説明

紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法

【課題】海島型複合繊維を溶融紡糸する紡糸口金の内部に装着された数万本にも及ぶパイプに関して、少なくともパイプ曲りの発生を自動で検出することができる紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法を提供する。
【解決手段】直管型パイプが口金板に対して垂直に多数立設された口金板を装着する紡糸口金に対して各パイプのポリマー流路である貫通孔を通過した検査光をカメラで撮影して、撮影した画像データを二値化処理などの画像処理を行って各パイプの先端部のポリマー流路の中心座標を算出し、算出した中心座標が設計時の値よりもずれているかどうかを判断して、パイプ曲りの有無を検出する紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、島成分ポリマーからなる多数の島が繊維軸方向に沿って海成分ポリマー中に形成された海島型複合繊維を溶融紡糸する紡糸口金において、紡糸口金内で多数の細流化された島成分ポリマーを海成分ポリマー中へ吐出するために設けられたパイプなどの内部に残留した異物、あるいはこれらパイプ自体の変形などの紡糸口金に生じた異常を自動的に検査するための紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海成分ポリマー中に島成分ポリマーが島状に繊維軸方向に対して独立して多数配列された所謂「海島型複合繊維」を製造するための紡糸口金は公知である。たとえば、特許文献1〜3等には、島成分ポリマーの流路となる「一直線に延びたパイプ(以下、単に“直管”とも言う)」を垂直に多数立設すると共に、これら各直管の外周部を包み込むように海成分ポリマーを供給する構成を有する海島型複合繊維用の紡糸口金が開示されている。
【0003】
このような多数の直管を装着する紡糸口金では、一定期間に渡って使用した後、再使用のためには、紡糸口金に残留したポリマーを除去するために洗浄を行う必要がある。しかしながら、使用後に直管内に残留する島成分ポリマーとして、例えば、特に熱分解し難い耐熱性ポリマーや溶剤で溶解し難い耐薬品性を有するポリマーを使用した場合には、これらポリマーを完全に除去することが困難な場合も生じる。このようなケースでは、良好な品質と性能を有する海島型複合繊維の製造が困難になる。
【0004】
そこで、一度使用した紡糸口金を分解したり、組み立てたりすることが容易な口金構造として洗浄し易い口金にすることが行われる。ただし、このような紡糸口金の分解作業や洗浄後の組立作業においては、時に前記直管にパイプ曲り等の異常や損傷が生じ易いという問題がある。
【0005】
しかも、近年においては、超極細繊維を製造するために、一本の海島型フィラメント中に形成する島数を増やす必要上から直管の数をできるだけ増やす必要が生じている。その結果、一個の海島型紡糸口金中に設けられる直管の数は、数万本にも及ぶ(例えば、特許文献3には、19008本の直管が設けられた例が記載されている。)。
【0006】
ところが、上記直管のポリマー流路が汚れていたり、ポリマー流路内に異物が付着していたりすると、紡糸時に糸切れの原因となり紡糸ができなくなるという障害が発生したり、単糸同士が合体したりする品質異常が発生する。当然のことながら、このような状況は直管が損傷したり曲がってしまったりしたときにも起る。
【0007】
前述の理由から直管状のポリマー流路内の残留異物を検査して異物が存在しないことを確認すると共に、直管の損傷や曲りの発生がないことも確認して、直管のポリマー流路を常に正常に維持することが紡糸技術上の生命線となる。このために、一般的に直管のポリマー流路が正常に保たれているかどうかを検査員の肉眼によって顕微鏡を用いて丹念に検査することが行なわれている。
【0008】
言うまでもなく、このような検査には、多大な工数と時間を要する。また、視覚検査であるため長時間にわたって検査する作業は検査員に根気が必要とされ、しかも、目が疲れる仕事である。それ故に、ヒューマン・エラーによって、時として異常の存在が見逃される傾向がある。また、検査員を必要とするために労務コストアップになり、その上、検査に個人差が生じるという問題もあった。
【0009】
なお、口金検査を人手に頼ることなく、自動検査を行なおうとする試みとしては、例えば特許文献4などに提案されているものがある。しかしながら、この従来技術は、紡糸口金からポリマーを吐出するための吐出孔群内に残留する異物の有無を検査するものであって、紡糸口金内に設けられた多数の直管の曲りなどを検査する機能を有しておらず、このような機能の必要性も全く認識されていない。
【0010】
また、言うまでもなく、海島型複合繊維の紡糸口金では、紡出するフィラメント数は、50フィラメント程度(前述の特許文献3では48本のフィラメント群を一つの紡糸口金から紡出する例が記載されている。)であるので、これらフィラメント群をそけぞれ紡出する吐出孔の数も多くて50個程度である。それ故、吐出孔に残留する異物の検査よりも、直管内に残留する異物の検査と、この直管の曲りなどの検査を行うための負担の方が想像以上に遥かに大きいものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭44−18369号公報
【特許文献2】特開2001−192924号公報
【特許文献3】特開2005−320640号公報
【特許文献4】特開2006−267000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、海島型紡糸口金のような口金中に装着された数万本にも及ぶ直管内のポリマー流路に残留する異物を検出でき、これと共にパイプ変形を自動で検出することができる紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここに、前記課題を解決するための発明として、「一直線状に延びた円形流路断面形状を有するパイプが口金板に対して垂直に多数立設された紡糸口金において、前記パイプに生じたパイプ曲りを少なくとも検出するための下記(1)〜(3)の要件を備えた紡糸口金の異常検査装置。
(1) 垂直に立設された前記パイプのポリマー流路である貫通孔を通過させる検査光を照射する照明と、
(2) 前記口金板を間に挟んで前記照明に対向して設けられ、且つ前記照明から照射されて一群の前記貫通孔を通過した前記検査光を所定の倍率に拡大する拡大レンズが付設されたカメラと、
(3) 前記貫通孔を通過した検査光を前記カメラで撮影した画像データからパイプ先端部でのポリマー流路の存在領域を特定し、特定した存在領域から前記パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値を算出し、算出した各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標が紡糸口金の設計時点で決定される各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値よりも許容値を超えてずれが生じた場合にパイプ曲りが発生していると識別する識別機能を持った画像処理装置」が提供される。
【0014】
このとき、本発明に係る紡糸口金の異常検査装置では、前記パイプが海島型複合繊維を溶融紡糸する際に海成分ポリマー中に島成分ポリマーを吐出するためのパイプであることが、数万本にも及ぶパイプの曲りを自動検査できるために好ましい。
【0015】
また、前記課題を解決するための発明として、「一直線状に延びた円形流路断面形状を有するパイプが口金板に対して垂直に多数立設された紡糸口金において、前記パイプに生じたパイプ曲りを少なくとも検出するための下記(1)〜(5)の要件を備えた紡糸口金の異常検査方法。
(1) 垂直に立設された前記パイプのポリマー流路である貫通孔を通過する検査光を照射し、
(2) 前記貫通孔を通過した検査光をポリマーを吐出する側のパイプ先端部で所定の倍率に拡大して画像データとして撮影し、
(3) 前記画像データを所定の閾値を基準にして明暗の階調で二値化処理して、前記貫通孔を通過した前記検査光が検出された画素を「明」、前記検査光が検出されなかった画素を「暗」と分別し、
(4) 「明」と分別した画素が連続した集合体の存在領域を特定して、特定した前記存在領域から各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値をそれぞれ算出し、
(5) 算出した各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標が紡糸口金の設計時点で一意に決定される各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値よりも許容値を超えてずれが生じた場合にパイプ曲りが発生していると識別する。」が提供される。
【0016】
その際、本発明は、前記二値化処理に際してPタイル法によって画像データを構成する画素を「明」又は「暗」に振り分けるための閾値を決定することが、照明となる光源の劣化やカメラの撮影条件変動などによる画像データの明暗の階調変動の影響を受けないため好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明した本発明によれば、海島型繊維の紡糸口金のように、紡糸口金内に設けられた多数の直管の異常を検査することができる。特に、これら直管に対してパイプ曲りの有無の検査を容易かつ自動的に行なうことができる。また、当然のことながら、多い場合は1個の紡糸口金内に数万個にも達するほどに設けられる直管の異常検査を検査員の肉眼に頼ることなく自動的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】多数の直管が海島型複合繊維を溶融紡糸する紡糸口金内に設けられた様子を模式的に記載した実施形態を模式的に例示した正断面図である。
【図2】図1において点線で示した部分の要部拡大図である。
【図3】本発明に使用できるパイプ曲りの検査方法の実施形態例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法では、円形流路断面形状を有する真直ぐに一直線状に延びたパイプ(直管)が紡糸口金の内部に垂直に多数立設され、これら多数の直管の少なくとも一本の直管に発生したパイプ曲りなどの紡糸口金異常を検知することを一大特徴とする。
【0020】
以下、本発明の紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法の実施形態例について、図面を参照しながら詳細に説明するが、その前に、本発明の異常検査装置及び異常検査方法が検査の対象とする「紡糸口金内に設けられる多数の直管」の実施形態例について図1及び図2を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
図1は、例えば海島型複合繊維の紡糸口金のように、紡糸口金の内部に多数の直管が設けられた様子を模式的に記載した実施形態を例示した正断面図である。ただし、図1の左半分は、島成分ポリマーが通る流路が容易に理解できるような断面を施し、図1の右半分は、海成分ポリマーが通る流路が容易に理解できるような断面を施してそれぞれ示している。
【0022】
また、図2は図1において点線で示した部分の要部拡大図であり、「一本の海島型複合フィラメントを紡糸するための一つの構成単位」を例示している。通常、このような一本の海島型複合フィラメントを紡糸するための構成単位は、例えば、前述の特許文献3のように48本の海島型複合マルチフィラメント糸を紡糸するための紡糸口金であれば48個の構成単位からなり、例えば、図1に示した口金中心を共通の中心とし且つ3つのピッチ円直径D,D,Dを有する多重同心円上に、それぞれ8個、16個、24個(合計で48個)といった具合に等配に設けられる。
【0023】
なお、本発明の「紡糸口金の異常検査装置及び異常検査方法」においては、紡糸口金の異常の有無を判断するに際して、前述の「一本の海島型複合フィラメントを紡糸するための一つの構成単位」ごとに行うことが好ましい。何故ならば、直管は前記「構成単位」ごとに一纏めにされて密に配置されており、その他の場所には配置されていないからである。したがって、画像処理は、このような「構成単位」ごとに行う方が遥かに効率的であり、しかも、その検査精度も一段と向上するからである。
【0024】
ここで、前記図1及び図2において、各符号が指し示す要素について簡単に説明すると、1は紡糸口金、11a〜11fは第1〜第6口金板、12は直管、13は島成分ポリマー導入孔、14は海成分ポリマー導入孔、15は島成分ポリマー溜り、16は海成分ポリマー溜り、17はポリマー合流孔、18はロート状流路、そして、19は吐出孔である。
【0025】
以上のように構成される紡糸口金において、島成分ポリマーは、図1に例示したように、島成分ポリマー導入孔13へ導入された後に分流されて前記各構成単位を構成する島成分ポリマー溜り15にそれぞれ到達する。また、他方の海成分ポリマーは、海成分ポリマー導入孔14へ導入された後に分流されて前記各構成単位の一部を構成する海成分ポリマー溜り16にそれぞれ到達する。
【0026】
次に、このようにして、各構成単位に到達した島成分ポリマーは各直管12へそれぞれ分流して海成分ポリマー溜り16へ各直管12からそれぞれ吐出され、これによって、芯となる島成分ポリマー流の周りに鞘となる海成分ポリマーを纏った多数の芯鞘流を形成する。そして、この多数の芯鞘流は、そのままポリマー合流孔を流下してロート状流路18の上方で互いに合流して合体し、海島型複合流を形成する。その後、この海島型複合流は、ロート状流路18を流下するにつれて徐々に細くされ、吐出孔19に到達し、この吐出孔19から海島型複合繊維として紡出される。
【0027】
以上に説明した紡糸口金に係る本発明の「異常検査装置及び異常検査方法」では、前記吐出孔19に残留する孔内異物の有無を検査することもできるが、前記直管12のパイプ曲りや管内残留異物などの有無を検出することを大きな特徴とするものであって、この点について、以下に図3を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図3に例示した本発明の「紡糸口金の異常検査装置」では、前記紡糸口金1の第4口金板11dに装着された各直管12に対して、その下方から照明23を照射する。ただし、この照明23は、図3に例示したように、検査対象である直管12が垂直に多数立設されている第4口金板11d(図3には図示せず)を間に挟んで、直管12内を通過した検査光を後述するカメラ21が撮影できるように、カメラ21と照明23とが上下方向に互いに対向して設けられている。
【0029】
したがって、下方に設けた照明23から照射された検査光は、第4口金板11dに対して垂直に立設された各直管12を通過した検査光となり、この検査光が拡大レンズ22で光学的に拡大され、拡大された映像が上方に設けたカメラ21によって正面から撮影されることとなる。このようにして、カメラ21によって各直管12を通過した検査光を撮像して、得られた撮像データを画像処理すれば、直管12内に異物が残留すれば、検査光が遮られて光量が減少するから、検査光の洽量変化を観察することによって、直管12内の異物の有無を自動的に検査できる。
【0030】
ただし、既に繰返し説明したように、紡糸口金1内には多数の直管12が設けられている。したがって、当然のことながら、垂直に立設された全ての直管12を対象にした検査を行う必要がある。しかしながら、カメラ21とこれに対向して設けられた照明23だけの組み合わせだけでは、全直管12内の残留異物を検査することができない。何故ならば、拡大レンズ22を備えたカメラ21では、画像を撮影できる範囲が限られてしまうために、限られた範囲の領域をカバーする画像しか撮影できないからである。なお、当然のことながら、拡大レンズ22による画像の拡大倍率は、各直管12に付着した異物を識別できる値を取るべきである。
【0031】
そこで、本発明に係る紡糸口金の異常検査装置(なお、以下の説明においては、単に「検査装置」と略称する場合もある)では、直管12が設けられた紡糸口金1の全領域において画像データが得られるように、カメラ21の視野範囲に紡糸口金1を移動させる機構を備えている。
【0032】
すなわち、本発明の検査方法を実施する装置は、紡糸口金1(実体は、「第4口金板11d」であるが、以下の説明ではこれらを区別することなく、単に「紡糸口金1」と便宜的に称する)を載置する口金取付台を付設した中空型のロータリーアクチュエータ25を備え、紡糸口金1を回転できる構成としている。また、この中空型ロータリーアクチュエータ25の下方には、照明23が配設され、照明23から中空型ロータリーアクチュエータ25の中空部に置かれた紡糸口金1へ向かって検査光を照射するようにしている。
【0033】
なお、中空型ロータリーアクチュエータ25を用いる理由は、一本の海島型複合フィラメントを紡出するための各構成単位が口金中心を中心とする多重同心円上に等ピッチ間隔にそれぞれ配設けられているからである。その結果、紡糸口金1の中心が中空型ロータリーアクチュエータ25の中心と一致するように、検査対象の紡糸口金1の位置を決めるだけで、所定の回転角度だけ紡糸口金1を回転させれば、次の検査が必要な直管12が設けられている位置に紡糸口金1を容易かつ正確に位置決めできるのである。
【0034】
ここで、念のために簡単に補足説明を行っておくと、図1及び図2から明らかなように、第4口金板11dに設けられた各直管の中心軸と、第5口金板11eに穿設された各ポリマー合流孔17の中心軸とは、実質的に一致して共軸となるように正確に位置決め設置する必要がある。このため、第4口金板11dと第5口金板11eとは、組み立てに際して正確に位置決めできるように、例えば位置決めピンや位置決め孔などからなる位置決め手段が設けられている。
【0035】
そこで、このような関係を巧く利用して、直管12を垂直に多数立設した第4口金板11dと第5口金板11eとの間に設けられた位置決め手段と同様の位置決めピンや位置決め孔を、第4口金板11dと「紡糸口金の異常検査装置」との間に関しても設けてある。このため、多数の直管12を垂直に立設した前記第4口金板11dを「紡糸口金の異常検査装置」に対して正確に位置決め設置できるのである。
【0036】
また、本発明の実施形態例では、図4に例示したように、前記中空型ロータリーアクチュエータ25に対して一軸方向に直線的にスライド移動できるリニアアクチュエータ26が取り付けられている。その結果、前記リニアアクチュエータ26によって、紡糸口金1を載置する中空形状を有する口金取付台に付設のロータリーアクチュエータ25は、直線軸方向と回転軸方向へそれぞれスライド自在に移動可能なように駆動される構成となっている。このため、直線方向と回転方向に互いにそれぞれ独立してスライド移動自在のアクチュエータ25及び26によって、紡糸口金1はカメラ21による画像撮影の走査方向に沿って二次元平面状の任意の位置に正確に移動できる構成とされている。
【0037】
その際、前記アクチュエータ25及び26の駆動制御は、これらを駆動する各サーボモータなどからなる駆動手段に対して接続されたコンピュータ装置27によって行なわれる。すなわち、このコンピュータ装置27からの指令によって各アクチュエータ25及び26を駆動する各サーボモータに対して必要なスライド量に相当する数の駆動用パルスを与えて、検査に必要となる画像データを得るために必要な量だけ各アクチュエータ25及び26を回転方向と直線方向へそれぞれスライド自在に制御する。また、これによって、同時に紡糸口金1を任意の制御速度で目標とする位置へ移動させる制御が行なわれる。
【0038】
このとき、その詳細については後述するが、前記コンピュータ装置27は紡糸口金の異常検査装置としての機能も備えており、カメラ21で撮影された画像データを取得し、画像処理して多数の直管12の内部に異物が残留しているかどうかの検出を行なうための画像処理と、検査対象となる一群の直管12中で特定の直管が変形しているかどうかの検出を行なうための画像処理を行うことができる。
【0039】
前記画像処理を行うために前記コンピュータ装置27は、画像処理に必要な後述するような画像処理を可能とするプログラムとこれを実行する機能を内蔵しており、中央演算処理装置(CPU)などの主要装置とこれに付帯する周辺機器との連携によって画像処理プログラムが実行される。なお、コンピュータ装置27は、この画像処理プログラムを実行して画像処理するために必要となる前記周辺機器として、インターフェース装置、このインターフェース装置を介して取り込まれた前記画像データ群を記憶させるための記憶装置、必要なデータを入出力するための入出力手段などの処理に必要となる様々な手段を備えていることはいうまでもない。
【0040】
なお、カメラ21、各アクチュエータ25及び26、各照明23及び24などは、図3に例示したように、支持台28に取り付けられている。このとき、支持台28に取り付けられている照明23について更に付言すると、この照明23は、寿命が長く、熱を発生しにくく、直管12内を通過する際に散乱しにくく、しかも、カメラ21の撮像範囲の全体を照射する必要がある。このような観点から、照明23として、高輝度で広範囲を均一に照射し、且つ照明23からカメラ21及び拡大レンズ22に平行な光(なお、以下の説明においては、単に「平行光」と略称する場合もある)を照射する事が可能なLED集光照明を使用することが好ましい。
【0041】
何故ならば、このようなLED集光照明23を使用することによって、例えば内径が1mm以下の直管12であっても、紡糸口金1を間に挟んで照明23からカメラ21に向って面状に照射された照射領域内の全直管12の内部ポリマー流路を検査光が通過し易く、直進性も高くなるからである。しかも、直管12内での光散乱が少なく、直管12内を擬似的に3次元撮影することが可能となる。なお、カメラ固定柱29に取り付けられている照明24についても、寿命が長く、熱が発生しにくく、高輝度で広範囲を均一に照射しすることが可能なLED照明を使用することが望ましい。
【0042】
なお、LED集光照明23からの透過光を捉えるカメラ21として、本例では、単焦点の光学式拡大レンズ22を装着しており、しかも、ノイズ低減が期待できることから、極めて多くの画素(ピクセル:pixel)からなる所謂「メガピクセル」のカメラ21を用いた。
【0043】
以上に説明したように、カメラ21によって検査に必要な画像データが得られると、例えば前述の特許文献4などに記載された方法(特に、[面積判別処理]及び[周長判別処理])を使用して、この画像データを画像解析することによって、各直管12内に残留する異物の有無を検出することができる。
【0044】
ただし、直管12内の残留異物は、直管12の長さ方向(奥行き方向)に沿った何れの位置にも付着する。すなわち、ポリマーが直管12に流入する直後の位置に異物が付着することもあれば、ポリマーが直管12から流出する直前の位置に付着することもある。このような点を考慮すると、カメラ21で撮影した画像データは、直管12の長さ方向(奥行き方向)に沿って複数箇所で焦点を合わせて撮影した画像データを用いることが好ましい。そのためには、カメラ21の焦点距離を複数箇所で調整できる機能を付与することが望ましく、紡糸口金1の全面に対するカメラ21の操作は、カメラ21の焦点距離を変更する度に行なうことが望ましい。
【0045】
なお、カメラ21で撮影する画像データについては、個々の直管12のみを撮影して得られる画像データに限定されることなく、所定数の直管12を通過してきた検査光をまとめて撮影した画像データを対象にすることが好ましい。何故ならば、個々の直管12を通過した検査光を捉えた個々の画像を合成してなる合成画像データを作成し、この合成画像データを一度に画像処理することによって、画像処理効率を向上させることができるからである。
【0046】
すなわち、個々の直管12を通過した検査光を撮影した個々の画像データの逐次画像処理による検査ではなく、一群の直管12を画像解析処理の対象として、これら一群の直管12に対して特許文献4に記載の処理を使用して一度に直管内の残留異物を検査することが処理速度を向上させるという観点からは好ましい。
【0047】
また、紡糸口金1内の一纏まりで設けられた一群の直管12の設置領域を複数領域に分割し、これら領域に対して複数回にわたってカメラ21を操作して複数枚の画像群を撮影することによって、複数の直管12を対象として、これらの直管12の内部に残留する異物やパイプ曲りなどの異常を同時に検査するために必要となる合成画像データを得ることが望ましい。そして、このようにして得た合成画像データを一度に画像処理して、紡糸口金1の異常検査処理を行うことが更に好ましい。
【0048】
以上に説明した画像処理が可能な画像データを得るという目標を達成するために、本発明では、コンピュータ装置27によって最適に制御される2台のアクチュエータ25及び26によって紡糸口金1を所定の複数位置に精度良く位置決め移動することが要求される。そのため、アクチュエータ25及び26の移動量(スライド量)は、直管12の設置領域の極めて正確な設計寸法係るデータをコンピュータ装置27に予めインプットしておく。そして、インプットされた設計寸法データに基づいて、アクチュエータ25及び26に必要となる移動量を算出するプログラムをコンピュータ装置27に記憶させておく。
【0049】
このようにすることによって、コンピュータ装置27に記憶されたデータ情報(アクチュエータ25及び26の移動量など)に基づいて、コンピュータ装置27からの指令を介して各サーボモータを駆動してアクチュエータ25及び26を正確に位置決め制御することができる。その結果として、所定の複数位置で所定の枚数の画像データを得ることができ、これら所定の枚数の画像データに基づいて合成画像データを作成することができる。
【0050】
このようにして、検査目標とする多数の直管12を通過した検査光を撮影した画像データ群がカメラ21によって得られると、これらの画像データ群を前述のように合成画像データとして画像処理装置をも兼ねるコンピュータ装置27に取り込む処理を実行する。そして、合成画像データを画像解析処理することによって、紡糸口金1に設けられた多数の直管12のパイプ曲りの存在判別を画像処理によって行なう。
【0051】
本発明においては、合成画像データが常に必要であると言うわけではないが、精細な画像データを得るという観点からは、合成画像データを使用することが好ましい。。何故ならば、後述するように、紡糸口金1内に設けられた直管12の相互の位置関係(直管12間の中心距離)などによって、パイプ曲りを検出することを大きな特徴とするからである。
【0052】
しかし、大きく曲がったパイプ異常を検査する場合などにおいてはこの限りではない。つまり、このような場合には、「(1) パイプ曲りの検査対象とする一群の直管12の全体が明瞭に捉えられ、(2) 各直管12のポリマー流路である貫通孔を通過した検査光を明瞭に識別できる程度の解像度を有する画像であり、(3) 隣接する直管12同士の中心間距離が変化できることが検出可能であること。」という3つの要件が満足されれば、合成画像データを使用する必要はなく、個々の画像データ(合成でない単独の画像データ)を使用することができるからである。
【0053】
以下、多数の直管12中の特定のパイプに生じたパイプ曲りを検出する処理方法について、より詳細に説明する。
まず、パイプ曲りを検査する紡糸口金1をカメラ21と照明23との間の所定位置に位置決めセットし、照明23から投光されて複数の直管12を同時に通過してきた検査光を画像データとして画像処理装置を兼ねるコンピュータ装置27(以下、「画像処理装置27」という)に取り込む処理を行う。そこで、この処理を行うために、前述のアクチュエータ25及び26によって紡糸口金1を必要な位置に移動させて、カメラ21で撮像するための所定位置へ移動させてカメラ21で必要な枚数の画像データを撮影する。なお、カメラ21の焦点は、島成分ポリマーが吐出される直管12の出口先端部に合わせてある。また、検査対象とする一群の直管12としては、図2に示した「一本の海島型複合フィラメントを紡糸するための一つの構成単位」とすることが好ましい。
【0054】
次に、画像処理をするために、カメラ21によって撮影した画像データを画像処理装置27に読み込む。そして、読み込んだ画像データに含まれる全画素を対象にして、撮影取得画像の明暗(輝度値)の階調数(例えば、256階調)に対応して設定した閾値、例えば、256階調に振り分けた時に、Pタイル法(Percentile Method)を用いて得られた階調値を基準にして、各画素の明暗を「明」と「暗」とに分別する二値化処理を行う。
【0055】
なお、この二値化処理を正しく行なうために、取得した画像データからノイズを除去したり、映像を強調したりするために、微分フィルタやγ補正などのフィルタ処理を実行することが好ましく、このような処理の後、画像データに対して二値化処理を実行することが好ましい。
【0056】
ここで、前述のPタイル法(Percentile Method)について念のために簡単に説明しておくと、Pタイル法は、前述のように「明」と「暗」とに二値化処理によって振り分けた全画像領域に関して、「明」に振り分けた画像領域が全画像領域に占める割合をパーセント(%)で指定して二値化する手法である。
【0057】
実際の処理では、例えば画像サイズが640×480画素だとすると、全画素数は307200画素なので、「明」に振り分けた画像領域の割合を例えば37%とすると、37%に相当する画素数は307200×0.37=113664画素となる。そこで、二値化処理する全画素を明暗の階調値に分別した時の階調値のヒストグラムを取得する。そして、取得したヒストグラムの頻度を階調値の高い方から(「暗」側の面積を指定する場合は階調値の低い方から)足していった時に113664画素を初めて超える階調値を二値化の閾値とする方法である。
【0058】
このPタイル法による二値化処理では、「明」と「暗」とに振り分けた全画像領域において、「明」と「暗」とに振り分けられた各画像領域の割合が一定であれば、撮影によって取得した画像の明るさが変動しても、その影響をほとんど受けないという利点がある。例えば、一般にカメラ21によって得られる画像の明暗の階調値はカメラ21本体の温度変化などにより変動する。また、照明23及び24も長時間使用していると劣化して暗くなる傾向がある。したがって、Pタイル法は、例えば階調数の中間階調値を閾値とする固定閾値法による二値化処理と比較すると安定的に二値化処理を行うことが可能となる利点を有している。
【0059】
しかしながら、「明」と「暗」とに振り分ける各画像領域の割合の変動が大きい場合はPタイル法は不向きである。ところが、紡糸口金1中に設けられた直管12の存在領域を識別するための二値化処理に関してはこのような事態は生じない。何故ならば、紡糸口金1中に設けられる直管12に関して、そのパイプ径、設置個数、パイプ配置などは紡糸口金1を当初の設計通りに製作した時点で一義的に決定されてしまうからである。このため、ポリマー流路である各直管12の貫通孔を通過した各検査光を検知して「明」と認識した画素群が全画素中に占める割合も当然のことながら実質的に一意に決定されるからである。
【0060】
以上に説明した二値化処理(「明」又は「暗」への分別処理である)後の合成画像データなどにおいて、「明」と認識された画素群は、直管12内に検査光を遮る異物などが存在していない限り、そのポリマー流路形状も真直ぐな貫通孔を遮るものなく通過してきた検査光を検出した領域とみなすことができる。また、このとき「暗」と判別された画素部は、当然のことながら直管12の貫通孔が存在しない部分であって、検査光がカメラ21に到達しなかった部分とみなすことができる。
【0061】
ところが、その先端部などに曲りが生じた直管12を通過した検査光は、曲がった直管12の貫通孔を通過しなければならないために、一度貫通孔壁に反射するなどして、その光路が曲げられる。このため、真直ぐな貫通孔を通過する場合と比較すると、その曲り具合によって程度の差があるものの、検査光が検出されるパイプ先端部の存在領域にずれが生じる。その結果、検査光を検知して「明」と認識する画素においても、両者に差異が生じることとなる。
【0062】
以上に説明した処理によって、「明」と認識された全画素の集合体を画像解析することによって、直管12の先端部分(ポリマー出口)の存在領域を先ず識別し、次いで、そのずれを計算することによってパイプ曲がりの有無を検査することができる。この処理では、具体的には、例えばPタイル法によって直管12の貫通孔を通過した検査光を先端部で感知して「明」と識別した全画素に例えば「1」を割り振り、「暗」と識別した全画素に対して例えば「0」を割り振ることによって二値化を行なう。なお、このとき、「暗」と識別した画素部は、当然のことながら検査光が通過する直管12の貫通孔が存在しない部分である。
【0063】
前記二値化処理で「明」と判別された個々の直管12に係る画素データには、ノイズが混入して直管12の存在領域でないにもかかわらず、直管12の存在領域とみなしてしまう場合がたまに生じる。そこで、この二値化処理によって、「“明”:“1”」に振り分けられた全画素データ群から、「“明”:“1”」が連続的に複数個の画素の塊となって存在している箇所を検出する。
【0064】
このように、「“明”:“1”」の塊からなる連続した画素の集合体を検出するようにすれば、たまたまノイズによって「“明”:“1”」と判断されたものではなく、確実に直管12の貫通孔を通過してきた検査光を検出した画素群の集合体であるとみなすことができる。したがって、このようにして認識された個々の「画素群の集合体(以下、粒子と称する)」は各直管12を通過した検査光に由来するものであると認識することができる。そこで、この「粒子」が存在する各直管12の先端部ポリマー流路の中心座標位置を計算によって求めることで、各々の直管12の先端部ポリマー流路の中心位置を検出できたことになる。
【0065】
このようにして、各直管12のポリマー流路先端部の存在領域に関する中心座標位置が画像処理によって求められると、次に、第二番目の処理として、一群の直管12中の特定の直管12にパイプ曲りが発生しているかどうかの識別処理を行う。
ここで、前記識別処理をより具体的に説明すると、先ず、前述のように「“明”:“1”」の塊として検出された各「粒子」データから各直管12の存在領域の検出処理を行なう。この検出処理は、各「粒子」部分つまり、「“明”:“1”」からなる画素の集合体の広がり(各「粒子」を構成する画素の数)の中心座標値を計算する処理である。
【0066】
なお、この処理は、各粒子を構成する「“明”:“1”」に割り振られた全画素数がn個存在したと仮定し、更に各「粒子」中にある任意の画素のX座標とY座標とを(Xi,Yi)で表すと、任意の「粒子(直管12)」の先端部ポリマー流路の中心位置Oiの座標(Xoi,Yoi)は、下記式のように表すことができることを利用して、その直管12の中心座標Oi(Xoi,Yoi)を求めるものである。
【0067】
【数1】

【0068】
この処理によって求められた各直管12の先端部ポリマー流路の中心座標値を利用して、任意の直管12の先端部ポリマー流路の中心座標値と、比較の基準とする直管12(例えば隣接配置された直管12など)の先端部ポリマー流路との間の中心座標間距離を算出する。このようにして中心座標間距離が求められると、例えば、直管12が曲がっていると認識された中心座標間距離値は、当然のことながら、パイプが曲がっていない場合(設計時のデータから任意の直管12の先端部ポリマー流路の中心座標間距離を既定値として予め算出しておくことができる)と比較して程度の差はあるものの差異が生じる。
【0069】
したがって、この中心座標間距離の差異が判別基準値と比較して許容される値より大きくなったり、小さくなったりしているとパイプ曲りが存在すると判別することができる。ただし、この判別基準値と許容値は、予め実験などにより最適値に設定されていること言うまでもない。
【0070】
また、別法として、次に説明するような方法もある。すなわち、設計時の図面データや製作完了時の受入れ検査データなどから各直管12の存在位置(中心軸の位置)を正確に特定することができる。そこでで、カメラ21で撮影した画像データを画像処理により求めた前述の直管12の先端部ポリマー流路の中心座標Oi(Xoi,Yoi)と重ね合わせて、その中心位置がどの程度ずれているかをコンピュータ装置27(画像処理装置27)が自動判別することによっても、パイプ曲りの発生を検知することができる。
【0071】
このようにして、パイプ曲りの検査対象とした一群の直管12中のある直管12にパイプ曲りが存在すると判別されると、設計当初の直管12の位置と正確に対応させてパイプ曲りが発生している直管12を正式に特定してコンピュータ装置27(画像処理装置27)に記憶する。また、場合によっては、パイプ曲がりが発生した直管12にマーキングを施す。
【0072】
そうすると、検査員は、コンピュータ装置27(画像処理装置27)に記憶された「パイプ曲りが検出された特定の直管12」に関する情報を容易に取り出すことができ、コンピュータ装置27(画像処理装置27)から取り出した情報に基づいて、パイプ曲りの存在する特定の直管12を容易に修正することができる。
【0073】
なお、パイプ曲りあるいは残留異物の有無が検査された後のデータは、各直管12の位置情報をもとに、記憶装置に記憶しておき、検査の係りの作業者が目視で確認するようにすることもできる。その際、当然のことながら、目視確認を行いながら、作業者が拡大鏡などを使用しながら治具などを用いてパイプ曲りの修正や残留異物の除去作業を行い、異常があった直管12を正常な状態に戻すこともできる。
【0074】
また、本発明によると、合成繊維生産時に使用される紡糸口金1に設けられた直管12のパイプ曲りの検査、更には直管12内の異物残留検査をも容易かつ自動的に行なえるので、省力化につながり労務費削減が可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1:紡糸口金
2:異常検査装置
11a〜11f:第1〜第6口金板
12:直管
13:島成分ポリマー導入孔
14:海成分ポリマー導入孔
15:島成分ポリマー溜り
16:海成分ポリマー溜り
17:ポリマー合流孔
18:ロート状流路
19:吐出孔
21:カメラ
22:拡大レンズ
23:照明
24:照明
25:ロータリーアクチュエータ
26:リニアアクチュエータ
27:コンピュータ装置
28:支持台
29:カメラ固定柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一直線状に延びた円形流路断面形状を有するパイプが口金板に対して垂直に多数立設された紡糸口金において、前記パイプに生じたパイプ曲りを少なくとも検出するための下記(1)〜(3)の要件を備えた紡糸口金の異常検査装置。
(1) 垂直に立設された前記パイプのポリマー流路である貫通孔を通過させる検査光を照射する照明と、
(2) 前記口金板を間に挟んで前記照明に対向して設けられ、且つ前記照明から照射されて一群の前記貫通孔を通過した前記検査光を所定の倍率に拡大する拡大レンズが付設されたカメラと、
(3) 前記貫通孔を通過した検査光を前記カメラで撮影した画像データからパイプ先端部でのポリマー流路の存在領域を特定し、特定した存在領域から前記パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値を算出し、算出した各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標が紡糸口金の設計時点で決定される各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値よりも許容値を超えてずれが生じた場合にパイプ曲りが発生していると識別する識別機能を持った画像処理装置。
【請求項2】
前記パイプが海島型複合繊維を溶融紡糸する際に海成分ポリマー中に島成分ポリマーを吐出するためのパイプであることを特徴とする、請求項1に記載の紡糸口金の異常検査装置。
【請求項3】
一直線状に延びた円形流路断面形状を有するパイプが口金板に対して垂直に多数立設された紡糸口金において、前記パイプに生じたパイプ曲りを少なくとも検出するための下記(1)〜(5)の要件を備えた紡糸口金の異常検査方法。
(1) 垂直に立設された前記パイプのポリマー流路である貫通孔を通過する検査光を照射し、
(2) 前記貫通孔を通過した検査光をポリマーを吐出する側のパイプ先端部で所定の倍率に拡大して画像データとして撮影し、
(3) 前記画像データを所定の閾値を基準にして明暗の階調で二値化処理して、前記貫通孔を通過した前記検査光が検出された画素を「明」、前記検査光が検出されなかった画素を「暗」と分別し、
(4) 「明」と分別した画素が連続した集合体の存在領域を特定して、特定した前記存在領域から各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値をそれぞれ算出し、
(5) 算出した各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標が紡糸口金の設計時点で一意に決定される各パイプの先端部ポリマー流路の中心座標値よりも許容値を超えてずれが生じた場合にパイプ曲りが発生していると識別する。
【請求項4】
前記二値化処理に際してPタイル法によって画像データを構成する画素を「明」又は「暗」に振り分けるための閾値を決定することを特徴とする、請求項3に記載の紡糸口金の異常検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58871(P2011−58871A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206980(P2009−206980)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】