説明

走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラム

【課題】表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界の位置をユーザに容易に把握させることを可能とした走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両2の現在のバッテリ7のSOC値を取得し、取得されたバッテリのSOC値の他、地図情報及び車両2の学習データに基づいて、車両2がEV走行によって走行可能な走行可能範囲の境界を算出する。そして、算出された走行可能範囲の境界の内、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、非表示境界の位置を特定する境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を液晶ディスプレイ15に表示するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図の所定エリアを表示装置に表示する走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用のナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯情報機器、パーソナルコンピュータ等では、地図情報として一般道路及び高速道路等の道路や施設名称等を各種記憶デバイスに記憶するか、又はサーバ等からダウンロードすることにより、利用者に対して所望のエリアの地図を表示することが可能となっている。
【0003】
一方で、近年においては、バッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両等の車両が多く存在する。
【0004】
そこで従来より、現在のエネルギー残量で車両が走行できる走行可能範囲を、ナビゲーション装置等の地図表示機能を有する上記装置を用いてユーザに提供することが提案されている。例えば、特開平7−85397号公報には、電気自動車が備える表示装置に対して、自車周辺の地図を表示するとともに、現在のバッテリの残量と周囲の地形に基づいて走行可能範囲を算出し、地図上に表示する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−85397号公報(第3頁〜第4頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ユーザが走行可能範囲を把握する場合には、走行可能範囲の境界の位置を把握することが必要である。しかしながら、上記走行可能範囲を表示装置に表示した場合に、現在の表示装置に表示する地図の縮尺によっては走行可能範囲の境界をユーザが把握できない場合がある。例えば、地図の縮尺が大きい場合には、走行可能範囲内の一部エリアのみしか表示されず、走行可能範囲の境界が表示されない場合もある。そのような場合には、ユーザは現在のエネルギー残量でどの地点まで走行可能であるのかを把握することができなかった。
【0007】
また、表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界を表示させる為には、表示装置に表示された地図をユーザの操作に基づいてスクロールすることや地図の縮尺を変更することが必要である。しかし、ユーザが表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界の位置が把握できない状態では、非表示となっている走行可能範囲の境界を表示エリア内に含めるための地図のスクロール操作を適切に行うことができなかった。同じく、表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界を表示エリア内に含めるための地図の縮尺変更操作を適切に行うことができなかった。
【0008】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界の位置をユーザに容易に把握させることを可能とした走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る走行案内装置(1)は、地図の所定エリアを表示装置(15)に表示する地図表示手段(33)と、車両(2)のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得手段(33)と、前記エネルギー残量取得手段により取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界(66)を算出する走行可能範囲算出手段(33)と、前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報(78〜82)を前記表示装置に表示する境界特定情報表示手段(33)と、を有することを特徴とする。
ここで、「車両」とはバッテリから供給される電力をエネルギーとして走行する電気自動車以外にも、ガソリンをエネルギーとして走行するガソリン自動車、電力及びガソリンをエネルギーとして走行するハイブリッド車両等も含む。
また、「境界特定情報」は、非表示境界の位置を特定する情報であり、枠やカーソル等のマーク、文字、記号等が該当する。
【0010】
また、請求項2に係る走行案内装置(1)は、請求項1に記載の走行案内装置であって、前記境界特定情報表示手段(33)は、前記境界特定情報(78〜82)を前記非表示境界の方向に対応する前記表示エリアにおける位置に表示することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る走行案内装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の走行案内装置であって、前記表示エリアから前記非表示境界までの距離を特定する情報を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る走行案内装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の走行案内装置であって、地図上にあるエネルギー補給施設の位置情報に基づいて、前記走行可能範囲の境界(66)の内側に位置するとともに、前記表示エリアに含まれないエネルギー補給施設があるか否か判定する施設判定手段(33)と、前記施設判定手段によって前記走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、前記表示エリアに含まれないエネルギー補給施設があると判定された場合に、該エネルギー補給施設の位置を特定する施設特定情報を前記表示装置に表示する施設特定情報表示手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る走行案内装置(1)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の走行案内装置であって、前記境界特定情報(78〜82)は前記表示装置(15)に表示されるマークからなり、前記マークを指定するマーク指定手段(33)と、前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界を前記表示装置(15)において表示可能な地図の最大縮尺を算出する最大縮尺算出手段(33)と、前記表示装置に表示する地図の縮尺を前記最大縮尺に設定する縮尺設定手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る走行案内装置(1)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の走行案内装置であって、前記境界特定情報(78〜82)は前記表示装置(15)に表示されるマークからなり、前記マークを指定するマーク指定手段(33)と、前記表示装置に表示された地図を前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界の方向へとスクロールする表示エリアスクロール手段(33)と、前記表示エリアスクロール手段によって前記表示装置に表示された地図がスクロールされている途中に前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界が前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれた場合に、前記スクロールを停止するスクロール停止手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に係る走行案内方法は、地図の所定エリアを表示装置(15)に表示する地図表示ステップと、車両(2)のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得ステップと、前記エネルギー残量取得ステップにより取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界(66)を算出する走行可能範囲算出ステップと、前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報(78〜82)を前記表示装置に表示する境界特定情報表示ステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
更に、請求項8に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、地図の所定エリアを表示装置(15)に表示する地図表示機能と、車両(2)のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得機能と、前記エネルギー残量取得機能により取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界(66)を算出する走行可能範囲算出機能と、前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報(78〜82)を前記表示装置に表示する境界特定情報表示機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
前記構成を有する請求項1に記載の走行案内装置によれば、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界の位置をユーザに容易に把握させることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の走行案内装置によれば、境界特定情報によって非表示境界の方向を特定するので、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界の位置する方向をユーザに容易に把握させることができる。
【0019】
また、請求項3に記載の走行案内装置によれば、境界特定情報によって非表示境界までの距離を特定するので、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界までの距離をユーザに容易に把握させることができる。
【0020】
また、請求項4に記載の走行案内装置によれば、走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれないエネルギー補給施設がある場合に、その含まれないエネルギー補給施設の位置をユーザに容易に把握させることができる。その結果、ユーザにエネルギー補給施設でのエネルギーの補給を効率良く行う適切なタイミングを認識させることを可能とする。
【0021】
また、請求項5に記載の走行案内装置によれば、境界特定情報であるマークが指定された場合に、そのマークによって位置が特定される非表示境界を表示装置において表示可能な最大縮尺に地図の縮尺を設定するので、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界があったとしても、容易な操作で現在のエネルギー残量で走行可能となる走行可能範囲をユーザが容易かつ正確に把握することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0022】
また、請求項6に記載の走行案内装置によれば、境界特定情報であるマークが指定された場合に、そのマークによって位置が特定される非表示境界を表示装置において表示可能な地図の表示エリアまで地図をスクロールさせるので、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界があったとしても、容易な操作で現在のエネルギー残量で走行可能となる走行可能範囲をユーザが容易かつ正確に把握することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0023】
また、請求項7に記載の走行案内方法によれば、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界の位置をユーザに容易に把握させることができる。
【0024】
更に、請求項8に記載のコンピュータプログラムによれば、表示装置に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その含まれない境界の位置をユーザに容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る車両及び車両制御システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る車両制御システムの制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る走行可能範囲案内処理プログラムのフローチャートである。
【図4】走行可能範囲のサイズの算出方法について説明した説明図である。
【図5】非表示境界の範囲の算出例を示した図である。
【図6】液晶ディスプレイに表示される境界特定情報の例を示した図である。
【図7】第1実施形態に係る縮尺設定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図8】縮尺設定処理後の液晶ディスプレイに表示される走行可能範囲の境界を示した図である。
【図9】第2実施形態に係る地図スクロール処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図10】地図スクロール処理後の液晶ディスプレイに表示される走行可能範囲の境界を示した図である。
【図11】第3実施形態に係る施設情報表示処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図12】充電施設に関する情報が表示された液晶ディスプレイ15の表示画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る走行案内装置についてナビゲーション装置に具体化した第1実施形態乃至第3実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
先ず、第1実施形態に係るナビゲーション装置1を車載機として搭載した車両2の車両制御システム3の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る車両制御システム3の概略構成図、図2は第1実施形態に係る車両制御システム3の制御系を模式的に示すブロック図である。尚、車両2は外部電源からバッテリを充電することができる車両とする。そして、外部電源からバッテリを充電することができる車両としては、モータのみを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするプラグインハイブリッド車両があるが、以下に説明する第1実施形態乃至第3実施形態ではプラグインハイブリッド車両を用いることとする。
【0028】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る車両制御システム3は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置1と、エンジン4と、駆動モータ5と、発電機6と、バッテリ7と、プラネタリギヤユニット8と、車両制御ECU9と、エンジン制御ECU10と、駆動モータ制御ECU11と、発電機制御ECU12と、充電制御ECU13とから基本的に構成されている。
【0029】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、車両周辺の地図や目的地までの案内経路を表示する液晶ディスプレイ15や、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された案内経路に従った案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。また、ナビゲーション装置1は、後述するように、バッテリ7の現在のバッテリ残量(以下、SOC値)のみを消費する走行(即ちEV走行)によって走行可能な範囲(以下、走行可能範囲)の境界を算出する。また、算出された走行可能範囲の境界を液晶ディスプレイ15に表示された地図上に重ねて表示する。更に、走行可能範囲の境界の内、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれない境界(以下、非表示境界という)がある場合に、非表示境界の位置を特定する境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を液晶ディスプレイ15に表示する。また、ユーザによって境界特定情報を指定する操作を受け付けた場合に、指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示可能な地図の最大縮尺(以下、表示最大縮尺という)を算出し、現在の縮尺から表示最大縮尺へと地図の縮尺を変更する。尚、ナビゲーション装置1の詳細な構成については後述する。
【0030】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の第1の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはプラネタリギヤユニット8に伝達され、プラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
【0031】
また、駆動モータ5はバッテリ7から供給される電力に基づいて回転運動するモータであり、車両2の第2の駆動源として用いられる。駆動モータはバッテリ7から供給された電力により駆動され、駆動モータ5のトルクである駆動モータトルクを発生する。そして、発生した駆動モータトルクにより駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
特に、第1実施形態に示すようなプラグインハイブリッド車両では、基本的にバッテリの残量が所定値以下となるまでは駆動モータ5のみにより車両2が駆動され、駆動モータ5のみを駆動源とする所謂EV走行を行う。一方、バッテリの残量が所定値以下となった後はエンジン4と駆動モータ5とを駆動源として併用して走行する所謂HV走行を行う。
更に、エンジンブレーキ必要時及び制動停止時において、駆動モータ5は回生ブレーキとして機能し、車両慣性エネルギーを電気エネルギーとして回生する。
【0032】
また、発電機6はプラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動され、電力を発生させる発電装置である。そして、発電機6は図示されない発電機用インバータを介してバッテリ7に接続されており、発生した交流電流を直流電流に変換し、バッテリ7に供給する。尚、駆動モータ5と発電機6を一体的に構成しても良い。
【0033】
また、バッテリ7は充電と放電とを繰り返すことができる蓄電手段としての二次電池であり、鉛蓄電池、キャパシタ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が用いられる。更に、バッテリ7は車両2の側壁に設けられた充電コネクタ18と接続されている。そして、自宅や所定の充電設備を備えた充電施設において、充電コネクタ18をコンセント等の電力供給源に接続することにより、バッテリ7の充電を行うことが可能となる。更に、バッテリ7は上記駆動モータで発生した回生電力や発電機6で発電された電力によっても充電される。
【0034】
また、プラネタリギヤユニット8はサンギヤ、ピニオン、リングギヤ、キャリア等によって構成され、エンジン4の駆動力の一部を発電機6へと分配し、残りの駆動力を駆動輪17へと伝達する。
【0035】
また、車両制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)9は、車両2の全体の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU9には、エンジン4の制御を行う為のエンジン制御ECU10、駆動モータ5の制御を行う為の駆動モータ制御ECU11、発電機6の制御を行う為の発電機制御ECU12、バッテリ7の制御を行う為の充電制御ECU13が接続されるとともに、ナビゲーション装置1が備える後述のナビゲーションECU33に接続されている。
そして、車両制御ECU9は、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。
【0036】
また、エンジン制御ECU10、駆動モータ制御ECU11、発電機制御ECU12及び充電制御ECU13は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、それぞれエンジン4、駆動モータ5、発電機6、バッテリ7の制御を行う。
【0037】
続いて、ナビゲーション装置1の構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように第1実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両2の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(地図表示手段、エネルギー残量取得手段、走行可能範囲算出手段、境界特定情報表示手段、施設判定手段、施設特定情報表示手段、マーク指定手段、最大縮尺算出手段、縮尺設定手段)33と、ユーザからの操作を受け付けるタッチパネル34と、ユーザに対して車両周辺の地図や走行可能範囲の境界を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスや充電施設の案内を出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37、プローブセンタやVICSセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。
【0038】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両2の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両2の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0039】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB46、学習DB47、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0040】
ここで、地図情報DB46は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。尚、リンクデータには傾斜区間に関する情報(傾斜角度に関する情報(勾配等)を含む)、カーブに関する情報(開始点、終了点、旋回半径に関する情報を含む)も含まれる。また、第1実施形態に係るナビゲーション装置1は、施設データには充電施設に関する充電施設情報についても含まれる。ここで、充電施設とは、駆動源への電力供給源とするバッテリに電力を供給する為の専用の充電設備を備えたエネルギー補給施設であり、例えば、自動車充電ステーション、ガソリンスタンド、ショッピングセンタ等が該当する。そして、地図情報DB46に記憶される充電施設情報としては、充電施設の位置座標、施設名称、充電料金、充電施設の営業時間等がある。
【0041】
また、学習DB47は、車両2の過去の走行履歴に基づいて算出される各種学習データを記憶するDBである。尚、第1実施形態では学習DB47に記憶される学習データとして、車両2が過去に走行したリンク毎に“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”と“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”について記憶される。
【0042】
尚、“リンクを走行する際に必要な駆動力”については、以下の方法により算出される。先ず、ナビゲーションECU33はリンクを走行する毎に、リンク走行時の車両2の車速データ、加速度データ、リンクの勾配、各種車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)から、該リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力を算出する。そして、算出された駆動力の内で最高値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
尚、車両2が該リンクを複数回走行している場合には、各回の走行時において記憶された駆動力の最高値の平均値を算出する。そして、算出された平均値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
また、リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力を算出する際には、駆動輪の車軸に生じるトルクT[N・m]及び車軸の回転数Nを用いても良い。具体的には、車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出するセンサを設け、リンクを走行する毎に車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出する。そして、駆動輪の車軸に生じるトルクTに車軸の回転数Nを乗じた値が、リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力となり、その内で最高値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
【0043】
一方、“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”については、以下の方法により算出される。先ず、ナビゲーションECU33はリンクを走行する毎に、リンク走行直前のバッテリのSOC値とリンク走行直後のバッテリのSOC値の差分から、該リンクを車両2が走行した際に必要とされたエネルギー量を算出する。そして、算出されたエネルギー量を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
尚、車両2が該リンクを複数回走行している場合には、各回の走行時において記憶されたエネルギー量の平均値を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
また、リンクを車両2が走行した際に必要とされたエネルギー量を算出する際には、駆動輪の車軸に生じるトルクT[N・m]及び車軸の回転数Nを用いても良い。ここで、車両2の走行に基づいて駆動源(駆動モータ5)で消費される消費エネルギー量は、車両2の走行に必要な駆動力にその駆動力が生じた時間を乗じた値となる。従って、車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出するセンサを設け、リンクを走行する毎に車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出する。そして、駆動輪の車軸に生じるトルクTに車軸の回転数Nを乗じた値を時間で積分することによって、リンクを車両2が走行した際に駆動モータ5で必要とされたエネルギー量を算出する。そして、算出されたエネルギー量を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
尚、“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”は、後述するように後述するようにナビゲーションECU33によって、車両2がEV走行のみで走行可能な走行可能範囲の境界を算出するのに用いられる。
【0044】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの案内経路を設定する誘導経路設定処理、車両2の走行可能範囲の境界を算出する走行可能範囲算出処理、算出された走行可能範囲の境界を液晶ディスプレイ15に表示された地図上に重ねて表示する走行可能範囲表示処理、走行可能範囲の境界の内、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、非表示境界の位置を特定する境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を液晶ディスプレイ15に表示する境界特定情報表示処理、ユーザによって境界特定情報を指定する操作を受け付けた場合に、指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示可能な地図の表示最大縮尺を算出する表示最大縮尺算出処理、地図の縮尺を表示最大縮尺に設定する縮尺設定処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、走行可能範囲案内処理プログラム(図3、図7参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0045】
タッチパネル34は、液晶ディスプレイ15のディスプレイ面の前面に設けられ、ユーザの操作を受け付ける操作手段である。タッチパネル34は、液晶ディスプレイ15に表示されている境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を指定する際に操作される。また、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際に操作される。そして、ナビゲーションECU33は、液晶ディスプレイ15のディスプレイ画面のいずれかの位置がユーザに押下された場合に、押下された位置に応じて発生した電圧を検出することにより押下された位置を検知し、検出した位置に対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。
尚、ユーザの操作を受け付ける操作手段としては、タッチパネル34の代わりに操作ボタンやリモコンを用いても良い。
【0046】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、ユーザにより所定の操作が行われた際、又は車両2のバッテリ7の充電が終了した後に、車両2の現在位置周辺の地図画像に重畳して車両2がEV走行のみで走行できる走行可能範囲の境界が表示される。また、ユーザによって所定の操作が行われた場合には、液晶ディスプレイ15に表示された地図の縮尺を変更する。
【0047】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、表示最大縮尺に地図の縮尺が設定された場合には、指定された境界特定情報によって位置が特定される走行可能範囲の境界が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれている旨の案内を出力する。
【0048】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB46の更新等が行われる。
【0049】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0050】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU33が実行する走行可能範囲案内処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は第1実施形態に係る走行可能範囲案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、走行可能範囲案内処理プログラムは車両2のバッテリ7の充電が終了した場合又はユーザにより所定の操作が行われた場合に実行され、EV走行のみで走行できる走行可能範囲の境界を算出するとともに、算出された走行可能範囲の境界を案内するプログラムである。尚、以下の図3及び図7にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0051】
先ず、走行可能範囲案内処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51は車両2に搭載されたバッテリ7のSOC値(バッテリ7のエネルギー残量)を充電制御ECU13から取得する。
【0052】
次に、S2でCPU51は、前記S1で取得されたバッテリのSOC値の他、地図情報及び車両2に関する各種情報に基づいて、車両2がEV走行のみによって走行可能な走行可能範囲の境界を算出する。
【0053】
以下に、上記S2の走行可能範囲の境界の算出処理について詳細に説明する。上記S2では、CPU51は具体的に以下の(a)〜(g)の処理を実行する。
(a)先ず、CPU51は現在位置検出部31により車両2の現在位置を検出する。また、検出した車両2の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。
(b)続いて、CPU51は、車両2の現在位置を中心とし、所定距離(例えば50km)を半径とした円を地図上に規定する。そして、規定した円の円周上に等間隔(例えば円周を8等分した際の分割点)で仮の目的地を複数設定する。
(c)地図情報に基づいて車両2の現在位置から設定された仮の目的地までの経路を仮の目的地毎にそれぞれ探索する。尚、経路の探索には公知のダイクストラ法等が用いられる。
(d)次に、仮の目的地までの各経路を車両2が走行する際に必要なエネルギー量を区間毎(リンク毎)に推定する。具体的には、目的地までの各経路を構成するリンクの“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”を学習DB47から取得する。そして、取得したデータに基づいて、車両2が各経路を走行する場合に必要なエネルギー量をリンク毎に推定する。また、必要エネルギー量を推定する際には経路の走行中にバッテリ7に蓄えられると推定される回生エネルギーのエネルギー量についても考慮する。尚、“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”は通信モジュール38を介してプローブセンタから取得する構成としても良い。その場合には、プローブセンタはプローブカーからリンク走行時に生じた駆動力や消費されたエネルギー量に関するデータをプローブデータとして収集し、収集したプローブデータに基づいて“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”各データを生成するように構成する。また、車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)やリンクデータ(平均車速、リンクの長さ、勾配等)に基づいてCPU51が算出しても良い。
(e)取得したSOC値、地図情報、リンク毎の必要エネルギー量に基づいて、仮の目的地までの各経路を走行した場合に、車両の現在位置からEV走行のみで到達可能な到達可能地点を経路毎に特定する。尚、到達可能地点は、各経路を走行する際に必要な必要エネルギー量を車両の現在位置に近いリンクから順に加算した際に、合計値が「バッテリのSOC値−バッテリの全容量の3%」となる地点である。
(f)そして、CPU51は各経路における到達可能地点を直線又は曲線で結ぶ。その結果、結ばれた線が走行可能範囲の境界として算出される。尚、走行可能範囲の境界は地図上の座標により特定される。
【0054】
尚、走行可能範囲の境界の算出方法としては、以下の方法を用いても良い。
先ず、CPU51は車両2が消費電力あたりに走行可能な距離を走行履歴等から算出する。次に、その算出値に現在のSOC値を乗じた値を走行可能距離として定義する。そして、車両2の現在位置を中心とし、走行可能距離を半径とした円を走行可能範囲の境界として算出する。
【0055】
その後、S3でCPU51は、現在、液晶ディスプレイ15に表示されている地図の縮尺(第1実施形態では1/5000〜1/2048万のいずれか)を取得する。尚、現在の地図の縮尺を示すデータはRAM52等に記憶されている。また、S3の処理を実行する際において液晶ディスプレイ15に地図が表示されていない場合には、車両2の現在位置周辺の地図を液晶ディスプレイ15に表示する。
【0056】
続いて、S4においてCPU51は、前記S2で算出された走行可能範囲の境界を液晶ディスプレイ15に表示された地図上に重ねて表示した際における該走行可能範囲の境界のサイズを算出する。
具体的には、現在の地図表示がノースアップ(常に北が上を向くように地図表示)で行われている場合には、CPU51は、車両2の現在位置に対して南北方向、東西方向で最も離れている走行可能範囲の境界上の地点の座標をそれぞれ取得する。例えば、図4に示す例では地点A〜地点Dの座標がそれぞれ取得される。そして、地点A〜地点Dの座標によって走行可能範囲の境界のサイズを特定する。
【0057】
一方、現在の地図表示がヘディングアップ(常に車両の進行方向前方が上を向くように地図表示)で行われている場合には、CPU51は、車両2の現在位置に対して車両進行方向の前後方向、車両進行方向に直交する方向で最も離れている走行可能範囲の境界上の地点の座標をそれぞれ取得する。例えば、図4に示す例では地点E〜地点Hの座標がそれぞれ取得される。そして、地点E〜地点Hの座標によって走行可能範囲の境界のサイズが特定する。
【0058】
その後、S5においてCPU51は、前記S2で算出された走行可能範囲の境界の全体が、液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれるか否か判定する。具体的には、前記S4で取得された全ての地点の座標(図4の地点A〜地点D又は地点E〜地点H)が現在の縮尺で表示エリアに表示されている地図上に位置する場合に、走行可能範囲の境界の全体が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれると判定する。
【0059】
そして、走行可能範囲の境界の全体が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれると判定された場合(S5:YES)には、S6へと移行する。それに対して、走行可能範囲の境界の少なくとも一部が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれないと判定された場合(S5:NO)には、S7へと移行する。
【0060】
S6においてCPU51は、前記S2で算出された走行可能範囲の境界を、液晶ディスプレイ15に表示されている地図上に重ねて表示する。また、液晶ディスプレイ15の表示エリア内に含まれる充電施設の位置を示すランドマークについても地図上に重ねて表示する。その後、当該走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
ここで、液晶ディスプレイ15に表示された走行可能範囲の境界の線上が現在のSOC値でEV走行のみにより車両2が到達可能な最長の到達可能地点となる。即ち、走行可能範囲の境界で囲まれたエリアが現在のSOC値でEV走行のみにより車両が到達可能なエリアとなる。そして、ユーザは走行可能範囲の境界を参照することにより、現在のSOC値でEV走行のみにより車両が走行できる範囲を把握することが可能となる。
また、ユーザは充電施設のランドマークを参照することにより、車両周辺にある充電施設の位置を把握することが可能となる。更に、充電施設のランドマークと走行可能範囲の境界と比較することによって、現在位置からEV走行のみにより車両2が到達できる充電施設を把握することが可能となる。
【0061】
一方、S7においてCPU51は、液晶ディスプレイ15の地図の表示エリアに含まれない走行可能範囲の境界(非表示境界)の範囲を算出する。具体的には、走行可能範囲の境界と表示エリアの外周との交点を算出し、その交点間の範囲を非表示境界の範囲とする。
【0062】
ここで、図5は前記S7の非表示境界の範囲の算出例を示した図である。
図5に示す例では、走行可能範囲の境界66の全体が液晶ディスプレイ15の表示エリア61には含まれず、走行可能範囲の境界66の上端及び下端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する。そして、走行可能範囲の境界66と液晶ディスプレイ15の表示エリア61の外周71との交点として、4つの交点72〜75が算出される。従って、交点72〜交点73の範囲が非表示境界76として算出される。また、交点74〜交点75の範囲が同じく非表示境界77として算出される。
【0063】
続いて、S8においてCPU51は、前記S2で算出された走行可能範囲の境界の内、前記S7で算出された非表示境界を除く境界部分を、液晶ディスプレイ15に表示されている地図上に重ねて表示する。
【0064】
その後、S9においてCPU51は、非表示境界の位置を特定する境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を液晶ディスプレイ15に表示する。ここで、境界特定情報は表示エリアから非表示境界までの距離を特定する情報を含む。また、境界特定情報は、非表示境界の方向に対応する表示エリアにおける位置に表示される。
【0065】
図6は前記S9において液晶ディスプレイ15に表示される境界特定情報の例を示した図である。
図6には、前記S2で算出された走行可能範囲の境界66の上端及び下端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する場合に表示される境界特定情報を示す。また、境界特定情報としては、表示エリア61の外縁に表示される枠79、80を用いる。
図6に示すように液晶ディスプレイ15の表示エリア61には、車両の現在位置周辺の地図画像62と、地図上にマッチングされた車両の現在位置を示す自車位置マーク63と、表示エリア61内に含まれる充電施設の位置を示す充電施設マーク64と、地図の表示エリア61の中央位置を特定する中央カーソル65と、自車位置マーク63の周囲に表示された走行可能範囲の境界66と、境界特定情報として枠79、80が表示される。
【0066】
ここで、枠79、80は非表示境界の方向に対応する表示エリア61における位置に表示される。具体的には、非表示境界が表示エリア61外に位置する外縁部分のみに枠79、80が表示される。即ち、走行可能範囲の境界66の上端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する場合には、表示エリア61の上方に位置する外縁部分に枠79、80が表示される。また、走行可能範囲の境界66の右端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する場合には、表示エリア61の右方に位置する外縁部分に枠79、80が表示される。また、走行可能範囲の境界66の左端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する場合には、表示エリア61の左方に位置する外縁部分に枠79、80が表示される。更に、走行可能範囲の境界66の下端を含む一部範囲が表示エリア61外に位置する場合には、表示エリア61の下方に位置する外縁部分に枠79、80が表示される。
図6に示す例では走行可能範囲の境界66の上端及び下端を含む一部範囲が非表示境界となるので、表示エリア61の上方の外縁部分であって、交点72〜73の範囲に枠79が表示される。また、表示エリア61の下方の外縁部分であって、交点74〜75の範囲に枠80が表示される。従って、ユーザは表示エリア61外の上方及び下方に走行可能範囲の境界66が位置することを把握することができる。
また、表示される枠79、80の色は、表示エリア61の外縁からその枠79、80によって位置が特定される非表示境界までの距離に基づいて変更される。例えば、表示エリア61の外縁から非表示境界までの距離が5km未満である場合には「青色」で表示し、非表示境界までの距離が5km以上10km未満である場合には「黄色」で表示し、非表示境界までの距離が10km以上である場合には「赤色」で表示する。
例えば、図6に示す例では、表示エリア61の外縁から非表示境界76までの距離が10km以上であるので、枠79の色は赤色で表示される。一方、表示エリア61の外縁から非表示境界77までの距離が5km未満であるので、枠80の色は青色で表示される。
【0067】
また、境界特定情報としては、表示エリア61内に表示されるカーソルを用いても良い。そして、境界特定情報としてカーソル用いる場合には、CPU51はカーソルを非表示境界の方向に対応する表示エリア61における位置に表示する。具体的には、非表示境界が表示エリア61外に位置する外縁付近に、非表示境界の位置を示す向きでカーソルを表示する。そして、ユーザは液晶ディスプレイ15に表示されたカーソルの位置と向きから、非表示境界の位置を把握することが可能となる。
また、表示されるカーソルの色は、枠79、80と同じく表示エリア61の外縁からそのカーソルによって位置が特定される非表示境界までの距離に基づいて変更する。
尚、非表示境界の位置を特定する境界特定情報としては、上述した枠79、80、カーソル以外に、文字や記号を用いても良い。
【0068】
次に、S10においてCPU51は、タッチパネル34から送信される検出信号に基づいて、ユーザが液晶ディスプレイ15に表示されている境界特定情報を指定する操作を受け付けたか否か判定する。そして、ユーザの指定操作を受け付けたと判定した場合(S10:YES)には、ユーザによって指定された境界特定情報を特定する。その後、S11へと移行する。一方、ユーザの指定操作を受け付けていないと判定した場合(S10:NO)には、当該走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。尚、ユーザの指定操作を受け付けたと判定した場合であっても、車両2が走行中であって、ナビゲーション装置1が操作禁止状態に設定されている場合には、走行中は操作できない旨を案内し、当該走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0069】
S11においてCPU51は、後述の縮尺設定処理を実行する。尚、縮尺設定処理は、指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示可能な地図の最大縮尺を算出し、地図の縮尺を表示最大縮尺に設定する処理である。
そして、S11の処理を実行した後、当該走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0070】
次に、上記S11の縮尺設定処理のサブ処理について図7に基づき説明する。図7は縮尺設定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0071】
先ず、S21においてCPU51は、ユーザの操作に基づいて指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界を、液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示可能な地図の縮尺(表示最大縮尺)を算出する。
具体的には、現在の地図表示がノースアップ(常に北が上を向くように地図表示)で行われている場合には、CPU51は具体的に以下の(A)、(B)の処理を実行する。
(A)車両2の現在位置に対して南北方向、東西方向で最も離れている走行可能範囲の境界上の地点の座標をそれぞれ取得する。例えば、図4に示す例では地点A〜地点Dの座標がそれぞれ取得される。
(B)現在の表示エリアの中心位置を変更せずに、地点A〜地点Dの内、指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界に含まれる地点(例えば、図6に示す例で枠79が指定された場合には非表示境界76に含まれる地点)の座標が表示エリアに含まれる地図の縮尺を算出する。
一方、現在の地図表示がヘディングアップ(常に車両の進行方向前方が上を向くように地図表示)で行われている場合には、CPU51は具体的に以下の(C)、(D)の処理を実行する。
(C)車両2の現在位置に対して車両進行方向の前後方向、車両進行方向に直交する方向で最も離れている走行可能範囲の境界上の地点の座標をそれぞれ取得する。例えば、図4に示す例では地点E〜地点Hの座標がそれぞれ取得される。
(D)現在の表示エリアの中心位置を変更せずに、地点A〜地点Dの内、指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界に含まれる地点の座標が表示エリアに含まれる地図の縮尺を算出する。
【0072】
続いて、S22においてCPU51は、液晶ディスプレイ15に表示される地図の縮尺を前記S21で算出した表示最大縮尺に変更して設定する縮尺設定処理を実行する。その結果、ユーザに指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示されるという条件を満たし、その条件を満たす中での最大のサイズで走行可能範囲の境界が表示される。
例えば、図8に示す例は、図6に示す画面で表示エリア61の上縁に位置する枠79が指定された場合において、表示最大縮尺に地図の縮尺が変更された後の液晶ディスプレイ15の表示画面を示す。図8に示す例では、枠79によって位置が特定される非表示境界76が液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示可能な表示最大縮尺が1/128万と算出される。従って、地図の表示縮尺が1/64万から1/128万へと変更される。その結果、図8に示すように非表示境界76が表示エリア内に表示される最大の縮尺で車両周辺の地図が表示される。
従って、ユーザは非表示となっていた走行可能範囲の境界の位置や形状を把握することが可能となる。
また、CPU51は指定された境界特定情報により位置の特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれている旨を案内する(S23)。例えば、『現在、非表示となっていた走行可能範囲の境界を表示しています。』との音声を出力する。また、図8に示すように同内容の文章を液晶ディスプレイ15に表示するようにしても良い。
【0073】
その後、S24においてCPU51は、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたか否か判定する。ここで、走行可能範囲の案内終了条件を満たす場合としては、例えば、車両2が走行を開始した場合、前記S22で縮尺が変更されてから一定時間(例えば30sec)が経過した場合、「現在地ボタン」や「戻るボタン」が押下された場合等が該当する。
【0074】
そして、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたと判定された場合(S24:YES)には、地図の縮尺を前記S3で取得された縮尺に戻して設定する(S25)。また、液晶ディスプレイ15に表示されている地図を車両2の現在位置周辺の地図へと切り替える。その後、当該走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0075】
それに対して、走行可能範囲の案内終了条件を満たしていないと判定された場合(S24:NO)には、継続して現在の縮尺で地図を表示し、走行可能範囲の案内を行う。
【0076】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による走行案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両2の現在のバッテリ7のSOC値を取得し(S1)、取得されたバッテリのSOC値の他、地図情報及び車両2の学習データに基づいて、車両2がEV走行によって走行可能な走行可能範囲の境界を算出する(S2)。そして、算出された走行可能範囲の境界の内、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、非表示境界の位置を特定する境界特定情報(枠やカーソル等のマーク、文字、記号等)を液晶ディスプレイ15に表示する(S9)ので、非表示境界の位置をユーザに容易に把握させることができる。その結果、その後の地図のスクロール操作や縮尺変更を適切に行わせるとともに、ユーザにエネルギー補給施設でエネルギーの補給を効率良く行う適切なタイミングを認識させることを可能とする。
また、境界特定情報によって非表示境界の方向を特定するので、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その非表示境界の位置する方向をユーザに容易に把握させることができる。
また、境界特定情報によって非表示境界までの距離を特定するので、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界がある場合に、その非表示境界までの距離をユーザに容易に把握させることができる。
また、境界特定情報である枠79、80やカーソルが指定された場合に、その枠79、80やカーソルによって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15において表示可能な地図の最大縮尺へと現在の地図の縮尺を変更するので、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界があったとしても、容易な操作で現在のエネルギー残量で走行可能となる走行可能範囲をユーザが容易かつ正確に把握することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係るナビゲーション装置を車載機として搭載した車両の車両制御システムについて、図9及び図10に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図8の第1実施形態に係る車両制御システム3等の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る車両制御システム3等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0078】
この第2実施形態に係る車両制御システムの概略構成は、第1実施形態に係る車両制御システム3とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る車両制御システム3とほぼ同じ制御処理である。
ただし、第2実施形態に係る車両制御システム3は、境界特定情報である枠やカーソルが指定された場合に、その枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15において表示可能な地図の表示エリアまで地図をスクロールさせる点で第1実施形態に係る車両制御システム3と異なっている。
【0079】
以下に、第2実施形態に係るナビゲーション装置においてナビゲーションECU33が実行する地図スクロール処理プログラムについて図9に基づき説明する。ここで、第2実施形態に係る地図スクロール処理プログラムは、走行可能範囲案内処理プログラム(図3)のS10でユーザの指定操作を受け付けたと判定した場合(S10:YES)において、縮尺設定処理プログラム(図7)に代わって実行されるサブ処理プログラムである。図9は第2実施形態に係る地図スクロール処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。尚、以下の図9にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0080】
先ず、S31においてCPU51は、指定された境界特定情報によって特定される非表示境界の方向(例えば、図6に示す例で枠79が指定された場合には非表示境界76の方向である上方向)へと、液晶ディスプレイ15に表示される地図をスクロールするスクロール処理を行う。その結果、液晶ディスプレイ15に表示される地図の表示エリアが連続的に変更される。
ここで、前記S31のスクロール処理のスクロール速度は、車両2の現在位置から指定された境界特定情報によって特定される非表示境界までの距離によって変更することが望ましい。即ち、非表示境界までの距離が遠ければ遠いほど高速でスクロールするように構成することが望ましい。
【0081】
その後、S32においてCPU51は、指定された境界特定情報によって特定される非表示境界(例えば、図6に示す例で枠79が指定された場合には非表示境界76)が液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれているか否か判定する。
【0082】
そして、指定された境界特定情報によって特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれていると判定された場合(S32:YES)には、CPU51はスクロール処理を停止する(S33)。その結果、ユーザに指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15の表示エリアに表示されるという条件を満たし、その条件を満たす中で車両の現在位置に最も近いエリアの地図が表示される。
例えば、図10に示す例は、図6に示す画面で表示エリア61の上縁に位置する枠79が指定された場合において、地図のスクロール処理が停止した後の液晶ディスプレイ15の表示画面を示す。図10に示す例では、ユーザによって枠79が指定された後に、液晶ディスプレイ15に表示された地図が上方向へとスクロールし、枠79によって位置が特定される非表示境界76が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれた時点でスクロールが停止する。その結果、図10に示すように非表示境界76が表示エリア内に表示される位置で車両周辺の地図が表示される。
従って、ユーザは非表示となっていた走行可能範囲の境界の位置や形状を把握することが可能となる。
また、CPU51は指定された境界特定情報により位置の特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15の表示エリアに含まれている旨を案内する(S34)。例えば、『現在、非表示となっていた走行可能範囲の境界を表示しています。』との音声を出力する。また、図10に示すように同内容の文章を液晶ディスプレイ15に表示するようにしても良い。その後、S35へと移行する。
【0083】
また、指定された境界特定情報によって特定される非表示境界が液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれていないと判定された場合(S32:NO)には、CPU51はスクロール処理を継続して行う(S31)。
【0084】
その後、S35においてCPU51は、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたか否か判定する。ここで、走行可能範囲の案内終了条件を満たす場合としては、例えば、車両2が走行を開始した場合、前記S33でスクロール処理が停止してから一定時間(例えば30sec)が経過した場合、「現在地ボタン」や「戻るボタン」が押下された場合等が該当する。
【0085】
そして、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたと判定された場合(S35:YES)には、液晶ディスプレイ15に表示されている地図を車両2の現在位置周辺の地図へと切り替える(S36)。その後、走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0086】
それに対して、走行可能範囲の案内終了条件を満たしていないと判定された場合(S35:NO)には、継続して現在の表示範囲内での地図を表示し、走行可能範囲の案内を行う。
【0087】
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による走行案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、境界特定情報である枠79、80やカーソルが指定された場合に、その枠79、80やカーソルによって位置が特定される非表示境界を液晶ディスプレイ15において表示可能な地図の表示エリアまで地図をスクロールさせるので、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリア内に含まれない走行可能範囲の境界があったとしても、容易な操作で現在のエネルギー残量で走行可能となる走行可能範囲をユーザが容易かつ正確に把握することができる。従って、ユーザの利便性が向上する。
【0088】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態に係るナビゲーション装置を車載機として搭載した車両の車両制御システムについて、図11及び図12に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図8の第1実施形態に係る車両制御システム3等の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る車両制御システム3等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0089】
この第3実施形態に係る車両制御システムの概略構成は、第1実施形態に係る車両制御システム3とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る車両制御システム3とほぼ同じ制御処理である。
ただし、第3実施形態に係る車両制御システム3は、境界特定情報である枠やカーソルが指定された場合に、その枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界方向で且つ走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、表示エリアに含まれない充電施設の位置を特定する情報を表示する点で第1実施形態に係る車両制御システム3と異なっている。
【0090】
以下に、第3実施形態に係るナビゲーション装置においてナビゲーションECU33が実行する施設情報表示処理プログラムについて図11に基づき説明する。ここで、第3実施形態に係る施設情報表示処理プログラムは、走行可能範囲案内処理プログラム(図3)のS10でユーザの指定操作を受け付けたと判定した場合(S10:YES)において、縮尺設定処理プログラム(図7)に代わって実行されるサブ処理プログラムである。図11は第3実施形態に係る施設情報表示処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。尚、以下の図11にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0091】
先ず、S41においてCPU51は、車両2に対してユーザにより指定された枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界方向(例えば、図6に示す例で枠79が指定された場合には非表示境界76の方向である上方向)に位置する施設の内、バッテリ7の充電を行うことが可能な充電施設に関する情報を地図情報DB46から取得する。尚、前記S41で取得される充電施設に関する情報としては、例えば充電施設の位置座標、施設名称、充電料金、充電施設の営業時間等がある。
【0092】
次に、S42においてCPU51は、前記S41で取得した充電施設に関する情報に基づいて、ユーザにより指定された枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界方向(例えば、図6に示す例で枠79が指定された場合には非表示境界76の方向)で且つ走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、表示エリアに含まれない充電施設があるか否か判定する。具体的には、ユーザにより指定された枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界と表示エリアの外周とで囲まれるエリアに充電施設がある場合に、条件を満たす充電施設があると判定する。
【0093】
そして、条件を満たす充電施設があると判定された場合(S42:YES)には、S43へと移行する。それに対して、条件を満たす充電施設が無いと判定された場合(S42:NO)には、走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0094】
S43においてCPU51は、ユーザにより指定された枠やカーソルによって位置が特定される非表示境界方向で且つ走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、表示エリアに含まれない充電施設に関する情報を液晶ディスプレイ15に表示する。
例えば、図12に示す例は、図6に示す画面で表示エリア61の上縁に位置する枠79が指定された場合において、該当する充電施設に関する情報が表示された際の液晶ディスプレイ15の表示画面を示す。図11に示す例では、非表示境界76方向で且つ走行可能範囲の境界66の内側に位置するとともに、表示エリア61に含まれない充電施設(即ち、非表示境界76と表示エリア61の外周とで囲まれるエリアに位置する充電施設)として、充電施設91が存在する。従って、ユーザによって枠79が指定された後には、充電施設91の施設名称と車両2の現在位置からの距離に関する情報を示す情報ウィンドウ92が液晶ディスプレイ15に表示される。
その結果、ユーザは非表示となっていた充電施設の位置等を把握することが可能となる。
【0095】
その後、S44においてCPU51は、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたか否か判定する。ここで、走行可能範囲の案内終了条件を満たす場合としては、例えば、車両2が走行を開始した場合、前記S43で充電施設に関する情報が表示されてから一定時間(例えば30sec)が経過した場合、「現在地ボタン」や「戻るボタン」が押下された場合等が該当する。
【0096】
そして、走行可能範囲の案内終了条件を満たしたと判定された場合(S44:YES)には、表示されている充電施設に関する情報を非表示とする(S45)。その後、走行可能範囲案内処理プログラムを終了する。
【0097】
それに対して、走行可能範囲の案内終了条件を満たしていないと判定された場合(S44:NO)には、継続して充電施設に関する情報を表示し、走行可能範囲及び充電施設の案内を行う。
【0098】
以上詳細に説明した通り、第3実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による走行案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、境界特定情報である枠79、80やカーソルが指定された場合において、その枠79、80やカーソルによって位置が特定される非表示境界の方向で且つ走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、液晶ディスプレイ15に表示された地図の表示エリアに含まれない充電施設がある場合に、その充電施設の位置をユーザに容易に把握させることができる。その結果、ユーザに充電施設での充電を効率良く行う適切なタイミングを認識させることを可能とする。
【0099】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では非表示境界の位置を特定する境界特定情報として、枠79、80やカーソルを用いているが、文字、記号等を用いても良い。例えば、文字を境界特定情報として用いる場合には、車両の現在位置から非表示境界までの距離を特定する文字で構成しても良い。
【0100】
また、第1実施形態及び第3実施形態又は第2実施形態及び第3実施形態を組み合わせた実施形態とすることも可能である。即ち、境界特定情報が指定された場合に、表示エリア外にある充電施設の情報を表示するとともに、該充電施設が表示エリアに含まれるまで、或いは指定された境界特定情報によって位置が特定される非表示境界が表示エリア内に含まれるまで地図の縮尺を変更したり地図をスクロールしたりしても良い。
【0101】
また、第1乃至第3実施形態では、駆動モータ5のみを駆動源とするEV走行で走行可能な範囲を走行可能範囲として算出(S2)しているが、EV走行のみでなく駆動モータ5について駆動源として用いたHV走行についても含めた走行可能範囲を算出し、案内するようにしても良い。
【0102】
また、上記実施形態では本願発明をモータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両に適用した場合を説明したが、モータのみを駆動源とする電気自動車にも適用可能である。また、エンジンを駆動源とするエンジン自動車にも適用可能である。尚、ガソリン自動車に対して本願発明を適用する場合には、S1及びS101においてCPU51はバッテリのSOC値の代わりにガソリンの残量を取得する。また、S2及びS102において現在のガソリン残量で走行可能な走行可能範囲を算出する。
【符号の説明】
【0103】
1 ナビゲーション装置
2 車両
3 車両制御システム
7 バッテリ
15 液晶ディスプレイ
16 スピーカ
33 ナビゲーションECU
34 タッチパネル
51 CPU
52 RAM
53 ROM
66 走行可能範囲の境界
79、80 枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図の所定エリアを表示装置に表示する地図表示手段と、
車両のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得手段と、
前記エネルギー残量取得手段により取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界を算出する走行可能範囲算出手段と、
前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報を前記表示装置に表示する境界特定情報表示手段と、を有することを特徴とする走行案内装置。
【請求項2】
前記境界特定情報表示手段は、前記境界特定情報を前記非表示境界の方向に対応する前記表示エリアにおける位置に表示することを特徴とする請求項1に記載の走行案内装置。
【請求項3】
前記境界特定情報は、前記表示エリアから前記非表示境界までの距離を特定する情報を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行案内装置。
【請求項4】
地図上にあるエネルギー補給施設の位置情報に基づいて、前記走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、前記表示エリアに含まれないエネルギー補給施設があるか否か判定する施設判定手段と、
前記施設判定手段によって前記走行可能範囲の境界の内側に位置するとともに、前記表示エリアに含まれないエネルギー補給施設があると判定された場合に、該エネルギー補給施設の位置を特定する施設特定情報を前記表示装置に表示する施設特定情報表示手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の走行案内装置。
【請求項5】
前記境界特定情報は前記表示装置に表示されるマークからなり、
前記マークを指定するマーク指定手段と、
前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界を前記表示装置において表示可能な地図の最大縮尺を算出する最大縮尺算出手段と、
前記表示装置に表示する地図の縮尺を前記最大縮尺に設定する縮尺設定手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の走行案内装置。
【請求項6】
前記境界特定情報は前記表示装置に表示されるマークからなり、
前記マークを指定するマーク指定手段と、
前記表示装置に表示された地図を前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界の方向へとスクロールする表示エリアスクロール手段と、
前記表示エリアスクロール手段によって前記表示装置に表示された地図がスクロールされている途中に前記指定されたマークによって位置が特定される前記非表示境界が前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれた場合に、前記スクロールを停止するスクロール停止手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の走行案内装置。
【請求項7】
地図の所定エリアを表示装置に表示する地図表示ステップと、
車両のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得ステップと、
前記エネルギー残量取得ステップにより取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界を算出する走行可能範囲算出ステップと、
前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報を前記表示装置に表示する境界特定情報表示ステップと、を有することを特徴とする走行案内方法。
【請求項8】
コンピュータに搭載され、
地図の所定エリアを表示装置に表示する地図表示機能と、
車両のエネルギーの残量を取得するエネルギー残量取得機能と、
前記エネルギー残量取得機能により取得されたエネルギーの残量を消費することによって前記車両が走行可能な走行可能範囲の境界を算出する走行可能範囲算出機能と、
前記走行可能範囲の境界の内、前記表示装置に表示された地図の表示エリアに含まれない非表示境界がある場合に、前記非表示境界の位置を特定する境界特定情報を前記表示装置に表示する境界特定情報表示機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−169423(P2010−169423A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9908(P2009−9908)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】