説明

薄膜半導体層の形成方法

【課題】 半導体層の表面に、その半導体層よりも非常にキャリア濃度の大きい半導体層を形成する高キャリア濃度の薄膜半導体層の形成方法を提供する。
【解決手段】 半導体層1表面の自然酸化膜または250℃以下の低温で生成した酸化膜4を還元して形成される活性化した金属元素と結合させることにより、半導体層1よりも高キャリア濃度で、かつ、バンドギャップが前記半導体層より大きい薄膜化合物半導体層2を形成する。この上に、SiN:Hからなる保護層3を設けることが薄膜を保護するために好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップの大きい半導体層でも高キャリア濃度で、しかも電子をトンネルさせ得るような薄い層でも正確な厚さに形成することができる高キャリア濃度の薄膜半導体層の形成方法に関する。さらに詳しくは、窒化ガリウム(GaN)系化合物や、炭化珪素(SiC)のような非常にバンドギャップの大きい半導体層でも、格子定数が大幅に異なる半導体層上に還元置換で形成されるために非常に薄く、高価な設備を利用することなく、歪み格子層として形成することができ、しかも、電極との接触抵抗を非常に低下させることができる高キャリア濃度の薄膜半導体層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNや、SiCは、バンドギャップが大きく、また、電子移動度が大きかったり、高耐熱性であったり、対放射線性が高かったりするため、短波長の発光素子やマイクロ波以上の高周波デバイスの材料としても電力用デバイス、車載用デバイスでも期待されている。しかし、このような半導体層は、キャリア濃度を上げることが難しく、電極材料との接触抵抗が大きくなり、電圧降下が生じて、デバイス性能を低下させているという問題がある。とくに、これらの材料のP型半導体層は、キャリア濃度を上げることができず、LED(Light Emitting Diode)にした場合でも、電流をチップの全体に拡げることができず、電極の近傍しか発光させられないと共に、とくにP型層と電極とのオーミックコンタクトを得にくいという問題がある。
【0003】
たとえば、GaN系化合物半導体(GaNの他、ガリウム(Ga)の一部または全部がアルミニウム(Al)などの他のIII族元素と置換した化合物を含む意味で、窒化物半導体ともいう、以下同じ)を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)の構造は、図6に示されるような構造が知られている。すなわち、図示しないサファイア基板などの上に積層される半絶縁性またはキャリア濃度が非常に低いGaNからなるチャネル層51上に、キャリア濃度が大きく、かつ、バンドギャップが大きく、所望のしきい値電圧となるような20〜30nm程度の厚さのAlGaN系化合物半導体層52が設けられ、その表面にソース電極53、ドレイン電極54、およびショットキー接合のゲート電極55が形成されている。このような構成にすることにより、チャネル層51のAlGaN系化合物半導体層52との界面側に二次元電子ガスが発生し、不純物の少ないチャネル層51を電子が高速で移動して高速、低雑音のトランジスタとして動作する。
【0004】
しかし、このような構造では、ソース・ドレイン電極53、54とAlGaN系化合物半導体層52とのコンタクト抵抗率を充分に下げることができないため、出力電力、電力負荷効率、動作周波数が低下するという問題があり、低抵抗のオーミックコンタクトを得るため、前述のAlGaN系化合物半導体層52の少なくとも電極53、54との接触部の厚さを薄くし、ヘテロ界面に蓄積された二次元電子ガスを電極にトンネルさせることにより、電極53、54との接触抵抗を下げることが提案されている(引用文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−100778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のHEMTのように、半絶縁性またはキャリア濃度の非常に低い半導体層上に、バンドギャップが大きくキャリア濃度の大きい半導体層を接合させることにより、その界面に二次元電子ガスを発生させる構造では、バンドギャップの大きい半導体層のキャリア濃度が大きいほどフェルミ準位が高くなって二次元電子ガスを発生させやすいと共に、そのバンドギャップの大きい半導体層上に形成する電極との接触抵抗を小さくすることができるため、高キャリア濃度に形成することが好ましい。しかし、バンドギャップの大きい材料、とくにSiCやGaN系化合物半導体では、そのキャリア濃度を充分に上げることができず、N型でも1018cm-3オーダの程度を越えるのが困難であるという問題がある。この傾向は、Alの混晶比率が大きくなるほど顕著である。
【0006】
また、バンドギャップの大きいP型半導体層では、さらにそのキャリア濃度の限度が1桁以上程度下がり、前述のように、GaN系化合物半導体を用いたLEDやLD(レーザダイオード)などの半導体発光素子においても、電極からの電流拡がりが低下したり、直列抵抗が増大して駆動電圧が増大したりするという問題がある。また、SiCインパットダイオードでも、P型層の電極との接触抵抗が大きいために出力電力で大幅な損をしており、この比接触抵抗を10×10-5Ω・cm2程度以下に下げることができれば、パルス出力で1000倍程度の出力向上が見込まれている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、半導体層の表面に、その半導体層よりも非常にキャリア濃度の大きい半導体層を形成する高キャリア濃度の薄膜半導体層の形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、半導体層表面にその半導体層よりもバンドギャップおよびキャリア濃度の両方が大きいと共に、電子をトンネルさせ得る薄膜半導体層の形成方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、GaN系化合物半導体や、SiCを用いたデバイスで、電極と接触する半導体層のキャリア濃度をN型層のみならず、P型層でも向上させて電極との接触抵抗を大幅に低下させ得る高キャリア濃度の薄膜半導体層の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による薄膜半導体層の形成方法は、半導体層表面の自然酸化膜または250℃以下の低温で生成した酸化膜を還元して形成される活性化した金属元素と他の元素とを結合させることにより、前記半導体層よりも高キャリア濃度で、かつ、バンドギャップが前記半導体層より大きい薄膜化合物半導体層を形成することを特徴とする。
【0011】
ここに半導体層とは、基板上に1種類または多種類の半導体層がエピタキシャル成長される場合には、その表面の半導体層を意味し、半導体基板だけの場合には、その基板の表面部分を意味し、半絶縁性でもよいし、N型でもP型でもよい。
【0012】
具体的には、たとえば前記半導体層がインジウム(In)を化合物の構成元素として含有する半導体層からなり、該Inを含有する半導体層表面の酸化膜を還元して清浄化した後に、直ちに酸化物生成用液体に前記半導体層を浸漬し、または250℃以下の低温で酸化性雰囲気に曝すことにより、前記半導体層表面に、酸化インジウム層を形成することができる。
【0013】
ここに「化合物の構成元素として含有する」とは、たとえばインジウムリン(InP)のInとPやインジウムヒ素(InAs)のInとAsのように、化合物の構成元素として含むものを意味し、ドーパントとして含むものを意図していない。この用語は他の化合物についても同様である。また、酸化物生成用液体とは、たとえば高純水(高純水中で煮沸する場合を含む)、過酸化水素水、オゾン含有水、酸素含有水などの半導体層表面の活性化した金属元素を酸化させ得る液体を意味し、酸化性雰囲気とは、紫外線励起オゾン含有気体、250℃以下の低温での酸素プラズマ処理、などを意味する。
【0014】
前記酸化インジウム層を形成した後、直ちにモノシランガスおよび窒素原子含有ガスを導入することにより、前記酸化インジウム層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成すれば、非常に薄くて安定性のない酸化インジウムなどの酸化物層を消失させることなく安定に維持することができる。
【0015】
別の具体的な方法として、前記半導体層表面に生成される酸化膜の還元を、ガスのプラズマ化により発生する水素イオンまたはハロゲンイオンにより行うと共に、前記活性化した金属元素と結合させる元素の原料ガスおよびドーパント元素の原料ガスを導入してプラズマ化し、前記活性化した金属元素と結合させることにより、前記高キャリア濃度の薄膜化合物半導体層を形成することもできる。
【0016】
前記半導体層がGaを化合物の構成元素として含有する半導体層からなり、アンモニアガスのプラズマ処理により生成される水素(H)イオンにより前記Gaを含有する半導体層表面の酸化膜を還元して清浄化すると共に、該還元により露出する活性化したGaを前記アンモニアガスのプラズマ処理により生成される窒素(N)イオンと結合させることにより、GaとNを化合物の構成元素として含む化合物からなる薄膜化合物半導体層を形成することにより、高キャリア濃度のGaN系化合物半導体層の薄膜を形成することができる。
【0017】
ここにGaを化合物の構成元素として含有する半導体層とは、たとえばGaAs、GaP、およびこれらの混晶、GaNなどの他、これらのGaの一部がAlやInなど他のIII族元素と置換した混晶を含む半導体層を意味する。
【0018】
前記ドーパント元素として、VIB族の元素のガスを導入することにより、高キャリア濃度のN型で、GaとNを含む化合物からなる薄膜化合物半導体層を形成することができる。
【0019】
前記薄膜化合物半導体層を形成した後、同じ装置内でさらにモノシランガスを導入することにより、前記薄膜化合物半導体層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成することにより、GaとNを含む化合物半導体層の表面に酸化膜が形成されることなく保護され、たとえばMISHEMTなどを形成する場合には、この保護膜をそのまま絶縁層として表面にゲート電極を形成することができる。ここに珪素窒素水素合金(SiN:H)は、Hを数at%から10at%程度含有している窒化珪素である。
【0020】
前記半導体層がSiまたはSiCからなり、前記活性化した金属元素と結合させる元素の原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入し、プラズマ処理により発生する炭素(C)イオンと前記還元により活性化したSiとを結合させることにより、SiCからなる薄膜化合物半導体層を形成することもできる。
【0021】
前記ドーパント元素の原料ガスとして、III族元素の水素化物を導入することにより、高キャリア濃度のP形SiCからなる薄膜化合物半導体層を形成することができ、たとえばインパットダイオードのP側電極との接触抵抗を大幅に低下させ、出力特性などを大幅に向上させることができる。
【0022】
前記ドーパント元素の原料ガスとして、アンモニアガスを導入することにより、高キャリア濃度のN型SiCからなる薄膜化合物半導体層を形成することができる。
【0023】
前記薄膜化合物半導体層を形成した後、同じ装置内でさらにアンモニアガスとモノシランガスを導入することにより、前記薄膜化合物半導体層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成することができ、薄膜で酸化などにより消失しやすい薄膜半導体層を安定に保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の薄膜半導体層の形成方法によれば、半導体層表面の酸化膜を還元して露出するダングリングボンドを有する元素に直接所望の化合物を構成する元素および必要に応じたドーパント元素を結合させることにより形成しているため、半導体層表面のダングリングボンドを有する元素のみと結合し、10nm以下の非常に薄い薄膜半導体層であることから、半導体層と格子整合しない化合物半導体層でも超格子構造となり、歪み格子層として形成することができる。しかも、ガスをプラズマ化するだけで歪み格子層を薄膜で形成することができ、従来のMBE装置とか、MOCVD装置などの高価で、メインテナンスなども難しい装置を必要とすることなく、非常に安価に薄膜半導体層を形成することができる。なお、半導体層表面の酸化膜をオゾンなどにより酸化させて形成することにより、厚めの酸化膜を形成することができ、その酸化膜の還元により形成される半導体層も厚めに形成することができるが、低温で酸化させているため、10nmを超えることはなく、全ての酸化膜を還元して置換することができ、酸化膜が残存することはない。また、自然酸化膜だけの状態で還元置換をすれば、1〜3nm程度の非常に薄い半導体層を形成することができる。
【0025】
その結果、本願発明者らにより別途出願をしているように、N型半導体層よりもバンドギャップが大きく、かつ、キャリア濃度が大きいN+型の薄膜半導体層をN型半導体層上に形成して、二次元電子ガスをその界面に発生させ、その二次元電子ガスの電子をトンネルさせることにより、順方向の立上り電圧が非常に低く、かつ、逆方向の耐圧が非常に高いダイオードを形成することができる。また、Si半導体層やGaAs半導体層上に、それよりもバンドギャップが大きく、かつ、キャリア濃度が大きい半導体層を形成したHEMTを簡単に形成することもできる。さらに、ダングリングボンドを有する元素と他の元素とを結合させているため、ドーパント元素を混入することにより、ドーパント元素も同様にダングリングボンドを有する元素と結合して、キャリア濃度を大幅に高くすることができ、電極との接触抵抗も大幅に低下させることができる。
【0026】
また、半導体層がInを化合物の構成元素として含有する場合、Inを含有する半導体層の表面側のみが酸化しており、酸化膜が還元されると、元々Inと化合していたV族元素などの酸化物は低温でも蒸気圧が高くて蒸発したり、水溶性であるために、水洗過程で解けて消失したりする。その結果、表面側に存在するInのみがダングリングボンドを有し新たに酸化するため、非常に薄い酸化インジウム膜を形成することができる。また、強制的な高温での酸化膜の形成ではなく、高純水(煮沸する場合もあり)などの液体または250℃程度以下の低温での酸素雰囲気下での酸化であるため、酸素欠損が生じやすい酸化膜となり、非常にキャリア濃度の高いN型半導体層とすることができる。さらに、表面の不純物などを巻き込んだ自然酸化膜を還元して清浄化した状態で高純水などにより新たに酸化膜を形成しているため、非常に純粋な酸化インジウム(In23 )層を形成することができる。
【0027】
なお、この酸化インジウム層は、非常に薄く還元しやすいため、消滅させないように注意をしないと安定に維持することができない。たとえば、この上に電極などの金属層を形成する場合には、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの還元性のある金属を堆積すると、直ちに還元されてしまうので、還元作用の少ないNiなどにより電極を形成する必要がある。これらの観点から、酸化インジウム層などを形成した後、直ちに、たとえば珪素窒素水素合金(SiN:H)などからなる保護膜をその表面に形成することが好ましい。電極を形成するため開口部を設ける際に、露出させる酸化インジウム層が消失する場合には、再度酸化処理をすることにより、電極の形成場所のみに酸化インジウム層を再生させることができる。
【0028】
また、酸化インジウム以外の薄膜半導体層を形成する場合、その半導体層を構成する元素のガスと共にドーパント元素のガスを導入してプラズマ化したイオンを、酸化膜の還元により活性化した金属元素と結合させているため、活性化した金属元素は、ドーパント元素とも同様に化合し、非常にドーパント元素を取り込みやすくなり、キャリア濃度を高くすることができる。しかも、このようにして取り込んだドーパント元素は、半導体層を構成する元素と確実に結合して存在しているため、その後の熱処理などによっても拡散し難く、非常に安定した高キャリア濃度の半導体層になる。このドーパント取り込みの割合は、半導体構成用元素のガスと、ドーパント用元素のガスとの流量比を変えることにより調整することができ、1019〜1021cm-3のオーダの範囲で、所望のキャリア濃度で得ることができる。この場合も、非常に薄い薄膜半導体層であるため、生成したGaNなどの半導体層の表面が酸化し、その酸化膜を除去すると、消滅してしまう虞れがあるため、直ちに表面に保護膜を形成するか、できるだけ早く次の工程に進めることが好ましい。
【0029】
このような方法を用いることにより、前述の酸化インジウム層と同様に、たとえばワイドギャップ半導体層薄膜を形成する場合のように、半導体層とは格子定数が大幅に異なる層でも、表面の酸化膜が還元置換された部分だけの10nm以下の非常に薄い層で超格子構造となっているため、歪み格子層として形成される。その結果、GaAs半導体層上にGaN系化合物薄膜層を形成したり、Si半導体層上にSiC薄膜層を形成したりすることができ、半導体層上にそれよりも非常にワイドギャップな半導体層を簡単に形成することができ、前述の二次元電子ガスを利用したダイオードやHEMTなどにも有用することができる。
【0030】
半導体層がGaを化合物の構成元素として含む場合、アンモニアガスを導入してプラズマ処理をすることにより、アンモニアガスがNイオンとHイオンに分解し、Hイオンにより半導体層表面の酸化物である酸化ガリウム(Ga23) などを還元して、活性化したGaとNイオンとが結合してGaNなどの化合物を表面に形成する。この際、アンモニアガスと共に、たとえばドーパントの硫黄(S)のガスである硫化水素(H2S)も一定の割合で混入することにより、そのガスの分解により発生するSイオンが不安定な構造のためGaの欠損部分に入って、N型半導体層として作用する。なお、酸化物の還元の際に、GaAsやGaPのAsやPなどのV族元素の酸化物も存在して還元されるが、これらはAs23のように蒸気圧が高いために気化、蒸発して消滅したり、酸化リン(P25) のように水洗の過程で水に溶解して解け去ったりする。また、P型半導体層にする場合には、ドーパントガスとしてモノシラン(SiH4)あるいはモノゲルマン(GeH4)などのIV族元素の水素化物を導入することにより、SiあるいはGeはV族サイトに入ってP型として作用する。このSiやGeもNと同様に活性化したGaと化合するため、確実にキャリア濃度の高いP型GaN系化合物半導体層とすることができる。
【0031】
このような高キャリア濃度のGaN系化合物半導体の薄膜を形成することができることにより、GaN系化合物半導体を用いた前述の立上り電圧が非常に低く、かつ、逆方向耐圧の高いダイオードを得ることができるのみならず、GaN系化合物半導体層と電極との接触抵抗を大幅に小さくすることができ、GaN系化合物半導体を用いた半導体発光素子などの特性を大幅に向上させることができる。とくに、P型層のキャリア濃度でも1019〜1021cm-3のオーダと非常に高くすることができ、P型層の表面に形成するだけでも、P側電極との接触抵抗を下げることができると共に、LEDの場合、電流をチップの全体に拡散させやすく、非常にその効果は大きい。
【0032】
さらに、半導体層がSiまたはSiCの場合、たとえばメタンガスのような炭化水素ガスを導入してプラズマ化することにより、HイオンとCイオンとが生成され、Hイオンにより表面のシリコン酸化膜が分解され、ダングリングボンドを有するSiがCイオンと結合してSiCを形成することができるが、この際、ドーパントとして、ジボラン(B26)などIII族元素の水素化物をドーパントガスとして導入しておくことにより、前述の各例と同様に、Siあるいはカーボンの一部がBと結合して非常に高キャリア濃度のP型SiC層を得ることができる。すなわち、SiCからなる半導体層でも、その表面の酸化膜を還元置換することにより、高キャリア濃度のSiCとすることができる。なお、SiCは酸化し難いため、表面に自然酸化膜が充分に形成されていない場合には、オゾンガス雰囲気中に曝して強制的に酸化膜を形成して同様に行うことができる。また、N型のSiC層にするには、ドーパントガスとして、アンモニアガスなどのV族元素の水素化物を一部導入すれば、同様に高キャリア濃度のN+型SiC層を得ることができる。なお、これらの場合も、表面の酸化物を形成する際、Cの酸化物、つまり炭酸ガスや一酸化炭素は気体なので蒸発して排気され表面からは消滅する。従って酸化されたSiCの表面にはSiの酸化物のみが残存している。
【0033】
このような高キャリア濃度のSiC半導体の薄膜を形成することができることにより、SiC半導体を用いた前述の立上り電圧が非常に低く、かつ、逆方向耐圧の高いダイオードを得ることができるのみならず、SiとSiCの接合によるHEMTを構成することもできる。さらに、P型SiC半導体層でも、電極との接触抵抗を大幅に小さくすることができ、SiC半導体を用いたインパットダイオードなどの特性を大幅に向上させることができ、出力電力を従来の1000倍程度以上にすることができる。すなわち、従来の発振効率は0.01%以下であったのが、本来のインパットの効率である10%程度になると予想され、キロワットオーダという非常に高出力を得ることができ、マグネトロンにとって代って完全固体化レーダへの道が開かれるという効果がある。とくに、P型層のキャリア濃度でも非常に高くすることができ、P型層の表面に形成するだけでも、電極との接触抵抗を下げることができ、非常にその効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
つぎに、図面を参照しながら本発明の薄膜半導体層の形成方法について説明する。本発明による薄膜半導体層の形成方法は、図1にその一実施形態の形成方法の工程図が断面説明図で示されるように、半導体層1表面の自然酸化膜または250℃以下の低温で生成した酸化膜4を還元して形成される活性化した金属元素と結合させることにより、半導体層1よりも高キャリア濃度で、かつ、バンドギャップが前記半導体層より大きい薄膜化合物半導体層2を形成することを特徴としている。
【0035】
図1に示される例は、半導体層1として、インジウムを含有するN型の半導体層、たとえばN型InP層1が基板と共用で形成された例(N型InP基板1)であり、まず図1(a)に示されるように、表面に自然酸化膜4が形成されたN型InP基板1を準備する。インジウムを化合物の構成元素として含有していると、非常に酸化されやすいため、空気中に置かれているだけでその表面に酸化インジウム層4が形成されるが、充分な酸化インジウム層4が形成されていない場合には、室温程度のごく低温で薄い酸化インジウム層4を形成する。このごく低温での酸化インジウム層4の形成は、たとえば高純水中での煮沸酸化、オゾン酸化、オゾン水酸化、過酸化水素水による酸化、あるいは低温プラズマによる酸化などにより、数nm程度の厚さの酸化インジウム層4を形成することができる。
【0036】
半導体層1としては、N型InPに限定されるものではなく、このインジウムやPの一部が他の元素で置換されていてもよいが、その置き換わる元素が、GaやAlのような絶縁性の酸化膜を形成する元素を余り多く含むことは好ましくない。また、一部が他の元素と置き換わっても、インジウムが少なくとも30at%以上含まれることが、酸化インジウムを形成するため、活性化したインジウムを半導体層の表面に形成する上で必要である。この材料やキャリア濃度は、製造する目的の半導体装置に応じて適宜選定され、キャリア濃度もその目的に応じて設定されるが、たとえば1×1015〜1×1018cm-3程度のキャリア濃度に形成される。また、少なくとも表面にインジウムを含む半導体層1が形成されていれば、基板としては他の半導体基板でも、サファイアのような絶縁基板でもよい。また、InP基板でも、その表面にさらに所望の不純物濃度となるようにInP層などをエピタキシャル成長されたものでも構わない。
【0037】
つぎに、図1(b)に示されるように、N型InP基板1を塩酸のような清浄化処理のための溶液に浸漬し、N型InP基板1の表面に形成された自然酸化膜や付着物を除去する。その結果、自然酸化膜の酸素原子が還元されて活性化したダングリングボンドを有するIn層5が表面に露出する。清浄化の方法として、酸性水溶液中での電解研磨を入れておいた方が好ましい。
【0038】
その後、水洗すれば直ちに酸化膜は形成されるが、水洗後直ちに、たとえば高純水に浸漬する。その結果、図1(c)に示されるように、N型InP基板1の表面の活性化したインジウムが高純水中の酸素と化合して1〜3nm程度の非常に薄い酸化インジウム(In23)層2が形成される。このN型InP基板1の表面の酸化は、酸素雰囲気中で温度を上昇させて行う強制的な酸化ではないため、N型InP基板1の内部までは浸透せず、表面の活性化したインジウムだけが酸化する。そのため、数nm程度の非常に薄い酸化膜として酸化インジウム層2が形成される。また、酸化インジウムは元々酸素欠陥が生じやすい上、高純水などの液体中の酸素イオンとの結合だけによる酸化であるため、酸素欠損が多くキャリア濃度の高いN+型に形成される。この高純水中に浸漬する時間は、1〜10分程度浸漬すれば数nm程度の酸化インジウム層2が形成されるが、前述のように、表面で活性化したインジウムの酸化のみが行われるため、浸漬時間が長すぎても酸化膜が厚くなり過ぎることはない。なお、この酸化処理の際に、V族元素の酸化物も形成されるが、このような浸漬(ウェット)処理をすることにより、V族元素の酸化物は水に容易に溶けるため、インジウムの酸化物のみが残る。
【0039】
このN型InP基板1の表面の酸化処理は、高純水でなくても、活性化したインジウムを酸化させる溶液であれば良く、たとえば過酸化水素水、オゾン含有水、酸素含有水などを用いることもできる。これらの溶液であれば、酸化力が比較的強いため、0.5〜2分程度浸漬すれば酸化インジウム層2が数nm程度形成され、この場合でも、浸漬時間が長過ぎても、それほど酸化膜が厚くなり過ぎることはない。また、この酸化処理は、ウェット処理による酸化でなくて、紫外線励起オゾン含有気体、250℃以下の低温での酸素プラズマ処理、などによる酸化性雰囲気下に曝すことによっても酸化することもできる。一酸化窒素(NO)による低温酸化でも良い。
【0040】
このようにして形成された酸化インジウム(In23)層2は、前述のように、酸素欠損で1×1018〜1×1021cm-3程度の高キャリア濃度のN+型層として形成され、しかも、図2(a)に熱平衡時(電圧が0)のバンド図が示されるように、InPに比べて非常にバンドギャップ(Eg)の大きい層になる。そのため、In23の伝導帯底部が高い位置になり、その上に電子が溜り、InP半導体層1のキャリア濃度を低くしておくことにより、In23の電子がInP側に流れ込んで、図2(b)に接合部の一部拡大説明図が示されるように、二次元電子ガス層が形成される。このIn23とInPとに一対の電極を形成することにより、二次元電子ガス層を利用して、前述のように、立上り電圧が低く、かつ、逆方向耐圧が3V程度以上と高いダイオードを形成することができる。なお、図2で、χは電子親和力を示す。この構成で、順方向電圧(In23層側が正)が印加されると、0.2V程度で二次元電子ガスの電子がIn23層をトンネルして流れ始める。In23のバンドギャップは大きいので熱電子が流れるには4V近い電圧を必要とするので実用上問題とはならない。
【0041】
なお、電極を形成する際、とくに酸化インジウム層2上に直接電極を形成する場合には、酸化インジウム層2が非常に薄い層であるため、チタンやアルミニウムのような還元性の材料であると直ちに消失してしまう。そのため、ニッケルまたは酸化ルテニウムなどの還元性がなく低温で形成することができる材料を選択する必要がある。このような電極を形成する場合に限らず、酸化インジウム層2は、非常に薄い層で、しかも消失しやすい酸化物であるため、酸化インジウム層2の形成後、その表面に保護層を形成することが好ましい。そのような保護層3の形成工程が、図1(d)に示されている。すなわち、酸化インジウム層2が形成された半導体層1を、直ちにロードロックを通じてCVD装置に入れ、たとえばSiO2などを0.2〜0.4μm程度形成することにより、酸化インジウム層を安定に保持することができる。
【0042】
前述の例は、高キャリア濃度でバンドギャップの大きい酸化物半導体層をキャリア濃度もバンドギャップも小さい半導体層上に形成する例であったが、本発明の思想を用いることにより、酸化物半導体層に限らず、GaN系化合物や、SiCのようなバンドギャップの大きい半導体を高キャリア濃度で形成することができる。
【0043】
図3は、N型GaAs基板表面にN+型のGaN化合物半導体の薄膜層を形成する工程を示す図である。すなわち、図3(a)に示されるように、表面に自然酸化膜(Ga23)14が形成されたN型GaAs半導体層11を準備するか、前述の図1に示される例と同様に、低温で酸化膜14を形成する。そして、たとえばプラズマ装置内に入れて、たとえばアンモニアガスと、たとえば硫化水素(H2S)のようなドーパント元素の水素化ガス(たとえばアンモニアの流量に対して1%程度の流量)を導入して、プラズマ化処理をすることにより、図3(b)に示されるように、アンモニアガスやドーパントガスの分解により発生するHイオンによりN型GaAs半導体層11の表面の酸化膜14が還元されてダングリングボンドを有するGaが表面に形成される。
【0044】
そして、同時に、図3(c)に示されるように、アンモニアガスの分解により発生したNイオンおよびドーパントガスの分解により発生したSイオンが活性化したGaと結合してSが高濃度にドープされたN+型GaN層12が形成される。すなわち、Nイオンも、Sイオンも、同じように活性化したGaと結合するため、予めガス流量比で定めた割合で、ドーパント元素のSを確実に取り込むことができ、しかもドーパント元素もGaと化合しているため、安定した状態を維持し、高キャリア濃度のN+型層にすることができる。
【0045】
この一連の反応を化学式で表すと、つぎのようになる。
2NH3(アンモニアプラズマ) → 6H+ + 2N-3
Ga23(自然酸化膜) + 6H+ → 2Ga+3 + 3H2
2Ga+3 + 2N-3 → 2GaN
この状態で、本願発明の高キャリア濃度の薄膜半導体層を得ることができるが、前述の酸化インジウム層の場合と同様に、10nm以下の非常に薄い膜であるため、酸化などが生じると消失する虞れがあり、表面に保護層を形成することが望ましい。そこで、薄膜半導体層の表面が還元性の雰囲気のままで、連続的にモノシランガスを導入することにより、図3(d)に示されるように、モノシランガスのSiイオンとアンモニアプラズマのNイオンとが化合して、Hを数at%から10at%程度含有する珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護層13を表面に0.2〜0.4μm程度の厚さで堆積する。
【0046】
すなわち、GaAs半導体層11上に、GaAsよりも遥かにバンドギャップの大きいGaN層12を高キャリア濃度で非常に簡単に形成することができる。その結果、二次元電子ガスを利用するダイオードやHEMTでも、GaAsとGaN層とで形成することができる。この場合、GaN層は数nm程度の非常に薄い膜であるため、歪み格子層となり、反りなどが生じることなく安定に存在する。さらに、この例では、半導体層11としてGaAsを用いたが、Gaを含んでいればGaPその他の半導体層でも同様にワイドギャップの半導体層を形成することができる。すなわち、半導体層としてAlを含むAlGaAs系半導体や、InGaAs系半導体やInGaAlP系半導体を用いれば、同じようにAlGaN系半導体や、InGaN系半導体や、AlGaInN系半導体などの高キャリア濃度で薄膜層を非常に簡単に形成することができ、前述のHEMTなどにも応用することができる。また、ドーパントガスを換えることにより、P型層でも同様に、高キャリア濃度の薄膜層を非常に簡単に形成することができる。
【0047】
図4は、N型Si基板表面にN+型のSiC化合物半導体の薄膜層を形成する工程を示す図である。すなわち、図4(a)に示されるように、表面に自然酸化膜(SiO2)24が形成されたN型Si半導体層21を準備するか、前述の図1に示される例と同様に、250℃以下の低温で酸化膜24を形成する。そして、たとえばプラズマ装置内に入れて、たとえばメタンガスなどの炭化水素化合物ガスと、ドーパントガスとしての窒素ガスまたはアンモニアガスをメタンガスの流量に対して、たとえば0.1%の割合で、キャリアガスの水素ガスと共に導入し、プラズマ化させる。その結果、図4(b)に示されるように、炭化水素化合物などの分解により発生するHイオンによりN型Si半導体層21の表面の酸化膜24が還元されてダングリングボンドを有するSi層25が表面に形成される。
【0048】
そして、同時に、図4(c)に示されるように、炭化水素化合物ガスの分解により発生したCイオンおよびドーパントガスの分解により発生したNイオンが活性化したSiと化合してNが高濃度にドープされたN+型SiC層22が形成される。すなわち、Cイオンも、Nイオンも、活性化したSiと同じように化合するため、予めガス流量比で定めた割合で、ドーパント元素のNを確実に取り込むことができ、しかもドーパント元素もSiと化合しているため、安定した状態を維持し、高キャリア濃度のN+型層にすることができる。
【0049】
この一連の反応を化学式で表すと、つぎのようになる。
CH4(メタンガス) → 4H+ + C-4
SiO2(自然酸化膜) + 4H+ → Si+4 + 2H2
Si+4 + C-4 → SiC
この状態で、本願発明の高キャリア濃度の薄膜半導体層を得ることができるが、前述の酸化インジウム層の場合と異なりこのSiC層は比較的自然酸化に対して耐性がある。しかし、10nm以下の非常に薄い膜であるため、僅かな酸化などが生じても、その酸化膜を除去するとSiC膜が消失する虞れがあり、表面に保護膜を形成することが望ましい。そこで、薄膜半導体層の表面が還元性の雰囲気のままで、連続的にモノシランガスを導入することにより、図4(d)に示されるように、モノシランガスのSiイオンとアンモニアプラズマのNイオンとが化合して、Hが10at%程度含有する珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護層23を表面に0.2〜0.4μm程度の厚さで堆積する。なお、この際モノシランガスの流量とアンモニアガスの流量が同程度になるように、モノシランガスの流量を調整するか、アンモニアガスの流量も増加させる必要がある。
【0050】
このように、Si半導体層の表面にも、Siよりも遥かにバンドギャップが大きく、かつ、キャリア濃度が大きい半導体層を歪み格子層として非常に簡単に形成することができ、前述の各例と同様に、二次元ガスを利用するダイオードやHEMTでも、Si層とSiC層とで形成することができる。すなわち、たとえばSiを炭化処理することにより、Siの表面にSiC層を形成することはできるが、そのような処理でSiCを形成しても、元のSiの不純物濃度を維持するだけで、Si層よりもキャリア濃度を上げることはできない。また、炭化してから不純物を拡散しようとしても、非常に高温にしても殆ど拡散せず、イオン注入しても、結晶を壊すだけで不純物濃度を上昇させることはできず、キャリア濃度の低い半導体層上にバンドギャップが大きくてキャリア濃度が大きい半導体層を形成するには、MBE装置やCVD装置などでエピタキシャル成長しなければならないが、そのような高価な装置で複雑な製造工程を経ても、充分なキャリア濃度は得られない。このことは、前述のGaN系化合物でも同じである。しかし、本発明によれば、表面の酸化膜を還元すると同時に結合させるCと共に、ドーパント元素のNなどを結合させているため、1019cm-3オーダの高キャリア濃度のSiC層を形成することができる。なお、さらにキャリア濃度をあげるには、ドーパントガスの流量比を上げるのではなく、プラズマ電流を流して、基板上の陰極降下を利用してドーピングするのが好ましい。
【0051】
図5は、P型SiC基板表面にP+型のSiC化合物半導体の薄膜層を形成する工程を示す図である。すなわち、SiCは比較的酸化しにくいが、それでも自然酸化膜は形成され、また、前述の例に示されるように、低温でオゾン酸化などをすることにより酸化膜を形成することができ、図5(a)に示されるように、表面に自然酸化膜(SiO2)34が形成されたP型SiC半導体層31を準備する。そして、たとえばプラズマ装置内に入れて、たとえばメタンガスなどの炭化水素化合物ガスと、ドーパントガスとしてのジボラン(B26)などのIII族元素の水素化合物ガスをキャリアガスの水素ガスと共に導入し、プラズマ化させる。その結果、図5(b)に示されるように、炭化水素化合物などの分解により発生するHイオンによりP型SiC半導体層31の表面の酸化膜34が還元されてダングリングボンドを有するSi層35が表面に形成される。この際、Cの酸化物は蒸発して消滅する。
【0052】
そして、同時に、図5(c)に示されるように、炭化水素化合物ガスの分解により発生したCイオンおよびドーパントガスの分解により発生したBイオンが活性化したSiと結合してBが高濃度にドープされたP+型SiC層32が形成される。すなわち、Cイオンも、Bイオンも、活性化したSiと同じように化合するため、予めガス流量比で定めた割合で、ドーパント元素のBを確実に取り込むことができ、しかもドーパント元素もSiと化合しているため、安定した状態を維持し、高キャリア濃度のP+型層にすることができる。そして、この表面に、図5(d)に示されるように、珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護層33を形成することが好ましいのは、前述の図4に示される例と同じで、同様の方法で形成することができる。
【0053】
要するに、この実施例では、新たに形成する薄膜半導体層は、その下の半導体層と同じ材料で同じバンドギャップを有しているが、キャリア濃度を大幅に向上させた層であることに特徴がある。すなわち、前述のGaN系化合物やこのSiCなどは、エピタキシャル成長の際にドーパント元素を多く導入しても取り込むことができず、また、拡散やイオン注入しようとしても、キャリア濃度をあまり上昇させることができず、とくにP型層ではそのキャリア濃度を上昇させることができないという問題がある。そのため、P型層と電極との接触抵抗が増大して素子特性を大幅に低下させているが、この実施例のように、還元置換同時ドーピングの方法を用いることにより、P型層の表面に非常にキャリア濃度の高い層を形成することができるため、電極との接触抵抗を大幅に減少させることができる。その結果、インパットダイオードなどに適用すれば、非常に発振効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態であるInP半導体層上に酸化インジウム層を形成する工程説明図である。
【図2】図1のInPとIn23との熱平衡時のバンド図を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態であるGaAs層上にGaN層を形成する工程説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態であるSi層上にSiC層を形成する説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態であるSiC層上に高キャリア濃度のSiC層を形成する工程説明図である。
【図6】従来のHEMTを示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 N型InP半導体層(N型InP基板)
2 酸化インジウム層
3 保護層(窒化珪素層)
4 自然酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層表面の自然酸化膜または250℃以下の低温で生成した酸化膜を還元して形成される活性化した金属元素と他の元素とを結合させることにより、前記半導体層よりも高キャリア濃度で、かつ、バンドギャップが前記半導体層より大きい薄膜化合物半導体層を形成することを特徴とする薄膜半導体層の形成方法。
【請求項2】
前記半導体層がインジウムを化合物の構成元素として含有する半導体層からなり、該インジウムを含有する半導体層表面の酸化膜を還元して清浄化した後に、直ちに酸化物生成用液体に前記半導体層を浸漬し、または250℃以下の低温で酸化性雰囲気に曝すことにより、前記半導体層表面に、酸化インジウム層を形成する請求項1記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項3】
前記酸化インジウム層を形成した後、直ちにモノシランガスおよび窒素原子含有ガスを導入することにより、前記酸化インジウム層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成する請求項2記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項4】
前記半導体層表面に生成される酸化膜の還元を、ガスのプラズマ化により発生する水素イオンまたはハロゲンイオンにより行うと共に、前記活性化した金属元素と結合させる元素の原料ガスおよびドーパント元素の原料ガスを導入してプラズマ化し、前記活性化した金属元素と結合させることにより、前記高キャリア濃度の薄膜化合物半導体層を形成する請求項1記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項5】
前記半導体層がガリウムを化合物の構成元素として含有する半導体層からなり、アンモニアガスのプラズマ処理により生成される水素イオンにより前記ガリウムを含有する半導体層表面の酸化膜を還元して清浄化すると共に、該還元により露出する活性化したガリウムを前記アンモニアガスのプラズマ処理により生成される窒素イオンと結合させることにより、ガリウムと窒素を化合物の構成元素として含む化合物からなる薄膜化合物半導体層を形成する請求項4記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項6】
前記ドーパント元素として、VIB族の元素のガスを導入することにより、高キャリア濃度のN型で、ガリウムと窒素を含む化合物からなる薄膜化合物半導体層を形成する請求項5記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項7】
前記薄膜化合物半導体層を形成した後、同じ装置内でさらにモノシランガスを導入することにより、前記薄膜化合物半導体層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成する請求項5または6記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項8】
前記半導体層が珪素または炭化珪素からなり、前記活性化した金属元素と結合させる元素の原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入し、プラズマ処理により発生する炭素イオンと前記還元により活性化した珪素とを結合させることにより、炭化珪素からなる薄膜化合物半導体層を形成する請求項4記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項9】
前記ドーパント元素の原料ガスとして、III族元素の水素化物を導入することにより、高キャリア濃度のP形炭化珪素からなる薄膜化合物半導体層を形成する請求項8記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項10】
前記ドーパント元素の原料ガスとして、アンモニアガスを導入することにより、高キャリア濃度のN型炭化珪素からなる薄膜化合物半導体層を形成する請求項8記載の薄膜半導体層の形成方法。
【請求項11】
前記薄膜化合物半導体層を形成した後、同じ装置内でさらにアンモニアガスとモノシランガスを導入することにより、前記薄膜化合物半導体層上に珪素窒素水素合金(SiN:H)からなる保護膜を形成する請求項8、9または10に記載の薄膜半導体層の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−40971(P2010−40971A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205315(P2008−205315)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(305006761)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【出願人】(597125863)株式会社ケミトロニクス (18)
【Fターム(参考)】