説明

有機半導体装置製造用基板、有機半導体装置およびその製造方法

【課題】より高い配向秩序を有する有機半導体膜を、より簡便且つ効率よく形成できる有機半導体装置形成用基板、この基板を用いる有機半導体装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、該基板上に形成されたゲート電極と、該ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜上に形成された有機薄膜とを有する有機半導体装置製造用基板であって、前記有機薄膜が、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基等を、Xは水酸基等を、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜であることを特徴とする有機半導体装置製造用基板、この基板に、ソース電極、ドレイン電極、半導体膜および保護膜を有する有機半導体装置、並びにこの有機半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い配向秩序を有する有機半導体膜を、簡便且つ効率よく形成できる有機半導体装置形成用基板、この基板を用いる有機半導体装置、およびこの有機半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体装置(以下、「有機TFT」ということがある。)は、基板、ゲート電極、絶縁膜、ドレイン電極、ソース電極および有機半導体膜などから構成される。
【0003】
有機TFTは、ゲート電極への印加電圧により、絶縁膜と有機半導体膜の界面に蓄積されるキャリア量を過剰状態から不足状態に変調して、ドレイン電極とソース電極の間を流れる電流量を変化させて、スイッチング動作を行うものである。
【0004】
ところで、これらの有機半導体膜で高いスイッチング動作を得るには、絶縁膜表面に形成される有機半導体膜において、有機半導体分子同士が互いに向きを揃えて周密に配置した膜(すなわち、高い配向秩序を有する有機半導体膜)を形成する必要がある。
【0005】
従来、このような高い配向秩序を有する有機半導体膜を形成する方法として、絶縁膜表面を予め有機薄膜(「自己組織化単分子膜」、「SAM膜」ともいう。)で被覆する方法が知られている。
【0006】
例えば、非特許文献1には、シリコン熱酸化膜からなる絶縁膜表面をオクタデシルトリクロロシラン(OTS)などの自己組織化単分子膜で被覆すると、F8T2半導体高分子からなる有機半導体膜の配向秩序が向上してスイッチング性能が向上する旨が記載されている。
また、非特許文献2には、シリコン熱酸化膜からなる絶縁膜表面をOTSで被覆すると、ペンタセン半導体低分子を真空蒸着法で堆積した有機半導体膜の配向秩序が向上し、配向秩序が高い領域である結晶粒径がOTS被覆しない場合より増大して、TFTのスイッチング性能が向上することが報告されている。
さらに非特許文献3には、絶縁膜表面を予めヘキサメチルジシラザンからなる有機薄膜で被覆してから、その上にP3HTを塗布形成した有機半導体膜の電界効果移動度が0.01〜0.1cm/Vsまで向上することが報告されている。
【0007】
このように、予め有機薄膜で修飾した絶縁膜表面に有機半導体膜を形成すると、有機半導体膜の配向秩序が向上してスイッチング性能が向上し、アモルファスシリコン無機半導体を半導体膜とする現行のTFTと同等以上の性能を有する有機TFTが得られる。
【0008】
しかしながら、このような有機TFTにおいて、有機半導体分子の配向秩序を向上してスイッチング性能を向上するために、有機薄膜を用いて絶縁膜表面を修飾すると、光リーク電流が増加し、その上に塗布プロセスで電極を微細形成できないという問題があった。
【0009】
この問題を解決すべく、非特許文献4、および特許文献1、2には、基板上に積層された、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、半導体膜および保護膜からなる有機半導体装置において、絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された半導体膜と絶縁膜の界面には自己組織化単分子膜が介在し、前記領域外に形成された半導体膜と絶縁膜の界面には自己組織化単分子膜が介在しないことを特徴とする有機半導体装置が提案されている。
【0010】
この文献に記載された有機半導体装置によれば、絶縁膜表面のゲート電極投影領域内のみに自己組織化単分子膜を配置して、前記領域内の有機半導体膜部分のみ選択的に配向秩序を向上させることができ、光リーク電流を増加せずにオン電流を増加でき、スイッチング性能を向上することができる。
【非特許文献1】A,Salleoほか、Applied Physics Letters 81(23),pp.4383−4385(2002)
【非特許文献2】Y.Y.Linほか、IEEE Trans.Electron.Devices,44,pp.1325−1331(1997)
【非特許文献3】H.Sirringhausほか、SCIENCE,Vol.280,pp.1741−1743(1998)
【非特許文献4】E−Express,2004年7月15日号,37頁−43頁
【特許文献1】特開2001−94107号公報
【特許文献2】特開2005−79560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高い配向秩序を有する有機半導体膜を、簡便且つ効率よく形成できる有機半導体装置形成用基板、この基板を用いる有機半導体装置、およびこの有機半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、基板上にゲート電極およびゲート絶縁膜を順次形成し、さらに該ゲート絶縁膜上に、特定のシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から有機薄膜を形成した。次いで、前記有機薄膜上にフォトレジストを成膜し、基板裏面側からゲート電極をフォトマスクとしてフォトレジストを露光し、同様に酸素プラズマ処理で有機薄膜をエッチング処理することにより、ゲート絶縁膜表面のゲート電極投影領域内にのみ有機薄膜を有する構造の有機半導体装置製造用基板を得た。さらに、この有機半導体装置製造用基板を使用すると、該基板の有機薄膜上に、高い配向秩序を有する有機半導体膜を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(8)いずれかに記載の有機半導体装置製造用基板が提供される。
(1)基板と、該基板上に形成されたゲート電極と、該ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜上に形成された有機薄膜とを有する有機半導体装置製造用基板であって、前記有機薄膜が、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜であることを特徴とする有機半導体装置製造用基板。
【0014】
(2)前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)の有機半導体装置製造用基板。
(3)前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする(1)に記載の有機半導体装置製造用基板。
(4)金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする(2)または(3)に記載の有機半導体装置製造用基板。
【0015】
(5)チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする(4)に記載の有機半導体装置製造用基板。
(6)有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の有機半導体装置製造用基板。
(7)炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする(6)記載の有機半導体装置製造用基板。
(8)有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする(1)〜(7)いずれか記載の有機半導体装置製造用基板。
【0016】
本発明の第2によれば、下記(9)〜(18)いずれかに記載の有機半導体装置が提供される。
(9)基板上に積層された、ゲート電極,ゲート絶縁膜,ソース電極,ドレイン電極,半導体膜および保護膜から構成される有機半導体装置において、前記半導体膜が有機半導体分子の集合体で構成されており、前記絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された半導体膜と絶縁膜の界面部に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜を有することを特徴とする有機半導体装置。
【0017】
(10)前記領域外に形成された半導体膜とゲート絶縁膜の界面には、前記有機薄膜が介在しないことを特徴とする(9)に記載の有機半導体装置。
(11)前記絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された前記半導体膜部分の有機半導体分子の配向秩序が、前記領域外に形成された半導体膜部分の配向秩序よりも高いことを特徴とする(9)または(10)記載の有機半導体装置。
(12)前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の有機半導体装置。
【0018】
(13)前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の有機半導体装置。
(14)金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする(12)または(13)に記載の有機半導体装置。
(15)チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする(14)に記載の有機半導体装置。
【0019】
(16)有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする(9)〜(15)のいずれかに記載の有機半導体装置。
(17)炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする(16)に記載の有機半導体装置。
(18)有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする(9)〜(17)のいずれか記載の有機半導体装置。
【0020】
本発明の第3によれば、下記(19)〜(21)のいずれかに記載の有機半導体装置の製造方法が提供される。
(19)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の有機半導体装置形成用基板に、フォトマスクを介して基板表面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
(20)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の有機半導体装置形成用基板に、ゲート電極をフォトマスクとして基板裏面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
(21)一方の面側に、少なくとも酸化チタンを含有する光触媒層形成用組成物から形成された光触媒層を有する板状透明支持体を、前記光触媒層側を有機薄膜側に向けて前記基板と重ね合わせ、又は前記光触媒層側を有機薄膜が形成された基板側に向けて所定の間隔を開けて前記基板と対峙させ、前記支持体の他方の面側から活性エネルギー線を照射して、光触媒反応により活性種を生成させ、この活性種により、有機薄膜表面を所定のパターンで変性させた後、有機薄膜の照射部分のみを分解除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁膜表面のゲート電極投影領域内のみに、前記式(1)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜を配置することで、前記領域内の有機半導体膜部分のみ選択的に配向秩序を飛躍的に向上させることができる。このため光照射される有機半導体膜部分(絶縁膜表面のゲート電極投影領域外)の配向秩序は向上されることがなく、光リーク電流を増加せずにオン電流を増加でき、スイッチング性能を向上することができる。
【0022】
また、上記のように絶縁膜表面のゲート電極投影領域内のみに選択的且つ高精細に配置された有機薄膜の撥液作用を利用して、ゲート電極に対して自己整合的に配置されたドレイン/ソース電極を塗布プロセスで高精細に形成できる。
このようにして、生産性が高く製造コストが低い高性能・高精細な有機半導体装置の製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)有機半導体装置製造用基板
本発明の有機半導体装置製造用基板は、基板と、該基板上に形成されたゲート電極と、該ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜上に形成された有機薄膜とを有する有機半導体装置製造用基板であって、前記有機薄膜が、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜であることを特徴とする。
【0024】
本発明の有機半導体装置製造用基板10の層構成断面を図1に示す。
図1中、1は基板、2はゲート電極、3は絶縁膜(ゲート絶縁膜)、4は有機薄膜である。また、本発明の有機半導体装置製造用基板の製造工程断面図を図2に示す。
以下、図1、2を参照しながら、本発明の有機半導体装置製造用基板について説明する。
【0025】
まず基板1を用意する。本発明に用いる基板1としては、絶縁性の材料からなるものであれば、特に制限されない。基板材料としては、ガラス、アルミナ焼結体などの無機材料;ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレンなどの各種絶縁性プラスチック;などが挙げられる。また、本発明に用いる基板としては、単層からなるものであって、2層以上の積層体であってもよい。
基板の厚み、大きさなどに特に制限されず、従来公知の厚み、大きさの基板を用いることができる。
【0026】
次に、図2(a)に示すように、基板1表面の所定領域にゲート電極2を形成する。
ゲート電極2の材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、導電性インクなどの有機材料;金、白金、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、ニッケルなどの金属類;これら金属を用いた合金類;ポリシリコン、アモルファスシリコンなどのケイ素類;錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)などの金属酸化物;などが挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ゲート電極2の形成方法としては、特に制限されず、既存の薄膜形成方法を採用できる。例えば、前記有機材料や導電性インクを使用する場合には、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法、ディッピング法、真空蒸着法などを採用できる。また、金属類、合金類、ケイ素類、金属酸化物などを用いる場合には、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法、反応性CVD法などを採用できる。電極形成のためのパターニング加工には、既存のフォトリソグラフィー法と、ドライエッチングまたはウェットエッチング法を用いることができる。
ゲート電極2の膜厚は、通常50〜300nm程度である。
【0028】
次いで、図2(b)に示すように、少なくともゲート電極2を覆うように絶縁膜(ゲート絶縁膜)3を形成する。
絶縁膜3の形成に用いる材料としては、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリイミド、パーフルオロポリエーテルなどの有機材料;SiO、SiNx、Alなどの無機材料;などが挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
絶縁膜3の形成方法としては、特に制限されず、既存の薄膜形成方法を採用できる。例えば、前記有機材料を使用する場合には、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法、ディッピング法、真空蒸着法などを採用できる。また、無機材料を用いる場合には、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、熱CVD法、プラズマCVD法、反応性CVD法などを採用することができる。
絶縁膜3の膜厚は、通常100〜1000nm程度である。
【0030】
次に、図2(c)に示すように、式(1):R−Si−X4−nで示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液を用いて、有機薄膜4を形成する。
【0031】
有機薄膜の形成に用いる有機薄膜形成用溶液は、式(1):R−Si−X4−nで示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む。
前記式(1)中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、又は連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。
【0032】
前記置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、n−デシニル基、n−オクタデシニル基などの炭素数2〜20のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;などを挙げることができるが、C8〜20の炭化水素基が好ましい。
【0033】
前記置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アリール基などが挙げられる。具体的には、上記例示した炭化水素基中の水素原子の1個以上がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子に置換された基を挙げることができる。
【0034】
前記置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基の置換基としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;または水酸基などを挙げることができる。これらの置換基の数は0〜3であるのが好ましい。
【0035】
連結基を含む炭化水素基の炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0036】
また、連結基を含むハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0037】
前記連結基は、炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基の炭素−炭素結合間、又は炭化水素基の炭素とSiとの間に存在するのが好ましい。連結基の具体例としては、−O−、−S−、−SO−、−CO−、又は−C(=O)O−などを挙げるこができる。
nは1〜3の整数を表し、1であるのが好ましい。
【0038】
Xは、水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができ、C1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などを挙げることができ、アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
これらの中でも、C1〜6のアルコキシ基が好ましく、
【0039】
前記式(1)で示されるシラン系界面活性剤の具体例としては、(ヘプタデカフルオリン−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオリン−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオリン−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−ジメチルクロロシラン、又はn−オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。なかでも、n−オクタデシルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0040】
前記シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒としては、シラン系界面活性剤のシラン部分又は加水分解性基部分と配位結合や水素結合などを介して相互作用をすることにより、加水分解性基又は水酸基を活性化させ、縮合を促進させる作用を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、(A)金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシド類、キレート化又は配位化された金属化合物、金属アルコキシド類部分加水分解生成物、金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、有機酸、シラノール縮合触媒、及び酸触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「触媒A成分」ということがある)、(B)前記触媒A成分と、前記シラン系界面活性剤を含有する組成物(以下、「触媒B成分」ということがある)が好ましく、金属アルコキシド類、金属アルコキシド類の部分加水分解生成物の少なくとも1種を用いるのがより好ましい。
【0041】
金属アルコキシド類としては、特に限定されないが、透明性に優れる有機薄膜を得ることができることなどの理由から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のアルコキシド類が好ましく、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシド類がより好ましい。また、金属アルコキシド類のアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、含有酸化物濃度、有機物の脱離容易性、入手容易性などから、炭素数1〜4がより好ましい。
【0042】
本発明に用いる金属アルコキシド類の具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC−i)、Si(OCなどのケイ素アルコキシド;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC−i)、Ti(OCなどのチタンアルコキシド;Ti[OSi(CH、Ti[OSi(Cなどのテトラキストリアルキルシロキシチタン;Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC−i)、Zr(OCなどのジルコニウムアルコキシド;Al(OCH、Al(OC、Al(OC−i)、Al(OCなどのアルミニウムアルコキシド;In(OCH、In(OC、In(OC−i)、In(OCなどのインジウムアルコキシド;Sn(OCH、Sn(OC、Sn(OC−i)、Sn(OCなどのスズアルコキシド;Ta(OCH、Ta(OC、Ta(OC−i)、Ta(OCなどのタンタルアルコキシド;W(OCH、W(OC、W(OC−i)、W(OCなどのタングステンアルコキシド;Zn(OCH、Zn(OCなどの亜鉛アルコキシド;Pb(OCなどの鉛アルコキシド;などが挙げられる。これらの金属アルコキシド類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また本発明においては、金属アルコキシド類として、2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と、1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、及びこれらの組み合わせを用いることもできる。
【0044】
2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドと、遷移金属のアルコキシドとの反応により得られる複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより錯塩の形で得られる複合アルコキシドなどを例示することができる。
【0045】
その具体例としては、BaTi(OR’)、SrTi(OR’)、BaZr(OR’)、SrZr(OR’)、LiNb(OR’)、LiTa(OR’)、及び、これら2種以上の組合せ、LiVO(OR’)、MgAl(OR’)、(OR’)SiOAl(OR”)、(OR’)SiOTi(OR”)、(OR’)SiONb(OR”)、(OR’)SiOTa(OR”)などの、ケイ素アルコキシドと、他の金属アルコキシド類との反応生成物、及びその縮重合物などが挙げられる。ここで、R’及びR”はアルキル基などを表す。
【0046】
1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとしては、金属塩と金属アルコキシド類との反応により得られる化合物を例示することができる。
【0047】
金属塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩などを、金属アルコキシド類としては、上述した金属アルコキシド類と同様のものをそれぞれ例示することができる。
【0048】
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物は、金属アルコキシド類を完全に加水分解する前に得られるものであって、オリゴマーの状態で存在するものである。
【0049】
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物の製造方法としては、有機溶媒中、上記例示した金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を用い、−100℃から有機溶媒還流温度範囲で加水分解する方法を好ましく例示することができる。
【0050】
具体的には、
(i)有機溶媒中、金属アルコキシド類に対し0.5〜1.0倍モル未満の水を添加する方法、
(ii)有機溶媒中、加水分解が開始する温度以下、好ましくは0℃以下、より好ましは−20〜−100℃の範囲で、金属アルコキシド類に対し1.0〜2.0倍モル未満の水を添加する方法、
(iii)有機溶媒中、水の添加速度を制御する方法や、水に水溶性溶媒を添加して水濃度を低下させた水溶液を使用する方法などにより、加水分解速度を制御しながら、金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を室温で添加する方法、などを例示することができる。
【0051】
上記(i)の方法においては、任意の温度で所定量の水を添加した後、加水分解を開始する温度以下、好ましくは−20℃以下で、水をさらに追加して反応を行うこともできる。
【0052】
金属アルコキシド類と水との反応は、有機溶媒を用いずに直接金属アルコキシド類と水を混合することにより行うこともできるが、有機溶媒中で行うのが好ましい。具体的には、金属アルコキシド類の有機溶媒溶液に有機溶媒で希釈した水を添加する方法;水が懸濁又は溶解した有機溶媒中に、金属アルコキシド類、又はその有機溶媒溶液を添加する方法;のいずれの方法でも行うことができ、前者の水を後から添加する方法が好ましい。
【0053】
有機溶媒中の金属アルコキシド類の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拌が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、通常、5〜30重量%の範囲である。
【0054】
上記(i)の方法における金属アルコキシド類と水との反応温度は特に制限されず、通常、−100〜+100℃の範囲、好ましくは、−20℃から用いる有機溶媒又は加水分解によって脱離してくるアルコールの沸点までの温度範囲である。
【0055】
上記(ii)の方法における水の添加温度は、金属アルコキシド類の安定性に依存するものであり、加水分解開始温度以下、又は0℃以下の温度であれば特に限定されないが、金属アルコキシド類の種類によっては、金属アルコキシド類への水の添加を−50℃〜−100℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、低温で水を添加し、一定時間熟成した後、室温から用いた溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
【0056】
上記(iii)の方法における金属アルコキシド類と水との反応は、特殊な冷却装置を用いなくても冷却可能な温度範囲、例えば、0℃から室温の範囲で、水の添加速度を制御するなどの温度以外の方法により加水分解速度を制御することにより行うことができる。一定時間熟成した後、室温から用いる溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
【0057】
用いる有機溶媒としては、その有機溶媒中で、金属アルコキシド類の加水分解生成物が、分散質となって分散できるものであるのが好ましく、シラン系界面活性剤を水で処理する反応を低温で行うことができることから、水の溶解度が大きく、低温で凝固しない溶媒がより好ましい。
【0058】
用いる有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン(特開平9−208438号公報など)など;を挙げることができる。
【0059】
これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
混合溶媒として用いる場合には、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールなどの低級アルコール溶媒系の組み合わせが好ましい。この場合の低級アルコール系溶媒としては、イソプロパノール、t−ブタノールなどの2級以上のアルコール系溶媒がより好ましい。混合溶媒の混合比は特に制限されないが、炭化水素系溶媒と低級アルコール系溶媒を、体積比で、99/1〜50/50の範囲で用いるのが好ましい。
【0060】
用いる水は、中性であれば特に制限されないが、不純物が少なく、繊密な有機薄膜を得る観点から、純水、蒸留水又はイオン交換水を用いるのが好ましい。水の使用量は、前記金属アルコキシド類1モルに対し、0.5〜2.0倍モル未満である。
【0061】
また、金属アルコキシド類の水による部分加水分解反応においては、酸、塩基又は分散安定化剤を添加してもよい。酸及び塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、金属アルコキシド類を加水分解、脱水縮合させてコロイド粒子などの分散質を製造するための触媒として、及び生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されない。
【0062】
用いる酸としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸などの鉱酸;酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの光照射によって酸を発生する光酸発生剤;を挙げることができる。
【0063】
用いる塩基としては、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アンモニア、ジメチルホルムアミド、ホスフィンなどを挙げることができる。
【0064】
分散安定化剤は、分散質を分散媒中に安定に分散させる効力を有する剤であり、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤などの凝結防止剤などを挙げることができる。具体的には、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの多価カルボン酸;ヒドロキシカルボン酸;ピロ燐酸、トリポリ燐酸などの燐酸;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチルヘキサンジオンなどの金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物;スルパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ社製)、Disperbyk−161、−162、−163、−164(以上、ビツクケミー社製)などの脂肪族アミン系、ハイドロステアリン酸系、ポリエステルアミン;ジメチルポリシロキサン、メチル(ポリシロキシアルキレン)シロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンなど(特開平9−208438号公報、特開平2000−53421号公報など)のシリコーン化合物;などが例示される。
【0065】
上記のようにして得られる部分加水分解生成物は、有機溶媒中、酸、塩基及び/又は分散安定化剤の非存在下、凝集せずに安定に分散している性質を有する分散質となっている。この場合、分散質とは、分散系中に分散している微細粒子のことをいい、具体的には、コロイド粒子などを例示することができる。
【0066】
ここで、凝集せずに安定に分散している状態とは、有機溶媒中、酸、塩基及び/又は分散安定化剤の非存在下、加水分解生成物の分散質が、凝結して不均質に分離していない状態を表し、好ましくは透明で均質な状態を表す。
【0067】
また透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対照試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して、好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。
【0068】
部分加水分解生成物の分散質の粒子径は特に限定されないが、可視光における高い透過率を得るためには、通常1〜100nm、好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜10nmの範囲である。
【0069】
前記シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒としての触媒B成分は、触媒A成分と前記シラン系界面活性剤とを混合することにより得ることができ、より具体的には、シラン系界面活性剤を、触媒A成分の存在下、有機溶媒中、水で処理することによって調製することができる。触媒B成分中、シラン系界面活性剤を触媒A成分1モルに対して、0.5〜2.0モル含むのが好ましく、0.8〜1.5モル含むのがより好ましい。
【0070】
前記シラン系界面活性剤を、有機溶媒中、触媒A成分の存在下、水で処理する方法としては、具体的には、(ア)シラン系界面活性剤及び触媒A成分の有機溶媒溶液に水を添加する方法、(イ)シラン系界面活性剤と水の有機溶媒溶液に触媒A成分を添加する方法などを挙げることができる。なお、触媒A成分は、水を含む有機溶媒の状態で使用されるのが一般的である。
【0071】
触媒B成分の調製に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒が好ましく、なかでも、沸点が100〜250℃のものがより好ましい。具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロインなどの炭化水素系溶媒;CBrClCF、CClFCFCC1、CClFCFCHFCl、CFCFCHC1、CFCBrFCBrF、CClFCClFCFCCl、Cl(CFCFCl)Cl、Cl(CFCFCl)CFCCl、Cl(CFCFCl)Clなどのフロン系溶媒;フロリナート(3M社製)、アフルード(旭ガラス社製)などのフッ化炭素系溶媒;ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーンなどのシリコーン系溶媒;を挙げることができる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
また、急激な反応を抑えるためには、(ア)の方法において添加する水、(イ)の方法において添加する触媒A成分は、有機溶媒などで希釈したものであるのが好ましい。
【0073】
前記有機薄膜形成用溶液は、前記シラン系界面活性剤と触媒A成分、あるいは前記シラン系界面活性剤と触媒B成分とから得ることができる。より具体的には、前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒A成分、及び所望により水の混合物を撹拌することで、あるいは前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒B成分、及び所望により水の混合物を攪拌することで、有機薄膜形成用溶液を得ることができる。
【0074】
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる触媒A成分や触媒B成分の使用量は、形成する単分子の有機薄膜の物性に影響を与えない量であれば特に制限されないが、シラン系界面活性剤1モルに対して酸化物換算モル数で、それぞれ通常0.001〜1モル、好ましくは0.001〜0.2モルである。
【0075】
前記有機薄膜形成用溶液は、より具体的には、(a)前記触媒B成分及びシラン系界面活性剤の有機溶媒溶液に水を添加する方法、(b)シラン系界面活性剤と水の混合溶液に、前記触媒B成分を添加する方法などを挙げることができる。また、急激な反応を抑えるためには、(a)の方法において添加する水、(b)の方法において添加する触媒B成分は、有機溶媒などで希釈したものであるのが好ましい。
【0076】
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒が好ましく、なかでも、沸点が100〜250℃のものがより好ましい。具体的には、前記触媒A成分や触媒B成分の調製に用いることができるものとして列記した、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒と同様のものを使用することができる。
【0077】
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる水の量は、用いるシラン系界面活性剤、触媒A成分や触媒B成分、塗布する基板などの種類に応じて適宜決定することができる。水の使用量があまり多いと、シラン系界面活性剤が互いに縮合し、基体表面への化学吸着が阻害され、単分子膜とならないおそれがある。
【0078】
前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒A成分や触媒B成分及び水の混合物の攪拌温度は、通常−100℃〜+100℃、好ましくは−20℃〜+50℃である。攪拌時間は、通常、数分から数時間である。また、この場合においては、均一な有機薄膜形成用溶液を得るために、超音波処理を施すことも好ましい。
【0079】
本発明においては、有機薄膜形成用溶液として、その水分含量が所定量範囲内になるように調整するか又は保持したものを用いることが好ましい。有機薄膜形成用溶液中における水分含量は、基体表面への化学吸着が阻害される、繊密な単分子膜が製造できない、有効に用いることのできるシラン系界面活性剤の量を損失する、又は触媒が失活するなどの問題がおきない範囲の量が好ましい。また、ディップ法により該溶液を基板に接触させる場合に、接触時間を10分間以内、好ましくは5分間以内に、緻密で均質な有機薄膜を1度にしかも該溶液が接触した基板前面に形成させるために、基板表面又は膜の形成を促進活性化させるのに十分な水分含量以上が好ましい。
【0080】
前記有機薄膜形成用溶液の水分含量は、具体的には50ppm以上が好ましく、より好ましくは50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲(より具体的には、50〜1000ppmの範囲)である。
【0081】
前記有機薄膜形成用溶液の水分含量を所定量範囲内になるように調整するか又は保持する方法としては、(i)前記有機薄膜形成用溶液に接触して水層を設ける方法、〈ii)水分を含ませた保水性物質を共存させておく方法、(iii)水分を含む気体を吹き込む方法、などを挙げることができる。
【0082】
絶縁膜上に有機薄膜を形成する方法としては、上記のようにして得られた有機薄膜形成用溶液に絶縁膜表面を接触させる方法を挙げることができる。
【0083】
絶縁膜表面を有機薄膜形成用溶液に接触させる方法としては、絶縁膜が形成された基板を有機薄膜形成用溶液中に浸漬する方法、絶縁膜表面に有機薄膜形成用溶液を公知の方法で塗布する方法、絶縁膜上に有機薄膜形成用溶液をスプレーする方法などを挙げることができる。なかでも、均一な膜質を有する有機薄膜を効率よく成膜できることから、絶縁膜が形成された基板を有機薄膜形成用溶液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬時間としては5分間以上が好ましく、また10分間以内が好ましい。そして、炭化水素系溶媒溶液などを用いて、浸漬などの接触後に超音波洗浄することがより好ましい。
【0084】
有機薄膜形成用溶液に絶縁膜表面を接触させた後、膜表面に付着した余分な試剤、不純物などを除去するために、洗浄工程を設けることが好ましい。洗浄工程を設けることにより、より膜厚を制御することができる。洗浄方法は、表面の付着物を除去できる方法であれば特に制限されないが、前記のように、炭化水素系溶媒溶液などを用いて、浸漬後に超音波洗浄することがより好ましい。
【0085】
有機薄膜を形成又は有機薄膜を形成後洗浄した後は、形成された有機薄膜の層を安定化させるために、基板を加熱するのが好ましい。加熱する温度は、用いる基板の種類、透明導電性膜の種類、形成された有機薄膜の安定性などによって適宜選択することができる。
【0086】
前記有機薄膜形成用溶液に絶縁膜を接触させると、該溶液中のシラン系界面活性剤が絶縁膜表面に吸着され、有機薄膜が形成される。シラン系界面活性剤が絶縁膜表面に吸着される機構の詳細は明らかではないが、次のように考えることができる。すなわち、有機薄膜形成用溶液中においては、シラン系界面活性剤の加水分解性基が水により加水分解された状態となっている。そして、この状態のシラン系界面活性剤が絶縁膜表面の活性水素と反応して、絶縁膜表面と強固な化学結合を形成してなる薄膜が形成される。この薄膜は、絶縁膜の活性水素と反応して形成されるものであって、単分子膜となる。
【0087】
有機薄膜の膜厚は、その形成用分子のアルキル鎖長によるが、通常0.2〜10nmが好ましく、0.5〜3nmが特に好ましい。
【0088】
前記有機薄膜形成用溶液を使用することにより、絶縁膜表面に、光照射前において、撥油性であり、かつ撥水性である有機薄膜の層を形成することができる。より具体的には、光照射前における水の接触角が好ましくは80°以上、より好ましくは85°以上、さらに好ましくは90°以上、特に好ましくは100°以上であり、かつ、トルエンの接触角が20°以上である耐摩耗性に優れた有機薄膜を形成することができる。
【0089】
次に、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去することにより、図1に示す本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。
ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去する方法としては、特に制限されないが、作業効率の観点から、次の(α)〜(γ)の方法が好ましい。
【0090】
(α)図2(c)に示す構造を有する基板に、フォトマスクを介して基板表面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去する方法。
まず、ゲート電極2、絶縁膜3、有機薄膜4が積層された基板1の上にポジ型フォトレジスト(図示を省略。)を塗布して、基板に良く位置合せされたフォトマスクを介して紫外光を照射して、フォトレジストを露光する。用いるフォトマスクとしては、例えば、ゲート電極投影領域内を遮光して、ゲート電極投影領域外の有機半導体膜が形成される部分を透光する、Crなどからなる金属膜パターンが表面に形成された石英基板からなるフォトマスクを用いることができる。
【0091】
次に、これを現像、焼成して、ゲート電極投影領域内に配置され、ゲート電極投影領域外の有機半導体膜形成部分には配置されないフォトレジストパターンを形成する。このフォトレジストパターンをマスクにして、酸素プラズマ処理で有機薄膜4をエッチング除去した後、フォトレジストを除去することで、有機薄膜4が絶縁膜3表面のゲート電極投影領域に選択的に形成された、本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。
【0092】
(β)光リソグラフィーの技術を用いる方法
また、この場合、図3に示すように、一方の面側に、少なくとも酸化チタンを含有する光触媒層形成用組成物から形成された光触媒層を有する板状透明支持体9を、前記光触媒層側を有機薄膜4側に向けて前記基板と重ね合わせ、又は前記光触媒層側を有機薄膜が形成された基板側に向けて所定の間隔を開けて前記基板と対峙させ、前記支持体9の他方の面側(図中、上方側)から、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、光触媒反応により活性種を生成させ、この活性種により、有機薄膜表面を所定のパターンで変性させた後、有機薄膜4の照射部分のみを分解除去することで、有機薄膜4が絶縁膜3表面のゲート電極投影領域に選択的に形成された、本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。この方法によれば、フォトレジストを用いることなく、簡便且つ効率よく、本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。
【0093】
(γ)図2(c)に示す構造を有する基板に、ゲート電極をフォトマスクとして基板裏面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去する方法(図4参照)。
まず、基板裏面からゲート電極2をフォトマスクとしてフォトレジスト(図示を省略。)を露光する。次いで、ゲート電極と概略同一形状に加工されたフォトレジストをマスクにして有機薄膜4をエッチング除去した後、フォトレジストを除去することにより、有機薄膜4が絶縁膜3表面のゲート電極投影領域に選択的に形成された、本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。
【0094】
また、本発明においては、その他の方法として、以下に示すリフトオフ法を採用することもできる。
まず、絶縁膜3表面のゲート電極投影領域にフォトレジストを形成した後、その上に有機薄膜4を成膜する。ここでは、裏面露光法でフォトレジストを形成する例を示すが、この場合はネガ型フォトレジストを用い、絶縁膜3表面のゲート電極投影領域外のフォトレジストを形成する。この上に有機薄膜4を形成してからフォトレジストを除去すると、フォトレジスト表面に形成された有機薄膜4が一緒に除去(リフトオフ)されて、有機薄膜4が絶縁膜3表面のゲート電極投影領域に選択的に形成された、本発明の有機半導体装置製造用基板10を得ることができる。
【0095】
以上のようにして本発明の有機半導体装置製造用基板10を製造することができる。得られる有機半導体装置製造用基板10は、絶縁膜3表面のゲート電極投影領域に、均一で高品質、且つ効率よく形成できる有機薄膜4を有しているので、その上に、高い配向秩序を有する有機半導体膜を形成することができる。
【0096】
2)有機半導体装置及びその製造方法
本発明の有機半導体装置は、基板上に積層された、ゲート電極、ゲート絶縁膜,ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜および保護膜から構成される有機半導体装置において、前記半導体膜が有機半導体分子の集合体で構成されており、前記絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された半導体膜と絶縁膜の界面部に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜を有することを特徴とする。
【0097】
本発明の有機半導体装置20の層構成断面図を図5示す。図5中、1は基板、2はゲート電極、3は絶縁膜、4は有機薄膜、5はドレイン電極、6はソース電極、7は有機半導体膜、8は保護膜である。
【0098】
図5に示す有機半導体装置は、図1に示す有機半導体装置製造用基板を用いて、ドレイン電極5及びソース電極6(以下、「ドレイン/ソース電極5,6」ということがある。)、有機半導体膜7、並びに保護膜8を形成することにより製造することができる。
【0099】
まず、図1に示す有機半導体装置製造用基板を用いて、ドレイン/ソース電極5,6、および有機半導体膜7を形成する。この場合、ドレイン/ソース電極5,6を形成した後、有機半導体膜7を形成することもできるし、有機半導体膜7を形成した後、ドレイン/ソース電極5,6を形成することもできる。
【0100】
これらの中で、ドレイン/ソース電極5,6を先に形成する方法は、次のような利点を有する。絶縁膜3表面のゲート電極投影領域内に選択的に配置された有機薄膜4は、同領域上に形成された有機半導体膜7の配向秩序のみを選択的に向上して、光リーク電流を増加することなく暗状態でのスイッチング性能を向上する作用だけでなく、ドレイン電極5、ソース電極6がゲート電極に対して自己整合的に配置させる作用がある。すなわち、有機薄膜4の撥液作用で導電性インクがゲート電極投影領域内に浸透せず、ゲート電極と端部が整合したドレイン/ソース電極を形成することができる。
【0101】
一般的に塗布プロセスで形成した電極はパターンおよび位置精度が低いために、両電極間が短絡しないように電極を形成した場合の電極間隔、チャネル長は約30μm程度と大きく、十分な電流が得られなかった。これに対して、本発明によれば、チャネル長はゲート電極投影領域内に配置された有機薄膜4の幅、すなわちゲート電極2の幅で決まる。従って、位置精度が高いフォトリソグラフィー法でゲート電極2を形成すれば、3μm程度のゲート電極幅すなわちチャネル長のドレイン/ソース電極5,6が塗布プロセスで形成できる。
【0102】
また、有機半導体膜7を形成した後、ドレイン/ソース電極5,6を形成する場合には、有機半導体膜7を覆うようにフォトレジストを成膜した後、パターニングを行い、ドレイン電極5およびソース電極6材料をマスク蒸着することで、ドレイン/ソース電極5,6を形成することができる。
【0103】
ドレイン/ソース電極の形成材料としては、ほとんどの有機半導体が、電荷を輸送するキャリアがホールであるp型半導体であることから、有機半導体膜とオーミック接触をとるために、仕事関数の大きい金属が望ましい。具体的には、金、白金などが挙げられるが、これらの材料に限定されるわけではない。また、半導体層表面にドーパントを高密度にドープする場合は、金属/半導体間をキャリアがトンネルすることが可能となり、金属の材質によらなくなるため、ゲート電極であげた金属材料や有機導電性材料も、ソース電極及びドレイン電極の材料として用いることができる。
【0104】
有機半導体膜7は、図1に示す本発明の有機半導体装置製造用基板10の有機薄膜4上に、有機半導体材料の薄膜を成膜することで形成することができる。有機半導体材料の層を有機薄膜4上に形成すると、有機薄膜によって有機半導体材料は結晶化・配向し、高い配向秩序を有する有機半導体膜7が形成される。なお、有機半導体材料の薄膜を成膜誤差により、有機薄膜4上以外の部位に形成されたとしても、有機半導体材料は結晶化・配向しないため、半導体として性質を有する有機半導体膜は形成されない。
有機半導体膜7の配向秩序は、有機半導体膜7の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)やX線回折測定装置を使用して測定し、確認することができる。
【0105】
用いる有機半導体材料としては、特に限定されず、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機けい素化合物などが挙げられる。より具体的には、ペンタセン、テトラセン、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレン誘導体、フタロシアニン化合物、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シアニン色素などである。
【0106】
半導体有機材料を原料とする薄膜の成膜方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法、ディッピング法、真空蒸着法が挙げられる。
【0107】
最後に基板表面全体に保護膜8を形成する。保護膜8は、前記絶縁膜3と同様の材料を用いて、同様の成膜方法により形成することができる。保護膜8の膜厚は、特に制限されないが、通常100〜1000nm程度である。
【0108】
以上のようにして、図5に示す構造の本発明の有機半導体装置20を得ることができる。
本発明の有機半導体装置は高い配向秩序を有する有機半導体膜を有するため、優れたトランジスタとしての特性を有する。
すなわち、本発明の有機半導体装置は、前述のように光リーク電流を増加することなくスイッチング性能を向上させているため、高輝度のバックライト光に対しても動作不良なく、液晶表示装置を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の有機半導体装置製造用基板の一例の層構成断面図である。
【図2】本発明の有機半導体装置製造用基板の製造工程を表す工程断面図である。
【図3】本発明の一実施態様である有機薄膜の選択的形成法を説明する図である。
【図4】本発明の一実施態様である有機薄膜の選択的形成法を説明する図である。
【図5】本発明の有機半導体装置の一例の層構成断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1…基板、2…ゲート電極、3…絶縁膜(ゲート絶縁膜)、4…有機薄膜…5…ドレイン電極、6…ソース電極、7…有機半導体膜、8…保護膜、9…支持体、10…有機半導体装置製造用基板、20…有機半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されたゲート電極と、該ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、該ゲート絶縁膜上に形成された有機薄膜とを有する有機半導体装置製造用基板であって、前記有機薄膜が、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜であることを特徴とする有機半導体装置製造用基板。
【請求項2】
前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項3】
前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項4】
金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項5】
チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする請求項4に記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項6】
有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項7】
炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする請求項6に記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項8】
有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の有機半導体装置製造用基板。
【請求項9】
基板上に積層された、ゲート電極,ゲート絶縁膜,ソース電極,ドレイン電極,半導体膜および保護膜から構成される有機半導体装置において、前記半導体膜が有機半導体分子の集合体で構成されており、前記絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された半導体膜と絶縁膜の界面部に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜を有することを特徴とする有機半導体装置。
【請求項10】
前記領域外に形成された半導体膜とゲート絶縁膜の界面には、前記有機薄膜が介在しないことを特徴とする請求項9に記載の有機半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁膜表面のゲート電極投影領域内に形成された前記半導体膜部分の有機半導体分子の配向秩序が、前記領域外に形成された半導体膜部分の配向秩序よりも高いことを特徴とする請求項9または10に記載の有機半導体装置。
【請求項12】
前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項13】
前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項14】
金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする請求項12または13に記載の有機半導体装置。
【請求項15】
チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする請求項14に記載の有機半導体装置。
【請求項16】
有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項17】
炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする請求項16に記載の有機半導体装置。
【請求項18】
有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする請求項9〜17のいずれか記載の有機半導体装置。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機半導体装置形成用基板に、フォトマスクを介して基板表面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機半導体装置形成用基板に、ゲート電極をフォトマスクとして基板裏面から光照射して、ゲート電極投影領域外の半導体膜が形成される領域から有機薄膜を除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。
【請求項21】
一方の面側に、少なくとも酸化チタンを含有する光触媒層形成用組成物から形成された光触媒層を有する板状透明支持体を、前記光触媒層側を有機薄膜側に向けて前記基板と重ね合わせ、又は前記光触媒層側を有機薄膜が形成された基板側に向けて所定の間隔を開けて前記基板と対峙させ、前記支持体の他方の面側から活性エネルギー線を照射して、光触媒反応により活性種を生成させ、この活性種により、有機薄膜表面を所定のパターンで変性させた後、有機薄膜の照射部分のみを分解除去することを特徴とする有機半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−19121(P2007−19121A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196985(P2005−196985)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】