説明

車両ボディおよび筒型電池

【課題】電池を有する構成であって軽量化に適した車両ボディ、該車両ボディの構築に適した筒型電池および該車両ボディを備えた車両を提供すること。
【解決手段】
本発明により提供される車両ボディ1は、長手方向に延びる中空構造部2a,3a,3bを有し、軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型電池10,102,104が該中空構造部の構造部材として使用されている。この筒型電池10,102,104は、上記空洞部を通って中空構造部2a,3a,3bの長手方向に延びる冷却風通路が形成されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディの構造部材として用いられる筒型電池および該電池を構造部材に用いて構成された車両ボディに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動するモータの動力源として電池(典型的には二次電池)を利用するタイプの車両(ハイブリッド自動車、電気自動車等)の開発が進められている。このような車両では、エンジンのみにより駆動される車両に比べて大容量の電池が搭載される傾向にあることから、該電池の収納スペースを確保するために車体内の空間が圧迫されがちである。この点に関し、例えば特許文献1には、シャーシフレームを構成するフレーム構成部材の中空部を蓄電池の収納スペースとした電気自動車用シャーシフレームが記載されている。また、二次電池に関する従来技術文献として特許文献2〜4が例示される。
【0003】
【特許文献1】特開平8−58617号公報
【特許文献2】実開平6−23157号公報
【特許文献3】特開2000−260474号公報
【特許文献4】特開2004−127559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシャーシフレームは、上記収納スペースを区画する中空のフレーム構造部材の内部に、それ自体独立して使用可能な電池の全体をまるごと(すなわち、該電池の外壁をなす電池容器ごと)収容して使用するものである。したがって、上記収容スペース内に電池が配置(収容)された電池含有シャーシフレームの質量を、上記シャーシフレームと上記電池との合計質量よりも小さくすることはできない。また、この特許文献1には上記収容スペース内に収容される電池を冷却するための流体を流す冷却用パイプを該収容スペース内に配設することが記載されているが、かかるパイプの配設はシャーシフレームの構造の複雑化および質量の増大を招く。
【0005】
そこで本発明は、電池を有する構成であって軽量化に適した車両ボディを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、かかる車両ボディの構築に適した筒型電池を提供することである。さらに他の目的は、該車両ボディを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、所定形状の電池を車両ボディの構造部材として用いることにより上記課題を解決し得ることを見出して本発明を完成した。
【0007】
本発明により提供される車両ボディは、長手方向に延びる中空構造部を有する。そして、前記中空構造部の構造部材として、軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型電池(典型的には二次電池)が使用されている。前記筒型電池は、前記空洞部を通って前記中空構造部の長手方向に延びる冷却風通路が形成されるように配置されている。
かかる構成の車両ボディによると、上記筒型電池が車両ボディの構造部材として用いられている(該電池が構造部材を兼ねる)ことから、該電池が配置された箇所では他の車両ボディ構成部材を少なくとも部分的に省略する(上記筒型電池で置き換える)ことができる。このことによって、上記電池を有する車両ボディの質量(すなわち、電池込みの質量)をより軽量化することができる。上記電池は中空の筒型形状であるので強度が高く、車両ボディの構造部材として利用するのに適している。また、上記中空構造部には筒型電池の空洞部を経由して延びる冷却風通路が形成されているので、該通路に冷却風(典型的には空気)を流通させることにより上記筒型電池を効率よく冷却することができる。また、このように車両ボディの構造部材として上記電池を用いるので、該電池の収納スペースを車体内に別途確保する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0008】
ここに開示される車両ボディの好ましい一態様として、前記中空構造部が、車両ドア開口部の下部を構成する部分である態様が例示される。他の好ましい一態様として、前記中空構造部が、車両ドア開口部の上部を構成する部分である態様が例示される。
車両ドア開口部の下部(下辺部分)および上部(上辺部分)は、ほぼ直線状または比較的緩やかな曲線状に設計されることが多い。したがって、当該部分に対応する形状の筒状電池(典型的には、上記空洞部の周りにシート状の部材が捲回された捲回型電池)を形成しやすい。また、これらの部分は、車両の走行等に伴って、該部分の内部にその長手方向(車両の前後方向)に流れる空気流(冷却風)を導入するのに適している。
【0009】
ここに開示される車両ボディは、前記筒型電池がアッパーボディのリインホースメント部材を構成する態様で好ましく実施することができる。上記筒型電池は、他の車両ボディ構成部材(典型的には鋼板をプレス成形してなる。)に比べて高い剛性を示すものであり得る。したがって、例えば、従来の一般的な車両ボディのリインホースメント部材(補強部材)の一部または全体を上記筒型電池に置き換えた構成とすることにより、該筒型電池の剛性をより効果的に利用することができる。好ましい一態様として、ロッカーアウターリインホースメントの長手方向の一部範囲を上記筒型電池により構成する(該筒型電池で置き換える)態様が挙げられる。
【0010】
ここに開示される車両ボディに用いられる前記筒型電池の一好適例として、前記空洞部の周りに捲回されたシート状の正極および負極を備える捲回型電池が挙げられる。他の好適例として、前記空洞部の周りに捲回されたシート状のバイポーラ電極を備える捲回型バイポーラ電池が挙げられる。かかる筒型電池の種類(組成)として、例えば、リチウムイオンを電荷担体とし、該リチウムイオンの吸蔵および放出可能な正極活物質および負極活物質を備えるリチウムイオン電池を好ましく採用することができる。
【0011】
本発明によると、また、軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型電池(典型的には二次電池)が提供される。該筒型電池は、長手方向に延びる中空構造部を有する車両ボディに、前記空洞部を通って前記中空構造部の長手方向に延びる冷却風通路が形成されるように配置されて、該車両ボディの構造部材として使用される。上記筒型電池は、中空の筒型形状であるので強度が高く、車両ボディの構造部材として適している。また、上記空洞部を利用して上記冷却風通路を構成した態様で使用することにより、該筒型電池を効率よく冷却することができる。かかる筒型電池は、ここに開示されるいずれかの車両ボディを構成する筒型電池として好適である。
【0012】
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの車両ボディを備える車両(典型的には自動車)が提供される。上記車両ボディは、上述のように電池込みの質量として軽量化が可能であることから、該車両ボディを車両の構成部品として用いることにより、該車両を軽量化することができる。また、車両ボディを構成する電池の収納スペースを車体内に別途確保する必要がないので、電池の配置スペースを節約(省スペース化)することができる。このことによって、車内空間(客室、トランク等)をより広く確保し、あるいは車両の体格をよりコンパクト化することができる。
【0013】
ここに開示される技術は、車両駆動用モータの動力源として電池を用いる車両(典型的には自動車。例えば、上記モータを動力源に用いる電気自動車、該モータとエンジンとを併用するハイブリッド自動車等。)および該車両を構築するための車両ボディに好ましく適用することができる。また、ここに開示される筒型電池は、車両駆動用モータの動力源に用いられる電池として好適である。上記のように動力源として電池を利用する車両では、比較的大容量の電池を搭載する必要があることから、その搭載される電池の質量および容積が大きくなりがちである。したがって、本発明を適用することによる効果(軽量化、省スペース化)がよりよく発揮され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明をこれらの具体的実施形態に限定する意図ではない。また、以下の図面において同様の作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。
なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車両ボディの概略構成を示す斜視図である。この車両ボディ(アッパーボディ)1には、フロントドア開口部2およびリヤドア開口部3が左右にそれぞれ形成されている。フロントドア開口部2の下部(ロッカー部)2a、リヤドア開口部3の下部(ロッカー部)3a、およびリヤドア開口部3の上部3bは、長手方向に延びる中空構造部として構成されている。
以下、これらの中空構造部2a,3a,3bにおいて筒型電池10,102,104を車両ボディ1の構造部材として用いる例につき説明する。なお、図1では、以下の例において筒型電池10,102,104が配置される箇所を網掛けで示している。
【0016】
<例1>
車両ボディ1のフロントドア開口部2の下部2aを構成する構造部材として筒型電池10を用いた態様の一例を図1,図2および図3に示す。図2は、このフロントドア開口下部2a(筒型電池10が配置された部分)よりも前側部分の断面(図1のII−II線断面)である。当該部分は、車両外側に突出する略U字状の断面形状に成形されたロッカーアウターリインホースメント24と、そのU字の開口部に対向するカウルサイドパネル25と、ロッカーアウターリインホースメント24の外側を囲むサイドアウターパネル22と、カウルサイドパネル25の外側(車両内側)を囲むフロアサイドインナーメンバー26とを備える。これら各部材の間には長手方向に延びる隙間(中空部)が形成されている。なお、図2,3に示す符号28は、フロアサイドインナーメンバー26の上部内壁に沿って配置されたフロアサイドメンバーNo.1リインホースメントである。この図2において、ロッカーアウターリインホースメント24とカウルサイドパネル25との間からは、フロントドア開口下部2a(図2に示す断面よりも後側)に配置された筒型電池10の前端面(蓋部)と、該電池10の軸方向に貫通する空洞部11とが見えている。
【0017】
図3は、フロントドア開口下部2aの筒型電池10が配置された部分の断面(図1のIII−III線断面)である。図2に示すロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25は、図1に示す筒型電池10の配置された範囲では省略された形状(筒型電池10と重複する部分が切り取られた形状に相当する。)となっている。筒型電池10の前端部および後端部は、上記省略された形状のロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25に連結されている。例えば、筒型電池10の前側に配置された部材24,25の後端が筒型電池10の前端部外周壁に接続され、筒型電池10の後側に配置された部材24,25の前端が筒型電池10の後端部外周壁に接続されている。すなわち、本例に係る車両ボディ1では、ロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25の長手方向の一部範囲(フロントドア開口下部2aに位置する部分)が筒型電池10の外周壁で置き換えられた構成となっており、これらの部材24,25に連結された構造部材として筒型電池10が使用されている。すなわち、本例に係る車両ボディ1は、筒型電池10がフロントドア開口下部2aのリインホースメント部材として機能し得るように構成されている。
【0018】
なお、図2,3中の符号14は筒型電池10を保持する取付部材であって、該取付部材14の一端は溶接等により筒型電池10の外周壁に接合され、他端はサイドアウターパネル22とフロアサイドインナーメンバー26との間に挟みこんで溶接等により接合されている。この取付部材14は省略してもよく、また、ロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25の一部をフロントドア開口下部2aまで延ばして取付部材14として利用してもよい。
【0019】
図2に示すように、ロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25に囲まれた空間は筒型電池10の空洞部11に連通している。これにより、上記空間から空洞部11を通ってフロントドア開口下部2aの後方へと抜ける冷却風通路(フロントドア開口下部2aの長手方向に延びる冷却風通路)が形成されている。また、筒型電池10の外周壁とサイドアウターパネル22との間および該外周壁とフロアサイドインナーメンバー26との間には、フロントドア開口下部2aの長手方向に延びる隙間が形成され、該隙間もまた筒型電池10を冷却する冷却風通路として機能するように構成されている。例えば車両の走行等によりこれらの冷却風通路に空気を流通させて、筒型電池11を内周側および外周側の双方から効率よく冷却することができる。
【0020】
<例2>
フロントドア開口部2の下部2aを構成する構造部材として筒型電池10を用いた態様の他の例を図1,図4および図5に示す。図4は、筒型電池10が配置された箇所よりも前側部分の断面(図1のII−II線断面)である。本例では、この図4において、サイドアウターパネル22とカウルサイドパネル25との間から、フロントドア開口下部2aに配置された筒型電池10の前端面(蓋部)および空洞部11が見えている。
【0021】
図5は、フロントドア開口下部2aの筒型電池10が配置された部分の断面(図1のIII−III線断面)である。本例に係る車両ボディ1は、図1に示す筒型電池10の配置された範囲では、図4に示すサイドアウターパネル22およびカウルサイドパネル25が省略されて(筒型電池10と重複する部分が切り取られて)、筒型電池10の外周壁で置き換えられた構成となっている。これらサイドアウターパネル22およびカウルサイドパネル25の端部(筒型電池10の前側の端と後側の端との間)に連結された構造部材として筒型電池10が用いられている。また、図4に示すロッカーアウターリインホースメント24も筒型電池10と重複する範囲が省略された(切り取られた)形状となっている。この省略された形状のロッカーアウターリインホースメント24の端部が筒型電池10の前端面および後端面に溶接等により固定されていてもよい。筒型電池10の外周壁の一部は上下に突出して(延長されて)おり、該突出部がフロアサイドインナーメンバー26に溶接等により固定されている。
【0022】
図4においてロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25に囲まれた空間は筒型電池10の空洞部11に連通しており、これにより上記空間から空洞部11を通ってフロントドア開口下部2aの後方へと抜ける冷却風通路が長手方向に形成されている。また、筒型電池10の外周壁は車両ボディ1の外部空間に面している。したがって、例えば車両の走行等により上記冷却風通路に空気が流通されるとともに筒型電池10の外周壁に沿った空気流が生じ、これにより筒型電池11を内周側および外周側の双方から効率よく冷却することができる。
【0023】
<例3>
フロントドア開口部2の下部2aを構成する構造部材として筒型電池10を用いた態様のさらに他の例を図1,図6および図7に示す。図6は、筒型電池10が配置された箇所よりも前側部分の断面(図1のII−II線断面)を示している。本例では、この図6において、サイドアウターパネル22とフロアサイドインナーメンバー26との間から、フロントドア開口下部2aに配置された筒型電池10の前端面(蓋部)および空洞部11が見えている。
【0024】
図7は、フロントドア開口下部2aの筒型電池10が配置された部分の断面(図1のIII−III線断面)である。本例に係る車両ボディ1は、図1に示す筒型電池10の配置された範囲では、図6に示すサイドアウターパネル22およびフロアサイドインナーメンバー26が省略されて(筒型電池10と重複する部分が切り取られて)、筒型電池10の外周壁で置き換えられた構成となっている。これらサイドアウターパネル22およびフロアサイドインナーメンバー26の端部(筒型電池10の前側の端と後側の端との間)に連結された構造部材として筒型電池10が使用されている。さらに、図4に示すロッカーアウターリインホースメント24、カウルサイドパネル25およびフロアサイドメンバーNo.1リインホースメント28もまた、筒型電池10と重複する範囲が省略された(切り取られた)形状となっている。これらの部材の端部が筒型電池10に溶接等により固定された構成としてもよい。
【0025】
図6においてロッカーアウターリインホースメント24およびカウルサイドパネル25に囲まれた空間ならびにカウルサイドパネル25およびフロアサイドインナーメンバー26に囲まれた空間は筒型電池10の空洞部11に連通しており、これにより上記空間から空洞部11を通ってフロントドア開口下部2aの後方へと抜ける冷却風通路が長手方向に形成されている。また、筒型電池10の外周壁は車両ボディ1の外部空間に面している。したがって、本例の構成によっても筒型電池11を内周側および外周側の双方から効率よく冷却することができる。
【0026】
<例4>
リヤドア開口部3の下部3aを構成する構造部材として筒型電池102を用いた態様の一例を図1および図8に示す。図8は、リヤドア開口下部3aよりも前側部分における断面(図1のVIII−VIII線断面)であって、図中の符号22はサイドアウターパネルを、符号24はロッカーアウターリインホースメントを、符号26はフロアサイドインナーメンバーを、符号32はセンターボディピラーアウターリインホースメントを、符号36はセンターボディインナーピラーを、そして符号38はセンターボディインナーロワーピラーを示している。この図8において、ロッカーアウターリインホースメント24とセンターボディインナーピラー36とセンターボディインナーロワーピラー38とで囲まれた中空部からは、リヤドア開口下部3aに配置された筒型電池102の前端面(蓋部)と、該電池102の軸方向に貫通する空洞部11とが見えている。
【0027】
リヤドア開口下部3a(図1参照)では、図8に示すロッカーアウターリインホースメント24、センターボディインナーピラー36およびセンターボディインナーロワーピラー38が筒型電池102の外周壁によって置き換えられた構成となっており、これらの部材の端部に連結された構造部材として筒型電池102が使用されている。図8においてロッカーアウターリインホースメント24、センターボディインナーピラー36およびセンターボディインナーロワーピラー38に囲まれた空間は筒型電池102の空洞部11に連通しており、これにより上記空間から空洞部11を通ってリヤドア開口下部3aの後方へと抜ける冷却風通路が長手方向に形成されている。
【0028】
<例5>
リヤドア開口部3の上部3bを構成する構造部材として筒型電池104を用いた態様の一例を図1および図9に示す。図9は、リヤドア開口上部3bよりも前側部分における断面(図1のIX−IX線断面)であって、図中の符号22はサイドアウターパネルを、符号32はセンターボディピラーアウターリインホースメントを、符号36はセンターボディインナーピラーを、符号42はルーフサイドアウターレールを、そして符号46はルーフサイドインナーレールを示している。この図9において、ルーフサイドアウターレール42とセンターボディインナーピラー36とで囲まれた中空部からは、リヤドア開口上部3bに配置された筒型電池104の前端面(蓋部)と、該電池104の軸方向に貫通する空洞部11とが見えている。
【0029】
リヤドア開口上部3b(図1参照)では、図9に示すルーフサイドアウターレール42およびセンターボディインナーピラー36が筒型電池104の外周壁によって置き換えられた構成となっており、これらの部材の端部に連結された構造部材として筒型電池104が使用されている。図9においてルーフサイドアウターレール42およびセンターボディインナーピラー36に囲まれた空間は筒型電池104の空洞部11に連通しており、これにより上記空間から空洞部11を通ってリヤドア開口上部3bの後方へと抜ける冷却風通路が長手方向に形成されている。
【0030】
このように筒型電池を構造部材として用いた車体ボディ1は、例えば上述のように他の車両ボディ構成部材の一部(例えば、電池と重複する部分)を省略し得ることから、該電池込みの車両ボディの軽量化が可能である。また、該電池の収納スペースを別途確保する必要がない。したがって、かかる車両ボディ1は、図17に示すように、駆動用モータの動力源として電池を用いる車両(例えば、上記モータを動力源に用いる電気自動車、該モータとエンジンとを併用するハイブリッド自動車等。)100の構成要素として好適である。例えば、車両ボディ(アッパーボディ)1のフロントドア開口下部2a、リヤドア開口下部3aおよびリヤドア開口上部3bのうちいずれか一箇所または二箇所以上に筒型電池10,102,104が配置された構成の車両(自動車)100とすることができる。なお、図17では図を見やすくするため筒型電池を配置する箇所として車両の左側部分のみを示しているが、通常は、車両の重量バランス等の観点から車両(車体ボディ)の左右に筒型電池を対称に配置することが好ましい。例えば、左右のフロントドア開口下部2aに同形の筒型電池10をそれぞれ配置する態様を好ましく採用することができる。
【0031】
続いて、これらの実施形態に係る車両ボディ1の構成要素(構造部材)として使用される筒型電池につき説明する。該筒型電池は、軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型の外形を呈する電池(典型的には二次電池)であればよく、その構成は特に制限されない。例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を好ましく採用することができる。本発明にとり特に好ましい筒型電池としてリチウムイオン電池が挙げられる。リチウムイオン電池は高エネルギー密度で高出力を実現できる二次電池であるため、車両に搭載される電池(特に、車両駆動用モータの動力源として用いられる電池)として好適である。また、上述したように、軸方向に貫通する空洞部の周りに捲回された(すなわち、筒状に捲回された)シート状の正極および負極を備える捲回型電池、該空洞部の周りに捲回されたシート状のバイポーラ電極を備える捲回型バイポーラ電池等を好ましく使用することができる。
【0032】
図10〜図14を参照しつつ、筒状に捲回されたシート状の正極および負極を備える筒型リチウムイオン電池の構成および該筒型電池と他の車両ボディ構成部材とを接続する態様の一例を説明する。この筒型電池(リチウムイオン電池)70は、シート状の正極および負極をセパレータシートとともに捲回してなる電極体74と、該電極体74および電解質を収容する筒型の電池容器72とを備える(図12参照)。この電池容器72は、同軸に配置された円筒状の内筒722および外筒724とを備える。内筒722と外筒724との間に形成された筒状(管状)の隙間に電極体74および電解質(図示せず)が収容される。上記隙間の軸方向両端は、環状(ドーナツ盤状)の蓋体726および底体728により塞がれている。電池容器72の構成材料としては、金属材料、合成樹脂材料(硬質かつ高融点の樹脂が好ましい。)等を用いることができる。強度や外観(例えば塗装性)等の観点から、金属材料(例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス等)を好ましく使用することができる。他の車両ボディ構成部材との接続作業性(溶接性等)のよい金属材料の使用が好ましい。例えば、他の車両ボディ構成部材と同様の材料(典型的には鋼材)を好ましく採用することができる。
【0033】
この電池容器(筒型容器)72に収容される電極体74は、例えば図10に示すように、通常のリチウムイオン電池の捲回電極体と同様、シート状の正極集電体742の表面に正極活物質層743を有する正極(正極シート)741、シート状のセパレータ(セパレータシート)744、シート状の負極集電体747の表面に負極活物質層748を有する負極(負極シート)746、およびシート状のセパレータ(セパレータシート)745をこの順に積層し、次いで捲回して構成される。正極シート741の長手方向に沿う一方の端部には正極活物質層743を有しない部分(活物質層未形成部分)が設けられている。また、負極シート746の長手方向に沿う一方の端部には負極活物質層748を有しない部分(活物質層未形成部分)が設けられている。正負極シート741,746を二枚のセパレータ744,745とともに重ね合わせる際には、両活物質層743,748を重ね合わせるとともに正極シートの活物質層未形成部分と負極シートの活物質層未形成部分とが長手方向に沿う一方の端部と他方の端部に別々に配置されるように、正負極シート741,746を幅方向(捲回軸方向)にややずらして重ね合わせる。この状態で計四枚のシート741,744,746,745を内筒722に巻きつけることにより、該内筒722の周りに捲回された筒状の電極体74が形成される。
【0034】
上記のとおり各シートを幅方向にずらしつつ捲回した結果として、図11に示すように、この電極体74の軸方向の一端(図11の上端)では、正極シート741の活物質未形成部分(すなわち正極集電体742)が、正極シート741の正極活物質層形成部分と負極シート746の負極活物質層形成部分とセパレータシート744,745とが密に捲回された部分である捲回コア部分749から外方にはみ出している。このはみ出し部分を電極体74の外周側および内周側から寄せ集め、ここに正極リード76を電気的に接続する。同様に、電極体74の軸方向の他端(図11の下端)で捲回コア部分749から外方にはみ出した負極シート746の活物質未形成部分(すなわち負極集電体747)を電極体74の外周側および内周側から寄せ集め、ここに負極リード78を電気的に接続する。そして、内筒722に巻かれた電極体74を電解質とともに外筒724に挿入し、軸方向の両端に蓋体726および底体728を取り付けて封止する。
【0035】
なお、かかる電極体74を構成する材料および部材自体は従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば、正極集電体742にはアルミニウム箔(本実施形態)その他の正極に適する金属箔が好適に使用される。正極活物質層743を構成する正極活物質としては、従来からリチウムイオン電池の正極活物質となり得ることが知られている物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、リチウムニッケル系複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト系複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン系複合酸化物(例えばLiMn)等が挙げられる。また、負極集電体747には銅箔(本実施形態)その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質層748を構成する負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池の負極活物質となり得ることが知られている物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等が挙げられる。また、セパレータシート744,745としては多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたもの等を好適に使用することができる。
【0036】
電極体74とともに容器72に収容される電解質としては、例えば、従来のリチウムイオン電池と同様の液状電解質(電解液)を好ましく用いることができる。かかる電解液の代表的な組成として、適当な非水溶媒(例えば、ジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒)に支持塩としてのリチウム塩(例えばLiPF)を含有させた組成を例示することができる。また、固体電解質もしくはゲル状電解質を用いてもよい。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状電解質を使用する場合には、上記セパレータを必要としない(すなわち電解質自体がセパレータとしても機能する)場合があり得る。
【0037】
次に、この筒状電池70を他の車両ボディ構成部材に連結する手法の一例を説明する。ここに示す例では、発明の把握を容易にするため、略円筒状のロッカーアウターリインホースメント24の長手方向の一部(中間部)を円筒状の筒状電池70で置き換えた構成の車両ボディを構築するものとする。
【0038】
図12に示すように、筒状電池70が配置される位置ではロッカーアウターリインホースメント24が省略され(切り取られ)、これによりリインホースメント24は筒状電池の前側部分(図12では左側)24aと後側部分(図12では右側)24bとに分割されている。これらの部分24a,24bの端部は、筒状電池70の前端および後端を受け入れ可能に拡径されている。また、前側部分24aの端部には約半周にわたって(図12では上半分に)切欠242が設けられている。この切欠242を利用して前側部分24aと後側部分24bとの間に筒状電池70を導入し、該電池70を後側部分24b側に移動させ(図12のL字状矢印参照)、図13に示すように、上記格径部との段差を利用して電池70の後端(底体728)を位置決めする。そして、切欠242を覆うように断面円弧状のブラケット79を例えば溶接により取り付け、図14に示すように、筒型電池70の外筒724と前側部分24aとの隙間を塞ぐ。このようにして中空構造のロッカーアウターリインホースメント24と筒型電池70とが連結され、該リインホースメント24の前側部分24aから筒状電池70の空洞部71を通って後側部分24bへと延びる冷却風通路4が形成される。
【0039】
なお、ブラケット79の内側には凸部792が設けられており、該凸部792を筒型電池70の前端(蓋体726)に当接させることでブラケット79の位置決めを行うとともに筒型電池70の位置ズレを防止することができる。また、ブラケット79の取り付け方法は溶接に限定されず、例えばリベット止め、ボルト止め、接着剤による接合等の、従来公知の各種方法を単独であるいは適宜組み合わせて採用することができる。他の部材の取り付けについても同様である。
【0040】
ここに開示される実施形態において車両ボディ1の構成要素(構造部材)として使用される筒型電池の他の例として、筒状に捲回されたシート状のバイポーラ電極を備える円筒型のリチウムイオン電池(バイポーラ電池)につき説明する。このバイポーラ電池は、図15に示すように、シート状の集電体842の一面に正極活物質層844が、他面に負極活物質層846が設けられた構成のバイポーラ電極84を有する。そして、複数枚のバイポーラ電極84をそれぞれ高分子固体電解質層85を間に挟んで積層することにより積層電極87を構成し、この積層電極87と絶縁シート(図示せず)とを重ねて内筒722の周りに巻きつける。なお、図16中の符号76,77は、積層電極87を構成するバイポーラ電極84のうち最も外周側および最も内周側に位置する電極84にそれぞれ接続されたリード線である。そして、内筒722に巻かれた積層電極87を図11と同様に外筒724に挿入し、軸方向の両端に蓋体726および底体728を取り付けて封止する。このようにして構築された筒型バイポーラ電池80は、例えば上述した筒型リチウムイオン電池70と同様にして(図12〜図14参照)他の車両ボディ構成部材に連結することができる。
【0041】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、車両ボディを構成する筒型電池の形状およびサイズは、該筒型電池が配置される箇所における車体ボディの形状、該筒型電池に連結される他の車体ボディ構成部材の形状、該筒型電池の放熱性等に合わせて、適宜の形状およびサイズとすることができる。また、電池容器72を構成する内筒722の選択によって所望する開口面積および開口形状の空洞部71を形成することができ(図10参照)、電極体74を構成するシート741,744,746,745の幅および長さ(捲回回数)によって筒型電池70の軸長および厚さ(電極体74の内周と外周との間の厚さ)を適宜調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る車両ボディの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のII−II線断面図である。
【図5】図1のIII−III線断面図である。
【図6】図1のII−II線断面図である。
【図7】図1のIII−III線断面図である。
【図8】図1のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図1のIX−IX線断面図である。
【図10】筒型リチウムイオン電池の製造方法を例示する説明図である。
【図11】筒型リチウムイオン電池の製造方法を例示する説明図である。
【図12】一実施形態に係る車両ボディの製造方法を例示する説明図である。
【図13】一実施形態に係る車両ボディの製造方法を例示する説明図である。
【図14】一実施形態に係る車両ボディの製造方法を例示する説明図である。
【図15】筒型バイポーラ電池の製造方法を例示する説明図である。
【図16】筒型バイポーラ電池の製造方法を例示する説明図である。
【図17】本発明の実施形態に係る車両を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 アッパーボディ(車両ボディ)
2 フロントドア開口部(車両ドア開口部)
2a フロントドア開口下部(中空構造部)
3 リヤドア開口部(車両ドア開口部)
3a リヤドア開口下部(中空構造部)
3b リヤドア開口上部(中空構造部)
4 冷却風通路
10 筒型電池
11 空洞部
24 ロッカーアウターリインホースメント
25 カウルサイドパネル
26 フロアサイドインナーメンバー
36 センターボディインナーピラー
38 センターボディインナーロワーピラー
42 ルーフサイドアウターレール
70 リチウムイオン電池(筒型電池)
71 空洞部
72 電池容器
80 バイポーラ電池(筒型電池)
84 バイポーラ電極
100 車両(自動車)
102,104 筒型電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる中空構造部を有する車両ボディであって、
軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型電池が前記中空構造部の構造部材として使用されており、
前記筒型電池は、前記空洞部を通って前記中空構造部の長手方向に延びる冷却風通路が形成されるように配置されている、車両ボディ。
【請求項2】
前記中空構造部は、車両ドア開口部の下部または上部を構成する部分である、請求項1に記載の車両ボディ。
【請求項3】
前記筒型電池がアッパーボディのリインホースメント部材を構成している、請求項1または2に記載の車両ボディ。
【請求項4】
前記筒型電池は、前記空洞部の周りに捲回されたシート状の正極および負極を備える捲回型電池である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両ボディ。
【請求項5】
前記筒型電池は、前記空洞部の周りに捲回されたシート状のバイポーラ電極を備える捲回型バイポーラ電池である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両ボディ。
【請求項6】
軸方向に貫通する空洞部を備えた筒型電池であって、
長手方向に延びる中空構造部を有する車両ボディに、前記空洞部を通って前記中空構造部の長手方向に延びる冷却風通路が形成されるように配置されて、該車両ボディの構造部材として使用されることを特徴とする、筒型電池。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両ボディを備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−35082(P2009−35082A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200043(P2007−200043)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】