説明

成膜方法及びプラズマ処理装置

【課題】シリサイド化反応を十分に行わせることによってコンタクト抵抗を低減化させることが可能な成膜方法である。
【解決手段】真空排気が可能になされた処理容器22内で被処理体Wの表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、原料ガスを用いて処理容器内でプラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜8を形成する金属膜形成工程と、処理容器内で金属膜に対してアニール処理を行うアニール工程とを有する。これにより、シリサイド化反応を十分に行わせることによってコンタクト抵抗を低減化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法及びプラズマ処理装置に係り、特に半導体ウエハ等の被処理体の表面にバリヤ層等の薄膜を形成する成膜方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理、エッチング処理、アニール処理、酸化拡散処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するようになっている。そして、半導体デバイスの製造工程の途中における配線材料や埋め込み材料としては、従来は主としてアルミニウム合金が用いられていたが、最近は線幅やホール径が益々微細化されて、且つ動作速度の高速化が望まれていることからタングステン(W)や銅(Cu)等も用いられる傾向にある。
【0003】
そして、上記Al、W、Cu等の金属材料を配線材料やコンタクトのためのホールの埋め込み材料として用いる場合には、例えばシリコン酸化膜(SiO )等の絶縁材料と上記金属材料との間で例えばシリコンの拡散が生ずることを防止したり、膜の密着性を向上させる目的で、或いはホールの底部でコンタクトされる下層の電極や配線層等の導電層との間の密着性を向上させると共にコンタクト抵抗を低減させる目的で、上記絶縁層や下層の導電層との間の境界部分にバリヤ層を介在させることが行われている。そして、上記バリヤ層としてはTa膜、TaN膜、Ti膜、TiN膜等が広く知られている(特許文献1〜5)。この点について図18を参照して説明する。
【0004】
図18は半導体ウエハの表面の凹部の埋め込み時の成膜方法を示す工程図である。図18(A)に示すように、被処理体として例えばシリコン基板等よりなる半導体ウエハWの表面には例えば配線層等となる導電層2が形成されており、この導電層2を覆うようにして半導体ウエハWの表面全体に例えばSiO 膜等よりなる絶縁層4が所定の厚さで形成されている。上記導電層2は例えば不純物がドープされたシリコン層よりなり、具体的には、例えばトランジスタやコンデンサ等の電極等に対応する。
【0005】
そして、上記絶縁層4には、上記導電層2に対して電気的コンタクトを図るためのスルーホールやビアホール等のコンタクト用の凹部6が形成されている。尚、上記凹部6として細長いトレンチ(溝)を形成する場合もある。この凹部6の底部に上記導電層2の表面が露出した状態となっている。そして、この凹部6内の底面及び側面を含めた半導体ウエハWの表面全体に、すなわち絶縁層4の上面全体に上述したような機能を有するバリヤ層を形成するために、図18(B)に示すように、凹部6内の表面(内面)全体も含めてウエハ表面全体(上面全体)にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により金属膜として例えばTi膜8を成膜する。このTi膜8の成膜には例えば原料ガスとしてTiCl ガスを用いる。
【0006】
そして、このTi膜8を安定化させるために、図18(C)に示すように例えばNH の雰囲気中で加熱することにより窒化処理を施す。更に窒化処理がなされたこのTi膜8上に、図18(D)に示すようにチタン窒化膜であるTiN膜10を成形し、上記Ti膜8とTiN膜10の2層構造よりなるバリヤ層12を形成する。
【0007】
尚、TiN膜10を形成しないでTi膜8だけでバリヤ層12を構成する場合もある。また、上記TiN膜10は例えばTiCl ガス等を用いた熱CVD法や原料ガスと窒化ガスとを交互に流すSFD(Sequential Flow Deposition)法により形成されていた。このようにしてバリヤ層12が形成されたならば凹部6内をタングステン等の導電材料で埋め込み、その後、余分な導電材料をエッチング等により削り取るようになっている。
【0008】
このように、最近にあっては、上記したバリヤ層12の材質として、図18で説明したように特にTi膜を含むバリヤ層12が注目されている。その理由は、Ti膜を含むバリヤ層は金属等の拡散を特に抑制でき、Tiが下層のシリコン層中のシリコンと反応してシリサイド化されて電気抵抗も非常に小さくなり、更には体積膨張率も小さく、配線材料との密着性も良好である等の利点を有するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−186197号公報
【特許文献2】特開2004−232080号公報
【特許文献3】特開2003−142425号公報
【特許文献4】特開2006−148074号公報
【特許文献5】特表平10−501100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、更なる半導体デバイスの微細化に伴って、Ti膜の成膜温度も不純物の熱拡散を抑制するために更に低下する傾向にある。しかしながら、このようにTi膜の成膜温度がより低くなると、Tiと下層のシリコン層のシリコンとが反応するシリサイド化反応が十分に起こらなくなり、この結果、Ti膜中のチタンシリサイドの形成が不十分になってしまってコンタクト抵抗が増加してしまう、といった問題があった。特に、今後は更なる微細化が要請されてTi膜の厚さも薄膜化して行く傾向にあるので、上記した問題点の早期の解決が望まれている。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明は、シリサイド化反応を十分に行わせることによってコンタクト抵抗を低減化させることが可能な成膜方法及びプラズマ処理装置である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、原料ガスを用いて前記処理容器内でプラズマCVD法により前記薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記処理容器内で前記金属膜に対してアニール処理を行うアニール工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0013】
このように、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、原料ガスを用いて処理容器内でプラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜を形成し、この処理容器内で金属膜に対してアニール処理を行うようにしたので、シリサイド化反応を十分に行わせることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることが可能となる。
【0014】
請求項11に係る発明は、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、プラズマCVD法により前記薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、プラズマを用いて前記薄膜としてチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0015】
このように、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、プラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、プラズマを用いて薄膜としてチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程と、を有するようにしたので、抵抗率の低いチタンシリサイドの形成を促進させることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることが可能となる。
【0016】
請求項16に係る発明は、被処理体に対して薄膜を形成するプラズマ処理装置において、真空排気が可能になされた処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極として機能する載置台と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内へ原料ガスを含む必要な各種ガスを導入すると共に上部電極として機能するガス導入手段と、前記ガス導入手段へ前記各種ガスを供給するガス供給手段と、前記載置台と前記ガス導入手段との間にプラズマを形成するプラズマ形成手段と、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御する制御部と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る成膜方法及びプラズマ処理装置によれば、次のような優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1及びこれを引用する請求項の発明によれば、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、原料ガスを用いて処理容器内でプラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜を形成し、この処理容器内で金属膜に対してアニール処理を行うようにしたので、シリサイド化反応を十分に行わせることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることができる。
【0018】
請求項11及びこれを引用する請求項の発明によれば、真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、プラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、プラズマを用いて薄膜としてチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程と、を有するようにしたので、抵抗率の低いチタンシリサイドの形成を促進させることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法を実施するプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の成膜方法の第1発明の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の成膜方法の第1発明の第1実施例を示すフローチャートである。
【図4】アニール処理時間とTi膜の抵抗率との関係を示すグラフであある。
【図5】Ti膜の成膜温度依存性と640℃でのアニール処理の効果を示すグラフである。
【図6】Ti膜の成膜温度依存性と550℃で成膜した直後にアニール処理を施した時の抵抗率を示すグラフである。
【図7】本発明の成膜方法の第1発明の第2実施例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の成膜方法の第2発明の第1実施例を示す工程図である。
【図9】本発明の成膜方法の第2発明の第2実施例を示す工程図である。
【図10】本発明の成膜方法の第2発明の第3実施例を示す工程図である。
【図11】本発明の成膜方法の第2発明の第1〜第3実施例を示すフローチャートである。
【図12】形成した薄膜の抵抗率を示すグラフである。
【図13】成膜時にシリサイド化により発生したTiSi における結晶相の比率を示す図である。
【図14】形成した薄膜のXRD(X線回折分析器)測定結果を示すグラフである。
【図15】形成したTiN膜のXRD測定結果を示すグラフである。
【図16】膜厚に対する歪んだTiN(200)ピークの半値幅を示すグラフである。
【図17】プラズマによるTiN膜形成時のプロセス条件の依存性を示すグラフである。
【図18】半導体ウエハの表面の凹部の埋め込み時の成膜方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る成膜方法及びプラズマ処理装置の好適な一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明方法を実施するプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図示するように、本発明のプラズマ処理装置20は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレススチール等により円筒体状に成形された処理容器22を有しており、この処理容器22は接地されている。
【0021】
この処理容器22の底部24には、容器内の雰囲気を排出するための排気口26が設けられており、この排気口26には真空排気系28が接続されている。この真空排気系28は、上記排気口26に接続された排気通路29を有しており、この排気通路29には、その上流側から下流側に向けて圧力調整を行うために弁開度が調整可能になされた圧力調整弁30及び真空ポンプ32が順次介設されている。これにより、処理容器22内を底部周辺部から均一に真空引きできるようになっている。
【0022】
この処理容器22内には、導電性材料よりなる支柱34を介して円板状の載置台36が設けられており、この上に被処理体として例えばシリコン基板等の半導体ウエハWを載置し得るようになっている。具体的には、この載置台36は、AlN等のセラミックからなり、その表面が導電性材料によりコーティングされており、プラズマ用電極の一方である下部電極を兼用するものであって、この下部電極は接地されている。この載置台36には、例えば直径が300mmの半導体ウエハWを載置するようになっている。尚、上記下部電極として載置台36内に例えばメッシュ状の導電性部材を埋め込み、この導電性部材を接地するように構成する場合もある。
【0023】
この載置台36内には、例えば抵抗加熱ヒータ等よりなる加熱手段38が埋め込まれており、半導体ウエハWを加熱すると共に、これを所望する温度に維持できるようになっている。また、この載置台36には、半導体ウエハWの周辺部を押圧してこれを載置台36上に固定する図示しないクランプリングや半導体ウエハWの搬入・搬出時に半導体ウエハWを突き上げて昇降させる図示しないリフタピンが設けられている。
【0024】
上記処理容器22の天井部には、プラズマ用電極の他方である上部電極と兼用されるガス導入手段としてのシャワーヘッド40が設けられており、このシャワーヘッド40は、天井板42と一体的になされている。そして、この天井板42の周辺部は、容器側壁の上端部に対して絶縁材44を介して気密に取り付けられている。このシャワーヘッド40は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の導電材料により形成されている。
【0025】
このシャワーヘッド40は、円形になされ上記載置台36の上面の略全面を覆うように対向させて設けられており、載置台36との間に処理空間Sを形成している。このシャワーヘッド40は、処理空間Sに各種のガスをシャワー状に導入するものであり、シャワーヘッド40の下面の噴射面にはガスを噴射するための多数の噴射孔46が形成される。
【0026】
そして、このシャワーヘッド40の上部には、ヘッド内にガスを導入するガス導入ポート48が設けられており、このガス導入ポート48には各種のガスを供給するガス供給手段50が取り付けられている。このガス供給手段50は、上記ガス導入ポート48に接続されている供給通路52を有している。
【0027】
この供給通路52には、複数の分岐管54が接続され、各分岐管54には、成膜用の原料ガスとして、例えばTiCl ガスを貯留するTiCl ガス源56、H ガスを貯留するH ガス源58、プラズマガスとして例えばArガスを貯留するArガス源60、窒化ガスとして例えばアンモニアを貯留するNH ガス源62及びパージガス等として例えばN ガスを貯留するN ガス源64がそれぞれ接続されている。そして、各ガスの流量は、それぞれの分岐管54に介設した例えばマスフローコントローラのような流量制御器66により制御される。また、各分岐管54の流量制御器66の上流側と下流側とには、必要に応じて上記各ガスの供給及び供給停止を行なう開閉弁68が介設されている。
【0028】
尚、ここでは、各ガスを1つの供給通路52内で混合状態として供給する場合を示しているが、これに限定されず、一部のガス或いは全てのガスを個別に異なる供給通路内に供給し、シャワーヘッド40内で混合させるようにしてもよい。また供給するガス種によっては供給通路52内やシャワーヘッド40内で混合させずに、各ガスを処理空間Sにて混合させる(いわゆるポストミックス)ガス搬送形態が用いられる。
【0029】
また、処理容器22内における上記シャワーヘッド40の外周と処理容器22の内壁との間には、例えば石英等よりなるリング状の絶縁部材69が設けられると共に、その下面はシャワーヘッド40の噴射面と同一水平レベルに設定されており、プラズマが偏在しないようになっている。また、上記シャワーヘッド40の上面側にはヘッド加熱ヒータ72が設けられており、シャワーヘッド40を所望の温度に調整できるようになっている。
【0030】
また、この処理容器22には、上記載置台36とシャワーヘッド40との間の処理空間Sにプラズマを形成するプラズマ形成手段74を有している。具体的には、このプラズマ形成手段74は、上記シャワーヘッド40の上部に接続されたリード線76を有しており、このリード線76には、途中にマッチング回路78を介して例えば450kHzのプラズマ発生用電源である高周波電源70が接続されている。尚、この周波数は450kHzに限定されず、2MHz、13.56MHz、2.45GHzなどの他の周波数を用いてもよい。
【0031】
ここで、この高周波電源70にあっては、任意の大きさの電力を出力できるように出力電力が可変になされている。また、処理容器22の側壁には、半導体ウエハWの搬入・搬出時に気密に開閉可能になされたゲートバルブ80が設けられる。このように構成された各構成部材の大きさは、300mm半導体ウエハWを成膜する場合、例えば上記シャワーヘッド40の直径が340mm程度、上記載置台36の直径が340mm程度、上記載置台36と上記シャワーヘッド40との間の距離が13.5mm程度、上記処理容器22内の容積が34リットル程度である。
【0032】
そして、このプラズマ処理装置20の全体の動作を制御するために例えばコンピュータ等よりなる制御部82を有しており、例えばプロセス圧力、プロセス温度、各ガスの供給量の制御のための指示、高周波電力のオン・オフを含めた供給電力の指示等を行うようになっている。そして、上記制御部82は上記制御に必要なコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体84を有している。この記憶媒体84は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。
【0033】
<第1発明の成膜方法の説明>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置を用いて行なわれる本発明の成膜方法について図2及び図3も参照して説明する。図2は本発明の成膜方法の第1発明の一例を示す工程図、図3は本発明の成膜方法の第1発明の第1実施例を示すフローチャートである。ここではプラズマ処理方法で形成される薄膜としてチタンを含む金属膜であるチタン(Ti)膜を成膜する場合を例にとって説明する。
【0034】
まず、処理容器22の載置台36上には、例えば直径が300mmの半導体ウエハWが載置されている。この半導体ウエハWの上面には、例えば図2(A)に示すように凹部6が形成されている。この半導体ウエハWの構造は、図18(A)にて説明した構造と同じである。
【0035】
すなわち、半導体ウエハWの表面には例えば配線層等となる導電層2が形成されており、この導電層2を覆うようにして半導体ウエハWの表面全体に例えばSiO 膜等よりなる絶縁層4が所定の厚さで形成されている。上記導電層2は例えばシリコン層、不純物がドープされたシリコン層、ポリシリコン層、アモルファスシリコン層等よりなり、具体的には、トランジスタやコンデンサ等の電極等に対応する。
【0036】
そして、上記絶縁層4には、上記導電層2に対して電気的コンタクトを図るためのスルーホールやビアホール等のコンタクト用の凹部6が形成されている。この凹部6の内径(凹部6が溝の場合は幅)は、例えば50nm以下であり、このアスペクト比(凹部の深さと穴径との比)は10程度である。尚、上記凹部6として細長いトレンチ(溝)を形成する場合もある。この凹部6の底部に上記導電層2の表面が露出した状態となっている。
【0037】
まず、ガス供給手段50から原料ガスのTiCl ガスと還元ガスのH ガスとプラズマ用ガスのArガスとを、それぞれガス導入手段であるシャワーヘッド40に所定の流量で流すと共に、これらの各ガスをシャワーヘッド40から処理容器22内に導入し、且つ真空排気系28の真空ポンプ32により処理容器22内を真空引きし、所定の圧力に維持する。
【0038】
これと同時に、プラズマ形成手段74の高周波電源70より、450kHzの高周波を上部電極であるシャワーヘッド40に印加して、シャワーヘッド40と下部電極としての載置台36との間に高周波電界を加えて電力を投入する。これにより、Arガスがプラズマ化されて、TiCl ガスとH ガスとを反応させて、半導体ウエハWの表面に図2(B)に示すように薄膜としてチタンを含む金属膜、すなわちTi膜8がプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されることになる(S1)。
【0039】
半導体ウエハWの温度は、載置台36に埋め込んだ抵抗加熱ヒータよりなる加熱手段38により所定の温度により加熱維持される。これにより、半導体ウエハWの上面にみならず、凹部6内の底面や側面にもTi膜8が堆積されることになる。
【0040】
この時の具体的なプロセス条件は、例えばプロセス圧力が66〜2670Paの範囲内、プロセス温度が例えば200〜1000℃の範囲内である。プロセス圧力に関しては、低圧になりすぎると成膜速度が低下し、また高圧になりすぎるとプラズマ処理時の装置への負荷が増大するので、より好ましくは266〜1200Paの範囲内である。またプロセス温度に関しては、低温では成膜速度が低下し、高温では膜の表面粗さが増大するので、好ましくは350〜600℃の範囲内である。このTi膜8の成膜時のプロセス温度が600℃よりも高くなると、成膜速度は速くなるものの、アニールによる抵抗率の低減効果が減少してしまうので、成膜時のプロセス温度は600℃以下のほうが効果が大きい。また、成膜のプロセス温度が350℃よりも低くなると、成膜処理後のアニール処理に多くの時間を要するため、スループットの向上の観点からは350℃以上の方が好ましい。また各ガスの流量は、TiCl ガスが例えば1〜100sccmの範囲内、Arが例えば50〜10000sccmの範囲内、H が例えば5〜10000sccmの範囲内である。またTi膜8の膜厚は、1〜50nm程度である。更に高周波電力は150〜1500W(ワット)である。この時、Ti膜8を成膜している間に、このTi膜8と下地の導電層2との境界部分では、成膜時の熱によりTiと導電層2中のSiとが次第に反応してシリサイド化し、TiSi に代表されるTiSix(x:正数)が形成されて行くことになる。
【0041】
このようにしてTi膜の形成が完了したならば、次に、この同じ処理容器22内で図2(C)に示すようにアニール処理を行う(S2)。具体的には、上記金属膜の形成工程で供給していたTiCl ガスの供給を停止し、Arガス及びH ガスの供給は、それぞれ同じ流量で継続する。このアニール処理時のプロセス温度は、200℃以上1000℃以下の温度であるが、低温化するほどアニール処理の効果が低下するため、350℃以上が好ましく、また高温化しすぎてもアニールの効果が薄れてくるので600℃以下であることが望ましい。またスループットを向上させるためには、このアニール処理時のプロセス温度を、前工程の金属膜の形成工程のプロセス温度と同一に設定するのがよい。またプロセス圧力は、66〜2670Paの範囲内であり、好ましくは前工程の金属膜の形成工程のプロセス圧力と同一に設定するのがよい。
【0042】
更に、このアニール処理時間は、後述するように、30sec以上である。このアニール処理時間が30secよりも少ないと、十分なアニール効果(抵抗率の低下)を発揮することができない。また、後述するように、アニール処理時間が180secよりも長くなると、アニール効果が略飽和してしまうので、スループット向上の観点からはその上限は180secである。
【0043】
また、このアニール処理時には、高周波電力を供給してプラズマを発生させてもよいし、高周波電力の供給を停止してプラズマを発生させないで行うようにしてもよい。後述するように、プラズマを発生させてプラズマ雰囲気中でアニール処理を行う方が、プラズマを発生させない場合よりもアニール効果を高めることができる。このようにアニール処理を行うことにより、上記Ti膜8のTiと下地のシリコン層(導電層2)のSiとの反応が進み、チタンのシリサイド化反応を促進させることが可能となる。
【0044】
このようにしてTi膜8のアニール処理が完了したならば、次に、この同じ処理容器22内で、図2(D)に示すようにTi膜8の窒化処理を行う(S3)。具体的には、上記アニール処理工程の後に窒化ガスであるNH ガスの供給を開始する。この場合、ArガスとH ガスの供給はアニール処理工程から継続して行う。これと同時に、高周波電力を供給してプラズマを形成する。この高周波電力は例えば800W(ワット)である。またプラズマを生成せずにArガスとHガスとNHガスによる窒化処理を行なうようにしてもよい。
【0045】
この場合、プロセス温度及びプロセス圧力は、それぞれ直前のアニール処理工程の場合と同じに設定すればよい。また、NH ガスの流量は、例えば5〜10000sccmの範囲内である。窒化処理の時間は、例えば5〜120secの範囲内である。このように、窒化処理を施すことにより、Ti膜8を安定化することができる。
【0046】
このようにして、窒化処理が完了したならば、次にこの同じ処理容器22内で、図2(E)に示すようにTiN(チタン窒化)膜の形成を行う(S4)。尚、このTiN膜の形成は、別の処理容器内で行うようにしてもよい。具体的には、ガスとしてTiCl ガスとN ガスと還元ガスのH ガスとプラズマ用ガスのArガスを、それぞれ流量制御しつつ供給する。そして、これと同時に、高周波電力を供給してプラズマを生成し、プラズマCVDによりTiN膜10を成膜する。上記TiN膜の形成時のプロセス条件は、プロセス圧力が66〜2670Paの範囲内、プロセス温度が200〜1000℃の範囲内であり、好ましくは共に窒化処理時と同じになるように設定する。
【0047】
また各ガス流量は、TiCl ガスが例えば1〜100sccm、Arガスが例えば50〜10000sccmの範囲内、H ガスが例えば5〜10000sccmの範囲内、N ガスが例えば5〜5000sccmの範囲内である。また、高周波電力は150〜1500W(ワット)である。またこのTiN膜の膜厚は例えば1〜50nm程度である。尚、このTiN膜の成膜は、プラズマを用いないで熱CVD処理によって行うようにしてもよい。TiN膜の成膜の際に熱CVD法で成膜した場合とプラズマCVD法で成膜した場合とを比較すると、プラズマを用いて成膜した方がTiN膜自体の比抵抗が低くなり、さらにコンタクトホール側壁での膜厚が薄くなるので、プラグとして用いられるタングステン(W)の配線の径を太くすることができW配線自体の抵抗も低下することから、これらの相乗効果によりコンタクト抵抗を大幅に低減することができる。
【0048】
このようにして、Ti膜8とTiN膜10とよりなる2層構造のバリヤ層12が形成されることになる。この後は、例えば同一の処理容器22内で還元ガスのH ガスとプラズマ用ガスのArガスと窒化ガスのNH ガスとを供給してArガスのプラズマにより上記TiN膜10に対して窒化処理を施し、或いはこの窒化処理を施さないで、上記半導体ウエハWを処理容器22内から搬出して上記凹部6内を導電性膜により埋め込む。窒化処理としてTiN膜にプラズマ処理を実施した場合、TiN膜中のClが抜けてTiN膜自体がより窒化されることと、膜のTiとNとの比率がほぼ1:1になるために比抵抗値がバルクの値に近づき、TiN膜の抵抗値をより低下させることができる。この埋め込み処理では、例えば熱CVD処理により上記導電性材料としてタングステン膜を埋め込んだり、或いはメッキ処理により上記導電性材料として銅を埋め込んだりする。
【0049】
そして、アニール処理を行った後に、半導体ウエハWの上面に位置する不要な導電性膜を削り取って除去することになる。この除去の方法としては、例えばエッチング処理やCMP(Chemical Mechanical Polishing)等が用いられる。
【0050】
<アニール処理時間の検討>
次に、第1発明の成膜方法において、アニール処理時間について検討を行ったので、その評価結果について説明する。ここでは、図2(C)に示すアニール処理を行う時のアニール処理時間を種々変化させた。そして、図2(D)に示す窒化処理を行った後にTi膜の抵抗率の変化を測定してアニール時間依存性を評価した。図4は、このようなアニール処理時間とTi膜の抵抗率との関係を示すグラフであり、横軸にアニール処理時間をとり、縦軸にTi膜の抵抗率をとっている。この時のプロセス条件は、以下の通りである。
【0051】
[Ti膜の成膜処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
ガス流量:TiCl /Ar/H =12/1600/4000sccm
高周波電力:800W、成膜時間:18sec
[アニール処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
ガス流量:Ar/H =1600/4000sccm
アニール時間:0〜300secで変化
[窒化処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
ガス流量:Ar/H /NH =1600/2000/1500sccm
高周波電力:800W
上述のように、ここではアニール処理時間を0〜300secの範囲で種々変更している。
【0052】
図4から明らかなように、アニール時間がゼロ(アニール無し)の場合は、Ti膜の抵抗率は高く、アニール時間が15secの場合にもアニール効果が小さいので、抵抗率は少し下がるが、依然として抵抗率は高い状態にある。
【0053】
これに対して、アニール時間が30sec以上の場合には、アニール時間が長くなればなる程、Ti膜の抵抗率は大きく低下している。従って、前述したように、アニール時間を30sec以上行うことにより、アニール効果を十分に発揮できていることが判る。ただし、アニール時間が180secよりも大きくなると、アニール効果は略飽和してそれ以上の抵抗率の低下はほとんど見られない。従って、スループットを考慮するとアニール時間は長くても180secが限界であることが判る。
【0054】
また一点ではあるが、アニール時間が60secの時に高周波電力を加えてプラズマを形成し、プラズマ雰囲気中でアニール処理を行った。その時の結果をポイントP1で示している。この時の高周波電力は800Wであった。この場合には、ポイントP1から明らかなように、プラズマ雰囲気中でアニール処理を行った場合には、プラズマを用いないでアニール処理を行った場合よりも抵抗率は20μΩ・cm程度だけ低くなっている。従って、アニール処理時にはプラズマを形成してプラズマ雰囲気中でアニール処理を行うことが好ましいことが判る。
【0055】
<Ti膜の成膜時のプロセス温度の検討>
次に、Ti膜の成膜時において成膜温度がシリサイド化に与える影響を検討するために、Ti膜の成膜温度依存性とTi膜成膜後の640℃でのアニール処理の効果に対する検討を行ったので、その評価結果について説明する。
【0056】
図5はTi膜の成膜温度依存性と640℃でのアニール処理の効果を示すグラフである。図5において横軸に成膜時のプロセス温度をとり、縦軸に抵抗率をとっている。図5中の曲線A1は、Ti膜の成膜処理を行った直後の抵抗率(アニール処理無し)を示し、曲線A2は、Ti膜の成膜処理を行った直後に640℃のアニール処理を行った時の抵抗率を示している。
【0057】
この時の640℃でのアニール処理時のプロセス条件は、プロセス圧力が667Pa、N ガスの流量が3600sccm、アニール時間が120secである。曲線A1によれば、Ti膜の成膜温度が高くなる程、抵抗率が低下しており、そして、600℃より高くなると抵抗率の低下する割合は減少してくる。これは、成膜温度が高い程、成膜中におけるシリサイド化反応が促進されるからである。
【0058】
また曲線A1及び曲線A2より、Ti膜の成膜温度に関係なく、成膜後に640℃のアニール処理を行うことにより、抵抗率は全て40μΩ・cm程度まで低下していることが判る。この場合、例えばTi成膜温度が640℃の点に着目すると、この時の抵抗率は53.7μΩ・cmであり、640℃のアニール処理後の抵抗率は41.2μΩ・cmなので、ここではアニール効果により12.5μΩ・cmだけ抵抗率が低下していることが判る。
【0059】
そして、曲線A1と曲線A2とを比較すると明らかなようにTi膜の成膜温度が600℃より大きい領域では、アニール処理による抵抗率の低減効果はせいぜい12.5μΩ・cmであって相対的に少なく、逆に600℃以下の低温になる程、アニール処理による抵抗率の低減効果は大きくなっていることが判る。このことから、Ti膜8の成膜時のプロセス温度が600℃よりも高くなるとアニールによる抵抗率の低減効果は減少してしまう。従って、スループットの向上の観点からは成膜時のプロセス温度は600℃以下であることが好ましい。また、成膜のプロセス温度が350℃よりも低くなると、Ti膜の成膜速度が低下してきたり、或いは成膜処理後のアニール処理時間が長くなってくるため、350℃以上であることが好ましい。
【0060】
<アニール効果の確認>
次に、アニール処理の効果について確認を行った。ここでは、Ti膜の成膜温度依存性と550℃での成膜直後にアニール処理を施した場合の抵抗率とを比較している。図6は上述のように、Ti膜の成膜温度依存性と550℃で成膜した直後にアニール処理を施した時の抵抗率を示すグラフである。図6において横軸に成膜時のプロセス温度をとり、縦軸に抵抗率をとっている。
【0061】
すなわち、図5中の曲線A1と図6中の曲線A1は同じ特性を示している。また図6中のポイントP2は550℃でTi膜の成膜処理した直後に、550℃でアニール処理を120sec施した時の抵抗率を示している。このポイントP2より明らかなように、550℃で120secのアニール処理を行うことにより、抵抗率は略60μΩ・cm程度低下している。この値は、Ti膜を575℃で成膜した直後の抵抗率と略同じになっていることが判る。これにより、Ti膜の成膜直後にアニール処理を施すことにより、ウエハの温度を昇降温させることなく抵抗率を低減できる、ということを確認することができた。
【0062】
<第1発明の第2実施例>
上述したような第1実施例では、アニール処理の後に窒化処理を行ったが、これに替えて、これらの順序を逆にしてもよい。図7はこのような本発明の成膜方法の第1発明の第2実施例を示すフローチャートである。図7に示すように、ここではアニール処理と窒化処理との順序を逆にして成膜処理を行っている。従って、ステップS1→S3→S2→S4の順序で各工程の処理を行っている。この場合のプロセス条件は、第1実施例の場合と全て同じである。この第1発明の第2実施例の場合にも先の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0063】
<第1発明の第1実施例と第2実施例の評価>
ここで第1発明の上記第1実施例と第2実施例とについて実際に実施して結果を比較したので、その評価結果について説明する。また比較のためにアニール処理を行っていない従来の成膜方法についても行った。この時の成膜処理、窒化処理及びアニール処理の各プロセス条件は以下の通りである。
【0064】
[成膜処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
TiCl /Ar/H =12/1600/4000sccm
高周波電力:800W、成膜時間:18sec
[窒化処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
Ar/H /NH =1600/2000/1500sccm
高周波電力:800W、窒化時間:18sec
[アニール処理]
プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa
Ar/H =1600/4000sccm
アニール時間:60sec
【0065】
この結果、アニール処理を行っていない従来の成膜方法ではTi膜の抵抗率は134.7μΩ・cmであった。これに対して、第1発明の第1実施例の場合には、Ti膜の抵抗率は100.8μΩ・cmであり、第1発明の第2実施例の場合には、Ti膜の抵抗率は110.7μΩ・cmであった。この結果、アニール処理の後に窒化処理を行なう場合だけでなく、窒化処理の後にアニール処理を行なう場合も抵抗率を低減させることができることが判った。またTi膜の成膜直後にアニール処理を行う第1発明の第1実施例の方が、窒化処理後にアニール処理を行う第1発明の第2実施例よりも効果が優れていることを確認することができた。
【0066】
尚、上記各実施例では、バリヤ層12としてTi膜8とTiN膜10とよりなる二層構造のバリヤ層の場合を例にとって説明したが、上記各実施例からステップS4のTiN膜の成膜工程を行わないようにして、Ti膜8よりなる一層構造のバリヤ層としてもよい。一層構造のバリヤ層であっても、Ti膜を成膜後に窒化処理しているのでTi膜の表面が窒化されているため、この層がバリヤ層の役割を果たしてバリヤ性が確保されることになる。
【0067】
<第2発明>
次に本発明の成膜方法の第2発明について説明する。先の第1発明では、チタンを含む金属膜を形成した後に、アニール処理を行うようにしたが、この第2発明では、チタンを含む金属膜を形成した後に、プラズマを用いてチタン窒化膜を形成することにより、抵抗率の低いチタンシリサイドの形成を促進するようにしている。
【0068】
図8は本発明の成膜方法の第2発明の第1実施例を示す工程図、図9は本発明の成膜方法の第2発明の第2実施例を示す工程図、図10は本発明の成膜方法の第2発明の第3実施例を示す工程図、図11は本発明の成膜方法の第2発明の第1〜第3実施例を示すフローチャートであり、図11(A)は第1実施例を示し、図11(B)は第2実施例を示し、図11(C)は第3実施例を示している。尚、図1乃至図7及び図18に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付している。また、図8乃至図11においても、同一構成部分については同一参照符号を付している。
【0069】
まず、第2発明の第1実施例では、図8及び図11(A)に示すように、絶縁層4の表面に凹部6が形成された図8(A)に示すようなウエハWの表面に、プラズマCVD法によりチタンを含む金属膜としてTi膜8を形成する金属膜形成工程を行う(S21)。この工程は、図2(B)に示した工程と同じであり、また温度や圧力やガス流量等の各プロセス条件も図2(B)を参照して説明した場合と全く同じである。
【0070】
すなわち、例えばプロセス圧力が66〜2670Paの範囲内、プロセス温度が例えば200〜1000℃の範囲内である。プロセス圧力に関しては、低圧になりすぎると成膜速度が低下し、また高圧になりすぎるとプラズマ処理時の装置への負荷が増大するので、より好ましくは266〜1200Paの範囲内である。またプロセス温度に関しては、低温では成膜速度が低下し、高温では膜の表面粗さが増大するので、好ましくは350〜600℃の範囲内である。このTi膜8の成膜時のプロセス温度が600℃よりも高くなると、成膜速度は速くなるものの、成膜中のチタンシリサイドの形成が進むため、プラズマを用いて形成したチタン窒化膜による抵抗率の低減効果が減少してしまうので、成膜時のプロセス温度は600℃以下のほうが効果が大きい。また、成膜のプロセス温度が350℃よりも低くなると、成膜処理後のアニール処理に多くの時間を要するため、スループットの向上の観点からは350℃以上の方が好ましい。
【0071】
また各ガスの流量は、TiCl ガスが例えば1〜100sccmの範囲内、Arが例えば50〜10000sccmの範囲内、H が例えば5〜10000sccmの範囲内である。またTi膜8の膜厚は、1〜50nm程度である。更に高周波電力は150〜1500W(ワット)である。この時、Ti膜8を成膜している間に、このTi膜8と下地の導電層2との境界部分では、成膜時の熱によりTiと導電層2中のSiとが次第に反応してシリサイド化し、TiSi に代表されるTiSix(x:正数)が形成されて行くことになる。
【0072】
このようにして、Ti膜(TiSix)8の形成が完了したならば、次に、この同じ処理容器22内で、図8(C)に示すようにプラズマを用いてTiN(チタン窒化)膜10を形成するチタン窒化膜形成工程を行う(S22)。尚、このTiN膜の形成は、別の処理容器内で行うようにしてもよい。具体的には、ガスとしてTiCl ガスとN ガスと還元ガスのH ガスとプラズマ用ガスのArガスを、それぞれ流量制御しつつ供給する。そして、これと同時に、高周波電力を供給してプラズマを生成し、プラズマCVDによりTiN膜10を成膜する。上記TiN膜の形成時のプロセス条件は、プロセス圧力が66〜2670Paの範囲内、プロセス温度が200〜1000℃の範囲内であり、好ましくは共に直前のTi膜の成膜時と同じになるように設定する。プロセス圧力に関しては、低圧になりすぎると成膜速度が低下し、また高圧になりすぎるとプラズマ処理時の装置への負荷が増大するので、より好ましくは266〜1200Paの範囲内である。またプロセス温度に関しては、低温では成膜速度が低下し、高温では膜の表面粗さが増大し、かつ薄膜形成の制御がし難くなるので、好ましくは350〜800℃の範囲内である。このTi膜10の成膜時のプロセス温度が800℃よりも高くなると、成膜速度は速くなるものの、薄膜形成の制御性が低下し、再現性よくコントロールし難くなるため、成膜時のプロセス温度は800℃以下のほうが好ましい。また、成膜のプロセス温度が350℃よりも低くなると、プラズマCVDによりTiN膜10を成膜処理するために多くの時間を要するため、スループットの向上の観点からは350℃以上の方が好ましい
【0073】
また各ガス流量は、TiCl ガスが例えば1〜100sccm、Arガスが例えば50〜10000sccmの範囲内、H ガスが例えば5〜10000sccmの範囲内、N ガスが例えば5〜5000sccmの範囲内である。また、高周波電力は150〜1500W(ワット)である。またこのTiN膜の膜厚は例えば1〜50nm程度である。
【0074】
このようにして、Ti膜8とTiN膜10とよりなる2層構造のバリヤ層12が形成されることになる。ここで上記TiN膜10の厚さは、後述するデータによると、2nm以上、好ましくは4nm以上に設定するのがよい。この後は、上記半導体ウエハWを処理容器22内から搬出して上記凹部6内を導電性膜により埋め込む。この埋め込み処理では、例えば熱CVD処理により上記導電性材料としてタングステン膜を埋め込んだり、或いはメッキ処理により上記導電性材料として銅を埋め込んだりする。これによれば、抵抗率の低いチタンシリサイドの形成を促進させることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることができる。
【0075】
すなわち、この第2発明の第1実施例によれば、真空排気が可能になされた処理容器22内で被処理体として例えば半導体ウエハWの表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、プラズマCVD法により薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、プラズマを用いて薄膜としてチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程と、を有するようにしたので、抵抗率の低いチタンシリサイドの形成を促進させることができ、この結果、コンタクト抵抗を低減化させることができる。
【0076】
また第2発明の第2実施例では、図9及び図11(B)に示すように、上記第1実施例における金属膜形成工程S21とチタン窒化膜形成工程S22との間に、上記金属膜形成工程S21で形成した金属膜、すなわち、Ti膜8に対して窒化処理を施す第1の窒化工程(S21−1)を行っている。図9では、先の図8(B)に示すTi膜形成工程と図8(C)に示すプラズマによるTiN膜形成工程との間に第1の窒化工程を図9(C)として加えたように記載している。この工程は、上記Ti膜8を形成したものと同じ処理容器22内で行えばよい。また、この工程は、図2(D)に示した工程と同じであり、また、温度や圧力やガス流量等の各プロセス条件も図2(D)を参照して説明した場合と全く同じである。
【0077】
すなわち、上記金属膜形成工程の後にTiCl ガスの供給を停止して窒化ガスであるNH ガスの供給を開始する。この場合、ArガスとH ガスの供給は金属膜形成工程から継続して行う。これと同時に、高周波電力を供給してプラズマを形成する。この高周波電力は例えば800W(ワット)である。またプラズマを生成せずにArガスとH ガスとNH ガスによる窒化処理を行なうようにしてもよい。
【0078】
この場合、プロセス温度及びプロセス圧力は、それぞれ直前の金属膜形成工程の場合と同じに設定すればよい。また、NH ガスの流量は、例えば5〜10000sccmの範囲内である。窒化処理の時間は、例えば5〜120secの範囲内である。このように、窒化処理を施すことにより、Ti膜8を安定化することができる。この後は、先に説明したプラズマによるチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程(S22)を行うことになる。この場合にも、先の第2発明の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0079】
また第2発明の第3実施例では、図10及び図11(C)に示すように、上記第2実施例におけるチタン窒化膜形成工程S22の後に、上記チタン窒化膜に対して窒化処理を施す第2の窒化工程(S22−1)を行っている。図10では、先の図9(D)に示すプラズマによるTiN膜形成の後に、第2の窒化工程を図10(E)として加えたように記載している。この工程は、上記チタン窒化膜10を形成したものと同じ処理容器22内で行えばよい。この第2の窒化処理で用いるガス種は、先の第1の窒化処理時と同じであり、また各ガスの流量も先の第1の窒化処理時と同じである。また、プロセス圧力、プロセス温度及び高周波の電力は直前のチタン窒化膜形成工程と同じに設定すればよい。この場合にも、先の第2発明の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0080】
尚、上記第2発明の第3実施例において、図10(C)に示す第1の窒化工程を省略するようにし、これを第4実施例としてもよい。また、上記第2発明の第1〜第4実施例の各工程を同一の処理容器22内で行えば、ウエハWの搬送が不要になるので、その分、スループットを向上させることができる。
【0081】
<第2発明の第3実施例の評価>
次に第2発明の第3実施例について各種の評価実験を行ったので、その評価結果について説明する。まず、ここでは第2発明の第3実施例について抵抗率を測定した。また比較のために、TiN膜を形成しない場合やプラズマを生成せずに熱CVDによりTiN膜を形成した場合、或いはTiCl ガスなしの熱処理を行った場合などについて併せて評価を行った。
【0082】
図12は形成した薄膜の抵抗率を示すグラフであり、図12(A)はシリコン基板上に成膜処理を行った時の結果を示し、図12(B)はSiO 膜上に成膜処理を行った時の結果を示す。ここではTi膜のみに換算した時の抵抗率を示している。図13は成膜時にシリサイド化により発生したTiSi における結晶相の比率を示す図であり、併せて各層の膜厚を示している。図14は形成した薄膜のXRD(X線回折分析器)測定結果を示すグラフである。
【0083】
ここで各比較例1〜3の試料は、次のような処理を行って得ている。
比較例1:金属膜(Ti)の形成S21+第1の窒化工程S21−1
比較例2:金属膜(Ti)の形成S21+第1の窒化工程S21−1+熱CVDによるTiN膜形成
比較例3:金属膜(Ti)の形成S21+第1の窒化工程S21−1+TiCl 抜きのS22の工程(Ar、H 、N は流す)+第2の窒化工程S22−1
第3実施例:金属膜(Ti)の形成S21+第1の窒化工程S21−1+プラズマによるTiN膜形成S22+第2の窒化工程S22−1
また、S21、S21−1、S22、S22−1の各工程のプロセス条件は以下の通りである。
【0084】
[金属膜の形成S21]
プロセス温度:600℃、プロセス圧力:667Pa
ガス流量:TiCl /Ar/H =12/1600/4000sccm
高周波電力:800W、処理時間:27.6sec、シャワーヘッド:370℃
【0085】
[第1の窒化工程S21−1]
プロセス温度:600℃、プロセス圧力:667Pa
ガス流量:Ar/H /NH =1600/2000/1500sccm
高周波電力:800W、処理時間:27.6sec、シャワーヘッド:370℃
【0086】
[プラズマによるTiN膜の形成S22]
プロセス温度:600℃、プロセス圧力:400Pa
ガス流量:TiCl /Ar/H /N =12/1600/4000/100sccm
高周波電力:800W、処理時間:55sec、シャワーヘッド:370℃
【0087】
[第2の窒化工程S22−1]
プロセス温度:600℃、プロセス圧力:400Pa
ガス流量:Ar/H /NH =1600/2000/1500sccm
高周波電力:800W、処理時間:55sec、シャワーヘッド:370℃
【0088】
ここで比較例1〜3及び第2発明の第3実施例におけるTi膜の膜厚は図13に示すように、39.8nm、41.3nm、40.9nm及び34.6nm(TEMによる測定)であり、TiN膜は0nm、9.1nm、0nm及び23.5nmである。
【0089】
まず、Ti膜のみに換算した抵抗率は、図12に示されており、ここで斜線の棒グラフは平均値を示している。図12(A)に示すように、Si上に成膜した場合には、比較例1〜3は、それぞれ58.5、46.8、53.6μΩ・cmであるのに対し、第2発明の第3実施例の場合は42.8μΩ・cmであり、本発明の抵抗率の値がかなり低くて良好であることが判る。また、図12(B)に示すように、SiO 上に成膜した場合には、比較例1〜3は、それぞれ120.0、95.3、105.9μΩ・cmであるのに対し、第2発明の第3実施例の場合は89.6μΩ・cmであり、本発明の抵抗率の値がかなり低くて良好であることが判る。
【0090】
また上記各試料に対して電子線回折を行ったところ、図13に示すような結果を得た。この電子線回折ではTi膜中の任意の3箇所に対して結晶性を比較した。ここでTiSi の結晶相にはC49相とC54相とがあり、C49相に対してC54相の方が抵抗率が低くて良好な結晶相である。
【0091】
図13に示すように、比較例1の場合は、C49相は1点であり、C54相は2点であるので、C54相率は67%であった。比較例2及び比較例3の場合は、それぞれC49相は3点であり、C54相は0点であるので、C54相率は0%であった。これに対して、第2発明の第3実施例の場合は、C49相は0点であり、C54相は3点であるので、C54相率は100%であった。このように、比較例1〜3に対して第2発明の第3実施例は、非常にC54相率が高く、前述のように抵抗率が非常に低いことの裏付けをとることができた。
【0092】
次に、上記各試料に対して薄膜のXRD測定を行ってTiSi の結晶相のC49相とC54相の存在量の比較を行った。このXRD測定の結果を図14に示す。また、ここでは参考のために参考例1としてSiO 膜上に熱CVDによりTiN膜を形成した試料を作成し、参考例2としてSiO 膜上にプラズマによりTiN膜を形成した試料を作成し、それらについてもXRD測定を行った。尚、ここではTiN膜の成膜温度を550℃に設定している。
【0093】
図14の縦軸のIntensityは相対的な値であり、各グラフの水平レベルからどの程度ピーク値が高いかによって、その結晶相の存在量が定まっており、ピーク値が高い程、結晶相の存在量が多くなっている。ここではピーク値として横軸である”2theta”に依存して、TiN(111)、Ti(011)、”TiSi C49(150)”or”TiSi(211)“、”TiSi C54(040)”及びTiN(200)が示されている。尚、上記カッコ内は結晶面を示しており、この点は以下同様である。
【0094】
図14から明らかなように、参考例2はプラズマによりTiN膜を形成していることから、抵抗率が低い”TiSi C54”の部分で高いピーク値が表れている。これに対して参考例1は熱CVDによりTiN膜を形成していることから、”TiSi C54”の部分ではピーク値があまり高くない。これにより、抵抗率を下げるにはC54相をより多く形成した方がよいことから、プラズマによりTiN膜を形成するのが好ましいことが判る。ここで、上記比較例1〜3及び第2発明の第3実施例に着目すると、比較例1〜3は、横軸”TiSi C54”の部分でほとんどピークが発生していない。
【0095】
これに対して、第2発明の第3実施例の場合には、ポイントP1で示すように横軸”TiSi C54”に近い部分でピークが発生しており、”TiSi C54”の結晶相が多く存在することが理解できる。これにより、上述したように、プラズマによりTiN膜を形成することが抵抗率を減少させるには好ましいことが判る。
【0096】
このような現象が生ずる原理は以下のように推察することができる。すなわち、熱CVDによるTiN膜のピーク位置はポイントP2で横軸は42.6degであり、これは格子間隔d=2.12Åであることに相当する。またプラズマによるTiN膜は歪んでいるために、そのピーク位置は上記したピーク位置よりも僅かに低角度側にシフトし、ピーク位置はポイントP3で横軸は42.4degであり、これは格子間隔d=2.13Åであることに相当する。
【0097】
これに対して、”TiSi C54(040)”相の横軸は42.2degであり、これは格子間隔d=2.138Åであることに相当する。このように、熱CVDによるTiN膜と比較してプラズマによるTiN膜の方が”TiSi C54”相の格子間隔に近くなっている。このためTi膜を成膜した直後にプラズマによるTiN膜を積層すると、Ti膜の上面はプラズマによるTiN膜の格子間隔の影響を受けることになる。従って、シリコン基板であるウエハが加熱された状態でプラズマによるTiN膜の成膜が進む際に、下層のTi膜が相転移し易くなっており、”TiSi C54”相ができ易くなっているものと推察される。
【0098】
換言すれば、Ti上に、プラズマによるTiN膜を成膜すると、下層のTi膜がプラズマによるTiN膜の影響を受けてTi膜の格子間隔をプラズマによるTiN膜の格子間隔に揃えようとする力が作用して、Ti膜のシリサイド化が促進されるものと推察される。また、上記理由から、膜質を安定化させる第1の窒化工程S21−1と第2の窒化工程S22−1の両方、或いはいずれか一方の窒化工程を省略しても、”TiSi C54”相の形成が促進され、第2発明の第3実施例と同様にコンタクト抵抗の低減化を図ることができることが判る(図11参照)。
【0099】
<プラズマによるTiN膜の膜厚の検討>
次に、プラズマにより形成すべきTiN膜の膜厚について評価したので、その評価結果について説明する。ここではSiO膜上にプラズマにより種々の膜厚 のTiN膜を形成し、このTiN膜の評価を行った。この評価にはXRD測定を用いた。この時の結果を図15及び図16に示す。図15は形成したTiN膜のXRD測定結果を示すグラフ、図16は膜厚に対する歪んだTiN(200)のピークの半値幅を示すグラフである。またプロセス条件は、図11におけるプラズマによるTiN膜の形成S22と同じプロセス条件を用い、1〜9nmの範囲で膜厚を変化させた。
【0100】
図15に示すように、膜厚が1nmの場合には、横軸TiN(200)の部分でほとんどピークが表れておらず、そのごく近傍に存在する”TiSi C54”相の形成に影響を及ぼすことはできない。しかし、2nm以上になると上記TiN(200)の部分でピークが表れており、膜厚が大きくなるに従って、すなわち膜厚が2nm、3nm、4nm、6nm及び9nmになるに従って、そのピーク値も次第に大きくなっている。
【0101】
従って、プラズマによるTiN膜は、2nm以上の厚さで形成することが必要であり、それにより、その歪んだTiN(200)のピークのごく近傍に存在する”TiSi C54”相の形成を促進できることが判った。また、図15に示すグラフのピーク値に対する半値幅を求めたところ、図16に示すような結果を得ることができた。この半値幅を求めることによって、歪んだTiN(200)の結晶化の度合いを判断することができ、半値幅が小さいほど、結晶化が進んでいるといえる。また結晶化が進んでいるほど、よりTiN膜の格子間隔がそろうため、より”TiSi C54”相の結晶化を促進することができる。図16に示すように、膜厚が略4nmのポイントC1のところに変曲点が存在している。従って、プラズマによるTiN膜の膜厚は、好ましくは4nm以上形成するのがよいことが判る。尚、膜厚が2nmのポイントは、ピーク強度が弱いために半値幅の値に大きな誤差が生じている。
【0102】
<プラズマによるTiN膜形成時のプロセス条件の検討>
次に、プラズマによるTiN膜形成時のプロセス条件について種々検討を行ったので、その検討結果について説明する。ここでは、SiO膜上にプラズマに よるTiN膜を形成するようにしており、そのTiN膜に対してXRD測定を行っている。そして、プロセス条件として、載置台の温度やシャワーヘッドの温度やTiCl の流量を変化させたり、第2の窒化処理の有無について評価を行っている。図17はこの時の結果を示している。すなわち、図17はプラズマによるTiN膜形成時のプロセス条件の依存性を示すグラフである。
【0103】
図17において、特性AはプラズマによるTiN膜形成時の標準プロセス条件を示しており(ただし成膜温度は550℃)、TiN膜形成後に第2の窒化処理を行っている。このプロセス条件は、先に図11(C)を参照して説明したプラズマによるTiN膜の形成S22と第2の窒化処理S22−1においてそれぞれ説明した各プロセス条件と同じである。すなわち、この特性Aは、第2発明の第3実施例(図11(C))に相当する。
【0104】
曲線Bは、上記第2発明の第3実施例から第2の窒化処理を省略したプロセスであり、これは第2発明の第2実施例(図11(B))に相当する。
曲線Cは、上記標準プロセス時のTiCl 流量(12sccm)よりも多い18sccmのTiCl を流し、標準プロセス時の高周波電力(800W)よりも少ない500Wの高周波電力を加えている。
曲線Dは、上記標準プロセス時のTiCl 流量(12sccm)よりも多い20sccmのTiCl を流している。
【0105】
曲線Eは、上記標準プロセス時のシャワーヘッドの温度(370℃)よりも高い500℃の温度にしている。
曲線Fは、上記標準プロセス時の載置台の温度(550℃)よりも高い600℃にしている。
また曲線Gは、参考例3であり、ここではプラズマレスの状態でTiCl ガスとNH ガスとを同時に供給して極めて薄いTiN膜を成膜し、引き続きNH ガスを供給して窒化を行なうという操作を交互に繰り返してTiN膜を積層するようにした、いわゆるSFD(Sequential Flow Deposition)法により形成したTiN膜を示す。
また曲線Hは、参考例4であり、プラズマレスの熱CVD法により形成したTiN膜を示す。
【0106】
上記SFD法及び熱CVD法の成膜時のプロセス条件は以下の通りである。
[SFD法]
<TiN成膜> プロセス温度:550℃、プロセス圧力:260Pa、TiCl /NH /N =60/60/340sccm、処理時間:6sec×10cycle、14nm
<窒化> プロセス温度:550℃、プロセス圧力:260Pa、NH /N =4500/400sccm、処理時間:5sec×10cycle
【0107】
[CVD法]
<TiN成膜> プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa、TiCl /NH /N =60/60/1000sccm、処理時間:30sec、10nm
<窒化> プロセス温度:550℃、プロセス圧力:667Pa、NH /N =2000/500sccm、処理時間:25sec
【0108】
図17から明らかなように、曲線A〜Fのように、プラズマによりTiN膜を形成した場合には、ピーク値の大小が存在するにしても、各特性のピーク位置は”TiSi C54(040)”の結晶相の位置に略一致しており、抵抗率の低い”TiSi C54”相の形成を促進するために、十分に近接している歪んだTiN(200)ピークが得られていることが判る。これに対して、曲線G、Hで示す参考例3、4では、ピーク値は結晶相”TiSi C54(040)”の位置より大きくずれており、”TiSi C54(040)”の結晶相を十分に形成し得ないことが判る。従って、前述のようにプラズマによるTiN膜を形成することの必要性を確認することができた。
【0109】
尚、上記各実施例では、プラズマ用ガスとしてArガスを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、He、Ne等の他の希ガスを用いてもよい。また、上記各実施例では、窒化ガスとしてNH ガスを用いたが、これに限定されず、Nガス、ヒドラジン(HN−NH)ガス、モノメチルヒドラジン(CH−NH−NH)ガス等を用いてもよい。
【0110】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
2 導電層
4 絶縁層
8 Ti膜(チタンを含む金属膜)
10 TiN膜
12 バリヤ層
20 プラズマ処理装置
22 処理容器
28 真空排気系
36 載置台
38 加熱手段
40 シャワーヘッド(ガス導入手段)
50 ガス供給手段
70 高周波電源
74 プラズマ形成手段
82 制御部
84 記憶媒体
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、
原料ガスを用いて前記処理容器内でプラズマCVD法により前記薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記処理容器内で前記金属膜に対してアニール処理を行うアニール工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記アニール工程の直後に、前記金属膜に対して窒化処理を施す窒化工程を有することを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記アニール工程の直前に、前記金属膜に対して窒化処理を施す窒化工程を有することを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項4】
前記アニール処理はプラズマの存在下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記アニール処理はプラズマの不存在下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記金属膜形成工程のプロセス温度と前記アニール工程のプロセス温度は同一に設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記金属膜形成工程のプロセス温度は、350〜600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記アニール工程のプロセス温度は、350〜600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記アニール工程のプロセス時間は、30sec以上の長さであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
更にチタン窒化膜よりなる薄膜を形成するチタン窒化膜形成工程を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項11】
真空排気が可能になされた処理容器内で被処理体の表面に対して薄膜を形成する成膜方法において、
プラズマCVD法により前記薄膜としてチタンを含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、
プラズマを用いて前記薄膜としてチタン窒化膜を形成するチタン窒化膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
前記金属膜形成工程と前記チタン窒化膜形成工程との間に、前記金属膜形成工程で形成した前記金属膜に対して窒化処理を施す第1の窒化工程を有することを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項13】
前記チタン窒化膜形成工程の後に、前記チタン窒化膜に対して窒化処理を施す第2の窒化工程を有することを特徴とする請求項11又は12記載の成膜方法。
【請求項14】
前記チタン窒化膜の厚さは、2nm以上であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記各工程は、全て同一の処理容器内で行われることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項16】
被処理体に対して薄膜を形成するプラズマ処理装置において、
真空排気が可能になされた処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極として機能する載置台と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内へ原料ガスを含む必要な各種ガスを導入すると共に上部電極として機能するガス導入手段と、
前記ガス導入手段へ前記各種ガスを供給するガス供給手段と、
前記載置台と前記ガス導入手段との間にプラズマを形成するプラズマ形成手段と、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項17】
真空排気が可能になされた処理容器と、
被処理体を前記処理容器内で載置すると共に下部電極として機能する載置台と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内へ原料ガスを含む必要な各種ガスを導入すると共に上部電極として機能するガス導入手段と、
前記ガス導入手段へ前記各種ガスを供給するガス供給手段と、
前記載置台と前記ガス導入手段との間にプラズマを形成するプラズマ形成手段と、
装置全体を制御する制御部と、
を備えたプラズマ処理装置を用いて前記被処理体の表面に薄膜を形成するに際して、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように前記プラズマ処理装置を制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶する記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−100962(P2011−100962A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76587(P2010−76587)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】