異なるのを補償するためである。検査面上での位置により投射ユニット26からの距離が異なるために、基準パターンの縞幅が一定であっても、検査面のパターン投影領域の一端から他端へと線形に縞幅が変化してしまうからである。高さ測定部32は、換算された高さと基準面とに基づいて基準面からの高さを求め、被検査体12の高さマップを作成する。
【0035】
検査制御部28は、被検査体12の高さマップが有する高さ情報を被検査体12の2次元画像の各画素に対応づけることにより、高さ分布を有する被検査体画像を作成してもよい。検査制御部28は、高さ分布付き被検査体画像に基づいて被検査体12の3次元モデリング表示を行うようにしてもよい。また、検査制御部28は、2次元の被検査体画像に高さ分布を重ね合わせて出力部40に表示してもよい。例えば、被検査体画像を高さ分布により色分け表示するようにしてもよい。図2は、被検査体画像の一例であり、図3は、図2に示される被検査体画像の高さ分布をグレースケールで表示したものである。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る検査ウインドウ設定処理を説明するためのフローチャートである。この検査ウインドウ設定処理は、ある部品のある検査項目について検査ウインドウを自動的に設定する処理であり、上述の検査データ処理部34により実行される。検査データ処理部34は、高さ情報を用いて被検査体画像上の検査対象要素の配置を特定し、当該検査対象要素に検査ウィンドウを設定する。例えば、検査データ処理部34は、高さ情報を用いて被検査体画像上で部品の配置及び形状を特定し、当該部品及びその周囲の画像領域を解析することにより部品の接続部を検出する。検査データ処理部34は、検出された接続部に検査ウインドウを設定する。あるいは、検査データ処理部34は、高さ情報を用いて被検査体画像上で部品背面を特定し、その部品背面に検査ウインドウを設定してもよい。
【0037】
検査ウインドウ設定処理は例えばユーザの指示により特定の部品の特定の検査項目について実行され、その部品及び検査項目についての検査ウインドウが被検査体画像上に設定される。あるいは、検査ウインドウ設定処理は、基板検査データ作成処理において各部品の各検査項目に対して順次繰り返して実行され、被検査体画像上に多数の検査ウインドウが自動的に設定される。
【0038】
検査ウインドウ設定処理において、検査データ処理部34はまず、ウインドウ設定対象となる部品の背面の形状及び配置を特定する(S10)。部品の背面とは言い換えれば、実装された状態における部品の上面であり、撮像ユニット16に対向する部品表面である。検査データ処理部34は、高さマップにおける部品上の所定位置の高さをその部品の高さと認識し、その所定位置を含みかつその部品高さを有する高さマップ上の領域を部品背面と特定する。このようにして、図5に示されるように、部品背面領域50の形状、位置、及び向きを特定することができる。
【0039】
ここで所定位置は部品の中心位置であってもよく、その中心位置を含む微小領域の平均高さをその部品の高さと認識してもよい。ユーザの選択した部品に対して検査ウインドウ設定処理を行う場合には、上述の所定位置は、被検査体画像上のユーザの選択位置に対応する高さマップ上の位置であってもよい。部品背面領域の特定処理は、微小領域の平均高さを含む許容範囲にある高さを有する画素からなる画像領域を部品背面と特定してもよい。
【0040】
また、部品背面領域の特定処理は、微小領域を含みかつその部品高さを有する領域に外接する長方形を部品背面と特定してもよい。この場合、部品背面と特定した長方形の角部における高さがその部品の高さよりも有意に低いか否か(例えば上記の許容範囲を下回るか否か)を判定し、判定結果に応じて部品背面形状を特定してもよい。例えば、部品背面と特定した長方形の4つの角部における高さがその部品の高さよりも有意に低い場合(例えば上記の許容範囲を下回る場合)には、部品背面形状が円形であると判定してもよい。この場合、典型的にはその部品はアルミ缶コンデンサであると考えられる。なお、検査データ処理部34は、特定した部品背面形状の左右方向または上下方向の非対称性に基づいて部品の配置方向を決定してもよい。
【0041】
次に検査データ処理部34は、その部品のハンダ付けがどの向きになされているかを判定するハンダ付け辺特定処理を行う(S11)。例えば、部品の上端及び下端(例えば図1における+X側及び−X側に相当)でハンダ付けがされているのか、あるいは、部品の左端及び右端(例えば図1における+Y側及び−Y側に相当)でハンダ付けがされているのかを判定する。検査データ処理部34は、側方照明により撮像された被検査体画像に基づいてハンダ付けの向きを判定してもよい。ハンダ傾斜面を確認しやすいからである。ハンダ傾斜面の高さ測定精度が十分にあると考えられる場合には、検査データ処理部34は、高さマップに基づいてハンダ付けの向きを判定してもよい。なお、このハンダ付け辺特定処理は省略することも可能である。
【0042】
検査データ処理部34は、その部品の周囲にリードピンの背面が存在するか否かを判定するリード背面判定処理を行う(S12)。図6に示されるように、検査データ処理部34は、リード背面54に相当する高さ領域が部品背面領域50の周辺領域52に存在するか否かを判定する。図6に示される実施例においては上述のハンダ付け辺特定処理によりハンダ付けが部品の上端及び下端でなされていることがわかっているので、周辺領域52を部品背面領域50の上下に設定してリード背面54を探索している。ハンダ付け辺特定処理を省略する実施例においては、部品背面領域50の上下左右に周辺領域52を設定してリード背面54を探索すればよい。検査データ処理部34は、リード背面54を検出した場合にはその部品がリード付きの部品であると認識し、リード背面54を検出しなかった場合にはその部品がリードを有しないいわゆるチップ部品であると認識する。
【0043】
検査データ処理部34は、その部品がリード付きの部品である場合には、リードピンの配列ピッチ及び本数を決定するリード配置判定処理を行う(S13)。検査データ処理部34は例えば、上述の周辺領域52をX方向及びY方向に走査する。高さマップに周期的変化が検出された方向をリードピン配列方向(図7においてはX方向)であると判定する。リードピン配列方向の周期的高さ変化において、リード高さ基準値Mを超える高さ領域の周期及び数に基づいてリードピンの配列ピッチ及び本数が決定される。このようにして、基板と部品との接続部を被検査体画像から検出し、接続部の配置を含む部品レイアウトを被検査体画像上で特定することができる。
【0044】
検査データ処理部34は、個々のリード背面54の範囲を決定する(S14)。検査データ処理部34は例えば、リード高さ基準値Mを超える高さ領域をリード背面54の範囲と決定する。検査データ処理部34は同様にして、個々のハンダ付け範囲を決定してもよい。ハンダ付け範囲は側方照明により撮像された被検査体画像に基づいて決定されてもよい。
【0045】
検査データ処理部34は、決定されたリード背面及びハンダ付けの範囲に基づいて検査ウインドウを設定する(S15)。図8に示すように、検査ウインドウ56は例えば、決定されたリード背面の範囲に一致するように、またはその範囲を包含するように設定される。同様に、ハンダ付けの範囲またはそれを包含する範囲にも検査ウインドウは設定される。検査ウインドウ56は通常、長方形に設定される。
【0046】
本発明の一実施形態に係る検査ウインドウ設定処理によれば、被検査体12の高さ情報を用いて特定される部品レイアウトに基づいて、被検査体画像に検査ウインドウを自動的に設定することができる。特に、基板と部品との接続部に検査ウインドウを精度よく設定することができる。多数の部品が高密度に実装されているプリント基板においては膨大な数の接続部が存在するので、上述の検査ウインドウの自動設定処理により検査データ作成の作業負担を大きく軽減することができる。
【0047】
図9は、本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。外観検査装置10は、作成済みの基板検査データを用いて検査対象の電子回路基板の検査を行う。まず外観検査装置10は、基板全面画像を作成する(S20)。基板全面画像は、上述のように基板検査データ作成の前処理として説明した方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板を分割して撮影し、得られた画像を合成する。このようにして、外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子回路基板の全面の2次元画像である基板全面画像を作成する。基板全面画像は図2に示される画像と同様の画像である。
【0048】
次に、外観検査装置10は、基板全面高さマップを作成する(S21)。基板全面高さマップは、上述の方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板にパターンを投射しつつ分割して撮影する。得られた分割画像から基板全体のパターン画像を合成する。外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子回路基板の全面の高さマップをパターン画像に基づいて作成する。基板全面高さマップは、例えば図3に示される形式で外観検査装置10の表示部に表示される。
【0049】
外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用してその基板の検査を実行する(S22)。外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用することにより、各検査項目に必要な検査ウインドウを基板全面画像上に設定する。検査項目によっては、基板全面画像に画像処理をして得られる専用の画像を用いて検査する場合もある。この場合、外観検査装置10は、基板検査データに基づいてその専用画像上に検査ウインドウを設定する。外観検査装置10は、検査ウインドウごとに検査基準に従って各検査項目の良否を判定する。
【0050】
検査基準は高さについてのしきい値であってもよい。すなわち外観検査装置10は、基板全面高さマップから得られる検査ウインドウ内の高さ分布に基づいて良否を判定してもよい。高さ情報を検査基準に用いることにより、2次元画像からは判定が必ずしも容易ではない検査項目について精度よく判定し得る。例えば、リードの浮きを簡単なアルゴリズムで精度よく判定することができる。リードピンが基板表面に接続されずに上方に浮いているか否かを上方から撮像した2次元画像により識別することは必ずしも容易ではない。本実施形態によればリードピン背面の高さを測定することができるので、浮きの有無を精度よく判別することができる。外観検査装置10は、検査結果を出力して処理を終了する。
【0051】
なお、基板全面画像を作成してから基板全面高さマップを作成する代わりに、基板全面高さマップを先に作成するようにしてもよい。また、外観検査装置10は、基板全面画像と基板全面高さマップとを並行して作成してもよい。この場合、被検査体12のある部分領域に対し照明ユニット24及び投射ユニット26の照明及びパターン投射のもとで順次撮像したうえで次の部分領域の撮像のための撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動がなされるように、撮像ユニット16及びXYステージ18が制御されてもよい。また、外観検査装置10は、被検査体12の全体ではなく一部の領域について2次元画像及び高さマップを作成し、その領域について検査をするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 外観検査装置、 12 被検査体、 14 検査テーブル、 16 撮像ユニット、 18 XYステージ、 20 制御ユニット、 22 カメラユニット、 24 照明ユニット、 26 投射ユニット、 28 検査制御部、 30 メモリ、 32 高さ測定部、 34 検査データ処理部、 36 検査部、 38 入力部、 40 出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を撮像して得られる被検査体画像を使用して前記被検査体を検査する外観検査装置であって、
前記被検査体にパターンを投射する投射ユニットと、
前記パターンが投射された前記被検査体のパターン画像に基づいて前記被検査体の表面の高さ情報を生成する高さ測定部と、
前記高さ情報を用いて特定される前記被検査体画像上での前記部品の配置に基づいて前記被検査体画像に検査ウインドウを設定する検査データ処理部と、を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記検査データ処理部は、前記高さ情報を用いて前記基板と前記部品との接続部を前記被検査体画像から検出し、該接続部に前記検査ウインドウを設定することを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記部品を前記基板に接続するためのリード線であり、
前記検査データ処理部は、前記高さ情報を用いて前記部品及びその周囲の画像領域を解析することにより前記リード線の配列ピッチ及び本数を決定することを特徴とする請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記高さ情報を用いて設定された検査基準に基づいて前記被検査体の検査をする検査部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の画像を取得し、
前記被検査体の表面の高さを被検査体画像の各画素に対応づけて前記被検査体の高さ分布を作成し、
前記高さ分布に基づいて前記被検査体画像上で前記部品の配置を特定することを含むことを特徴とする被検査体の外観検査方法。

【図1】
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【図4】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149736(P2011−149736A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9342(P2010−9342)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】