説明

多層配線構造の製造方法

【課題】高集積化、微細化されたパターンにおいて、ビアホール等を良好に埋め込み、かつ電気抵抗率の低い埋め込み型の多層配線構造を提供する。
【解決手段】埋め込み型の多層配線構造の製造方法が、絶縁層に孔部を形成する工程と、孔部の表面に、物理的真空堆積法で、平均膜厚が0.2nm以上で10nm以下である触媒層6、または触媒層の平均膜厚が、触媒層の材料原子の1原子層以上で10nm以下である触媒層6、を形成する工程と、触媒層を触媒に用いた無電解めっき法により、孔部の表面に無電解めっき層7を形成する工程と、無電解めっき層をシード層に用いた電解めっき法で、孔部を電解めっき層8で埋め込む工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型の多層配線構造の製造方法に関し、特に、物理的真空堆積法を用いた埋め込み型の多層配線構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダマシンプロセスを用いた、銅の埋込み配線の作製方法では、TaNなどのバリアメタル層をビアホール内に形成した後、バリアメタル層上にシード層を形成し、かかるシード層を用いた電解めっきによりビアホールを埋め込んでいた(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
図5は、従来の銅の埋め込み配線の製造工程の断面図であり、かかる製造工程は以下の工程(1)〜(4)を含む。
【0004】
工程1:図5(a)に示すように、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜51に孔部52を設け、続いて、スパッタ法を用いて、孔部52の表面にTaN等のバリアメタル層53を形成する。
【0005】
工程2:図5(b)に示すように、塩化スズ水溶液を用いた湿式法により、バリアメタル層53の表面等にスズを吸着させた後に、塩化パラジウム水溶液を用いてスズをパラジウムで置換し、Pdのコロイド粒子54を吸着させる(湿式法)。
【0006】
工程3:図5(c)に示すように、Pdのコロイド粒子54を触媒に用いた無電解めっきにより、膜厚が約10nmのCuのシード層55を形成する。
【0007】
工程4:図5(d)に示すように、Cuのシード層55を無電解めっきで形成することにより、アスペクト比の大きな孔部52内にもシード層55が形成できる。続いて、シード層55を用いた電解めっきにより孔部52をCuで埋め込み、埋め込み配線を形成する(図示せず)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−336486号公報
【非特許文献1】S.Shingubara, T.Ida, H.Sawa, H.Sakaue, and T.Takahagi: "Effect of Pd Catalyst Adsorption on Cu Filling Characteristics in Electroless Plating", Advanced Metallization Conference 2000, Mat. Res. Sci. Conf. Proc. ULSI-XVI (2001), pp.229-234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、湿式法でPdのコロイド粒子54を形成した場合、コロイド粒子54は、孔部52の表面に、相互の距離が離れた、吸着密度の低い状態で吸着する。このため、コロイド粒子54を触媒に用いた無電解めっきで形成するシード層55の膜厚を薄くすると、図5(d)に示すようなボイド56がシード層55に形成される。具体的には、ボイド56を発生させることなく10nm以下のい薄膜のシード層55を形成できないため、埋め込み配線幅が100nm以下のような微細配線の作製には、かかる湿式法が適用できなかった。
【0010】
本発明は、高集積化、微細化されたパターンにおいて、ビアホール等を良好に埋め込み、かつ電気抵抗率の低い埋め込み型の多層配線構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、発明者らは鋭意研究の結果、物理的真空堆積法でPdのコロイド粒子を吸着させて触媒層を形成することにより、ボイドを発生させることなく薄膜のシード層が形成できること、触媒層の平均膜厚を制御することにより埋め込み配線の高抵抗率化を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、埋め込み型の多層配線構造の製造方法であって、絶縁層に孔部を形成する工程と、孔部の表面に、物理的真空堆積法で、平均膜厚が0.2nm以上で10nm以下である触媒層、または触媒層の平均膜厚が、触媒層の材料原子の1原子層以上で10nm以下である触媒層、を形成する堆積工程と、触媒層を触媒に用いた無電解めっき法により、孔部の表面に無電解めっき層を形成する工程と、無電解めっき層をシード層に用いた電解めっき法で、孔部を電解めっき層で埋め込む埋め込み工程とを含むことを特徴とする多層配線構造の製造方法である。
【0013】
上記触媒層の平均膜厚は、5nm以下であることが好ましい。
【0014】
上記触媒層は、パラジウム、白金、および金からなる群から選択される一つの材料からなることが好ましい。
【0015】
上記堆積工程は、クラスタイオンビーム法で、好適には直径が10nm以下、更に好適には5nm以下のクラスタ粒子を、上記孔部の表面に吸着させる工程である。
【0016】
また、上記堆積工程に先だって、上記孔部の表面に、TaN、WN、およびTiNからなる群から選択される材料を主成分とするバリアメタル層を形成する工程を含むものであっても良い。
【0017】
また、上記埋め込み工程の後に、上記多層配線構造を、200℃以上で450℃以下の温度で熱処理する工程を含むものであっても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる多層配線構造の製造方法を用いることにより、微細化された、低電気抵抗率の多層配線構造の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、全体が100で表される、本実施の形態にかかる埋め込み配線の製造工程(ダマシンプロセス)の断面図である。かかる製造方法は、以下の工程(1)〜(6)を含む。
【0020】
工程1:図1(a)に示すように、酸化シリコン等の層間絶縁層1中に、例えば銅からなる下層配線2を形成する。次に、下層配線2を覆うように、同じく酸化シリコン等からなる層間絶縁層3を形成する。
【0021】
工程2:図1(b)に示すように、層間絶縁層3をエッチングして孔部4を形成する。続いて、孔部4の表面に、例えばスパッタ法を用いて、TaNからなるバリアメタル層5を形成する。バリアメタル層5の材料には、TaN、WN、またはTiNを主成分とする材料を用いても構わない。
【0022】
工程3:図1(c)に示すように、指向性の高い物理的真空堆積法で、Pdのコロイド粒子からなる触媒層6を、層間絶縁層3およびバリアメタル層5上に吸着させる。具体的には、クラスタイオンビーム法を用いて、クラスタ状のPdを供給し、コロイド粒子として、層間絶縁層3およびバリアメタル層5上に吸着させる。この結果、層間絶縁層3、バリアメタル層5上には、直径が約10nm以下、好適には約5nm以下のPdのコロイド粒子(ICB−Pd)からなる触媒層6が形成される。なお、図1では、便宜的に、複数のコロイド粒子からなる触媒層6を、層状の触媒層6として記載する。
【0023】
図2は、孔部4の側壁の、バリアメタル層5上に形成されたPdコロイド粒子(ICB−Pd)のTEM写真である。図2からわかるように、バリアメタル層5上には、直径が約2〜5nmの、複数のPdコロイド粒子からなる触媒層6が形成されている。コロイド粒子の平均直径は約3nmである。また、コロイド粒子相互の平均距離は約10nmまたはそれ以下である。言い換えれば、コロイド粒子の吸着密度は、10nm×10nmの領域に3個程度である。ここで、吸着密度とは、所定の面積に吸着したコロイド粒子の数をいうものとする。
【0024】
Pdのコロイド粒子の吸着密度は、コロイド粒子を一様な膜厚の層状となるように延ばした場合の膜厚(平均膜厚)が、好適には約0.2nm以上で約20nm以下の膜厚、更に好適には約0.5nm以上で約5nm以下となるように制御される。なお、最小の平均膜厚は、触媒に用いる材料原子の1原子層程度である。例えば、平均直径が約3nmのPdコロイド粒子が、10nm×10nmの領域に3個吸着している場合、平均膜厚は約0.35nmとなる。これは、Pdの1原子層の膜厚である0.195nm((100)配向の場合)より大きくなっている。
【0025】
なお、ここでは、物理的真空堆積法としてクラスターイオンビーム法を用いたが、スパッタ法、真空蒸着法、MBE法、電子ビーム蒸着法等の他の堆積法を用いても構わない。特に、高イオン化率スパッタ(IMP)法やクラスタイオンビーム法のような、高イオン化粒子ビームを用いた堆積法が好ましい。
【0026】
工程4:図1(d)に示すように、例えば硫酸銅溶液を用いた無電解めっきにより、銅の無電解めっき層(シード層)7を触媒層6の上に形成する。無電解めっき層7の膜厚は、約10nmまたはそれ以下とする。上述のように、物理的真空堆積法で触媒層6を形成することによりPdコロイド粒子の吸着密度が高くなる。このため、無電解めっき層7を10nm以下のような薄膜としても、ボイドが発生せず、良好な連続膜が形成できる。
【0027】
工程5:図1(e)に示すように、無電解めっき層7をシード層に用いた電解めっきにより、銅の電解めっき層8を形成して孔部4を埋め込む。
【0028】
工程6:図1(f)に示すように、例えば窒素雰囲気下で、約200℃〜約450℃の温度で数分〜数10分間保持し、熱処理を行なう。かかる熱処理により、バリアメタル層5と無電解めっき層6等との密着性が向上する。最後にCMP法を用いて、層間絶縁膜3の上の触媒層6、無電解めっき層7、及び電解めっき層8を除去し、全体が100で表される、埋め込み配線が完成する。
【0029】
かかる熱処理を行なった場合、最終的に作製した埋め込み配線の電気抵抗率が高くなる場合がある。図3は、熱処理により電気抵抗率が高くなった埋め込み配線の、断面の概略図であり、図3中、図1と同一符号は、同一又は相当箇所を示す。図3に示すように、高電気抵抗化した埋め込み配線では、Pdのコロイド粒子からなる触媒層6から、無電解めっき層7、および電解めっき層8中に、Pd粒子9が固溶拡散していることがわかる。このような無電解めっき層7、電解めっき層8中のPd粒子9は、伝導電子に対して散乱体として作用する。電気抵抗率は、固溶拡散したPd等の不純物が伝導電子を散乱する程度に依存するため、Pd粒子9の固溶拡散量が多いほど埋め込み配線の電気抵抗率は高くなる。
【0030】
図4は、本発明の製造方法で作製した、銅の埋め込み配線100について、触媒層6の平均膜厚と、埋め込み配線の電気抵抗率との関係を示したグラフある。横軸は触媒層の平均膜厚を、縦軸は埋め込み配線の電気抵抗率を表す。また、記号□はアニール前、記号○はアニール後の値を示す。
埋め込み配線100では、膜厚が約10nmの無電解めっき層7を形成し、これをシード層に用いて銅の電解めっき層8で孔部4を埋め込んだ。続いて、300℃で熱処理を行なった後、CMP法により埋め込み配線を形成した。埋め込み配線の配線幅(図1(f)の横方向に幅)は0.5μmである。
【0031】
本発明の製造方法で作製した銅の埋め込み配線100では、触媒層6の平均膜厚が10nm以下の領域では、熱処理前(記号□)と熱処理後(記号○)とで、電気抵抗率の値は殆ど変化しない。一方、触媒層6の平均膜厚を10nmより大きくするほど、熱処理後の埋め込み配線の電気抵抗率が、熱処理前に比べて高くなる。
このように、触媒層の平均膜厚を10nm以下とすることにより、熱処理によるPd粒子の固溶拡散を防止し、埋め込み配線層の高抵抗率化を防止できる。
【0032】
また、図4から明らかなように、熱処理の前後を問わず、触媒層6の平均膜厚が5nmの場合、電気抵抗率は約3.0μΩ・cmであり、平均膜厚が1nmの場合、電気抵抗率は約2.1μΩ・cmである。なお、平均膜厚が1nmの場合、アスペクト比(高さ/線幅)が4程度の孔部の側壁では、触媒層6の平均膜厚はPd原子の1原子層程度となる。
【0033】
ここで、埋め込み配線の電気抵抗率が3μΩ・cm以下であれば、LSI等の配線に適用できる。従って、触媒層6の平均膜厚を、約1原子層以上で、約10nm以下、好適には、約1原子層以上で、約5nm以下とすることにより、埋め込み配線層の電気抵抗率が3μΩ・cm以下になり、LSI等に適用可能な配線層を得ることができる。なお、上述のように、触媒層6の平均膜厚が10nm以下であれば、熱処理による埋め込み配線の高抵抗率化も防止できる。
【0034】
また、かかる埋め込み配線では、銅からなる無電解めっき層7および電解めっき層8中に、微量のPdが拡散しているため、無電解めっき層7等を純銅から形成した場合(即ち、微量のPdを含まない場合)に比較して、エレクトロマイグレーションに対する信頼性が数倍以上向上する。更に、バリアメタル層5と無電解めっき層6等との密着性も、バリアメタル層5上にスパッタ法で銅膜を形成した場合と比較して、同程度またはそれ以上に向上する。
【0035】
なお、触媒層6の平均膜厚が1nm以下になると、無電解めっき層7、電解めっき層8とバリアメタル層5との密着性が不十分となり、CMP工程(図1(f))で剥離が生じる。
【0036】
また、上述の工程2(図1(b)参照)において、クラスターイオンビーム法でバリアメタル層5の表面に吸着させたPdクラスタ粒子の直径は、約2nm〜約4nm程度であり、このサイズのPdクラスタ粒子は密着性が良好で、かつ無電解めっきの触媒として優れた性質を示した。一方、Pdクラスタ粒子の直径が10nmより大きくなると、無電解めっき層6の連続性が悪くなり、薄膜の無電解めっき層6の形成が困難となった。
【0037】
なお、本実施の形態では、触媒層6の材料としてパラジウムを用いたが、白金、金等を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
物理的真空堆積法でPdのコロイド粒子を吸着させて触媒層を形成することにより、ボイドを発生させることなく薄膜のシード層が形成できる。また、触媒層の平均膜厚を制御することにより埋め込み配線の高抵抗率化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態にかかる埋め込み配線の製造工程の断面図である。
【図2】バリアメタル層上に形成されたPdコロイド粒子のTEM写真である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる埋め込み配線の断面図である。
【図4】埋め込み配線の、触媒層の平均膜厚と電気抵抗率との関係である。
【図5】従来の埋め込み配線の製造工程の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 層間絶縁層、2 下層配線、3 層間絶縁層、4 孔部、5 バリアメタル層、6 触媒層、7 無電解めっき層、8 電解めっき層、9 Pd粒子、100 埋め込み配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型の多層配線構造の製造方法であって、
絶縁層に孔部を形成する工程と、
該孔部の表面に、物理的真空堆積法で、平均膜厚が0.2nm以上で10nm以下である触媒層を形成する堆積工程と、
該触媒層を触媒に用いた無電解めっき法により、該孔部の表面に無電解めっき層を形成する工程と、
該無電解めっき層をシード層に用いた電解めっき法で、該孔部を電解めっき層で埋め込む埋め込み工程とを含むことを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項2】
埋め込み型の多層配線構造の製造方法であって、
絶縁層に孔部を形成する工程と、
該孔部の表面に、物理的真空堆積法で触媒層を形成する工程であって、該触媒層の平均膜厚が、該触媒層の材料原子の1原子層以上で10nm以下である触媒層を形成する堆積工程と、
該触媒層を触媒に用いた無電解めっき法により、該孔部の表面に無電解めっき層を形成する工程と、
該無電解めっき層をシード層に用いた電解めっき法で、該孔部を電解めっき層で埋め込む埋め込み工程とを含むことを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項3】
上記触媒層の平均膜厚が、5nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記触媒層が、パラジウム、白金、および金からなる群から選択される一つの材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記堆積工程が、クラスタイオンビーム法で、直径が10nm以下のクラスタ粒子を、上記孔部の表面に吸着させる工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記堆積工程が、クラスタイオンビーム法で、直径が5nm以下のクラスタ粒子を、上記孔部の表面に吸着させる工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
上記堆積工程に先だって、上記孔部の表面に、TaN、WN、およびTiNからなる群から選択される材料を主成分とするバリアメタル層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
上記埋め込み工程の後に、上記多層配線構造を、200℃以上で450℃以下の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2005−33029(P2005−33029A)
【公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−271336(P2003−271336)
【出願日】平成15年7月7日(2003.7.7)
【出願人】(396023993)株式会社半導体理工学研究センター (150)
【Fターム(参考)】