説明

燃料残量表示システム

【課題】車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響を考慮して、正確な燃料残量を知ることが可能な燃料残量表示システムを提供する。
【解決手段】車両の燃料タンク内の燃料残量の検出状態が、安定状態であるか不安定状態であるかを判定し、検出状態が安定状態であると判定された場合に、予め定められた第一算出アルゴリズムにより現在燃料残量値を算出する一方、検出状態が不安定状態であると判定された場合には、当該不安定状態にて第一算出アルゴリズムを適用した場合に予想される算出誤差が縮小するように設計された第二算出アルゴリズムにより現在燃料残量値を算出することを特徴とする燃料残量表示システムとして提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料残量表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるメータは電子化されて性能が向上するとともに、表示される情報も増加してユーザの利便性の向上に寄与している。その中に、燃料残量計(以下、燃料計と称することもある)が設けられており、この燃料計により運転者は凡その走行可能な距離を知ることができる。しかし、燃料タンク内に設置された燃料センサから得られる残燃料データが、車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響を直接受けるため表示の精度および安定性の確保が難しく、表示値の“変動”や“真値との乖離”等が発生し、正確な燃料残量を知ることが困難になる場合がある。
【0003】
そこで、各道路を構成するノードの経度、緯度および高度のデータを記憶しておき、このデータから誘導経路の各区間の道路種別(市街地の道路か、郊外の道路か、高速道路かなど)を調べるとともに、各区間毎の高低差または道路勾配を検出し、これらの結果を用いて区間毎の燃料消費量を求め、目的地に到着するまでの燃料消費量を高精度で求めることができ、その結果、車両が積んでいる燃料で目的地まで到着できるか否かを検出できる機能を備えた車載用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、車両が今後走行する走行経路を検出し、その検出された走行経路上において、燃料残量に対する車両の走行可能距離内に位置する給油所のうち最も遠い最終給油所を探索し、探索された走行経路上における最終給油所を地図情報上に表示する表示手段を備えるナビゲーションシステムが考案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、設定されている走行経路上において現在のエネルギー残量に対応する走行可能距離内でのエネルギー補給が可能な施設の存否を判断し、少なくとも次のエネルギー補給が可能な施設まで走行可能な場合はその施設でのエネルギー補給を行うように案内し、次のエネルギー補給が可能な施設まで走行不可能でありかつその時点で自動車専用道路を走行中である場合は次の出口の最寄りのエネルギー補給が可能な施設への経路を探索して設定し、案内し、その時点で自動車専用道路以外の道路を走行中である場合は最寄りのエネルギー補給が可能な施設への経路を探索して設定し、案内するようにしたナビゲーションシステムが考案されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−197272号公報
【特許文献2】特開2000−39328号公報
【特許文献3】特開2000−46572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の例では、各ノード間の燃料消費率をもれなく記憶するための記憶媒体が必要となり、装置のコストを上昇させてしまうという問題がある。また、燃料消費率は、車両によらず一律に設定されているため、運転状態が考慮されず、正確な必要燃料量を算出できないという問題もある。また、目的地が設定されていない場合には、必要燃料量を算出できないという問題もある。さらに、車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響を考慮していないため、正確な必要燃料量を算出できないという問題もある。
【0008】
特許文献2および特許文献3の例では、燃料残量(エネルギー残量)の検出において、車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響は考慮されていないので、表示値の“変動”や“真値との乖離”等が発生する問題は依然として残る。
【0009】
上記問題を背景として、本発明の課題は、車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響を考慮して、正確な燃料残量を知ることが可能な燃料残量表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記課題を解決するための燃料残量表示システムは、車両の燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出手段と、燃料残量検出手段による燃料残量検出値を予め定められた時間間隔でサンプリングする燃料残量検出値サンプリング手段と、サンプリングされた燃料残量検出値に基づいて現在燃料残量値を算出する現在燃料残量値算出手段と、算出された現在燃料残量値を更新しつつ記憶する現在燃料残量値記憶手段と、現在燃料残量値の記憶値に基づいて現在燃料残量を表示する燃料残量表示手段と、を備え、現在燃料残量値算出手段は、燃料残量検出手段による燃料残量を検出状態が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する検出状態判定手段を有するとともに、検出状態が安定状態であると判定された場合に、予め定められた第一算出アルゴリズムにより現在燃料残量値を算出する一方、検出状態が不安定状態であると判定された場合には、当該不安定状態にて第一算出アルゴリズムを適用した場合に予想される算出誤差が縮小するように設計された第二算出アルゴリズムにより現在燃料残量値を算出することを特徴とする。
【0011】
上記構成によって、燃料残量検出手段による燃料残量を検出状態に基づいて、車両の走行状態や路面の傾斜による液面変動の影響を考慮することができ、正確な現在燃料残量値を算出することができる。また、検出状態に応じて算出アルゴリズムを使い分けることで、燃料残量表示システムの処理負荷の増加を抑制することもできる。
【0012】
また、本発明の燃料残量表示システムは、道路地図データを、燃料残量の検出状態が不安定状態となることが予測される予め定められた不安定領域の特定データとともに記憶する道路地図データ記憶手段と、道路地図データ上における車両の現在位置を特定する位置特定手段と、を備え、検出状態判定手段は、道路地図データ上において車両の現在位置が不安定領域に属するか否かに基づいて、検出状態が不安定状態であるか否かを判定するように構成することもできる。
【0013】
上記構成によって、記憶容量は各ノード間の燃料消費率を記憶する構成よりも少なくて済む。また、車両の運転状態によっては不安定状態にならない場合もあり得るが、本発明の構成では一律の燃料消費率を設定していないので、柔軟に対応でき、正確な現在燃料残量値を算出することができる。
【0014】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける燃料残量検出値サンプリング手段は、1回の現在燃料値の算出に対応した燃料残量検出値を複数回サンプリングするものであり、第一算出アルゴリズムは、それら複数の燃料残量検出値に基づいて得られる代表残量検出値を現在燃料残量値として算出するように構成することもできる。
【0015】
検出状態が安定状態である期間では、サンプリングされた複数の燃料残量検出値には大きな変動はない。上記構成によって、複雑なアルゴリズムを用いる必要がないので、算出時間も早く、算出のための処理負荷も低いという効果を得られる。また、複数の燃料残量検出値を用いることで、より正確な現在燃料残量値を算出することができる。
【0016】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける代表残量検出値は、複数の燃料残量検出値の平均値であるように構成することもできる。
【0017】
平均値もって代表値とする方法は一般に用いられ、平均値を算出するアルゴリズムは周知のものである。また、上記構成によって、簡単なアルゴリズムで正確な現在燃料残量値を算出することができる。
【0018】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける代表残量検出値は、複数の燃料残量検出値のメジアンであるように構成することもできる。
【0019】
メジアンとは中央値のことで、データを昇順あるいは降順に並べた場合の、データ列の真ん中になる値のことである。データが複数で偶数個の場合は、中央値が2つになるので、その中央値の平均がメジアンとなる。上記構成によっても、サンプリングされた複数の燃料残量検出値には大きな変動はないため、簡単なアルゴリズムで正確な現在燃料残量値を算出することができる。
【0020】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける代表残量検出値は、複数の燃料残量検出値の最小値であるように構成することもできる。
【0021】
上記構成によっても、サンプリングされた複数の燃料残量検出値には大きな変動はないため、簡単なアルゴリズムで正確な現在燃料残量値を算出することができる。また、この場合、実際の燃料残量値も少なく表示されるので、運転者に早めの給油を促すことができるという効果も得られる。逆に、実際の燃料残量値より多く表示されることはないので、「まだ燃料があるから大丈夫」といった運転者の誤認を防止することもできる。
【0022】
また、本発明の燃料残量表示システムは、道路地図データを、燃料残量の検出状態が不安定状態となることが予測される予め定められた不安定領域の特定データとともに記憶する道路地図データ記憶手段と、道路地図データ上における車両の現在位置を特定する位置特定手段と、を備え、検出状態判定手段は、道路地図データ上において車両の現在位置が不安定領域に属するか否かに基づいて、検出状態が不安定状態であるか否かを判定するものであって、道路地図データ記憶手段は、不安定領域の特定情報を、給油所の位置特定データとして記憶するものであり、第二算出アルゴリズムは、現在位置が給油所にある場合、代表残量検出値の算出時間周期を、第一算出アルゴリズムよりも短く設定する形で現在燃料残量値を算出するものであるように構成することもできる。
【0023】
給油中は液面変動が大きく、かつ燃料残量検出値は短時間で大きく変動(増加)する。上記構成によって、燃料残量検出値の変動に追従でき、車両が走行していない状態においても正確な現在燃料残量値を算出することができる。
【0024】
また、本発明の燃料残量表示システムは、検出状態判定手段が不安定状態を検出している期間内の、車両の走行履歴情報を取得する走行履歴情報取得手段と、取得された走行履歴情報に基づいて燃料消費量を推定演算する燃料消費量推定演算手段と、を備え、第二算出アルゴリズムは、推定演算された燃料消費量に基づいて現在燃料残量値を算出するように構成することもできる。
【0025】
近年、ユーザの利便性の向上や整備性の向上のために、車両には走行履歴を取得するためのセンサ等が取り付けられている。上記構成によって、新規に部品や装置を追加することなく、燃料消費量を推定演算することが可能となる。
【0026】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける走行履歴情報取得手段は、車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、車両の平均車速を算出する平均車速算出手段とを備え、燃料消費量推定演算手段は、走行距離および平均車速に基づいて燃料消費量を推定演算するように構成することもできる。
【0027】
走行距離計と車速計は、必ずといってよいほど車両に取り付けられている。上記構成によって、新規に部品や装置を追加することなく、低コストな構成で燃料消費量を推定演算することが可能となる。
【0028】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける第二算出アルゴリズムは、予め定められた異常判定条件に基づいて、不安定状態においてサンプリングされた燃料残量検出値の異常判定を行うとともに、該異常判定された燃料残量検出値を除外した残余の燃料残量検出値に基づいて現在燃料残量値を算出するように構成することもできる。
【0029】
上記構成によっても、簡易な構成かつ低処理負荷で現在燃料残量値を算出することが可能となる。
【0030】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける第二算出アルゴリズムは、燃料残量検出値の異常判定を、該検出値が予め定められた正常値範囲に属しているか否かに基づいて行うように構成することもできる。
【0031】
例えば、燃料残量検出値の正常値範囲を、安定状態における燃料残量検出値の変動幅として設定すれば、異常値を排除することができる。上記構成によって、簡易な構成かつ低処理負荷で現在燃料残量値を算出することが可能となる。
【0032】
また、本発明の燃料残量表示システムは、車両の走行状態情報を取得する走行状態情報取得手段を備え、第二算出アルゴリズムは、検出状態判定手段が不安定状態を検出している期間内に取得された走行状態情報に基づいて現在燃料残量値を補正するように構成することもできる。
【0033】
上記構成によって、走行状態に応じた補正を行うことができるので、より正確な現在燃料残量値を算出することが可能となる。
【0034】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける走行状態情報取得手段は、車両の傾斜角度を走行状態情報として検出するように構成することもできる。
【0035】
近年、車両用ナビゲーション装置が普及している。車両用ナビゲーション装置には、傾斜角度を検出するセンサが備えられていることが多い。また、四輪駆動車にも傾斜角度を検出するセンサが備えられていることが多い。上記構成によって、簡易な構成かつ低処理負荷で現在燃料残量値を補正することが可能となる。
【0036】
また、本発明の燃料残量表示システムにおける走行状態情報取得手段は、車両の加速度を走行状態情報として検出するように構成することもできる。
【0037】
加速度は車速の変化率であるので、車速センサがあれば検出することができる。車速センサは、ほぼ全ての車両に備えられている。上記構成によっても、簡易な構成かつ低処理負荷で現在燃料残量値を補正することが可能となる。
【0038】
また、本発明の燃料残量表示システムは、車両のエンジンにおける燃料噴射を行うための燃料噴射信号を取得する燃料噴射信号取得手段と、検出状態判定手段が不安定状態を検出している期間内に取得された燃料噴射信号に基づいて燃料噴射量を推定演算する燃料噴射量推定演算手段と、を備え、第二算出アルゴリズムは、推定演算された燃料噴射量に基づいて現在燃料残量値を算出するように構成することもできる。
【0039】
燃料噴射式のエンジンでは、車両の走行状態に応じて各シリンダに噴射する燃料量を算出している。燃料の噴射はインジェクタにより行われるので、燃料噴射量はインジェクタへの通電時間として算出される。上記構成によって、インジェクタへの通電/非通電を制御する燃料噴射信号を測定あるいは取得すれば、そのときの燃料噴射量を推定演算でき、その結果として現在燃料残量値を算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の燃料残量表示システムを、図面を参照しながら説明する。図1に燃料残量表示システム200および関連する車載機器の構成を示す。燃料残量表示システム200には、車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と称することもある)100およびメータユニット400が含まれ、これらは車内LAN(Local Area Network)27(後述)によりネットワーク接続されている。
【0041】
燃料残量表示システム200の構成は、図1の他に、ナビゲーション装置とメータユニットとを合わせて一つのシステム製品とする構成としてもよい。例えば、図2はナビゲーション装置201とメータユニット202の各々がマイコンを含む制御回路201a,202aを備える構成で、図3はナビゲーション装置とメータユニットが単一のユニット203として構成され、ユニット203内にそれぞれ制御回路203a,203bを備える構成である。また、図4のように、ナビゲーション装置とメータユニットが単一のユニット204として構成され、統合された制御回路204aを備える構成としてもよい。
【0042】
図5にメータユニット400の構成を示すブロック図を示す。メータユニット400は、燃料センサ401,車速センサ404,表示部416,LAN(Local Area Network) I/F(インターフェース)417,およびこれらの接続された制御回路408等を備えている。
【0043】
制御回路408は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU481,ROM482,RAM483,入出力回路であるI/O484,A/D変換部486,描画部487,時計IC488,フラッシュメモリ490,およびこれらの構成を接続するバスライン485が備えられている。CPU481は、ROM482に記憶された制御プログラム482pおよびデータにより制御を行う。
【0044】
なお、制御回路408が本発明の燃料残量検出値サンプリング手段,現在燃料残量値算出手段,検出状態判定手段,位置特定手段,燃料消費量推定演算手段,走行状態情報取得手段,走行距離計測手段,平均車速算出手段,燃料噴射量推定演算手段に相当する。
【0045】
A/D変換部486は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば燃料センサ401から制御回路408に入力されるアナログデータをCPU481で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0046】
描画部487は、ROM482あるいはフラッシュメモリ490に記憶された表示用のデータや表示色のデータから表示部416(後述)に含まれるカラー液晶表示器に表示させるための表示画面データを生成する。
【0047】
時計IC488はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU481からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU481は時計IC488から日時情報を取得する。また、CPU481に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。取得された日時情報は、例えば表示部416(後述)に表示される。
【0048】
フラッシュメモリ490は書き換え可能な半導体記憶媒体で、メータユニット400の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、フラッシュメモリ490は、メータユニット400がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。なお、フラッシュメモリ490が本発明の現在燃料残量値記憶手段に相当する。
【0049】
燃料センサ401は、例えば図示しない車両の燃料タンク内に設けられ、燃料の液面の位置にしたがって上下する浮きの位置によって、浮きの取り付け部に設けられた周知のポテンショメータの抵抗値が変化するもので、その抵抗値に応じて発生する電圧値が制御回路408に送られる。制御回路408では、その電圧値をA/D変換部486によりデジタル値にするとともに演算により燃料残量を求める。なお、燃料センサ401が本発明の燃料残量検出手段に相当する。
【0050】
車速センサ404は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路408に送るものである。制御回路408では、その車輪の回転数を車両の速度に換算する。なお、車速センサ404が本発明の走行履歴情報取得手段に相当する。
【0051】
表示部416は、周知の機械式メータあるいはカラー液晶表示器を含んで構成される。カラー液晶表示器は、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路408(描画部487)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示用デバイスとして有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。なお、表示部416が本発明の燃料残量表示手段に相当する。
【0052】
LAN I/F417は車内LAN27を介して他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。また、LAN I/F417を介して各センサからのデータ取り込みを行ってもよい。なお、LAN I/F417が本発明の燃料噴射信号取得手段に相当する。
【0053】
上記のような構成を持つことにより、メータユニット400は、燃料センサ401により取得された燃料残量、車速センサ404から取得された車速、あるいは車内LAN27を介してエンジンECU500から取得されたエンジン回転数などを表示部416に表示する。
【0054】
図6に車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)100の構成を示す。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行う音声合成回路24,スピーカ15,メモリ9,表示器10,送受信機13,ハードディスク装置(HDD)21,LAN I/F26,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12等を備えている。
【0055】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ3,車両の走行距離を検出する距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ23等を用いてもよい。なお、位置検出器1が本発明の位置特定手段に相当する。
【0056】
操作スイッチ群7は、例えば表示器10と一体になったタッチパネル22もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。タッチパネル22は、表示器10の画面上にガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線され、フィルム上をユーザがタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X,Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式が広く用いられる。その他に、周知のいわゆる静電容量方式を用いてもよい。メカニカルスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、操作スイッチ群7のうちのメカニカルスイッチは、例えば表示器10とその周辺を覆い意匠枠となるエスカッションに配置される。
【0057】
また、マイク31および音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク31から入力された音声信号を、音声認識ユニット30において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら操作スイッチ群7,リモコン端末12,タッチパネル22,およびマイク31により、種々の指示を入力することが可能である。
【0058】
制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84,A/D変換部86,描画部87,時計IC88,およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行う。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行なわれる。また、CPU81からHDD21に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ROM82にナビゲーション装置100として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。なお、制御回路8が本発明の位置特定手段に相当する。
【0059】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0060】
描画部87は、HDD21等に記憶された地図データ21m(後述),表示用のデータや表示色のデータから表示器10に表示させるための表示画面データを生成する。
【0061】
時計IC88はメータユニット400の時計IC488と同様の構成である。また、GPS受信機5で受信したGPS信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、CPU81に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【0062】
メモリ9はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ9は、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをメモリ9とHDD21に分けて記憶してもよい。
【0063】
表示器10はメータユニット400の表示部416に含まれるカラー液晶表示器と同様の構成で、制御回路8(描画部87)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。
【0064】
送受信機13は、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム,登録商標)センタ14から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための装置である。また、送受信機13を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。
【0065】
スピーカ15は周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によってメモリ9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【0066】
また、ETC車載器17と通信することにより、ETC車載器17が路側器(図示せず)から受信した料金情報などをナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器17によって外部ネットワークと接続し、VICSセンタ14等との通信を行う構成をとってもよい。ETC車載器17は、例えば周知のDSRC(Dedicated Short Range Communication専用狭域通信)技術が用いられている。
【0067】
HDD21には、ナビプログラム21pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路地図データを含む地図データベースである地図データ21mが記憶される。地図データ21mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標,距離,所要時間,道幅,車線数,制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標,右左折車線数,接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、地図データ21mが本発明の道路地図データ記憶手段に相当する。
【0068】
また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ21uとして記憶される。また、ナビゲーション装置100の動作に必要なデータや各種情報はデータベース21dとしても記憶される。
【0069】
ナビプログラム21p,地図データ21m,ユーザデータ21u,およびデータベース21dは、地図データ入力器6を介して記憶媒体20からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【0070】
車速センサ23はメータユニット400の車速センサ404と同様の構成である。制御回路8では、取得した車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。車速センサ404を兼用してもよい。
【0071】
通信ユニット25は周知の無線通信機として構成され、外部ネットワークとのデータ通信を行うために用いられる。また、通信ユニット25を携帯電話機等の携帯通信端末(図示せず)を接続してデータ通信を行うための、携帯通信端末と制御回路8との間のインターフェース回路として構成してもよい。
【0072】
LAN I/F26は車内LAN27を介して、メータユニット400等の他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。また、車内LAN27を介して車速センサ23からのデータ取り込み、あるいはETC車載器17との接続を行ってもよい。
【0073】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、ユーザが操作スイッチ群7,タッチパネル22,リモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示器10上に表示されるメニュー(図示せず)から目的地経路を表示器10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0074】
すなわち、まず、ユーザは目的地を探索する。目的地の探索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法,目的地の所在する地域から探索する方法,目的地の電話番号から探索する方法,五十音表から目的地の名称を入力して探索する方法,あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ9に記憶されているものから探索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器1により車両の現在位置が求められ、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示器10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【0075】
加速度センサ35は、例えば、慣性力を受けると電荷を生じる圧電素子を含む圧電型加速度センサとして構成される。圧電型加速度センサは、圧電素子を一定の質量を有するベースで挟んだ構造になっている。加速度センサ35に与えられた加速度と圧電素子に加わる慣性力との関係はニュートンの第2法則で表され、加速度に対して発生電荷は一次比例する。よって、発生した電荷を電圧値として取得し、その電圧値をA/D変換すれば加速度を算出することができる。
【0076】
傾斜センサ36は、車両の傾斜角度を検出するもので、車両の加速度および重力加速度を検出できる加速度センサ(35)、および車速パルスを検出する車速センサ(23)の使用が一般的である(例えば、特許文献4参照)。加速度センサを車両進行方向(ピッチ)と車両垂直方向(ロール)を含む平面内に対して感度が大きくなるように設置すると、加速度センサは車両の加速度と重力加速度の加速度センサの感度方向成分との合成を検出して出力する。これにより、車両の傾斜角度と傾斜方向を取得することができる。
【0077】
【特許文献4】特開2000−055678号公報
【0078】
図7を用いて、現在燃料残量値算出処理について説明する。なお、本処理は制御プログラム482pに含まれ、制御プログラム482pの他の処理とともに繰り返し実行される。まず、燃料センサ401から取得された燃料タンク内の燃料の液面高さに対応する電圧値(燃料残量検出値)を取得し、フラッシュメモリ490のデータテーブル記憶領域490aに記憶される、その電圧値と現在燃料残量値との関係が定義されたデータテーブルを参照し、現在燃料残量値を算出する(S11)。予め定められる演算式を用いてもよい。
【0079】
次に、車速センサ404から車速情報を取得する(S12)。車両にABS(Anti Lock Brake System:アンチロック・ブレーキ・システム)が装備されている場合には、車内LAN27等を介してABS ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)から車速情報を取得してもよい。
【0080】
次に、ナビゲーション装置100から車両の現在位置情報を取得する(S13)。そして、車両の現在位置が不安定領域に含まれているか否かを判定する。不安定領域は、例えば山岳地,カーブの連続する道路のような、燃料残量の検出状態が不安定状態となることが予測される領域で、ナビゲーション装置100の地図データ21mに含まれている。フラッシュメモリ490に地図データ21mと同様のデータを記憶する構成としてもよい。
【0081】
車両の現在位置が不安定領域に含まれていない場合(S14:No)、安定状態と判定されるので、本発明の第一算出アルゴリズムである、安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行する(S15)。このとき、フラッシュメモリ490等に記憶されている不安定状態となった時期をクリアする。そして、終了条件が成立した場合(S16:Yes)本処理を終了する。終了条件が成立しない場合(S16:No)、ステップS13に戻る。
【0082】
一方、車両の現在位置が不安定領域に含まれている場合(S14:Yes)、不安定状態と判定されるので、本発明の第二算出アルゴリズムである、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行する(S17)。このとき、時計IC488から日時情報を取得する等して、不安定状態となった時期をフラッシュメモリ490等に記憶しておく。そして、終了条件が成立した場合(S18:Yes)本処理を終了する。終了条件が成立しない場合(S18:No)、ステップS13に戻る。
【0083】
このとき、不安定領域に含まれていることに関係なく、加速度センサ35により検出された車両の加速度が予め定められた閾値を超えた場合に、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行するようにしてもよい。また、同様に、傾斜センサ36により取得された車両の傾斜方向および傾斜角度が予め定められた閾値を超えた場合に、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行するようにしてもよい。あるいは、車両の加速度と、車両の傾斜方向および傾斜角度の双方が予め定められた閾値を超えた場合に、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行するようにしてもよい。なお、加速度センサ35,傾斜センサ36の情報は、予め定められるタイミングで、ナビゲーション装置100から取得する。
【0084】
上記のステップS16あるいはステップS18における終了条件は、例えば、本処理が開始されて所定の時間が経過した場合、あるいは本処理に優先する他の処理の実行タイミングとなった場合が挙げられる。
【0085】
図8を用いて、図7のステップS15に相当する、安定状態時の現在燃料残量値算出処理について説明する。まず、燃料センサ401によりサンプリングされた燃料残量検出値を過去に遡って例えば16個のような、予め定められた数(n個)だけ取得する(S31)。
【0086】
燃料残量検出値のサンプリングは、予め定められた時間間隔t(ms)で、例えば本処理とは独立した割り込み処理として実行される。サンプリングの時間間隔tは、安定状態時の現在燃料残量値算出処理の実行間隔よりも小さく、上記の場合、少なくとも16回のサンプリング処理が実行された後に、安定状態時の現在燃料残量値算出処理が実行される。サンプリングされた燃料残量検出値は、フラッシュメモリ490あるいはRAM483に記憶される。
【0087】
次に、取得した燃料残量検出値の代表残量検出値Dを算出する(S32)。ステップS32では、代表残量検出値Dとして、取得した燃料残量検出値の平均値を算出している。代表残量検出値Dは、平均値の他に、メジアン(中央値)あるいは最小値でもよい。
【0088】
最後に、算出された代表残量検出値Dを現在燃料残量値に置き換える(S33)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0089】
(不安定状態時の現在燃料残量値算出処理1)
図9を用いて、図7のステップS17に相当する、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理について説明する。まず、燃料センサ401から取得された燃料残量検出値を用いた現在燃料残量値の算出を中止する(S51)。次に、車速センサ404等から車速情報を取得する(S52)。
【0090】
次に、取得された車速情報に基づいて、不安定状態と判定されている期間の、車両の走行距離および平均車速を算出する(S53)。車輪が1回転する際に車速センサ404から出力されるパルス数と、車輪1回転あたりの走行距離(車輪の円周に相当)は既知であるため、走行距離は車輪の回転回数により算出することができる。また、平均車速は、走行距離を不安定状態と判定されている期間で割ること、あるいは算出された過去の複数の車速の平均を求めることにより算出することができる。不安定状態と判定されている期間は、例えば時計IC488の日時情報を用いて計測することができる。
【0091】
次に、データテーブル領域490aに記憶される燃料消費量推定演算データテーブル、あるいは予め定められる演算式に基づいて、不安定状態と判定されている期間の燃料消費量を推定演算する(S54)。図10に燃料消費量推定演算データテーブルの一例を示す。燃料消費量推定演算データテーブルは、走行距離と燃料消費量との関係で表される。V1,V2,V3はそれぞれ平均車速値で、V1>V2>V3となっている。つまり、走行距離が同じでも平均車速値が大きいと、燃料消費量は大きくなる。本処理では、不安定状態と判定されている期間の燃料消費量は積算される。
【0092】
図9に戻り、フラッシュメモリ490に記憶されている、不安定状態と判定される直前に算出された現在燃料残量値から上記で推定演算された燃料消費量を差し引いたものを新たな現在燃料残量値Dとして推定演算する(S55)。
【0093】
最後に、現在燃料残量値を上記で推定演算された現在燃料残量値Dに置き換える(S56)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0094】
(不安定状態時の現在燃料残量値算出処理2)
図11を用いて、図7のステップS17に相当する、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例について説明する。まず、フラッシュメモリ490あるいはRAM483に記憶された、サンプリングされた燃料残量検出値を参照して、そのデータに信頼性があるか否かを判定する。信頼性があるか否かの判定は、以下の内の少なくとも一方あるいは両方を用いて行う。
(1)燃料残量検出値が、フラッシュメモリ490に記憶されている、不安定状態と判定される直前に算出された現在燃料残量値に対して増加していない場合に信頼性があると判定。
(2)燃料残量検出値が、不安定状態と判定される直前に算出された現在燃料残量値に対して、フラッシュメモリ490に記憶されている予め定められた正常値範囲に属している場合に信頼性があると判定。
【0095】
燃料残量検出値のデータに信頼性があると判定された場合(S71:Yes)、そのデータを現在燃料残量値算出用データとして取得する(S72)。そして、現在燃料残量値算出用データが例えば16個のような、予め定められた数(n個)だけ取得されたら、代表残量検出値Dを算出する(S73)。ステップS73では、代表残量検出値Dとして、取得した燃料残量検出値の平均値を算出している。代表残量検出値Dは、平均値の他に、メジアン(中央値)あるいは最小値でもよい。
【0096】
最後に、算出された代表残量検出値Dを現在燃料残量値に置き換える(S74)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0097】
(不安定状態時の現在燃料残量値算出処理3)
図12を用いて、図7のステップS17に相当する、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例について説明する。まず、燃料センサ401によりサンプリングされた燃料残量検出値を過去に遡って例えば16個のような、予め定められた数(n個)だけ取得する(S91)。
【0098】
次に、車両の走行状態を取得し、データテーブル領域490aに記憶されている補正テーブルを参照して、その走行状態に応じた補正値を取得する(S92)。走行状態は、以下のうちの少なくとも一方あるいは両方を用いる。
(1)加速度センサ35により取得される車両の加速度を、ナビゲーション装置100から車内LAN27を介して取得する。
(2)傾斜センサ36により取得される車両の傾斜角度および傾斜方向を、ナビゲーション装置100から車内LAN27を介して取得する。
【0099】
図13に加速度補正テーブルの例を示す。図13の例では、加速度に応じた補正係数として定義されている。正の加速度は車両が加速する際に発生し、負の加速度は車両が減速する際に発生するものである。補正値は、燃料タンクの形状や燃料センサ401の取り付け位置を考慮して定義される。
【0100】
図14に傾斜角度補正テーブルの例を示す。図14の例では、車両の傾斜角度と傾斜方向をパラメータとして補正係数が定義されている。傾斜角度は、傾斜方向に対する仰角として表される。傾斜方向0度は車両の前方方向に相当し、このときに傾斜角度が検出された場合は、車両が上り坂を走行していることとなる。また、傾斜方向180度は車両の後方方向に相当し、このときに傾斜角度が検出された場合は、車両が下り坂を走行していることとなる。傾斜方向の角度は右回り方向に増加する。
【0101】
各補正テーブルは、補正後の燃料残量検出値を定義したものでもよい。
【0102】
図12に戻り、取得された補正値に基づいて、サンプリングされた燃料残量検出値を補正する(S93)。すなわち、加速度および/または傾斜角度に応じた係数が求められ、その係数をサンプリングされた燃料残量検出値に乗ずる。
【0103】
そして、補正後の燃料残量検出値の代表残量検出値Dを算出する(S94)。ステップS94では、代表残量検出値Dとして、取得した燃料残量検出値の平均値を算出している。代表残量検出値Dは、平均値の他に、メジアン(中央値)あるいは最小値でもよい。
【0104】
最後に、算出された代表残量検出値Dを現在燃料残量値に置き換える(S95)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0105】
(不安定状態時の現在燃料残量値算出処理4)
図15を用いて、図7のステップS17に相当する、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例について説明する。まず、燃料センサ401から取得された燃料残量検出値を用いた現在燃料残量値の算出を中止する(S111)。次に、車内LAN27を介してエンジンECU500から燃料噴射信号を取得する(S112)。
【0106】
燃料噴射信号は、エンジンのシリンダへ燃料を噴射するためのインジェクタを制御するためのもので、例えば、図16のようなパルス信号が用いられる。パルス信号がオン状態であるTonの間に燃料が噴射される。
【0107】
図15に戻り、燃料噴射信号のTonを計測し、予め設定された演算式・テーブル等に基づき、上記の燃料噴射信号より、不安定状態になって以降の燃料消費量を算出する(S113)。演算式で算出する例としては、インジェクタの単位時間あたりの燃料噴射量mおよびエンジンの気筒数Nは既知であるため、燃料噴射信号の1パルスの周期をT、本処理の実行タイミングがt(msec)とすると、燃料噴射量は、計算式m×Ton×(t/T)×Nで求められる。なお、この燃料消費量は、不安定状態になった状態において積算していく。
【0108】
そして、上記で算出された燃料消費量を、不安定状態になった直前の現在燃料残量値から差し引いたものを、新たな現在燃料残量値Dとする(S114)。
【0109】
最後に、算出された現在燃料残量値Dを現在燃料残量値に置き換える(S115)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0110】
(不安定状態時の現在燃料残量値算出処理5)
図17を用いて、図7のステップS17に相当する、不安定状態時の現在燃料残量値算出処理について説明する。まず、燃料センサ401によりサンプリングされた燃料残量検出値を過去に遡って例えば16個のような、予め定められた数(n個)だけ取得する(S131)。
【0111】
次に、車両が給油中であるか否かを判定する。判定方法は、以下のうちの少なくとも一方あるいは両方を用いる。
(1)ナビゲーション装置100から車内LAN27を介して取得された車両の現在位置情報が給油所であることを示しているか否かにより判定する。
(2)サンプリングされた燃料残量検出値の変化量あるいは増加率が、予め定められた値を超えているか否かにより判定する。
【0112】
車両が給油中でないと判定された場合(S132:No)、上述の安定状態時の現在燃料残量値算出処理を実行する(S136)。一方、車両が給油中であると判定された場合(S132:Yes)、直近にサンプリングされたm個の燃料残量検出値を用いて、代表残量検出値Dを算出する(S133)。mは例えば8のようなnよりも小さい値である。ステップS133では、代表残量検出値Dとして、取得した燃料残量検出値の平均値を算出している。代表残量検出値Dは、平均値の他に、メジアン(中央値)あるいは最小値でもよい。
【0113】
そして、算出された代表残量検出値Dを現在燃料残量値に置き換える(S134)。この新たな現在燃料残量値を用いて、表示部416において燃料残量表示が行われる。
【0114】
最後に、車両が給油中でないと判定されるまで、本処理を繰り返す(S135:No→S131)。また、図示されてはいないが、給油が終了するまで待ち続けてもよい(S135:No→S135)。
【0115】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】燃料残量表示システムの構成を示す図。
【図2】燃料残量表示システムの構成の別例を示す図。
【図3】燃料残量表示システムの構成の別例を示す図。
【図4】燃料残量表示システムの構成の別例を示す図。
【図5】メータユニットの構成を示すブロック図。
【図6】車両用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図7】現在燃料残量値算出処理を説明するフロー図。
【図8】安定状態時の現在燃料残量値算出処理を説明するフロー図。
【図9】不安定状態時の現在燃料残量値算出処理(1)を説明するフロー図。
【図10】燃料消費量推定演算データテーブルの例を示す図。
【図11】不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例(2)を説明するフロー図。
【図12】不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例(3)を説明するフロー図。
【図13】加速度補正テーブルの例を示す図。
【図14】傾斜角度補正テーブルの例を示す図。
【図15】不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例(4)を説明するフロー図。
【図16】燃料噴射信号の例を示す図。
【図17】不安定状態時の現在燃料残量値算出処理の別例(5)を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0117】
1 位置検出器(位置特定手段)
8 制御回路(位置特定手段)
10 表示器
21 ハードディスク装置(HDD)
21m 地図データ(道路地図データ記憶手段)
26 LAN I/F
100 車両用ナビゲーション装置
200 燃料残量表示システム
400 メータユニット
401 燃料センサ(燃料残量検出手段)
404 車速センサ(走行履歴情報取得手段)
408 制御回路(燃料残量検出値サンプリング手段,現在燃料残量値算出手段,検出状態判定手段,位置特定手段,燃料消費量推定演算手段,走行状態情報取得手段,走行距離計測手段,平均車速算出手段,燃料噴射量推定演算手段)
490 フラッシュメモリ(現在燃料残量値記憶手段)
416 表示部(燃料残量表示手段)
417 LAN I/F(燃料噴射信号取得手段)
500 エンジンECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出手段と、
前記燃料残量検出手段による燃料残量検出値を予め定められた時間間隔でサンプリングする燃料残量検出値サンプリング手段と、
サンプリングされた前記燃料残量検出値に基づいて現在燃料残量値を算出する現在燃料残量値算出手段と、
算出された前記現在燃料残量値を更新しつつ記憶する現在燃料残量値記憶手段と、
前記現在燃料残量値の記憶値に基づいて現在燃料残量を表示する燃料残量表示手段と、を備え、
前記現在燃料残量値算出手段は、前記燃料残量検出手段による前記燃料残量を検出状態が安定状態であるか不安定状態であるかを判定する検出状態判定手段を有するとともに、前記検出状態が安定状態であると判定された場合に、予め定められた第一算出アルゴリズムにより前記現在燃料残量値を算出する一方、前記検出状態が不安定状態であると判定された場合には、当該不安定状態にて前記第一算出アルゴリズムを適用した場合に予想される算出誤差が縮小するように設計された第二算出アルゴリズムにより前記現在燃料残量値を算出することを特徴とする燃料残量表示システム。
【請求項2】
道路地図データを、前記燃料残量の検出状態が前記不安定状態となることが予測される予め定められた不安定領域の特定データとともに記憶する道路地図データ記憶手段と、
前記道路地図データ上における前記車両の現在位置を特定する位置特定手段と、を備え、
前記検出状態判定手段は、前記道路地図データ上において前記車両の現在位置が前記不安定領域に属するか否かに基づいて、前記検出状態が不安定状態であるか否かを判定する請求項1に記載の燃料残量表示システム。
【請求項3】
前記燃料残量検出値サンプリング手段は、1回の前記現在燃料値の算出に対応した前記燃料残量検出値を複数回サンプリングするものであり、
前記第一算出アルゴリズムは、それら複数の燃料残量検出値に基づいて得られる代表残量検出値を前記現在燃料残量値として算出する請求項1または請求項2に記載の燃料残量表示システム。
【請求項4】
前記代表残量検出値は、複数の前記燃料残量検出値の平均値である請求項3に記載の燃料残量表示システム。
【請求項5】
前記代表残量検出値は、複数の前記燃料残量検出値のメジアンである請求項3または請求項4に記載の燃料残量表示システム。
【請求項6】
前記代表残量検出値は、複数の前記燃料残量検出値の最小値である請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。
【請求項7】
請求項2に記載の要件を備え、前記道路地図データ記憶手段は、前記不安定領域の特定情報を、給油所の位置特定データとして記憶するものであり、
前記第二算出アルゴリズムは、前記現在位置が前記給油所にある場合、前記代表残量検出値の算出時間周期を、前記第一算出アルゴリズムよりも短く設定する形で前記現在燃料残量値を算出するものである請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。
【請求項8】
前記検出状態判定手段が前記不安定状態を検出している期間内の、前記車両の走行履歴情報を取得する走行履歴情報取得手段と、
取得された前記走行履歴情報に基づいて燃料消費量を推定演算する燃料消費量推定演算手段と、を備え、
前記第二算出アルゴリズムは、推定演算された前記燃料消費量に基づいて前記現在燃料残量値を算出する請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。
【請求項9】
前記走行履歴情報取得手段は、前記車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、前記車両の平均車速を算出する平均車速算出手段とを備え、
前記燃料消費量推定演算手段は、前記走行距離および平均車速に基づいて燃料消費量を推定演算するものである請求項8に記載の燃料残量表示システム。
【請求項10】
前記第二算出アルゴリズムは、予め定められた異常判定条件に基づいて、前記不安定状態においてサンプリングされた前記燃料残量検出値の異常判定を行うとともに、該異常判定された燃料残量検出値を除外した残余の燃料残量検出値に基づいて前記現在燃料残量値を算出するものである請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。
【請求項11】
前記第二算出アルゴリズムは、前記燃料残量検出値の異常判定を、該検出値が予め定められた正常値範囲に属しているか否かに基づいて行うものである請求項10に記載の燃料残量表示システム。
【請求項12】
車両の走行状態情報を取得する走行状態情報取得手段を備え、
前記第二算出アルゴリズムは、前記検出状態判定手段が前記不安定状態を検出している期間内に取得された前記走行状態情報に基づいて前記現在燃料残量値を補正する請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。
【請求項13】
前記走行状態情報取得手段は、前記車両の傾斜角度を前記走行状態情報として検出する請求項12に記載の燃料残量表示システム。
【請求項14】
前記走行状態情報取得手段は、前記車両の加速度を前記走行状態情報として検出する請求項12または請求項13に記載の燃料残量表示システム。
【請求項15】
前記車両のエンジンにおける燃料噴射を行うための燃料噴射信号を取得する燃料噴射信号取得手段と、
前記検出状態判定手段が前記不安定状態を検出している期間内に取得された前記燃料噴射信号に基づいて燃料噴射量を推定演算する燃料噴射量推定演算手段と、を備え、
前記第二算出アルゴリズムは、推定演算された前記燃料噴射量に基づいて前記現在燃料残量値を算出する請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の燃料残量表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−174193(P2008−174193A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11650(P2007−11650)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】