説明

真空成膜装置

【課題】チャンバ内のヒータ等の加熱機構がクリーニング処理によって生じる劣化や腐食を、クリーニング時における温度制御を要することなく行い、温度制御に伴う操作時間を不要とし、真空成膜装置の稼働率の低下を抑制する。
【解決手段】真空成膜装置において、クリーニング時において加熱機構の外周を不活性ガスで覆うことによって、反応性に高いクリーニングプラズマあるプラズマによって発生するラジカルが加熱機構に接触しないようにし、これによってクリーニング処理により劣化や腐食を防ぐ。保護機構は、ヒータの周囲空間に不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構を備え、クリーニング時に不活性ガスを導入して加熱機構をクリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離してヒータを保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成膜装置に関し、スパッタリング装置、CVD装置、アッシング装置、エッチング装置、MBE装置、蒸着装置などの装置に適用することができ、特に、真空チャンバのクリーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置、CVD装置、アッシング装置、エッチング装置、MBE装置、蒸着装置等の真空成膜装置では、基板を所定温度に加熱する場合がある。この基板を加熱する加熱機構として、ランプヒータ、シーズヒータ等の発熱体を使用するものが知られている。
【0003】
各種処理には、処理の種類に対応した処理ガスがチャンバ内に導入される。例えば、成膜処理では成膜ガスがチャンバ内に導入され、クリーニング処理ではクリーニングガスがチャンバ内に導入される。
【0004】
クリーニング処理は、成膜処理によってチャンバ内の載置台や内壁面に付着して不要な薄膜を除去するものであり、この処理によって付着した膜が剥離することで生じる基板面の汚染を防ぎ、製品の歩留まりを向上させることができる。クリーニング時においても、クリーニングレートを上昇させるために、成膜時と同様に加熱機構を駆動して加熱することが行われている。
【0005】
クリーニングガス(エッチングガス)としては、例えば、Cl系ガス、F系ガス、ClF系ガスなどのハロゲン系ガスが用いられる。このクリーニングは、化学的に活性で反応性に富み、ガスの反応性はクリーニング時の温度に依存し、温度が高くなるほど反応性が高くなるという特性であることが知られている。(特許文献1)
【0006】
図6は、従来の真空成膜装置の概略構成を説明するための図である。図6において、真空成膜装置101は、真空チャンバ102内に、ウエハ等の被処理材である基板100を載置して支持するサセプタ105と、サセプタ105と対向する位置に配置される高周波電極103と、サセプタ105を加熱する加熱機構110とを備える。
【0007】
真空チャンバ102内には、ガス導入部106から、成膜用のCVD材料ガスあるいはクリーニング用のクリーニングガスが導入される。ガスの導入は、例えば、高周波電極103に形成された開口部103aを通して行うことができる。
【0008】
高周波電極103には高周波電源104から高周波電力が供給され、真空チャンバ102内に導入されたCVD材料ガスあるいはクリーニングガスのプラズマ(又はラジアル)を発生し、成膜又はクリーニングを行う。
【0009】
加熱機構110は、サセプタ105の基板100が載置される面と反対側の面に対向して配置される。この加熱機構110は、ヒータ110aとヒータ110aから放出される熱をサセプタ105側に反射する反射板110b(ヒータリフレクタ)とを備え、サセプタ105を加熱することで載置した基板100の温度を上げ、成膜あるいはクリーニングの反応性を向上させる。
【0010】
真空チャンバ102内に導入されたCDV材料ガスやクリーニングガスは、真空チャンバ102に形成された排気部107を通して外部に排気される。
【0011】
特許文献1では、クリーニング時において、載置台の温度が高すぎると載置台がエッチングガスによって腐食が進行し寿命が短くなったり、パーティクルの発生源となるという問題があることを指摘している。
【0012】
そして、このクリーニング時の腐食の問題を解決する方法として、クリーニング時に温度を下げ、クリーニング処理後に載置台の温度を上昇させる方法があるが、この方法では、昇降温の操作に時間がかかるという問題があることを指摘している。
【0013】
特許文献1では、載置台自体あるいは表面をクリーニングガスに対して耐腐食性の材料で形成することによって載置台の耐腐食性を向上させる構成を提案している。
【0014】
また、チャンバ内のクリーニング自体を不要とする構成も、例えば、特許文献2に提案されている。
【0015】
特許文献2には、CVDリアクタ装置において、リアクタ内において、基板表面側と基板裏面側とを基板抑え部材によって空間的に分離し、基板表面側の空間にのみCVD原料ガスを含むガスを充満し、基板裏面側の空間にはCVD原料ガスを含まない不活性ガス等の成膜の関与しないガスを充満し、基板表面側の圧力を低圧とし、基板裏面側の圧力を高圧とし、基板裏面側から基板表面側の空間に隙間を通して不活性ガスを流出させて、CVD原料ガスが基板裏面側に接しないようにする構成が開示されている。
【0016】
図7は、特許文献2に示されるCVDリアクタ装置の概略構成を説明するための図である。図7において、CVDリアクタ装置200が備えるチャンバ202は、ウエハ100を挟んで空間部202aと空間部202bの2つに空間的に分離される。空間部202bには光照射窓210を通してウエハ100の裏面側が加熱される。
【0017】
チャンバ202内の一方の空間部202aにはガスシャワー205を通してCVDガス206が導入され、他方の空間部202bには不活性ガス220が導入される。空間部202bの圧力を空間部202aの圧力よりも高く設定することで、不活性ガス220はCVDガス206と共に排気部207から排気される。
【0018】
これによって、ウエハ100の裏面側にCVDガス206が回り込むことを防いで、裏面上に薄膜が成膜されることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−141895号公報(段落0007〜0010,0012)
【特許文献2】特開平7−99162号公報(段落0013〜0014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
真空成膜装置では、ヒータ等の加熱機構は、通常、プラズマが発生する空間と同じ空間内に設置される。そのため、クリーニング時において、クリーニングガス(エッチングガス)のプラズマ又はラジアルがヒータ等の加熱機構に回り込み、加熱機構の部材を腐食、劣化させるため、加熱機構の寿命が低下するという問題がある。
【0021】
このような、クリーニング時において加熱機構がクリーニングガスで腐食するという問題に対して、上記した特許文献1のように、クリーニング時に加熱機構の温度を下げ、クリーニング処理後に温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では、前記したように、昇降温の操作に時間がかかり、真空成膜装置の稼働率が低下するという問題がある。
【0022】
また、上記した特許文献2のように、チャンバ内の空間を、加熱機構が設置される空間と基板の成膜面側の空間とに分離し、加熱機構側の空間に成膜ガスが回り込まないようにして、加熱機構に薄膜が付着しないようにして、クリーニング自体を不要とする構成では、チャンバ内において加熱機構を空間的に分離する構成が必要であり、かつ、加熱機構側を高圧とする加圧機構も必要となるため、加熱機構の周辺装置が大型となるという問題がある。加熱機構の周辺装置が大型化すると、チャンバ内の容量が大きくなり、チャンバ内の吸排気に時間がかかり、真空成膜装置の稼働率が低下するという問題がある。
【0023】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、チャンバ内のヒータ等の加熱機構がクリーニング処理によって生じる劣化や腐食を防ぐことを目的とする。
【0024】
また、本発明は、クリーニング時における温度制御を不要とし、温度制御に伴う操作時間を不要として、真空成膜装置の稼働率の低下を抑制することを目的とする。
【0025】
また、本発明は、加熱機構にクリーニングガスが回り込むことを防ぐための構成を不要とし、加熱装置の周辺装置の大型化およびこれに伴うチャンバの大型化を抑制し、チャンバ内の吸排気時間の長時間化を抑制して、真空成膜装置の稼働率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明は、真空成膜装置において、クリーニング時において加熱機構の外周を不活性ガスで覆うことによって、反応性に高いクリーニングプラズマあるプラズマによって発生するラジカルが加熱機構に接触しないようにし、これによってクリーニング処理により劣化や腐食を防ぐことができる。
【0027】
本発明によれば、クリーニング処理で劣化や腐食されるおそれがある部材を耐腐食性の材料を用いることなく、Al等の従来から使用される材料をそのまま使用し、かつクリーニング処理による劣化や腐食を低減させることができる。
【0028】
また、本発明によれば、真空チャンバを空間的に分離するための構成が不要であるため、分離するための機構や、2つの空間部分の圧力差を調整するといた操作を不要とすることができる。
【0029】
本願発明は、真空チャンバ内で基板表面に成膜を形成する真空成膜装置において、真空チャンバ内に、プラズマを発生させる高周波電極と、基板を支持するサセプタと、サセプタを加熱する加熱機構と、真空チャンバ内に付着する生成物を除去するプラズマクリーニング機構と、加熱機構をクリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離する保護機構とを備える。
【0030】
本願発明のプラズマクリーニング機構は、真空チャンバ内にクリーニングガスを導入するガス導入機構と、クリーニングガスのプラズマ又はラジカルを発生するプラズマ発生機構とを備える。
【0031】
クリーニング時には、ガス導入機構から例えば、F系やC系のクリーニングガス(エッチングガス)を導入すると共に、プラズマ発生機構によって真空チャンバ内にプラズマを発生させ、クリーニングプラズマあるいはプラズマによるラジカルを発生する。クリーニングプラズマ又はラジカルは、真空チャンバ内に付着した成膜を除去する。
【0032】
本発明の保護機構は、加熱機構の周囲空間に不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構を備える。保護機構は、クリーニング時に不活性ガスを導入して加熱機構の周囲を不活性ガスが覆うことによって、クリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離し、加熱機構がクリーニングガスプラズマ又はラジカルで浸食されないようにする。
【0033】
真空チャンバ内に導入された不活性ガスは、クリーニングガスと共に真空チャンバの外部に排気される。
【0034】
本発明の不活性ガス導入機構は複数の開口部を有する板材を備える。複数の開口部は板材の少なくとも一方の面の全面に亘って分布し、この開口部を通して不活性ガスを導入する。導入された不活性ガスは、板材に形成された複数の開口部から加熱機構に向かって流出し、加熱機構の周囲を不活性ガスで覆う。複数の開口部は、板材の全面に亘って分布させることによって、加熱機構に対する不活性ガスの放出を均一とし、加熱機構の周囲を不活性ガスで漏れなく覆うことができる。
【0035】
本発明の加熱機構は、ヒータと、このヒータからの放熱をサセプタ側に反射する反射板を備える構成とすることができる。不活性ガス導入機構は、加熱機構が備える反射板に形成した複数の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入する。
【0036】
本発明は、不活性ガス導入機構としてサセプタの一部を用いる構成とすることができる。この構成では、サセプタは、加熱機構側に開口する複数の開口部と、この開口部と内部で連通する通路とを備える。サセプタは、通路および開口部を通して不活性ガスを加熱機構側に導入する。この構成とすることで、不活性ガスを導入する構成要素の点数を低減させることができ、不活性ガス導入機構を設けるために真空チャンバの容積が拡大することを抑制することができる。
【0037】
本発明は、加熱機構への不活性ガスの導入を2箇所から行う構成とすることができる。この不活性ガス導入の一つは加熱機構が備える反射板(ヒートレフレクタ)を通して行い、不活性ガス導入の他の一つは基板を支持するサセプタを通して行う構成である。
【0038】
この構成において、加熱機構は、ヒータと、このヒータからの放熱をサセプタ側に反射する反射板を備えると共に、反射板はヒータ側に開口する複数の第1の開口部を有する。また、サセプタは、加熱機構側に開口する複数の第2の開口部と、この第2の開口部と内部で連通する通路とを備える。
【0039】
ここで、不活性ガス導入機構は、反射板が備える複数の第1の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入すると共に、サセプタが備える通路および複数の第2の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、チャンバ内のヒータ等の加熱機構がクリーニングによって生じる劣化や腐食を防ぐことができる。
【0041】
本発明によれば、クリーニング時における温度制御を不要とし、温度制御に伴う操作時間を不要とすることによって、真空成膜装置の稼働率の低下を抑制することができる。
【0042】
本発明によれば、加熱機構にクリーニングガスが回り込むことを防ぐための構成を不要とすることができ、加熱装置の周辺装置の大型化およびこれに伴うチャンバの大型化を抑制することができる。また、チャンバの大型化を防ぐことによって、チャンバ内の吸排気時間の長時間化を抑制して、真空成膜装置の稼働率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本願発明の真空成膜装置の第1の保護機構の構成例を説明するための図である。
【図2】本願発明の真空成膜装置の第2の保護機構の構成例を説明するための図である。
【図3】本願発明の真空成膜装置の第3の保護機構の構成例を説明するための図である。
【図4】本願発明の真空成膜装置の第4の保護機構の構成例を説明するための図である。
【図5】本願発明の真空成膜装置の第4の保護機構の構成例を説明するための図である。
【図6】従来の真空成膜装置の概略構成を説明するための図である。
【図7】従来のCVDリアクタ装置の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図1〜図5は本発明の真空成膜装置の構成例を説明するための概略図である。
【0046】
図1〜図5において、本発明の真空成膜装置1は、真空チャンバ2内に、サセプタ5と高周波電極3と加熱機構10を備える。
【0047】
サセプタ5は、ウエハ等の被処理材である基板100を載置して支持する部材であり、例えば、Al材を用いることができる。高周波電極3はサセプタ5と対向する位置に配置され、高周波電極3とサセプタ5との間で発生する放電によってプラズマを形成する。加熱機構10は、サセプタ5を加熱して、成膜あるいはクリーニングの反応性を高める。
【0048】
真空チャンバ2内には、成膜用のCVD材料ガスあるいはクリーニング用のクリーニングガスが導入される。真空チャンバ2内へのガスの導入は、ガス導入部6によって行われる。ガス導入部6は、図示していない切り換え機構によってCVD材料ガスあるいはクリーニングガスを切り換えて導入する。また、導入するガスの流量や圧力は、図示しない調整機構によって制御することができる。
【0049】
ガス導入部6から真空チャンバ2内へのガスの導入は、例えば、高周波電極3に形成された複数の開口部3aを通して行うことができる。この複数の開口部を備える高周波電極3は、例えば、シャワーヘッドと呼ばれる。真空チャンバ2内へのCVD材料ガスあるいはクリーニングガスの導入は、上記した開口部3aを通して行う構成を用いて行う他に、他の導入機構を用いて行ってもよい。
【0050】
高周波電極3には高周波電源4から高周波電力が供給され、サセプタ5との間で放電を発生させる。このとき、真空チャンバ102内にCVD材料ガスあるいはクリーニングガスを導入することによってプラズマが形成される。また、このプラズマによってガス成分に含まれる原子のラジアルが発生する。
【0051】
真空成膜装置1は、このプラズマ又はラジカルの反応性を用いて、CVD材料ガスを導入したときには基板100上に薄膜を成膜し、また、クリーニングガスを導入したときは真空チャンバ2の内壁等に付着している薄膜を除去してクリーニング処理を行う。
【0052】
高周波電極3とサセプタ5はプラズマ発生機構を構成し、CVD材料ガスを導入する際には、このプラズマ発生機構はプラズマ成膜機構として機能し、クリーニングガスを導入する際には、このプラズマ発生機構はプラズマクリーニング機構として機能する。
【0053】
加熱機構10は、サセプタ5に対して、基板100が載置される面と反対側の面に対向して配置される。この加熱機構10は、例えば、ヒータ10aと、反射板10b(ヒータリフレクタ)とを備える構成とすることができる。反射板10bは、ヒータ10aから放出される熱をサセプタ5側に反射して熱効率を向上させる部材である。加熱機構10は、サセプタ5を加熱することによってサセプタ5上に載置した基板100の温度を上げ、この温度上昇によって、成膜あるいはクリーニングの反応性を向上させる。
【0054】
真空チャンバ2内に導入されたCDV材料ガスやクリーニングガスは、真空チャンバ2に形成された排気部7を通して外部に排気される。
【0055】
本発明の真空成膜装置1は、クリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離する保護機構を備る。保護機構は、加熱機構10の周囲空間に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部20を備え、クリーニング時に不活性ガスを導入して加熱機構10を不活性ガスで覆い、クリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離して、加熱機構10がクリーニングガスプラズマ又はラジカルによって浸食されるのを抑制する。
【0056】
以下、本発明の保護機構の構成例(第1の構成例〜第5の構成例)について、図1〜図5を用いて説明する。
【0057】
保護機構の第1〜3の構成例は、保護機構が備える不活性ガス導入機構を、複数の開口部を備えた加熱機構の反射板によって構成する例であり、保護機構の第4の構成例は、保護機構が備える不活性ガス導入機構を、複数の開口部を備えたサセプタによって構成する例であり、保護機構の第5の構成例は、保護機構が備える不活性ガス導入機構を、複数の開口部を備えた加熱機構の反射板と複数の開口部を備えたサセプタによって構成する例である。
【0058】
[不活性ガス導入部の第1の構成例]
はじめに、図1を用いて保護機構の第1の構成例を説明する。図1に示す構成例において、加熱機構10が備える反射板10bは、ヒータ10aを覆う程度の大きさを有し、少なくともヒータ10aに対向する面には、複数の開口部10cが形成される。また、反射板10bは、ヒータ10aの側面部分を囲む縁部分を備える構成としてもよく、この縁部分に開口部10cを形成してもよい。
【0059】
この開口部10cからヒータ10aに向かって不活性ガスが導入される。不活性ガスの導入は、不活性ガス導入部20によって行われる。
【0060】
不活性ガスの導入は、反射板10bの外側に反射板10bを囲むように囲み部20cを設けて、反射板10bとの間に不活性ガスを導入する導入空間20bを形成し、この導入空間20b内に導入路20aを通して不活性ガス源(図示していない)から不活性ガスを供給して行う。
【0061】
導入路20aを介して供給された不活性ガスは導入空間20b内に一時的に保持された後、複数の開口部10cを通してヒータ10aに導入され、ヒータ10aの周囲を囲み、クリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0062】
この構成とすることによって、ヒータ10aの全周囲に対して不活性ガスを均一に導入することができる。
【0063】
[不活性ガス導入部の第2の構成例]
次に、図2を用いて保護機構の第2の構成例を説明する。図2に示す構成例において、加熱機構10が備える反射板10bは、ヒータ10aを覆う程度の大きさを有し、少なくともヒータ10aに対向する面には、複数の開口部10cが形成される。また、反射板10bは、ヒータ10aの側面部分を囲む縁部分を備える構成としてもよく、この縁部分に開口部10cを形成してもよい。
【0064】
また、反射板10bは、内部に導入空間10dが形成され、開口部10cと連通している。不活性ガス源(図示していない)は、導入路20aを通して導入空間10d内に不活性ガスを導入する。導入された不活性ガスは、導入空間10d内に一時的に保持された後、複数の開口部10cを通してヒータ10aに導入され、ヒータ10aの周囲を囲み、クリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0065】
この構成とすることによって、ヒータ10aの全周囲に対して不活性ガスを均一に導入することができる。また、反射板10bの内部に、不活性ガスを導入して一時的に保持する導入空間10dを形成することによって、前記した第1の構成例の囲み部20cの構成要素を不要とすることができる。
【0066】
[不活性ガス導入部の第3の構成例]
次に、図3を用いて保護機構の第3の構成例を説明する。図3に示す構成例において、加熱機構10が備える反射板10bは、ヒータ10aを覆う程度の大きさを有し、少なくともヒータ10aに対向する面には、連通孔10eが形成される。また、反射板10bは、ヒータ10aの側面部分を囲む縁部分を備える構成としてもよく、この縁部分に連通孔10eを形成してもよい。
【0067】
連通孔10eには、導入路20aを通して不活性ガス源(図示していない)から不活性ガスが供給され、この連通孔10eを通してヒータ10aに導入される。導入された不活性ガスは、ヒータ10aの周囲を囲み、クリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0068】
この構成とすることによって、ヒータ10aの全周囲に対して不活性ガスを均一に導入することができる。また、反射板10bの開けた連通孔10eに導入路20aを接続するという簡易な構成で保護機構を形成することができる。
【0069】
[不活性ガス導入部の第4の構成例]
次に、図4を用いて保護機構の第4の構成例を説明する。図4に示す構成例において、加熱機構10が備える反射板10bは、ヒータ10aを覆う程度の大きさを有する。一方、サセプタ5は、少なくともヒータ10aに対向する面に複数の開口部5aが形成され、内部に導入空間5bが形成される。導入空間5bには、導入路20dを通して不活性ガス源(図示していない)から不活性ガスが供給される。
【0070】
導入路20aを介して供給された不活性ガスは導入空間5b内に一時的に保持された後、複数の開口部5aを通してヒータ10aに導入され、ヒータ10aの周囲を囲み、クリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0071】
この構成とすることによって、ヒータ10aの全周囲に対して不活性ガスを均一に導入することができる。
【0072】
[不活性ガス導入部の第5の構成例]
次に、図5を用いて保護機構の第5の構成例を説明する。図5に示す構成例は、前記した第2の構成例と第4の構成例とを組み合わせた構成例である。
【0073】
図5に示す構成例において、加熱機構10が備える反射板10bは、ヒータ10aを覆う程度の大きさを有し、少なくともヒータ10aに対向する面には、複数の開口部10cが形成される。また、反射板10bは、ヒータ10aの側面部分を囲む縁部分を備える構成としてもよく、この縁部分に開口部10cを形成してもよい。
【0074】
また、反射板10bは、内部に導入空間10dが形成され、開口部10cと連通している。不活性ガス源(図示していない)は、導入路20aを通して導入空間10d内に不活性ガスを導入する。導入された不活性ガスは、導入空間10d内に一時的に保持された後、複数の開口部10cを通してヒータ10aに導入される。
【0075】
一方、サセプタ5は、少なくともヒータ10aに対向する面に複数の開口部5aが形成され、内部に導入空間5bが形成される。導入空間5bには、導入路20dを通して不活性ガス源(図示していない)から不活性ガスが供給される。
【0076】
導入路20cを介して供給された不活性ガスは導入空間5b内に一時的に保持された後、複数の開口部5aを通してヒータ10aに導入され、ヒータ10aの周囲を囲ってクリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0077】
反射板10b側から導入された不活性ガスとサセプタ5側から導入された不活性ガスは、ヒータ10aの周囲を囲み、クリーニングガスからヒータ10aを分離する。このとき、不活性ガスは、サセプタ5の底面と反射板10bとの間で形成される空間部分において、ヒータ10aの周囲を囲むように一時的に保持される。
【0078】
この構成とすることによって、ヒータ10aの全周囲に対して不活性ガスを均一に導入することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 真空成膜装置
2 真空チャンバ
3 高周波電極
3a 開口部
4 高周波電源
5 サセプタ
5a 開口部
5b 導入空間
6 ガス導入部
7 排気部
10 加熱機構
10a ヒータ
10b 反射板
10c 開口部
10d 導入空間
10e 連通孔
20 不活性ガス導入部
20a 導入路
20b 導入空間
20c 囲み部
20d 導入路
100 基板(ウエハ)
101 真空成膜装置
102 真空チャンバ
103 高周波電極
103a 開口部
104 高周波電源
105 サセプタ
106 ガス導入部
107 排気部
110 加熱機構
110a ヒータ
110b 反射板
200 リアクタ装置
202 チャンバ
202a 空間部
202b 空間部
205 ガスシャワー
206 CVDガス
207 排気部
210 光照射窓
220 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で基板表面に成膜を形成する真空成膜装置において、
前記真空チャンバ内に、プラズマを発生させる高周波電極と、基板を支持するサセプタと、前記サセプタを加熱する加熱機構と、真空チャンバ内に付着する生成物を除去するプラズマクリーニング機構と、前記加熱機構をクリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離する保護機構とを備え、
前記プラズマクリーニング機構は、
真空チャンバ内にクリーニングガスを導入するガス導入機構と、クリーニングガスのプラズマ又はラジカルを発生するプラズマ発生機構とを備え、
前記保護機構は、
前記加熱機構の周囲空間に不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構を備え、クリーニング時に不活性ガスを導入して加熱機構をクリーニングガスプラズマ又はラジカルから空間的に分離して加熱機構を保護することを特徴とする、真空成膜装置。
【請求項2】
前記不活性ガス導入機構は複数の開口部を有する板材を備え、前記複数の開口部は前記板材の少なくとも一方の面の全面に亘って分布し、当該開口部を通して不活性ガスを導入することを特徴とする、請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記加熱機構は、ヒータと、当該ヒータからの放熱をサセプタ側に反射する反射板を備え、
前記不活性ガス導入機構は、前記反射板に形成した複数の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入することを特徴とする、請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記サセプタは、前記加熱機構側に開口する複数の開口部と、前記開口部と内部で連通する通路とを備え、前記通路および開口部を通して不活性ガスを導入することを特徴とする、請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記加熱機構は、ヒータと、当該ヒータからの放熱をサセプタ側に反射する反射板を備えると共に前記反射板はヒータ側に開口する複数の第1の開口部を有し、
前記サセプタは、前記加熱機構側に開口する複数の第2の開口部と、前記第2の開口部と内部で連通する通路とを備え、
前記不活性ガス導入機構は、前記反射板が備える複数の第1の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入すると共に、前記サセプタが備える通路および複数の第2の開口部を通して不活性ガスをヒータ側に導入することを特徴とする、請求項1に記載の真空成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−63847(P2011−63847A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215313(P2009−215313)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】