説明

無線受信回路および入力妨害波低減回路

【課題】広い周波数領域に渡って妨害波を低減できる入力妨害波低減回路の小型化、およびそのような入力妨害波低減回路を備える無線受信回路の小型化を図る。
【解決手段】受信信号は、トランジスタQ1のゲートに与えられる。トランジスタQ1はトランジスタQA〜QDに接続され、トランジスタQ1、QA〜QDにより4個の増幅器が構成される。トランジスタQA〜QDには、それぞれ調整回路13A〜13Dが接続されている。調整回路13A〜13Dは、LC共振回路であり、その共振周波数は調整信号および微調整信号により調整される。選択信号は、4個の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択する。選択された増幅器の利得周波数は、対応する調整回路(13A〜13D)の共振周波数に応じて決まる。選択された増幅器により増幅された信号が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信回路および入力妨害波低減回路に係わり、特に、互いに異なる周波数が割り当てられた複数の無線チャネルが設定されるシステムにおいて使用される無線受信回路および入力妨害波低減回路に係わる。
【背景技術】
【0002】
無線受信機は、一般に、ユーザが要求するチャンネルに対応する周波数を持った電波(以下、希望波)を選択的に抽出する機能を備えている。例えば、テレビ受信機あるいはラジオ受信機は、希望波を抽出する機能を備えている。そして、希望波を抽出するためには、希望波以外の周波数の電波(以下、妨害波)を除去する必要がある。
【0003】
図9は、従来の無線受信回路の一例を示す図である。図9において、アンテナ(ANT)を介して受信する受信信号は、様々な周波数の信号を含んでいる。この受信信号は、減衰器(ATT)501およびローノイズアンプ502を通過した後、バンドパスフィルタ(BPF)503に与えられる。バンドパスフィルタ503は、制御信号により指示される周波数の信号を通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ503は、希望波の周波数帯域を通過させる。PLL周波数シンセサイザ504は、目標の中間周波数を生成するために必要な周波数を持った発振信号を出力し、ミキサ505は、その発振信号を用いて受信信号をダウンコンバート(または、アップコンバート)する。そして、信号処理回路506は、中間周波数信号をベースバンド周波数信号に変換し、その後復調することにより希望波を再生する。
【0004】
上述の構成の受信回路において、バンドパスフィルタ503およびPLL周波数シンセサイザ504は、希望波であるユーザが指定するチャネルを選択するために、互いに連携して動作する。すなわち、バンドパスフィルタ503の通過周波数帯域およびPLL周波数シンセサイザ504が出力する発振周波数は、互いに連動して変化する。
【0005】
上記動作を実現するために、バンドパスフィルタ503はLC回路を備え、PLL周波数シンセサイザ504は共振回路を備えている。そして、そのLC回路および共振回路を構成する容量成分の容量値を変えることにより通過周波数帯域/発振周波数を調整する。ここで、多数のチャネルを提供する放送システムにおいては、広い周波数領域に渡ってチャネルが配置される。したがって、これら多数のチャネルを受信するためには、上述の通過周波数帯域/発振周波数を大きく変化させる必要があり、そのためには、共振回路およびLC回路を構成する容量成分の容量値が大きく変化する必要がある。
【0006】
ところが、容量値を大きく変えることができる素子は、基本的に、そのサイズが大きくなる。例えば、図9に示す受信回路においては、可変容量要素として、バンドパスフィルタ503はバラクタ507を備え、PLL周波数シンセサイザ504はバラクタ508を備えている。そして、共通の制御信号でバラクタ507、508の容量値が調整される。ただし、バラクタ507、508は、そのサイズが大きいので、外部素子(すなわち、外付け部品)として設けられる。よって、受信回路の小型化が妨げられていた。
【0007】
この問題を解決する技術の1つとして、特許文献1には、外付け部品を設けることなく広い周波数領域に渡って発振周波数を得ることができるPLL周波数シンセサイザが記載されている。このPLL周波数シンセサイザは、複数のスイッチトキャパシタ電圧制御発振回路を備える。各スイッチトキャパシタ電圧制御発振回路は、複数のチューニング用スイッチトキャパシタ、インダクタ、可変容量を備える。そして、スイッチトキャパシタ電圧制御発振回路の選択、チューニング用スイッチトキャパシタの選択、および可変容量の調整により、所望の発振周波数を得る。
【特許文献1】特開2004−120215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図9に示す無線受信回路に特許文献1に記載の技術を導入すると、バンドパスフィルタ503の通過周波数帯域を制御するバラクタ507が外部素子で構成され、PLL周波数シンセサイザ504の発振周波数を制御するバラクタが内部素子で構成されるため、バンドパスフィルタ503の通過周波数帯域およびPLL周波数シンセサイザ504の発振周波数を連動させて制御することが困難になる。このため、希望波の受信感度を劣化させるおそれがある。また、通過周波数帯域を大きく可変させることが出来るバンドパスフィルタを外付け部品なしで実現する構成は、提案されていない。入力妨害波低減回路としてのバンドパスフィルタのサイズを小さくできれば、無線受信回路のいっそうの小型化を実現することができる。
【0009】
本発明の課題は、広い周波数領域に渡って妨害波を低減できる入力妨害波低減回路の小型化、およびそのような入力妨害波低減回路を備える無線受信回路の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線受信回路は、入力妨害波低減回路および周波数変換回路を備える無線受信回路であって、前記入力妨害波低減回路は、受信信号を増幅するとともに互いに異なる通過周波数領域を持つ複数の増幅器、およびそれら複数の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択する第1の選択手段を備え、前記周波数変換回路は、互いに発振周波数領域の異なる複数の電圧制御発振器、前記複数の電圧制御発振器の中から使用すべき電圧制御発振器を選択する第2の選択手段、および前記第2の選択手段により選択された電圧制御発振器の出力信号を利用して得られる発振信号を前記入力妨害波低減回路の出力信号に乗算するミキサを備える。そして、前記第2の選択手段は、チャネル選択要求に応じて電圧制御発振器を選択し、前記第1の選択手段は、前記第2の選択手段による選択結果を表す選択信号に従って対応する増幅器を選択する。
【0011】
ここで本発明における「発振周波数領域」とは、1つの電圧制御発信器で選択可能な発振周波数の周波数範囲を指し、「通過周波数領域」とは、1つの増幅器で選択可能な通過周波数の中心周波数の周波数範囲を指す。
【0012】
上記構成の無線受信回路においては、複数の増幅器を用いて広い周波数領域をカバーするので、各増幅器がカバーすべき通過周波数領域は狭くなる。したがって、各増幅器の通過特性を大きく変化させる必要はないため、半導体チップ上に形成できる程度の素子で必要となる通過特性を得ることができ、外付け部品は不要となるため無線受信回路の小型化を図ることができる。また、使用すべき電圧制御発信器を選択した選択結果に従って複数の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択するため、入力妨害波低減回路および周波数変換回路を連動して制御できる。したがって、妨害波を確実に除去できると共に、入力妨害波低減回路と周波数変換回路との間で周波数特性のばらつきが少なくなり、希望波を精度よく受信できる。
【0013】
上記無線受信回路において、前記複数の増幅器は、それぞれ、インダクタとコンデンサからなるLC回路を備えており、通過周波数領域は前記LC回路のインダクタ値と容量値に基づいて決定されてもよい。
【0014】
上記無線受信回路において、前記LC回路は、前記コンデンサを複数備えており、前記複数の電圧制御発振器は、それぞれ、前記発振周波数領域の中から発振周波数を選択するための調整回路を備えており、前記第2の選択手段により選択された電圧制御発振器が備える前期調整回路における調整結果を表す調整信号に従って前記インダクタに接続すべきコンデンサを選択することで前記第1の選択手段により選択された増幅器の通過周波数領域の中から通過周波数帯域を選択してもよい。
【0015】
この場合、前記第1の選択手段により選択された増幅器が備える前記LC回路は、前記第2の選択手段により選択された電圧制御発振器が備える調整回路における選択結果を表す調整信号に従って通過周波数帯域を選択する。この構成においては、入力妨害波低減回路における通過周波数帯域の選択および周波数変換回路における発振周波数の選択が可能であり、妨害波をより確実に除去できる。また、発振周波数の選択結果に従って通過周波数帯域の選択を行うため、入力妨害波低減回路と周波数変換回路との間で周波数特性のばらつきが少なくなるため、希望波をより精度よく受信できる。
【0016】
上記無線受信回路において、前記LC回路は、通過周波数帯域を微調整する第1の微調整手段を備えており、前記調整回路は、発振周波数を微調整する第2の微調整手段を備えるようにしてもよい。この場合、前記第1の微調整手段は、前記第2の微調整手段における微調整の結果を表す微調整信号に従って前記通過周波数帯域を微調整する。この構成においては、通過周波数帯域および発振周波数を更に微調整が可能となるため、妨害波を更に確実に除去できる。また、発振周波数の微調整の結果に従って通過周波数を微調整するため、入力妨害波低減回路と周波数変換回路との間で周波数特性のばらつきが少なくなり、希望波をさらに精度よく受信できる。
【0017】
また、前記第1の微調整手段は、前記LC回路の容量値を変えるバラクタであってもよい。
本発明の入力妨害波低減回路は、複数の増幅器と、チャネル選択要求に応じて前記複数の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択する選択手段とを有し、前記複数の増幅器は、それぞれ、インダクタとコンデンサからなるLC回路を備える。この構成によれば、各増幅器がカバーすべき利得周波数領域は狭いので、各増幅器の利得特性を大きく変化させる必要はない。よって、半導体チップ上に形成できる程度の小さなLC回路で必要となる利得特性を得ることができ、外付け部品は不要である。
【0018】
上記入力妨害波低減回路において、前記LC回路は、前記コンデンサを複数有しており、前記インダクタに接続すべきコンデンサを選択してもよい。また、前記LC回路は、容量値を微調整するためのバラクタを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、広い周波数領域に渡って妨害波を低減できる入力妨害波低減回路の小型化、およびそのような入力妨害波低減回路を備える無線受信回路の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係わる無線受信回路の構成を示す図である。
無線受信回路1は、アンテナANTと、アンテナANTからの受信信号を増幅するとともに増幅された信号のうち、通過周波数帯域内の信号のみを出力信号として出力する入力妨害波低減回路2と、入力妨害波低減回路2からの出力信号を高周波信号から中間周波数信号へ変換する周波数変換回路4と、周波数変換回路4により得られる中間周波数信号の振幅をモニタしその振幅を所定レベルに安定させるためのフィードバック制御を行うAGC回路8と、周波数変換回路4により得られる中間周波数信号をベースバンド周波数信号に変換して復調することで希望波の再生を行う不図示の信号処理回路とからなる。なお、図1においては、本発明との関連性の低い機能については省略している。
【0021】
実施形態の無線受信回路1は、互いに異なる周波数が割り当てられた複数の無線チャネルが設定されているシステムにおいて使用される。すなわち、無線受信回路1は、特に限定されるものではないが、例えば、テレビ放送受信機またはラジオ放送受信機として使用される。
【0022】
図1において、無線受信回路1は、チャネル選択要求に応じて動作する。チャネル選択要求は、無線受信回路1が受信すべきチャネルを指定する信号であり、ユーザによって入力される。そして、このチャネル選択要求は、周波数変換回路4が備えるPLL周波数シンセサイザ6に与えられる。なお、以下の説明において、チャネル選択要求により指定されるチャネルのことを「要求チャネル」と呼ぶことがある。
【0023】
入力妨害波低減回路2は、後で詳しく説明するが、並列に設けられた複数の増幅器3A〜3Dを備えており、PLL周波数シンセサイザ6により生成される選択信号に従って使用すべき増幅器を選択することで通過周波数領域を選択し、さらにその選択した増幅器の通過周波数領域内から調整信号および微調整信号に従って使用すべき通過周波数帯域を選択、調整する。
【0024】
増幅器3A〜3Dは、アンテナANTを利用して受信した受信信号を増幅する。この実施例では、それぞれローノイズアンプ(LNA)として動作する。また、増幅器3A〜3Dは、後で詳しく説明するが、LC回路を有する。LC回路は、増幅された信号のうち、インダクタ値と容量値によって決まる通過周波数帯域内の信号のみを出力信号として出力させるフィルタ機能を有する。
【0025】
ここで、例えば、増幅器3Aが選択された場合には、増幅器3Aの備えるLC回路の通過周波数領域内の信号のみが増幅器3Aの出力信号として出力される。よって、要求チャネルに対する妨害波を除去することができる。
【0026】
周波数変換回路4は、入力妨害波低減回路2により妨害波が除去された信号を高周波信号から中間周波数信号へ変換する。このとき、周波数変換回路4は、目標の中間周波数信号を生成するために必要な周波数を持った発振信号を生成し、その発振信号を利用して周波数変換を行う。
【0027】
周波数変換回路4は、互いに発振周波数領域が異なる複数の電圧制御発振器5A〜5Dを含むPLL周波数シンセサイザ6、およびミキサ7を備える。そして、周波数変換回路4は、電圧制御発振器5A〜5Dの中から使用すべき電圧制御発振器を選択すると、PLL周波数シンセサイザ6は、電圧制御発振器の出力を使用して発振信号を生成してミキサ7に与える。そして、ミキサ7は、入力妨害波低減回路2の出力信号にその発振信号を乗算することにより周波数変換を行う。これにより、目標の中間周波数信号が生成される。なお、各電圧制御発振器5A〜5Dは、後で詳しく説明するが、発振周波数領域内から発振周波数を選択する調整回路を備えている。
【0028】
AGC回路8は、周波数変換回路4により得られる中間周波数信号の振幅をモニタし、その振幅を所定レベルに安定させるためのフィードバック制御を行う。このフィードバック制御においては、利得制御信号が生成され、増幅器3A〜3Dに与えられる。そして、増幅器3A〜3Dの利得は、この利得制御信号により制御される。
【0029】
次に、図2を参照してPLL周波数シンセサイザ6を説明する。
PLL周波数シンセサイザ6は、電圧制御発信器5A〜5DからなるVCO回路5、分周回路51、位相比較器52、チャージポンプ53、ループフィルタLPF54、ロック検出回路55、制御回路56、分周比信号生成回路57から構成される。
【0030】
分周比信号生成回路57は、ユーザによって入力されたチャンネル選択要求に応じた分周比信号を生成し、この分周比信号を分周回路51に出力する。分周回路51は、分周比信号に従ってVCO回路5からの出力信号を分周する。位相比較器52は、分周回路51からの出力信号の位相と基準信号の位相との位相差を表す位相差信号を出力する。チャージポンプ53は、位相差信号に応じた電流を生成する。ループフィルタ54は、チャージポンプ53の出力信号を電圧に変化することでVCO回路5に与える微調整信号を生成する。
【0031】
ロック検出回路55は、位相比較器52の出力信号をモニタし、分周回路51の出力信号の位相と位相比較器52に入力される基準信号の位相が略同一か判断する。制御回路56は、ロック検出回路55が分周回路51の出力信号の位相と位相比較器52に入力される基準信号の位相が略同一となったこと(以下、ロックする)を検出するまで、順次、VCO回路5を構成する電圧制御発振器5A〜5Dの中から使用すべき電圧制御発振器を選択する選択信号および選択された電圧制御発振器の発振周波数領域内から使用すべき発振周波数を選択する調整信号を生成し、切り替える。
【0032】
VCO回路5は、図3に示すように、電圧制御発振器5A〜5D、選択回路(第2の選択手段)33、セレクタ34からなり、電圧制御発振器5A〜5Dは、それぞれ、発振周波数を選択する調整回路31および微調整部(第2の微調整手段)32を備えている。
【0033】
選択回路33は、制御回路56により生成される選択信号に従って、対応する電圧制御発振器(5A〜5D)を選択する。調整回路31は、制御回路56により生成される調整信号に従って、選択回路33によって選択された電圧制御発振器の発振周波数領域の中から使用すべき発振周波数を選択する。微調整部32は、図2に示すローパスフィルタ54を介して与えられる微調整信号に従って選択回路33および調整回路31によって選択された発振周波数の微調整を行う。セレクタ34は、選択された電圧制御発振器の発振信号を出力する。この発振信号は、ミキサ7に与えられる。
【0034】
なお、電圧制御発振器5A〜5Dは、特に限定されるものではないが、例えば、特許文献1(特開2004−120215号公報)に記載された電圧制御発振器と同等の構成であってもよい。この場合、実施形態の選択信号、調整信号、微調整信号は、それぞれ、特許文献1に記載の選択制御信号、スイッチトキャパシタ制御信号、制御電圧に対応する。また、調整回路31は、チューニング用スイッチトキャパシタ24〜27に相当し、微調整部32は、可変容量C1、C2に相当する。
【0035】
以上のように構成されたPLL周波数シンセサイザ6の動作について、図2〜4を参照して説明する。なお、以下の説明では、本実施例のVCO回路5には、初期状態として電圧制御発振器5Aを選択する選択信号と図4に示す周波数特性a1を選択する調整信号が与えられているものとする。
【0036】
PLL周波数シンセサイザ6は、ユーザからのチャネル選択要求に応じて生成される分周比信号が分周回路51に入力されることで、目標の中間周波数を生成するために必要な周波数を持った発振信号を生成する。分周回路51は、分周比信号が入力されると、VCO回路5の出力信号であるVCO回路5Aのフリーラン周波数信号を分周し、位相比較器52に出力する。分周回路51の出力信号を受けた位相比較器52では、分周回路51からの出力信号と基準信号との位相差を表す位相差信号を出力し、この位相差信号はチャージポンプ53およびローパスフィルタ54を介して微調整信号に変換されて電圧制御回路5A〜5Dの微調整回路32に入力される。そして、VCO回路5はこの微調整信号を周波数信号に変換して分周回路に出力する。以降、以上の手順を一定時間繰り返す。
【0037】
そして、その結果、このPLL系がロックすれば、以降、制御回路56は選択信号および調整信号を固定し、また、微調整信号は安定する。一方、一定時間が経過してもPLL系がロックしなかったときは、周波数特性a2が得られるように調整信号を切り替えた後に同様のPLL動作を行う。
【0038】
以降、同様に、PLL系がロックするまで、選択信号および調整信号を切り替えながら上述の手順を図4に示す周波数特性のうち周波数が低い方から順に繰り返す。例えば、チャネル選択要求に応じて周波数f1を出力するためには、電圧制御発振器5Aを選択するための選択信号、および周波数特性a2を得るための調整信号が生成される。また、周波数f2を出力するためには、電圧制御発振器5Bを選択するための選択信号、および周波数特性b3を得るための調整信号が生成される。そして、PLL系がロックすると、PLL周波数シンセサイザ6は、ロックした時点の選択信号、調整信号、微調整信号を、図2に示すように入力妨害波低減回路2へ出力する。
【0039】
次に、入力妨害波低減回路2について、図3、図5、図6、図7を参照して詳しく説明する。
入力妨害波低減回路2は、増幅器3A〜3D、セレクタ14、選択回路12により構成される。選択回路12は、図6に示すように、スイッチ21A〜21D、22A〜22Dから構成される。
【0040】
各スイッチ21A〜21Dの入力側端子には、利得制御信号が与えられる。利得制御信号は、過大入力時にループの利得を一定に保つためのフィードバック信号であり、図1に示すAGC回路8により生成される。各スイッチ21A〜21Dの出力側端子は、それぞれスイッチ22A〜22Dを介して接地される。なお、スイッチ21A〜21D、22A〜22Dは、特に限定されるものではないが、例えばMOSトランジスタである。スイッチ21A〜21Dは、それぞれ選択信号a1〜d1により制御される。スイッチ22A〜22Dは、それぞれ選択信号a1〜d1の反転信号により制御される。そして、スイッチ21A〜21Dの出力側端子から選択信号a2〜d2が出力され、増幅器3A〜3DのトランジスタQA〜QDのゲートに入力される。
【0041】
選択信号a1〜d1は、PLL周波数シンセサイザ6において生成される選択信号であり、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の選択信号である。この実施例ではそれぞれ2値信号である。
【0042】
増幅器3A〜3Dは、トランジスタQA〜QD(第1のトランジスタ)、トランジスタQ1(第2のトランジスタ)、電流源11、LC回路13A〜13Dからなり、トランジスタQA〜QDのドレインはLC回路13A〜13Dに接続され、トランジスタQA〜QDのソースは、トランジスタQ1のドレインに接続され、トランジスタQ1のソースは、電流源11が接続され、トランジスタQ1のゲートには受信信号が入力される。
【0043】
なお、増幅器3Aは、トランジスタQ1、QA、電流源11、調整回路13Aにより構成される。同様に、増幅器3Bは、トランジスタQ1、QB、電流源11、調整回路13Bにより構成され、増幅器3Cは、トランジスタQ1、QC、電流源11、調整回路13Cにより構成され、増幅器3Dは、トランジスタQ1、QD、電流源11、調整回路13Dにより構成される。すなわち、トランジスタQ1および電流源11は、増幅器3A〜3Dにより共用される。
【0044】
上記のように構成された増幅器3A〜3DのトランジスタQA〜QDのゲートには、選択回路12の出力信号(選択信号a2〜d2)が入力され、増幅器3A〜3DのトランジスタQ1には受信信号が入力される。
【0045】
LC回路13A〜13Dは、図7に示すように、インダクタLと、コンデンサC1〜C4と、PLL周波数シンセサイザ6において生成される微調整信号によって制御されるバラクタ(第1の微調整手段)23と、PLL周波数シンセサイザ6において生成される調整信号によって制御されるスイッチSW1〜SW4とから構成され、それぞれ基本構成は互いに同じである。ただし、各LC回路13A〜13Dの通過周波数領域が異なるようにLC回路の定数は互いに異なっている。本実施例では、各LC回路13A〜13DのインダクタLのインダクタ値を適正に決定することにより、図8に示すように、LC回路13A〜13Dの通過周波数領域がそれぞれ異なるように設定されている。なお、コンデンサC1〜C4はそれぞれスイッチSW1〜SW4を介してインダクタLに並列に接続されている。
【0046】
上記のように構成されたLC回路13A〜13Dには、調整信号および微調整信号が入力される。
調整信号は、スイッチSW1〜SW4のON/OFFを決める信号である。この調整信号は、PLL周波数シンセサイザ6において生成される調整信号であり、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の調整信号である。本実施例では、スイッチSW1〜SW4の中のいずれか1つをON状態に制御する。この場合、コンデンサC1〜C4の容量は互いに異なっている必要がある。なお、調整信号は、スイッチSW1〜SW4の中の1または複数個をON状態に制御するようにしてもよい。この場合、コンデンサC1〜C4の容量は、互いに同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0047】
微調整信号は、電圧信号である。すなわち、微調整信号によりバラクタ23に印加される電圧が変化し、その電圧に応じてバラクタ23の容量値が調整される。この微調整信号は、PLL周波数シンセサイザ6において生成される微調整信号であり、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の微調整信号である。セレクタ14は、上述した選択信号a1〜d1に従って対応する信号を選択する。ここで、たとえば、選択信号a1として「1」が生成され、選択信号b1、c1、d1としてそれぞれ「0」が生成されるものとすると、セレクタ14は、トランジスタQAのドレインから出力される信号を選択する。すなわち、増幅器3Aにより増幅された信号が選択される。
【0048】
なお、本実施形態では、インダクタL、コンデンサC1〜C4、スイッチSW1〜SW4、バラクタ23は、半導体チップ上に形成される。また、図7に示す回路構成は一実施例であり、他の回路構成を採用することも可能である。例えば、バラクタ23とインダクタLとの間にコンデンサを設けるようにしてもよい。また、インダクタンスの異なる複数のインダクタを設け、調整信号を利用して対応するインダクタを選択するようにしてもよい。
【0049】
次に、図5〜図8を参照しながら入力妨害波低減回路2の動作を説明する。
入力妨害波低減回路2は、アンテナANTで受信する受信信号を増幅するとともに、増幅された信号のうち、LC回路13A〜13Dのインダクタ値と容量値によって決まる通過周波数帯域の信号のみを出力信号として出力する。
【0050】
通過周波数帯域は、与えられた選択信号に従って対応する増幅器(3A〜3D)を選択し、選択された増幅器の通過周波数領域内から調整信号および微調整信号に従って通過周波数帯域を選択、調整することで確定される。
【0051】
なお、選択信号は、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の選択信号(電圧制御発振器の選択結果)であり、調整信号は、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の選択信号(発振周波数の選択の結果)であり、微調整信号は、PLL周波数シンセサイザ6がロックした時点の微調整信号(発振周波数の微調整の結果)である。従って、入力妨害波低減回路2において使用すべき増幅器を選択する動作は、周波数変換回路4において使用すべき電圧制御発振器を選択する動作に連動し、入力妨害波低減回路2において選択された増幅器の通過周波数領域の中から通過周波数帯域を選択する動作は、周波数変換回路4において選択された電圧制御発振器の発振周波数領域の中から発振周波数を選択する動作に連動する。また、入力妨害波低減回路2において選択された通過周波数帯域を微調整する動作は、周波数変換回路4において選択された発振周波数を微調整する動作に連動する。
【0052】
ここで、通過周波数帯域の確定方法について詳しく説明する。なお、本実施例では、LC回路13AのスイッチC1は図8に示す通過周波数帯域a1を選択するためのスイッチであり、LC回路13AのスイッチC2〜C4はそれぞれ図8に示す通過周波数帯域a2〜a4を選択するためのスイッチである。
【0053】
例えば、要求チャネルに対応する周波数が図8に示す「f3」の場合には、増幅器3Aが選択されるような選択信号が選択回路12に与えられ、通過周波数帯域a1が選択されるような調整信号がLC回路13A〜13Dに与えられる。
【0054】
具体的には、選択信号a1として「1」を与え、選択信号b1〜d1として、それぞれ「0」を与える。この場合、スイッチ21AがONとなり、スイッチ22AがOFFとなる。そうすると、選択信号a2として「利得制御信号」が出力されることになる。したがって、トランジスタQAは、選択信号a2(即ち、利得制御信号)により駆動される。一方、スイッチ21B〜21DがOFFとなり、スイッチ22B〜22DがONとなる。そうすると、選択信号b2〜d2としてそれぞれ「ゼロ」が出力される。したがって、トランジスタQB〜QDは、いずれもOFF状態を保持する。
【0055】
また、LC回路13AのスイッチC1には、調整信号として「1」が与えられ、スイッチC2〜C4には、調整信号として「0」が与えられる。そうすると、スイッチC1がONとなり、スイッチC2〜C4がOFFとなる。したがって、インダクタL、コンデンサC1、バラクタ23によるLC回路が構成され、通過周波数帯域a1の中心周波数である「1/2π√L(C1+C5)」が得られる。
【0056】
そして、この通過周波数帯域a1の中心周波数が、「f3」の周波数になるように微調整信号を利用して容量値C5を変化させることで通過周波数帯域を確定する。なお、上述の「1/2π√L(C1+C5)」における「容量値C5」は、バラクタ23の容量値である。
【0057】
以上のように通過周波数帯域を確定することにより、入力妨害波低減回路2は、選択された増幅器で増幅した受信信号の内、確定した通過周波数帯域内の信号のみを出力するようになる。したがって、入力妨害波低減回路2により妨害波が除去されることになる。
【0058】
本実施例では以下の効果が得られる。
(1)上記実施例の増幅器3A〜3Dは、LC回路を有する構成である。したがって、受信信号を増幅するとともに増幅された信号のうち、LC回路のインダクタ値と容量値によって決まる通過周波数帯域内の信号のみを入力妨害波低減回路の出力信号として出力することができる。すなわち、増幅器3A〜3Dは、増幅機能(図9では、ローノイズアンプ502)、およびバンドパスフィルタ機能(図9では、バンドパスフィルタ503)の双方を実現する。さらに、図5に示す構成で複数の増幅器を実現すれば、入力容量の増加が少なくなるので、周波数特性の劣化が押さえられる。
【0059】
(2)上記実施例の入力妨害波低減回路2は、複数の増幅器からなる。したがって、複数の増幅器を用いて広い通過周波数領域をカバーするので、各増幅器がカバーすべき通過周波数領域は狭くなり、各増幅器の通過特性を大きく変化させる必要がないため、半導体チップ上に形成できる程度の素子で必要となる通過特性を得ることができる。すなわち、実施形態の構成によれば、図9に示すような外付け部品を設けることなく、広い周波数領域に渡って妨害波を効果的に除去することができる。
【0060】
(3)上記実施例の無線受信回路1によれば、入力妨害波低減回路2において使用すべき増幅器(3A〜3D)を選択する選択信号、および周波数変換回路4において使用すべき電圧制御発振器(5A〜5D)を選択する選択信号は、同じ信号である。また、入力妨害波低減回路2において通過周波数帯域を決定するコンデンサ(C1〜C4)を選択するための調整信号、および周波数変換回路4において発振周波数を選択するための調整信号は、同じ信号である。さらに、入力妨害波低減回路2において通過周波数帯域を微調整するための微調整信号、および周波数変換回路4において発振周波数を微調整するための微調整信号は、同じ信号である。すなわち、PLL周波数シンセサイザ6において発振信号の周波数を決定するために生成される選択信号、調整信号、微調整信号は、入力妨害波低減回路2および周波数変換回路4において共通に使用される。したがって、要求チャネルに対する妨害波を除去する処理を連携させることができるので、要求チャネルを精度よく再生できる。
【0061】
なお、実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
上述の実施例では、並列に設けられた複数の増幅器3A〜3Dを利用して妨害波を低減しているが、各増幅器3A〜3Dは、それぞれ複数の増幅器を多段に設けた構成であってもよい。この場合、各段の増幅器に対して制御信号(すなわち、選択信号、調整信号、微調整信号)を与えるようにしてもよいし、一部の増幅器に対して制御信号を与えるようにしてもよい。
【0062】
上述の実施例では、バラクタ23を用いて通過周波数帯域を微調整しているが、微調整を必要としない無線受信回路においては、必ずしもバラクタ23を設ける必要はない。すなわち、増幅器3A〜3Dの選択およびコンデンサC1〜C4の選択のみで通過周波数帯域を得るようにしてもよい。
【0063】
上記実施例では周波数が低い方から順にロックするか否か判断しているが、これに限らず、周波数の高い方から順にロックするか否か判断してもよいし、ランダムに周波数を選んでロックするか否か判断してもよい。
【0064】
上記構成の無線受信回路1において、入力妨害波低減回路2の前段に減衰器(ATT)を設けてもよい。また、入力妨害波低減回路2と周波数変換回路4との間に増幅器を設けてもよい。さらに、周波数変換回路4の後段に中間周波数信号を増幅するためのIF増幅器および/または固定帯域バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0065】
上記実施例では、4個の増幅器および4個の電圧制御発振器を備える構成であるが、これらの個数は特に限定されるものではない。
上記実施例では、周波数変換回路4は、高周波数信号を中間周波数信号に変換しているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、周波数変換回路4は、受信信号をベースバンド周波数信号に変換してもよいし、受信信号をアップコンバートしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係わる無線受信回路の構成を示す図である。
【図2】PLL周波数シンセサイザの構成を示す図である。
【図3】PLL周波数シンセサイザが備えるVCO回路の構成を示す図である。
【図4】PLL周波数シンセサイザの動作を説明する図である。
【図5】入力妨害波低減回路の構成を示す図である。
【図6】入力妨害波低減回路が備える選択回路の実施例である。
【図7】入力妨害波低減回路が備える調整回路の実施例である。
【図8】入力妨害波低減回路の動作を説明する図である。
【図9】従来の無線受信回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 無線受信回路
2 入力妨害波低減回路
3A〜3D 増幅器
4 周波数変換回路
5 VCO回路
5A〜5D 電圧制御発振器
6 PLL周波数シンセサイザ
7 ミキサ
8 AGC回路
11 電流源
12 選択回路
13A〜13D 調整回路
14 セレクタ
23 バラクタ
31 調整部
32 微調整部
33 選択回路
34 セレクタ
56 制御回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力妨害波低減回路および周波数変換回路を備える無線受信回路であって、
前記入力妨害波低減回路は、受信信号を増幅するとともに互いに異なる通過周波数領域を持つ複数の増幅器、および前記複数の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択する第1の選択手段を備え、
前記周波数変換回路は、互いに発振周波数領域の異なる複数の電圧制御発振器、前記複数の電圧制御発振器の中から使用すべき電圧制御発振器を選択する第2の選択手段、および前記第2の選択手段により選択された電圧制御発振器の出力信号を利用して得られる発振信号を前記入力妨害波低減回路の出力信号に乗算するミキサを備え、
前記第2の選択手段は、チャネル選択要求に応じて電圧制御発振器を選択し、
前記第1の選択手段は、前記第2の選択手段による選択結果を表す選択信号に従って対応する増幅器を選択する
ことを特徴とする無線受信回路。
【請求項2】
前記複数の増幅器は、それぞれ、インダクタとコンデンサからなるLC回路を備えており、
前記通過周波数領域は、前記LC回路のインダクタ値と容量値によって決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信回路。
【請求項3】
前記LC回路は、前記コンデンサを複数備えており、
前記複数の電圧制御発振器は、それぞれ、前記発振周波数領域の中から発振周波数を選択するための調整回路を備えており、
前記第2の選択手段により選択された電圧制御発振器が備える前記調整回路における調整結果を表す調整信号に従って前記インダクタに接続すべきコンデンサを選択することで前記第1の選択手段により選択された増幅器の通過周波数領域の中から使用すべき通過周波数帯域を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線受信回路。
【請求項4】
前記LC回路は、前記通過周波数帯域を微調整する第1の微調整手段を備えており、
前記調整回路は、発振周波数を微調整する第2の微調整手段を備えており、
前記第1の微調整手段は、前記第2の微調整手段における微調整の結果を表す微調整信号に従って前記通過周波数帯域を微調整する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の無線受信回路。
【請求項5】
前記第1の微調整手段は、前記LC回路の容量値を変えるバラクタである
ことを特徴とする請求項4に記載の無線受信回路。
【請求項6】
複数の増幅器と、
チャネル選択要求に応じて前記複数の増幅器の中から使用すべき増幅器を選択する選択手段、
を有する入力妨害波低減回路であって、
前記複数の増幅器は、それぞれ、インダクタとコンデンサからなるLC回路を備える
ことを特徴とする入力妨害波低減回路。
【請求項7】
前記LC回路は、前記コンデンサを複数有しており、前記インダクタに接続すべきコンデンサを選択する
ことを特徴とする請求項6に記載の入力妨害波低減回路。
【請求項8】
前記LC回路は、容量値を微調整するためのバラクタを備える
ことを特徴とする請求項7に記載の入力妨害波低減回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−228128(P2008−228128A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66110(P2007−66110)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】