説明

硫黄変性ケイ素化合物の製造方法および硫黄ドープシリコン膜の製造方法

【課題】低エネルギー消費で硫黄ドープシリコン膜を製造する。
【解決手段】光重合性のケイ素化合物と環状硫黄を混合した混合物を用意する工程と、混合物に光照射処理を行ってケイ素化合物をラジカル化するとともに第1の加熱処理を行って環状硫黄をラジカル化し、ラジカル化したケイ素化合物を、ラジカル化した硫黄と結合させる工程と、を行って硫黄変成ケイ素化合物を製造する。混合物の環状硫黄とケイ素化合物の混合比は、混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100000以上1/3以下となる混合比にする。硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を不活性雰囲気で基板上に塗布した後に第2の加熱処理を行って、硫黄変性ケイ素化合物を分解するとともに硫黄変性ケイ素化合物に含まれるケイ素原子を他のケイ素原子または硫黄原子と結合させて硫黄ドープシリコン膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄変性ケイ素化合物の製造方法および硫黄ドープシリコン膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不純物を含んだシリコン膜が各種半導体デバイスに用いられている。このようなシリコン膜の製造方法としては、シリコン膜の形成後に不純物をドープする方法や、シリコン膜の形成材料として不純物を含んだものを用いて、この形成材料をCVD法やエピタキシャル成長法で成膜する方法などが知られている。
【0003】
半導体膜に用いられる不純物としては、リンやホウ素、砒素、アルミニウムなどがよく知られており、近年ではコバルトや硫黄などを不純物に用いることも提案されている。不純物として硫黄を用いたシリコン膜の製造方法としては、特許文献1に開示されている方法が挙げられる。特許文献1では、電極とチャネル層との間の障壁層に硫黄を注入するとともに、硫黄を熱拡散させて低抵抗領域を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−313299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、硫黄を拡散させる前のシリコン膜を、通常同様にCVD法やエピタキシャル成長法等により形成しており、シリコン膜の形成に高真空での処理が必要になる。また、チャネル層での原子相互拡散が発生しない温度での熱拡散を用いており、硫黄を拡散させるために600℃程度での加熱処理が必要になる。
【0006】
このように、特許文献1の技術では、高真空や高温での処理が必要となるので、シリコン膜の製造に要するエネルギーが高くなる。また、製造装置が高コストになり、製造コストを下げることが難しい。また、圧力制御や温度制御に時間や手間を要するので、製造効率を向上させることが難しい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであって、硫黄ドープシリコン膜の形成材料になる硫黄変性ケイ素化合物を低エネルギー消費で得られる硫黄変性ケイ素化合物の製造方法を提供することを提供することを目的の1つとする。硫黄ドープシリコン膜を低エネルギー消費で得られる硫黄ドープシリコン膜の製造方法を提供することを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の硫黄変性ケイ素化合物の製造方法は、硫黄とケイ素の結合を有する硫黄変成ケイ素化合物の製造方法であって、光重合性のケイ素化合物と環状硫黄を混合した混合物を用意する工程と、前記混合物に光照射処理を行って前記ケイ素化合物をラジカル化するとともに第1の加熱処理を行って前記環状硫黄をラジカル化し、ラジカル化したケイ素化合物を、ラジカル化した硫黄と結合させる工程と、を有し、前記混合物の前記環状硫黄と前記ケイ素化合物の混合比は、該混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100000以上1/3以下となる混合比にすることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、環状硫黄(典型的にはS硫黄)は例えば160℃程度の温度で開環してラジカル化するので、硫黄を熱拡散させるときの加熱処理と比較して、硫黄ドープシリコン膜の形成材料になる硫黄変性ケイ素化合物を低温プロセスで製造することができる。また、高真空雰囲気での処理を行う必要性も低いので、硫黄変性ケイ素化合物を低エネルギー消費で得られるようになる。また、製造装置のコストを下げることもでき、硫黄変性ケイ素化合物が低コストで得られるようになる。
【0010】
環状硫黄の沸点は444.7℃程度であり、光重合性のケイ素化合物としては低沸点材料を選択可能である。すなわち、環状硫黄や光重合性のケイ素化合物を精製することが容易であり、環状硫黄や光重合性のケイ素化合物として高純度のものを入手することが容易であるので、結果として高純度の硫黄変成ケイ素化合物を製造することが容易になる。
【0011】
本発明の硫黄ドープシリコン膜の製造方法は、硫黄を不純物として含んだ硫黄ドープシリコン膜の製造方法であって、上記の本発明の硫黄変性ケイ素化合物の製造方法により硫黄変性ケイ素化合物を製造し、前記硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を不活性雰囲気で基板上に塗布した後に第2の加熱処理を行って、前記硫黄変性ケイ素化合物を分解するとともに前記硫黄変性ケイ素化合物に含まれるケイ素原子を他のケイ素原子または硫黄原子と結合させることを特徴とする。
【0012】
ポリマーである硫黄変性ケイ素化合物は、例えば300℃程度で分解し、分解した分解物が分解と再結合を繰り返すことにより、硫黄変性ケイ素化合物に含まれるケイ素原子が他のケイ素原子または硫黄原子と結合する。これにより、硫黄を不純物として含んだ硫黄ドープシリコン膜が得られる。例えば、CVD法やエピタキシャル成長法で形成したシリコン膜に硫黄を熱拡散させる手法と比較すると、高真空や高温での処理を行う必要性が低くなり、低エネルギー消費で硫黄ドープシリコン膜が得られるようになる。高温や高真空での処理を行う必要性が低いので、高コストの製造装置を用いる必要性が低くなり、低コストで硫黄ドープシリコン膜が得られるようになる。また、温度管理や圧力管理に要する手間や時間を省くことが可能になり、短時間で効率よく硫黄ドープシリコン膜を製造することが可能になる。
【0013】
本発明に係るシリコン膜の製造方法は、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
【0014】
前記光重合性のケイ素化合物は、一般式SinXaYbZc(ここで、nは3以上の整数を表し、Xは水素原子、Yはハロゲン原子、Zはアルキル基を表し、a、b,cの各々は0または正の整数を表し、a+b+c=mとしたときにmはnまたは2n−2または2nまたは2n+2の整数である)で表されるケイ素化合物であるとよい。
【0015】
前記第2の加熱処理の後に前記シリコン膜を結晶化する工程を有するとよい。
このようにすれば、キャリアの移動度を高めることができ、良好な特性の硫黄ドープシリコン膜を製造することができる。また、硫黄原子を活性化することができ、キャリアの移動に寄与しない硫黄原子を減らすことができる。
【0016】
前記硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を前記基板上に選択的に塗布するとよい。
このようにすれば、パターニングされたシリコン膜が直接的に得られるので、シリコン膜の製造後にフォトリソグラフィー法やエッチング技術によりシリコン膜をパターニングする必要性が低くなる。
【0017】
前記第1の加熱処理の処理温度は、160℃以上かつ前記ケイ素化合物の沸点と前記環状硫黄の沸点のうちで低い方の沸点よりも低いとよい。
このようにすれば、第1の加熱処理の過程におけるケイ素化合物の揮発や環状硫黄の揮発を抑制することができ、揮発による材料のロスを減らすことができる。
【0018】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、ケイ素化合物の側鎖と末端の少なくとも一方に硫黄が結合しているとよい。
【0019】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、ケイ素化合物の側鎖と末端の少なくとも一方が他のケイ素と硫黄で架橋されているとよい。
【0020】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、常温常圧で液体または固体であるとよい。
このようにすれば、硫黄変性ケイ素化合物の揮発による材料のロスを減らすことが容易になる。また、硫黄変性ケイ素化合物を含有する溶液を、良好な作業性で調製することができる。
【0021】
前記硫黄変性ケイ素化合物の分解温度が、該硫黄変性ケイ素化合物の沸点よりも低いとよい。
このようにすれば、第2の加熱処理の過程における硫黄変性ケイ素化合物の揮発を抑制することができ、揮発による材料のロスを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】硫黄変成ケイ素化合物の生成プロセスを示す図である。
【図2】(a)、(b)は硫黄ドープシリコン膜の製造方法を示す断面工程図である。
【図3】PIN型太陽電池の構成例を示す側断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、PIN型太陽電池の製造方法を示す断面工程図である。
【図5】薄膜トランジスターの構成例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、第1実施形態で、本発明の硫黄変成ケイ素化合物の製造方法の一実施形態を説明した後に、本発明の硫黄ドープシリコン膜の製造方法の一実施形態を説明する。次いで、本発明の硫黄ドープシリコン膜の製造方法を適用した半導体デバイスの製造方法に関して第2、第3実施形態を説明する。なお、本発明の技術範囲は下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。
【0024】
[第1実施形態]
本発明の硫黄変成ケイ素化合物の製造方法において用いられる光重合性のケイ素化合物は、紫外線照射によりラジカル化して、重合反応を起こすSi含有の化合物である。このケイ素化合物は、例えば一般式SinXaYbZc(ここで、nは3以上の整数を表し、Xは水素原子、Yはハロゲン原子、Zはアルキル基を表し、a、b,cの各々は0または正の整数を表し、a+b+c=mとしたときにmはnまたは2n−2または2nまたは2n+2の整数である)で表されるケイ素化合物(典型的には環状ポリシラン)である。
【0025】
特に、上記一般式SinXaYbZcのケイ素化合物として、nが5以上20以下であるものが好ましく、nが5又は6であるものがより好ましい。nが5より小さい場合、ケイ素化合物自体が環構造による歪みにより不安定となるため取り扱いが難しくなる。ケイ素化合物が常温常圧で固体であってこのケイ素化合物を溶媒に溶解する場合に、nが20より大きいケイ素化合物であると、ケイ素化合物の凝集力に起因して溶解性が低下し、実際に使用可能な溶媒の選択性が狭くなる。
【0026】
上記一般式のケイ素化合物の具体例としては、1個の環系を有するものとしてシクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロヘキサシラン、シクロヘプタシランが、2個の環系を有するものとして1、1’−ビスシクロブタシラン、1、1’−ビスシクロペンタシラン、1、1’−ビスシクロヘキサシラン、1、1’−ビスシクロヘプタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、1、1’−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1、1’−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1、1’−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2、2]ペンタシラン、スピロ[3、3]ヘプタタシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[4、6]ウンデカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ドデカシラン、スピロ[6、6]トリデカシランが挙げられる。
【0027】
また、多環系のものとして下記の化合物1〜化合物5の水素化ケイ素化合物を挙げることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
上記の水素化ケイ素化合物の他に、これらの骨格の水素原子を部分的にSiH基やハロゲン原子、アルキル基に置換したケイ素化合物を挙げることができる。これらは2種以上を混合して使用することもできる。これらの内、溶媒への溶解性の点で1、1’−ビスシクロペンタシラン、1、1’−ビスシクロヘキサシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ドデカシランおよびこれらの骨格にSiH基を有するケイ素化合物が特に好ましい。
【0030】
本実施形態では、光重合性のケイ素化合物としてシクロペンタシラン(以下、CPSという)を用いる。硫黄ドープシリコン膜の形成材料になる硫黄変成ケイ素化合物を製造するには、まず、CPSと環状硫黄とを混合した混合物を用意する。環状硫黄としては、200℃以下の加熱処理によりラジカル化するもの(ラジカル重合するものを含む)、ここではS硫黄を用いる。高濃度の不純物領域を構成する硫黄ドープシリコン膜を製造する場合に、CPSと環状硫黄の混合比としては、混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100000以上1/3となる混合比にする。また、低濃度の不純物領域を構成する硫黄ドープシリコン膜を製造する場合に、CPSと環状硫黄の混合比としては、混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100000以上1/10となる混合比にする。ここでは、混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100(1%)になるように混合比を設定する。
【0031】
上記の混合物を用意する工程、後述する光照射処理および第1の加熱処理を行う工程、その後の硫黄ドープシリコン膜を製造で第2の加熱処理を行う工程を不活性雰囲気で行う。不活性雰囲気は、例えば酸素ガス濃度が1ppm未満、かつ水蒸気濃度が1ppm未満の窒素雰囲気である。
【0032】
上記の容器としては、後に第1の加熱処理や光照射処理を行うことを考慮して、耐熱性、耐光性、および耐薬性を有するもの、例えば石英ガラス製やステンレス製の容器を選択する。
【0033】
ケイ素化合物が常温常圧で固体である場合等には、必要に応じてケイ素化合物を溶媒に溶解して溶液を調製し、この溶液を環状硫黄と混合して混合物を用意するとよい。このような溶媒としては、ケイ素化合物および環状硫黄を溶解し、ケイ素化合物および環状硫黄と反応しないものであれば特に限定されない。溶媒の具体例として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワランなどの炭化水素系溶媒の他、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、クロロホルムなどの極性溶媒を挙げることができる。
【0034】
上記の溶媒のうちで、ケイ素化合物の溶解性を高める観点や溶液の安定性を高める観点では、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒を用いるとよい。特に炭化水素系溶媒は、ケイ素化合物の溶解性を高める観点で有利である。ケイ素化合物を効率的にラジカル化させる観点で、光照射処理で照射する光の吸収率がケイ素化合物よりも低い溶媒を選択するとよい。上記の溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、溶液に、n−ペンタシラン、n−ヘキサシラン、n−ヘプタシランなどのケイ素化合物が含まれていていてもよい。
【0035】
次いで、ケイ素化合物と環状硫黄の混合物に、光照射処理を行ってケイ素化合物をラジカル化するとともに第1の加熱処理を行って環状硫黄をラジカル化し、ラジカル化したケイ素化合物をラジカル化した硫黄と結合させる。
【0036】
第1の加熱処理では、環状硫黄を効率的にラジカル化する観点で、処理温度を160℃以上200℃以下に設定する。処理温度を、第1の加熱処理を行う圧力条件下でのケイ素化合物の沸点と環状硫黄の沸点のうちで低い方の沸点よりも低い温度に設定すると、ケイ素化合物の揮発や環状硫黄の揮発による材料のロスを減らすことができ、材料コストを下げることができる。
【0037】
光照射処理では、ケイ素化合物を効率的にラジカル化する観点で、波長が180nm以上400nm以下の紫外線を混合物に照射する。
【0038】
ここでは、容器内の混合物(溶液)をマグネティックスターラー等で攪拌しつつ、容器の温度を160℃程度に保持するとともに、波長が400nmの紫外線を10mW/cmのパワーで60分間照射する。図1に示すように、ラジカル化したケイ素化合物がラジカル化した硫黄と結合して硫黄変成ケイ素化合物が得られる。
【0039】
硫黄変性ケイ素化合物が常温常圧で液体または固体であれば、硫黄変性ケイ素化合物の揮発による材料のロスを減らすことが容易になる。また、硫黄ドープシリコン膜を製造する過程で、硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を良好な作業性で調製することができる。
【0040】
得られた硫化変成ケイ素化合物は、例えば下記の式(1)〜式(5)に示す構造を有している。式(1)〜(5)中のA〜Eは、それぞれ1以上の整数を表す。
式(1)に示す構造では、ケイ素化合物の末端が硫黄で終端されている。
式(2)に示す構造では、ケイ素化合物の末端が他のケイ素化合物の末端と硫黄で架橋されている。
式(3)に示す構造では、ケイ素化合物の側鎖が他のケイ素化合物の側鎖と硫黄で架橋されている。
式(4)に示す構造では、ケイ素化合物の側鎖が他のケイ素化合物の末端と硫黄で架橋されている。
式(5)に示す構造では、ケイ素化合物の側鎖が硫黄で修飾されている。
【0041】
【化2】

【0042】
次に、図2(a)、図2(b)を参照しつつ本発明に係る硫黄ドープシリコン膜の製造方法の一実施形態について説明する。図2(a)、図2(b)は、硫黄ドープシリコン膜の製造方法を概略して示す断面工程図である。
【0043】
硫黄ドープシリコン膜の製造を製造するには、まず、上記のようにして得られた硫黄変成ケイ素化合物を溶媒に溶解させ、硫黄変成ケイ素化合物を含有した溶液を調製する。溶液の調製に先立ち、硫黄変成ケイ素化合物から低分子量成分や未反応反応を昇華精製等により分離して、硫黄変成ケイ素化合物の純度を高めてもよい。
【0044】
溶媒としては、上述したケイ素化合物を溶解させるもの例えば炭化水素化合物と、上記の一般式SinXaYbZcで表されるケイ素化合物とから選択される1種または2種以上の混合物を用いることができる。ここでは、トルエンを溶媒として硫黄変成ケイ素化合物を溶解させ、硫黄変成ケイ素化合物の濃度が10wt%の溶液を調製する。
【0045】
次いで、図2(a)に示すように、硫黄変成ケイ素化合物を含有する溶液を不活性雰囲気で基板100に塗布して、塗布膜101aを形成する。基板100については、第2の加熱処理に耐えうる耐熱性、および硫黄ドープシリコン膜の製造に用いる溶液などの各種形成材料に対する耐薬品性を有するものであれば、特に限定はしない。
【0046】
溶液を塗布する方法については、特に限定はなく、上述した公知の塗布法を適宜洗濯して用いることができる。本実施形態では、混合溶液を窒素雰囲気でスピンコート法により塗布して、塗布膜103aを形成する。
【0047】
次いで、上記の不活性雰囲気で第2の加熱処理を行って、塗布膜101aに含まれる溶媒を揮発させ、また硫黄変性ケイ素化合物を分解するとともに硫黄変性ケイ素化合物に含まれるケイ素原子を他のケイ素原子または硫黄原子と結合させる。これにより、図2(b)に示すように、硫黄ドープシリコン膜101が得られる。
【0048】
第2の加熱処理では、処理温度を硫黄変性ケイ素化合物の分解温度(ここでは250℃程度)以上に設定する。硫黄変性ケイ素化合物の分解温度が、第2の加熱処理を行う圧力条件下での硫黄変性ケイ素化合物の沸点よりも低くなるようにすれば、第2の加熱処理の過程で硫黄変性ケイ素化合物の揮発による材料のロスを減らすことができ、材料コストを下げることができる。
【0049】
硫黄変性ケイ素化合物の沸点については、例えば、分解温度未満の減圧雰囲気で飽和蒸気圧曲線を求めること等により評価可能である。第2の加熱処理の過程での硫化変性ケイ素化合物の揮発を減らすには、例えば、硫黄変性ケイ素化合物を製造するときに平均重合度を高めることや、硫黄変性ケイ素化合物の製造過程または製造後に添加剤を加えること、第2の加熱処理を行う圧力条件を上記の飽和蒸気圧曲線に基づいて設定すること等が有効である。
【0050】
本実施形態では、上記の不活性雰囲気、350℃の処理温度で、塗布膜を60分間加熱して第2の加熱処理を行う。すると、硫黄変性ケイ素化合物の分解と分解物の再結合が繰り返し生じて、水素が硫黄変性ケイ素化合物から除去されつつ、ケイ素原子が他のケイ素原子または硫黄原子と結合する。これにより、硫黄を不純物として含んだ非晶質のシリコン膜(硫黄ドープシリコン膜)が得られる。
【0051】
本実施形態では、第2の加熱処理を行った後に、硫黄ドープシリコン膜に含まれる硫黄原子を活性化する。硫黄原子を活性化するには、低温ポリシリコン技術を適用することができる。例えば、25ナノ秒の間隔でエキシマレーザー(波長308nm)をパルス発振させ、エキシマレーザーで硫黄ドープシリコン膜を走査する。すると、ケイ素原子と硫黄原子とが再配列して結合し、硫黄原子が活性化される。エキシマレーザーは、アモルファスシリコンに効率よく吸収されるために、その下地を過熱してダメージを与えるおそれが少ない。
【0052】
以上のような本実施形態の硫黄変性ケイ素化合物の製造方法にあっては、環状硫黄および光重合性のケイ素化合物を出発材料として、硫黄変性ケイ素化合物を製造している。環状硫黄が160℃程度の温度でラジカル化するとともに、ケイ素化合物は光照射によりラジカル化し、ラジカル化した硫黄とラジカル化したケイ素化合物とを結合させるので、低温プロセスで硫黄ドープシリコン膜の形成材料になる硫黄変性ケイ素化合物を製造することができる。また、高真空での処理を行う必要性も低くなるので、硫黄変性ケイ素化合物を低エネルギー消費で得られるようになる。
【0053】
また、高真空雰囲気での処理を行う必要性が低いので、低コストの製造装置により硫黄変性ケイ素化合物を製造することができる。高真空雰囲気や高温での処理を行う必要性が低いので、圧力管理や温度管理に要する時間や手間を省くことができ、硫黄変性ケイ素化合物を効率よく製造することができる。環状硫黄および環状ポリシランは、一般的に低沸点材料であり高純度なものを入手することが容易であるので、高純度の硫黄変性ケイ素化合物を得ることが容易である。S硫黄は、天然に豊富に存在するものであるので、コスト面でも有利である。
【0054】
第1の加熱処理の処理温度を160℃以上200℃以下にしているので、第1の加熱処理の過程におけるケイ素化合物の揮発や環状硫黄の揮発を抑制することができ、揮発による材料のロスを減らすことができる。
【0055】
本実施形態の硫黄ドープシリコン膜の製造方法にあっては、上述のようにして製造された硫黄変性ケイ素化合物(ポリマー)に不活性雰囲気で第2の加熱処理を行って、硫黄変成ケイ素化合物を分解するとともにケイ素原子と硫黄原子とを結合させて、硫黄ドープシリコン膜を製造している。硫黄変性ケイ素化合物は、例えば250℃〜300℃程度で分解するので、硫黄を熱拡散させる手法と比較して、低温プロセスで硫黄ドープシリコン膜を製造することができる。また、例えばCVD法でシリコン膜を成膜する手法と比較して、高真空での処理を行う必要性も低くなるので、硫黄ドープシリコン膜が低エネルギー消費で得られるようになる。
【0056】
高真空雰囲気や高温での処理を行う必要性が低いので、圧力管理や温度管理に要する時間や手間を省くことができ、硫黄変性ケイ素化合物を効率よく製造することができる。上述のように、高純度の硫黄変成ケイ素化合物を用いて硫黄ドープシリコン膜を製造することができ、不測の不純物の混入を回避することもできる。硫黄変性ケイ素化合物の分解温度が、硫黄変性ケイ素化合物の沸点よりも低いので、第2の加熱処理の過程における硫黄変性ケイ素化合物の揮発を抑制することができ、揮発による材料のロスを減らすことができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の硫黄ドープシリコン膜の製造方法を適用したPIN型太陽電池の製造方法を説明する。
【0058】
図3は、製造されるPIN型太陽電池の構成例を示す側断面図、図4(a)〜(d)はPIN型太陽電池の製造方法を概略して示す断面工程図である。
【0059】
図3に示すPIN型太陽電池2は、基板200、下部電極201、P型の半導体層202、I型の半導体層203、N型の半導体層204、および上部電極205を備えている。PIN型太陽電池2は、基板200側から入射した光により半導体層202〜204にキャリアを生じるようになっている。キャリアの移動による起電力が、下部電極201および上部電極205から取出される。
【0060】
基板200は、例えばガラス等の透明基板により構成される。下部電極201は、基板200の上に設けられており、ITO等の透明導電材料からなる。P型の半導体層202は、下部電極201の上に設けられており、ホウ素を不純物として含んだホウ素ドープシリコン膜により構成されている。I型の半導体層203は、P型の半導体層202の上に設けられており、真性半導体のシリコン膜により構成されている。N型の半導体層204は、I型の半導体層203の上に設けられており、硫黄を不純物として含んだ硫黄ドープシリコン膜により構成されている。上部電極205は、N型の半導体層204の上に設けられており、アルミニウム等の反射電極材料からなる。
【0061】
PIN型太陽電池2を製造するには、まず、図4(a)に示すように基板200の上に例えばスパッタ法でITOを成膜して、下部電極201を形成する。
【0062】
次いで、図4(b)に示すように下部電極201の上にP型の半導体層202を形成する。本実施形態では、まず、P型の半導体層202の形成材料を用意する。具体的には、シクロヘキサシラン10gをデカン100mlに溶解させ、この溶液に紫外線光を100mW/cmのパワーで3分照射した後に、この溶液にデカボラン1gを溶解させる。これにより、P型の半導体層202の形成材料として、ホウ素を含んだケイ素化合物の溶液が得られる。そして、この溶液を下部電極201の上に塗布し、この塗布膜を300℃で焼成してP型のアモルファスシリコン膜(P型の半導体層202)を形成する。P型のアモルファスシリコン膜の厚みは、例えば10nm以上100nm以下(ここでは30nm程度)とする。
【0063】
次いで、図4(c)に示すようにP型の半導体層202の上にI型の半導体層203を形成する。具体的には、P型の半導体層202の上に、水素化ポリシランを有機溶媒に溶解した溶液を塗布する。水素化ポリシランは、ドープしていないシクロペンタシランに紫外線を照射してラジカル重合させることにより得られる。そして、塗布膜を300℃で焼成してI型のアモルファスシリコン膜(I型の半導体層203)を形成する。I型のアモルファスシリコン膜の厚みは、200nm以上1μm以下(ここでは500nm程度)とする。
【0064】
次いで、図4(d)に示すようにI型の半導体層203の上にN型の半導体層204を形成する。具体的には、I型の半導体層203の上に、第1実施形態で説明した硫黄変性ケイ素化合物を有機溶媒に溶解した溶液を塗布して、塗布膜を300℃で焼成してN型のアモルファスシリコン膜(型の半導体層204)を形成する。N型のアモルファスシリコン膜の厚みは、例えば10nm以上100nm以下(ここでは30nm程度)とする。
【0065】
次いで、N型の半導体層204の上に、例えばスパッタ法によりアルミニウムを成膜することにより、図3に示した上部電極205を形成する。これにより、図3に示したPIN型太陽電池2が得られる。
【0066】
以上のようなPIN型太陽電池2の製造方法にあっては、半導体層202〜204をいずれも低温プロセスで形成することができ、しかも高真空での処理を行う必要がないので、低エネルギー消費でPIN型太陽電池2を製造することができる。高温や高真空での処理を行う必要性が低いので、PIN型太陽電池2を短時間で効率よく低コストで製造することが可能になる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、図5を参照しつつ、本発明の硫黄ドープシリコン膜の製造方法を適用した薄膜トランジスター3の製造方法を説明する。図5は、製造される薄膜トランジスター3の構成例を示す側断面図である。
【0068】
図5に示す薄膜トランジスター3は、基板300、シリコン膜301、ゲート絶縁膜302、ゲート電極303、層間絶縁膜304、コンタクトホール305a、305b、ドープシリコン膜306a、306b、ソース電極307a、およびドレイン電極307bを備えている。
【0069】
基板300は、例えばガラス基板等の絶縁性の基板である。シリコン膜301は、チャネル領域に相当する部分であり、基板300の上に島状に設けられている。ゲート絶縁膜302は、基板300およびシリコン膜301を覆うように設けられている。ゲート絶縁膜302は、例えばシリコン酸化物等の絶縁材料からなる。ゲート電極303は、ゲート絶縁膜302の上に設けられており、シリコン膜301と少なくとも一部が重なるように配置されている。ゲート電極303は、高濃度に不純物を含むシリコン膜や電極材料、導電性樹脂等の導電材料からなる。
【0070】
層間絶縁膜304は、ゲート絶縁膜302およびゲート電極303を覆うように設けられている。層間絶縁膜304は、シリコン酸化物等の絶縁材料からなる。コンタクトホール305a、305bは、ゲート絶縁膜302および層間絶縁膜304を貫通して、シリコン膜301に通じている。コンタクトホール305a、305bは、ゲート電極303を挟むように配置されている。
【0071】
第1のドープシリコン膜306aは、第1のコンタクトホール305aの内部に設けられており、シリコン膜301と接触している。第2のドープシリコン膜306bは、第2のコンタクトホール305bの内部に設けられており、シリコン膜301と接触している。ドープシリコン膜306a、306bは、ゲート電極303と重なる部分のシリコン膜301を挟むように配置されている。ドープシリコン膜306a、306bの少なくとも一方は、本発明を適用した硫黄ドープシリコン膜により構成されている。
【0072】
ソース電極307aは、第1のコンタクトホール305aの内部に設けられており、第1のドープシリコン膜306aと接触している。ドレイン電極307bは、第2のコンタクトホール305bの内部に設けられており、第2のドープシリコン膜306bと接触している。ソース電極307aおよびドレイン電極307bは、上記の導電材料からなる。
【0073】
以上のような構成の薄膜トランジスター3は、ゲート電極303に電圧が印加されるとオンになり、第1のドープシリコン膜306a側から第2のドープシリコン膜306b側に向かって、チャネル領域であるシリコン膜301に電流を流すことが可能になる。このように、ソース電極307aからドレイン電極307aへ流れる電流のオンオフをスイッチングすることが可能になっている。
【0074】
薄膜トランジスター3を製造するには、まず、水素化ポリシランを含んだ溶液を基板300の上に塗布する。例えば、インクジェット法等によって基板300の上に選択的に塗布することにより、所望の領域に溶液を塗布することができ、フォトリソグラフィー法およびエッチング技術によるパターニングを省くことが可能になる。
【0075】
次いで、塗布膜を300℃で30分間加熱(焼成)し、真性半導体であるシリコン膜301を形成する。シリコン膜301は、アモルファスシリコン膜でもよいが、結晶化させた多結晶シリコン膜であってもよい。アモルファスシリコン膜を結晶化するには、エキシマレーザー光を照射するか、もしくは700℃以上で加熱すればよい。ここでは、25ナノ秒の間隔でエキシマレーザー(波長308nm)をパルス発振させ、エキシマレーザーでシリコン膜301を走査する。すると、ケイ素原子が再配列して多結晶シリコン膜が得られる。エキシマレーザーは、アモルファスシリコンに効率よく吸収されるために、その下地を過熱してダメージを与えるおそれが少ない。
【0076】
次いで、硫黄変性シラン化合物を含んだ溶液をシリコン膜301上の両端に塗布する。上記のように、溶液をインクジェット法等により塗布すると、所望の領域に塗布することができる。そして、塗布膜を300℃で30分間加熱(焼成)して、ドープシリコン膜306a、306bを形成する。また、ドープシリコン膜306a、306b、シリコン膜301と同様に結晶化する処理を行って、ドープシリコン膜306a、306bに含まれる硫黄原子を活性化する。
【0077】
次いで、シリコン膜301およびドープシリコン膜306a、306bを覆うように、基板300上に平面ベタ状のゲート絶縁膜302を形成する。そして、ゲート絶縁膜302上にてシリコン膜301と重なるように、例えばタンタルなどの導電性膜を成膜し、この膜をパターニングすることによりゲート電極303を形成する。そして、ゲート電極303を覆うように層間絶縁膜304を形成した後に、層間絶縁膜304の一部を除去してコンタクトホール305a、305bを形成する。そして、コンタクトホール305a、305bの内部および周辺部にわたって、例えばアルミニウムなどの導電材料によりソース電極307aおよびドレイン電極307bを形成する。
【0078】
ゲート絶縁膜302や層間絶縁膜305については、CVD法やスパッタ法等の気相法で形成してもよいし、液体ガラス等を形成材料に用いて液相法で形成してもよい。ゲート電極303やソース電極307a、ドレイン電極307bについては、CVD法やスパッタ法等で形成した膜をフォトリソグラフィー法およびエッチング技術によりパターニングして形成してもよいし、液状の導電材料をインクジェット法等により選択的に塗布してパターニングされたものを直接的に形成してもよい。このように、薄膜トランジスター3をほぼ液相法のみで製造することも可能である。
【0079】
ところで、硫黄ドープシリコン膜中での硫黄の拡散係数は、ケイ素の拡散係数よりも小さいことが知られている。したがって、製造された硫黄ドープシリコン膜から他の部材へ硫黄が拡散することが回避され、ドーパントの量の変化により硫黄ドープシリコン膜の導電率等の特性が変化することや、他の部材に硫黄が入り込むことにより他の部材の特性が変化することが回避される。例えば、ドープシリコン膜306a、306bのドーパントの量が減ることによる高抵抗化や、シリコン膜301への硫黄の拡散によりシリコン膜301の閾電圧の変化や漏れ電流の増加等が回避される。ドープシリコン膜306a、306bを製造した後に、硫黄の熱拡散等の影響が小さいので、ドープシリコン膜306a、306bよりも後の形成プロセスに許容される温度範囲が広くなる。すなわち、ドープシリコン膜306a、306bよりも後に形成する構成要素の形成プロセスの選択自由度が高くなる。
【符号の説明】
【0080】
100・・・基板、101a・・・塗布膜、101・・・硫黄ドープシリコン膜、
200・・・基板、201・・・下部電極、202・・・P型の半導体層、
203・・・I型の半導体層、204・・・N型の半導体層(硫黄ドープシリコン膜)、
205・・・上部電極、300・・・基板、301・・・シリコン膜、
302・・・ゲート絶縁膜、303・・・ゲート電極、304・・・層間絶縁膜、
305a、305b・・・コンタクトホール、
306a、306b・・・ドープシリコン膜(硫黄ドープシリコン膜)、
307a・・・ソース電極、307b・・・ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄とケイ素の結合を有する硫黄変成ケイ素化合物の製造方法であって、
光重合性のケイ素化合物と環状硫黄を混合した混合物を用意する工程と、
前記混合物に光照射処理を行って前記ケイ素化合物をラジカル化するとともに第1の加熱処理を行って前記環状硫黄をラジカル化し、ラジカル化した前記ケイ素化合物を、ラジカル化した硫黄と結合させる工程と、
を有し、
前記混合物の前記環状硫黄と前記ケイ素化合物の混合比は、該混合物に含まれる硫黄原子の数がケイ素原子の数に対して1/100000以上1/3以下となる混合比にすることを特徴とする硫黄変性ケイ素化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の硫黄変性ケイ素化合物の製造方法により硫黄変性ケイ素化合物を製造し、前記硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を不活性雰囲気で基板上に塗布した後に第2の加熱処理を行って、前記硫黄変性ケイ素化合物を分解するとともに前記硫黄変性ケイ素化合物に含まれるケイ素原子を他のケイ素原子または硫黄原子と結合させることを特徴とする硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項3】
前記光重合性のケイ素化合物は、一般式SinXaYbZc(ここで、nは3以上の整数を表し、Xは水素原子、Yはハロゲン原子、Zはアルキル基を表し、a、b,cの各々は0または正の整数を表し、a+b+c=mとしたときにmはnまたは2n−2または2nまたは2n+2の整数である)で表されるケイ素化合物であることを特徴とする請求項2に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項4】
前記第2の加熱処理の後に前記シリコン膜を結晶化する工程を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項5】
前記硫黄変性ケイ素化合物を含んだ溶液を前記基板上に選択的に塗布することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項6】
前記第1の加熱処理の処理温度は、160℃以上かつ前記ケイ素化合物の沸点と前記環状硫黄の沸点のうちで低い方の沸点よりも低いことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項7】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、ケイ素化合物の側鎖と末端の少なくとも一方に硫黄が結合していることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項8】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、ケイ素化合物の側鎖と末端の少なくとも一方が他のケイ素と硫黄で架橋されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項9】
前記硫黄変性ケイ素化合物は、常温常圧で液体または固体であることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄変性ケイ素化合物の分解温度が、該硫黄変性ケイ素化合物の沸点よりも低いことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の硫黄ドープシリコン膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162360(P2011−162360A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23468(P2010−23468)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】