説明

車両用情報表示システム

【課題】 運転者の視界を妨げることなく、多くの情報を表示可能な車両用情報表示システムを提供する。
【解決手段】 運転者が交通状況を確認するために必要な視野に係る領域を視野領域として、この視野領域より下部を下部領域、視野領域とその上部に位置するルームミラーとの間の領域を上部領域とする。そして、表示コントローラ40から入力される表示データに従って映像を表示する液晶パネル31を、その表示した映像がウインドシールドWの下部領域に投射されるようにインストルメントパネルP上に配置すると共に、同じく表示コントローラ40から入力される表示データに従って映像を表示するプロジェクタ32を、その表示した映像がウインドシールドWの上部領域に投射されるようにルーフ部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイを用いた車両用情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、映像を車両のウインドシールドに投影することにより、投影された映像が虚像或いは反射像として車両の乗員に視認されるように表示する、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いた車両用情報表示システムが知られている。
【0003】
このようなHUDを用いた車両用情報表示システムでは、交通状況の確認のために必要な運転者の視野を妨げることがないように、運転者に提供すべき各種情報(映像)を、ウインドシールドの下部(以下「下部領域」とも称する。)に表示している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−19491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、HUDでは、運転者の視線を大きく移動させることなく、必要な情報を安全に提供することができるため、将来的には、あらゆる情報がHUDによって提供される可能性がある。しかし、情報の表示域とされているウインドシールドの下部領域は、面積が限られているため、一度に多くの情報を表示することができないという問題があった。
【0005】
また、多くの情報を表示するために表示域を広げると、上述の視界領域が侵食され、運転者の視界を妨げてしまうことになり、運転者に不安を感じさせてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために、運転者の視界を妨げることなく、多くの情報を表示可能な車両用情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の車両用情報表示システムでは、映像表示手段が、車両の乗員に提供すべき提供情報を示した映像を表示すると、投影手段が、その映像が車両の乗員に視認されるように、該映像を車両のウインドシールドに投影する。但し、投影手段は、少なくとも、運転者が交通状況を確認するために必要な視野に係る視野領域より上部の上部領域に映像を投影する。
【0008】
このように本発明では、運転時に視野の妨げとなる可能性が低い上部領域に表示を行っているため、運転者の前方景色に対する集中を妨げることなく、必要な情報を安全に提供することができる。
【0009】
即ち、上部領域に見える景色には、運転者が認識すべき情報が存在することが少なく、殆どの場合、空が見えるのみであるため、この領域に情報を表示しても、運転者は煩わしさや危険を感じることが少ないのである。
【0010】
また、本発明では、上部領域を用いることにより多くの情報を常時提供でき、運転者は、その提供された情報を、必要に応じて任意のタイミングで確認すればよいため、使い勝手を向上させることができる
【0011】
そして、特に請求項1に記載の発明では、外部状況検出手段が、ウインドシールドを通して視認される車両外部の状況を検出し、映像表示手段では、調整手段が、外部状況検出手段により車両の乗員に認識させるべき物体が検出された場合、その物体がウインドシールドに投影される映像と重なり合って視認される位置にあるときには、その映像の透明度が増すようにその映像の明るさを調整する
【0012】
つまり、上部領域といえども、その領域に乗員が認識すべき障害物や看板などが位置する可能性があり、本発明では、そのような場合でも、上部領域に投影された映像が障害物や看板などを視認する際の妨げとなることを防止できる。
【0013】
また、本発明では、請求項2に記載のように、情報収集手段が、車両周辺の状況、運転者の状態、車両の運転状態の中の少なくともいずれか一つに基づいて、運転支援のための情報を収集し、映像表示手段では、情報種集手段にて収集された情報を提供情報とするように構成してもよい。なお、運転支援のための情報としては、例えば、車線についての情報や、経路(方面)についての情報の他、道路標識や信号機についての情報が考えられる。
【0014】
例えば、前方に大型車両が走行している状況では、道路標識や信号機を視認できない場合があり、そのような状況の時に、道路標識や信号機についての情報を提供すれば、運転の安全性を向上させることができる。
【0015】
そして、映像表示手段は、請求項3に記載のように、運転支援のための情報からなる提供情報を看板(道路標識)の映像にして表示してもよい。この場合、看板の図柄を直感的に内容を把握できるものとすることにより、文字にて情報を提供する場合より、提供すべき情報の内容を、速やかに且つ確実に乗員に認識させることができる。
【0016】
また、このように、提供情報を看板の映像にして表示する場合、映像表示手段は、例えば、請求項4に記載のように、看板の映像が、実際の看板と同様に、ウインドシールドを通して視認される景色中の特定地点に固定されて見えるように、その特定地点と車両との位置関係の変化に従って、看板の表示位置や表示サイズを変化させるように構成してもよい。
【0017】
この場合、看板は、よく見慣れた道路標識等と全く同様に見えるため、車両の乗員は、当該装置によりウインドシールド上に表示された情報を、特別な技術を要することなく視認することができる。
【0018】
更に、映像表示手段は、請求項5に記載のように、看板の映像の表示を開始する際には、車両の走行速度が速いほど、特定地点までの距離や前記看板のサイズの初期値を大きく設定するように構成してもよい。
【0019】
つまり、特定地点までの距離の初期値が一定である場合、走行速度が速いほど、特定地点に到達する時間、即ち、看板の映像が表示されている時間が短くなる。しかし、特定地点までの距離の初期値を走行速度に応じて変化させれば、看板の映像が表示されている時間を、走行速度によらずほぼ一定とすることが可能となる。また、看板のサイズの初期値を変化させることにより、走行速度によらず、看板の見え方をほぼ一定とすることが可能となる。
【0020】
なお、上述の視野領域は、少なくともJIS規格R3212に規定された試験領域Aを含むことが望ましい。
ところで、上部領域には、ルームミラーによって視野が遮られる領域が含まれており、この領域に映像を投影してもこれを見ることができない。このため、投影手段は、上部領域のうち、ルームミラーにより視野が遮られる領域以外の領域に映像を投影することが望ましい。また、投影手段による投影位置を調整する代わりに、映像表示手段が、上部領域のうち、ルームミラーにより視野が遮られる領域以外の領域に映像が投影されるように、映像表示手段の表示画面中における映像の表示位置を設定するようにしてもよい。
【0021】
更に、投影手段は、上部領域に加えて視野領域より下部の下部領域にも映像を投影するように構成してもよい。この場合、表示する情報をより増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の車両用情報表示システムの構成、及び主要な構成要素の配置を示す説明図である。
【0023】
図1に示すように、車両用情報表示システム1は、自車両の運転状態や自車両周辺の状況に関する情報の供給源となる情報供給部10と、自車両の乗員からの指令を入力するための指令入力部20と、映像を表示し、その表示した映像をウインドシールドWに投影する情報提示部30と、情報供給部10からの供給情報、及び指令入力部20からの入力指令に基づいて、情報提示部30が表示する映像を制御する表示コントローラ40とを備えている。
【0024】
このうち、情報供給部10は、自車両の速度を検出する車速センサ11と、自車両の操舵角を検出するステアリングセンサ12と、エンジンの回転数を検出する回転数センサ13と、自車両の前方を撮像するカメラ(図示せず)からの画像を処理して、道路,先行車両,障害物などを認識し、認識した道路の道路幅や、認識した各物体(先行車両や障害物)までの距離等を求める画像認識装置14と、レーダ波(レーザ光,電波等)を送受信して、自車両の前方に存在する物体(先行車両や障害物)との相対速度や距離を求めるレーダコントローラ15と、GPS(グローバルポジショニングシステム)信号を受信して、自車両の位置を求めるGPSコントローラ16と、FM放送の受信や、道路近傍に設置された路上機との無線通信等により、道路交通情報等を取得する通信装置17と、自車両周辺の地図の表示等を行うナビゲーション装置18とを備えている。
【0025】
なお、通信装置17が取得する道路交通情報には、渋滞情報,各種規制情報のほか、信号機の状態を示す情報なども含まれている。
また、ナビゲーション装置18は、地図データを記憶する記憶装置を備え、GPSコントローラ16からの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶装置から読み出し、自車両を意味するマークや、別途設定された経路情報、通信装置17を介して取得した渋滞情報等を表示画面(図示せず)に表示する機能、及び上記経路情報に基づいて、画像や音声による経路案内を行う機能を少なくとも備えた周知のものである。
【0026】
そして、地図データには、道路形状に関するデータ、各種建造物の名称、交差点の名称、地名等が、位置データに対応づけて記憶されている他、車線が複数存在する場合の各車線についての情報(交差点にて進行可能な方向など)である車線情報等も含まれている。
【0027】
次に、情報提示部30は、表示コントローラ40から入力される表示データに従って映像を表示し、その表示した映像がウインドシールドWの下部に投射されるように車室内のインストルメントパネルP上に配置された液晶パネル31と、同じく表示コントローラ40から入力される表示データに従って映像を表示し、その表示した映像がウインドシールドWの上部に投射されるよう車室内のルーフ部に配置されたプロジェクタ32とからなる。
【0028】
なお、図2に示すように、運転者が交通状況を確認するために必要な視野に係る領域を視野領域100とすると、液晶パネル31による映像は、視野領域より下部に位置する下部領域101に投影され、また、プロジェクタ32による映像は、視野領域100より上部で、ルームミラーMより下部に位置する上部領域102に投影されるように設定されている。但し、視野領域100は、少なくともJIS規格R3212に規定された試験領域Aを含むものとする。
つまり、車両の乗員には、液晶パネル31やプロジェクタ32が表示する映像を直接視認させるのではなく、その映像をウインドシールドWに投影し、ウインドシールドで反射した虚像あるいは反射像を視認させるようにされている。
【0029】
次に、指令入力部20は、ステアリングホイールSの近傍(運転者が操作し易い位置)に設置され、ウインドシールドWへの映像の表示を許可又は禁止する指令を入力するためのスイッチ21と、車両の乗員が発話した音声を集音するマイク(図示せず)を備え、集音した音声について音声認識を実行し、予め設定された予約語に一致した場合に、その旨を表示コントローラ40に通知する音声認識装置22とからなる。なお、ここでは、予約語として、ウインドシールドWに表示する情報の種類、例えば、「車線情報」「車両情報」「経路案内」「信号機」などが設定されている。
【0030】
次に、表示コントローラ40は、CPU41,ROM42,RAM43からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、液晶パネル31やプロジェクタ32に供給する表示データを蓄積するための画像メモリ44を備えている。
【0031】
なお、画像メモリ44には、図3に示すように、下部領域101に表示する表示データを記憶する領域44aと、上部領域102に表示する表示データを記憶する領域44bとが確保されており、領域44aに記憶された表示データ(以下「下部領域表示データ」と称する。)が液晶パネル31に供給され、領域44bに記憶された表示データ(以下「上部領域表示データ」と称する。)がプロジェクタ32に供給されるように設定されている。
【0032】
そして、表示コントローラ40を構成するCPU41は、イグニションスイッチがオンされ且つスイッチ21によりウインドシールドWへの表示を許可する指令が入力された状態で、音声認識装置22にて予約語が認識されると、その予約語に対応する情報を、ウインドシールドWに表示する処理を実行する。
【0033】
即ち、予約語として「車線情報」が認識されると、図4に示すように、次の交差点で進行可能な方向を車線毎に示す看板の映像51(以下「バーチャル看板」と称する。)を上部領域102に表示する車線情報表示処理を実行する。また、予約語として「車両情報」が認識されると、車速センサ11からの車速情報、及び回転数センサ13からのエンジン回転数情報を数字や目盛りにて表した映像52を、下部領域101に表示する車両情報表示処理を実行する。また、予約語として「経路案内」が認識されると、ナビゲーション装置18を介して設定された設定経路中の案内ポイントに接近すると、案内ポイントまでの距離や案内内容を文字,数字や記号にて表した映像53を、下部領域101に表示する経路案内表示処理を実行する。また、予約語として「信号機」が認識されると、通信装置17を介して取得した道路交通情報に基づいて、信号機の映像(図示せず)を、上部領域102に表示する信号機表示処理を実行する。
【0034】
ここで、上述した各種表示処理のうち、車線情報表示処理の詳細を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理が起動すると、まず、ナビゲーション装置18から現在走行中の道路に関する車
線情報(車線数,車線毎の情報(次の交差点において進行可能な方向,車線幅など))を取得し(S110)、その取得した車線情報に基づいて、表示すべき看板の数及び種類(直進,右折,左折,直進又は右折,直進又は左折など)を選択する(S120)。
【0035】
次に、車速センサ11から車速情報、ナビゲーション装置18から、道路形状を表す道路情報及び現在位置を表す位置情報を取得し(S130)、その取得した情報に基づいてバーチャル看板の見かけ上の設置位置、及びバーチャル看板のサイズを設定する(S140)。
【0036】
なお、表示位置は、車速が速いほど、バーチャル看板の見かけ上の設置位置までの距離が遠くなり、且つバーチャル看板のサイズが大きくなるように設定する。具体的には、見かけ上の設置位置までの距離は、車両が現在車速により一定速度で走行すると仮定して、その見かけ上の設置位置に到達するまでの時間がほぼ一定となるように設定する。また、バーチャル看板のサイズは、最初に表示された時の大きさが、車速(見かけ上の設置位置までの距離)に関わらず、ほぼ一定となるように設定する。
【0037】
次に、車速センサ11から速度情報、ステアリングセンサ12からステアリング角情報、ナビゲーション装置18から道路情報や位置情報を取得し(S150)、その取得した情報、及び先のS140にて設定した値に基づいて、バーチャル看板の表示位置及び表示サイズを算出する(S160)。具体的には、車速情報及びステアリング角情報に基づいて、自車両の位置や進行方向を算出し、その算出値に基づいて、見かけ上の設置位置にあるバーチャル看板がどのように見えるのかを求めることで、バーチャル看板の表示位置及びサイズを求める。
【0038】
次に、ウインドシールドWを通して視認される前景の中に位置する物体に関する情報である周辺情報(物体の位置、大きさ)を画像認識装置14から取得し(S170)、その取得した周辺情報から特定される物体が、運転者に認識させるべき障害物等であり、かつ、その物体がバーチャル看板と重なって見える位置にあるか否かを判断する(S180)。
【0039】
このS180にて否定判定された場合は、S160にて求めたバーチャル看板の表示位置及びサイズに従って、バーチャル看板の映像を、プロジェクタ32に表示させるための表示データを生成し、その生成した表示データを画像メモリ44の領域44bに書き込む(S190)。一方、S180にて肯定判定された場合は、S190と同様の表示データであるが、より映像の透明度が高くなるように映像の明るさ補正した表示データを生成し、その生成した表示データを画像メモリ44の領域44bに書き込む(S200)。
【0040】
これらS190,S200の処理により、画像メモリ44の領域44bに書き込まれたデータが、プロジェクタ32に繰り返し供給されることにより、ウインドシールドWの上部領域102に、バーチャル看板の映像が表示されることになる。
【0041】
なお、ウインドシールドWは、平面ではなく湾曲した形状を有しており、しかも、位置によって曲率が異なっているため、S190、S200では、投影された映像が歪むことがないように、表示位置(ウインドシールドWへの投影位置)に応じて表示データを補正する機能も有している。
【0042】
次に、バーチャル看板の表示を終了する終了条件が満たされたか否か、ここではバーチャル看板の見かけ上の設置位置を自車両が通過したか否かを判断し(S210)、終了条件が満たされていなければ、S150に戻って情報供給部10からの情報に基づいて表示データを随時更新する処理を繰り返す。一方、終了条件が満たされていれば、そのまま本
処理を終了する。
【0043】
このように構成された本実施形態の車両用情報表示システム1では、イグニッションスイッチがオンされ、かつ、スイッチ21がウインドシールドWへの表示を行う設定にされた状態で、車両の乗員が「車線情報」と発話すると、図4に示すように、ウインドシールドWを通した前景の中で視認される各車線の上部に、その車線に関する情報を示したバーチャル看板51が表示される。
【0044】
なお、図4では、経路設定によって左折するように設定された交差点(案内ポイント)の300M手前で、3車線道路の真中を走行している状況で、ウインドシールドW上に、車線情報、車両情報、経路案内情報を表示した状態を示す。また、図4では、図面を見やすくするため、ルームミラーMの図示を省略している。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の車両用情報表示システム1によれば、下部領域101だけでなく、上部領域102にも情報を表示するようにされているため、運転者の視野を妨げることなく、多くの情報をHUDによって表示することができる。
【0046】
また、本実施形態では、車線情報を看板の映像(バーチャル看板)51にして表示し、しかも、このバーチャル看板51は、車両の走行状況(走行速度、道路幅、道路の曲がり等)に応じて表示位置や表示サイズが制御され、見かけ上の設置位置に固定されて見えるように、即ち、通常の道路標識と同様の見え方となるようにされている。従って、運転者は、バーチャル看板を、通常の道路標識が示された看板などを見るときのように、違和感なく視認することができ、特別な注意を払う必要がないため、安全に情報を受け取ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、視野領域100とルームミラーMとの間の領域を上部領域102としたが、図6に示すように、ルームミラーMの左右の領域も、この上部領域102に含めるようにしても良い。
【0048】
この場合、映像がルームミラーMにて視野が遮られる部分に投影されることがないように、表示データを調整するか、又はプロジェクタ32が映像を投影する領域を調整することが望ましい。
【0049】
本実施形態において、情報提示部30が映像表示手段及び投影手段、スイッチ21が入力手段、画像認識装置14が外部状況検出手段、S180〜S200が調整手段、情報供給部10が情報収集手段に相当する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0050】
なお、本実施形態では、情報提示部30aの構成、及び表示コントローラ40aの構成の一部が、第1実施形態のものとは異なっているだけであるため、この相異する部分を中心に説明する。
【0051】
本実施形態の車両用情報表示システム1aにおいて、情報提示部30aは、図7に示すように、ウインドシールドWに投影すべき映像を表示する表示器(例えば、液晶パネル)31と、表示器31に表示された映像(表示器31からの光)を反射および透過させることで2分岐させるハーフミラー33と、ハーフミラー33にて反射した映像を反射して、ウインドシールドWの下部領域101に投影する反射型光学素子34と、ハーフミラー33を透過した映像を反射して、ウインドシールドWの上部領域102に投影する反射型光学素子35と、ハーフミラー33から反射型光学素子34に至る経路上に設けられた液晶
シャッタ36と、ハーフミラー33から反射型光学素子35に至る経路上に設けられた液晶シャッタ37とを備えている。
【0052】
なお、これら情報提示部30aを構成する構成部品は、インストルメントパネルPに形成された凹部に収納されている。また、図7では、情報提示部30a以外の図示を省略している。
【0053】
そして、液晶シャッタ36,37は、単一の駆動信号により駆動され、一方がオン(光を透過)の時には他方がオフ(光を遮断)する、いわゆる相補的な動作をするように構成されている。
【0054】
このように構成された情報提示部30aでは、表示器31が表示する映像を、液晶シャッタ36がオン(液晶シャッタ37がオフ)の時には下部領域101に投影し、液晶シャッタ37がオン(液晶シャッタ36がオフ)の時には上部領域102に投影する。
【0055】
次に、表示コントローラ40aは、図8(a)に示すように、第1実施形態の場合と同様に構成されたCPU41,ROM42,RAM43,画像メモリ44に加えて、データ合成部45を備えている。
【0056】
このデータ合成部45は、画像メモリ44の領域44aに格納された下部領域表示データと、領域44bに格納された上部領域表示データとを、時分割多重した表示データを生成し、この多重化した表示データを表示器31に供給すると共に、この多重化に同期して信号レベルが切り替わる駆動信号を、液晶シャッタ36,37に供給するように構成されている。
【0057】
このように構成された本実施形態の車両用情報表示システム1aにおいては、表示器31に表示される映像が、下部領域表示データに基づくものである時には、液晶シャッタ36がオンされ、その映像がウインドシールドWの下部領域101に投影される。また、表示器31に表示される映像が上部領域表示データに基づくものである時には、液晶シャッタ37がオンされ、その映像がウインドシールドWの上部領域102に投影される。
【0058】
つまり、本実施形態では、映像の投影経路を切り替えることにより、単一の表示器31に表示された映像を、下部領域101及び上部領域102のいずれにも投影できるようにされている。
【0059】
このように本実施形態の車両用情報表示システム1aによれば、情報提示部30aが単一の表示器31により構成されているため、第1実施形態のものと比較して、情報提示部30aの製造コストや車両への搭載スペースを削減することができる。
【0060】
なお、本実施形態において、表示器31及びデータ合成部45が映像表示手段、反射型光学素子35が第1ミラー、反射型光学素子34が第2ミラー、ハーフミラー33がハーフミラー、液晶シャッタ36,37が一対のシャッターに相当する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0061】
なお、本実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、情報提示部30bの構成、及び表示コントローラ40bの構成の一部が、第1実施形態のものとは異なっているだけであるため、この相異する部分を中心に説明する。
【0062】
本実施形態の車両用情報表示システム1bにおいて、情報提示部30bは、図9に示す
ように、ウインドシールドWに投影すべき映像を表示する表示器(例えば、液晶パネル)31と、表示器31に表示された映像(表示器31からの光)を反射して、ウインドシールドWの上部領域102に投影する反射型光学素子35と、表示コントローラ40aからの駆動信号に従って、表示器31から反射型光学素子35に至る経路を遮る遮断位置、又は該経路から待避した待避位置のいずれかに保持される可動鏡38と、可動鏡38が遮断位置にある時に、可動鏡38にて反射した映像を再反射して、ウインドシールドWの下部領域101に投影する反射型光学素子34とを備えている。つまり、情報提示部30bは、第2実施形態の情報提示部30bから、液晶シャッタ36,37を省略し、ハーフミラー33の代わりに可動鏡38を設けた構成を有している。
【0063】
なお、これら情報提示部30bを構成する構成部品は、第2実施形態の場合と同様に、インストルメントパネルPに形成された凹部に収納されている。また、図9では、情報提示部30b以外の図示を省略している。
【0064】
このように構成された情報提示部30bでは、表示器31が表示する映像を、可動鏡38が遮断位置にある時には下部領域101に投影し、可動鏡38が待避位置にある時には上部領域102に投影する。
【0065】
次に、表示コントローラ40bは、図8(b)に示すように、第1実施形態のものと同様に構成されたCPU41,ROM42,RAM43,画像メモリ44に加えて、データ合成部46を備えている。
【0066】
このデータ合成部46は、画像メモリ44の領域44aに格納された下部領域表示データと、領域44bに格納された上部領域表示データとを、時分割多重した表示データを生成し、この多重化した表示データを表示器31に供給すると共に、この多重化に同期して信号レベルが切り替わる駆動信号を、可動鏡38に供給するように構成されている。
【0067】
このように構成された本実施形態の車両用情報表示システム1bにおいては、表示器31に表示される映像が、下部領域表示データに基づくものである時には、可動鏡38が遮断位置に保持され、その映像はウインドシールドWの下部領域101に投影される。また、表示器31に表示される映像が上部領域表示データに基づくものである時には、可動鏡38が待避位置に保持され、その映像はウインドシールドWの上部領域102に投影される。
【0068】
つまり、本実施形態では、第2実施形態と同様に、映像の投影経路を切り替えることにより、単一の表示器31に表示された映像を、下部領域101及び上部領域102のいずれにも投影できるようにされているため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態において、表示器31及びデータ合成部46が映像表示手段、反射型光学素子35が第1ミラー、反射型光学素子34が第2ミラー、可動鏡38が可動ミラーに相当する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0070】
なお、本実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、情報提示部30cの構成、及び表示コントローラ40cの構成の一部が、第1実施形態のものとは異なっているだけであるため、この相異する部分を中心に説明する。
【0071】
本実施形態の車両用情報表示システム1cにおいて、情報提示部30cは、図10に示
すように、ウインドシールドWに投影すべき映像を表示する表示器(例えば、液晶パネル)31と、表示器31に表示された映像(表示器31からの光)の一部分を、第1の方向に反射すると共に、残りの部分を第1の方向とは異なる第2の方向に反射する二面反射鏡39と、二面反射鏡39により第1の方向に反射した映像を再反射して、ウインドシールドWの下部領域101に投影する反射型光学素子34と、二面反射鏡39により第2の方向に反射した映像を再反射して、ウインドシールドWの上部領域102に投影する反射型光学素子35とを備えている。
【0072】
なお、これら情報提示部30bを構成する構成部品は、第2,第3実施形態の場合と同様に、インストルメントパネルPに形成された凹部に収納されている。また、図10では、情報提示部30c以外の図示を省略している。
【0073】
このように構成された情報提示部30cでは、表示器31が表示する映像の一部分を下部領域101に投影し、その映像の他の部分を上部領域102に投影する。
次に、表示コントローラ40cは、図8(c)に示すように、第1実施形態のものと同様に構成されたCPU41,ROM42,RAM43,画像メモリ44に加えて、データ合成部47を備えている。
【0074】
このデータ合成部47は、画像メモリ44の領域44aに格納された下部領域表示データに基づいて表示される映像が、二面反射鏡39により第1の方向に反射される部分に配置され、領域44bに格納された上部領域表示データに基づいて表示される映像が、二面反射鏡39により第2の方向に反射される部分に配置されるように、下部領域表示データと上部領域表示データとを合成した表示データを生成し、この合成した表示データを表示器31に供給するように構成されている。
【0075】
このように構成された本実施形態の車両用情報表示システム1cにおいては、表示器31に表示された映像のうち、下部領域表示データに基づく映像は、ウインドシールドWの下部領域101に投影され、上部領域表示データに基づく映像は、ウインドシールドWの上部領域102に投影される。
【0076】
つまり、本実施形態では、下部領域101に投影すべき映像と上部領域102に投影すべき映像とを同時に表示し、映像の投影経路を分岐させることにより、単一の表示器31に表示された映像を、下部領域101及び上部領域102のいずれにも投影できるようにされている。
【0077】
従って、本実施形態の車両用情報表示システム1cによれば、第2及び第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態において、表示器31及びデータ合成部47が映像表示手段、反射型光学素子35が第1ミラー、反射型光学素子34が第2ミラー、二面反射鏡39が二面反射鏡に相当する。
[変形例]
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、情報提示部30,30a〜30cを構成する表示器31,32として、液晶パネルやプロジェクタを用いたが、ELなどの発光素子からなる表示器を用いてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、指令入力部20は、スイッチ21と音声認識装置22とを備えているが、乗員を撮像した画像について画像認識する画像認識装置を備え、予め設定さ
れた特定のジェスチャを指令として検出するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態の車両用情報表示システムの構成、及び主要部の配置を示す説明図である。
【図2】ウインドシールド上の表示領域の設定例を示す説明図である。
【図3】表示コントローラと情報提示部との関係を示すブロック図である。
【図4】ウインドシールド上における情報の表示例を示す説明図である。
【図5】車線情報表示処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】ウインドシールド上の表示領域の他の設定例を示す説明図である。
【図7】第2実施形態における情報提示部の構成を示す説明図である。
【図8】第2〜第4実施形態における表示コントローラと情報提示部との関係を示すブロック図である。
【図9】第3実施形態における情報提示部の構成を示す説明図である。
【図10】第4実施形態における情報提示部の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1,1a〜1c…車両用情報表示システム、10…情報供給部、11…車速センサ、12…ステアリングセンサ、12…プロジェクタ、13…回転数センサ、14…画像認識装置、15…レーダコントローラ、16…GPSコントローラ、17…通信装置、18…ナビゲーション装置、20…指令入力部、21…スイッチ、22…音声認識装置、30,30a〜30c…情報提示部、31…表示器(液晶パネル)、32…表示器(プロジェクタ)、33…ハーフミラー、34,35…反射型光学素子、36,37…液晶シャッタ、38…可動鏡、39…二面反射鏡、40,40a〜40c…表示コントローラ、44…画像メモリ、45,46,47…データ合成部、51〜53…映像、100…視野領域、101…下部領域、102…上部領域、M…ルームミラー、P…インストルメントパネル、S…ステアリングホイール、W…ウインドシールド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員に提供すべき提供情報を示した映像を表示する映像表示手段と、
該映像表示手段にて表示された映像が車両の乗員に視認されるように、該映像を車両のウインドシールドに投影する投影手段と、
を備えた車両用情報表示システムにおいて、
前記ウインドシールドを通して視認される車両外部の状況を検出する外部状況検出手段を備え、
前記映像表示手段は、前記外部状況検出手段により車両の乗員に認識させるべき物体が検出された場合、該物体が前記ウインドシールドに投影される映像と重なり合って視認される位置にあるときには、該映像の透明度が増すように該映像の明るさを調整する調整手段を備え、
前記投影手段は、少なくとも、運転者が交通状況を確認するために必要な視野に係る視野領域より上部の上部領域に、前記映像を投影することを特徴とする車両用情報表示システム。
【請求項2】
車両周辺の状況、運転者の状態、車両の運転状態の中の少なくともいずれか一つに基づいて、運転支援のための情報を収集する情報収集手段を備え、
前記映像表示手段は、該情報収集手段にて収集された情報を前記提供情報とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用情報表示システム。
【請求項3】
前記映像表示手段は、運転支援のための情報からなる前記提供情報を看板の映像にして表示することを特徴とする請求項2に記載の車両用情報表示システム。
【請求項4】
前記映像表示手段は、前記看板の映像が、前記ウインドシールドを通して視認される景色中の特定地点に固定されて見えるように、該特定地点と車両との位置関係の変化に従って、前記看板の表示位置や表示サイズを変化させることを特徴とする請求項3に記載の車両用情報表示システム。
【請求項5】
前記映像表示手段は、前記看板の映像の表示を開始する際には、車両の走行速度が速いほど、前記特定地点までの距離や前記看板のサイズの初期値を大きく設定することを特徴とする請求項4に記載の車両用情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−23651(P2009−23651A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215429(P2008−215429)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2003−434136(P2003−434136)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】