説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】エンジンの燃料消費量を低減可能なハイブリッド車両に取付けられる車両用ナビゲーション装置の提供。
【解決手段】車載ナビゲーション装置2は、駆動輪13を駆動するためにエンジン11、およびモータ14を備えたハイブリッド車両1に取り付けられている。車載ナビゲーション装置2は、モータ14に電力を供給するバッテリ16の充電量を検出し、検出されたバッテリ16の充電量と地図データに基づいて、現在地と目的地との間において形成された各々の走行経路について、ハイブリッド車両1が走行する場合の走行方法に関するシミュレーションを行う。シミュレーションにおいて、各走行経路は走行方法ごとに細分され、細分された各区間は、それぞれ走行方法に従って重み付けされ、車載ナビゲーション装置2は各区間の重み付けの和に基づいて、エンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車両に取付けられる車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、エンジンの消費する燃料を節約するための車両用ナビゲーション装置には多くの従来技術があった。特に、ハイブリッド車両においては、エンジンおよびモータにより車輪を駆動しているため、その走行方法にバリエーションが多く、ハイブリッド車両に搭載されるナビゲーション装置には、エンジンの燃料消費量を低減させるための様々な従来技術があった。例えば、設定された予定走行経路と、交通センタから入手した道路上の混雑情報とから予測走行パターンを形成し、これから燃料消費量を最小化するようなバッテリの充放電スケジュールを作成するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、算出された実際のバッテリ残量が、道路情報と現在地に基づいて設定されたバッテリ残量の目標値に近づくように、エンジンおよびモータの出力を調整して、エンジンの燃費を向上させるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
更に、設定された走行経路について、現在の走行環境と記憶された走行データとに基づいて、走行経路上の走行パターンを予測し、エンジンの燃料消費量の低減のために、予測された走行パターンに基づいて、エンジンとモータの運転スケジュールを設定するものもあった(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−314004号公報
【特許文献2】特開平8−126116号公報
【特許文献3】特開2004−248455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の従来技術においては、いずれも、車両現在地と車両目的地との間に設定された所定の走行経路上を車両が走行することを前提とした場合に、エンジンの燃費を向上させる、あるいは燃料消費量を低減させるために、エンジンあるいはモータの作動パターンを調整するものであり、設定された走行経路の成り立ちによっては、然程の燃料節約にはつながらなかった。例えば、設定された走行経路の大部分が上り坂であった場合、バッテリへの充電の機会に乏しく、エンジンの使用が多くなるため、燃料消費量が増えてひいては燃費が大幅に悪化する。従って、ここにおいて、これまでよりも大幅にエンジンの燃料消費量を低減可能なハイブリッド車両に関する制御技術が望まれるところである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの燃料消費量を低減可能なハイブリッド車両に取付けられる車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の車両用ナビゲーション装置によれば、車両用バッテリの充電量と地図データに基づいて、形成された走行経路ごとに、ハイブリッド車両が走行する場合の走行方法に関するシミュレーションを行い、走行経路ごとのシミュレーション結果に基づいて、エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を提示する。これにより、ハイブリッド車両が、シミュレーション結果に基づいて提示された走行経路を走行することで、エンジンの燃料消費量を大幅に低減させることができる。
【0006】
請求項2記載の車両用ナビゲーション装置によれば、各走行経路の細分された各区間の、走行方法に従ってつけられた重み付けの和に基づいて、エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を提示する。これにより、エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を、簡単な演算により容易に提示することができる。
【0007】
請求項3記載の車両用ナビゲーション装置によれば、細分された走行経路の各区間を、走行方法に加えて各区間の道路状態に従ってそれぞれ重み付けする。これにより、経路上に渋滞等が発生している場合に、これを考慮してエンジンの燃料消費量を低減させる経路を提示することができ、いっそう、燃料消費量を低減可能な経路を提示することができる。
【0008】
請求項4記載の車両用ナビゲーション装置によれば、車両用バッテリの充電量が、シミュレーション時に算出された走行経路上の各位置における充電量よりも減少した場合には、走行シミュレーション手段は、その時のハイブリッド車両の現在地と入力された目的地とに基づいて、再度、走行経路を形成するとともに、検出されたその時の車両用バッテリの充電量に基づいて、再度形成された走行経路ごとにシミュレーションを行い、再度形成された走行経路ごとのシミュレーション結果に基づき、提示した走行経路を修正する。これにより、走行経路上における突発的な渋滞の発生等により、車両用バッテリの充電量がシミュレーション時の予想充電量より低下した場合でも、走行経路の修正により、再び、エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を提示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施形態1>
以下、図1乃至図4に基づいて、本発明の実施形態1による車載ナビゲーション装置2(本発明の車両用ナビゲーション装置に該当する)について説明する。図1は、車載ナビゲーション装置2が取り付けられた、ハイブリッド車両1の構成を示すブロック図である。ハイブリッド車両1の駆動源としてのエンジン11は、トランスミッション12を介して駆動輪13(本発明の車輪に該当する)と連結されている。トランスミッション12にはもう一つの駆動源であるモータ14が接続されている。トランスミッション12により、エンジン11およびモータ14は、駆動輪13に対して選択的に連結されるか、あるいは、両者が同時に連結されて駆動輪13を駆動する。
【0010】
モータ14にはモータドライバ15を介してバッテリ16(本発明の車両用バッテリに該当する)が接続されている。モータドライバ15がオンされることにより、バッテリ16からモータ14に対して電力が供給される。バッテリ16には充電量検出装置17が接続され、充電量検出装置17には、後述する車載ナビゲーション装置2のナビゲーションコントローラ21が接続されている。充電量検出装置17は本発明の充電量検出手段に該当し、バッテリ16の電圧を測定することにより、その充電量を検出している。
【0011】
車両コントローラ18は、CPU、RAM、ROM、およびインタフェイス回路等から成り、エンジン11、トランスミッション12、モータ14、モータドライバ15に接続されてハイブリッド車両1を統合制御するものである。また、車両コントローラ18はナビゲーションコントローラ21とも接続されており、車載ナビゲーション装置2とも関係しながら車両1を制御している。
【0012】
車載ナビゲーション装置2は、マイコンを主体として構成された制御装置であるナビゲーションコントローラ21、車両の現在位置を検出するための位置検出装置22、地図データ入力器23、操作部24、外部メモリ25、カラー液晶ディスプレイ等からなる表示装置26、スピーカ27、および送受信機28から構成されている。
【0013】
位置検出装置22は本発明の現在地検出手段に該当し、車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ、車両の走行距離を検出する距離センサ、人工衛星からの送信電波に基づいてハイブリッド車両1の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機(いずれも図示せず)を有している。上述した各センサは、それぞれ性質の異なる誤差を有している。このため、ナビゲーションコントローラ21は、各センサの検出値を補間しながら用いることにより、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。なお、精度によっては、位置検出装置22を上述したセンサの一部のみで構成してもよい。また、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0014】
地図データ入力器23は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。ここで、道路地図データには、各道路上ポイントの高度データも含まれており、後述するように、これは、走行経路上の走行方法についてのシミュレーションに使用される。
【0015】
操作部24は本発明の目的地入力手段に該当し、表示装置26の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置26の画面上に設けられるタッチパネルを含んで構成されている。ユーザは、この操作部24を用いて、目的地、目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)、通過点などの入力、表示装置26の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行う各種のコマンドの入力を行う。
【0016】
外部メモリ25は本発明のメモリ手段に該当し、フラッシュメモリカード等から構成されている。この外部メモリ25には、地図データとともに特定のデータ、例えば経路案内時にナビゲーションコントローラ21が設定した目的地までの経路のデータ、車両が通過した経路のデータ等が記憶される。また、外部メモリ25内には、後述するように車載ナビゲーション装置2が外部から道路上の渋滞情報等を入手した場合、当該情報データが記憶される。
【0017】
表示装置26の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示される。さらに、ドライバが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。
【0018】
スピーカ27は、ナビゲーションコントローラ21からの音声出力信号を受け、経路案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声、音声認識結果に応じたトークバック音声などを発声する。送受信機28は本発明の道路状態取得手段に該当し、VICSセンタ3(VICS:登録商標)や種々の情報センタとの間で無線通信によりデータの送受信を行い、渋滞情報等の道路状態情報を受信したり、ハイブリッド車両1の故障時や事故発生時に、センタに対して緊急通報等を行う。
【0019】
ナビゲーションコントローラ21を構成するマイコンは、CPU、メモリ(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等)、I/Oなどを備えており、位置検出装置22、地図データ入力器23、操作部24、外部メモリ25、表示装置26、スピーカ27および送受信機28と接続され、これらの構成を制御している。CPUがROM(またはフラッシュメモリ)に記憶されたプログラムを実行することにより、ナビゲーションコントローラ21は、ナビゲーション装置としての目的地設定機能、経路探索機能、表示制御機能、経路案内機能として作動する。通常の経路探索機能は、車両の出発地(現在位置)から目的地までの推奨する走行経路を自動計算するものであり、その手法としては例えばダイクストラ法が用いられている。
【0020】
経路案内機能は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置26の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する機能である。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動し、地図は車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
また、ナビゲーションコントローラ21は本発明の走行シミュレーション手段および燃料節約経路提示手段に該当し、エンジンの燃料の消費量を低減し、燃料を節約する走行経路(以下、エコ走行経路と呼ぶ)を探索し、この走行経路により経路案内する機能をも併せ持っている。この探索方法については、後ほど詳述する。
【0021】
次に、図2に基づいて、本実施形態によるエコ走行経路の探索方法および経路案内方法について説明する。図2はナビゲーションコントローラ21による制御フローチャートを示している。最初、ステップS201において、ナビゲーションコントローラ21のメモリ内の経路フラグをオフした後、ユーザが操作部24を使用して、ハイブリッド車両1の目的地を入力する(ステップS202)。
【0022】
次に、ステップS203において、ユーザが目的地までの走行距離の短い経路、あるいは通行料金等の安い低コストの走行経路といったような、通常の経路探索を行うか、エコ走行経路の探索を行うかが判定される。ステップS202において、ユーザが目的地を入力すると、表示装置26に「燃料消費量低減経路を選択しますか?」という表示がされるか、あるいは、スピーカ27を使用した音声により同様に尋ねられる。これに対して、ユーザが操作部24を用いて通常の経路探索を選択した場合、ステップS212へと進んで、通常の経路案内モード(経路探索を含む)が開始する。従って、ハイブリッド車両1の現在地と入力された目的地とに基づいて、ダイクストラ法による通常の経路探索が行われ、探索された経路に基づいた経路案内が実行される。
【0023】
ステップS203において、ユーザがエコ走行経路による経路探索および経路案内を選択した場合、ステップS204へと進み、充電量検出装置17によりバッテリ16の充電量を検出し、メモリ内に記憶する。その後、ステップS205において、表示装置26に「高速道路を使用しますか?」という表示がされるか、あるいは、スピーカ27を使用した音声により同様に尋ねられる。これに対して、ユーザが操作部24を用いて一般道路のみを使用して走行することを選択した場合、ステップS206へと進んで、一般道路によるエコ走行経路の探索が開始される。また、ステップS205において、ユーザが操作部24を用いて高速道路も使用して走行することを選択した場合、ステップS213へと進んで、メモリ内のフラグをオンした後、ステップS214において、一般道路および高速道路によるエコ走行経路の探索が開始される。
【0024】
ここで、ステップS206におけるエコ走行経路の探索方法について説明する。最初に、従前の経路探索方法により、地図データ上の、ハイブリッド車両1の現在地と目的地との間の複数のリンクとノードとを繋げて、検出されたハイブリッド車両1の現在地と目的地とを繋ぐすべての走行経路を形成する。この時、現在地と目的地との間の直線距離に対して、所定距離以上長くなるような経路の形成は避けて、両地点を繋ぐための常識的な走行経路のみを形成する。
【0025】
次に、送受信機28によって取込まれた道路上の渋滞情報等の道路情報、検出されたバッテリ16の充電量、および経路を形成するリンクの長さ、リンクあるいはノードの高度といった地図データに基づいて、形成されたすべての走行経路ごとに、ハイブリッド車両1が走行する場合の走行方法に関するシミュレーションが実行される(走行シミュレーション手段)。
【0026】
本実施形態におけるハイブリッド車両1の走行方法に関するシミュレーションは、下記(1)〜(5)の原則に基づいて行われるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
(1)平坦路は、モータ14単独で駆動輪13を駆動して走行する。あるいはモータ14とエンジン11とを併用して、駆動輪13を駆動して走行する。
(2)上り坂路は、エンジン11単独で駆動輪13を駆動して走行する。但し、緩傾斜の坂路の場合は、モータ14とエンジン11とを併用して、駆動輪13を駆動して走行することもできる。
(3)下り坂路においてはモータ14によるエネルギー回生を実行する。
(4)高速道路上は、モータ14単独で駆動輪13を駆動して走行する。あるいはモータ14とエンジン11とを併用して、駆動輪13を駆動して走行する。
(5)モータ14の使用は、バッテリ16の充電量を考慮して行う。
ここで、各坂路の勾配は、地図データ上の道路の距離および各位置の高度に基づいて演算される。走行方法に関するシミュレーションは、地図データ等に基づいて、各々の走行経路を走行方法ごとに細分し、細分された走行経路の各区間(例えば地図データ上のリンク)は、走行方法および送受信機28が受信した道路情報に従って、それぞれ重み付けされる。
【0027】
ここで、図3および図4に基づいて、形成された走行経路における細分された各区間の重み付けの方法について、具体的に説明する。ここで、図3および図4は、それぞれ同じ現在地(STARTと表示)および目的地(GOALと表示)との間に形成された、互いに異なる走行経路についてのシミュレーションを行った場合を示している。尚、図3および図4において、予想充電量とはシミュレーション中において演算されたバッテリ16の充電量、最低充電量とはハイブリッド車両1が走行中に常に蓄えておかなければならないバッテリ16の充電量を示している。また、図3および図4において、予想充電量の初期値は、シミュレーション開始時に、充電量検出装置17により実際に検出されたバッテリ16の充電量を示している。
【0028】
例えば、図3に示した走行経路において、細分された最初(1番目)の区間はシミュレーション上の距離が1.5の平坦路であり、バッテリ16の充電量も十分あるため、モータ14単独による走行が行われる。モータ14単独による走行は、燃料の消費も発電もともにないため、走行係数は0とされ、この部分における細分点数(重み付け)として、走行係数と区間の距離の積である、0×1.5=0が演算される。
【0029】
次(2番目)の区間は、シミュレーション上の距離が3の上り坂であり、充電量がこれだけの距離をモータ14の使用をするのには不足しているため、エンジン11単独による走行が行われる。エンジン11単独による走行は燃料の消費をともなうため、走行係数は−1とされ、この区間における細分点数として、−1×3=−3と演算される。その次(3番目)の区間は、渋滞区間長さ1を含むシミュレーション上の距離が2の平坦路であり、多少モータ14により走行する充電量は保有しているため、エンジン11とモータ14との併用による走行が行われる。エンジン11とモータ14との併用による走行は、それぞれの単独による走行の場合の中間と考えられるため、走行係数は−0.5とされ、この区間における細分点数として、−0.5×2=−1と演算される。また、この区間はエンジン11の燃料消費を招く要因としての渋滞区間を含んでいるため、更に、走行係数−0.3と、渋滞区間の長さ1との積である−0.3×1=−0.3を細分点数として加える。
【0030】
更に、その次(4番目)の区間は、シミュレーション上の距離が1の上り坂であり、充電量が最低充電量に接近しているため、エンジン11単独による走行が行われる。従って、この区間における細分点数として、−1×1=−1と演算される。その次(5番目)の区間は、シミュレーション上の距離が3.5の下り坂であるため、モータ14によるエネルギー回生が実行される。モータ14によるエネルギー回生によりバッテリ16への充電が行われるため、走行係数は1とされ、この区間における細分点数として、1×3.5=3.5と演算される。最後(6番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2の緩慢な上り坂であり、エネルギー回生により、多少モータ14により走行する充電量も保有しているため、エンジン11とモータ14との併用による走行が行われる。従って、この区間における細分点数として、−0.5×2=−1と演算される。
【0031】
結局、この走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数(重み付け)の和は、0+(−3)+(−1)+(−0.3)+(−1)+3.5+(−1)=−2.8となる。尚、図3の説明において、バッテリ16の充電量については特に詳細に説明しなかったが、モータ14による走行により、バッテリ16の充電量が減少し、エネルギー回生により充電量が増大している。また、モータ14単独走行の場合に比べて、エンジン11とモータ14との併用の場合の方が、バッテリ16の充電量の減少が緩やかであることは言うまでもない。
【0032】
次に、図4に示した走行経路において、上述した場合と同様にシミュレーションを行い、走行方法により細分された各区間の細分点数を算出してみる。最初(1番目)の区間はシミュレーション上の距離が1の平坦路であり、充電量も十分あるため、モータ14単独による走行が行われる。従って、この部分における細分点数として、0×1=0と演算される。
【0033】
次(2番目)の区間は、シミュレーション上の距離が5の下り坂であるため、モータ14によるエネルギー回生が実行される。従って、この区間における細分点数として、1×5=5と演算される。次の(3番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2の平坦路であり、充電量も十分あるため、モータ14単独による走行が行われる。従って、この部分における細分点数として、0×2=0と演算される。
次(4番目)の区間は、シミュレーション上の距離が3の急勾配の上り坂であるため、エンジン11単独による走行が行われる。従って、この区間における細分点数として、−1×3=−3と演算される。
【0034】
その次(5番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2の下り坂であるため、モータ14によるエネルギー回生が実行される。従って、この区間における細分点数として、1×2=2と演算される。最後(6番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2の平坦路であり、バッテリ16の充電量も十分あるため、モータ14単独による走行が行われる。従って、この部分における細分点数として、0×2=0と演算される。
【0035】
結局、この走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数(重み付け)の和は、0+5+0+(−3)+2+0=4となる。尚、図4の説明においても、バッテリ16の充電量については特に詳細に説明しなかったが、モータ14による走行により、バッテリ16の充電量が減少し、エネルギー回生により充電量が増大している。尚、このシミュレーション時に算出された道路上の位置に対する予想充電量の結果は、メモリ内に記憶される。
【0036】
以上のシミュレーションにより、ナビゲーションコントローラ21は図3および図4に示した走行経路のシミュレーション結果を比較し、細分点数(重み付け)の和が4である図4に示した走行経路の方が走行距離は若干長くなるが、細分点数の和が−2.8である図3に示した走行経路よりも、エンジン11のエコ走行経路(燃料消費量を低減可能な走行経路)として優れているとして表示装置26に表示等することにより、ユーザに対し提示することになる(ステップS207:燃料節約経路提示手段)。上記説明においては、2つの走行経路のみについてシミュレーションを行ったが、通常、現在地と目的地とを結んだ多数の走行経路の各々について、上述のシミュレーションを行って、細分点数の和が大きい経路をエコ走行経路とする。
【0037】
ステップS207において、表示装置26に探索されたエコ走行経路が表示されると、それとともに、「表示された走行経路でいいですか?」という表示がされるか、あるいは、スピーカ27を使用した音声により同様に尋ねられる(ステップS208)。これに対して、ユーザが操作部24を用いて表示された走行経路を了解した場合、ステップS209へと進んで、表示された走行経路による経路案内を開始する。ユーザが表示された走行経路に満足しない場合、シミュレーションを行ったその他の走行経路の内、細分点数の和が次に多い走行経路を表示装置26に表示する。このようにして、ユーザが走行経路に満足するまで、次々とシミュレーションを行った走行経路を表示する(ステップS207)。
【0038】
経路案内が開始すると、充電量検出装置17によりバッテリ16の充電量を検出し、検出された充電量をシミュレーション中に記憶した該当する走行位置における予想充電量と比較し(ステップS210)、検出された充電量が予想充電量よりも所定量だけ少なくなった場合、ステップS215へと進む。それ以外の場合は、ステップS211へと進み、ハイブリッド車両1が目的地に到着した、あるいはユーザが経路案内を中止する操作を行ったことにより、経路案内を終了させるかを判定する。経路案内を終了させないと判定された場合、ステップS209へと戻り経路案内が継続される。
【0039】
一方、ステップS210において、検出された充電量が、走行経路上の該当する位置における、シミュレーション時の予想充電量よりも所定量だけ少なくなったと判定された場合、ステップS215において、経路フラグがオンされていないと判定された後、ステップS206へと戻る。ステップS206においては、その走行位置を現在地として、ハイブリッド車両1の目的地との間において、再度、一般道路のみにより走行経路を形成する。そして、検出されたその時の車両用バッテリ16の充電量に基づいて、再度形成された走行経路ごとにシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づいて再度エコ走行経路の探索を行うことにより、最初に提示した走行経路を修正する。
【0040】
また、ステップS210において、検出された充電量が予想充電量よりも所定量だけ少なくなったと判定されて、ステップS215に進み、ステップS215において、経路フラグがオンされていると判定された場合、ステップS214へと戻る。ステップS214においては、一般道路および高速道路により走行経路を形成し、検出されたその時の車両用バッテリ16の充電量に基づいて、再度形成された走行経路ごとにシミュレーションを行う。
【0041】
本実施形態によれば、車両用バッテリ16の充電量と地図データに基づいて、形成された走行経路ごとに、ハイブリッド車両1が走行する場合の走行方法に関するシミュレーションを行い、走行経路ごとのシミュレーション結果に基づいて、エンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を提示する。これにより、ハイブリッド車両1が、シミュレーション結果に基づいて提示された走行経路を走行することで、エンジン11の燃料消費量を大幅に低減させることができる。
【0042】
また、各走行経路の細分された各区間の、走行方法に従ってつけられた点数(重み付け)の和に基づいて、エンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を提示する。これにより、エンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を、簡単な演算により容易に提示することができる。
また、細分された走行経路の各区間を、走行方法に加えて各区間の渋滞等の道路状態に従ってそれぞれ点数を付けている。これにより、走行経路上の渋滞等を考慮してエンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を提示することができ、いっそう、燃料消費量を低減可能な走行経路を提示することができる。
【0043】
また、バッテリ16の充電量が、シミュレーション時に算出された走行経路上の各位置における予想充電量よりも減少した場合には、その時のハイブリッド車両1の現在地と目的地とに基づいて、再度、走行経路を形成するとともに、検出されたその時のバッテリ16の充電量に基づいて、再度形成された走行経路ごとにシミュレーションを行い、再度形成された走行経路ごとのシミュレーション結果に基づき、提示した走行経路を修正する。これにより、走行経路上における突発的な渋滞の発生等により、バッテリ16の充電量がシミュレーション時の予想充電量より低下した場合でも、走行経路の修正により、再び、エンジン11の燃料消費量を低減させる走行経路を提示できる。
【0044】
<実施形態2>
次に、図5および図6に基づいて、本発明の実施形態2によるエコ走行経路の探索方法について説明する。ここで、図5および図6は、それぞれ同じ現在地(STARTと表示)および目的地(GOALと表示)との間に形成された、互いに異なる走行経路についてのシミュレーションを行った場合を示している。本実施形態は、ステップS205において、ユーザが高速道路も使用して走行することを選択し、ステップS214において、一般道路および高速道路によるエコ走行経路の探索が開始された場合を示している。図5に示した走行経路において、細分された最初(1番目)と、次(2番目)の区間は、実施形態1による図3に示したシミュレーションの場合と同様であるため、説明は省略する。
【0045】
その次(3番目)と、そのまた次(4番目)の区間は、シミュレーション上の合計距離が7の高速道路であるが、3番目の区間の開始時点におけるバッテリ16の充電量から、すべての距離をモータ14単独で走行するのには無理があるため、3番目の区間である高速道路の最初の区間(シミュレーション上の距離が1.5)だけ、エンジン11とモータ14との併用による走行が行われる。そして、高速道路の残りの区間(シミュレーション上の距離が5.5)をモータ14単独で走行する。従って、3番目の区間における細分点数として、−0.5×1.5=−0.75と演算される。また、4番目の区間における細分点数として、0×5.5=0と演算される。
【0046】
最後(6番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2の下り坂であるため、モータ14によるエネルギー回生が実行される。従って、この区間における細分点数として、1×2=2と演算される。結局、この走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数(重み付け)の和は、0+(−3)+(−0.75)+0+2=−1.75となる。
【0047】
次に、図6に示した走行経路において、上述した場合と同様にシミュレーションを行い、走行方法により細分された各区間の細分点数を算出してみる。図6に示した走行経路においても、細分された最初(1番目)と、次(2番目)の区間は、実施形態1による図4に示したシミュレーションの場合と同様であるため、説明は省略する。
【0048】
その次(3番目)の区間は、シミュレーション上の距離が7の高速道路であり、3番目の区間の開始時点におけるバッテリ16の充電量が十分にあるため、すべての距離をモータ14単独で走行する。従って、3番目の区間における細分点数として、0×7=0と演算される。最後(4番目)の区間は、シミュレーション上の距離が2.5の緩慢な上り坂であり、多少モータ14により走行する充電量も保有しているため、エンジン11とモータ14との併用による走行が行われる。従って、この区間における細分点数として、−0.5×2.5=−1.25と演算される。結局、この走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数(重み付け)の和は、0+5+0+(−1.25)=3.75となる。
【0049】
以上のシミュレーションにより、ナビゲーションコントローラ21は図5および図6に示した走行経路のシミュレーション結果を比較し、細分点数(重み付け)の和が3.75である図6に示した走行経路の方が走行距離は若干長くなるが、細分点数の和が−1.75である図5に示した走行経路よりも、エンジン11のエコ走行経路(燃料消費量を低減可能な走行経路)として優れているとして表示装置26に表示する等により、ユーザに対し提示することになる(ステップS207:燃料節約経路提示手段)。尚、上述したシミュレーションにおいて、高速道路への出入口(インタチェンジ)は、図5および図6に示した場合において、いずれも互いに異なっている。
【0050】
<実施形態3>
図7および図8に基づいて、実施形態3によるエコ走行経路の探索方法について説明する。図7および図8に示された走行経路は、それぞれ図3および図4に示された走行経路と同一である。本実施形態においては、走行方法に従って重み付けをする際に、エンジン単独で走行する区間は走行係数を2とし、エンジンとモータを併用して走行する区間は走行係数を1としているのみで、モータ14単独で走行する区間、およびエネルギー回生を実行する区間には走行係数を設けていない。但し、渋滞区間を含んでいる区間は走行係数0.3を加えている。その他、各走行経路の走行方法等のシミュレーションについては、実施形態1と同様に行われる。
【0051】
従って、図7に示された走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数の和は、6+2+0.3+2+2=12.3となる。また、図8に示された走行経路において、走行方法により細分された各区間の細分点数の和は6となる。本実施形態の場合、細分点数の和が少ない方がエコ走行経路(燃料消費量を低減可能な走行経路)として優れているとされる。その結果、以上のシミュレーションにより、ナビゲーションコントローラ21は図7および図8に示した走行経路のシミュレーション結果を比較し、細分点数(重み付け)の和が6である図8に示した走行経路を、エコ走行経路として表示装置26に表示する等によりユーザに対し提示することになる。
【0052】
本実施形態においては、エンジン単独で走行する区間およびエンジンとモータを併用して走行する区間のみに走行係数を設けているため、走行経路のシミュレーション時の演算が簡単で、ナビゲーションコントローラ21のメモリ等を低減できるとともに、演算速度を速くすることができる。
【0053】
また、各区間の細分点数がすべて正の値であるため、まず、1つの走行経路についてシミュレーションを完了して、各区間の細分点数の和が演算された後、2つめ以降の走行経路のシミュレーションを開始した場合に、そのシミュレーションの途中段階における各区間の細分点数の和が、1つめの走行経路の各区間の細分点数の和よりも大きくなった場合、その時点において、その走行経路がエコ走行経路とは成り得ないことが分かるため、それ以降のシミュレーションを行う必要がなく、更に、演算を短時間に行うことができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
走行経路の各区間における重み付けは、各区間における燃料消費量の低減度合いが反映されたものであれば、どのようなものであってもよい。
走行経路上のカーブは、エンジンの燃料消費量を増大させるため、カーブを含んだ区間に重み付けを行ってもよい。
送受信機により入手する道路状態情報には、渋滞情報以外に道路規制情報、事故情報等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態1による車載ナビゲーション装置が取り付けられたハイブリッド車両の構成を示すブロック図
【図2】車載ナビゲーション装置のナビゲーションコントローラによる制御フローチャート
【図3】実施形態1による走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【図4】図3に対して別の走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【図5】実施形態2による走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【図6】図5に対して別の走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【図7】実施形態3による走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【図8】図7に対して別の走行経路についてのシミュレーション方法の説明図
【符号の説明】
【0056】
図面中、1はハイブリッド車両、2は車載ナビゲーション装置、11はエンジン、13は駆動輪、14はモータ、16はバッテリ、17は充電量検出装置、21はナビゲーションコントローラ、22は位置検出装置、24は操作部、25は外部メモリ、28は送受信機を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するためにエンジンまたはモータを選択的に作動させる、あるいは前記エンジンおよび前記モータを併用して作動させるハイブリッド車両に取付けられる車両用ナビゲーション装置であって、
前記モータに電力を供給する車両用バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
地図データを記憶するメモリ手段と、
前記ハイブリッド車両の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記ハイブリッド車両の目的地を入力する目的地入力手段と、
検出された前記ハイブリッド車両の現在地と入力された前記ハイブリッド車両の目的地との間において、前記ハイブリッド車両の走行経路を形成し、検出された前記車両用バッテリの充電量と前記地図データに基づいて、形成された前記走行経路ごとに、前記ハイブリッド車両が走行する場合の走行方法に関するシミュレーションを行う走行シミュレーション手段と、
前記走行経路ごとのシミュレーション結果に基づいて、前記エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を提示する燃料節約経路提示手段とを備えたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記走行シミュレーション手段は、前記地図データに基づいて、各々の前記走行経路を走行方法ごとに細分し、細分された前記走行経路の各区間は走行方法に従ってそれぞれ重み付けされ、前記燃料節約経路提示手段は、前記各走行経路の細分された各区間の前記重み付けの和に基づいて、前記エンジンの燃料消費量を低減させる走行経路を提示することを特徴とする請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記走行経路の道路状態情報を受信する道路状態取得手段を備え、前記燃料節約経路提示手段は、細分された前記走行経路の各区間を、走行方法に加えて各区間の道路状態に従ってそれぞれ重み付けすることを特徴とする請求項2記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両用バッテリの充電量が、シミュレーション時に算出された前記走行経路上の各位置における充電量よりも減少した場合には、前記走行シミュレーション手段は、その時の前記ハイブリッド車両の現在地と入力された前記ハイブリッド車両の目的地とに基づいて、再度、走行経路を形成するとともに、検出された前記車両用バッテリの充電量に基づいて、再度形成された前記走行経路ごとにシミュレーションを行い、前記燃料節約経路提示手段は再度形成された前記走行経路ごとのシミュレーション結果に基づき、提示した走行経路を修正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−290610(P2008−290610A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139147(P2007−139147)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】