説明

窒化物半導体装置及びその製造方法

【課題】窒化物半導体層上の層間絶縁膜の開口部が、電界の集中が緩和される形状に安定して精度良く形成された窒化物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体層30と、窒化物半導体層30上に配置された第1の絶縁膜41と、第1の絶縁膜41上に配置された第2の絶縁膜42と、窒化物半導体層30上に互いに離間して配置された第1及び第2の主電極51,52と、第1及び第2の主電極51,52間で第2の絶縁膜42上に配置され、第1及び第2の絶縁膜に設けられた開口部を介して窒化物半導体層に接続するフィールドプレート60とを備える窒化物半導体装置であって、開口部において、窒化物半導体層30の表面と第1の絶縁膜41の側面とのなす第1の傾斜角が、窒化物半導体層30の表面と第2の絶縁膜42の側面を延長した線とのなす第2の傾斜角よりも小さく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体層に接するフィールドプレートを有する窒化物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AlGaN/GaNヘテロ接合を有する横型電界効果トランジスタ(FET)などにおいて、オフ動作時に高電圧がソース電極とドレイン電極間に印加された場合、ゲート電極のドレイン電極側の端部(以下において、「ドレイン側端部」という。)に強い電界が発生する。この電界に依存してドレイン電極からゲート電極に電流が流れるため、オフ動作時における漏れ電流量を抑制するために、ゲート電極のドレイン側端部における電界を緩和することが求められている。
【0003】
例えば、ゲート電極とドレイン電極間で層間絶縁膜上にフィールドプレートを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体層上に電極を形成する場合、窒化物半導体層上に形成された絶縁膜である保護膜をエッチングして開口部を形成する。そして、この開口部において電極が窒化物半導体層に接するように保護膜上に電極を形成する。保護膜の開口部を形成する際には、窒化物半導体層が受けるダメージを回避するために、「ウェットエッチング」プロセス又は「ドライエッチング+ウェットエッチング」プロセスが採用されている。
【0006】
このとき、ウェットエッチングのプロセス精度や層間絶縁膜とフォトレジスト膜との密着性に依存して、層間絶縁膜の開口部の形状が変化する。この形状の変化が漏れ電流特性に影響する。このため、窒化物半導体装置の安定した特性を得るために、層間絶縁膜の開口部の形状を高い精度で形成することが求められている。
【0007】
上記要求に応えるために、本発明は、窒化物半導体層上の層間絶縁膜の開口部が、電界の集中が緩和される形状に安定して精度良く形成された窒化物半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、窒化物半導体層と、窒化物半導体層上に配置された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に配置された第2の絶縁膜と、窒化物半導体層上に互いに離間して配置された第1及び第2の主電極と、第1及び第2の主電極間で第2の絶縁膜上に配置され、第1及び第2の絶縁膜に設けられた開口部を介して窒化物半導体層に接続するフィールドプレートとを備え、開口部において、窒化物半導体層の表面と第1の絶縁膜の側面とのなす第1の傾斜角が、窒化物半導体層の表面と第2の絶縁膜の側面を延長した線とのなす第2の傾斜角よりも小さい窒化物半導体装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、主面上に第1及び第2の主電極を有する窒化物半導体装置の製造方法であって、窒化物半導体層上に第1の絶縁膜を形成するステップと、第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、窒化物半導体層の表面の一部が露出するまで第1及び第2の絶縁膜の一部をそれぞれ選択的にエッチング除去して、窒化物半導体層の表面と第1の絶縁膜の側面とのなす角が窒化物半導体層の表面と第2の絶縁膜の側面を延長した線とのなす角よりも小さいように開口部を形成するステップと、第1及び第2の主電極間で第2の絶縁膜上にフィールドプレートを形成し、開口部を介して窒化物半導体層とフィールドプレートとを接続させるステップとを含む窒化物半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窒化物半導体層上の層間絶縁膜の開口部が、電界の集中が緩和される形状に安定して精度良く形成された窒化物半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】窒化物半導体装置のデバイスシミュレーションモデルの構造を示す模式図である。
【図3】窒化物半導体装置のゲートリーク電流特性を示すグラフであり、図3(a)はデバイスシミュレーション結果、図3(b)は作製したデバイスの測定結果である。
【図4】ゲート電極端部の電界分布を示す模式図であり、図4(a)はデバイスモデルAの電界分布、図4(b)はデバイスモデルBの電界分布、図4(c)は窒化物半導体層内部のチャネル方向の電界分布である。
【図5】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図6】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図7】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図8】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図9】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図10】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図11】比較例の窒化物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図であり、図11(a)はドライエッチング後の層間絶縁膜の形状、図11(b)はウェットエッチング後の層間絶縁膜の形状を示す。
【図12】本発明の実施形態の第1の変形例に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の実施形態の第2の変形例に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置1は、図1に示すように、窒化物半導体層30と、窒化物半導体層30上に配置された第1の絶縁膜41と、第1の絶縁膜41上に配置された第2の絶縁膜42と、窒化物半導体層30上に互いに離間して配置された第1の主電極51及び第2の主電極52と、第1の主電極51と第2の主電極52間で第2の絶縁膜42上に配置されたフィールドプレート60とを備える。
【0015】
図1は、窒化物半導体装置1が高電子移動度トランジスタ(HEMT)である場合を例示的に示している。即ち、基板10上にバッファ層20が配置され、バッファ層20上に窒化物半導体層30が配置されている。そして、第1の主電極51と第2の主電極52間の窒化物半導体層30上に制御電極53が配置されている。制御電極53と連結してフィールドプレート60が制御電極53と第2の主電極52間に配置されている。
【0016】
フィールドプレート60は、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とが積層された層間絶縁膜40に設けられた開口部400を介して窒化物半導体層30に接続する。具体的には、フィールドプレート60が端部に連結した制御電極53が、開口部400を埋め込むようにして窒化物半導体層30上に配置されている。なお、第1の主電極51及び第2の主電極52も、層間絶縁膜40に形成された開口部において、窒化物半導体層30と接している。
【0017】
図1に示すように、開口部400はテーパ形状に形成されている。より詳細には、開口部400は、窒化物半導体層30の表面300と第1の絶縁膜41の側面410とのなす第1の傾斜角θ1が、窒化物半導体層30の表面300と第2の絶縁膜42の側面420を延長した線Lとのなす第2の傾斜角θ2よりも小さいように形成されている。したがって、窒化物半導体層30の表面300と垂直な切断面において、第1の絶縁膜41の開口部及び第2の絶縁膜42の開口部は、上底が下底より広い台形形状をなしている。
【0018】
第1の主電極51がソース電極、第2の主電極52がドレイン電極、制御電極53がゲート電極として使用される場合に、フィールドプレート60により、ゲート電極のドレイン側端部の空乏層の曲率が制御されて、ゲート電極のドレイン側端部に集中する電界の集中が緩和される。このため、窒化物半導体装置1では、窒化物半導体装置1のオフ動作時にドレイン電極からゲート電極に流れる漏れ電流(以下において、「ゲートリーク電流」という。)が抑制される。
【0019】
更に、窒化物半導体層30と接するフィールドプレート60の底面に接続する側面に図1に示すように傾斜をつけることにより、電界を緩和することができる。2次元デバイスシミュレーションによって、フィールドプレート60の底部に傾斜をつけることによる電界緩和を検証した例を以下に説明する。
【0020】
2次元デバイスシミュレーションに用いたデバイスモデルの構造を図2に示す。窒化物半導体層30Mとして、ノンドープのGaN層31M上に、Al組成0.26で膜厚が25nmのAlGaN層32Mを配置した積層体を用いた。窒化物半導体層30M上に、ソース電極51M、ドレイン電極52M、ゲート電極53Mが配置されている。ゲート電極長は2μm、ゲート電極53Mとドレイン電極52M間は12μmとした。窒化物半導体層30M上の層間絶縁膜40Mは、膜厚が500nmの酸化シリコン(SiOx)膜である。図2に示したように、ゲート電極53Mに接続されたフィールドプレート60Mをドレイン電極側に配置し、開口部400Mにおいて層間絶縁膜40Mの側面に傾斜を設けた。なお、実際のデバイス作製可能範囲を考慮して、傾斜角θが異なる2種類のデバイスモデルA、Bを設定した。デバイスモデルAの傾斜角θは、デバイスモデルBの傾斜角θよりも大きいとする。
【0021】
図3(a)、図3(b)にオフ動作時のゲートリーク電流特性を示す。横軸はドレイン−ソース間電圧Vdsであり、縦軸はゲートリーク電流Igである。ゲート−ソース間電圧Vgsは−6Vである。図3(a)はシミュレーション結果であり、図3(b)は実際に作製したデバイスの測定結果である。図3(a)、図3(b)において、特性AがデバイスモデルAの特性であり、特性BがデバイスモデルBの特性である。図3(a)に示すように、傾斜角θの小さいデバイスモデルBの方が、デバイスモデルAよりもゲートリーク電流Igが抑制されている。図3(b)に示すように、実際のデバイスでも同様の傾向が見られる。
【0022】
図4(a)〜図4(b)に、ドレイン電圧200Vにおけるゲート電極53M端部の電界分布を示す。図4(a)はデバイスモデルAの電界分布、図4(b)はデバイスモデルBの電界分布である。また、図4(c)に、AlGaN層32Mの表面から深さ5μmにおけるチャネル方向の電界分布を示す。特性AがデバイスモデルAの特性であり、特性BがデバイスモデルBの特性である。図4(a)〜図4(c)の横軸は窒化物半導体層30M上の層間絶縁膜40Mの端部からの距離dであり、図4(c)の縦軸は電界の大きさである。図4(a)〜図4(c)に示すように、デバイスモデルBの方がデバイスモデルAよりもゲート電極53M端部における電界が緩和されている。
【0023】
上記のように、電界の集中を緩和してゲートリーク電流を抑制するためには、層間絶縁膜40Mに形成される開口部400Mの底面端部に傾斜角θを設けることが有効であり、更に、傾斜角θが小さいほど電界緩和の効果が大きいことが確認された。しかしながら、傾斜角θを小さくした場合、開口部400Mの面積が非常に大きくなるという問題がある。
【0024】
特に、層間絶縁膜の膜厚が厚くなるほど、層間絶縁膜の上面における開口部の面積が増大し、窒化物半導体装置の面積が増大する問題がある。一方、以下の理由によって、層間絶縁膜の膜厚を厚くすることが望まれている。
【0025】
半導体製造工程でのプロセスマージンを取るために、層間絶縁膜上面における開口部の面積よりも広い面積で各電極が形成される。このため、各電極と窒化物半導体層とが層間絶縁膜を挟んで対向する領域(以下において、「フランジ部」という。)が形成される。このフランジ部はフィールドプレートとしての機能を有する。このとき、ドレイン電極と電気的に接続するフィールドプレートが、電流コラプス現象を悪化させることが知られている。このため、ドレイン電極におけるフランジ部のフィールドプレートとしての機能を低下させるために、層間絶縁膜の膜厚を厚くする必要がある。しかしながら、電流コラプス現象を悪化させないために層間絶縁膜の膜厚を厚くした場合には、電界緩和のために層間絶縁膜の側面の傾斜角を小さくすると、窒化物半導体装置の面積が大きくなってしまう。
【0026】
これに対し、図1に示した窒化物半導体装置1では、窒化物半導体層30上に配置される層間絶縁膜40を第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42との2層構造とし、且つ、窒化物半導体層30の表面300と第2の絶縁膜42の側面420を延長した線Lとのなす第2の傾斜角θ2が、窒化物半導体層30の表面300と第1の絶縁膜41の側面410とのなす第1の傾斜角θ1よりも大きいように開口部400が形成されている。
【0027】
このため、窒化物半導体装置1では、第1の傾斜角θ1をできるだけ小さくすることで電界の集中を緩和する効果を大きくし、且つ、第2の傾斜角θ2を第1の傾斜角θ1よりも大きくすることで、開口部400の面積の増大を抑制できる。電界集中を緩和するために、第1の傾斜角θ1は、例えば45°以下であることが好ましく、より好ましくは10°〜15°である。第2の傾斜角θ2は、窒化物半導体装置1の面積増大を抑制するためには急峻であることが好ましい。例えば、開口部400の所望の面積、層間絶縁膜40の所望の膜厚などに応じて、第2の傾斜角θ2は決定される。
【0028】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置1では、電界の緩和に有効な、側面が緩やかな傾斜を有する開口部400を介して、フィールドプレート60が窒化物半導体層30に接している。更に、開口部400の側面の傾斜を、緩やかな第1の傾斜角θ1を有する第1の絶縁膜41の側面と、第1の傾斜角θ1よりも大きな第2の傾斜角θ2を有する第2の絶縁膜42の側面とによって構成する。これにより、窒化物半導体装置1によれば、開口部400の面積を増大させることなく、電界が緩和されて、ゲートリーク電流が抑制される。
【0029】
なお、HEMTである窒化物半導体装置1の窒化物半導体層30は、図1に示したように、キャリア供給層32、及びキャリア供給層32とヘテロ接合を形成するキャリア走行層31を積層した構造である。
【0030】
バッファ層20上に配置されたキャリア走行層31は、例えば不純物が添加されていないノンドープGaNを、有機金属気相成長(MOCVD)法等によりエピタキシャル成長させて形成する。ノンドープとは、不純物が意図的に添加されていないことを意味する。
【0031】
キャリア走行層31上に配置されたキャリア供給層32は、キャリア走行層31よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層31より格子定数の小さい窒化物半導体からなる。キャリア供給層32としてノンドープのAlxGa1-xNが採用可能である。
【0032】
キャリア供給層32は、MOCVD法等によるエピタキシャル成長によってキャリア走行層31上に形成される。キャリア供給層32とキャリア走行層31は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層32の結晶が有する自発分極により、ヘテロ接合付近のキャリア走行層31に高密度のキャリアが生じ、電流通路(チャネル)としての二次元キャリアガス層33が形成される。
【0033】
以下に、図5〜図10を用いて、本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法を説明する。ここでは、図1に示した窒化物半導体装置1について例示的に製造方法を述べる。なお、以下に述べる窒化物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0034】
(イ)図5に示すように、基板10上にバッファ層20を形成する。更に、バッファ層20上に、キャリア走行層31及びキャリア供給層32をこの順にエピタキシャル成長させ、窒化物半導体層30を形成する。
【0035】
(ロ)次いで、図6に示すように、キャリア供給層32上に第1の絶縁膜41を形成する。更に、第1の絶縁膜41上全面に第2の絶縁膜42を形成する。なお、少なくとも後述の開口部400形成時の等方性エッチングにおけるエッチングレートが、第2の絶縁膜42が第1の絶縁膜41よりも大きいように、第1の絶縁膜41及び第2の絶縁膜42の材料が選択される。
【0036】
(ハ)フォトリソグラフィ技術などを用いて、図7に示すように、第1の絶縁膜41及び第2の絶縁膜42の所定の位置に開口部510、520を形成する。例えば、第1の主電極51と第2の主電極52がそれぞれ配置される位置の第1の絶縁膜41及び第2の絶縁膜42を、フォトレジスト膜をマスクにしてエッチング除去する。
【0037】
(ニ)開口部510、520を埋め込むように、第2の絶縁膜42上に金属膜を形成する。その後、この金属膜をフォトリソグラフィ技術などを用いてパターニングする。これにより、図8に示すように、開口部510を埋め込んで配置された第1の主電極51、及び開口部520を埋め込んで配置された第2の主電極52が形成される。
【0038】
(ホ)フォトレジスト膜90をエッチングマスクにして、ドライエッチングなどの異方性エッチングによって、制御電極53が配置される位置の第2の絶縁膜42を膜厚方向にエッチング除去する。このとき、図9に示すように、第2の絶縁膜42の一部が第1の絶縁膜41上に残るように、第2の絶縁膜42をエッチングすることが好ましい。これは、この後の工程でウェットエッチングを用いて第1の絶縁膜41をエッチング除去する際に、第2の絶縁膜42が残っていない状態で第1の絶縁膜41をエッチングすると、第1の絶縁膜41の側面410の表面に段差が生じ、傾斜面が一様な傾斜にならないおそれがあるためである。このため、異方性エッチングでは、第2の絶縁膜42を膜厚方向の途中まで除去することが好ましい。例えば、100nm〜200nm程度の膜厚で第2の絶縁膜42を残す。
【0039】
(ヘ)フォトレジスト膜90をエッチングマスクにして、ウェットエッチングなどの等方性エッチングによって、窒化物半導体層30の表面の一部が露出するまで第2の絶縁膜42の残余の部分及び第1の絶縁膜41を除去する。第2の絶縁膜42よりも第1の絶縁膜41の方が等方性エッチングのエッチングレートが小さい。したがって、第2の絶縁膜42に対するエッチングレートよりも第1の絶縁膜41に対するエッチングレートが小さい等方性エッチングによって、第2の絶縁膜42及び第1の絶縁膜41が除去される。その結果、図10に示すように、窒化物半導体層30の表面300と第1の絶縁膜41の側面410とのなす第1の傾斜角θ1が、窒化物半導体層30の表面300と第2の絶縁膜42の側面420を延長した線Lとのなす第2の傾斜角θ2よりも小さいように、開口部400が形成される。
【0040】
(ト)フォトレジスト膜90を除去した後、開口部400を埋め込むように第2の絶縁膜42上に金属膜を形成し、この金属膜をパターニングする。これにより、開口部400において窒化物半導体層30と接するように、制御電極53と共にフィールドプレート60が形成される。なお、リフトオフ法を用いて、制御電極53及びフィールドプレート60を形成してもよい。以上により、図1に示した窒化物半導体装置1が完成する。
【0041】
等方性エッチングにおけるエッチングレートが第1の絶縁膜41の方が第2の絶縁膜42より小さいという条件以外は、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42に対する特別な条件はない。このため、層間絶縁膜として一般的に用いられる酸化シリコン(SiOx)膜、窒化シリコン(SiN)膜、テトラエトキシシラン(TEOS)膜、ボロン・リン添加ガラス(BPSG)膜、リン添加ガラス(PSG)膜などを第1の絶縁膜41、第2の絶縁膜42に採用可能である。
【0042】
例えば、第1の絶縁膜41にBPSG膜を使用し、第2の絶縁膜にSiOx膜又はTEOS膜を使用する。或いは、第1の絶縁膜41にTEOS膜を使用し、第2の絶縁膜にSiOx膜を使用する。
【0043】
また、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42に同一の材料を用いてもよい。この場合には、第2の絶縁膜42よりも第1の絶縁膜41の方がエッチングレートが小さくなるように、第1の絶縁膜41を改質すればよい。例えば、第1の絶縁膜41を形成した後、熱処理などによって第1の絶縁膜41のエッチングレートを小さくする。その後、この第1の絶縁膜41上に第1の絶縁膜41と同一材料の膜を第2の絶縁膜42として形成する。
【0044】
第1の絶縁膜41の膜厚は、第1の傾斜角θ1が所望の角度で確実に形成される膜厚であればよく、プロセス精度に依存するが、例えば100nm〜200nm程度である。ただし、ドライエッチング時に窒化物半導体層30の表面300が露出しないように、一定のマージンをもって第1の絶縁膜41の膜厚は決定される。第2の絶縁膜42の膜厚は、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42のトータルの膜厚が所望の層間膜厚になるように設定される。例えば、第2の絶縁膜42の膜厚は250nm〜1000nm程度である。
【0045】
各電極に要求される膜厚、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とのエッチングレートの差などに応じて、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42の膜厚は決定される。
【0046】
なお、第1の絶縁膜41又は第2の絶縁膜42にBPSG膜を使用した場合には、窒化物半導体層30から比較的近い位置にBPSG膜が存在することになる。このため、BPSG膜によって外部からの浮遊イオンなどの影響を防止でき、動作時における窒化物半導体装置1中の電位の安定を確保できる。
【0047】
基板10には、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板等の半導体基板や、サファイア基板、セラミック基板等の絶縁体基板を採用可能である。例えば、基板10に大口径化が容易なシリコン基板を採用することにより、窒化物半導体装置1の製造コストを低減できる。
【0048】
バッファ層20は、MOCVD法等のエピタキシャル成長法で形成できる。図1では、バッファ層20を1つの層として図示しているが、バッファ層20を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層20を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)とGaNからなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。なお、バッファ層20はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層20を省いてもよい。バッファ層20の構造、配置は、基板10の材料等に応じて決定される。
【0049】
第1の主電極51及び第2の主電極52は、窒化物半導体層30と低抵抗接触(オーミック接触)可能な金属により形成される。例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などが第1の主電極51及び第2の主電極52に採用可能である。或いはTiとAlの積層体として、第1の主電極51及び第2の主電極52は形成される。制御電極53、フィールドプレート60には、例えばニッケル金(NiAu)などが採用可能である。
【0050】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法によれば、制御電極53のドレイン側端部における電界の緩和に有効な、端部が緩やかな傾斜の底部を有するフィールドプレート60を安定して精度良く形成できる。特に、異方性エッチング後の開口部400に第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とが存在する状態で等方性エッチングを行うことにより、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とのエッチングレート差に依存した形状の開口部400を安定して得ることができる。
【0051】
ウェットエッチングなどの等方性エッチングのみで開口部400を形成する場合と比べて、上記のように異方性エッチングと等方性エッチングを組み合わせることにより、開口部400を精度良く形成できる。即ち、開口部400の開口寸法の広がりを抑制でき、開口部400の微細設計、微細加工が容易である。
【0052】
更に、窒化物半導体層30上の層間絶縁膜が1層である場合には、開口部400の傾斜を緩やかにすることが困難である。例えば、図11(a)に示すようにフォトレジスト膜90をマスクにした異方性エッチングによって層間絶縁膜40を途中まで膜厚方向にエッチング除去し、その後、図11(b)に示すように等方性エッチングによって窒化物半導体層30の表面が露出するまで層間絶縁膜40をエッチング除去した場合には、開口部400の側面の傾斜を緩やかにすることはできない。仮に開口部400の側面の傾斜を緩やかにしようとすれば、開口部400の面積が増大し、窒化物半導体装置1が大型化してしまう。
【0053】
したがって、本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法のように、エッチングレートが異なる第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42を積層することによって、開口部400の面積を増大させることなく、開口部400の底部での側面の傾斜を緩やかにすることができるのである。これにより、電界集中が緩和され、ゲートリーク電流が抑制された窒化物半導体装置1を製造することができる。電流コラプス現象を悪化させないためなどの理由によって層間絶縁膜40の膜厚が厚い場合において、窒化物半導体装置1の構造は特に有効である。
【0054】
また、上記に説明した製造方法によれば、汎用の設備、技術によって窒化物半導体装置1の製造が可能であり、特別な装置や高度なプロセス技術を必要としない。
【0055】
なお、制御電極53が配置される開口部400の底面において窒化物半導体層30の上部の一部をエッチングし、窒化物半導体装置1をゲートリセス構造にしてもよい。これにより、ノーマリオフ特性を実現することができる。
【0056】
<第1の変形例>
図12に示すように、制御電極53と第2の主電極52間に、窒化物半導体層30上にフィールドプレート60Sを配置してもよい。フィールドプレート60Sと第1の主電極51は電気的に接続される。
【0057】
フィールドプレート60Sが制御電極53(ゲート電極)と第2の主電極52(ドレイン電極)の間に配置されることにより、ゲート電極のドレイン側端部における電界集中が更に緩和される。このとき、図12に示したように、フィールドプレート60Sが埋め込まれる層間絶縁膜40の開口部において、図1に示した開口部400と同様に、第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42の側面に傾斜がつけられ、且つ、第1の絶縁膜41の斜面の第1の傾斜角θ1よりも第2の絶縁膜42の斜面の第2の傾斜角θ2の方が大きい。このため、図12に示した窒化物半導体装置1においても、窒化物半導体装置1の面積を増大させることなく、電界が緩和されて、ゲートリーク電流が抑制される。
【0058】
更に、図12に示す窒化物半導体装置1では、制御電極53の第2の主電極52に対向する側面が、フィールドプレート60Sによってシールドされている。このため、フィールドプレート60Sと第1の主電極51(ソース電極)とを電気的に接続することにより、窒化物半導体装置1のミラー容量を低減することができる。つまり、フィールドプレート60Sがゲート電極とドレイン電極間に配置されていることにより、ゲート電極とドレイン電極間の容量が低減される。これにより、窒化物半導体装置1の高速動作が可能になる。
【0059】
<第2の変形例>
図13に、ショットキーバリアダイオード(SBD)として窒化物半導体装置1を形成した例を示す。図13に示した窒化物半導体装置1では、HEMTの場合と同様に、例えばGaN膜からなるキャリア走行層31とAlGaN膜からなるキャリア供給層32とによって、窒化物半導体層30が構成されている。そして、窒化物半導体層30上に第1の主電極であるアノード電極71と第2の主電極であるカソード電極72が互いに離間して配置されている。
【0060】
アノード電極71とキャリア供給層32との間にショットキー接合が形成され、カソード電極72とキャリア供給層32との間にオーミック接合が形成される。これにより、二次元キャリアガス層33を介して、アノード電極71とカソード電極72間に電流が流れる。
【0061】
図13に示す窒化物半導体装置1では、アノード電極71のカソード電極72側の端部(以下において、「カソード側端部」という。)と連結してフィールドプレート60が層間絶縁膜40上に配置されている。フィールドプレート60により、アノード電極71のカソード側端部の空乏層の曲率が制御されて、アノード電極71のカソード側端部に集中する電界の集中が緩和される。このため、図13に示した窒化物半導体装置1では、オフ動作時のリーク電流が抑制される。
【0062】
このとき、図13に示すように、フィールドプレート60と連結するアノード電極71が窒化物半導体層30と接する開口部400では、図1に示した開口部400と同様に、第1の絶縁膜41及び第2の絶縁膜42の側面に傾斜がつけられている。即ち、窒化物半導体層30の表面300と第1の絶縁膜41の側面410とのなす第1の傾斜角θ1が、窒化物半導体層30の表面300と第2の絶縁膜42の側面420を延長した線Lとのなす第2の傾斜角θ2よりも小さいように、開口部400が形成されている。
【0063】
このため、図13に示した窒化物半導体装置1においても、窒化物半導体装置1の面積を増大させることなく、電界が緩和されて、ゲートリーク電流が抑制される。
【0064】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0065】
例えば、フィールドプレート60を第1の主電極51又は制御電極53以外の、一定値に固定された電圧を供給する固定電極に接続してもよい。つまり、フィールドプレート60を交流的にGNDにみえる一定電位に設定することにより、制御電極53の端部における電界の集中を緩和する効果が得られる。フィールドプレート60をGNDに接続してもよい。
【0066】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…窒化物半導体装置
10…基板
20…バッファ層
30…窒化物半導体層
31…キャリア走行層
32…キャリア供給層
33…二次元キャリアガス層
40…層間絶縁膜
41…第1の絶縁膜
42…第2の絶縁膜
51…第1の主電極
52…第2の主電極
53…制御電極
60…フィールドプレート
60S…フィールドプレート
90…フォトレジスト膜
400…開口部
410…側面
420…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に配置された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置された第2の絶縁膜と、
前記窒化物半導体層上に互いに離間して配置された第1及び第2の主電極と、
前記第1及び第2の主電極間で前記第2の絶縁膜上に配置され、前記第1及び第2の絶縁膜に設けられた開口部を介して前記窒化物半導体層に接続するフィールドプレートと
を備え、
前記開口部において、前記窒化物半導体層の表面と前記第1の絶縁膜の側面とのなす第1の傾斜角が、前記窒化物半導体層の表面と前記第2の絶縁膜の側面を延長した線とのなす第2の傾斜角よりも小さいことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第1の絶縁膜のエッチングレートが前記第2の絶縁膜のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記第1の主電極と前記第2の主電極間で前記窒化物半導体層上に配置された制御電極を更に備え、前記制御電極と連結して前記フィールドプレートが前記制御電極と前記第2の主電極間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記第1の主電極と前記第2の主電極間で前記窒化物半導体層上に配置された制御電極を更に備え、前記フィールドプレートが前記制御電極と前記第2の主電極間で前記窒化物半導体層上に配置され、且つ、前記フィールドプレートが前記第1の主電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第1の主電極と前記第2の主電極のいずれか一方と前記フィールドプレートが連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
主面上に第1及び第2の主電極を有する窒化物半導体装置の製造方法であって、
窒化物半導体層上に第1の絶縁膜を形成するステップと、
前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、
前記窒化物半導体層の表面の一部が露出するまで前記第1及び第2の絶縁膜の一部をそれぞれ選択的にエッチング除去して、前記窒化物半導体層の表面と前記第1の絶縁膜の側面とのなす第1の傾斜角が前記窒化物半導体層の表面と前記第2の絶縁膜の側面を延長した線とのなす第2の傾斜角よりも小さいように開口部を形成するステップと、
前記第1及び第2の主電極間で前記第2の絶縁膜上にフィールドプレートを形成し、前記開口部を介して前記窒化物半導体層と前記フィールドプレートとを接続させるステップと
を含むことを特徴とする窒化物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−26442(P2013−26442A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159938(P2011−159938)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(511240335)ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス・コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】