説明

車両およびその制御方法

【課題】定速走行指示がなされたときにより適正な制御を行なう。
【解決手段】モータからの動力を用いて走行する電気自動車において、定速走行が指示されたときに(ステップS110)、要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには(ステップS160,S200)、モータから出力するクリープトルクを徐減させて値0にすると共に(ステップS230〜S290)駆動輪に要求トルクTd*に基づく制動力を作用させる(ステップS300,S310)。こうした制御によりモータから駆動方向のトルク(クリープトルク)を出力する一方で駆動輪に制動力を作用させるものに比して、より適正な制御を行なうことができ、エネルギ効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、車軸に動力を出力可能な内燃機関と、車軸に動力を出力可能な電動機と、定速走行を指示するオートクルーズスイッチとを備える車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、オートクルーズスイッチがオンにされて定速走行が指示されたときには、定速走行が指示されたときの車速で定速走行するよう内燃機関や電動機を制御している。
【特許文献1】特開2005−20820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上述の車両では、定速走行が指示されていないときには、アクセル開度が値0で車速が比較的低いときには車軸にクリープトルクを出力する制御を実行している。定速走行指示がなされて定速走行している最中に同様の制御を行なうと、定速走行はアクセル開度が値0であることを条件として実行されるため、低車速時には常にクリープトルクが出力されてしまい、走行状態によっては適正な制御ができないことがある。例えば、低車速で定速走行しているときには電動機からクリープトルクが出力されるが、この状態で制動要求がなされると、電動機からクリープトルクを出力する一方でブレーキ等により制動力を付与しなければならず、エネルギ効率が低下する。このように、定速走行が指示されたときに、より適正な制御を行なうことが望ましい。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、定速走行が指示されているときにより適正な制御を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は
車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、
目標車速を設定すると共に該目標車速での定速走行を指示する定速走行指示手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、前記設定された目標車速と前記検出された車速とに基づいて前記目標車速で定速走行するために前記車軸に出力すべき要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには前記車軸にクリープトルクが出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには前記車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには車軸にクリープトルクが出力されるよう動力出力装置を制御する。一方、定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に要求駆動力に基づく駆動力が車軸に出力されるよう動力出力装置を制御する。クリープトルクの出力を制限するから、要求駆動力に基づく駆動力を車軸に出力するためにより適正な制御を行なうことができる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記制御手段は、前記クリープトルクの出力を制限する際に該クリープトルクが出力されないよう前記動力出力装置を制御する手段であるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の車両において、制動力を付与可能な制動力付与手段を備え、前記制御手段は、前記所定のクリープトルク出力条件が成立している状態で前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、前記設定された要求駆動力が制動力でないときには前記要求駆動力に基づく駆動力を前記検出された車速に基づくクリープトルクで下限制限した駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記設定された要求駆動力が制動力であるときには前記検出された車速に基づくクリープトルクを制限した制限クリープトルクが前記動力出力装置から出力されると共に前記要求駆動力に基づく制動力が車両に作用するよう前記動力出力装置と前記制動力付与手段とを制御する手段であるものとすることもできる。設定された要求駆動力が制動力であるときには車速に基づくクリープトルクを制限したトルクを出力する一方、設定された要求駆動力に基づく駆動力が車軸に作用する動力出力装置と制動力に付与手段とを制御するから、車速に基づく目標クリープトルクをそのまま動力出力装置から出力するものに比して制動力付与手段により車両に作用させる制動力をより小さくすることができ、エネルギ効率の向上を図ることができる。この場合において、前記制限クリープトルクは、値0に設定されてなるものとしてもよい。また、前記制限クリープトルクは、前記検出された車速に基づくクリープトルクから時間の経過に伴って徐減して値0になるよう設定されてなるものとしてもよい。こうすれば、動力出力装置から出力されるトルクの急変に伴うトルクショックを抑制することができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を備え、前記所定のクリープトルク出力条件は、前記検出されたアクセル開度が値0であると共に前記検出された車速が所定車速以下であるものとすることもできる。
【0011】
そして、本発明の車両において、路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、前記定速走行指示手段は、前記路面勾配に基づいて前記目標車速を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、車両を路面勾配に応じた目標車速で定速走行させることができる。
【0012】
また、本発明の車両において、前記動力出力装置は、前記車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記車軸に動力を出力可能な電動機と、を有する装置であるものとすることもできる。この場合において、前記動力出力装置は、前記車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段を有する装置であるものとすることもできる。この場合において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を有する手段であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の車両の制御方法は、
車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、定速走行を指示する定速走行指示手段と、車速を検出する車速検出手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、目標車速を設定すると共に該設定された目標車速と前記検出された車速とに基づいて前記目標車速で定速走行するために前記車軸に出力すべき要求駆動力を設定し、
所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには前記車軸にクリープトルクが出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには前記車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御する
ことを要旨とする。
【0014】
この本発明の車両の制御方法では、所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには車軸にクリープトルクが出力されるよう動力出力装置を制御する。一方、定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に要求駆動力に基づく駆動力が車軸に出力されるよう動力出力装置を制御する。クリープトルクの出力を制限するから、要求駆動力に基づく駆動力を車軸に出力するためにより適正な制御を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪30a,30bにデファレンシャルギヤ31を介して連結された駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22と、モータ22を駆動するインバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26と、駆動輪30a,30bのブレーキホイールシリンダ34a,34bへの油圧をコントロールするためのブレーキアクチュエータ52と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット60とを備える。
【0017】
モータ22は、外周面に永久磁石が貼り付けられたロータと、三相コイルが巻回されたステータとを備えるPM型の同期発電電動機として構成されている。インバータ24は、6つのスイッチング素子により構成されており、バッテリ26から供給される直流電力を擬似的な三相交流電力に変換してモータ22に供給する。
【0018】
ブレーキアクチュエータ52は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ50の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪30a,30bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ34a,34bや図示しな従動輪のブレーキホイールシリンダの油圧を調整したり、ブレーキペダル75の踏み込みに無関係に、駆動輪30a,30bや従動輪に制動トルクが作用するようブレーキホイールシリンダ34a,34bや従動輪のブレーキホイールシリンダの油圧を調整したりすることができるように構成されている。ブレーキアクチュエータ52は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)54により制御されている。ブレーキECU54は、電子制御ユニット60と通信しており電子制御ユニット60からの制御信号によってブレーキアクチュエータ52を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ52の状態に関するデータを電子制御ユニット60に出力する。
【0019】
電子制御ユニット60は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU62の他に処理プログラムを記憶するROM64と、データを一時的に記憶するRAM66と、図示しない入出力ポートと通信ポートとを備える。電子制御ユニット60には、モータ22の回転位置を検出する回転位置検出センサ23からの回転位置θm,バッテリ26の温度を検出する温度センサ26aからのバッテリ温度tb,イグニッションスイッチ70からのイグニッション信号,シフトレバー71の操作位置を検出するシフトポジションセンサ72からのシフトポジションSP,アクセルペダル73の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ74からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル75の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ76からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ78からの車速V,運転席近傍に取り付けられ定速走行モードを設定すると共に目標車速V*を設定するクルーズスイッチ80からの定速走行モード設定信号や目標車速V*などが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット40からは、モータ22を駆動制御するためのインバータ24のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0020】
次に、こうして構成された第1実施例の電気自動車20の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット60により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0021】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット60のCPU62は、まず、アクセルポジションセンサ74からのアクセル開度Acc,車速センサ78からの車速V,目標車速V*,クルーズスイッチ80から定速走行モード設定信号など制御に必要なデータを入力する処理を実行し(ステップS100)、入力した定速走行モード設定信号に基づいて定速走行指示がなされているか否かを調べる(ステップS110)。定速走行指示がなされていないときには、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいてモータ22のトルク指令Tm*を設定する(ステップS120)。トルク指令Tm*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vとトルク指令Tm*との関係を予め定めてトルク指令設定用マップとしてROM64に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応するトルク指令Tm*を導出して設定するものとした。図3にトルク指令設定用マップの一例を示す。アクセルペダル73がオフ(アクセル開度Accが値0)であると共に車速Vが所定車速Vref(例えば、5km/時)以下であるときには、図示するように、クリープトルクとして比較的小さい正のトルク(車両を駆動する方向のトルク)がトルク指令Tm*として設定されている。つまり、アクセルペダル73がオフ(アクセル開度Accが値0)であると共に車速Vが所定車速Vref(例えば、5km/時)以下であることがクリープトルクを出力するクリープトルク出力条件となっているのである。
【0022】
こうしてトルク指令Tm*を設定すると、フラグFを値0に設定すると共に(ステップS130)、設定したトルク指令Tm*でモータ22が駆動されるようインバータ24のスイッチング素子のスイッチング制御を行なって(ステップS320)、本ルーチンを終了する。ここで、フラグFは、定速走行指示がなされている共に制動要求がなされた状態で車両の状態がクリープトルクを出力するクリープトルク出力領域にあることを示すフラグである。こうして、定速走行指示がなされていないときには、アクセル開度Accと車速Vとに基づく駆動力により走行し、アクセルペダル73がオフであると共に車速Vが所定車速Vref以下のとき、すなわち、クリープトルク出力条件が成立したときにはモータ22から駆動軸32にクリープトルクが出力される。
【0023】
一方、定速走行指示がなされているときには(ステップS110)、続いて、アクセルペダル73が踏み込まれたり、ブレーキペダル75が踏み込まれるなど定速走行を解除する解除条件が成立している否かを調べる(ステップS140)。解除条件が成立しているときには、ステップS120、SS130,300の処理を実行して、本ルーチンを終了する。こうして、解除条件が成立しているときには、アクセル開度Accと車速Vとに基づく駆動力により走行する。
【0024】
解除条件が成立していないとき、すなわち、アクセルペダル73がオフ(アクセル開度Accが値0)であると共にブレーキペダル75がオフであるときには(ステップS140)、車速Vと目標車速V*とに基づいて次式(1)により車両を目標車速V*で定速走行させるために駆動軸32に出力すべきトルクとしての要求トルクTd*を設定する(ステップS150)。ここで、式(1)は、車速Vで走行している車両を目標車速V*で走行させるためのフィードバック制御における関係式である。式(1)中、右辺第1項は、フィードフォワード項であり、目標車速V*に基づいて平坦路で車両を目標車速V*で安定して走行させるためにリングギヤ軸32aに出力すべきトルクとして設定されるものである。また、式(1)中、右辺第2項は、フィードバック項における比例項であり、「kv1」はそのゲインである。右辺第3項は、フィードバック項における積分項であり、「kv2」はそのゲインである。
【0025】
Td*=f(V*)+kv1・(V*-V)+kv2・∫(V*-V)dt (1)
【0026】
続いて、設定された要求トルクTd*の値を調べ(ステップS160)、要求トルクTd*が値0以上のとき、つまり、増速(駆動)要求がなされているときには、車速Vに基づいて定速走行中にモータから出力するトルクの下限値としての下限トルクTlimを設定する(ステップS170)。ここで、下限トルクTlimは、車速Vと下限トルクTlimとの関係を予め定めて下限トルク設定用マップとしてROM64に記憶しており、車速Vが与えられると記憶したマップから対応する下限トルクTlimを導出して設定するものとした。図4に下限トルク設定用マップの一例を示す。下限トルク設定用マップでは、図示するように、所定車速Vref(例えば、5km/時)以下の車速では、図3に例示したトルク指令設定用マップと同様に、比較的小さい正のトルク(車両を駆動する方向のトルク)を下限トルクTlim*として設定し、所定車速Vrefより高い車速では、図3に例示したトルク指令設定用マップより負側(制動側)に大きいトルクを下限トルクTlim*として設定する。これは、下り勾配の坂道を比較的高い速度で定速走行している際に車速Vの増加を抑制するためである。
【0027】
こうして、要求トルクTd*と下限トルクTlimを設定したら、要求トルクTd*を下限トルクTlimで下限制限したトルクをモータ22のトルク指令Tm*として設定すると共に(ステップS180)フラグFを値0に設定して(ステップS190)、トルク指令Tm*でモータ22を駆動制御して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。こうして、要求トルクTd*が値0以上であるときには、下限トルクTlim以上のトルク範囲内で要求トルクTd*に基づくトルクをモータ22から駆動軸32に出力しながら車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0028】
要求トルクTd*が負のトルクのとき、すなわち、減速(制動)要求がなされているときには、続いて、車両の状態がモータ22からクリープトルクを出力するクリープトルク出力領域にあるか否かを判定する(ステップS200)。この判定は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて行なわれ、アクセル開度Accが値0且つ車速Vが所定車速Vref以下であるクリープトルク出力条件が成立しているときに車両の状態がクリープトルク出力領域にあると判定する。なお、ステップS200以降の処理は、アクセル開度Accが値0でないことを条件に実行されるので(ステップS140)、ここでは、実質的に車速Vが所定車速Vref以下であるか否かを判定する処理になる。
【0029】
車両の状態がクリープトルク出力領域にないとき、すなわち、車速Vが所定車速Vrefを超えているときには(ステップS200)、車速Vに基づいて図4に例示した下限トルク設定用マップを用いて下限トルクTlimを設定する(ステップS210)。ここで、車速Vが所定車速Vrefを超えているから下限トルクTlimは負のトルクに設定されることになる。こうして下限トルクTlimを設定したら、フラグFを値0に設定すると共に(ステップS220)要求トルクTd*を下限トルクTlimで下限制限したトルクをモータ22のトルク指令Tm*として設定し(ステップS290)、要求トルクTd*からトルク指令Tm*を減じたトルクを目標ブレーキトルクTb*として設定して(ステップS300)、目標ブレーキトルクTb*をブレーキECU54に送信すると共に(ステップS310)設定したトルク指令Tm*でモータ22を駆動制御して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。目標ブレーキトルクTb*を受信したブレーキECU54は、目標ブレーキトルクTb*に基づく制動力が駆動輪30a,30bに作用するようブレーキアクチュエータ52を制御して、駆動輪30a,30bに制動力を付与する。こうして、要求トルクTd*が負のトルクのとき、車両がクリープトルク出力領域にないときには、下限トルクTlimが負のトルクとして設定されるから、モータ22から回生トルクを出力すると共にモータ22からの回生トルクのみでは車両の制動要求を満たすことができないときには駆動輪30a,30bに制動力を付与しながら車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0030】
車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには(ステップS200)、フラグFの値を調べる(ステップS210)。フラグFが値0であるときには、前回本ルーチンが実行されたときに、定速走行指示がなされていないか、定速走行指示がなされていても制動要求がなされておらず車両の状態がクリープトルク出力領域にもないと判断して、車速Vに基づいて図4に例示した下限トルク設定用マップを用いて下限トルクTlimを基本下限トルクTrefとして設定すると共に(ステップS240)フラグFを値1に設定する(ステップS250)。車両の状態がクリープトルク出力領域にあるとき、すなわち、車速Vが所定車速Vref以下であるときには、基本下限トルクTrefとして正のトルク(駆動方向のトルク)が設定される。こうして基本下限トルクTrefを設定したら、ステップS250の処理が実行されてからの時間の経過に伴って基本下限トルクTrefを時間変化率kをもって徐々に減少させた値を値0で下限制限した値を下限トルクTlimとして設定し(ステップS260)、下限トルクTlimが値0に設定されたとき以降はフラグFが値0に設定されるまで下限トルクTlimを値0に設定する(ステップS230,S270,S280)。このように、車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには、下限トルクTlimは、車速Vに基づく正のトルクである基本下限トルクTrefから徐々に減少して値0に至るよう設定される。ここで、基本下限トルクTrefから徐々に減少させたのは、下限トルクTlimをそのままモータ22のトルク指令Tm*としたときにモータ22からの出力の急変によるトルクショックを抑制するためであり、時間変化率kは、このようなトルクショックを抑制する時間変化率として設定する。
【0031】
下限トルクTlimを設定したら、要求トルクTd*を下限トルクTlimで下限制限したトルクをモータ22のトルク指令Tm*として設定する(ステップS290)。ステップS290の処理では、要求トルクTdが負のトルクであり、下限トルクTlimが正のトルクの基本下限トルクTrefから徐々に減少して値0に至るトルクとして設定されているから、モータ22のトルク指令Tm*として下限トルクTlimがそのまま設定されることになる。
【0032】
こうしてトルク指令Tm*を設定したら、要求トルクTd*とトルク指令Tm*とに基づいて目標ブレーキトルクTb*を設定してブレーキECU54に送信すると共に設定したトルク指令Tm*でモータ22を駆動制御して(ステップS300〜S320)、本ルーチンを終了する。こうして、要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには、モータ22から出力されるトルクを正のトルクの基本下限トルクTrefから徐々に減少させて値0にすると共に駆動輪30a,30bに制動力を作用させる。つまり、モータ22から出力されるクリープトルクを徐々に減らして値0にするのである。したがって、モータ22から車速Vに基づく駆動方向のクリープトルク(基本下限トルクTref)をそのまま出力する一方で駆動輪30a,30bに制動力を作用させるものに比して、ブレーキアクチュエータ52によって駆動輪30a,30bに作用させる制動力を小さくすることができ、より適正な制御を行なうことができるし、エネルギ効率を向上させることもできる。もとより、車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0033】
以上説明した第1実施例の電気自動車20によれば、定速走行が指示されたときに、要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには、モータ22から出力するクリープトルクを徐減させて値0にすると共に駆動輪30a,30bに要求トルクTd*に基づく制動力を作用させることにより、モータ22から駆動方向のトルク(クリープトルク)を出力する一方で駆動輪30a,30bに制動力を作用させるものに比して、より適正な制御を行なうことができ、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【0034】
第1実施例の電気自動車20では、定速走行指示がなされたときに要求トルクTd*が負のときにはモータ22とブレーキアクチュエータ52とを協調制御するものとしたが、ブレーキアクチュエータ52の制御を行なわずモータ22の制御のみで要求トルクTd*に基づく制動力を駆動軸に作用させるものしてもよい。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の第2実施例としての電気自動車20Bについて説明する。第2実施例の電気自動車20Bは、図1を用いて説明した第1実施例の電気自動車20と、運転席近傍に取り付けられ下り勾配の坂道を定速走行するDAC(Downhill Assist Control)モードを設定するDACスイッチ82Bと路面勾配を検出する勾配センサ84Bとを備える点、クルーズスイッチ80を備えていない点を除いて、同一のハード構成をしている。したがって、重複する説明を回避するために、第2実施例のハイブリッド自動車20Bのハード構成についての詳細な説明は省略する。
【0036】
電子制御ユニット60には、回転位置検出センサ23からの回転位置θmや温度センサ26aからのバッテリ温度tb,イグニッションスイッチ70からのイグニッション信号,シフトポジションセンサ72からのシフトポジションSP,アクセルペダルポジションセンサ74からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルポジションセンサ76からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ78からの車速Vの他にDACスイッチ82BからのDACモード設定信号,勾配センサ84Bからの路面勾配θなどが入力ポートを介して入力されている。
【0037】
次に、こうして構成された第2実施例の電気自動車20Bの動作について説明する。第2実施例の電気自動車20Bでは、図2の駆動制御ルーチンに代えて図6の駆動制御ルーチンを実行する。この駆動制御ルーチンは、図2の駆動制御ルーチンと、図2の駆動制御ルーチンのステップS100,S110の処理に代えてステップS100B,S110Bの処理が実行される点やステップS144Bの処理が実行される点を除いて、同一の処理を実行する。したがって、重複した説明を回避するため、図6に例示した駆動制御ルーチンについては図2の駆動制御ルーチンと同一の処理には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット60のCPU62は、まず、車速センサ78からの車速V,アクセルポジションセンサ74からのアクセル開度Acc,DACスイッチ82BからのDACモード設定信号,勾配センサ84Bからの路面勾配θなど制御に必要なデータを入力する処理を実行し(ステップS100B)、入力したDACモード設定信号に基づいて定速走行指示がなされているかやアクセルペダル73が踏み込まれたり、ブレーキペダル75が踏み込まれるなどDACモードを解除する解除条件が成立している否かを調べる(ステップSS110B,130B)。定速走行指示がなされていなかったり、解除条件が成立しているときには、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいてモータ22のトルク指令Tm*を設定すると共にフラグFを値0に設定し、設定したトルク指令Tm*でモータ22を駆動制御して(ステップS120,S320,S230)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、定速走行指示がなされていないときや解除条件が成立しているときには、アクセル開度Accと車速Vとに基づく駆動力により走行し、アクセルペダル73がオフであると共に車速Vが所定車速Vref以下のときにはモータ22からクリープトルクが出力される。
【0039】
解除条件が成立していないときには(ステップS140)、路面勾配θに基づいて目標車速V*を設定する(ステップS144B)。ここで、目標車速V*は、図7に例示するように、路面勾配θが大きくなるほど車速V1(例えば、30km/時)から徐々に小さくなる傾向に設定されるものとする。こうして目標車速V*を設定したら、目標車速V*と車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTd*を設定して(S150)、要求トルクTd*が値0以上のトルクであるときには、車速Vに基づいて下限トルクTlimを設定すると共にフラグFを値0に設定し、要求トルクTd*を下限トルクTlimで下限制限したトルクでモータ22を駆動させ(ステップS160〜S190,S320)、本ルーチンを終了する。こうして、要求トルクTd*が値0以上であるときには、下限トルクTlim以上のトルク範囲内で要求トルクTd*に基づくトルクをモータ22から駆動軸32に出力しながら車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0040】
要求トルクTd*が負であるときに車両の状態がクリープトルク出力領域でないときには(ステップS160,S200)、フラグFを値0に設定すると共に車速Vに基づく下限トルクTlim以上のトルク範囲で要求トルクTd*に基づくトルクを出力すると共にモータ22の回生トルクで足りない分の制動力が駆動輪30a,30bに作用するようブレーキアクチュエータ52を制御して(ステップS210,S220,S290〜S320)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0041】
一方、要求トルクTd*が負のトルクであるときに車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには(ステップS160,S200)、モータ22から出力されるトルクを基本下限トルクTrefから徐々に減少させて値0にすると共にモータ22の回生トルクで足りない分の制動力が駆動輪30a,30bに作用するようブレーキアクチュエータ52を制御して(ステップS230〜S320)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、モータ22から車速Vに基づく駆動方向のクリープトルク(基本トルクTref)をそのまま出力する一方で駆動輪30a,30bに制動力を作用させるものに比して、ブレーキアクチュエータ52によって駆動輪30a,30bに作用させる制動力を小さくすることができ、より適正な制御を行なうことができるし、エネルギ効率を向上させることもできる。もとより、車両を目標車速V*で定速走行させることができる。
【0042】
以上説明した第2実施例の電気自動車20Bによれば、定速走行が指示されたときに、要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にあるときには、モータ22からクリープトルクを出力せずに駆動輪30a,30bに要求トルクTd*に基づく制動力を車両に作用させることにより、モータ22から駆動方向のトルク(クリープトルク)を出力する一方で駆動輪30a,30bに制動力を作用させるものに比して、より適正な制御を行なうことができ、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【0043】
第2実施例の電気自動車20Bでは、目標車速V*を路面勾配θに基づいて設定するものとしたが、目標車速V*を路面勾配θに関係なく所定車速(例えば、5km/時)に設定するものとしてもよい。
【0044】
第1実施例や第2実施例の電気自動車20,20Bでは、定速走行が指示された場合に要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にないときには、モータ22から出力されるクリープトルクを基本下限トルクTrefから徐減させて値0にするものとしたが、定速走行指示がなされていないときに比してモータ22から出力されるクリープトルクが制限されればよいから、定速走行指示がなされていないときより小さいクリープトルクがモータ22から出力されるものとしてもよい。
【0045】
第1実施例や第2実施例の電気自動車20,20Bでは、定速走行が指示された場合に要求トルクTd*が負のトルクであると共に車両の状態がクリープトルク出力領域にないときには、下限トルクTlimを基本下限トルクTlimを徐減させて値0になるよう設定するものとしたが、車両の状態がクリープトルク出力領域にないと判定されたら下限トルクTlimを徐減させることなくすぐに値0に設定するものとしてもよい。
【0046】
第1実施例や第2実施例の電気自動車20,20Bでは、図4に例示した下限トルク設定用マップを用いて下限トルクTlimを設定するものとしたが、こうした下限トルク設定用マップに限定されるものではなく、例えば、図3に例示したトルク指令設定用マップのアクセル開度が値0のときの車速Vとトルク指令Tm*との関係をそのまま下限トルク設定用マップとして用いてもよい。
【0047】
実施例では、駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22と、モータ22と電力をやりとりするバッテリ26とを備える電気自動車20について説明したが、モータ22やバッテリ26に加えて、図8の変形例の電気自動車120に例示するように、駆動軸32に遊星歯車機構126を介してエンジン122とモータ124とを接続した電気自動車120に適用するものとしてもよいし、図9の変形例の電気自動車220に例示するように、エンジンと222と、エンジン222のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪30a,30bに連結された駆動軸32に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン222の動力の一部を駆動軸32に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230とを備える電気自動車220に適用するものとしてもよい。また、実施例では、動力源としてのモータ22からの動力により走行可能な電気自動車20について説明したが、動力源としての内燃機関からの動力により走行可能な自動車に適用するものとしてもよい。また、こうした車両の制御方法の形態であるものとしてもよい
【0048】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、駆動輪30a,30bにデファレンシャルギヤ31を介して連結された駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22とモータ22を駆動するインバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26とを備えるものが「動力出力装置」に相当し、クルーズスイッチ80が「定速走行指示手段」に相当し、車速センサ78が「車速検出手段」に相当し、定速走行が指示されているときに車速Vと目標車速V*に基づいて駆動軸32に出力すべきトルクとしての要求トルクTd*を設定するステップS150の処理を実行する電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、アクセル開度Accが値0且つ車速Vが所定車速Vref以下のとき、定速走行指示がなされていないときには図3に例示したトルク指令設定用マップを用いてモータ22から正のトルクが出力されるようトルク指令Tm*を設定してモータ22を駆動制御するステップS120,S320の処理や定速走行指示がなされているときに要求トルクTd*が負であるときに基本下限トルクTrefから徐々に減少して値0になるよう下限トルクTlimを設定すると共に要求トルクTd*に基づいてトルク指令Tm*を設定してモータ22を駆動するステップS110,140〜S160,S200〜S320の処理を実行する電子制御ユニット60が「制御手段」に相当する。駆動輪30a,30bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ34a,34bとブレーキホイールシリンダ34a,34bの油圧を調整するブレーキアクチュエータ52とが「制動力付与手段」に相当する。アクセルポジションセンサ74が「アクセル開度検出手段」に相当する。勾配センサ84Bが「路面勾配検出手段」に相当する。エンジン122が「内燃機関」に相当し、モータ22が「電動機」に相当する。モータ134と遊星歯車機構126とが「電力動力入出力手段」に相当する。モータ134が「発電機」に相当し、遊星歯車機構126が「3軸式動力入出力手段」に相当する。また、 DACスイッチ82Bも「定速走行指示手段」に相当する。電子制御ユニット60とブレーキECU54とを組み合わせたものも「制御手段」に相当する。エンジン222も「内燃機関」に相当する。対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。ここで、「動力出力装置」としては、駆動輪30a,30bにデファレンシャルギヤ31を介して連結された駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22とモータ22を駆動するインバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26とを備えるものに限定されるものではなく、エンジンとモータとからの動力を車軸に出力可能なものなど、車軸に動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「定速走行指示手段」としては、クルーズスイッチ80やDACスイッチ82Bに限定されるものではなく、目標車速を設定すると共に目標車速での定速走行を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「車速検出手段」としては、車速センサ88に限定されるものではなく、駆動軸32軸の回転数に基づいて車速Vを算出するものや駆動輪30a,30bや従動輪に取り付けられた車輪速センサからの信号に基づいて車速Vを演算するものなど、車速を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求駆動力設定手段」としては、電子制御ユニット60に限定されるものではなく、電子制御ユニットと他の制御ユニットとを組み合わせたものにより構成されるなどとしてもよい。また、「要求駆動力設定手段」としては、クルーズスイッチ80により定速走行指示がなされたときに目標車速V*と車速Vとに基づいて要求トルクTd*を設定するものに限定されるものではなく、定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、設定された目標車速と検出された車速とに基づいて目標車速で定速走行するために車軸に出力すべき要求駆動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、電子制御ユニット60や電子制御ユニット60とブレーキECU54とを組み合わせたものに限定されるものではなく、電子制御ユニットと他の制御ユニットとを組み合わせたものにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、アクセル開度Accが値0且つ車速Vが所定車速Vref以下のときに、定速走行指示がなされていないときには図3に例示したトルク指令設定用マップを用いてモータ22から正のトルクが出力されるようトルク指令Tm*を設定してモータ22を駆動制御し、定速走行指示がなされているときに要求トルクTd*が負であるときに基本下限トルクTrefから徐々に減少して値0になるよう下限トルクTlimを設定すると共に要求トルクTd*に基づいてトルク指令Tm*を設定してモータ22を駆動するものに限定されるものではなく、所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには車軸にクリープトルクが出力されるよう動力出力装置を制御し、定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に設定された要求駆動力に基づく駆動力が車軸に出力されるよう動力出力装置を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「制動力付与手段」としては、駆動輪30a,30bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ34a,34bとブレーキホイールシリンダ34a,34bの油圧を調整するものに限定されるものではなく、制動力を付与可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関や水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構126とモータ22とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って駆動軸と出力軸とに動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータ22に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータ124に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構126に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれかに軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両の製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施例の電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】第1実施例の電子制御ユニット60により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】トルク指令設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】下限トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施例である電気自動車20Bの構成の概略を示す構成図である。
【図6】第2実施例の電子制御ユニット60により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】目標車速V*と路面勾配θとの関係を示す説明図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0052】
20,20B,120,220 電気自動車、22 モータ、23 回転位置検出センサ、24 インバータ、26 バッテリ、30a,30b 駆動輪、31 デファレンシャルギヤ、32 駆動軸、34a,34b ブレーキホイールシリンダ、50 ブレーキマスターシリンダ、52 ブレーキアクチュエータ、54 ブレーキECU、60 電子制御ユニット、62 CPU、64 ROM、66 RAM、70 イグニッションスイッチ、71 シフトレバー、72 シフトポジションセンサ、73 アクセルペダル、74 アクセルペダルポジションセンサ、75 ブレーキペダル、76 ブレーキペダルポジションセンサ、78 車速センサ、80 クルーズスイッチ、82B DACスイッチ、84B 勾配センサ、122,222 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、
目標車速を設定すると共に該目標車速での定速走行を指示する定速走行指示手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、前記設定された目標車速と前記検出された車速とに基づいて前記目標車速で定速走行するために前記車軸に出力すべき要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには前記車軸にクリープトルクが出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには前記車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記クリープトルクの出力を制限する際に該クリープトルクが出力されないよう前記動力出力装置を制御する手段である請求項1記載の車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両であって、
制動力を付与可能な制動力付与手段を備え、
前記制御手段は、前記所定のクリープトルク出力条件が成立している状態で前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、前記設定された要求駆動力が制動力でないときには前記要求駆動力に基づく駆動力を前記検出された車速に基づくクリープトルクで下限制限した駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記設定された要求駆動力が制動力であるときには前記検出された車速に基づくクリープトルクを制限した制限クリープトルクが前記動力出力装置から出力されると共に前記要求駆動力に基づく制動力が車両に作用するよう前記動力出力装置と前記制動力付与手段とを制御する手段である
車両。
【請求項4】
前記制限クリープトルクは、値0に設定されてなる請求項3記載の車両。
【請求項5】
前記制限クリープトルクは、前記検出された車速に基づくクリープトルクから時間の経過に伴って徐減して値0になるよう設定されてなる請求項3記載の車両。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の車両であって、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を備え、
前記所定のクリープトルク出力条件は、前記検出されたアクセル開度が値0であると共に前記検出された車速が所定車速以下である
車両。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか記載の車両であって、
路面勾配を検出する路面勾配検出手段を備え、
前記定速走行指示手段は、前記路面勾配に基づいて前記目標車速を設定する手段である 車両。
【請求項8】
前記動力出力装置は、前記車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記車軸に動力を出力可能な電動機と、を有する装置である請求項1ないし7いずれか記載の車両。
【請求項9】
前記動力出力装置は、前記車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段を有する装置である請求項8記載の車両。
【請求項10】
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を有する手段である請求項9記載の車両。
【請求項11】
車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、定速走行を指示する定速走行指示手段と、車速を検出する車速検出手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているとき、目標車速を設定すると共に該設定された目標車速と前記検出された車速とに基づいて前記目標車速で定速走行するために前記車軸に出力すべき要求駆動力を設定し、
所定のクリープトルク出力条件が成立しているとき、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されていないときには前記車軸にクリープトルクが出力されるよう前記動力出力装置を制御し、前記定速走行指示手段により定速走行が指示されているときには前記車軸へのクリープトルクの出力を制限すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記車軸に出力されるよう前記動力出力装置を制御する
車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−221935(P2008−221935A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60283(P2007−60283)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】