説明

膜抵抗をトリミングするための方法ならびに膜抵抗および歪み測定エレメント

【課題】歩留りがトリミングにより高められているようにする。
【解決手段】膜抵抗が、低オームの給電領域と、該給電領域に電気的に接続された高オームの抵抗領域23とを有しており、当該方法が、以下のステップ:すなわち、オフセット電圧の温度係数を変化させるために、第1のレーザ切断法を抵抗領域23に実施し;第2のレーザ切断法を実施し、膜抵抗の抵抗値を、設定された目標値に関連してトリミングする;を備えているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に歪み測定エレメントに設けられた膜抵抗をトリミングするための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、特にブリッジ回路に使用するための歪み測定エレメントに用いられる膜抵抗であって、当該膜抵抗が、低オームの給電領域と、該給電領域に電気的に接続された高オームの抵抗領域とを有しており、両領域が、それぞれ伝導性の層材料から形成されている形式のものに関する。
【0003】
さらに、本発明は、歪み測定エレメント関する。
【背景技術】
【0004】
膜抵抗は、しばしば、たとえば高圧センサにおける歪み測定エレメントに使用される。このためには、膜抵抗が一般的に星形に、変形可能なダイヤフラムに被着され、結線されて、ブリッジ回路、特に4つの膜抵抗を備えた、いわゆる「ホイートストンブリッジ」が形成される。所定の圧力でのダイヤフラムの負荷時には、このダイヤフラムが湾曲する。これによって、個々の膜抵抗が伸張されるかもしくは圧縮され、これによって、ブリッジ回路のオフセット電圧が離調させられる。ブリッジ回路のこの離調は、関連した電気的な信号を生ぜしめる。この信号は評価回路によって検出される。これに基づき、この評価回路が圧力に対する量を規定する。さらに、使用分野に応じて、高い温度安定性、高い感度および高い長時間不変性が、歪み測定エレメントの全寿命にわたって必要となる。
【0005】
このようなセンサに用いられる膜抵抗は、しばしば、抵抗材料NiCr;NiCrSiによって形成される。この抵抗材料は1回の適切なコーティングプロセスによって、抵抗構造を備えた非晶質の層として被着される。膜抵抗のコンタクティングは特殊なコンタクト層もしくは相応の層システム、たとえばNiCr/Pd/AuまたはNiを介して行われる。
【0006】
膜抵抗を製作するための構造化プロセス時のもしくは別の前プロセス時の常に生ぜしめられる変動によって、ブリッジ回路の膜抵抗の抵抗値がしばしば同一とならず、これによって、ブリッジ回路のオフセット電圧が歪みエレメントのゼロ状態において、すなわち、負荷されていない状態において0ボルトと等しくならない。オフセット電圧の値を、仕様書によって設定された値に適合させるためには、ブリッジ回路の1つの膜抵抗または選択された最大2つの膜抵抗の抵抗値がトリミングによって高められる。このことは、通常、膜抵抗のトリミング領域への1回のレーザ切断(レーザビームによる抵抗材料の溶融)によって膜抵抗の相応の抵抗値が高められるトリミング法で行われる。このためには、レーザ切断法が一般的である。なぜならば、このレーザ切断法によって、高いトリミング精度が可能となるからである。レーザ切断法は、加熱による材料の除去加工に基づいており、これによって、膜抵抗の材料が蒸発させられるかもしくは溶融され、分離線(切断線)が抵抗材料に形成される。切断線の縁部では、層材料に隆起部が生ぜしめられる。この隆起部では、予め非晶質の材料が少なくとも部分的に再結晶化する。しかし、膜抵抗のこの再結晶化された領域は、膜抵抗の非晶質の領域に対して、抵抗の、それぞれ異なる温度係数を有しており、これによって、膜抵抗もしくはブリッジ回路の全温度特性にレーザ切断法によって影響が与えられる。
【0007】
ブリッジ回路に設けられた膜抵抗におけるレーザ切断法は、通常、ブリッジ回路のオフセット電圧を可能な限り最小限に抑えるために実施されるので、これによって、レーザ切断の長さに応じて、オフセット電圧の温度依存性の、予め規定可能でない変化が生ぜしめられる。最終的な測定過程では、温度依存性が規定され、ブリッジ回路のオフセット電圧の温度係数が、仕様書による設定値の範囲内にあるかまたは範囲外にあるかに応じて、センサエレメントが許容されるかまたは拒絶される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、膜抵抗をトリミングするための方法を改良して、歩留りがトリミングにより高められているようにすることである。特に本発明の課題は、膜抵抗を備えたブリッジ回路をトリミングするための方法を改良して、ブリッジ回路のオフセット電圧の、生ぜしめられる温度係数が最小限に抑えられるようにすることである。さらに、本発明の課題は、簡単にトリミング可能であり、この場合、抵抗の温度依存性に対するトリミングプロセスの影響が低減されている膜抵抗および歪み測定エレメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明の方法では、膜抵抗が、低オームの給電領域と、該給電領域に電気的に接続された高オームの抵抗領域とを有しており、当該方法が、以下のステップ:すなわち、オフセット電圧の温度係数を変化させるために、第1のレーザ切断法を抵抗領域に実施し;第2のレーザ切断法を実施し、膜抵抗の抵抗値を、設定された目標値に関連してトリミングする;を備えているようにした。
【0010】
さらに、前記課題を解決するために本発明の膜抵抗では、給電領域および/または抵抗領域が、複数の結合区分を給電領域もしくは抵抗領域の第1の区分と第2の区分との間に有しており、結合区分が、当該膜抵抗の通電状態でその都度電流の所定の割合を搬送するように配置されているようにした。
【0011】
さらに、前記課題を解決するために本発明の歪み測定エレメントでは、少なくとも1つの前記膜抵抗を備えたブリッジ回路が設けられているようにした。
【0012】
本発明の別の有利な実施態様および構成は、従属請求項に記載してある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点によれば、特に歪み測定エレメントに設けられた膜抵抗をトリミングするための方法が提案されている。膜抵抗は、低オームの給電領域と、この給電領域に電気的に接続された高オームの抵抗領域とを有している。当該方法では、第1のレーザ切断法が、膜抵抗の温度係数を変化させるために、抵抗領域に実施される。この場合、抵抗値ひいてはオフセット電圧は僅かしか変化させられない。次いで、第2のレーザ切断法で膜抵抗がトリミングされ、これによって、膜抵抗のオフセット電圧が目標値に関連して調整される。
【0014】
本発明による方法によって、1つの膜抵抗において、まず、第1のレーザ切断法を膜抵抗の抵抗領域に実施し、膜抵抗の抵抗値の温度係数が、設定された形式で調整されることによって、抵抗値の温度依存性に対するレーザ切断法の影響を補償することが可能となる。これによって、抵抗値の温度係数が位置する値または値範囲を予め規定することが可能となり、これによって、第2のレーザ切断法の実施後のオフセット電圧の温度係数の範囲を、大部分、第1のレーザ切断法によって規定することができる。
【0015】
第1のレーザ切断法を、予め規定された第1の切断長さで膜抵抗の抵抗領域に実施すると有利である。特に切断は抵抗領域の縁区分に沿って実施されてよい。
【0016】
有利な実施態様によれば、膜抵抗が、ブリッジ回路に設けられており、第1のレーザ切断法を実施し、これによって、ブリッジ回路のオフセット値および/または合成抵抗の温度係数が、設定された目標値に調整されるように、膜抵抗の抵抗の温度係数を調整する。有利には、この場合、第1のレーザ切断法は、ブリッジ回路のオフセット電圧の温度係数が、主として、0にもたらされるかもしくはほぼ0にもたらされるように実施されてよい。
【0017】
本発明の別の実施態様によれば、第2のレーザ切断法を、膜抵抗の給電領域に第2の切断箇所長さで実施し、ブリッジ回路のオフセット信号が、設定された目標値に調整されるように、第2の切断箇所長さの長さを選択してよい。これによって、膜抵抗を備えたブリッジ回路がトリミングされ、これによって、このブリッジ回路が、仕様書による設定値に相当する。
【0018】
所定の切断線に沿った第2のレーザ切断法の実施の間、ブリッジ回路の合成抵抗および/またはオフセット電圧を測定し、このオフセット電圧が、設定された値を達成した場合に、第2のレーザ切断法を停止することが提案されていてもよい。
【0019】
第2のレーザ切断法を一方の給電領域に実施し、これによって、給電領域の通電横断面を一区分で減少させ、抵抗領域に対して直列に接続された伝導性のウェブを形成することができると有利である。
【0020】
さらに、給電領域および/または抵抗領域が、複数の結合区分を有しており、第2のレーザ切断法を実施し、これによって、結合区分を連続的に第2のレーザ切断法によって切断し、結合区分の、連続する切断の間、その都度ブリッジ回路の合成抵抗もしくはオフセット電圧を検出し、合成抵抗もしくはオフセット電圧が、設定された目標値を達成するかまたは上回る場合に、結合区分の切断を停止してよい。
【0021】
本発明の別の観点によれば、特にブリッジ回路に使用するための歪み測定エレメントに用いられる膜抵抗が提案されている。この膜抵抗は、低オームの給電領域と、この給電領域に電気的に接続された高オームの抵抗領域とを有している。この場合、給電領域と抵抗領域とは、それぞれ伝導性の層材料から形成されている。給電領域および/または抵抗領域は複数の結合区分を給電領域もしくは抵抗領域の第1の区分と第2の区分との間に有している。結合区分は、膜抵抗の通電状態でその都度電流の所定の割合を搬送するように配置されている。
【0022】
このような膜抵抗は、結合区分の切断によって、規定された形式でトリミングすることができるという利点を有している。この場合、温度係数に望ましくない形式で影響を与える隆起領域の長さは、トリミングのためのレーザ切断法による切断時に低減することができる。
【0023】
本発明の別の有利な構成によれば、結合区分が、ウェブ領域によって第1の区分と第2の区分との間に形成されており、ウェブ領域が、層材料に設けられた1つまたはそれ以上の切欠きによって互いに分離されていてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0025】
図1には、たとえば歪みセンサ、圧力センサおよび別のセンサエレメントに使用されるような歪み感応性の膜抵抗2を備えたブリッジ回路1(ホイートストンブリッジ回路)の電気的な回路図が示してある。膜抵抗2は、しばしば、変形可能なセンサ面に被着されている。このセンサ面は、測定したい値により伸張するかまたは圧縮する。この場合、膜抵抗2は最も高い感度の方向で十字パターンに配置されている。ブリッジ回路1では、それぞれ2つの膜抵抗2が直列に接続されており、こうして形成された電流分岐点が互いに並列に接続されている。このような歪み測定エレメント1の出発電圧Uは、一方の電流分岐点の両膜抵抗2の間の接続点と、他方の電流分岐点の両膜抵抗2の間の接続点との間で検出可能である。
【0026】
膜抵抗2はしばしば同様に形成され、これによって、膜抵抗2は、理想事例では、同じ抵抗値を有している。したがって、理想事例では、膜抵抗2が等しい抵抗値を有している場合、オフセット電圧がゼロ状態において、すなわち、膜抵抗2が被着されたセンサ面の伸張または圧縮なしの負荷されていない膜抵抗において0ボルトに等しくなっている。しかし、実際には、製作に起因して、膜抵抗2の抵抗値に差異が生ぜしめられ、これによって、負荷されていない状態で可能な限り僅かなオフセット電圧を出力するために、トリミング法によって、1つまたはそれ以上の膜抵抗2がトリミングされなければならない。択一的または付加的には、合成抵抗、すなわち、ブリッジ回路の入出力抵抗が、仕様書によって設定された範囲内にもしくは設定された値にあるように、ブリッジ回路1が補償調整されてよい。さらに、互いに異なる抵抗値を備えたこのような歪み測定エレメント1は、オフセット電圧もしくは合成抵抗の温度依存性を有している。この温度依存性は、仕様書により同じく、規定された高さを上回らないようになっている。
【0027】
図2には、個別に1つの膜抵抗2が詳しく示してある。この膜抵抗2は2つの給電領域21を有している。両給電領域21は適切なコンタクティングを介して、外部から電気的にコンタクティング可能にまたは別の膜抵抗に接続されている。給電領域21は抵抗領域23の2つの接続部に電気的に接続されている。この抵抗領域23はメアンダ状の構造を有している。この構造はその横方向Qに伸張および圧縮に対する最大の感度を達成し、その長手方向Lに伸張および圧縮に対する、より僅かな感度を有している。膜抵抗2は、組み込まれた形式で基板(図示せず)に、たとえば圧力センサおよびこれに類するものの変形可能なセンサ面に選択的な形式で、たとえばリソグラフィ・マスク技術によって被着されていて、したがって、ほぼコンスタントな厚さを有している。膜抵抗の材料は、有利にはNiCrSi合金を含有している。このNiCrSi合金はセンサ面に対して、たいていSiOから成る絶縁層によって絶縁される。膜抵抗の材料は、通常、非晶質の形式で、たとえばスパッタリングによって被着されている。
【0028】
ブリッジ回路1のオフセット電圧もしくは合成抵抗を補償調整するために、公知先行技術によれば、切断法によって1回の切断が給電領域21に実施され、これによって、全膜抵抗の抵抗値がトリミングされる。切断は、有利にはレーザ切断法によって実施される。この場合、レーザによって、膜抵抗2の抵抗層(抵抗膜)が溶融させられ、したがって、この抵抗層が相応の箇所で分割される。層材料(膜材料)の溶融によって、この層材料の両部分の縁部に切断線に沿って隆起部が形成される。この隆起部では、非晶質の抵抗材料が凝固時に再結晶化する。再結晶化された層材料は、通常、抵抗材料に対して異なる固有の抵抗と、この抵抗の、それぞれ異なる温度係数とを有している。どの箇所でレーザ切断が給電領域21に行われるかに応じて、それぞれ異なる幅のウェブ24が形成される。このウェブ24は給電領域を、予め規定された長さに対して狭め、したがって、膜抵抗の合成抵抗を高める。給電領域における切断線の位置に対する例は、図3aおよび図3bに示してある。個々の各膜抵抗においてレーザ切断が長く実施されればされるほど、それぞれ異なる固有の抵抗と、切断線の縁部に形成される隆起部の抵抗の、それぞれ異なる温度係数とへの影響がますます大きくなる。これによって、レーザ切断法により補償調整された膜抵抗の温度依存性が、各切断線の長さに関連して異なっていて、したがって、ブリッジ回路のオフセット電圧もしくは合成抵抗の温度依存性が高められ得る。ブリッジ回路のオフセット電圧もしくは合成抵抗のトリミング時のレーザ切断の長さは、たとえばトリミングプロセスの間、すなわち、レーザ切断法の実施の間にオフセット電圧もしくは合成抵抗が測定されることから明らかであるので、レーザ切断法の実施時には、温度依存性の調整が行われ得ない。この理由から、本発明によれば、レーザ切断法を2回のステップで実施することが提案されている。
【0029】
オフセット電圧もしくは合成抵抗の本来のトリミング前に実施される第1のレーザ切断法では、抵抗領域23に1回の第1の切断が、予め規定された長さで抵抗領域の縁部に実施され、これによって、抵抗領域の層材料の一部が溶融し、1つの隆起部で再結晶化する。この切断は、有利には、抵抗領域23の幅ひいては抵抗値が著しく減少せず、抵抗領域23の層材料の一部が、抵抗の、変化させられた温度係数を有する1つの隆起部に変換されるように実施される。図4には、抵抗領域における第1のレーザ切断の位置が例示してある。この第1のレーザ切断法(前切断)では、抵抗領域23の抵抗値は著しく変化させられず、その温度係数しか変化させられず、これによって、第1のレーザ切断法により、主として、膜抵抗の抵抗の温度係数にしか影響が与えられず、膜抵抗2の抵抗値には僅かしか影響が与えられない。これによって、膜抵抗2の温度係数もしくは膜抵抗2が挿入された歪み測定回路のオフセット電圧および/または合成抵抗の温度係数を可能な限り望ましい形式で適合させることができる。有利には、第1のレーザ切断法によって、ブリッジ回路1のオフセット電圧もしくは合成抵抗の温度依存性は0の範囲内にもたらされる。いま、後続の第2のレーザ切断法において、公知先行技術に基づき公知であるように、ブリッジ回路のオフセット電圧もしくは合成抵抗が、仕様書による設定値に相応して公知の形式で調整される。
【0030】
第1のレーザ切断法による切断時の切断長さ(前切断の長さ)は、1回のチャージの幾つかの歪み測定エレメント(同一の製作プロセスで製作されるエレメント)に対して等しく選択される。この場合、第1のレーザ切断法の実施前の幾つかの歪み測定エレメントに関するブリッジ回路の平均的な温度依存性が基となる。経験値または演算モデルによって、オフセット電圧もしくは合成抵抗の、検出された平均的な温度依存性に関連して、1つまたはそれ以上の膜抵抗が選択され、この膜抵抗に第1の切断長さが割り当てられる。次いで、相応の膜抵抗が第1の切断法によって同じ第1の切断長さで切断される(前切断)。
【0031】
第1のレーザ切断法の主要な観点は、合成抵抗を著しく変化させることなしに、膜抵抗の抵抗材料の溶融を達成することにある。抵抗領域での抵抗材料の溶融および凝固によって、再結晶化された抵抗材料から成る1つの隆起部が形成される。この隆起部は膜抵抗の温度係数に影響を与える。
【0032】
第2のレーザ切断法の実施時の切断線によって生ぜしめられるウェブ幅は、たとえば給電領域の元々のウェブ幅の1/4〜1/2であってよい。すなわち、200μmの給電領域の幅の場合には、50〜100μmの間のウェブ幅である。
【0033】
図5には、幾つかの歪み測定エレメントに用いられる、図1に示したようなブリッジ回路のオフセット電圧の温度係数が示してある。歪み測定エレメントの2つの比較グループが形成されている。この場合、正方形で図示した測定値は、後続のステップで第1のレーザ切断法によって前切断されるようになっている(前切断あり)歪み測定エレメントに相当しており、菱形で示した測定値は、前切断なしにトリミングされるようになっている歪み測定エレメントに相当している。図5に定性的に認められるように、オフセット電圧の温度依存性は、ほぼ全ての歪み測定エレメントに対して0未満である。
【0034】
図6には、いま、歪み測定エレメントの両比較グループに対して、第1のレーザ切断法後のオフセット電圧の、変化させられた温度係数が示してある。第1のレーザ切断法の実施後には、適宜にトリミングされた歪み測定エレメント(正方形)が、オフセット電圧の、約0の範囲内にある温度係数を有していることが認められる。すなわち、温度係数の値が、0%/゜K周辺の範囲内で変動する。
【0035】
第1のレーザ切断法によって、オフセット電圧の温度係数のほぼ均一なシフトが生ぜしめられることが認められる。この場合、測定値のばらつきは増加しない。したがって、第1のレーザ切断法によって、オフセット電圧の温度係数をほぼゼロにトリミングすることができる。
【0036】
図7に示したように、いま、第2のレーザ切断法によって各歪み測定エレメントが個別にトリミングされ、これによって、所要の切断長さに応じて、オフセット電圧の温度係数のそれぞれ異なるシフトが生ぜしめられる。仕様書により、歪み測定エレメントのオフセット電圧もしくは合成抵抗の温度係数は、0周辺の誤差範囲内にあることが望ましいので、したがって、第1のレーザ切断法によって、歪み測定エレメントの大部分が仕様書の範囲内にあるように、この歪み測定エレメントの大部分をトリミングすることが一層良好に可能となる。このことは、第1のレーザ切断法によって前切断されなかった歪み測定エレメントでは、事情により不可能となる。なぜならば、第2のレーザ切断法時の所要の切断長さに応じて、オフセット電圧もしくは合成抵抗の温度係数が、仕様書によって設定された範囲内にもはや位置していないからである。この事例では、歪み測定エレメントが拒絶されなければならない。
【0037】
したがって、本発明による方法の使用によって、膜抵抗のトリミング時の歩留り、たとえば1つの歪み測定エレメントに対するトリミング時の歩留りを高めることが可能となる。
【0038】
図8には、1つの膜抵抗の1つの構成が示してある。この膜抵抗によって、第2のレーザ切断法による切断時に、オフセット電圧もしくは合成抵抗の温度係数に対する切断長さの影響を減少させることができる。このためには、給電領域21の1つが切欠き27を備えている。この切欠き27は、すでにリソグラフィ・マスク技術による膜抵抗2の製作時に設けられる。したがって、切欠き27はその縁部に、温度係数に望ましくない形式で影響を与える隆起部を有していない。なぜならば、切欠き27は、膜抵抗の抵抗材料が溶融される温度プロセスによって製作されないからである。切欠き27は一列に給電領域21に配置されている。この場合、切欠きの間には、結合区分28が位置している。切欠き27の列は、ほぼ膜抵抗を流れる電流の方向に沿って延びている。第2のレーザ切断法による膜抵抗2のトリミング時には、いま、切欠き27の間に形成された結合区分28が抵抗材料から連続的に切断され、その間もしくはウェブの1つの各切断後、ブリッジ回路1のオフセット電圧もしくは合成抵抗が測定される。測定された値に相応して、後続の結合区分28を切断すべきか否かが決定される。特に1つの結合区分28の切断後、オフセット電圧もしくは合成抵抗が所望の値を達成したかまたは上回った場合には、該当する歪み測定エレメントに対する第2のレーザ切断法が終了される。
【0039】
図9〜図11には、図5〜図7に類似して、図8の構成によるそれぞれ1つの膜抵抗を有する幾つかの歪み測定エレメントに対するオフセット電圧の温度係数が示してある。図10ならびに図6に認められるように、第1のレーザ切断法によって、温度係数をほぼ0周辺の範囲内にもたらすことができ、第2のレーザ切断法の実施によって、図11により、歪み測定エレメントのオフセット電圧もしくは合成抵抗を適合させることができる。結合区分28もしくは切欠き27を膜抵抗2の給電領域21に設けることによって、オフセット電圧の温度依存性の、第2のレーザ切断法における適合プロセスから生ぜしめられるばらつきが著しく僅かとなり、図11に示した正方形の例では、図7に示した菱形に比べて極めて著しく低減されている。なぜならば、第2のレーザ切断法によって給電領域に、再結晶化された抵抗材料から成る1つの隆起部が形成されている領域が、図3aおよび図3bの例に比べて著しく低減されているからである。
【0040】
図12には、本発明による膜抵抗の別の構成が示してある。この膜抵抗は、メアンダ状に形成された抵抗領域23で2つのメアンダの間にウェブ状の結合部を有している。この結合部は、膜抵抗2の抵抗値を適合させるために、選択的に第2のレーザ切断法によって切断することができる。この切断は、主として、オフセット電圧もしくは合成抵抗の測定の間の前述した方法と同じ方法により行われる。膜抵抗2のこのような構成におけるトリミングの、量子化された特徴に基づき、ブリッジ回路で向かい合って位置する抵抗の1回のトリミングが必要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電気的な歪み測定エレメントにおけるブリッジ回路のための歪み感応性の膜抵抗の結線の電気的な回路図である。
【図2】図1に示した歪みエレメントに用いられる膜抵抗の詳細図である。
【図3a】歪み測定エレメントをトリミングするための、膜抵抗の給電領域への1つの可能なレーザ切断を示す図である。
【図3b】歪み測定エレメントをトリミングするための、膜抵抗の給電領域への別の可能なレーザ切断を示す図である。
【図4】本発明の有利な実施態様による、膜抵抗の抵抗への第1のレーザ切断法後の膜抵抗を示す図である。
【図5】レーザ切断法の実施前の幾つかの歪み測定エレメントのオフセット電圧の温度依存性を示す図である。
【図6】歪みエレメントの一部における第1のレーザ切断法の実施後の幾つかの歪み測定エレメントのオフセット電圧の温度係数TKOの変化を示す図である。
【図7】歪み測定エレメントの抵抗値もしくはオフセット電圧をトリミングするための第2のレーザ切断法の実施後の幾つかの歪み測定エレメントのオフセット電圧の温度依存性を示す図である。
【図8】少なくとも1つの給電領域が切欠きを備えている、特に歪み測定エレメントに用いられる膜抵抗の別の構成を示す図である。
【図9】レーザ切断法の実施前の幾つかの歪み測定エレメントによる、図8の構成によるオフセット電圧の温度係数を示す図である。
【図10】歪みエレメントの一部における第1のレーザ切断法の実施後の幾つかの歪み測定エレメントのオフセット電圧の温度係数を示す図である。
【図11】両レーザ切断法の実施後の幾つかの歪み測定エレメントのオフセット電圧の温度係数を示す図である。
【図12】本発明による膜抵抗のさらに別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブリッジ回路、 2 膜抵抗、 21 給電領域、 23 抵抗領域、 24 ウェブ、 27 切欠き、 28 結合区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に歪み測定エレメント(1)に設けられた膜抵抗(2)をトリミングするための方法において、膜抵抗が、低オームの給電領域(21)と、該給電領域(21)に電気的に接続された高オームの抵抗領域(23)とを有しており、当該方法が、以下のステップ:すなわち、
−オフセット電圧の温度係数を変化させるために、第1のレーザ切断法を抵抗領域(23)に実施し;
−第2のレーザ切断法を実施し、膜抵抗(2)の抵抗値を、設定された目標値に関連してトリミングする;
を備えていることを特徴とする、膜抵抗をトリミングするための方法。
【請求項2】
第1のレーザ切断法を、予め規定された第1の切断長さで抵抗領域(23)に実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のレーザ切断法を、抵抗領域(23)の縁領域に沿った1回の切断によって実施する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
膜抵抗(2)が、ブリッジ回路に設けられており、第1のレーザ切断法を実施し、これによって、ブリッジ回路のオフセット値および/または合成抵抗の温度係数が、設定された目標値に関して調整されるように、膜抵抗(2)の抵抗値の温度係数を調整する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第2のレーザ切断法を、膜抵抗の給電領域(21)に第2の切断長さで実施し、ブリッジ回路の合成抵抗および/またはブリッジ回路のオフセット電圧が、設定された目標値に調整されるように、第2の切断長さの長さを選択する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
所定の切断線に沿った第2のレーザ切断法の実施の間、ブリッジ回路(1)の合成抵抗もしくはオフセット電圧を測定し、合成抵抗もしくはオフセット電圧が、設定された目標値を達成した場合に、第2のレーザ切断法を停止する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第2のレーザ切断法を給電領域(21)に実施し、これによって、給電領域(21)の通電横断面を一区分で減少させ、抵抗領域(23)に対して直列に接続された伝導性のウェブを形成する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
給電領域(21)および/または抵抗領域(23)が、複数の結合区分(28)を有しており、第2のレーザ切断法を実施し、これによって、結合区分(28)を連続的に第2のレーザ切断法によって切断し、結合区分の、連続する切断の間、ブリッジ回路の合成抵抗もしくはオフセット電圧を検出し、合成抵抗もしくはオフセット電圧が、目標値を達成するかまたは上回る場合に、結合区分(28)の切断を停止する、請求項4記載の方法。
【請求項9】
特にブリッジ回路に使用するための歪み測定エレメント(1)に用いられる膜抵抗(2)であって、当該膜抵抗(2)が、低オームの給電領域(21)と、該給電領域(21)に電気的に接続された高オームの抵抗領域(23)とを有しており、両領域(21,23)が、それぞれ伝導性の層材料から形成されている形式のものにおいて、
給電領域(21)および/または抵抗領域(23)が、複数の結合区分(28)を給電領域(21)もしくは抵抗領域(23)の第1の区分と第2の区分との間に有しており、結合区分(28)が、当該膜抵抗(2)の通電状態でその都度電流の所定の割合を搬送するように配置されていることを特徴とする、膜抵抗。
【請求項10】
結合区分(28)が、ウェブ領域によって第1の区分と第2の区分との間に形成されており、ウェブ領域が、層材料に設けられた1つまたはそれ以上の切欠き(27)によって互いに分離されている、請求項9記載の膜抵抗。
【請求項11】
歪み測定エレメント(1)において、請求項9または10記載の少なくとも1つの膜抵抗(2)を備えたブリッジ回路が設けられていることを特徴とする、歪み測定エレメント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−13155(P2007−13155A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176681(P2006−176681)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】