説明

本人照合装置

【課題】煩雑な手続を必要とせず、被照合者が容易に非常用のバイオメトリクス情報での照合確認を行える本人照合装置を提供する。
【解決手段】本人照合装置は、被照合者のバイオメトリクス情報である入力情報を取得する入力部14と、利用許可者のバイオメトリクス情報である複数の登録情報を通常用及び非常用に区別して記憶する記憶部15と、被照合者が非常用の登録情報を確認するために操作する操作部11と、入力情報と登録情報を照合し、被照合者が非常用の登録情報にて利用許可者本人であると判定した場合は、外部へ非常通報するとともに電気錠2を解錠制御し、通常用の登録情報にて本人と判定した場合は非常通報せずに電気錠2を解錠制御する制御部18とを有する。また制御部18は、非常用の登録情報にて本人と判定した場合であっても、当該判定の前または後の所定の待機時間内に操作部11にて確認操作が行われた場合には非常通報を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオメトリクス情報を照合して本人照合する本人照合装置に関し、特に、同一人物から得られる複数のバイオメトリクス情報と照合する本人照合装置に関する。更に詳細に述べると、予め登録している同一人物の複数のバイオメトリクス情報のうち、常時使用するバイオメトリクス情報と非常時に使用するバイオメトリクス情報を識別し、非常時に使用するバイオメトリクス情報にて本人と判定すると、非常時用処理を実行する本人照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋照合装置において、異なる二本の指の指紋を登録しておき、一方の指(右手の人差し指)にて照合成功であれば電気錠を解錠し、他方の指(左手の人差し指)にて照合成功であれば非常通報をする指紋照合装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された指紋照合装置によれば、通常時の操作と、照合する指を替えるだけで電気錠の解錠を行うとともに、非常通報を行えるので、強盗に脅迫されて扉を開ける場合であっても、強盗に悟られることなく、非常通報を行うことができる。また、従来の指紋照合装置は、指紋データ等のバイオメトリクス情報が入力の癖や乾燥度合いなどによって経時的に変化する場合があるので、入力された指紋データにて登録指紋データを更新していた。
【0004】
しかし、非常用の指紋データは、緊急事態でのみ使用するため、滅多に使用されることがなく、その登録指紋データが更新されることも殆どない。非常用の指紋データが更新されないと、緊急事態が発生したときに、正しく照合されない可能性が残り、利用者が不安を感じる。また、非常時に備えた予行演習などで非常用の指紋データ等にて照合すると、非常通報がなされてしまうので、予め通報先に連絡等をする必要があり、非常時用の照合が正しく行えるか否かの確認を行うことは容易でなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−186444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題点に鑑み、本発明の目的は、煩雑な手続を必要とせず、被照合者が容易に非常用のバイオメトリクス情報での照合確認を行える本人照合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するための本発明は、被照合者のバイオメトリクス情報である入力情報を取得する入力部と、予め登録された利用許可者のバイオメトリクス情報である複数の登録情報を通常用及び非常用に区別して記憶する記憶部と、被照合者が非常用の登録情報を確認するために操作する操作部と、入力情報と登録情報を照合し、被照合者が非常用の登録情報にて利用許可者本人であると判定した場合は、外部へ非常通報するとともに錠を解錠制御し、被照合者が通常用の登録情報にて本人であると判定した場合は非常通報せずに錠を解錠制御する制御部とを有し、制御部は、非常用の登録情報にて利用許可者本人であると判定した場合に、当該判定の前または後の所定の待機時間内に操作部にて確認操作が行われた場合には非常通報を禁止することを特徴とする本人照合装置を提供する。
【0008】
また、かかる本人照合装置によれば、バイオメトリクス情報は、静脈情報であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、煩雑な手続を必要とせず、被照合者が容易に非常用のバイオメトリクス情報での照合確認を行える本人照合装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を静脈照合装置に適用した場合の実施の形態を図を参照しつつ説明する。
図1は、本発明を適用した静脈照合装置1を非常通報システム100に使用した例の全体システム構成を示す図である。図1に示すように、非常通報システム100は、被照合者の照合用の部位(例えば、手の平又は指)を撮影した静脈画像を用いて、予め登録されている利用許可者の照合情報である登録静脈情報と照合を行い、本人と確認できた場合には、監視建物の出入口扉に設けられた常時施錠タイプの電気錠2を解錠したり、非常通報の発信などの処理を行う静脈照合装置1を複数備える。ここで、常時施錠タイプの電気錠とは、解錠信号を受信した場合にのみ、所定時間だけ解錠し、それ以外は施錠している電気錠をいう。また、非常通報システム100は、静脈照合装置1が通知した非常通報を受信する警備センタ3を有する。そして、警備センタ3では、静脈照合装置1から非常通報を受信すると、監視員に対してどの静脈照合装置1で非常通報が発せられたかを通知し、通報してきた静脈照合装置1の設置場所へ警備員を派遣するなど、適切な処理を行う。また、非常通報システム100は、静脈照合装置1と警備センタ3とを接続可能なネットワーク4を有する。そのネットワーク4は、専用回線、インターネット、携帯電話回線又は一般公衆回線など、遠隔地間、あるいは屋内の離れた場所間でデータの送受信が可能な通信回線で構成される。
【0011】
本発明を適用した静脈照合装置1は、単に電気錠2の解錠を行うだけの常用の照合情報と、電気錠2の解錠とともに非常通報を行う非常用の照合情報を有し、強盗に解錠を強要されるといった万が一の非常事態が発生したときには、非常用の照合情報を用いて照合を行うことで、強盗に悟られることなく、非常通報を行うことを可能としたものである。また、静脈照合装置1は、非常通報を禁止する確認操作を行うことを可能とすることにより、警備センタ3への事前連絡など、煩雑な手続を要さずに非常用の照合処理の確認を行えるものである。さらに、非常用の照合処理を行った際に非常用の照合情報を更新するので、非常用の照合情報が長期間更新されないという事態を防止し、上記のような非常事態が発生したときにも、非常通報用の照合に失敗して強盗に不信感を抱かせるというリスクを回避することができる。
【0012】
図2は、本発明を適用した静脈照合装置1の機能ブロック図である。静脈照合装置1は、被照合者の操作入力を受け付ける操作部11と、各種ガイダンスを表示する表示部12と、被照合者の照合用の部位(例えば、手の平又は何れかの指)に対して照明光を照射する光源部13と、被照合者の照合用の部位を撮影し、照合に用いる入力情報として静脈画像を取得する撮影部14と、予め出入口の通行を許可されている利用許可者に関する照合用の登録静脈情報を記憶する記憶部15と、電気錠2に対して解錠又は施錠信号を出力する出力部16と、ネットワーク4に接続され警備センタ3へ非常通報を通知する通報部17と、静脈照合装置1の各種制御を行う制御部18から構成されている。以下、各部について詳細に説明する。
【0013】
操作部11は、テンキースイッチなどのキースイッチで構成され、それらスイッチが押下されることにより、被照合者が照合処理の開始を指示する場合などに、IDコードの入力、非常通報を禁止する確認操作など、各種信号の入力操作を行う。なお、非常通報を禁止する確認操作は、強盗に発見されて非常通報を止められることがないよう、暗証コード入力のように、所定の手順で複数のキースイッチを押下することによって行われるようにしてもよい。また、表示部12は、液晶ディスプレイ(LCD)などで構成され、被照合者に対して、照合中の旨・照合結果・操作ガイドなどを適宜に表示する。本実施の形態では、操作部11と表示部12を別個の構成としたが、LCDタッチパネルを使用し、LCDタッチパネル上に各種の操作スイッチや各種情報を表示することにより、操作部11と表示部12を一体として構成してもよい。また、表示部12は、被照合者に対して音声でも情報を提供可能なように、スピーカを備えてもよい。
【0014】
光源部13は、近赤外光を照射するLEDなどで構成される。そして、光源部13は、被照合者が操作部11を通じて照合開始の指示を行った後に、撮影台(図示せず)に手の平又は指などの照合用の部位が置かれたことを載置センサ(図示せず)で感知すると発光し、その部位を照明する。
【0015】
撮影部14は、照合用に被照合者のバイオメトリクス情報を取得する入力部として機能し、光源部13から発せられる近赤外光に感度を有するCCDカメラなどで構成される。そして撮影部14は、撮影台に載置された被照合者の手の平または指などの照合用の部位を撮影して、その部位を通う静脈のパターンを画像化した静脈画像を取得する。そして、取得した静脈画像を制御部18へ送信する。
【0016】
記憶部15は、フラッシュメモリやEEPROMなどの書き換え自在な不揮発性メモリ、磁気ハードディスク、あるいは書き換え自在な光ディスク及びそのドライブなどで構成される。そして記憶部15は、登録された利用許可者ごとに、照合に必要な情報を関連付けた利用者登録テーブル、制御部18で使用する各種制御情報などを記憶する。
【0017】
図3に、利用者登録テーブルの一例を示す。利用者登録テーブル30は、利用許可者の識別番号(IDコード)31、照合に使用する登録バイオメトリクス情報である常用及び非常用の登録静脈情報32、登録静脈情報32が常用か非常用かを示す種別フラグ33、及び非常用の各登録静脈情報32について更新が必要か否かを示す確認フラグ34及び各登録静脈情報32について前回更新された日時を示す前回更新日時35を記憶する。IDコード31は、利用許可者を識別する情報であり、所定長の英数字又は記号列で表され、利用許可者ごとに一意に定められる。登録静脈情報32は、撮影部14を通じて取得された静脈画像と照合を行うための情報であり、照合を行うアルゴリズムに応じて決定される。例えば、画像同士のパターンマッチングによって照合を行う場合には、利用許可者本人について予め取得された静脈画像が登録静脈情報32となる。あるいは、静脈画像から所定の基準で抽出された各種特徴量の一致度合いに基づいて照合を行う場合には、予め取得された静脈画像からその所定の基準で抽出された各種特徴量が登録静脈情報32となる。なお、登録静脈情報32は比較的大きなデータとなるため、利用者登録テーブル30とは別個に記憶しておき、利用者登録テーブル30では、登録静脈情報32が記憶されているアドレスを、対応するIDコード31に関連付けて記憶するようにしてもよい。
【0018】
また、登録静脈情報32は、電気錠2の解錠のみに使用する常用のもの(例えば、利用許可者の右手の静脈画像に基づく情報)と、電気錠2の解錠とともに、警備センタ3への非常通報を行う場合に使用する非常用のもの(例えば、利用許可者の左手の静脈画像に基づく情報)との2種類が用意される。なお、どの部位を常用とし、どの部位を非常用とするかは、利用許可者の選択によって決められる。
【0019】
種別フラグ33は、登録静脈情報が常用か非常用かを識別するために、対応する登録静脈情報が常用の場合と非常用の場合とで異なる値を有する。例えば、種別フラグ33は、常用の登録静脈情報に対しては‘1’、非常用の登録静脈情報に対しては‘0’の値を有する。
確認フラグ34は、非常用の登録静脈情報に対する更新の必要性を示すものであり、更新されていない期間が一定期間以上となった場合にONとなる。それ以外の場合にはOFFとなる。そして、確認フラグ34の値をON、OFFそれぞれに一意に対応させる。例えば、確認フラグ34の値が‘1’ならON、‘0’ならOFFとする。そして制御部18は、確認フラグ34の値を参照して、非常用の登録静脈情報の更新を行うよう利用許可者に対して督促を行うか否かを決定する。なお、制御部18での処理については後述する。また、確認フラグ34を、非常用の登録静脈情報だけでなく、常用の登録静脈情報に対して設定してもよい。
本実施形態では、利用許可者の照合に用いる情報を、上記のような参照テーブルの形式で記憶するものとしたが、このような形式に限定されている必要はなく、利用許可者のIDコードと各情報とが関連付けられて記憶される他の周知の方法にしたがって記憶してもよい。
【0020】
出力部16は、照合に成功し、静脈照合装置1の被照合者が何れかの利用許可者として認証された場合、出入口扉に設置されている、図示しない電気錠制御装置を介して電気錠2へ解錠信号を出力する。
【0021】
通報部17は、ネットワーク4を介して警備センタ3に接続され、所定の通信プロトコルにて通信を行う通信インターフェース及びドライバから構成される。そして、後述するように、制御部18により非常通報信号が生成されると、通報部17は、ネットワーク4を介して警備センタ3に非常通報信号を送信する。なお、通報部17を、警備センタ3またはネットワーク4を介して接続されるその他の機器に対して照合結果などのデータを送信したり、警備センタ3などからデータを受信するための通信部として使用してもよい。
【0022】
制御部18は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、静脈照合装置1の制御全般についてプログラムにしたがって処理を行う。そのために、制御部18は、撮影部14で取得された静脈画像と記憶部15から読み出した登録静脈情報に基づいて照合を行う照合手段21と、登録静脈情報の更新処理を行う更新手段22と、警備センタ3に対して非常通報を行うか否かを制御する通報手段23と、操作部11及び表示部12を制御する操作/表示制御手段24と、電気錠2の解錠を制御する電気錠制御手段25とを有する。照合手段21、更新手段22、通報手段23、操作/表示制御手段24及び電気錠制御手段25は、制御部18で実行されるプログラムモジュールとして実装される。なお、これら各手段の一部または全てを、CPUと独立したプロセッサとROM、RAMなどを有する専用の処理ボードとして実装してもよい。
なお、メモリ制御、通信制御などその他の処理については、通常に実施されている技術を用いているので、詳細な説明は省略する。
【0023】
照合手段21は、操作部11を通じて入力されたIDコードを参照し、記憶部15に記憶された利用者登録テーブル30から一致するIDコードを検出する。そして、照合手段21は、利用者登録テーブル30を参照して、そのIDコードと関連付けて記憶されている登録静脈情報を読み出し、撮影部14から取得した静脈画像との間で照合処理を行う。そして、登録静脈情報と静脈画像から得られた静脈情報とが所定の一致基準を満たして照合に成功したと判定すると、被照合者をそのIDコードに関連付けられた利用許可者本人として認証する。なお、照合処理そのものについては、パターンマッチングなど、公知の様々な静脈照合技術を使用することができるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0024】
更新手段22は、照合手段21で照合処理が行われ、照合に成功した場合において、その照合処理に用いた静脈画像から抽出した静脈情報(あるいは、静脈画像そのもの)で、利用者登録テーブル30に記憶されている登録静脈情報32のうち、照合の対象となった登録静脈情報を上書きする。これにより、登録静脈情報32を、常に最新の状態に保つことができるので、経時変化による照合精度の低下を防ぐことができる。なお、更新手段22は、常用の登録静脈情報(種別フラグの値が‘1’)については、頻繁に照合が行われる場合もあるので、照合が行われる度に更新を行う代わりに、1週間あるいは1ヶ月に1回程度の頻度で更新を行うようにしてもよい。
【0025】
更新手段22は、登録静脈情報32を上書きして更新すると、利用者登録テーブル30に更新された登録静脈情報に対応する前回更新日時を、照合処理を行った日時に書き換える。さらに、非常用登録静脈情報について更新される場合には、確認フラグをOFFにする。
また、更新手段22は、定期的に(例えば、1日に1回)、利用者登録テーブル30を参照して、各非常用登録静脈情報32に関連付けて記憶されている前回更新日時35からの経過時間が、所定の期間(例えば、半年間)を過ぎているか否かを調べる。そして、その経過時間が所定の期間を過ぎていれば、確認フラグ34をONにする。
【0026】
通報手段23は、照合手段21が照合に成功した場合、照合に用いられた登録静脈情報に対応する種別フラグ33の値を参照する。そして、通報手段23は、種別フラグ33がその登録静脈情報を非常用であることを示す(上記の例では‘0’)場合、静脈照合装置1の識別情報、被照合者が入力したIDコード及び非常発生情報などを含む非常通報データを作成し、その非常通報データを通報部17及びネットワーク4を通じて警備センタ3に送信することにより、非常通報を行う。但し、操作部11を通じて非常通報を禁止する確認操作が被照合者によって行われている場合には、非常通報を行わない。
【0027】
操作/表示制御手段24は、操作部11及び表示部12の制御を行う。また、操作/表示制御手段24は、表示部12に、照合結果、登録情報更新の督促などを表示させる。さらに、操作/表示制御手段24は、操作部11で非常通報を停止する確認操作が行われた場合には、所定期間だけ操作情報を保持する。
【0028】
電気錠制御手段25は、接続されている電気錠2に対して、出力部16を通じて解錠の制御信号を送信し、電気錠2の解錠を行う。本実施形態では、電気錠2として常時施錠するタイプを採用するため、基本的には解錠信号を送信する。なお、解錠だけでなく、施錠も施錠制御信号を受けて行うタイプの電気錠が使用される場合には、電気錠制御手段25は、解錠制御だけでなく、操作部11を通じた施錠指示に基づいて施錠制御信号を出力することにより、施錠制御も行う。
【0029】
次に、図4及び図5を参照して、静脈照合装置1の処理フローについて説明する。なお、以下に説明する処理フローは、制御部18上で実行されるプログラムによって制御される。
図4に示すように、最初に、被照合者が操作部11を通じてIDコードを入力すると処理が開始される。そして、制御部18の照合手段21が、入力されたIDコードと一致するものが、利用者登録テーブル30に登録されているか否かを調べる(ステップS101)。そして、一致するIDコードが存在しない場合には、照合手段21は、静脈照合装置1の被照合者は登録済みの利用許可者ではないと判断し、制御部18の操作/表示制御手段24を通じてID番号が間違っている旨のエラーメッセージを表示部12に表示させ(ステップS107)、その後処理を終了する。
【0030】
一方、ステップS101において、利用者登録テーブル30に入力されたIDコードと一致するIDコードが登録されている場合、制御部18は、そのIDコードに対応するデータを読み出す(ステップS102)。また、静脈画像を取得するために、撮影台に手の平又は指などの照合用の部位を載せるように、表示部12にガイダンスを表示する。その後、制御部18は、撮影部14から静脈画像を受信したか否か判定する(ステップS103)。静脈画像を受信していない場合、制御部18は、IDコードの入力してからの時間が、所定期間(例えば1分間)を経過したか否かを判定する(ステップS104)。そして、所定期間が経過した場合には、その旨のエラーコードを表示部12に表示させ(ステップS107)、処理を終了する。一方、ステップS104において、所定期間が経過していない場合、ステップS103の前に制御を戻す。そして、静脈画像を受信するか、タイムアウトとなるまで待機する。
ステップS103において、制御部18が撮影部14から静脈画像を受信すると、制御部18の照合手段21は、その静脈画像と、一致したIDコードに対応する全ての登録静脈情報との間で照合処理を行い(ステップS105)、照合に成功したか否か判定する(ステップS106)。照合手段21は、全ての登録静脈情報に対して、照合に失敗した場合、照合に失敗した旨のエラーコードを表示部12に表示させ(ステップS107)、処理を終了する。
【0031】
図5に示すように、ステップS106において、何れかの登録静脈情報との間で照合に成功した場合、制御部18の通報手段23は、その照合に成功した登録静脈情報に対応する種別フラグを記憶部15から読み出して参照し(ステップS108)、その登録静脈情報が常用か非常用かを判定する(ステップS109)。そして、登録静脈情報が非常用である場合(上記の例では、対応する種別フラグの値が‘0’の場合)、IDコードの入力後に操作部11を通じて非常通報を禁止する確認操作が行われているか否かを調べる(ステップS110)。なお、被照合者の利便性を良くするために、通報手段23は、撮影部14による照合用の部位の撮影が実施された後あるいは照合に成功した後、所定の待機時間(例えば、20秒)が経過するまでは非常通報を行わず、その待機時間内に確認操作が行われれば、確認操作が行われたと判断するようにしてもよい。確認操作が行われていない場合、通報手段23は、通報部17及びネットワーク4を通じて警備センタ3へ非常通報を行う(ステップS111)。そして、照合に用いた非常用の登録静脈情報について、利用者登録テーブル30の当該情報を入力された静脈画像から抽出した静脈情報で上書きし、対応する確認フラグの値をOFFに書き換える(ステップS113)。さらに、対応する前回更新日時の項目を、照合処理を行った日時に書き換える。一方、ステップS110において、確認操作が行われている場合は、非常通報を行わず、表示部12に、非常用の照合処理が行われたことを示す確認結果を表示させる(ステップS112)。その後ステップS113へ制御を移行し、非常用の登録静脈情報の更新及び確認フラグの書き換えを行う。
非常用の登録静脈情報の更新及び確認フラグの書き換えが終了すると、電気錠制御手段25は、電気錠2に対して出力部16を通じて解錠信号を送信し、電気錠2を解錠する(ステップS115)。
【0032】
ステップS109において、照合に成功した登録静脈情報が常用の場合(上記の例では、対応する種別フラグの値が‘1’の場合)、更新手段22は、照合に成功した登録静脈情報、すなわち常用の登録静脈情報について、利用者登録テーブル30の当該情報を入力された静脈画像から抽出した静脈情報で上書きし、更新する(ステップS114)。そして、対応する前回更新日時の項目を、照合処理を行った日時に書き換える。その後、電気錠制御手段25は、電気錠2を解錠する(ステップS115)。
ステップS115の後、静脈照合装置1は、処理を終了する。
【0033】
以上説明してきたように、本発明を適用した静脈照合装置1では、単に電気錠2の解錠を行うだけの常用の登録静脈情報と、電気錠2の解錠とともに非常通報を行う非常用の登録静脈情報を有し、強盗に解錠を強要されるといった万が一の非常事態が発生したときには、非常用の登録静脈情報を用いて照合を行うことで、強盗に悟られることなく、非常通報を行うことができる。また、静脈照合装置1は、非常通報を禁止する確認操作を行うことを可能とすることにより、警備センタ3への事前連絡など、煩雑な手続を要さずに非常用の照合処理の確認を行えるものである。さらに、非常用の照合処理を行った際に非常用の照合情報を更新するので、非常用の登録静脈情報が長期間更新されないという事態を防止し、上記のような非常事態が発生したときにも、非常通報用の照合に失敗して強盗に不信感を抱かせるというリスクを回避することができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、静脈情報をバイオメトリクス情報として照合を行ったが、本発明で使用可能なバイオメトリクス情報は静脈に限られず、指紋、掌紋、網膜など、他のバイオメトリクス情報を用いて照合を行うものであってもよい。また、上記の実施形態においては、鍵を電気錠とし、その解錠を行うものとして説明したが、本発明は、コンピュータシステムへのアクセスを許可/不許可とする論理的な鍵の解錠制御に適用してもよい。
【0035】
以上のように、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した静脈照合装置を出入口の電気錠制御に使用した例の全体システム構成図である。
【図2】本発明を適用した静脈照合装置の機能ブロック図である。
【図3】利用者登録テーブルの概略図である。
【図4】本発明を適用した静脈照合装置の処理フローチャートである。
【図5】本発明を適用した静脈照合装置の処理フローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
100 非常通報システム
1 静脈照合装置
2 電気錠
3 警備センタ
4 ネットワーク
11 操作部
12 表示部
13 光源部
14 撮影部(入力部)
15 記憶部
16 出力部
17 通報部
18 制御部
21 照合手段
22 更新手段
23 通報手段
24 操作/表示制御手段
25 電気錠制御手段
30 利用者登録テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照合者のバイオメトリクス情報である入力情報を取得する入力部と、
予め登録された利用許可者のバイオメトリクス情報である複数の登録情報を通常用及び非常用に区別して記憶する記憶部と、
被照合者が非常用の登録情報を確認するために操作する操作部と、
前記入力情報と前記登録情報を照合し、被照合者が非常用の登録情報にて利用許可者本人であると判定した場合は、外部へ非常通報するとともに錠を解錠制御し、被照合者が通常用の登録情報にて本人であると判定した場合は非常通報せずに錠を解錠制御する制御部とを有する本人照合装置であって、
前記制御部は、前記非常用の登録情報にて利用許可者本人であると判定した場合に、当該判定の前または後の所定の待機時間内に前記操作部にて確認操作が行われた場合には非常通報を禁止することを特徴とする、本人照合装置。
【請求項2】
前記バイオメトリクス情報は、静脈情報である請求項1に記載の本人照合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−83953(P2008−83953A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262724(P2006−262724)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】