説明

新規な芳香族エンジイン誘導体、これを含む有機半導体製造用の前駆体溶液、その前駆体溶液を用いた有機半導体薄膜およびその製造方法、ならびに電子素子

【課題】化学的および電気的に安定し、信頼性のある有機半導体薄膜を製造することができる新規な芳香族エンジイン誘導体を提供する。
【解決手段】下記化学式1〜化学式3のいずれかで表わされる芳香族エンジイン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な芳香族エンジイン誘導体、これを有機半導体製造用の前駆体溶液、その前駆体溶液を用いた有機半導体薄膜およびその製造方法、ならびに電子素子に関し、より詳しくは、新規な芳香族エンジイン誘導体を用いて、常温スピンコートのような溶液を用いるプロセスが適用可能であるばかりでなく、化学的・電気的に安定し、信頼性のある有機半導体薄膜を製造する方法、これにより製造された有機半導体薄膜を採用した電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ素子、有機電界発光ディスプレイ素子等の平板ディスプレイ素子には、このような素子を駆動させるための様々な薄膜トランジスタ(TFT)等が用いられている。薄膜トランジスタは、ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、また、ゲート電極の駆動により活性化する半導体層を備え、p型またはn型の半導体層は、印加されるゲート電圧により、ソースとドレイン電極との間を流れる電流が制御される伝導性チャネル物質として作用する。
【0003】
薄膜トランジスタに用いられる半導体としては、非晶質シリコン(Amorphous Si、以下、a−Siという。)と多結晶シリコン(Polycrystalline Si、以下、Poly−Siという。)が主に用いられているが、最近、ディスプレイの大面積化、低価格化、および柔軟化の傾向に伴い、高価格で高温真空プロセスを必要とする無機系物質から、有機系物質を用いた半導体についての研究が盛んに進められている。
【0004】
現在、有機半導体材料として、ペンタセン等の低分子系有機材料についての研究が加速化し、ペンタセン等の低分子有機材料の場合、3.2〜5.0cm/Vs以上の高い電荷移動度および優れた電流オン/オフ比を有することが報告されている。しかし、これらの低分子有機材料は、薄膜の形成の際に、高価な真空蒸着装備を必要とし、微細パターンを形成することが困難であるので、価格的な面や大面積化に適合しないという点で問題があった。
【0005】
また、オリゴマー有機半導体として、IBM(International Business Machines Corporation)から、電荷移動度が約0.1cm/Vsであり、約120〜200℃でアニールが可能な可溶性ペンタセン前駆体が報告され(非特許文献1)、米国のカリフォルニア大学から、電荷移動度が約0.03〜0.05cm/Vsであり、約180〜200℃でアニールが可能なオリゴチオフェン前駆体が報告されている(非特許文献2)。しかしながら、上述した有機半導体は、デバイス製造のための工程に際して、化学的に不安定であるため、実際の素子製造ラインに適用することが困難であり、得られるデバイスは、電気的安定性と関連して、電流−電子スイーピングを繰り返す場合、ゲートしきい値電圧が低下したり、漏れ電流が増加して、信頼度が低下するという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献1は、アセチレン基を含む有機化合物およびその化合物を真空蒸着により薄膜を製造する方法について開示している。しかしながら、これは、真空蒸着により薄膜を製造するということから、ペンタセンと同様に、価格的な面や大面積化において適合しないという点で問題点があった。
【非特許文献1】IBM、JACS 2002,124,8812
【非特許文献2】Univ. California,JACS 2004,126,1596
【特許文献1】米国特許第6,683,782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、素子適用の際に、常温スピンコート等の溶液を用いるプロセスが適用可能であるばかりでなく、化学的および電気的に安定し、信頼性のある有機半導体薄膜を製造することができる新規な芳香族エンジイン誘導体を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、化学的および電気的に安定し、信頼性のある有機半導体薄膜および有機半導体を製造するために有用な有機半導体製造用の前駆体溶液を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、化学的および電気的に安定し、信頼性のある有機半導体薄膜およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
さらにまた、本発明の他の目的は、前記有機半導体薄膜をキャリア輸送層として含む電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、下記化学式1〜化学式3のいずれかで表わされる芳香族エンジイン誘導体が提供される。
【化4】

【0012】
前記化学式1〜化学式3において、
、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数3〜30のアリーレン基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれる基であり、ArおよびArは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数2〜30の縮合環または複素環を含む3価の基であり、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基であり(ただし、前記化学式1において、R、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式2において、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式3において、RおよびRが同時に水素原子であることはない)、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立に0〜10の整数であり、a+b+c≠0およびc+d+f≠0である。
【0013】
前記のX、X、X、X、X、X、ArおよびArが、それぞれ独立に下記化学式4で表される化合物に由来する2価または3価の置換基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
【化5】

【0014】
前記化学式1のX、X、X、ArおよびArの分子構造中には、チオフェン環が少なくとも二つ以上含まれていることが好ましい。
【0015】
前記芳香族エンジイン誘導体は、下記の化学式5または化学式6で表される化合物であることが好ましい。
【化6】

【0016】
前記化学式5および6において、2つのRは、それぞれ独立にハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基であり、m、nは、それぞれ1〜10の整数である。
【0017】
また、本発明は、前記の芳香族エンジイン誘導体と、有機溶媒とを含む有機半導体製造用の前駆体溶液を提供する。
【0018】
前記前駆体溶液は、前記化学式1〜化学式3で表わされる芳香族エンジイン誘導体から選ばれる少なくとも2種以上を含んでもよい。
【0019】
前記有機半導体製造用の前駆体溶液は、前記芳香族エンジイン誘導体の含有率が、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【0020】
前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、酢酸系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒およびシリコン系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明は、(a)請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する段階と、(b)前記塗膜を熱処理して、前記芳香族エンジイン誘導体を架橋させて薄膜を形成する段階とを含む有機半導体薄膜の製造方法を提供する。
【0022】
前記前駆体溶液は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェット、またはドロップキャスティングによって基板上に塗布されることが好ましい。
【0023】
前記熱処理は、100〜250℃で行うことが好ましい。
【0024】
本発明は、また、前記の方法により製造された有機半導体薄膜、さらに、その有機半導体薄膜をキャリア輸送層として含む電子素子を提供する。
【0025】
前記電子素子として、薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池またはメモリが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の芳香族エンジイン誘導体は、新たな構造の低分子有機半導体材料として、常温湿式工程によりコーティングが可能であり、大面積工程が必要な半導体工程に適用され、化学的および電気的に安定的であるのみならず、分子配列が規則的であり、かつ割れのない、信頼性のある有機半導体薄膜を提供することができる。
【0027】
また、本発明による有機半導体薄膜は、有機薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池、およびメモリ等の様々な分野において有用に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の芳香族エンジイン誘導体は、下記化学式1〜化学式3で表される、芳香族置換基の二重結合に二つのアセチレン基が結合された化学構造を有する化合物である。
【化7】

【0029】
前記化学式1乃至3において、X、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数3〜30のアリーレン基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれる基であり、ArおよびArは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数2〜30の縮合環または複素環を含む3価の基である。前記化学式1において、ArおよびArは、2つのアセチレン基が結合している二重結合の両端の炭素原子と、XまたはXと結合している炭素原子と、それらの炭素原子の間に置換基とが結合して形成される縮合環または複素環を含む3価の基である。
【0030】
このX、X、X、X、X、X、ArおよびArはそれぞれ独立に下記化学式4で表される化合物に由来する2価または3価の置換基からなる群より選ばれる基であることが好ましく、より好ましくは、半導体の移動度を向上させるための側面において、チオフェン基またはフェニル基がよい。
【化8】

【0031】
また、前記化学式1のX、X、X、ArおよびArの分子構造中には、チオフェン環が少なくとも二つ以上含まれていることが好ましい。
【0032】
さらに、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基である。また、前記化学式1において、R、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式2において、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式3において、RおよびRが同時に水素原子であることはない。
【0033】
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立に0〜10の整数であり、a+b+c≠0およびc+d+f≠0である。
【0034】
本発明の芳香族エンジイン誘導体の代表例として、下記の化学式5または化学式6で表される化合物が挙げられる。
【化9】

【0035】
前記化学式5および6において、2つのRは、それぞれ独立にハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基であり、m、nは、それぞれ1〜10の整数である。
【0036】
さらに、本発明の前記芳香族エンジイン誘導体のより具体的な例としては、下記化学式7〜化学式10の化合物が挙げられる。
【化10】

【0037】
本発明の芳香族エンジイン誘導体は、構造的に芳香族置換基の二重結合に二つのアセチレン基が結合されて不飽和のコアを形成している、独特な化学構造を有し、その構造に起因する活性機序により、高反応性を有している。そのため、本発明の芳香族エンジイン誘導体は、低温でも容易にラジカルベンゼン環を形成することにより、分子間結合を通じて高分子化することができる。この芳香族エンジイン誘導体の架橋反応メカニズムについて説明すると、下記反応式1に示す通りである。
【化11】

【0038】
前記反応式1に示すように、芳香族エンジイン誘導体は、その二重結合の両端に結合されたアセチレン基が、エンジイン活性機序の高い反応性により、一定の反応温度に達するとラジカルベンゼン環を形成し、次いで、分子間結合を通じて、最終的にポリマーネットワークを形成する。特に、フレキシブルディスプレイの作製の際に、プラスチック基板を用いる場合、一般に、150℃以上の熱硬化温度に耐えず、軽量化および柔軟化に問題が発生することがあるのに対して、本発明では、線状共役鎖を有する低分子半導体物質として芳香族エンジイン誘導体を用いて、有機半導体薄膜を製造することにより、低温での溶液工程が可能であるばかりでなく、低分子半導体の分子配列の規則性と高分子の電気的安定性を同時に備える有機半導体薄膜を製造することができる。
【0039】
本発明の芳香族エンジイン誘導体は、常法により合成されてもよく、その製造方法は、特に制限されるものではない。
【0040】
本発明の芳香族エンジイン誘導体は、活性層をなす新たな有機半導体材料として用いられ、薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池、またはメモリ等の各種の電子素子の製造に効果的に適用することができる。
【0041】
また、本発明は、前記芳香族エンジイン誘導体を含む有機半導体薄膜、およびその有機半導体薄膜をキャリア輸送層として含む電子素子を提供する。この有機半導体薄膜の製造は、(a)前記の芳香族エンジイン誘導体を含む前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する段階と、(b)前記塗膜を熱処理して、前記芳香族エンジイン誘導体を架橋させて薄膜を形成する段階とを含む方法によって行うことができる。
【0042】
前記前駆体溶液は、本発明の芳香族エンジイン誘導体と、有機溶媒とを含むものであり、前記化学式1〜化学式3で表わされる芳香族エンジイン誘導体から選ばれる少なくとも2種以上を含んでもよく、芳香族エンジイン誘導体の含有率が、0.01〜30質量%であることが好ましい。
【0043】
前記前駆体溶液に含まれる有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ピリジン、キノリン、アニソール、メシチレン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メチルイソブチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル等の酢酸系溶媒;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;シリコン系溶媒;および前記溶媒の混合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0044】
この芳香族エンジイン誘導体および有機溶媒を含む前駆体溶液を調製し、その前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する。
【0045】
前記有機半導体薄膜が形成される基板としては、本発明の目的を阻害しない限り、特に制限されず、例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、ITOガラス、石英、シリカ塗布基板、アルミナ塗布基板、プラスチック基板から、用途に応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記前駆体溶液を基板上に塗布する方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェット、またはドロップキャスティング等のコーティング法を用いることができる。便宜性および均一性の側面で、最も好ましい塗布法は、スピンコーティングである。スピンコーティングを行う場合、スピン速度は100乃至10,000rpmの範囲内で調節されることが好ましい。
【0047】
次いで、前記形成された塗膜は、熱処理して、前記芳香族エンジイン誘導体を架橋させて高分子化させることにより、有機半導体薄膜が形成される。前記熱処理は、100〜250℃の温度で行うことが好ましく、前記温度範囲の適正温度で1〜100分間加熱または順次に温度を上昇させて行うことができる。
【0048】
既存の前駆体溶液を用いて半導体薄膜を形成する場合、熱処理過程において溶媒乃至分子間結合で発生するガスの噴出により、薄膜に割れが生じ得ることとは異なり、本発明による有機半導体薄膜は、エンジイン活性機序の高い反応性により、ラジカル反応を通じて高分子化することにより、連続工程進行の際に、ガス発生により生じ得る薄膜の割れの問題を防ぐことができるのみならず、添加剤無しに架橋されるので、添加剤が不純物として作用して分子配列を崩してしまうという逆効果を予防することができる。
【0049】
このように形成された有機半導体薄膜は、短分子型の芳香族エンジイン誘導体が有する規則的な配列と分子間クロスネットワークの形成による分子間パッキングにより、優れたトランジスタ特性を維持するのみならず、高分子型の薄膜に形成され、化学的、電気的な安定性および信頼性を確保することができ、キャリア輸送層として電子素子に適用される場合、優れた物性を提供することができ、常温溶液工程による費用節減の効果を極大化することができる。
【0050】
前記電子素子の具体的な例としては、有機薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池、およびメモリが挙げられ、本発明の芳香族エンジイン誘導体は、当業界で知られている通常的な工程により前記素子に適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
【0052】
製造例1:芳香族エンジイン誘導体Aの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体Aを合成した。
【化12】

【0053】
2,3−ジブロモチオフェン2mL(18.0mmol)と1−へプチン3.5mL(27.0mmol)を、テトラヒドロフラン/ジイソプロピルアミン(1:1)混合溶媒に混合し、パラジウムジクロロジホスフィン0.23g(0.36mmol)、ヨウ化銅70mg(0.36mmol)、トリフェニルホスフィン0.1g(0.36mmol)を、この順で加えた。反応溶液を70℃で8時間加熱して反応させた。生成物を、塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧乾燥し、さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、2−ヘプチニル−3−ブロモチオフェンを4.6g得た。得られた化合物にトリメチルシリルアセチレン3.3mL(23.2mmol)を加え、さらに、前記と同様の反応を繰り返して、2−ヘプチニル−3−トリメチルシリルエチニルチオフェン2.7g(9.84mmol)を得た。次に、リチウムジイソプロピルアミン(1M)12.8mL(12.8mmol)を−70℃で加えた。同温度を維持して30分間撹拌後、ジオキサボロラン(dioxaborolane)2.4mL(11.8mmol)を加え、油浴バス中で常温に上昇するまで加温して反応を進行させた。生成物を、1N HCL水溶液に注ぎ、クロロホルムで有機層を取り、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに減圧留去して、上記反応式に示す油状の化合物1aを4.1g得た。この化合物1aのH−NMRスペクトルデータは下記の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.24(s,9H),0.92(t,3H,J=7.2Hz),1.24−1.64(m,18H),2.49(t,2H,J=7.0Hz),7.47(s,1H)
【0054】
2,2’−ジブロモ−5,5’−ビチオフェン0.5g(1.54mmol)に、化合物1a1.6g(4.00mmol)をトルエンと水に添加後、Pd(PPh[テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(アルドリッチ社製)]触媒と炭酸カリウムを入れ、110℃で8時間反応させた。反応生成物を1N HCl水溶液で洗浄した後、有機層を乾燥し、さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製して、上記反応式に示す化合物2aを0.64g(58%)得た。この化合物2aのH−NMRデータは下記の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.26(s,18H),0.93(t,6H,J=7.2Hz),1.24−1.67(m,12H),2.50(t,4H,J=7.0Hz),7.05(d,4H,J=2.8Hz)、7.34(s,2H)。
【0055】
化合物2a0.54gをクロロホルム/メチルアルコール(1/3)に溶かした後、NaOH1gを入れ、10分間撹拌した。1N HCL水溶液で洗浄した後、有機層を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製して、上記反応式に示す芳香族エンジイン誘導体Aを0.3g得た。
【0056】
得られた芳香族エンジイン誘導体AのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.93(t,6H,J=7.1Hz),1.35−1.67(m,12H),2.51(t,4H,J=7.0Hz),3.26(s,2H),7.05−7.07(m,6H)。
【0057】
製造例2:芳香族エンジイン誘導体Bの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体Bを合成した。
【化13】

【0058】
ターチオフェン0.25g(1mmol)をクロロホルムに入れ、N−ブロモスクシンイミド0.35g(2.0mmol)を加えて反応させ、上記反応式に示すジブロマイド1bを得た。次に、製造例1における芳香族エンジイン誘導体Aの合成と同一の条件で鈴木カップリングと脱シリル化を行って芳香族エンジイン誘導体Bを合成した。
【0059】
得られた芳香族エンジイン誘導体BのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.93(t,6H,J=7.2Hz),1.24−1.67(m,12H),2.51(t,4H,J=7.0Hz),3.26(s,2H),7.05−7.08(m,8H)。
【0060】
製造例3:芳香族エンジイン誘導体Cの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体Cを合成した。
【化14】

【0061】
2,2’−ジブロモビチオフェンと2−ブロモチオフェンを鈴木カップリング反応させ、得られた生成物にN−ブロモスクシンイミドを加え、ジブロモテトラチオフェン1cを得た。製造例1における芳香族エンジイン誘導体Aの合成と同一の条件で鈴木カップリングと脱シリル化を行って芳香族エンジイン誘導体Cを合成した。
【0062】
得られた芳香族エンジイン誘導体CのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.93(t,6H,J=7.2Hz),1.24−1.67(m,12H),2.51(t,4H,J=7.0Hz),3.27(s,2H),7.05−7.09(m,10H)。
【0063】
製造例4:芳香族エンジイン誘導体Dの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体Dを合成した。
【化15】

【0064】
1,4−ジブロモベンゼン1g(4.2mmol)を2−ブロモチオフェンと鈴木カップリング反応させた後、生成物0.72g(3.0mmol)をクロロホルムに入れ、N−ブロモスクシンイミド1.1g(6.2mmol)を加えて反応させ、上記反応式に示すジブロミド化合物1dを0.6g得た。製造例1における芳香族エンジイン誘導体Aの合成と同一の条件で鈴木カップリングと脱シリル化を行って芳香族エンジイン誘導体Dを合成した。
【0065】
得られた芳香族エンジイン誘導体DのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),δ(ppm)0.93(t,6H,J=7.2Hz),1.24−1.67(m,12H),2.51(t,4H,J=7.0Hz),3.27(s,2H),7.01(s,2H)、7.13(d,2H,J=3.8Hz),7.25(d,2H,J=3.8Hz),7.60(s,4H)。
【0066】
製造例5:芳香族エンジイン誘導体IIcの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体IIcを合成した。
【化16】

【0067】
3,4−ジブロモチオフェン2.5mL(22.6mmol)と、トリメチルシリルアセチレン8mL(56.5mmol)とを、テトラヒドロフラン/ジイソプロピルアミン(1:1)溶媒に混合し、さらに、パラジウムジクロロジホスフィン0.15g(0.23mmol)、ヨウ化銅21mg(0.11mmol)、およびトリフェニルホスフィン0.1g(0.36mmol)を連続的に加えた。反応溶液を70℃で24時間加熱して反応させた後、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに減圧下で乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、3,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)チオフェン(IIa)を1.5g得た。
【0068】
次に、得られた3,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)チオフェン1g(3.62mmol)を、1.08mL(10.8mmol)のリチウムジイソプロピルアミン(LDA)(1M)と78℃で混合した。反応混合物を室温で30分間撹拌した後、ジオキサボロラン2.4ml(11.8mmol)と混合し、温度を室温に上げながら、二重鍋中で反応させた。その結果、得られた反応溶液を1N HCl水溶液に注ぎ、クロロホルムを加えて、有機層を得た。次いで、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに、減圧蒸留して、油状のジボロラン化合物2.1gを得た。
【0069】
2−ブロモ−2’−ヘキシル−5,5’−ジチオフェン2.96g(9.0mmol)と、前記に得られたジボラン化合物2.1g(4.0mmol)を、トルエンと水に加えた後、さらに、Pd(PPh[テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(アルドリッチ社製)]触媒と炭酸カリウムを加えた。次いで、反応混合物を110℃で8時間反応させた後、1N HCl水溶液で洗浄した。その結果、得られた有機層を乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィにより精製して、上記反応式に示す化合物IIb1.55g(51%)を得た。
【0070】
化合物IIb1.55gをクロロホルム/メチルアルコール(1/3の容積比)溶媒に溶解させた後、NaOH1gを加え、反応混合物を10分間撹拌して反応させた。撹拌された反応溶液を1N HClの水溶液で洗浄し、有機層を乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、上記反応式に示す芳香族エンジイン誘導体IIc1.01gを得た。
【0071】
得られた芳香族エンジイン誘導体IIcのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),(ppm)0.88(t,6H,J=6.7Hz),1.2445(m,12H)、1.64−1.69(m,4H),2.77(t,4H,J=7.5Hz),3.27(s,2H),7.03,7.07(m,8H)。
【0072】
製造例6:芳香族エンジインエンジイン誘導体IIIcの合成
下記反応式にしたがって、芳香族エンジイン誘導体IIIcを合成した。
【化17】

【0073】
1,4−ジクロロ−2,3−ジヨードベンゼン3g(7.5mmol)と、トリメチルシリルアセチレン1.5mL(15.0mmol)とを、テトラヒドロフラン/ジイソプロピルアミン(1:1)溶媒に混合し、さらに、パラジウムジクロロジホスフィン0.15g(0.23mmol)、ヨウ化銅21mg(0.11mmol)、およびトリフェニルホスフィン0.1g(0.36mmol)を連続的に加えた。反応溶液を70℃で24時間の間加熱して反応させた後、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに、減圧下で乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、1,4−ジクロロ−2,3−ビス(トリメチルシリルアセチレン)ベンゼン(IIIa)1.27gを得た。
【0074】
前記に得られた1,4−ジクロロ−2,3−ビス(トリメチルシリルアセチレン)ベンゼン(IIIa)1.27gを、リチウムジイソプロピルアミン(LDA)(1M)7.5mL(7.5mmol)と78℃で混合した。反応混合物を室温で30分間撹拌して反応させた後、ジオキサボロラン1.6ml(7.5mmol)と混合し、温度を室温に上げながら、二重鍋中で反応させた。その結果、得られた反応溶液を1N HCl水溶液に注ぎ、クロロホルムを加えて、有機層を得た。次いで、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに、減圧蒸留して、油状のジボロラン化合物1.8gを得た。
【0075】
2−ブロモ−2’−ヘキシル−5,5’−ジチオフェン2.80g(8.5mmol)と、前記に得られたジボロラン化合物1.8g(3.4mmol)とを、トルエンと水に加えてから、ここに、Pd(PPh[テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(アルドリッチ社製)]触媒と炭酸カリウムを加えた。次いで、反応混合物を110℃で8時間反応させた後、1N HCl水溶液で洗浄した。その結果、得られた有機層を乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、上記反応式に示す化合物IIIb1.28g(49%)を得た。
【0076】
前記に得られた化合物IIIb1.28gをクロロホルム/メチルアルコール(1/3の容積比)溶媒に溶解させてから、NaOH1gを加え、反応混合物を10分間撹拌して反応させた。撹拌された反応溶液を1N HCl水溶液で洗浄し、得られた有機層を乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、芳香族エンジイン誘導体IIIc0.95gを得た。
【0077】
得られた芳香族エンジイン誘導体IIIcのNMRデータは、以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl),(ppm)0.88(t,6H,J=6.5Hz),1.23,1.50(m,20H)、1.64−1.69(m,4H),2.78(t,4H,J=7.6Hz),3.37(s,2H),7.03,7.08(m,6H),7.25(d,2H)、7.60(s,2H)。
【0078】
実施例1:有機半導体薄膜の製造
先ず、洗浄されたプラスチック基板に、アルミニウム/ニオブ(Al/Nb)合金を用いてスパッタ法で1000Åの厚さのゲート電極を形成した。次に、CVD法によってSiOからなる1000Åの厚さのゲート絶縁膜を形成した。
【0079】
そのゲート絶縁膜の上に、Auを用いてスパッタ法で1200Åの厚さのソース−ドレイン電極を形成した。次に、ゲート電極、ゲート絶縁膜およびソースードレイン電極を形成したプラスチック基板を、有機半導体材料を蒸着する前に、イソプロピルアルコールを用いて10分間洗浄し、乾燥した。このプラスチック基板を、オクタデシルトリクロロシランをヘキサンに10mM濃度で溶解させて調製した溶液に30秒間浸漬し、アセトンで洗浄後、乾燥させた。次に、前記製造例1で得られた芳香族エンジイン誘導体Aを、キシレン溶媒に0.1質量%濃度で溶解させて調製した溶液を、基板上にスピンコートし、アルゴン雰囲気下で150℃、30分間焼成して、図8に示すとおり、基板1上に、ゲート電極、ゲート絶縁層3、ソース電極4、ドレイン電極5および有機半導体層6が設けられたボトムコンタクト方式の有機薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0080】
実施例2〜6:有機薄膜トランジスタの製造
上述した実施例1において、有機半導体層を形成する物質として、前記製造例2乃至6で製造した芳香族エンジイン誘導体B(実施例2)、C(実施例3)、D(実施例4)、IIc(実施例5)、およびIIIc(実施例6)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0081】
前記製造例1〜6で得た芳香族エンジイン誘導体について、示差走査熱量分析を行った。その結果を図1〜図4に示す。
【0082】
図1〜図4に示すDSC曲線から、本発明による芳香族エンジイン誘導体は、120℃程度で架橋反応が始まり、200℃以下で架橋反応が盛んに進行することが分かった。前記結果から明らかなように、本発明による芳香族エンジイン誘導体は、低温の湿式工程により、有機半導体薄膜を形成できることが分かる。
【0083】
前記製造例1〜2で得た芳香族エンジイン誘導体の熱重量分析を行った。その結果を図5〜6に示す。
【0084】
図5〜6に示すTGA曲線から、約300℃に至るまで、重量損失を示さないことが分かる。本発明の芳香族エンジイン誘導体が120〜160℃の反応温度を遥かに超えているにもかかわらず、重量損失がないということは、形成された高分子で、これ以上ガスが発生しないことを意味する。したがって、本発明の芳香族エンジイン誘導体を用いて、半導体薄膜を形成する場合、ガス発生による薄膜の割れの問題を防止することができることが分かる。
【0085】
前記実施例1で製造された有機半導体薄膜において、温度による有機半導体薄膜の構造変化を観察するために、温度を変化させながらIRスペクトルを測定し、その結果を図7に示した。図7に示すとおり、アニール温度が高くなるほど、三重結合(C≡C)と、これに結合された水素結合(≡C−H)のピークが減ることが確認できた。これは、温度が高くなるほど、エンジイン活性機所がベンゼン環を形成しながら高分子化することを示している。
【0086】
前記実施例1〜実施例6により製造された有機薄膜トランジスタ素子の電気的特性を測定するために、KEITHLEY社のSemiconductor Characterization System(4200−SCS)を用いて電流伝達特性を測定した。これから計算した電荷移動度および遮断漏れ電流値を、下記表1に示す。
【0087】
電荷移動度は、前記電流伝達曲線を用いて、下記の飽和領域の電流式から(ISD1/2とVを変数としたグラフを求め、その傾きから求めた:
【数1】

【0088】
前記式において、ISDはソース−ドレイン電流値であり、μまたはμFETは電荷移動度であり、COは酸化膜静電容量であり、Wはチャネル幅であり、Lはチャネル長であり、Vはゲート電圧であり、Vはしきい値電圧である。
【0089】
また、遮断漏れ電流(Ioff)は電流がオフ状態であるとき流れる電流であり、電流比でオフ状態における最小電流として求めた。
【表1】

【0090】
前記表1から明らかなように、本発明の芳香族エンジイン誘導体は、トランジスタの性能を維持するとともに、遮断漏れ電流が10−10A以下の水準と極めて低く、薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池、およびメモリ等の各種の電子素子に適用するとき、電気的特性に優れた有機半導体薄膜を提供することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の製造例1において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したDSC曲線である。
【図2】本発明の製造例2において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したDSC曲線である。
【図3】本発明の製造例3において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したDSC曲線である。
【図4】本発明の製造例4において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したDSC曲線である。
【図5】本発明の製造例1において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したTGA曲線である。
【図6】本発明の製造例2において合成した芳香族エンジイン誘導体について測定したTGA曲線である。
【図7】本発明の実施例1において製造した有機半導体薄膜の赤外線分光(IR)スペクトルである。
【図8】本発明の一実施例による有機薄膜トランジスタを示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 有機半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1〜化学式3のいずれかで表わされる芳香族エンジイン誘導体。
【化1】

前記化学式1〜化学式3において、
、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数3〜30のアリーレン基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれる基であり、
ArおよびArは、それぞれ独立に置換若しくは非置換の炭素数2〜30の縮合環または複素環を含む3価の基であり
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基であり(ただし、前記化学式1において、R、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式2において、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、前記化学式3において、RおよびRが同時に水素原子であることはない)、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立に0〜10の整数であり、a+b+c≠0およびc+d+f≠0である。
【請求項2】
前記のX、X、X、X、X、X、ArおよびArが、それぞれ独立に下記化学式4で表される化合物に由来する2価または3価の置換基からなる群より選ばれる基であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族エンジイン誘導体:
【化2】

【請求項3】
前記化学式1のX、X、X、ArおよびArの分子構造中には、チオフェン環が少なくとも二つ以上含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芳香族エンジイン誘導体。
【請求項4】
下記の化学式5または化学式6で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族エンジイン誘導体。
【化3】

前記化学式5および6において、
2つのRは、それぞれ独立にハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、式:−SiR(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表される基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアラルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のヘテロアルキル基、および置換若しくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基からなる群より選ばれる基であり、
m、nは、それぞれ1〜10の整数である。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の芳香族エンジイン誘導体と、有機溶媒とを含む有機半導体製造用の前駆体溶液。
【請求項6】
前記前駆体溶液は、前記化学式1乃至化学式3で表わされる芳香族エンジイン誘導体から選ばれる少なくとも2種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機半導体製造用の前駆体溶液。
【請求項7】
前記芳香族エンジイン誘導体の含有率が、0.01〜30質量%であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の有機半導体製造用の前駆体溶液。
【請求項8】
前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、酢酸系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒およびシリコン系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の有機半導体製造用の前駆体溶液。
【請求項9】
(a)請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する段階と、
(b)前記塗膜を熱処理して、前記芳香族エンジイン誘導体を架橋させて薄膜を形成する段階とを含む有機半導体薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記前駆体溶液は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェット、またはドロップキャスティングによって基板上に塗布されることを特徴とする請求項9に記載の有機半導体薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は、100〜250℃で行うことを特徴とする請求項9に記載の有機半導体薄膜の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法により製造された有機半導体薄膜。
【請求項13】
請求項12に記載の有機半導体薄膜をキャリア輸送層として含む電子素子。
【請求項14】
前記電子素子が、薄膜トランジスタ、電気発光素子、太陽電池またはメモリであることを特徴とする請求項13に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−176929(P2007−176929A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308677(P2006−308677)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】